説明

電子写真感光体、および画像形成装置

【課題】電荷輸送物質が低含有量であっても、電気特性や画像特性に優れ、環境の変動による特性の変化が小さく、劣化の少ない高耐久性を有する電子写真感光体、および該感光体を有する画像形成装置を提供する。
【解決手段】導電性支持体上に、電荷輸送層および電荷発生層を有する電子写真感光体において、該電荷輸送層が、下記一般式(1)で表される電荷輸送物質を含有し、該電荷発生層が、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°、24.1°および27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンであることを特徴とする電子写真感光体。


(一般式(1)において、Arは置換基を有してもよいアリーレン基、Ar〜Arは置換基を有してもよいアリール基を表し、nは3〜6の整数を表す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性支持体上に、電荷輸送層および電荷発生層を有する、電子写真感光体に関する。さらには、電気特性、安定性、耐久性等の良好な電子写真感光体、および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術は、即時性、高品質の画像が得られること等から、近年では複写機の分野にとどまらず、各種プリンター、印刷機の分野でも広く使われ応用されてきている。
【0003】
電子写真技術の中核となる感光体については、その光導電材料として従来からのセレン、ヒ素−セレン合金、硫化カドミウム、酸化亜鉛といった無機系の光導電体から、最近では、無公害で成膜が容易、製造が容易である等の利点を有する有機系の光導電材料を使用した感光体の使用が主流となっている。
【0004】
有機感光体の層構成としては、電荷発生物質をバインダー樹脂中に分散させたいわゆる単層型感光体、電荷発生層および電荷移動層を積層した積層型感光体が知られている。積層型感光体は、効率の高い電荷発生物質、および電荷移動物質を別々の層に分けて、最適なものを組み合わせることにより高感度かつ安定な感光体が得られること、材料選択範囲が広く特性の調整が容易なことから多く使用されている。単層型感光体は、電気特性面では積層型感光体にやや劣り、材料選択性も狭いことから、限定的に使用されている。
【0005】
また、電子写真感光体は、電子写真プロセスすなわち帯電、露光、現像、転写、クリーニング、除電等のサイクルで繰り返し使用されるため、その間様々なストレスを受け劣化する。これらの劣化のうち、化学的劣化としては、例えば帯電器として普通用いられるコロナ帯電器から発生する強酸化性のオゾンやNOxが感光層にダメ−ジを与えることがあげられ、繰り返し使用する場合に、帯電性の低下、残留電位の上昇等の電気的安定性の悪化、およびそれに伴う画像不良が起きることがある。これらは、感光層中に多く含まれる電荷輸送物質の化学的劣化に由来するところが大きい。
【0006】
さらには、近年の電子写真プロセスの高速化に伴い、高感度化、高速応答化が必須となっている。このうち、高感度化のためには、電荷発生物質の最適化だけでなく、それとのマッチングの良好な電荷輸送物質の開発が必要であり、高速応答化のためには、高移動度かつ露光時に十分な低残留電位を示す電荷輸送物質の開発が必要である。バインダー樹脂に対する電荷輸送物質の含有量を増やせば、高感度化、高速応答化が可能となることが多いが、電荷輸送物質の含有量がバインダー樹脂に対して多い感光層は、感光層の機械的耐久性が劣ることが多く、繰り返し画像を形成する、いわゆる耐刷性が悪化することになり、問題がある。従って、感光層中に電荷輸送物質の含有量が少ない電子写真感光体であっても、高感度化、高速応答化が可能であるような、電荷輸送物質が望まれている。
【0007】
電荷輸送物質の含有量が少ない感光層を有する感光体では、リークの問題は改良されているが、環境(温度、湿度等)変動により大きく電子写真感光体の特性が変動し、画像欠陥が生じることが指摘されていた(例えば、特許文献1参照)。また、従来知られた電荷輸送物質では、オゾンやNOx等に代表される酸化性ガスに対する暴露により劣化することが知られており、繰返し使用時、特に、電子写真感光体を使用する環境を変化させた場合において、耐久性が悪いことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−056595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
すなわち、複写機、プリンター、普通紙ファックス等に用いられる感光体において、前記の問題点の改良が広く望まれている。本発明は、それらの課題を鑑みてなされたものであり、すなわち、本発明は、電荷輸送物質が低含有量であっても、電気特性や画像特性に優れ、しかも、環境の変動による特性の変化が小さく、劣化の少ない高耐久性を有する電子写真感光体、および該感光体を有する画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記の要求を満たす電荷輸送物質について鋭意検討した結果、特定の構造を有する電荷輸送物質を、特定量使用することにより、電子写真感光体の電気特性、特性の安定性、および耐久性を改良可能であることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、導電性支持体上に、電荷輸送層および電荷発生層を有する電子写真感光体において、該電荷輸送層が、下記一般式(1)で表される電荷輸送物質と、バインダー樹脂とを含有し、且つ該電荷輸送物質のバインダー樹脂に対する質量比率(電荷輸送物質/バインダー樹脂)が、5/100以上45/100以下であることを特徴とする電子写真感光体に存する。
【化1】

(一般式(1)において、Arは置換基を有してもよいアリーレン基、Ar〜Arは置換基を有してもよいアリール基を表し、nは3〜6の整数を表す)
【0012】
また、本発明の要旨は、導電性支持体上に、電荷輸送層および電荷発生層を有する電子写真感光体において、該電荷輸送層が、上記一般式(1)で表される電荷輸送物質を含有し、且つ複数の電荷輸送物質とバインダー樹脂を含有するものであって、該複数の電荷輸送物質の総質量の、バインダー樹脂に対する質量比率(電荷輸送物質/バインダー樹脂)が、25/100以上55/100以下であることを特徴とする電子写真感光体に存する。
【0013】
また、本発明の要旨は、導電性支持体上に、電荷輸送層および電荷発生層を有する電子写真感光体において、該電荷輸送層が、上記一般式(1)で表される電荷輸送物質を含有し、該電荷発生層が、オキシチタニウムフタロシアニンを含有し、且つ該オキシチタニウムフタロシアニンがフタロシアニン結晶前駆体を化学的処理後、有機溶媒に接触して得られるものであって、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°、24.1°および27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンであることを特徴とする電子写真感光体に存する。
【0014】
また、本発明の要旨は、導電性支持体上に、電荷輸送層および電荷発生層を有する電子写真感光体において、該電荷輸送層が、上記一般式(1)で表される電荷輸送物質と、ポリアリレート樹脂とを含有することを特徴とする電子写真感光体。
【0015】
また、本発明の要旨は、導電性支持体上に、電荷輸送層および電荷発生層を有する電子写真感光体において、該電荷輸送層が、上記一般式(1)で表される電荷輸送物質と、粘度平均分子量10000以上70000以下のバインダー樹脂とを含有することを特徴とする電子写真感光体に存する。
【0016】
また、本発明の要旨は、導電性支持体上に、上記一般式(1)で表される電荷輸送物質を含有する電荷輸送層、および電荷発生層を有する電子写真感光体を搭載し、該電子写真感光体を波長380〜500nmの単色光により露光して画像を形成することを特徴とする画像形成装置に存する。
【0017】
また、本発明の要旨は、導電性支持体上に、上記一般式(1)で表される電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を最外層として有する電子写真感光体を搭載し、該電子写真感光体を該電子写真感光体に接触配置する帯電器により帯電して画像を形成することを特徴とする画像形成装置に存する。
【0018】
また、本発明の要旨は、上記の電子写真感光体を搭載したことを特徴とする画像形成装置に存する。
【0019】
また、本発明の要旨は、上記の電子写真感光体を搭載し、該電子写真感光体を波長380〜500nmの単色光により露光して画像を形成することを特徴とする画像形成装置に存する。
なお、本発明において、重量と質量は同義である。
【発明の効果】
【0020】
本発明における特定の電荷輸送物質を用いることにより、電荷輸送層中のバインダー樹脂と電荷輸送物質との相溶性に優れるため感光層の形成が容易になり、電子写真感光体として、電気特性に優れ、特性の安定性および耐久性が良好で、使用環境の変動、特に、高温、高湿度下での繰り返し特性、および、耐刷性の優れた電子写真感光体を提供することができる。また、当該感光体を用いることにより、高画質で、トナー消費量の少ない、プリンター、ファクシミリ、複写機等の電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す図である。
【図2】製造例10で得られたオキシチタニウムフタロシアニン組成物「CG6」のCuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルである。
【図3】製造例10で得られたオキシチタニウムフタロシアニン組成物「CG6」のマススペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施形態の代表例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変形して実施することができる。
【0023】
本発明に係る電子写真感光体の有する電荷輸送層は、下記一般式(1)で表される電荷輸送物質を含有する。
【化2】

