説明

電子内視鏡システム

【課題】照射光を切替えて複数種の画像を表示する電子内視鏡システムにおいて、映像に現れない、切替えられた照射光の種類を容易に把握することができる電子内視鏡システムを提供する。
【解決手段】カラーフィルタ35によって照明光の種類が切替えられる電子内視鏡システム10において、電子内視鏡20で得られた映像信号に対して画像処理回路で所定の画像処理を施して映像41を得て、モニタ(表示手段)40に表示する。映像41上に、照射光の種類を通知する通知画像42を描画する。通知画像42は、描画回路33によって映像41上に重畳描画される。通知画像42を見ることにより、切替えられた照射光の種類を容易に判別できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子内視鏡システムに関し、特にカラーフィルタにより照射光を切替えて画像を表示する電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡システムにおいて、被写体に対してカラーフィルタ等を用いて照射光を切替え、異なる照射光を照射し、狭帯域画像、自家蛍光画像、通常画像等の複数種の画像を表示装置に表示する電子内視鏡システムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−50106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、表示装置に表示されない画像情報については、照射光の影響を把握しにくい。例えば、出血を見逃しやすい照射光が照射されている場合、照射光の影響により出血が発生するまで出血に気付かず、出血の発生を見逃す可能性がある。また、ロータリーシャッタでカラーフィルタを回すことにより、照射光を切替え、かつ複数の映像を同時に観察する場合や、画像処理を加えている場合には、選択されて照射されている照射光がどのような照射光なのか、把握しにくくなる場合がある。
【0005】
したがって、本発明は、照射光を切替えて複数種の画像を表示する電子内視鏡システムにおいて、映像に現れない、実際に照射されている照射光の種類を容易に把握することができる電子内視鏡システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明に係る電子内視鏡システムは、照射された照射光により映像信号を得る電子内視鏡と、映像信号に対して所定の画像処理を施して映像を得るプロセッサと、映像を表示する表示装置とを備え、プロセッサは、照射光を照射する光源と、照射光を切換える切替手段と、映像信号に対して所定の画像処理を施して映像を得る画像処理回路と、映像上に照射光の色を通知する通知画像を描画するための描画回路とを備えることを特徴とする。
【0007】
映像上に表示された通知画像の色を確認することにより、照射されている照射光の種類が視覚的に容易に把握される。
【0008】
通知画像は、照射光の色を表すことが好ましい。その時点で実際に照射されている照射光を表すことにより、容易に照射光の種類が視覚的に容易に把握される。
【0009】
通知画像は、照射光の色で塗りつぶし画像、又は照射光の色を表す文字であることが好ましい。照射光の色で塗りつぶし画像や照射光の色を表す文字は、容易に視認される。
【0010】
通知画像は、照射光の照射により得られる映像のサンプル画像であってもよい。照射光の影響を端的に示すサンプル画像を見ることにより、照射されている照射光の種類が視覚的に容易に把握される。
【0011】
切替手段は、カラーフィルタであることが好ましい。カラーフィルタにより、容易に照射光が切替えられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、照射光を切替えて複数種の画像を表示する電子内視鏡システムにおいて、映像に現れない、切替えられた照射光の種類を容易に把握することができる電子内視鏡システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る電子内視鏡システムの内部構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】本発明における映像上に通知画像を表示する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、照射光の切替をカラーフィルタによって行う例を示す。
【0015】
図1は、本発明の実施形態を適用した電子内視鏡システムの内部構成を概略的に示すブロック図である。電子内視鏡システム10は、被写体の撮影に用いられる電子内視鏡20と、電子内視鏡20から送られてくる映像信号を処理するプロセッサ30とを備える。電子内視鏡20は、プロセッサ30に着脱自在に取付けられ、使用される。プロセッサ30には、被写体画像等を表示するモニタ(表示装置)40と、使用者が指示信号等を入力するためのキーボード50とがそれぞれ接続される。
