説明

電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置

【課題】接触帯電方式の画像形成装置に用いてもひび割れが抑制される電子写真感光体を提供する。
【解決手段】導電性支持体2と、少なくとも感光層を含み前記導電性支持体2上に形成された1つ以上の層と、を備え、最表面層が、電荷輸送材料と、少なくとも下記一般式(1)で表される繰り返し単位及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有すると共にガラス転移温度が120℃以上150℃以下であるポリカーボネート樹脂と、を含有し、且つ前記ガラス転移温度よりも高い温度で乾燥して形成された層である、電子写真感光体である。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、感光体の表面層に特定の結着樹脂を用いるとともに、表面層中にフッ素系樹脂粒子を分散することにより、感光体の摩耗や摺擦傷を低減する方法が提案されている。
【0003】
また特許文献2には、感光層が、ブタジエン二量体と、ビフェノール共重合ポリカーボネートを含有する電子写真感光体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−337536号公報
【特許文献2】特開2007−122036公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、最外表面を構成する層が下記ポリカーボネート樹脂を含まない場合及び乾燥温度がポリカーボネート樹脂のガラス転移温度以下である場合に比較して、接触帯電方式の画像形成装置に用いてもひび割れが抑制される電子写真感光体を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、以下の発明が提供される。
請求項1に係る発明は、
支持体と、少なくとも感光層を含み前記支持体上に形成された1つ以上の層と、を備え、
最表面層が、電荷輸送材料と、少なくとも下記一般式(1)で表される繰り返し単位及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有すると共にガラス転移温度が120℃以上150℃以下であるポリカーボネート樹脂と、を含有し、且つ前記ガラス転移温度よりも高い温度で乾燥して形成された層である、電子写真感光体である。
【0007】
【化1】



【0008】
上記一般式(1)及び一般式(2)中、R、R、R、及びRは、各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を示し、Xは、−CR−(ただし、R及びRは、各々独立に、水素原子、トリフルオロメチル基、炭素数1以上6以下のアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を示す。)、炭素数5以上11以下の1,1−シクロアルキレン基、炭素数2以上10以下のα,ω−アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、又は−SO−を示し、k、l、m、及びnは、各々独立に、0以上4以下の整数を示す。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記電荷輸送材料として、2種類以上の電荷輸送材料を含有する、請求項1に記載の電子写真感光体である。
【0010】
請求項3に係る発明は、
前記電荷輸送材料の少なくとも1種は、ブタジエン構造を含む化合物である、請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体である。
【0011】
請求項4に係る発明は、
前記ブタジエン構造を含む化合物は、1分子中にブタジエン構造を3つ有する化合物である、請求項3に記載の電子写真感光体である。
【0012】
請求項5に係る発明は、
前記最表面層は、フッ素原子を含む粒子をさらに含有する、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の電子写真感光体である。
【0013】
請求項6に係る発明は、
支持体を準備する支持体準備工程と、
電荷輸送材料と前記一般式(1)で表される繰り返し単位及び前記一般式(2)で表される繰り返し単位を有すると共にガラス転移温度が120℃以上150℃以下であるポリカーボネート樹脂とを含有する塗布液を、前記支持体上に塗布する塗布工程と、
前記ガラス転移温度よりも高い温度で、前記支持体上に塗布された塗布液を乾燥し、最表面層を形成する最表面層形成工程と、
を有する、電子写真感光体の製造方法である。
【0014】
請求項7に係る発明は、
