説明

電子体温計

【課題】 被検者の舌下を測定部位とする電子体温計において測定誤差を低減させる。
【解決手段】 温度を検出する検出部110と、検出部110より出力される検出信号に基づいて、被検者の体温を演算し表示する本体部130と、一方の端部に検出部110が接続され、他方の端部に本体部130が接続され、前記検出信号を送信するための信号線が内挿された延設部120と、を備え、延設部120には、U字形状に形成された部位122が含まれており、該U字形状の開口方向から挿入された部材によって、該検出部110が下方向から支持された場合において、電子体温計の重心が、検出部110を支持する支持位置の下方空間においてバランスされるよう、延設部120の長さ及び前記U字形状の開口幅が規定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子体温計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、被検者の体温を測定する電子体温計として、口中(舌下)での測定を前提とした電子体温計が知られている。
【0003】
舌の付け根付近には、脳と心臓とを結ぶ頚動脈が通っており、腋下等を測定部位とする場合と比較してより正確な体温が測定できるうえ、測定時に電子体温計の先端部が舌によって覆われることで擬似体腔が形成されるため、測定のばらつきも生じにくいという利点がある。
【0004】
一方で、舌下にも温度分布があり、舌の付け根付近の所定の位置からずれることなく測定を行うことは不可欠である。しかしながら、電子体温計の先端部を舌の付け根付近に確実に押し当て、体温測定が完了するまでの間その状態を維持しておくことは、被検者にとって必ずしも容易なことではない。このため、従来より、舌下での測定を前提とした電子体温計においては、その先端部を舌の付け根付近に押し当てやすくするための形状として、種々の形状が提案されてきた。
【0005】
図8は、口中での測定を前提とした電子体温計の一般的な形状を示す図である。図8において、811はステンレス製の金属キャップであり、延設部810の先端に配されている。801は本体部であり、延設部810が所定の角度をもって接続されている。かかる形状を有することにより、被検者は、金属キャップ811を舌の付け根付近に容易に押し当てることができる。
【0006】
更に、下記特許文献1には、口中(舌下)での測定を前提とした他の電子体温計が開示されている。同文献によれば、先端に金属キャップが配された延設部がU字型の形状となっており、これにより、被検者は、金属キャップを舌の付け根付近に容易に押し当てることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平1−93003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図8に示した電子体温計及び上記特許文献1に開示された電子体温計の場合、いずれも、測定中に、被検者が手で電子体温計の本体部を保持しておくことを前提としている。このため、保持した手がずれると、先端に配された金属キャップが、舌の付け根付近からずれ、測定誤差が生じてしまうという問題がある(更に、保持している手を放した場合にあっては、電子体温計の本体部の重みにより、下唇を支点としてその先端部が上方向に回動し、舌の付け根付近から大きくずれることとなり、測定誤差が更に大きくなってしまうという問題がある)。
【0009】
つまり、従来の電子体温計は、先端部を舌の付け根付近に押し当てやすい形状に構成されてはいるものの、測定が完了するまでの間、押し当てた状態を維持しやすい形状に構成されているとは言い難い。
【0010】
このようなことから、舌下での測定を前提とした電子体温計においては、測定誤差を低減させる観点から、先端に配された金属キャップが、測定が完了するまでの間、舌の付け根付近からずれることなく、押し当てられた状態を維持できる形状に構成されていることが望ましい。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、被検者の舌下を測定部位とする電子体温計において、測定誤差を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明に係る電子体温計は以下のような構成を備える。即ち、
電子体温計であって、
温度を検出する検出部と、
前記検出部より出力される検出信号に基づいて、被検者の体温を演算し表示する本体部と、
一方の端部に前記検出部が接続され、他方の端部に前記本体部が接続され、前記検出信号を送信するための信号線が内挿された延設部と、を備え、
前記延設部には、U字形状に形成された部位が含まれており、
前記U字形状の開口方向から挿入された部材によって、前記検出部が下方から支持された場合において、前記電子体温計の重心が、前記検出部を支持する支持位置の下方空間においてバランスされるよう、前記延設部の長さ及び前記U字形状の開口幅が規定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被検者の舌下を測定部位とする電子体温計において、測定誤差を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる電子体温計100の外観構成を示す図である。
【図2】電子体温計100の形状的特徴を示した図である。
【図3】電子体温計100の機能構成を示すブロック図である。