【0016】
プロセッサ30は、プロセッサ30全体を制御するCPU31と、映像信号を処理する画像処理回路32と、モニタ40に表示される映像41上に、現在照射している照射光の種類を通知する通知画像42を描画する描画回路33と、白色光源34と、カラーフィルタ35と、カラーフィルタ35を切換えるカラーフィルタ切替モータ36と、カラーフィルタ35を制御するカラーフィルタ制御DSP37を備える。
【0017】
白色光源34は、CPU31の制御により照明光を出射する。白色光源34から出射された白色光は、カラーフィルタ35で調整されて、特定の光を被写体に対して照射する。照明光の種類として、例えば、通常白色光、特定の分光成分のみを抽出した狭帯域光、自家蛍光画像をえるための特殊光、特定の分光成分を増減させた特殊光があげられる。いずれの照明光を適用するかは、使用者のキーボード50の操作により選択され、内視鏡観察の際に、照射光を切替えながら行うことができる。カラーフィルタ35は交換可能であり、交換や照射光の切替は、カラーフィルタ切替モータ36の駆動によって行われる。カラーフィルタ切替モータ36は、カラーフィルタ制御DSP37からの信号によって制御され、カラーフィルタ制御DSP37はCPU31によって制御される。
【0018】
電子内視鏡20は、対物レンズ(図示せず)と撮像素子22を備え、プロセッサ30のCPU31により制御される。白色光源34から供給された照明光は、電子内視鏡20の挿入管(図示せず)の先端まで延設されるライトガイド21によって挿入管の先端まで伝達される。ライトガイド21により伝達された照明光は、挿入管の先端から被写体に向かって照射される。照明光が照射された被写体の光学像が対物レンズを介して、撮像素子22の受光面に到達する。撮像素子22は、受光面に到達した光学像に相当する映像信号を生成する。撮像素子22は、例えばCCDやCMOS撮像素子である。このように、電子内視鏡20の撮像により生成された映像信号は、所定の処理を経てプロセッサ30に送信される。
【0019】
プロセッサ30に送信された映像信号は、画像処理回路32に出力される。映像信号は、画像処理回路32において所定の画像処理が施される。画像処理には、例えば、輪郭強調、ノイズリダクション、ホワイトバランス調整、ガンマ補正、エンハンス処理、擬似色素散布処理、特定周波数強調、色変換等があげられる。画像処理回路32でどのような画像処理を適用するかは、使用者のキーボード50操作により選択される。キーボード50の所定キーから所定の信号が入力されると、入力された信号に応じたオーダー信号がキーボード50からCPU31に送信される。CPU31は、受信したオーダー信号に応じて各部位の動作を制御する。
【0020】
描画回路33は、モニタ40に表示される映像41上に、現在照射している照射光の種類を視覚的に通知する通知画像42を描画するための回路である。描画回路33において、画像処理回路32によって得られた映像に対して通知画像42の画像情報を重畳し、モニタ40に出力する。通知画像42は、CPU31が送信する描画データを基に、映像41の任意の座標に重畳描画される。その結果、モニタ40には、映像41の右下隅に、通知画像42が重畳描画された被写体の動画像が、リアルタイムで表示される。なお、通知画像42の位置は、映像41の他の隅、映像の外であるマスク上等の、観察の支障にならない領域であれば、どの位置に設けても構わない。
【0021】
照射光の種類を通知する通知画像42の具体例を説明する。通知画像42は、照射光の種類が特定できる画像であればどのような画像を用いても構わない。例えば、照射光の色を塗りつぶして示す塗りつぶし画像、照射光の影響を端的に示すサンプル画像等があげられる。図1に示す本実施形態では、映像41の右下隅において、照射光の色で塗りつぶした丸で表している。通知画像42を、照射光の色を塗りつぶして示す場合には、例えば、通常光なら白丸、自家蛍光用青色光ならば青丸等で表示する。なお、通知画像42の表示は、内視鏡観察の開始からだけでなく、観察の任意の時点から行っても構わない。
【0022】
その他、通知画像42として、照射光の色を文字色とした文字情報を用いても構わない。例えば、通常白色光ならば白文字で「Normal」を表示し、自家蛍光用青色光ならば青文字で「SAFE」と表示する。その他、通常光で得られるサンプル画像と、現在の照射光で得られるサンプル画像とを同時描画しても構わない。なお、本実施形態では、どのような照射光を照射しているかの情報が即座に判別できれば良く、また、照射光による影響は被写体によって異なるため、現在照射している照射光の色を塗りつぶして丸で表示する方法が簡便で視覚的に判断しやすい。