(一般式(1)において、Arは置換基を有してもよいアリーレン基、Ar〜Arは置換基を有してもよいアリール基を表し、nは3〜6の整数を表す)
【0024】
Arで表されるアリーレン基としては、芳香族性を有する基であれば如何なる基であってもよく、例えば、最多数の非集積二重結合を含む、いわゆる芳香族環を有する基があげられる。通常、Arは、芳香族環を1〜10有する基であるが、芳香族環は3以下であることが好ましい。Arは、芳香族炭化水素基であっても芳香族複素環基であっても構わない。芳香族炭化水素基としては、フェニレン、ナフチレン、アントリレン等の芳香族環からなる基であっても、インデニレンのようなインデンの二価基、フルオレンの二価基、テトラリンの二価基等の芳香族環と他の炭化水素環との縮合環からなる基であっても構わない。また、芳香族複素環基としては、フランの二価基、チオフェンの二価基、ピロールの二価基等の単環式芳香族複素環基であっても、キノリンの二価基、クロメンの二価基、カルバゾールの二価基等の複合芳香族複素環基であっても構わない。
【0025】
より具体的には、p−フェニレン、m−フェニレン、1,3−ナフチレン、1,4−ナフチレン等があげられるが、分子サイズをなるべくコンパクトにし、分子内立体反発を少なくする観点から、p−フェニレンまたはm−フェニレンが好ましい。電気特性向上の為には、p−フェニレンが好ましく、溶解性に問題がある場合は、m−フェニレンが好ましい。
【0026】
Arが有してもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;アリル基等のアルケニル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;フェニル基等のアリール基等があげられる。これらの置換基は、電子供与性効果により電荷移動度を増大させる効果はあるものの、あまり置換基サイズが大きくなると、分子内の共役面の歪み、分子間立体反発によってかえって電荷移動度を減少させるため、好ましくは炭素原子数10以下、特には炭素原子数3以下のものが好ましく、中でもメチル基またはメトキシ基が好ましい。
【0027】
1つのArが有する置換基の数も、多すぎると同様な理由で電荷移動度を下げるので、好ましくは3個以下、さらに好ましくは2個以下である。3〜6個のArが全体として有する置換基の総数も、多すぎると同様な理由で電荷移動度を下げるので、好ましくは8個以下、さらに好ましくは6個以下である。特に溶解性、電気特性に問題がない場合は、無置換が好ましい。また、これら置換基は、連結基により、または直接結合して、分子内で環を形成してもよい。
【0028】
また、一般式(1)で表される電荷輸送物質は、同じ分子内に3〜6個のArを有するが、それぞれのArは互いに構造が異なっていてもよい。
【0029】
一般式(1)中、nは3〜6の整数を表すが、nが5または6の場合、同じ分子内のArのうち少なくとも1つがm−フェニレン基を含有すること、または、Arが隣同士で環を形成して縮合多環を形成することが好ましい。nは、製造の容易さという点で、3または4が好ましい。nが3の場合には、Ar全てがp−フェニレン基であることが、特に好ましい。
【0030】
一般式(1)中、Ar〜Arは、アリール基を表すが、芳香族性を有する基であれば如何なる基であってもよく、例えば、最多数の非集積二重結合を含む、いわゆる芳香族環を有する基があげられる。通常、Ar〜Arは、芳香族環を1〜10有する基であるが、芳香族環は3以下であることが好ましい。Ar〜Arは、芳香族炭化水素基であっても芳香族複素環基であっても構わない。芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル、アントリル等の芳香族環からなる基であっても、インデニルのようなインデンの一価基、フルオレニルのようなフルオレンの一価基、テトラリンの一価基等の芳香族環と他の炭化水素環との縮合環からなる基であっても構わない。また、芳香族複素環基としては、フランの一価基、チオフェンの一価基、ピロールの一価基等の単環式芳香族複素環基であっても、キノリンの一価基、クロメンの一価基、カルバゾールの一価基等の複合芳香族複素環基であっても構わない。
【0031】
Ar〜Arの具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アセナフチル基、インデニル基、フルオレニル基、ピレニル基、チエニル基等があげられる。このうち、分子内共役拡張、分子の永久双極子モーメント低減の観点からフェニル基、ナフチル基またはチエニル基が好ましい。
【0032】
Ar〜Arが有してもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;アリル基等のアルケニル基;ベンジル基等のアラルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基等があげられる。これらの置換基は、分子内電荷バランスを改善することにより電荷移動度を増大させる効果はあるものの、あまり置換基サイズが大きくなると、分子内の共役面の歪み、分子間立体反発によって、かえって電荷移動度を減少させるため、好ましくは炭素原子数3以下、特には炭素原子数2以下のものが好ましく、中でもメチル基またはメトキシ基が好ましい。
【0033】
置換基の数も、多すぎると同様な理由で電荷移動度を下げるので、好ましくは3個以下、さらに好ましくは2個以下である。特に溶解性、電気特性に問題がない場合は、無置換が好ましい。また、これら置換基は、連結基、または直接結合して、分子内で、環を形成してもよい。また、Ar〜Arのうち、少なくとも1つ以上は、一個以上の置換基を有することが好ましい。また、これら置換基は、連結基により、または直接結合して、分子内で環を形成してもよい。
【0034】
一般式(1)に示す電荷輸送材料の一般的な製造法としては特に限定はないが、好ましくは、二級アミンとハロゲン化アリール化合物をウルマン反応等の公知の反応を利用することによって得ることができる。
【0035】
以下に本発明で使用される一般式(1)の具体例を示す。
【化3】

【0036】
【化4】

【0037】
【化5】

【0038】
【化6】

【0039】
【化7】

【0040】
本発明に係る電子写真感光体の電荷輸送層は、バインダー樹脂を含有するが、バインダー樹脂としては、例えば、ブタジエン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体および共重合体;ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミド、ポリウレタン、セルロースエーテル、フェノキシ樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等があげられる。このうちポリカーボネート、ポリアリレートが特に好ましい。なお、これらは適当な硬化剤等を用いて熱、光等により架橋させて用いることもできる。これらのバインダー樹脂は2種類以上をブレンドして用いることもできる。バインダー樹脂に関しては後で詳述する。
【0041】
バインダー樹脂と一般式(1)で表される電荷輸送物質の割合は、バインダー樹脂100質量部に対し5質量部以上であり、さらに残留電位低減の観点から10質量部以上が好ましく、さらに繰り返し使用した際の安定性や電荷移動度の観点から、20質量部以上がより好ましい。また一方で、感光層の熱安定性の観点から、45質量部以下であり、さらに電荷輸送材料とバインダー樹脂の相溶性の観点から、好ましくは40質量部以下、さらに耐刷性の観点から、35質量部以下がより好ましく、耐傷性の観点からは、30質量部以下が最も好ましい。
【0042】
電荷輸送層には、一般式(1)で表される電荷輸送物質が複数種含有されていても構わない。その場合には、上記「一般式(1)で表される電荷輸送物質の割合」とは、電荷輸送層中の、全ての一般式(1)で表される電荷輸送物質の総質量の割合をいうものとする。
【0043】
また、一般式(1)で表される電荷輸送物質以外の他の電荷輸送物質との併用は、良好な画像形成の目的において好ましい。電荷輸送層中に、複数の電荷輸送物質が含まれる場合、電荷輸送層に含まれる総電荷輸送物質の質量は、バインダー樹脂100質量部に対し25質量部以上、さらに残留電位低減の観点から30質量部以上が好ましく、さらに繰り返し使用した際の安定性、電荷移動度の観点から、40質量部以上がより好ましい。また、一方で感光層の熱安定性の観点から、通常は55質量部以下、さらに電荷輸送材料とバインダー樹脂の相溶性の観点から好ましくは50質量部以下、さらに耐刷性の観点から35質量部以下がより好ましく、耐傷性の観点からは、45質量部以下が最も好ましい。
【0044】
ここで、上記「複数の電荷輸送物質」とは、一般式(1)で表される電荷輸送物質同士が複数であっても、一般式(1)で表される電荷輸送物質以外の「他の電荷輸送物質」との併用で「複数」であっても構わない。
【0045】
ここで、一般式(1)で表される電荷輸送物質と併用されうる「他の電荷輸送物質」としては、電荷輸送能を有するものであれば、どのようなものでも構わないが、好ましい例としては、以下があげられる。
【0046】
【化8】