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体に直接接触して帯電させる接触帯電手段、前記電子写真感光体に形成された静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段、及び前記電子写真感光体の表面に残存したトナーを除去するトナー除去手段からなる群より選ばれる少なくとも1つと、
を備えるプロセスカートリッジである。
【0015】
請求項8に係る発明は、
前記接触帯電手段を備え、
前記接触帯電手段は、直流電圧のみを印加する方式の帯電手段である、請求項7に記載のプロセスカートリッジである。
【0016】
請求項9に係る発明は、
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体に直接接触して帯電させる接触帯電手段と、
前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、
を有する画像形成装置である。
【0017】
請求項10に係る発明は、
前記接触帯電手段は、直流電圧のみを印加する方式の帯電手段である、請求項9に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、最表面層が上記ポリカーボネート樹脂を含まない場合及び乾燥温度がポリカーボネート樹脂のガラス転移温度以下である場合に比較して、電子写真感光体を接触帯電方式の画像形成装置に用いても、電子写真感光体のひび割れが起こりにくいという効果が得られる。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、最表面層が2種類以上の電荷輸送材料を含有しない場合に比較して、電子写真感光体を接触帯電方式の画像形成装置に用いても、電子写真感光体のひび割れが起こりにくいという効果が得られる。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、電荷輸送材料がいずれもブタジエン構造を含まない場合に比較して、電子写真感光体を接触帯電方式の画像形成装置に用いても、電子写真感光体のひび割れが起こりにくいという効果が得られる。
【0021】
請求項4に係る発明によれば、ブタジエン構造を含む化合物が1分子中にブタジエン構造を3つ有さない場合に比較して、電子写真感光体の電気特性が良好になるという効果が得られる。
【0022】
請求項5に係る発明によれば、最表面層が、上記フッ素原子を含む粒子を含有しない場合に比較して、電子写真感光体を接触帯電方式の画像形成装置に用いても、電子写真感光体のひび割れが起こりにくいという効果が得られる。
【0023】
請求項6に係る発明によれば、上記ポリカーボネート樹脂を用いない場合及び最表面層形成工程においてポリカーボネート樹脂のガラス転移温度以下で乾燥する場合に比較して、接触帯電方式の画像形成装置に用いてもひび割れが起こりにくい電子写真感光体が得られる。
【0024】
請求項7に係る発明によれば、電子写真感光体の最表面層が上記ポリカーボネート樹脂を含まない場合及び電子写真感光体の最表面層がポリカーボネート樹脂のガラス転移温度以下で乾燥して形成された場合に比較して、電子写真感光体のひび割れに起因する画像不良が抑制されるという効果が得られる。
【0025】
請求項8に係る発明によれば、帯電部材に直流電圧と交流電圧との両方が印加される場合に比較して、電子写真感光体のひび割れに起因する画像不良が抑制されるという効果が得られる。
【0026】
請求項9に係る発明によれば、電子写真感光体の最表面層が上記ポリカーボネート樹脂を含まない場合及び電子写真感光体の最表面層がポリカーボネート樹脂のガラス転移温度以下で乾燥して形成された場合に比較して、電子写真感光体のひび割れに起因する画像不良が抑制されるという効果が得られる。
【0027】
請求項10に係る発明によれば、帯電部材に直流電圧と交流電圧との両方が印加される場合に比較して、電子写真感光体のひび割れに起因する画像不良が抑制されるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係る電子写真感光体の一部の断面を示す概略図である。
【図2】第1実施形態の画像形成装置の基本構成を示す概略図である。
【図3】第2実施形態の画像形成装置の基本構成を示す概略図である。
【図4】プロセスカートリッジの一例の基本構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は適宜省略する。
【0030】
本実施形態の電子写真感光体(以下、「感光体」と称する場合がある)は、支持体と、少なくとも感光層を含み前記支持体上に形成された1つ以上の層と、を備え、最表面層が、電荷輸送材料と、少なくとも下記一般式(1)で表される繰り返し単位及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有すると共にガラス転移温度が120℃以上150℃以下であるポリカーボネート樹脂(以下、「特定ポリカーボネート樹脂」と称する場合がある)と、を含有し、且つ前記ガラス転移温度よりも高い温度で乾燥して形成された層である、電子写真感光体である。