【図4】電子体温計100における体温測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】電子体温計100の測定時の様子を示した図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る電子体温計600の外観構成を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る電子体温計700の外観構成を示す図である。
【図8】従来の電子体温計の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
<1.電子体温計の外観構成>
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる電子体温計100の外観構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る電子体温計100は、温度を検出するためのサーミスタを含む温度計測部が内部に収納されたステンレス製の金属キャップ(検出部)110と、該金属キャップ110の内部に収納された温度計測部より出力された検出信号を用いて、被検者の体温を演算し表示する本体部130と、一方の端部に該金属キャップ110が接続され他方の端部に該本体部130が接続された延設部120とを備える。
【0017】
延設部120は、検出信号を本体部130に送信するための信号線が内挿されており、金属キャップ110が接続された第1の直線部121と、本体部130に接続された第2の直線部123と、第1の直線部121と第2の直線部123とを接続するU字形状のU字形状部122とから構成されている。かかる形状を有することで、電子体温計100では、安定した測定状態を維持することができる。なお、延設部120の形状についての詳細は、図2を用いて後述する。
【0018】
本体部130は、演算された被検者の体温を表示するための表示部131と、電源のON/OFFスイッチ等、各種スイッチが配列された操作部132とを備える。また、背面側には、音声を出力する不図示の音声出力部が配されており、内部には、後述する演算制御部320等の電子回路、電池(電源部)350等が収納されている。
【0019】
<2.安定した測定状態を維持するための形状>
次に、延設部120の形状について説明する。図2は、延設部120の形状的な特徴を説明するための図であり、電子体温計100を側面から見た様子を模式的に示している。
【0020】
上述したように、延設部120はU字形状部122を備えており、図2(a)に示すような開口方向を有していることから、電子体温計100は開口幅Wを有している。なお、本実施形態において、開口幅Wは、金属キャップ110からみて、U字形状部122を挟んで反対側に位置する第2の直線部123のうち、金属キャップ110からの距離が最短となる位置(対向位置と称す)と、当該金属キャップ110との間の距離を指すものとする。
【0021】
また、図2(a)に示すように、電子体温計100はU字形状部122の頂点201を有している。なお、本実施形態において、頂点201は、金属キャップ110と対向位置とを結ぶ直線の中点に垂直に交わる直線とU字形状部122との交点を指すものとする。
【0022】
なお、図2(a)に示すように、本実施形態では、金属キャップ110から本体部130までの長さLを延設部120の長さとし、頂点201から金属キャップ110までの長さL1を延設部120の金属キャップ110側の長さとし、頂点201から本体部130までの長さL2を延設部120の本体部130側の長さとする。
【0023】
以下、延設部120の形状的な特徴を示す、開口幅W、延設部120に関する長さL、L1、L2の関係について説明する。
【0024】
本実施形態に係る電子体温計100は、水平方向に突出した平板220に対してU字形状部122の開口方向から挿入させ、該平板220上の所定の位置に金属キャップ110を支点として載置させた状態において、当該電子体温計100が当該平板220から落下することなく、バランスを保った状態を維持できるように構成されている点に特徴がある。
【0025】
具体的には、図2の(b)に示すように、金属キャップ110が載置された平板220上の支持位置(つまり、金属キャップ110を上下方向に支持する平板220上の位置)を支点として、その真下に、電子体温計100の重心位置(図2(b)の例では、本体部130)がくるように、開口幅W及び延設部120に関する長さL、L1、L2が規定されている点に特徴がある。
【0026】
これにより、電子体温計100の重心位置に働く重力の方向212と、電子体温計100を支持する支持位置に働く重力の方向211とが、一直線上に重なることととなり、電子体温計100のバランスを保つことができるようになるからである。
【0027】
この結果、例えば、図2の(c−1)に示すように、平板220の下方空間において、本体部130を金属キャップ110の真下よりも紙面右側に回動させた場合であっても、図2の(c−2)に示すように、重力により、本体部130は矢印213方向に移動し、金属キャップ110の真下に戻ることとなる(図2の(b)に示す状態で安定することとなる)。
【0028】
つまり、金属キャップ110を、被検者の舌の付け根付近に押し当てた状態において、延設部120は、被検者の下唇及び下顎を迂回して口外において本体部130を支持し、かつ、被検者の舌の付け根の真下(つまり、下顎の下側の空間)においてバランスされることとなる。