【0023】
図2に、本発明の実施形態における映像41上に通知画像42を表示する手順を示す。このフローチャートでは、カラーフィルタ制御DSP37の制御によりカラーフィルタ切替モータ36が白色光源34前方に配置したカラーフィルタ35を切換え、被写体に照射する照射光を切替えた際の通知画像42の表示について示している。
【0024】
ステップS101では、キーボード50の入力操作により、どの照射光を照射するかが選択され、入力に応じたオーダー信号がキーボード50からCPU31に送信される。CPU31は、受信したオーダー信号に応じてカラーフィルタ制御DSP37の動作を制御する。カラーフィルタ制御DSP37の制御により制御されたカラーフィルタ切替モータ36によってカラーフィルタ35が切換えられ、照射光が切換えられる。
【0025】
ステップS102では、照射光情報の表示設定が有効か否かが判断される。ステップS102において、照射光情報の表示設定が有効であると判断された場合、ステップS103に進む。照射光情報の表示設定が有効ではないと判断された場合には、操作が終了する。ステップS103では、前述したキーボード50の入力操作により選択された照射光の情報に応じて描画回路33が制御され、照射光に応じた通知画像42を画像処理により得られた映像上に重畳描画する。
【0026】
本発明の実施形態に係る電子内視鏡システム10によれば、実際に照射されている照射光の色で表された通知画像42を見ることにより、映像41上には現れない、現在照射されている照射光の種類を容易に把握することができる。また、本実施形態では、通知画像42を実際に照射している照射光の色を示す塗りつぶし画像で示しているため、容易に視認可能である。このため、現在照射されている照射光だけではなく、照射光の切替えを、即座に、また容易に判別することができ、操作ミスの見逃しを防ぐことが可能となる。また、映像に画像処理を施している場合であっても、照射光を視覚的に把握することができる。
【0027】
なお、本実施形態では、映像が1つである例を示したが、複数の異なる映像を表示装置に同時に表示して観察する場合にも適用可能である。また、照射光の切替えをカラーフィルタにより行ったが、光源そのものを交換する場合や、偏光板等を用いる場合においても適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
10 電子内視鏡システム
20 電子内視鏡
21 ライトガイド
22 撮像素子
30 プロセッサ
31 CPU
32 画像処理回路
33 描画回路
34 白色光源
35 カラーフィルタ(切替手段)
36 カラーフィルタ切替モータ(切替手段)
37 カラーフィルタ制御DSP(切替手段)
40 モニタ(表示装置)
41 映像画面(映像)
42 通知画像
50 キーボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射された照射光により映像信号を得る電子内視鏡と、前記映像信号に対して所定の画像処理を施して映像を得るプロセッサと、前記映像を表示する表示装置とを備える電子内視鏡システムであって、
前記プロセッサは、照射光を照射する光源と、
前記照射光を切換える切替手段と、
前記映像信号に対して所定の画像処理を施して前記映像を得る画像処理回路と、
前記映像上に前記照射光の色を通知する通知画像を描画するための描画回路とを備える
ことを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項2】
前記通知画像は、前記照射光の色を表すことを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項3】
前記通知画像は、前記照射光の色で塗りつぶし画像、又は前記照射光の色を表す文字であることを特徴とする請求項2に記載の電子内視鏡システム。
【請求項4】
前記通知画像は、前記照射光の照射により得られる前記映像のサンプル画像であることを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項5】
前記切替手段は、カラーフィルタであることを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−249689(P2012−249689A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122566(P2011−122566)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】