【0031】
【化2】



【0032】
上記一般式(1)及び一般式(2)中、R、R、R、及びRは、各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を示し、Xは、−CR−(ただし、R及びRは、各々独立に、水素原子、トリフルオロメチル基、炭素数1以上6以下のアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を示す。)、炭素数5以上11以下の1,1−シクロアルキレン基、炭素数2以上10以下のα,ω−アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、又は−SO−を示し、k、l、m、及びnは、それぞれ独立に、0以上4以下の整数を示す。
【0033】
また本実施形態における感光体の最表面層は、上記の通り電荷輸送材料及び特定ポリカーボネート樹脂を含有する層であり、かつ、その特定ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度よりも高い温度で乾燥して形成された層である。
本実施形態の感光体においては、上記構成であることにより、接触帯電方式の画像形成装置に用いても、ひび割れが起こりにくい。すなわち、本実施形態の感光体と、感光体に直接接触して帯電させる帯電手段と、を少なくとも備えた画像形成装置に用いられても、本実施形態の感光体においては、ひび割れが起こりにくい。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0034】
一般的に感光体を接触帯電方式の画像形成装置に用いると、非接触帯電方式の画像形成装置に用いる場合に比べて感光体のひび割れが起こりやすい。特に、高温高湿下における長期間の保管(例えば、45℃90%RHで7日間の保管等)や、高温高湿下における長期間の作動(例えば、28℃75%RHで1万枚の画像形成)を行う場合のように、大きな負荷が係る環境下においては、上記感光体のひび割れはさらに起こりやすくなる。そして感光体のひび割れが起こると、画像を形成する際に画像不良(例えば、画像濃度の低下や、筋状の画像欠陥等)が発生してしまう場合がある。
【0035】
上記感光体のひび割れが起こりやすくなる理由は定かではないが、接触帯電部材中に含まれるイオン導電剤や軟化剤等の低分子成分が感光体表面に付着することによって、感光体の表面を劣化させ、ひび割れや機能障害を生じさせるものと考えられている。そして、感光体の最表面層に電荷輸送材料が含まれている場合、電荷輸送材料が析出や結晶化すると、そこが出発点となって、さらに上記劣化が起こりやすくなり、ひび割れが起こりやすくなると考えられる。
【0036】
一方本実施形態では、耐油性や耐溶剤性に優れた樹脂である上記一般式(1)で表される繰り返し単位及び上記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂を用いている。そしてそのポリカーボネート樹脂の中でも、特にガラス転移温度が上記範囲の特定ポリカーボネート樹脂を選択して用い、かつ、特定ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度よりも高い温度で乾燥して形成された最表面層を有している。そのため、最表面層を形成する際に、上記特定ポリカーボネート樹脂がそのガラス転移温度よりも高い温度に加熱されることにより、電荷輸送材料が樹脂中に分散されやすくなると考えられる。そしてその結果、形成された最表面層中においては、電荷輸送材料が偏在せずに分散されているため、上記電荷輸送材料の析出や結晶化が起こりにくく、上記劣化の出発点が発生しにくいため、ひび割れが起こりにくくなると推測される。また本実施形態では、上記感光体のひび割れに加えて、感光体の機能障害(例えば、繰り返し使用時の耐久性の低下等)も抑制される。
【0037】
ここで、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、示差熱走査熱量分析計を用いた測定により得られた値である。具体的には、窒素雰囲気中にて10℃/minの昇温速度で40℃から200℃まで昇温する。そして、その後一旦冷却し、再度10℃/minの昇温速度で40℃から200℃まで昇温させ、2回目の測定において得られた値をガラス転移温度とする。
【0038】
特定ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、上記の通り120℃以上150℃以下であり、120℃以上150℃未満の範囲が好ましく、125℃以上145℃以下の範囲がより好ましい。