【0029】
これにより、被検者は、本体部130を手で保持していなくても、被検者の舌の付け根付近に押し当てられた金属キャップ110に対して真下方向に重力がかかることとなり、金属キャップ110が舌の付け根付近からずれることがなくなる。この結果、測定が完了するまでの間、舌の付け根付近に押し当てられた状態を安定して維持させることができ、測定誤差を低減させることが可能となる。
【0030】
なお、図2の(b)に示すように、電子体温計100がバランスを保った状態において、第1の直線部121は、平板220に対して約45°の角度となっていることが望ましい。かかる角度となっていることで、U字形状部122が、被検者の上唇、下唇等と干渉することなくなるからである。ただし、第1の直線部121と平板220とのなす角度は、45°程度に限定されるものではなく、20°〜60°の範囲内であればよい。
【0031】
<3.電子体温計の機能構成>
図3は本実施形態にかかる電子体温計100の機能構成を示す内部ブロック図である。
【0032】
電子体温計100は、温度に比例した時間分のON信号(検出信号)を出力する温度計測部310と、温度計測部310より出力されたON信号に基づいて各種処理を行い、被検者の体温を演算すると共に電子体温計100全体の動作を制御する演算制御部320と、演算された被検者の体温を表示する表示部330と、音声データを出力する音声出力部340と、各部に電力を供給する電源部350とを備える。
【0033】
温度計測部310は、互いに並列に接続されたサーミスタ(測定用抵抗素子)及び基準抵抗素子(基準抵抗体)と、単一入力積分型A/D変換回路とを備え、温度に比例した時間分のON信号(温度に比例して、ON時間が変わるディジタル信号)を出力する。
【0034】
演算制御部320は、温度計測部310より出力されるディジタル信号のON時間を計測するタイマー326を備える。なお、温度計測部310は、温度センサであるサーミスタと、基準抵抗素子及び単一入力積分型A/D回路と、ICC回路とを用いて構成し、金属キャップ110内に設けることで、体温値に変換された信号がディジタル信号として、演算制御部320に送信されるようにしてもよい。このような構成とすることで、延設部120内の信号線が外乱ノイズの影響を受けることがなくなり、体温値に変換された信号を正確に演算制御部320に送信することが可能となるからである。
【0035】
また、タイマー326により計測された時間に基づいて温度データを算出するとともに、算出された温度データの時間変化に基づいて、被検体の体温を予測演算するプログラムが格納されたROM322と、算出された温度データが時系列で記憶されるRAM323と、所定の音声データが格納されたEEPROM324と、ROM322に格納されたプログラムに従って演算を行ったり音声データの出力を行う演算処理部321とを備える。
【0036】
更に、演算処理部321における演算結果を表示する表示部330を制御するための表示制御部327を備える。
【0037】
更に、演算制御部320は、上記タイマー326、表示制御部327、演算処理部321、温度計測部310を制御する制御回路325を備える。
【0038】
<4.電子体温計における体温測定処理の流れ>
次に、電子体温計100における体温測定処理の流れについて説明する。なお、ここでは、平衡温予測式の電子体温計100の体温測定処理の流れについて説明するが、本発明はこれに限定されず、実測式の電子体温計、予測/実測式の電子体温計にも適用可能である。
【0039】
図4は、電子体温計100における体温測定処理の流れを示すフローチャートである。以下、図4を用いて電子体温計100における体温測定処理の流れを説明する。
【0040】
電子体温計100の電源部350がONされると、ステップS401では、電子体温計100の初期化が行われ、温度計測部310による温度計測が開始される。演算処理部321では、所定間隔、例えば、0.5秒おきに温度データの算出が行われる。
【0041】
ステップS402では、体温測定開始条件が成立したか否かを判断する。具体的には、前回の温度計測により算出された温度データの値(つまり、0.5秒前の温度データの値)からの上昇度が、所定温度以上(例えば、1℃以上)となったか否かを判断する。
【0042】
ステップS402において上昇度が所定温度以上になったと判断した場合には、体温測定開始条件が成立したと判断し、当該温度データを算出したタイミングを、予測体温演算の基準点(t=0)として設定する。つまり、電子体温計100では、急激な温度上昇が計測されると、被検者が、所定の計測部位(舌下)に電子体温計100を装着したものとみなす。
【0043】
ステップS402において、体温測定開始条件が成立したと判断されると、ステップS403に進み、温度データの取り込みを開始する。具体的には、算出された温度データと、当該温度データを算出したタイミングとを、時系列データとしてRAM323に記憶する。
【0044】
ステップS404では、ステップS403において記憶された温度データを用いて、所定の予測式により、予測体温を演算する。
【0045】
ステップS405では、基準点(t=0)から所定時間(例えば25秒)、経過した後に、ステップS404において演算された一定区間(例えば、t=25〜30秒)における予測値が、予め設定された予測成立条件を満たすか否かを判断する。具体的には、所定の範囲(例えば、0.1℃)以内に収まっているか否かを判断する。