【0047】
【化9】

【0048】
上記に例示した「他の電荷輸送物質」の全ての構造式中、Rはそれぞれ独立して水素原子または置換基を示す。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基等が好ましい。特に好ましくはメチル基である。
【0049】
<導電性支持体>
導電性支持体としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫合金)等の導電性材料をその表面に蒸着または塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状等のものが用いられる。金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性等の制御のためや欠陥被覆のため、適当な抵抗値を持つ導電性材料を塗布したものでもよい。
【0050】
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化処理を施してから用いてもよい。陽極酸化処理を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。支持体表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理を施したりすることにより、粗面化されていてもよい。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものでもよい。また、安価化のためには、切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。
【0051】
導電性支持体と感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けてもよい。下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。
【0052】
下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子があげられる。一種類の粒子のみを用いてもよいし複数の種類の粒子を混合して用いてもよい。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタンおよび酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、またはステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていてもよい。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。複数の結晶状態のものが含まれていてもよい。
【0053】
また、金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性および液の安定性の面から、SEM写真により観察される任意の10個の粒子の最大径の平均値を平均一次粒径とした場合に、その平均一次粒径は、10nm以上100nm以下が好ましく、特に好ましくは、10nm以上50nm以下である。
【0054】
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、フェノキシ、エポキシ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が単独あるいは硬化剤とともに硬化した形で使用できるが、中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は良好な分散性、塗布性を有するため好ましい。
【0055】
下引き層に用いられるバインダー樹脂に対する無機粒子の配合比は任意に選べるが、バインダー樹脂全体に対して、10質量%から500質量%の範囲で使用することが、分散液の安定性、塗布性の面で好ましい。
【0056】
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体特性および塗布性から、0.1μmから20μmの範囲が好ましい。また下引き層には、公知の酸化防止剤等が含有されていてもよい。
【0057】
<感光層>
本発明に係る電子写真感光体が有する感光層の構成は、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を有する、公知の電子写真感光体に適用可能な如何なる構成も採用することが可能であるが、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を積層してなる複数の層からなる感光層を有する、いわゆる積層型感光体等があげられる。より好ましくは、導電性支持体上に電荷発生層と電荷輸送層をこの順に積層した順積層型感光体が好ましい。
【0058】
<電荷発生物質>
電荷発生物質としては、例えば、セレンおよびその合金、硫化カドミウム、その他無機系光導電材料;フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等の有機顔料等、各種光導電材料が使用でき、特に有機顔料、さらには、フタロシアニン顔料、アゾ顔料が好ましい。
【0059】
これらの光導電材料の微粒子を、例えば、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル等の各種バインダー樹脂で結着した形で使用される。積層型感光体の光導電材料の場合の使用比率は、バインダー樹脂100質量部に対して、30質量部から500質量部の範囲より使用され、その膜厚は、通常0.1μmから1μmの範囲であり、好ましくは0.15μmから0.6μmの範囲が好適である。
【0060】
[フタロシアニン化合物]
電荷発生物質としてフタロシアニン化合物を用いる場合、具体的には、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、またはその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等の配位したフタロシアニン類の各種結晶型が使用される。特に、感度の高い結晶型であるX型、τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のオキシチタニウムフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型、I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体が好適である。
【0061】
これらのフタロシアニン化合物のうち、A型(β型)、B型(α型)、および、CuKα特性X線のブラッグ角(2θ±0.2゜)が、27.3゜に明瞭なピークを示すことを特徴とするD型(Y型)オキシチタニウムフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましい。中でも、CuKα特性X線に対するX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2゜)が、9.5°、24.1°、27.3°にピークを有するD型のオキシチタニウムフタロシアニンが、種々の電荷輸送物質との組み合わせ上の相性に優れているという点でより好ましい。
【0062】
この中でも、本発明においては、D型オキシチタニウムフタロシアニンが、好ましく、特に硫酸による酸ペースト処理をへて、作製されたものが好ましい。D型オキシチタニウムフタロシアニン中に含有されるクロロオキシチタニウムフタロシアニンは少ないものが好ましく、特開2001−115054号公報に記載の手法(マススペクトル法)の強度比において、クロロオキシチタニウムフタロシアニンが、オキシチタニウムフタロシアニンに対する強度比で、0.005以下にあるものが、好ましい。また、非ハロゲン化合物を使用して、合成された原料を使用することが好ましい。
【0063】
フタロシアニン化合物は、単一の化合物のもののみを用いてもよいし、いくつかの化合物の混合あるいは混晶状態のものであっても構わない。ここでのフタロシアニン化合物、および結晶状態における混合状態としては、それぞれの構成要素を単独で製造した後に混合して用いてもよいし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程中において、混合状態を生じせしめたものでもよい。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。混晶状態を生じさせるためには、特開平10−48859号公報に記載の方法のように、2種類の結晶を混合後に機械的に摩砕、不定形化した後に、溶剤処理によって特定の結晶状態に変換する方法があげられる。
【0064】
[[化学的処理後、有機溶媒に接触して得られるオキシチタニウムフタロシアニン]]
本発明に係る電子写真感光体の電荷発生層は、特定のオキシチタニウムフタロシアニンを含有することが好ましい。当該オキシチタニウムフタロシアニンは、フタロシアニン前駆体を、化学的処理後に有機溶媒に接触して得られる。以下、かかるオキシチタニウムフタロシアニンを「特定オキシチタニウムフタロシアニン」という。
【0065】
本発明において化学的処理とは、アモルファスオキシチタニウムフタロシアニン、低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンを調製する段階で用いられる処理である。化学的処理とは、単に物理的な力(例えば、機械的磨砕等)を用いてアモルファスオキシチタニウムフタロシアニン、または低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンを得る方法ではなく、溶解、反応等の化学的現象を用いてアモルファス、もしくは低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンを得る処理方法のことである。
【0066】
化学的処理の具体的な例としては、フタロシアニン前駆体を強酸中に溶解して行うアシッドペースティング法(本明細書においては、「アシッドペースティング法」を、単に「アシッドペースト法」という場合がある。)、強酸中で分散状態を経るアシッドスラリー法、ジクロロチタニルフタロシアニンにフェノール、アルコールを付加させた後に脱離させてオキシチタニウムフタロシアニンを得る方法等の化学的処理方法があげられ、より安定的なアモルファス、低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンを得るには、アシッドペースト法またはアシッドスラリー法が好ましく、アシッドペースト法がより好ましい。
【0067】
アシッドペースト法、アシッドスラリー法とは、顔料を強酸に溶解もしくは、懸濁、分散させた溶液を調製し、その調製した溶液を、強酸と均一に混じり、顔料がほとんど溶解しない媒体中(例えば、オキシチタニウムフタロシアニンの場合は、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類等)に放出し、再顔料化させることにより顔料を改質する方法である。
【0068】
アシッドスラリー法、アシッドペースト法には濃硫酸、有機スルホン酸、有機ホスホン酸、トリハロゲン化酢酸等の強酸が使用される。これら強酸は、強酸単独、もしくは強酸同士の混合使用、または強酸と有機溶媒の組み合わせ等で用いることが可能である。強酸の種類はフタロシアニン前駆体の溶解性を考慮すると、トリハロゲン化酢酸、濃硫酸が好ましく、生産コストを考慮すると、濃硫酸がより好ましい。
【0069】
濃硫酸の濃度は、フタロシアニン前駆体の溶解性を考慮すると、90質量%以上の濃硫酸が好ましく、さらに濃硫酸の含有量が低いと生産効率が低下することから、より好ましくは95質量%以上の濃硫酸である。
【0070】
強酸にフタロシアニン前駆体を溶解させる温度は、公知文献に掲載されている温度条件で溶解させることが可能であるが、温度が高すぎると前駆体のフタロシアニン環が開環し、分解してしまうことから、5℃以下が好ましく、得られる電子写真感光体に及ぼす影響を考慮すると0℃以下がより好ましい。
【0071】
強酸は任意の量で用いることが可能であるが、少なすぎるとフタロシアニン前駆体の溶解性が悪くなることから、強酸の量は、フタロシアニン前駆体1質量部に対して5質量部以上、溶液中の固形分濃度が高すぎると撹拌効率が低下することから15質量部以上が好ましく、より好ましくは20質量部以上である。また、強酸使用量が多すぎると、廃棄酸量が増えることから、100質量部以下が好ましく、また生産効率を考慮すると50質量部以下がより好ましい。
【0072】
得られたフタロシアニン前駆体の酸溶液を放出する媒体の種類としては、例えば、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等の1価アルコール;エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等の鎖状エーテル等があげられ、公知の方法同様に、放出媒体は単一種で用いても、2種類以上を混合して使用してもよい。用いる媒体種により再顔料化された際の粒子形状、結晶状態等が変化し、この履歴が後に得られる最終結晶の電子写真感光体特性に影響を与えることから、水、または、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等の低級アルコール類が好ましく、生産性、コストの面から水がより好ましい。
【0073】
フタロシアニン前駆体の濃硫酸溶液を放出媒体に放出し、再顔料化されたオキシチタニウムフタロシアニンは、ウエットケーキとして濾別されるが、このウエットケーキは放出媒体中に存在する濃硫酸の硫酸イオン等の不純物を多く含むことから、再顔料化された後に、洗浄媒体で洗浄を行う。洗浄を行う媒体は、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、酢酸ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液等のアルカリ性水溶液、希塩酸、希硝酸、希酢酸等の酸性水溶液、イオン交換水等の水等があげられるが、顔料中に残存したイオン性物質は電子写真感光体特性に悪影響を与える場合が多いことから、イオン交換水等のイオン性の物質を取り除いた水が好ましい。
【0074】
通常、アシッドペースト法やアシッドスラリー法により得られるオキシチタニウムフタロシアニンは明確な回折ピークを有さないアモルファスか、ピークは有するが、その強度が非常に弱く、半値幅の非常に大きいピークを有する低結晶性のものである。
【0075】
通常、アシッドペースト法やアシッドスラリー法により得られたアモルファスオキシチタニウムフタロシアニン、または低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンを有機溶媒に接触させることにより、本発明の電子写真感光体に用いることができるCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°、24.1°および27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニン、または、9.5°、9.7°、24.2°および27.2°に主たる回折ピークを有する「特定オキシチタニウムフタロシアニン」を得ることができる。
【0076】
特定オキシチタニウムフタロシアニンは、化学的処理後、有機溶媒に接触することにより得られるが、化学的処理後のアモルファスオキシチタニウムフタロシアニン、および低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンを纏めて「低結晶性フタロシアニン類」という。
【0077】
本発明において「低結晶性フタロシアニン類」とは、粉末X線回折(X−ray diffraction:以下「XRD」と省略する場合がある。)スペクトルにおいて、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)0〜40°の範囲内に、半値幅が0.30°以下のピークを有さないフタロシアニン類をいう。この半値幅が小さ過ぎると、固体中でフタロシアニン分子がある程度一定の規則性や長期的秩序を有している状態になっており、有機溶媒に接触することにより、特定オキシチタニウムフタロシアニンを得る際に、結晶型の制御性が低下する場合がある。このため、本発明において用いる低結晶性フタロシアニン類は、その半値幅が、通常0.35°以下、さらには0.40°以下、特に0.45°以下のピークを有さないものであることが好ましい。
【0078】
なお、本明細書において、フタロシアニン類の粉末X線回折スペクトルの測定、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)の決定、およびピーク半値幅の算出は、以下の条件で行なうものとする。
【0079】
粉末X線回折スペクトルの測定装置としては、CuKα(CuKα1+CuKα2)線をX線源とした集中光学系の粉末X線回折計(例えばPANalytical社製PW1700)を使用する。粉末X線回折スペクトルの測定条件は、走査範囲(2θ)3.0〜40.0°、スキャンステップ幅0.05°、走査速度3.0°/min、発散スリット1°、散乱スリット1°、受光スリット0.2mmとする。
【0080】
ピーク半値幅は、プロファイルフィッティング法により算出することができる。プロファイルフィッティングは、例えばMDI社製粉末X線回折パターン解析ソフトJADE5.0+を用いて行なうことができる。その算出条件は、以下の通りである。まず、バックグランドは、全測定範囲(2θ=3.0〜40.0°)から理想的な位置に固定する。フィッティング関数としては、CuKα2の寄与を考慮したPeason−VII関数を用いる。フィッティング関数の変数としては、回折角(2θ)、ピーク高さ、およびピーク半値幅(βo)の3つを精密化する。CuKα2の影響を除去し、CuKα1由来の回折角(2θ)、ピーク高さ、およびピーク半値幅(βo)を計算する。そして、非対称は0に、形定数は1.5に固定する。
【0081】
上記のプロファイルフィッティング法により算出したピーク半値幅(β)を、同測定条件、同プロファイルフィッティング条件により算出した標準Si(NIST
Si 640b)の111ピーク(2θ=28.442°)のピーク半値幅(βSi)により、下式に従って補正することにより、試料由来のピーク半値幅(β)が求められる。
【数1】

