説明

電子レンジ調理用容器

【課題】色や臭いが付着しやすい食材の調理に使用した後でも、再利用可能な電子レンジ調理用容器を提供すること。
【解決手段】容器本体1は、ポリプロピレンシート製基体11の内面にポリメチルペンテン製フィルム12のコーティングがされたものである。ポリメチルペンテン製フィルム12のコーティングがされることで、容器本体1に色や臭いが残りにくくなるため、使用後に洗浄すれば、再利用可能である。容器本体1は、接着剤によりポリメチルペンテン製フィルムとポリプロピレンシートとが積層接着された、二層構造のシートを用い、圧空成形や真空成形等のサーモフォーミング法により成形することができる。また、ポリプロピレンシートがタルクを添加したものであると、容器の剛性、耐熱性、成形時の寸法安定性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生鮮食品や麺類や惣菜等の各種食材を電子レンジにより加熱調理するための容器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジ調理用容器は、食材を密封して保存や搬送ができ、短時間に調理ができる簡便な物である。そして、加熱調理する際は、蒸気圧を自動的にコントロールし、容器内の調味液を容器外部に漏らさず、電子レンジ内や容器外周を汚さないことが重要である。さらに、美味しく、栄養素をできるだけ減らさず、効率良く調理する為に、加熱調理時の容器の密閉度が高く、食材を素早く高温にしたり、容器内圧力をより高い蒸気圧でコントロールしたりする必要がある。その為には容器の各部品の精度確保が必要不可欠となる。
また、容器の各部品は成形性が良く、品質が安定し、低コストで生産できることも重要である。
従来の電子レンジ用食品容器の一例として、特許文献1の容器がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3962377号公報
【0004】
特許文献1の発明は、蒸気圧を自動的にコントロールして容器本体と蓋体の嵌合が蒸気圧により外れたりせず、しかも、煮汁を一切容器外部に漏らすことがない、優れた容器である。しかし、臭いの強い食材やカレー等色が付着しやすい料理に使用した場合、洗浄しても色や臭いを除去することができず、原則として、1回しか使用できない、という問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
野菜や果物に含まれる色素の中には、脂溶性のものも多く、こうした色素は、多くの電子レンジ調理用容器に使用されているポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン及びポリ塩化ビニル等の親油性の樹脂に、浸透・沈着しやすい、という特性がある。
代表的なものとして、人参、かぼちゃに含まれるカロチン、トマトに含まれるリコピン、緑色の色素のクロロフィル等がある。特に、カレーのスパイスには、鮮やかな黄色の色素のクルクミンが含まれるため、容器に色が付着しやすい。
【0006】
これらの色素は、本来、酸化及び退色しやすいものであるが、ポリプロピレン等に含まれる酸化防止剤により、成分が安定化されるため、退色が弱まり、容器に色が付着する要因になっている。
また、加熱調理する食材に油脂が含まれていたり、レトルト食品等、高温で加熱すると、容器への着色が促進される。
さらに、従来の電子レンジ調理用容器は、色素だけでなく、臭いも残りやすい、という問題がある。
【0007】
しかし、特許文献1の容器に限らず、市販されているプラスチック製の電子レンジ調理用容器は、使い捨てが前提とされているため、色や臭いが残らないように加工されているものはなかった。従って、色や臭いが付着した場合は、ごみとして処分せざるを得ず、ごみの増加につながり、環境に配慮されていない、という問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、色や臭いが付着しやすい食材の調理に使用した後でも、再利用可能な電子レンジ調理用容器を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、食材を収納する容器本体と、該容器本体を覆う蓋体、又は、前記容器本体、蓋体及び該蓋体に嵌合される圧力調整用キャップからなる電子レンジ調理用容器において、
少なくとも、前記容器本体が、内面にポリメチルペンテン製フィルムのコーティングが施されたポリプロピレンシート製基体からなることを特徴とする電子レンジ調理用容器により前記課題を解決した。