【0046】
ステップS405において、予測成立条件を満たすと判断された場合には、ステップS406に進み、予測体温の演算を終了する。
【0047】
ステップS407では、予測体温の演算が終了した旨の音声を出力し、表示部330に、演算された予測体温を表示する。
【0048】
一方、ステップS404において、予測成立条件を満たさないと判断された場合には、ステップS409に進む。ステップS409では、基準点(t=0)から所定時間(例えば45秒)経過したか否かを判断し、経過したと判断された場合には、予測体温の演算を強制終了する。なお、強制終了した場合には、その際に演算されていた予測体温を、表示部330に表示する(ステップS407)。
【0049】
ステップS408では、温度計測終了指示を受け付けたか否かを判断する。ステップS408において、温度計測終了指示を受け付けていないと判断された場合には、ステップS402に戻る。
【0050】
一方、ステップS408において、温度計測終了指示を受け付けたと判断された場合には、電源部をOFFにする。
【0051】
<5.電子体温計の測定例>
次に、電子体温計100による体温測定例について説明する。図5は、電子体温計100を用いて体温測定を行った様子を示す側面図である。図5に示すように、金属キャップ110を被検者の舌の付け根付近に押し当てた状態において、延設部120は、被検者の下唇と上唇の間を通って、下顎の下側の空間まで伸び、下顎の下側の空間において本体部130を支持することとなる。これにより、被検者の舌の付け根付近に押し当てられた金属キャップ110に対して、真下方向に重力がかかることとなり、金属キャップ110が舌の付け根付近からずれることがなくなる。
【0052】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る電子体温計では、延設部の一端に接続された金属キャップが、被検者の舌の付け根付近に押し当てられた状態で、当該延設部が、被検者の下唇及び下顎に接触することがないよう、延設部がU字形状部を含む構成とするとともに、更に、電子体温計全体の重心位置が被検者の舌の付け根の真下である、下顎の下側の空間にくるよう、開口幅W、延設部120に関する長さL、L1、L2を規定する構成とした。
【0053】
これにより、被検者が本体部130を保持していなくても、被検者の舌の付け根付近に押し当てられた金属キャップ110に対して、真下方向に重力がかかることとなり、金属キャップ110が舌の付け根付近からずれることがなくなる。この結果、測定が完了するまでの間、舌の付け根付近に押し当てられた状態を安定して維持することが可能となり、測定誤差を低減させることが可能となる。
【0054】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、延設部の形状を固定の形状としたが本発明はこれに限定されない。一般に、下唇から舌の付け根までの長さや、下顎の大きさ等には個人差があり、金属キャップが被検者の舌の付け根付近に押し当てられた状態で、電子体温計の重心位置が、舌の付け根付近の真下にくるようにするための延設部に関する長さL、L1、L2は、被検者によって異なってくることが考えられる。そこで、本実施形態では、延設部を伸縮可能な構成とする。
【0055】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る電子体温計600の外観構成を示す図である。図6に示すように、電子体温計600のU字形状部622の両端には、所定の長さの摺動部材601及び602が結合されており、第1の直線部621及び第2の直線部623にそれぞれ設けられた嵌合孔(不図示)内を摺動するよう構成されている。
【0056】
これにより、第1の直線部621は矢印641方向に伸縮可能となり、また、第2の直線部623は矢印642方向に伸縮可能となる。
【0057】
この結果、第1の直線部621と第2の直線部623を被検者にあった長さL、L1、L2に調整することが可能となり、被検者ごとの個人差に関わらず、上記第1の実施形態において図2を用いて説明した安定状態を実現することが可能となる。
【0058】
なお、本実施形態において説明した延設部620の伸縮機構は一例であり、本発明は上記伸縮機構に限定されるものではない。
【0059】
[第3の実施形態]
上記第2の実施形態では、下唇から舌の付け根までの長さや、顎の大きさ等に個人差があることに鑑みて、金属キャップを被検者の舌の付け根に接触させた状態で、電子体温計の重心位置が、舌の付け根付近の真下にくるようにすべく、延設部を伸縮可能な構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、延設部のU字形状部の開口幅を任意に変形できるように構成してもよい。
【0060】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る電子体温計700の外観構成を示す図である。図7に示すように、電子体温計700のU字形状部720は、任意の開口幅に変形し、かつ変形後の形状を維持できる材質により形成されているものとする。
【0061】
これにより、開口幅Wを被検者にあった幅に調整することで、被検者ごとの個人差に関わらず、上記第1の実施形態において図2を用いて説明した安定状態を実現することが可能となる。