【0082】
なお、アモルファスオキシチタニウムフタロシアニンと、低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンとの境界は明確ではないが、本発明においては何れを原料としても、特定オキシチタニウムフタロシアニンを得ることが可能である。
【0083】
後述のように、特定オキシチタニウムフタロシアニンの結晶は、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°、24.1°および27.2°、または、9.5°、9.7°、24.2°および27.2°に主たる回折ピークを有するが、27.2°付近にピークを有する低結晶性フタロシアニン類は、上記特定オキシチタニウムフタロシアニンとある程度類似した規則性を有しており、上記特定結晶型への結晶型制御性に優れる。この場合における低結晶性フタロシアニン類は、その半値幅が通常0.30°以下のピークを有さないものであり、好ましくは0.35°以下のピークを有さないものであり、より好ましくは、その半値幅が0.40°以下のピークを有さないものであり、さらに好ましくは、その半値幅が0.45°以下のピークを有さないものである。
【0084】
一方、27.2°付近にピークを有さない低結晶性フタロシアニン類を、特定オキシチタニウムフタロシアニンの原料として用いる場合には、上記特定結晶型を有する特定オキシチタニウムフタロシアニンへの結晶型制御性が低いことから、より結晶性が低いことが望ましい。この場合における低結晶性フタロシアニンは、その半値幅が通常0.30°以下のピークを有さないものであり、好ましくはその半値幅が0.50°以下のピークを有さないものであり、より好ましくはその半値幅が0.70°以下のピークを有さないものであり、さらに好ましくはその半値幅が0.90°以下のピークを有さないものである。
【0085】
通常、低結晶性フタロシアニン類と有機溶媒との接触は水の存在下で行われる。水は、アシッドペースト法、アシッドスラリー法により得られた含水ケーキ中に含まれる水を用いても、含水ケーキ中に含まれる水以外にさらに後から水を添加して用いてもよい。また、アシッドペースト法、アシッドスラリー法後に得られた含水ケーキを一旦乾燥させ、結晶変換時に新たに水を追加して用いてもよいが、乾燥させてしまうと顔料と水との親和性が低下することから、乾燥させずにアシッドペースト法、アシッドスラリー法により得られた含水ケーキ中に含まれる水を用いるか、または含水ケーキ中に含まれる水にさらに後から水を添加することが好ましい。
【0086】
結晶変換に用いることができる溶媒としては、水と相溶性のある溶媒、水と非相溶の溶媒のいずれも可能である。水と相溶性のある溶媒の好適な例としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、および1,3−ジオキソラン等の環状エーテルがあげられる。また、水と非相溶の溶媒の好適な例としては、例えば、トルエン、ナフタレン、およびメチルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、ジクロロトルエン、ジクロロフルオロベンゼン、および1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ニトロベンゼン、1,2−メチレンジオキシベンゼン、およびアセトフェノン等の置換芳香族系溶媒があげられ、中でも環状エーテル、モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、ジクロロフルオロベンゼン、ジクロロトルエン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、および芳香族炭化水素系溶媒が得られた結晶の電子写真特性が良好であり好ましく、テトラヒドロフラン、モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、2,4−ジクロロトルエン、ジクロロフルオロベンゼン、トルエン、およびナフタレンが、得られた結晶の分散時の安定性という点でより好ましい。
【0087】
結晶変換後得られた結晶は、乾燥工程を行うことになるが、乾燥方法は、例えば、送風乾燥、加熱乾燥、真空乾燥、および凍結乾燥等の公知の方法で乾燥することが可能である。
【0088】
前記製造法により得られた特定オキシチタニウムフタロシアニンの結晶は、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°、24.1°および27.2°、または、9.5°、9.7°、24.2°および27.2°に主たる回折ピークを有する結晶である。他の回折ピークとしては、26.2°付近にピークを有する結晶は分散時の結晶安定性に劣ることから、26.2°付近にはピークを有さない結晶であることが好ましい。中でも、7.3°、9.5°、11.6°、14.2°、18.0°、24.1°および27.2°、または、7.3°、9.5°、9.7°、11.6°、14.2°、18.0°、24.2°および27.2°に主たる回折ピークを有する結晶が電子写真感光体として用いた場合の暗減衰、残留電位の観点からより好ましい。なお、ブラック角は、2θ±0.2°で示される通り、±0.2°の誤差を有する。このため、例えば、「ブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°」という場合は、9.3〜9.7°の範囲を意味している。この誤差範囲は、他の角度においても同様である。
【0089】
[アゾ化合物]
電荷発生物質としてアゾ化合物を使用する場合には、各種公知のビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料が好適に用いられる。本発明で好適な、アゾ化合物としては、オキサジアゾール環構造を持つ化合物も好ましい。好適なアゾ化合物の具体例を下に記す。
【0090】
【化10】

【0091】
<バインダー樹脂>
感光層形成に際しては、膜強度確保のために、バインダー樹脂が使用される。この場合、感光層は前記の電荷発生物質等とともにバインダー樹脂を溶剤に溶解あるいは分散して得られる塗布液を、導電性支持体上(下引き層を有する場合は下引き層上)に塗布、乾燥して得ることができる。
【0092】
特に好ましく使用されるバインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂等があげられる。これらは一般的に、ジオール成分の部分構造を有する。これらの構造を形成するジオール成分としては、ビスフェノール残基、ビフェノール残基等があげられる。
【0093】
その具体例としては、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)エタン、ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)プロパン、ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルエタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)シクロヘキサン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジベンジルメタン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[フェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビスメチレン]ビス−[フェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[2,6−ジメチルフェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビスメチレン]ビス−[2,6−ジメチルフェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビスメチレン]ビス−[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸ステアリルエステル、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、フェノールフタルレイン、4,4'−[1,4−フェニレンビス(1−メチルビニリデン)]ビスフェノール、4,4'−[1,4−フェニレンビス(1−メチルビニリデン)]ビス[2−メチルフェノール]、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、等のビスフェノール成分、4,4’−ビフェノール、2,4’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’−ジメチル−2,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’−ジ−(t−ブチル)−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラ−(t−ブチル)−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル等のビフェノール成分等があげられる。
【0094】
これらの中で好ましい化合物としては、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシフェニル(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノール成分があげられる。
【0095】
具体的に、好適に用いることのできるポリカーボネート樹脂のジオール成分(ビスフェノール、ビフェノール等)を以下に例示する。本例示は、本発明の趣旨を明確にするために行うものであり、本発明の趣旨に反しない限りは例示される構造に限定されるものではない。
【0096】
【化11】

【0097】
特に、本発明の効果を最大限に発揮するためには、以下の構造を示すジオール成分であることが好ましい。
【化12】

【0098】
また、酸成分としては、以下の構造を有するものを用いることが好ましい。
【化13】

【0099】
特に好ましい酸成分は、以下の構造を有するものである。
【化14】

【0100】
これらのジカルボン酸成分やジオール成分は、複数種組み合わせて用いることも可能である。
【0101】
バインダー樹脂の分子量は、低すぎると機械的強度が不足し、逆に分子量が高すぎると感光層形成のための塗布液の粘度が高すぎて生産性が低下するといった不具合が生じる場合があるため、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂(ポリアリレート樹脂を含む)の場合、粘度平均分子量で10,000以上が好ましく、特に好ましくは20,000以上である。また、70,000以下が好ましく、特に好ましくは50,000以下である。粘度平均分子量は、実施例に記載されている測定方法で測定し、それによって定義される。
【0102】
本発明の電子写真感光体が有する感光層は、ポリアリレート樹脂を含有していることも好ましい。特に、電荷輸送層がポリアリレート樹脂を含有していることが好ましい。該ポリアリレート樹脂は結着樹脂として機能する。ポリアリレート樹脂はポリエステルの一種であり、芳香族性を有する環を持つ2価アルコールと、芳香族性を有する環を持つ2価カルボン酸との縮合によりなるものである。本発明の電子写真感光体において、一般式(1)で表される電荷輸送物質と組み合わせて機械特性向上等のためには、ポリアリレート樹脂を使用することが好ましい。以下、本発明に用いられるポリアリレート樹脂について詳述する。
【0103】
芳香族性を有する環を持つ2価アルコールとしては、通常ポリアリレート樹脂の製造に用いられる如何なるものも使用可能であるが、好ましくはビスフェノール類および/またはビフェノール類が用いられる。これらのビスフェノール類やビフェノール類はそれらが有する芳香族環上に各々独立に置換基を有していてもよい。より具体的には、アルキル基、アリール基、ハロゲン基またはアルコキシ基を有していることも好ましい。感光層用バインダー樹脂としての機械的特性と、感光層形成用塗布液を調製する際の溶媒に対する溶解性を勘案すると、アルキル基としては炭素数6以下のアルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基があげられる。アリール基としては芳香族環数が3以下のアリール基が好ましく、より好ましくはフェニル基、ナフチル基があげられる。ハロゲン基としてフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が好ましい。アルコキシ基としては、アルコキシ基中のアルキル基部分の炭素数が1〜10のアルコキシ基が好ましく、更に好ましくは炭素数が1〜8のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数が1〜2のアルコキシ基であって、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が特に好ましい。
【0104】
ポリアリレート樹脂に用いられる2価アルコールとしては、前記したポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂に用いられるものがあげられるが、特に、ポリアリレート樹脂に好適に用いられる2価アルコールとしては、具体的には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン;3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(2−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エーテルがあげられる。これらの2価アルコール成分は、複数組み合わせて用いることも可能である。
【0105】
これらの中でも特に、下記構造の2価アルコールを繰り返し単位構造として有するポリアリレート樹脂であることが好ましい。
【0106】
【化15】