なお、電子レンジ用調理容器とは、皿状、カップ状、トレー状、どんぶり状など、大きさ、深さ及び形状を問わず、種々のものを含むものとする。
また、「フィルム」と「シート」の区別は、厚さ200ミクロンを境界とし、それ以下の薄いものを「フィルム」、それを超える厚いものを「シート」と称することにする。
請求項3のように、ポリプロピレンシートがタルクを添加されたものであると、電子レンジ調理用容器の剛性、耐熱性、成形時の寸法安定性が向上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、少なくとも、容器本体が、ポリプロピレンシート製基体の内面にポリメチルペンテン製フィルムがコーティングされたものからなるため、色や臭いが残りにくく、使用後に洗浄すれば、再利用可能である。ポリメチルペンテン製フィルムのコーティングにより、色や臭いが残りにくくなるのは、摩擦係数が小さく、表面張力が大きい、というポリメチルペンテンの性質によるものである。また、ポリメチルペンテンの耐熱温度は調理時に上昇した油分の温度よりも高く、表面が軟化しないため、油と親和しないことから、油が残りにくいという特性もある。ポリメチルペンテンのみで容器を製造すると、コストが高くなるという問題があるが、本発明では、ポリプロピレンシートに、ポリメチルペンテン製フィルムのコーティングを施すだけでよいことから、従来の電子レンジ調理用容器の、軽くて扱い易い、という利点を損なうことがなく、コストを最小限に抑えて、再利用可能な容器にすることができる。
なお、容器の外面も、内面と同様にコーティングされていれば、容器の外側にも色や臭いが付着しにくくなる。
さらに、接着剤によりポリメチルペンテン製フィルムとポリプロピレンシートが貼り合わされた、二層又は三層構造のシートを用い、圧空成形や真空成形等のサーモフォーミング法により成形するという極めて簡単な方法により、色や臭いの付着の防止を実現できるため、従来から使用されている種々の電子レンジ調理用容器に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態の縦断面図。
【図2】本発明の実施形態と共に使用される蓋体とキャップの一例を示した斜視図。
【図3】本発明の第2実施形態の縦断面図。
【図4】(a)〜(c)は、本発明の電子レンジ調理用容器の異なる形状の一例を示した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
なお、図1及び図3は、ポリプロピレン製の基体にポリメチルペンテン製フィルムのコーティングがされていることを分り易くするために、ポリメチルペンテン製フィルムの厚さを誇張して描いている。
【実施例1】
【0013】
まず、本発明の第1実施形態について、図1により説明する。
図1に示すように、容器本体1は、ポリプロピレンシート製基体11の内面にポリメチルペンテン製フィルム12のコーティングがされたものである。
なお、図1に示した容器本体1は、一例を示したものであって、図示した形状に限定されるものではない。
【0014】
容器本体1は、接着剤によりポリメチルペンテン製フィルムとポリプロピレンシートとが積層接着された、二層構造のシートを用い、圧空成形や真空成形等のサーモフォーミング法により成形することができる。
接着剤には、柔軟性、耐衝撃性等を具えたポリウレタン系接着剤を用いる。特に、フィルム及びシートを積層接着した後に成形するため、接着剤の柔軟性は必須条件となる。従って、エポキシ系接着剤のように、硬化するものは使用できない。また、食品に対する安全性も必要である。このようなポリウレタン系接着剤の具体例としては、商品名「セイカボンド」:大日精化工業株式会社製等が挙げられる。
【0015】
なお、ポリメチルペンテン製フィルム及びポリプロピレンシートの好適な厚さは、前者が10ミクロン以上〜200ミクロン以内、後者が200ミクロン超え〜800ミクロン以下である。
また、ポリプロピレンシートがタルクを添加したものであると、容器の剛性、耐熱性、成形時の寸法安定性の向上を図ることができる。特に、冷凍食品を調理する場合は、容器の温度変化が広範囲に渡るため、ポリプロピレンシートには、タルクが添加されたものを使用するのがよい。
【0016】