【0062】
なお、本実施形態では、延設部のU字形状部の開口幅のみを任意に変形できる構成としたが、本発明はこれに限定されず、上記第2の実施形態と組み合わせて、延設部を伸縮させることができ、かつ開口幅を変形できる構成としてもよい。
【0063】
かかる構成により、電子体温計の延設部の形状の自由度が更に増し、被検者は、金属キャップが舌の付け根付近に押し当てられた状態を安定して維持できる延設部の形状を、容易に見つけ出すことが可能となる。
【0064】
[その他の実施形態]
上記第1乃至第3の実施形態では、第1の直線部121及び第2の直線部123を、直線形状として図示したが、本発明はこれに限定されず、曲線形状であっても曲線と直線とが混在した形状であってもよい。
【0065】
また、上記第1乃至第3の実施形態では、第1の直線部121の先端に金属キャップ110を1つ配する構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1の直線部121の先端をV字型に分岐させ、それぞれの先端に金属キャップを配したうえで、各金属キャップの内部に収納された温度計測部より出力された各検出信号を用いて、被検者の体温を演算するよう構成としてもよい。
【0066】
このように複数の検出信号を用いて体温を演算する構成とすることで、測定精度が向上するからである。また、V字型に分岐させる形状とすることで、各金属キャップが舌下の左右端に位置することとなり、より頸動脈に近い位置で測定を行うことが可能となるからである。更に、測定時に、電子体温計100の左右方向の位置決めが容易となるうえ、位置決めした後の左右方向の安定性が増すといったメリットもある。
【0067】
また、上記第1乃至第3の実施形態では、本体部130を延設部120に他端に接続する構成としたが、本発明はこれに限定されず、本体部130は、延設部120と別体にし、無線または有線により接続するように構成してもよい。これにより、測定時に被検者にかかる下向きの負荷を軽減させることが可能となる。
【0068】
また、上記第1乃至第3の実施形態では、延設部120の断面形状について特に言及しなかったが、延設部120の断面形状は、例えば、円形であっても、楕円形であってもよい。特に、延設部120のうち測定時に被検者の下唇に接触する部分については、より滑らかな形状であることが望ましい。
【0069】
更に、上記第1乃至第3の実施形態では、延設部120の材質について特に言及しなかったが、当該材質は、皮膚や粘膜に接触しても痛みを伴うことがなく、かつ、歯にあたっても破断することのない、柔軟性と強度とを兼ね備えたもの(例えば、ゴムエラストマー)であることが望ましい。
【符号の説明】
【0070】
100・・・第1の実施形態に係る電子体温計、110・・・金属キャップ、120・・・延設部、121・・・第1の直線部、122・・・U字形状部、123・・・第2の直線部、130・・・本体部、131・・・表示部、132・・・操作部、600・・・第2の実施形態に係る電子体温計、601・・・摺動部材、602・・・摺動部材、620・・・延設部、621・・・第1の直線部、622・・・U字形状部、623・・・第2の直線部、700・・・第3の実施形態に係る電子体温計、720・・・延設部、722・・・U字形状部、800・・・従来の電子体温計、801・・・本体部、810・・・延設部、811・・・金属キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子体温計であって、
温度を検出する検出部と、
前記検出部より出力される検出信号に基づいて、被検者の体温を演算し表示する本体部と、
一方の端部に前記検出部が接続され、他方の端部に前記本体部が接続され、前記検出信号を送信するための信号線が内挿された延設部と、を備え、
前記延設部には、U字形状に形成された部位が含まれており、
前記U字形状の開口方向から挿入された部材によって、前記検出部が下方から支持された場合において、前記電子体温計の重心が、前記検出部を支持する支持位置の下方空間においてバランスされるよう、前記延設部の長さ及び前記U字形状の開口幅が規定されていることを特徴とする電子体温計。
【請求項2】
前記延設部は、前記U字形状に形成された部位に対して前記検出部側に配された部位が、伸縮可能に構成されており、かつ、前記U字形状に形成された部位に対して前記本体部側に配された部位が、伸縮可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子体温計。
【請求項3】
前記延設部は、前記U字形状の開口幅を変形可能であり、変形された後の開口幅を維持できるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子体温計。
【請求項4】
前記U字形状の開口方向から挿入された部材によって、前記検出部が下方向から支持された場合において、前記U字形状に形成された部位に対して前記検出部側に配された部位が、前記部材に対して、20°〜60°の角度となるように、前記延設部の長さ及び前記U字形状の開口幅が規定されていることを特徴とする請求項1に記載の電子体温計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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