【0107】
芳香族性を有する環を持つ2価カルボン酸としては、通常ポリアリレート樹脂の製造に用いられる如何なるものも使用可能であるが、より具体的には、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,2’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,3’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,3’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸があげられる。好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル−2,2’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸があげられ、特に好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸があげられる。これらのジカルボン酸は、複数組み合わせて用いることも可能である。
【0108】
ポリアリレート樹脂の製造方法としては、特に限定されず、例えば、界面重合法、溶融重合法、溶液重合法等の公知の重合方法を用いることができる。界面重合法による製造の場合は、例えば、二価フェノール成分をアルカリ水溶液に溶解した溶液と、芳香族ジカルボン酸クロライド成分を溶解したハロゲン化炭化水素の溶液とを混合する。この際、触媒として、四級アンモニウム塩もしくは四級ホスホニウム塩を存在させることも可能である。重合温度は0〜40℃の範囲、重合時間は2〜20時間の範囲であるのが生産性の点で好ましい。重合終了後、水相と有機相を分離し、有機相中に溶解しているポリマーを公知の方法で、洗浄、回収することにより、目的とするポリアリレート樹脂が得られる。
【0109】
界面重合法で用いられるアルカリ成分としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等をあげることができる。アルカリの使用量としては、反応系中に含まれるフェノール性水酸基の1.01〜3倍当量の範囲が好ましい。ハロゲン化炭化水素としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロルベンゼン等をあげることができる。触媒として用いられる四級アンモニウム塩もしくは四級ホスホニウム塩としては、例えば、トリブチルアミンやトリオクチルアミン等の三級アルキルアミンの塩酸、臭素酸、ヨウ素酸等の塩;ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、トリエチルオクタデシルホスホニウムブロマイド、N−ラウリルピリジニウムクロライド、ラウリルピコリニウムクロライド等があげられる。
【0110】
また、界面重合法では、分子量調節剤を使用することができる。分子量調節剤としては、例えば、フェノール、o,m,p−クレゾール、o,m,p−エチルフェノール、o,m,p−プロピルフェノール、o,m,p−(tert−ブチル)フェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、2,6−ジメチルフェノール誘導体、2−メチルフェノール誘導体等のアルキルフェノール類;o,m,p−フェニルフェノール等の一官能性のフェノール;酢酸クロリド、酪酸クロリド、オクチル酸クロリド、塩化ベンゾイル、ベンゼンスルフォニルクロリド、ベンゼンスルフィニルクロリド、スルフィニルクロリド、ベンゼンホスホニルクロリドまたはそれらの置換体等の一官能性酸ハロゲン化物等があげられる。これら分子量調節剤の中でも、分子量調節能が高く、かつ溶液安定性の点で好ましいのは、o,m,p−(tert−ブチル)フェノール、2,6−ジメチルフェノール誘導体、2−メチルフェノール誘導体である。特に好ましくは、p−(tert−ブチル)フェノール、2,3,6−テトラメチルフェノール、2,3,5−テトラメチルフェノールである。
【0111】
該ポリアリレート樹脂の粘度平均分子量は、特に限定されないが、通常、10,000以上、好ましくは15,000以上、更に好ましくは20,000以上であり、通常、300,000以下、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下、特に好ましくは70,000以下である。粘度平均分子量が過度に小さいと、感光層の機械的強度が低下し実用的ではない。また、粘度平均分子量が過度に大きいと、感光層を適当な膜厚に塗布形成する事が困難である。粘度平均分子量は、実施例に記載されている測定方法で測定し、それによって定義される。
【0112】
本発明の電子写真感光体が有する電荷輸送層がポリアリレート樹脂を含有している場合には、バインダー樹脂と一般式(1)で表される電荷輸送物質との質量割合はどのような比であっても構わないが、バインダー樹脂一般の箇所で前記した範囲が好ましい。特に、バインダー樹脂がポリアリレート樹脂を含有する場合には、電荷輸送層に含まれる、一般式(1)で表される電荷輸送物質の総質量の、ポリアリレート樹脂を含む全バインダー樹脂の含有質量に対する比、すなわち電荷輸送層中における一般式(1)で表される電荷輸送物質の質量部(一般式(1)で表される電荷輸送物質が複数種含有されている場合にはその総質量部)は、全バインダー樹脂の含有量を100質量部としたときに、電子写真感光体の残留電位を下げる観点からすれば、20質量部以上であることが好ましく、繰り返し使用した際の安定性と、電荷移動度の観点からすれば、25質量部以上であることがより好ましい。また、一方で感光層の熱安定性の観点からは90質量部以下であって、感光層中での一般式(1)の化合物の安定性の観点から、好ましくは80質量部以下、更に画像形成の際の耐久性の観点から、より好ましくは65質量部以下で、更に好ましくは60質量部以下で、耐傷性の観点からは、40質量部以下が特に好ましい。ここで、「全バインダー樹脂の含有質量」とは、ポリアリレート樹脂以外のバインダー樹脂も含む場合は、それらも含めた全てのバインダー樹脂の含有質量をいう。
【0113】
また、電荷輸送層中に、一般式(1)で表される電荷輸送物質以外の「他の電荷輸送物質」も含有されていて、それも含めて複数の電荷輸送物質が含有されている場合、電荷輸送層に含まれる総電荷輸送物質の含有量については、ポリアリレート樹脂を含む全バインダー樹脂の含有量100質量部に対し25質量部以上、さらに残留電位低減の観点から30質量部以上が好ましく、さらに繰り返し使用した際の安定性、電荷移動度の観点から、40質量部以上がより好ましい。また、一方で感光層の熱安定性の観点から、通常は55質量部以下、さらに電荷輸送材料とバインダー樹脂の相溶性の観点から好ましくは50質量部以下、さらに耐刷性の観点から35質量部以下がより好ましく、耐傷性の観点からは、45質量部以下が最も好ましい。ここで、上記「総電荷輸送物質」とは、一般式(1)で表される電荷輸送物質と「他の電荷輸送物質」の両方を示す。
【0114】
<酸化防止剤>
本発明の電子写真感光体には、酸化防止剤が含まれていていることが好ましい。酸化防止剤は、電子写真感光体に含まれる部材の酸化を防止するために含有される安定剤の一種である。通常、電子写真感光体に含まれる部材の酸化は、表面から起こるため、酸化防止剤は電子写真感光体の最表面層に含まれることが好ましい。
【0115】
酸化防止剤は、ラジカル補足剤としての機能があり、具体的には、フェノール誘導体、アミン化合物、ホスホン酸エステル、硫黄化合物、ビタミン、ビタミン誘導体等があげられる。この中でも、フェノール誘導体、アミン化合物、ビタミン等が好ましい。嵩高い置換基をヒドロキシ基近辺に有するヒンダードフェノール、トリアルキルアミン誘導体等が特に好ましい。更には、ヒドロキシ基のo位に、t−ブチル基を有するアリール化合物誘導体が好ましく、ヒドロキシ基のo位に、t−ブチル基を2つ有するアリール化合物誘導体が更に好ましい。
【0116】
また、該酸化防止剤のゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定される平均分子量は、大きすぎると酸化防止能に問題が生じる場合があり、1500以下が好ましく、1000以下が特に好ましい。下限は、100以上が好ましく、150以上がより好ましく、200以上が特に好ましい。
【0117】
以下、本発明に使用できる酸化防止剤を示す。本発明に使用できる酸化防止剤としては、プラスチック、ゴム、石油、油脂類に使用されている酸化防止剤;紫外線吸収剤;光安定剤として公知の材料すべてを用いることができるが、とりわけ次に示す化合物群より選ばれる材料が好ましく使用できる。
【0118】
(1)特開昭57−122444号公報に記載のフェノール類、特開昭60−188956号公報に記載のフェノール誘導体および特開昭63−18356号公報に記載のビンダードフェノール類。
(2)特開昭57−122444号公報に記載のパラフェニレンジアミン類、特開昭60−188956号公報に記載のパラフェニレンジアミン誘導体および特開昭63−18356号公報に記載のパラフェニレンジアミン類。
(3)特開昭57−122444号公報に記載のハイドロキノン類、特開昭60−188956号公報に記載のハイドロキノン誘導体および特開昭63−18356号公報に記載のハイドロキノン類。
(4)特開昭57−188956号公報に記載のイオウ化合物および特開昭63−18356号公報に記載の有機イオウ化合物類。
(5)特開昭57−122444号公報に記載の有機リン化合物および特開昭63−18356号公報に記載の有機リン化合物類。
(6)特開昭57−122444号公報に記載のヒドロキシアニソール類。
(7)特開昭63−18355号公報に記載の特定の骨格構造を有するピペリジン誘導体およびオキソピペラジン誘導体。
(8)特開昭60−188956号公報に記載のカロチン類、アミン類、トコフェロール類、Ni(II)錯体、スルフィド類。
【0119】
具体的には、以下に示すヒンダードフェノール類が特に好ましい。ヒンダードフェノールとは、嵩高い置換基をヒドロキシ基近辺に有するフェノール類をいう。すなわち、オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、ジブチルヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、α−トコフェノール、β−トコフェノール、2,2,4−トリメチル−6−ヒドロキシ−7−t−ブチルクロマン、ペンタエリスチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシアニソールが特に好ましい。これらの化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類等の酸化防止剤として知られており、市販品として手に入るものもある。
【0120】
上記、ヒンダードフェノール類の中でも、オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート(octadecyl-3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyhydrocinnamate)が特に好ましい。これは、商品名Irganox1076として市販されているので、それを用いることも特に好ましい。
【0121】
本発明の電子写真感光体において最表面層中に酸化防止剤が含まれる場合の当該酸化防止剤の量は、特に制限されないが、バインダー樹脂100質量部当り0.1質量部以上、20質量部以下が好ましい。この範囲外の場合、良好な電気特性が得られない。特に好ましくは1質量部以上である。また、多すぎると、電気特性だけでなく、耐刷性にも問題を起こすので、好ましくは15部以下であり、さらに好ましくは10部以下である。
【0122】
なお、感光層には、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させるために、周知の可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤等の添加物を含有させてもよい。
【0123】
<その他の層>
感光層の上に、感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の劣化を防止・軽減したりする目的でオーバーコート層を設けてもよい。またオーバーコート層は、感光体表面の摩擦抵抗や摩耗を軽減する目的で、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等を含んでいてもよい。また、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含んでいてもよい。
【0124】
<層形成方法>
これらの感光体を構成する各層は、含有させる物質を溶剤に溶解または分散させて得られた塗布液を、支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等の公知の方法により順次塗布して形成される。
【0125】
塗布液の作製に用いられる溶媒あるいは分散媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類;n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類;アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類等があげられ、これらは単独でまたは2種以上を併用して用いられる。
【0126】
なお、塗布液あるいは分散液の作製において、積層型感光層の電荷発生層の場合には、固形分濃度は、好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは1〜10質量%にする。また、粘度は、好ましくは0.1〜10cpsとする。
【0127】
<画像形成装置>
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置(本発明の画像形成装置)の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
【0128】
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置2、露光装置3および現像装置4を備えて構成され、さらに、必要に応じて転写装置5、クリーニング装置6および定着装置7が設けられる。
【0129】
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5およびクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
【0130】
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。帯電装置としては、コロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、電圧印加された直接帯電部材を感光体表面に接触させて帯電させる直接帯電装置(接触型帯電装置)、帯電ブラシ等の接触型帯電装置等が用いられる。直接帯電手段の例としては、帯電ローラ、帯電ブラシ等の接触帯電器等があげられる。なお、図1では、帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示している。直接帯電手段として、気中放電を伴う帯電、あるいは気中放電を伴わない注入帯電いずれも可能である。また、帯電時に印可する電圧としては、直流電圧だけの場合、および直流に交流を重畳させて用いることもできる。
【0131】
このうち、電圧印加された直接帯電部材を電子写真感光体表面に接触させて帯電させる直接帯電装置(接触型帯電装置)が好ましい。すなわち、電子写真感光体を該電子写真感光体に接触配置する帯電器により帯電して画像を形成することが、電子写真感光体に与える各種の劣化原因となる負荷を低減するという点で好ましい。
【0132】
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED等があげられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜500nmの単色光等で露光を行なうことが好ましい。そのうちでも、波長380nm〜500nmの単色光により露光をして画像を形成することが、画像欠陥の少ない高解像度の画像を形成することができるという点で特に好ましい。
【0133】
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分絶縁トナー現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像等の乾式現像方式や、湿式現像方式等の任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、および、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジ等の容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
【0134】
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄,ステンレス鋼,アルミニウム,ニッケル等の金属ロール、またはこうした金属ロールにシリコン樹脂,ウレタン樹脂,フッ素樹脂等を被覆した樹脂ロール等からなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
【0135】
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1および供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43および現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
【0136】
規制部材45は、シリコン樹脂やウレタン樹脂等の樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅等の金属ブレード、またはこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
【0137】
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
【0138】
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写等の静電転写法、圧力転写法、粘着転写法等、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙,媒体)Pに転写するものである。
【0139】
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナー等、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。但し、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆ど無い場合には、クリーニング装置6は無くても構わない。
【0140】
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71および下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71または72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部および下部の各定着部材71,72は、ステンレス,アルミニウム等の金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、さらにフッ素樹脂で被覆した定着ロール、定着シート等が公知の熱定着部材を使用することができる。さらに、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
【0141】
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
【0142】
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着等、任意の方式による定着装置を設けることができる。
【0143】
以上のように構成された電子写真装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
【0144】
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
【0145】
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
【0146】
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
【0147】
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
【0148】
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としてもよい。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
【0149】
また、画像形成装置はさらに変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程等の工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、さらには複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
【0150】
なお、電子写真感光体1を、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、および定着装置7のうち1つまたは2つ以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(以下適宜「電子写真感光体カートリッジ」という)として構成し、この電子写真感光体カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。この場合、例えば電子写真感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
【実施例】
【0151】
以下本発明の実施例、比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらに限定されるものではない。なお、本実施例で用いる「部」は特に断りがない限り「質量部」を示し、「%」は特に断りがない限り「質量%」を示す。
【0152】
<電荷輸送物質の製造>
製造例1(電荷輸送物質(1)の製造法)
p−ジトリルアミン40g、4,4’−ジヨードーp−ターフェニル48gをニトロベンゼン300mL中、200℃に加熱攪拌し、これに銅粉46g、炭酸カリウム100gを添加し、窒素フロー下、200℃で5時間反応後、50℃まで冷却し、テトラヒドロフラン200mLを添加し、固形物を濾過した。濾液をメタノール2000mL中に注ぎ、沈殿物をろ過し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、電荷輸送物質(1)39gを得た。質量分析(m/z):M=620(理論値:620)および元素分析(C4640):C,89.10;H,6.67;N,4.40(理論値:C,88.99;H,6.49;N,4.51)より構造を確認した。
【0153】
【化16】