図2は、容器本体1と組合わせて使用される蓋体や蓋体に嵌合される圧力調整用キャップの一例である。蓋体3や圧力調整用キャップ4も、容器本体1と同様に、ポリメチルペンテン製フィルムとポリプロピレンシートとが積層接着された、二層構造のシートを成形したものが好適であるが、食材の色や臭いが最も残り易いのは容器本体1であるから、少なくとも、容器本体1が本発明を適用したものであれば、蓋体3や圧力調整用キャップ4は、他のプラスチックシートを用いたものでもよい。なお、圧力調整用キャップ4は、前記特許第3962377号公報に記載のものであるが、本発明の要旨ではないので、説明は省略する。
【0017】
容器本体1に食材が入れられて、電子レンジにかけられると、食材が加熱調理される。カレー等色が残りやすい食材や、にんにく及びごま油等の臭いが残りやすい食材を加熱調理した後でも、洗浄すれば、色や臭いが殆ど残らない。従って、他の食材を加熱調理したい場合や、余った食材を保管したい場合等に、容器本体1を再利用することができる。
【0018】
本発明の第1実施形態の容器を使用して、レトルトカレーを10回電子レンジで加熱調理をしたところ、調理の度に容器を洗浄すれば、10回使用後でも、色や臭いは殆ど残らないという結果が得られた。同様の実験を、従来のポリプロピレンシート製の容器で行ったところ、1回の使用で容器表面に着色、着臭が起こり、洗浄しても除去することができなかった。また、回数を重ねる毎に色や臭いの付着が強くなるため、繰返し使用できるものではなかった。
【実施例2】
【0019】
次に、図3を参照して、本発明の第2実施形態について、第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0020】
第1実施形態の容器本体1は、ポリプロピレンシート製容器本体の内面にのみポリメチルペンテン製フィルムのコーティングがされているが、調理後や食事後に容器を重ねた場合や食材が付いた指で容器を扱った場合等、容器の外側に食材の色や臭いが付着することがある。
そこで、ポリプロピレンシート製容器本体の外面にもポリメチルペンテン製フィルムのコーティングを施すことで、容器の内側だけではなく、外側にも色や臭いが付着しにくくすることができる。
【0021】
図3に示すように、容器本体2は、ポリプロピレンシート製基体21の内面及び外面にそれぞれ、ポリメチルペンテン製フィルム22a及び22bのコーティングが施されたものである。
容器本体2は、ポリプロピレンシートの両面にポリメチルペンテン製フィルムが貼り合わされた、三層構造のシートを用いて、成形される。
【0022】
以上説明したように、本発明の電子レンジ調理用容器によれば、食材の色や臭いが付着しにくく、繰返し使用することができるため、経済的であり、ごみの減量にもつながる。
また、本発明の電子レンジ調理用容器は、ポリプロピレンシート製基体の内面、又は、ポリプロピレンシート製容器本体の内面及び外面にポリメチルペンテン製フィルムのコーティングが施されていればよく、特に形状は問わないため、図4(a)〜(c)に示すように、カップ状、トレー状、分割室型等、加熱調理する食材に応じて、種々の形状の容器に適用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1、2: 容器本体
11、21: ポリプロピレンシート製基体
12、22a、22b:ポリメチルペンテン製フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を収納する容器本体と、該容器本体を覆う蓋体、又は、前記容器本体、蓋体及び該蓋体に嵌合される圧力調整用キャップからなる電子レンジ調理用容器において、
少なくとも、前記容器本体が、内面にポリメチルペンテン製フィルムのコーティングが施されたポリプロピレンシート製基体からなることを特徴とする、
電子レンジ調理用容器。
【請求項2】
前記ポリプロピレンシート製基体の外側に、さらにポリメチルペンテン製フィルムのコーティングが施された、請求項1の電子レンジ調理用容器。
【請求項3】
前記ポリプロピレンシートがタルクを添加されたものである、請求項1又は2の電子レンジ調理用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−110353(P2011−110353A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271955(P2009−271955)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(306012846)NEWS CHEF株式会社 (30)
【Fターム(参考)】