電荷輸送物質(1)
【0154】
製造例2(電荷輸送物質(2)の製造法)
m、p’−ジメチルジフェニルアミン40g、4,4’−ジヨードーp−ターフェニル48gをニトロベンゼン300mL中、200℃に加熱攪拌し、これに銅粉46g、炭酸カリウム100gを添加し、窒素フロー下、200℃で5時間反応後、50℃まで冷却し、テトラヒドロフラン200mLを添加し、固形物を濾過した。濾液をメタノール2000mL中に注ぎ、沈殿物をろ過し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、電荷輸送物質(2)40gを得た。質量分析(m/z):M=620(理論値:620)および元素分析(C4640):C,89.00;H,6.57;N,4.50(理論値:C,88.99;H,6.49;N,4.51)より構造を確認した。
【0155】
【化17】

電荷輸送物質(2)
【0156】
製造例3(電荷輸送物質(3)の製造法)
製造例1で使用したp−ジトリルアミンの代わりに、p−メトキシジフェニルアミンを使用し、電荷輸送物質(3)42gを得た。質量分析(m/z):M=624(理論値:624)および元素分析(C4436):C,84.50;H,5.95;N,4.50(理論値:C,84.59;H,5.81;N,4.48;)より構造を確認した。
【0157】
【化18】

電荷輸送物質(3)
【0158】
製造例4(電荷輸送物質(4)の製造法)
製造例1で使用したp−ジトリルアミンの代わりに、p−メチルジフェニルアミンを使用し、電荷輸送物質(4)45gを得た。質量分析(m/z):M=592(理論値:592)および元素分析(C4436):C,89.20;H,6.20;N,4.70(理論値:C,89.15;H,6.12;N,4.73)より構造を確認した。
【0159】
【化19】

電荷輸送物質(4)
【0160】
製造例5(電荷輸送物質(5)の製造法)
4−ブロモ−4’−ビス(p−ジトリルアミノ)ビフェニル20gと銅粉5gを四つ口フラスコに導入し、230℃で、30時間攪拌した。得られた混合物からシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、電荷輸送物質(5)2gを得た。質量分析(m/z):M=696(理論値:696)および元素分析(C5244):C,89.70;H,6.46;N,4.01(理論値:C,89.62;H,6.36;N,4.02)より構造を確認した。
【0161】
【化20】

電荷輸送物質(5)
【0162】
製造例6(電荷輸送物質(6)の製造法)
下記フルオレン誘導体20gと、
【化21】

(フルオレン誘導体)
下記ホウ素化合物と、
【化22】

(ホウ素化合物)
水酸化カリウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを、アセトニトリル中で、48時間攪拌し、得られた混合物からシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、電荷輸送物質(6)6gを得た。質量分析(m/z):M=1133(理論値:1133)および元素分析(C8496):C,88.70;H,8.66;N,2.58(理論値:C,88.99;H,8.54;N,2.47)より構造を確認した。
【0163】
【化23】

電荷輸送物質(6)
【0164】
製造例7(CG1の製造)
特開平10−007925号公報に記載の「粗TiOPcの製造例」、「実施例1」の順に従って、β型オキシチタニウムフタロシアニンを調整した。得られたオキシチタニウムフタロシアニン18部を、−10℃以下に冷却した95%濃硫酸720部中に添加した。このとき硫酸溶液の内温が−5℃を超えないようにゆっくりと添加した。添加終了後、濃硫酸溶液を−5℃以下で2時間撹拌した。撹拌後、濃硫酸溶液をガラスフィルターで濾過し、不溶分を濾別後、濃硫酸溶液を氷水10800部中に放出することにより、オキシチタニウムフタロシアニンを析出させ、放出後1時間撹拌した。撹拌後、溶液を濾別し、得られたウエットケーキを再度水900部中で1時間洗浄し、濾過を行った。この洗浄操作を濾液のイオン伝導度が0.5mS/mになるまで繰り返すことにより、低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンのウエットケーキを185部得た(オキシチタニウムフタロシアニン含有率9.5%)。
【0165】
得られた低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンのウエットケーキ93部を水190部中に添加し、室温で30分撹拌した。その後、o−ジクロロベンゼン39部を添加し、さらに室温で1時間撹拌した。撹拌後、水を分離し、MeOH134部を添加し、室温で1時間撹拌洗浄した。洗浄後、濾別し、再度MeOH134部を用いて1時間撹拌洗浄後、濾別し、真空乾燥機で加熱乾燥することにより、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°、24.1°および27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニン(以下、「CG1」ということがある)を7.8部得た。得られたオキシチタニウムフタロシアニンに含まれるクロロオキシチタニウムフタロシアニンの含有量を、特開2001−115054号公報に記載の手法(マススペクトル法)を用いて調べたところ、オキシチタニウムフタロシアニンに対し、強度比0.003以下であることを確認した。
【0166】
製造例8(CG2の製造)
製造例7で得られた低結晶性オキシチタニウムフタロシアニンのウエットケーキ50部をテトラヒドロフラン(以下、THFと略記することがある)500部中に分散し、室温で1時間攪拌する以外は、製造例7と同様に、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°、24.1°および27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニン(以下、「CG2」ということがある)を3部得た。得られたオキシチタニウムフタロシアニンに含まれるクロロオキシチタニウムフタロシアニンの含有量を、特開2001−115054に記載の手法(マススペクトル)を用いて調べたところ、オキシチタニウムフタロシアニンに対し、強度比0.003以下であることを確認した。
【0167】
製造例9(CG3の製造)
特開平2001−115054、実施例1に記載の手法で作製されたβ型オキシチタニウムフタロシアニンを使用する以外は、製造例7と同様にしてCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°、24.1°および27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニン(以下、「CG3」ということがある)を3部得た。得られたオキシチタニウムフタロシアニンに含まれるクロロオキシチタニウムフタロシアニンの含有量を、特開2001−115054号に記載の手法(マススペクトル)を用いて調べたところ、オキシチタニウムフタロシアニンに対し、強度比0.05であることを確認した。
【0168】
<バインダー樹脂の粘度平均分子量の測定>
バインダー樹脂の粘度平均分子量の測定について説明する。すなわち、バインダー樹脂をジクロロメタンに溶解し、濃度Cが6.00g/Lの溶液を調製する。溶媒(ジクロロメタン)の流下時間t0が136.16秒のウベローデ型毛細管粘度計を用いて、20.0℃に設定した恒温水槽中で試料溶液の流下時間t(秒)を測定する。以下の式に従って粘度平均分子量を算出する。
a=0.438×ηsp+1 ηsp=(t/t0)−1
b=100×ηsp/C C=6.00(g/L)
η=b/a
粘度平均分子量=3207×η1.205
【0169】
<電子写真感光体A1〜A16、P1〜P8の作製>
実施例1
製造例7で得られたオキシチタニウムフタロシアニン(CG1)10部を、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン150部に加え、サンドグラインドミルにて1時間粉砕分散処理を行った。
【0170】
また、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名デンカブチラール#6000C)の5%1,2−ジメトキシエタン溶液100部およびフェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名PKHH)の5%1,2−ジメトキシエタン溶液100部を混合してバインダー溶液を作製した。
【0171】
先に作製したCG1の分散液160部に、上記バインダー溶液100部、適量の1,2−ジメトキシエタンを加え、最終的に固形分濃度4.0%の分散液を調製した。
【0172】
この様にして得られた分散液を表面にアルミ蒸着した厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に乾燥後の膜厚が0.3μmになるように塗布して電荷発生層を設けた。
【0173】
次にこのフィルム上に、電荷輸送物質(1)40部、下記繰り返し構造のバインダー樹脂(B1)(m:n=51:49,粘度平均分子量30,000)100部、
【化24】

バインダー樹脂(B1)
【0174】
酸化防止剤(チバガイギー製:商品名IRGANOX1076)8部、およびレベリング剤としてシリコーンオイル0.03部を、テトラヒドロフラン/トルエン混合溶媒(混合比8/2)640部に溶解させた液を塗布し、125℃で20分間乾燥し、乾燥後の膜厚が20μmとなるように電荷輸送層を設け、電子写真感光体A1を得た。
【0175】
実施例2
電荷輸送物質(1)に代えて、電荷輸送物質(2)を使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A2を得た。
【0176】
実施例3
電荷輸送物質(1)に代えて、電荷輸送物質(3)を使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A3を得た。
【0177】
実施例4
電荷輸送物質(1)に代えて、電荷輸送物質(4)を使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A4を得た。
【0178】
実施例5
電荷輸送物質(1)40部に代えて、電荷輸送物質(5)10部、および、電荷輸送物質(4)30部、を使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A5を得た。
【0179】
実施例6
電荷輸送物質(5)に代えて、電荷輸送物質(6)を使用した以外は、実施例5と同様にして電子写真感光体A6を得た。
【0180】
実施例7
電荷輸送物質(1)に代えて、電荷輸送物質(4)を30部使用し、下記化合物(A)を20部使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A7を得た。
【化25】

化合物(A)
【0181】
実施例8
電荷輸送物質(1)40部に代えて、電荷輸送物質(1)を20部使用し、電荷輸送物質(4)を10部利用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A8を得た。
【0182】
実施例9
電荷輸送物質(1)40部に代えて、電荷輸送物質(1)を10部使用し、下記化合物(B)を30部使用する以外は実施例1と同様にして電子写真感光体A9を得た。
【化26】

化合物(B)
【0183】
実施例10
実施例4で使用したバインダー樹脂(B1)の代わりに、下記バインダー樹脂(B2)(粘度平均分子量40,000)を使用する以外は、実施例4と同様にして電子写真感光体A10を得た。
【化27】

バインダー樹脂(B2)
【0184】
実施例11
実施例4で使用したバインダー樹脂(B1)の代わりに、下記バインダー樹脂(B3)(粘度平均分子量40,000;m:n=9:1)を使用する以外は、実施例4と同様にして電子写真感光体A11を得た。
【化28】

バインダー樹脂(B3)
【0185】
実施例12
実施例7で使用した化合物(A)を使用する代わりに、下記化合物(C)を使用し、かつ、バインダー樹脂(B1)を使用する代わりに、バインダー樹脂(B3)を使用する以外は、実施例7と同様にして電子写真感光体A12を得た。
【化29】

化合物(C)
【0186】
実施例13
実施例1で使用した、製造例7で得られたCG1を使用する代わりに、製造例8で得られたCG2を使用する以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A13を得た。
【0187】
実施例14
実施例10で使用した、製造例7で得られたCG1を使用する代わりに、製造例8で得られたCG2を使用する以外は、実施例10と同様にして電子写真感光体A14を得た。
【0188】
実施例14X
実施例10で使用した、製造例7で得られたCG1を使用する代わりに、製造例9で得られたCG3を使用し、電荷輸送剤(4)を使用する代わりに、電荷輸送剤(1)を使用する以外は、実施例10と同様にして電子写真感光体A14Xを得た。
【0189】
実施例15
実施例11で使用した、製造例7で得られたCG1を使用する代わりに、製造例8で得られたCG2を使用する以外は、実施例11と同様にして電子写真感光体A15を得た。
【0190】
実施例16
実施例7で使用した化合物(A)を使用する代わりに、下記化合物(D)を使用する以外は、実施例7と同様にして電子写真感光体A16を得た。
【化30】

化合物(D)
【0191】
実施例17
実施例1で使用した、製造例7で得られたCG1を使用する代わりに、特開平8−123052号公報の製造例に記載の手法で得られたオキシチタニウムフタロシアニン(以下、「CG4」ということがある)を使用する以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体A17を得た。
【0192】
比較例1
電荷輸送物質(1)40部に代えて、電荷輸送物質(1)60部を使用した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を得ようとしたが、塗布液に析出が認められた。
【0193】
比較例2
電荷輸送物質(2)40部に代えて、電荷輸送物質(2)60部を使用した以外は、実施例2と同様にして、電子写真感光体P2を得た。1週間放置後、膜の白化が認められた。
【0194】
比較例3
電荷輸送物質(3)40部に代えて、電荷輸送物質(3)60部を使用した以外は、実施例3と同様にして、電子写真感光体P3を得た。1週間放置後、膜の白化が認められた。
【0195】
比較例4
電荷輸送物質(4)40部に代えて、電荷輸送物質(4)60部を使用した以外は、実施例3と同様にして、電子写真感光体P4を得た。1週間放置後、結晶の析出が認められた。また、塗布液のゲル化も認められた。
【0196】
比較例5
電荷輸送物質(5)10部に代えて、電荷輸送物質(5)50部を使用した以外は、実施例5と同様にして、電子写真感光体を得ようとしたが、塗布液から固体が析出してしまった。
【0197】
比較例6
電荷輸送物質(5)に代えて、電荷輸送物質(6)を使用した以外は、比較例5と同様にして、電子写真感光体を得ようとしたが、塗布液がゲル化してしまった。
【0198】
比較例7
電荷輸送物質(1)を10部使用する代わりに、2部使用した以外は、実施例9と同様にして電子写真感光体P7を得た。
【0199】
比較例8
電荷輸送物質(1)に代えて、上記化合物(B)を使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体P8を得た。
【0200】
比較例9
電荷輸送物質(1)に代えて、下記化合物(E)を使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体P9を得た。
【化31】

化合物(E)
【0201】
比較例10
電荷輸送物質(1)に代えて、下記化合物(F)を使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体P10を得た。塗布面の一部で白化が認められた。
【化32】

化合物(F)
【0202】
比較例11
電荷輸送物質(1)に代えて、化合物(D)を使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体P11を得た。塗布面の一部で白化が認められた。
【0203】
比較例12
実施例1で使用した電荷輸送物質(1)に代えて、上記化合物(F)を使用し、製造例7で得られたCG1を使用する代わりに、特開平2001−115054号公報の実施例1に記載の手法で作製されたオキシチタニウムフタロシアニン(以下、「CG5」ということがある)を使用する以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体P12を得た。
【0204】
<感光体の電気特性の評価>
電子写真学会測定標準に従って作製された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404−405頁記載)を使用し、上記感光体を(作製後1週間後に)、アルミニウム製ドラムに貼り付けて円筒状にし、アルミニウム製ドラムと感光体のアルミニウム基体との導通を取った上で、ドラムを一定回転数で回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行った。その際、初期表面電位を−700Vとし、露光は780nm、除電は660nmの単色光を用いた。780nmの光を1.0μJ/cm照射した時点の表面電位(VL)、および感度を表す指標として、表面電位を−350Vにするのに必要な露光量(半減露光量)を測定した。VL測定に際しては、露光から電位測定に要する時間を100msとした。測定環境は、温度25℃、相対湿度50%下で行った。感度(半減露光量)およびVLの値の絶対値が小さいほど電気特性が良好であることを示す。結果を表1に示す。
【0205】
【表1】

【0206】
表1の結果より、本発明の電子写真感光体は、高感度かつ低VLで、良好な電気特性を示すことが分かる。また、種々のバインダー樹脂に対する相溶性にも優れることがわかる。
【0207】
<画像形成試験、および電子写真感光体の安定性、耐久性試験>
実施例25
表面を陽極酸化し、封孔処理を施した直径3cm、長さ25.4cmのアルミニウムチューブ上に、実施例1と同様に作製した電荷発生層および電荷輸送層用塗布液を浸漬塗布法により順次塗布、乾燥して、膜厚が電荷発生層0.3μm、電荷輸送層25μmの電子写真感光体ドラムを作製した。このドラムを、ヒューレットパッカード社製レーザープリンタ、レーザージェット4(LJ4)に搭載し、気温35%、湿度85%下(H/H環境ということがある)で画像試験を行ったところ、画像欠陥やノイズの無い、良好な画像が得られた。次いで、1万枚連続プリントを行ったが、ゴースト、カブリ等の画像劣化は見られず、また、リークによる画像欠陥も発生していなかった。
【0208】
実施例26
表面を陽極酸化し、封孔処理を施した直径2cm、長さ25.1cmのアルミニウムチューブ上に、実施例4と同様に作製した電荷発生層および電荷輸送層用塗布液を浸漬塗布法により順次塗布、乾燥して、膜厚が電荷発生層0.3μm、電荷輸送層15μmの電子写真感光体ドラムを作製した。このドラムを、富士ゼロックス社製タンデム式カラーレーザープリンタ、C1616に4本搭載し、H/H環境で、画像試験を行ったところ、画像欠陥やノイズの無い、良好な画像が得られた。次いで、1000枚連続プリントを行ったが、リーク、ゴースト、カブリ等の画像劣化は見られず、安定していた。
【0209】
比較例13
表面を陽極酸化し、封孔処理を施した直径2cm、長さ25.1cmのアルミニウムチューブ上に、比較例8と同様に作製した電荷発生層および電荷輸送層用塗布液を浸漬塗布法により順次塗布、乾燥して、膜厚が電荷発生層0.3μm、電荷輸送層15μmの電子写真感光体ドラムを作製した。このドラムを、富士ゼロックス社製タンデム式カラーレーザープリンタ、C1616に4本搭載し、H/H環境で、画像試験を行ったところ、画像欠陥やノイズの無い、良好な画像が得られた。次いで、1000枚連続プリントを行ったところ、カブリによる画像劣化が見られた。
【0210】
実施例27
直径2cm、長さ25.1cmのアルミニウムチューブ上に、特開2005−99791の実施例13の手法に記載の手法を用いて下引きを作製した後、本願実施例4と同様に作製した電荷発生層および電荷輸送層用塗布液を浸漬塗布法により順次塗布、乾燥して、膜厚が電荷発生層0.3μm、電荷輸送層15μmの電子写真感光体ドラムを作製した。このドラムを、富士ゼロックス社製タンデム式カラーレーザープリンタ、C1616に4本搭載し、H/H環境で、画像試験を行ったところ、画像欠陥やノイズの無い、良好な画像が得られた。次いで、1000枚連続プリントを行ったが、リーク、ゴースト、カブリ等の画像劣化は見られず、安定していた。
【0211】
実施例28、比較例14
実施例25、比較例8で得られた電子写真感光体ドラムをそれぞれ市販のファックス機(パナソニックコミュニケーションズ製 UF−890)に装着して、気温25°、相対湿度50%(以下、N/N環境ということがある)の環境下において文字画像、黒ベタ、白ベタの画像を形成した。評価方法を下に記す
【0212】
<トナー消費量、転写率の測定>
電子写真感光体ドラムを市販のファックス機(パナソニックコミュニケーションズ製、UF―890)に装着して、N/N環境で、10000枚の画像形成を行った。形成した画像は3%印字パターンを使用した。
【0213】
画像形成開始前にトナーボックスと廃トナーボックスの重量を計量し、1000枚、3000枚、5000枚、7000枚、10000枚の画像形成毎に、それぞれの重量を計量し、トナーボックスの重量の変化値から画像1枚辺りの「トナー消費量」を求めた。同様に、1000枚、3000枚、5000枚、7000枚、10000枚の画像形成毎に廃トナーボックスおよびトナーボックスの重量を計量し、下記式から「転写率」を算出した。これらの結果を表2に示す。
【数2】

【0214】
<画像濃度の測定、文字画像の評価>
また、1000枚、3000枚、5000枚、7000枚、10000枚の画像形成毎に、文字画像、黒ベタ、白ベタの画像を形成した。「画像濃度」は、黒ベタの画像を、マクベス濃度計(マクベス社製、RD−920D)を使用して測定した。濃度計の校正は、黒標準1.8、白標準0.05にて行った。
【0215】
「文字画像」の評価は、文字の中抜けや文字太り文字細りを、文字画像を目視することにより行い、以下の基準で判定した。これらの結果を表2に示す。
[文字画像評価基準]
◎:非常によい
○:よい
【0216】
【表2】

【0217】
実施例29
表面を陽極酸化し、封孔処理を施した直径3cmのアルミニウムチューブ上に、実施例4と同様に作製した電荷発生層および電荷輸送層用塗布液を浸漬塗布法により順次塗布、乾燥して、膜厚が電荷発生層0.3μm、電荷輸送層18μmの電子写真感光体ドラムを作製した。このドラムをセイコーエプソン社製レーザープリンタ(LP−1800)に装着して、H/H環境で、文字画像、写真画像を形成した。3000枚耐刷したが、良好な画像が得られた。
【0218】
比較例15
電荷輸送物質(4)を使用する代わりに、化合物(C)を使用する以外は、実施例29と同様に、電子写真感光体ドラムを作製し、同様に、画像特性を調べたところ、3000枚耐刷以降に、カブリが認められた。
【0219】
製造例10(CG6の製造)
窒素雰囲気下、フタロニトリル66.6gをジフェニルメタン353mL中に懸濁し、40℃で四塩化チタン15.0gとジフェニルメタン25mLの混合液を添加した。約1時間かけて205〜210℃まで昇温後、四塩化チタン10.0gとジフェニルメタン16mLの混合液を滴下し、205〜210℃で5時間反応させた。生成物を130〜140℃で熱濾過後、N−メチルピロリドン(以下、「NMP」と略記する)、n−ブタノールで順次洗浄した。次いで、n−ブタノール600mL中にて2時間加熱還流を2回くり返し、NMP、水、メタノール懸洗をおこない、乾燥してB型オキシチタニウムフタロシアニン47.0gを得た。
【0220】
このB型オキシチタニウムフタロシアニン20.0gを、ガラスビーズ(φ1.0mm〜φ1.4mm)120mLと共にペイントシェーカーにて25時間振とうし、メタノールでオキシチタニウムフタロシアニンを洗い出し、濾過して無定型のオキシチタニウムフタロシアニンを得た。これを水210mLに懸濁させた後、トルエン40mLを添加して60℃にて1時間撹拌した。水をデカンテーションにて廃棄後、メタノール懸洗を行い、濾過、乾燥する結晶変換操作により、目的のオキシチタニウムフタロシアニン組成物(以下、「CG6」ということがある)19.0gを得た。
【0221】
得られたオキシチタニウムフタロシアニン組成物の、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルを図2に示す。このX線回折スペクトルでは、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.3°に最大回折ピークが観察された。得られたオキシチタニウムフタロシアニン組成物のマススペクトルを図3に示すが、マススペクトルではm/z:576に無置換オキシチタニウムフタロシアニンのピーク、m/z:610に塩素化オキシチタニウムフタロシアニンのピークが観察され、無置換オキシチタニウムフタロシアニンのピーク強度に対する塩素化オキシチタニウムフタロシアニンのピーク強度比を測定したところ0.028であった。
【0222】
製造例11(CG7の製造)
3−ヒドロキシナフタル酸無水物10部および3,4−ジアミノトルエン5.7部を、氷酢酸23部とニトロベンゼン115部との混合溶媒中に溶解攪拌し、酢酸沸点下にて、2時間反応させた。反応後室温に冷却し、析出した結晶を濾別し、メタノール20部にて洗浄した後、乾燥した。
【0223】
得られた固体3部をN−メチルピロリドン300部中に溶解し、次いで、2−(m−アミノフェニル)−5−(p−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールのテトラゾニウムホウフッ化水素酸塩のN−メチルピロリドン溶液を滴下し、30分間撹拌した。次いで、同温度下、酢酸ナトリウム飽和水溶液7部をゆっくりと滴下し、カップリング反応させた。滴下終了後、2時間同温度下、撹拌を続け、終了後、固体を濾取し、水、N−メチルピロリドン、メタノールにより洗浄後、乾燥し、下記8種化合物の組成物(以下、「CG7」ということがある)を得た。
【0224】
【化33】

上記式中、Zは、下記4種の構造からなる群より選ばれた1種の構造を示す。
【化34】

また、上記式中、Zは、下記4種の構造からなる群より選ばれた1種の構造を示す。
【化35】

【0225】
実施例31
実施例1で使用したCG1の代わりに、CG6を使用する以外は、実施例1と同様に電子写真感光体E1を作製し、実施例1と同様に電気特性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0226】
実施例32
実施例1で使用したバインダー樹脂(B1)の代わりに、下記バインダー樹脂(X1)(粘度平均分子量50,000)を使用する以外は、実施例1と同様に電子写真感光体E2を作製し、実施例1と同様に電気特性の評価を行った。結果を表3に示す。
【化36】

バインダー樹脂(X1)
【0227】
実施例33
実施例1で使用したバインダー樹脂(B1)の代わりに、下記バインダー樹脂(X2)(粘度平均分子量20,000)50部、前記バインダー樹脂(B2)を50部使用する以外は、実施例1と同様に電子写真感光体E3を作製し、実施例1と同様に電気特性の評価を行った。結果を表3に示す。
【化37】

バインダー樹脂(X2)
【0228】
実施例34
実施例1で使用した電荷輸送物質(1)の代わりに、下記の電荷輸送物質(7)を使用する以外は、実施例1と同様に電子写真感光体E4を作製し、実施例1と同様に電気特性の評価を行った。結果を表3に示す。
【化38】

電荷輸送物質(7)
【0229】
【表3】

【0230】
実施例35
平均一次粒径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業株式会社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3質量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、ヘンシェルミキサーにて混合して得られた表面処理酸化チタン50部と、メタノール120部を混合してなる原料スラリー1kgを、直径約100μmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製 YTZ)を分散メディアとして、ミル容積約0.15Lの寿工業株式会社製ウルトラアペックスミル(UAM−015型)を用い、ロータ周速10m/秒、液流量10kg/時間の液循環状態で1時間分散処理し、酸化チタン分散液を作製した。
【0231】
前記酸化チタン分散液と、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒、および、ε−カプロラクタム[下記式(A)で表わされる化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表わされる化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表わされる化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表わされる化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表わされる化合物]の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、出力1200Wの超音波発信器による超音波分散処理を1時間行い、さらに孔径5μmのPTFE製メンブレンフィルター(アドバンテック製 マイテックス LC)により濾過し、表面処理酸化チタン/共重合ポリアミドを質量比が3/1であり、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒の質量比が7/1/2であって、含有する固形分の濃度が18.0質量%の下引き層形成用分散液Aを得た。
【化39】

【0232】
この下引き層形成用分散液Aを、陽極酸化されていないアルミニウムシリンダー(外径30mm、長さ351mm、厚さ1.0mm)に浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が1.5μmとなるように下引き層を設けた。
【0233】
次に、CG7に、1,2−ジメトキシエタン30部加え、サンドグラインドミルで8時間粉砕し、微粒化分散処理を行った。続いて、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)0.75部、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、PKHH)0.75部を1,2−ジメトキシエタン28.5部に溶解したバインダー樹脂溶液と混合し、さらに1,2−ジメトキシエタンと4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンの任意割合の混合液13.5部を混合して、固形分濃度4.0質量%の電荷発生層塗布液を調製した。
【0234】
この電荷発生層塗布液を使用して、前記下引き層の上に、乾燥後の膜厚が0.3μm(0.3g/m)となるように電荷発生層を作製した。
【0235】
次に、電荷輸送物質(1)40部、と、下記構造を有する酸化防止剤3部、およびレベリング剤としてシリコーンオイル(商品名「KF96」、信越化学工業(株)製)0.05部、バインダー樹脂(B1)100部を、テトラヒドロフラン480部およびトルエン120部に溶解させて電荷輸送層塗布液を調整し、上述の電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が18μmとなるように浸漬塗布し、積層型感光層を有する電子写真感光体ドラムBE1を得た。
【0236】
【化40】

【0237】
比較例21
実施例35において使用した電荷輸送物質(1)の代わりに、前記化合物(C)を使用する以外は、実施例35と同様にして、電子写真感光体ドラムBH1を作製した
【0238】
<実施例35と比較例21の評価方法>
得られた各電子写真感光体ドラムを、感光体特性評価装置(三菱化学(株)製)に装着し、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性の評価を行った。
【0239】
各電子写真感光体ドラムを回転数30rpmの一定回転速度で回転させた。温度25℃、湿度50%の環境下、感光体の初期表面電位が−700Vとなるように帯電させ、露光にはハロゲンランプの光を干渉フィルターで427nmの単色光としたものを用いて、表面電位が−350Vとなる露光量(以下、感度ということがある)と、光量1.11μJ/cmで露光した時の表面電位(以下、VLという)を求めた。露光から電位測定までの時間は389ミリ秒とした。除電光には75ルックスの白色光を用いて、露光幅は5mmとした。除電光照射後の残留電位(以下、Vrという)を測定した。
【0240】
感度は、表面電位が初期の電位の1/2になるのに必要な露光量であり、数値の小さい方がより感度が高いものとなる。また、VLおよびVrは露光後の電位であり、より値の小さい方が電気特性として優れる。結果を下記表4に示す。
【0241】
【表4】

【0242】
比較例21では、電気特性が非常に悪く、測定不能であった。
【0243】
<実施例35と比較例21の画像評価>
A3印刷対応であるMICROLINE Pro 9800PS−E(沖データ社製)の露光部を改造し、日進電子製、小型スポット照射型青色LED(B3MP−8:470nm)が電子写真感光体に照射できるようにした。
【0244】
この改造装置に、電子写真感光体ドラムE2を装着し、線を描かせたところ、良好な画像が得られた。また、上記小型スポット照射型青色LEDに、ストロボ照明電源LPS−203KSを接続し、点を書かせたところ、半径8mmの点画像を得ることが出できた。
【産業上の利用可能性】
【0245】
本発明の電子写真感光体は、電気特性や画像特性に優れ、環境の変動による特性の変化が小さく、高耐久性を有するため、複写機、プリンター、普通紙ファックス、印刷機等、電子写真感光体が使用されるあらゆる分野に広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0246】
1.感光体
2.帯電装置(帯電ローラ)
3.露光装置
4.現像装置
5.転写装置
6.クリーニング手段
7.定着手段
41.現像槽
42.アジテータ
43.供給ローラ
44.現像ローラ
45.規制部材
71.上部定着部材
72.下部定着部材
73.加熱装置
T トナー
P 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に、電荷輸送層および電荷発生層を有する電子写真感光体において、該電荷輸送層が、下記一般式(1)で表される電荷輸送物質を含有し、該電荷発生層が、オキシチタニウムフタロシアニンを含有し、且つ該オキシチタニウムフタロシアニンがフタロシアニン結晶前駆体を化学的処理後、有機溶媒に接触して得られるものであって、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)9.5°、24.1°および27.2°に主たる回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンであることを特徴とする電子写真感光体。
【化1】

(一般式(1)において、Arは置換基を有してもよいアリーレン基、Ar〜Arは置換基を有してもよいアリール基を表し、nは3〜6の整数を表す)
【請求項2】
上記電荷輸送層がポリアリレート樹脂を含有するものである請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体を、帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置、クリーニング装置、および定着装置のうち1つまたは2つ以上と組み合わせてなることを特徴とするカートリッジ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体を搭載したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
上記電子写真感光体を波長380〜500nmの単色光により露光して画像を形成する請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
上記電子写真感光体を上記電子写真感光体に接触配置する帯電器により帯電して画像を形成する請求項4に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−248375(P2011−248375A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156633(P2011−156633)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【分割の表示】特願2006−325075(P2006−325075)の分割
【原出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】