また、最表面層形成時における乾燥温度は、上記の通りポリカーボネート樹脂のガラス転移温度よりも高い温度である。そして、上記乾燥温度と上記ガラス転移温度との差は、0.1℃以上30℃以下の範囲が好ましく、5℃以上25℃以下の範囲がより好ましい。さらに上記乾燥温度は、良好な電子写真特性を得る観点から、150℃以下が好ましく、120℃以上150℃以下がより好ましい。
【0039】
また本実施形態では、感光体の最表面層中に2種類以上の電荷輸送材料が含有されていることが好ましい。2種類以上の電荷輸送材料が用いられていることにより、さらに電荷輸送材料の析出や結晶化が起こりにくくなるため、感光体表面を劣化させる出発点が発生しにくく、ひび割れが起こりにくくなると推測される。
【0040】
また本実施形態では、電荷輸送材料の少なくとも1種が、ブタジエン構造を含む化合物であることが好ましい。ブタジエン構造を含む化合物を電荷輸送材料として用いることにより、感光体のひび割れや機能障害がより起こりにくくなる。その理由は定かではないが、ブタジエン構造を含む化合物とポリカーボネート樹脂との親和性が高いことにより、電荷輸送材料とポリカーボネート樹脂との相溶性が向上し、電荷輸送材料の結晶化や析出が抑制されるためであると考えられる。よって、電荷輸送材料としてブタジエン構造を含む化合物を用いると、感光体の電気特性を向上させる目的で電荷輸送材料の含有量を多くしても(例えば最表面層中の含有量が40質量%以上50質量%以下の範囲でも)、感光体のひび割れが起こりにくくなると考えられる。
【0041】
また本実施形態では、電子輸送材料として、1分子中にブタジエン構造を3つ有する化合物(以下、「トリブタジエン化合物」と称する場合がある)を含むことが好ましい。電子輸送材料としてトリブタジエン化合物を用いることにより、最表面層の正孔輸送性が向上するため、感光体の電気特性が良好になること(例えば残留電位が低減する等)が考えられる。
【0042】
また本実施形態では、フッ素原子を含む粒子(以下、「フッ素粒子」と称する場合がある)が最表面層中に含まれることが好ましい。フッ素粒子が最表面層中に存在することにより、最表面層の表面摩擦力が低減し、使用時における表面の摺擦傷やクラック等の発生が抑制されると考えられる。そのため、上記摺擦傷やクラック等が出発点となって起こる上記劣化に起因するひび割れが抑制されると考えられる。
【0043】
上記の通り、本実施形態の感光体を画像形成装置に用いると、接触帯電方式の画像形成装置であっても、感光体のひび割れが抑制されるため、それに起因する上記画像不良が抑制される。すなわち、本実施形態の感光体と、感光体に直接接触して帯電させる接触帯電手段と、感光体を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、を有する画像形成装置では、感光体のひび割れに起因する画像不良が抑制される。
【0044】
また本実施形態では、上記接触帯電手段として、直流電圧のみを印加する方式の帯電手段を用いることが望ましい。直流電圧のみを印加することによって、感光体表面における傷の発生が抑制され、その傷を出発点とするひび割れが抑制される。
また本実施形態では、接触帯電手段の接触帯電部材に、イオン導電剤や軟化剤等の低分子成分が含まれていてもよい。すなわち、上記感光体を用いるため、接触帯電部材に低分子成分が含まれていても、感光体の上記ひび割れが抑制され、ひび割れに起因する画像不良が抑制される。上記低分子成分としては、例えば、ゴム材の低分子成分、可塑剤、加硫剤、加硫促進助剤等が挙げられる。
以下、本実施形態の感光体について、更に詳細に説明する。
【0045】
<電子写真感光体>
図1は本実施形態に係る電子写真感光体の一部の断面を概略的に示している。図1に示した電子写真感光体1は電荷発生層5と電荷輸送層6とが別個に設けられた機能分離型の感光層3を備えるもので、導電性支持体2上に下引き層4、電荷発生層5、電荷輸送層6がこの順序で積層された構造を有している。電荷輸送層6は感光体1における最表面層(導電性支持体2から最も遠い側に配置される層)であり、詳細は後述するが、特定ポリカーボネート樹脂と、電荷輸送材料と、を含有して構成されている。
なお本明細書において、絶縁性とは、体積抵抗率で1012Ωcm以上の範囲を意味する。一方、導電性とは、体積抵抗率で1010Ωcm以下の範囲を意味する。
以下、感光体1の各要素について説明する。
【0046】
−導電性支持体−
導電性支持体2としては、従来から使用されているものであれば、如何なるものを使用してもよい。例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類、及びアルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、ITO等の薄膜を設けたプラスチックフィルム等、導電性付与剤を塗布又は含浸させた紙、プラスチックフィルム等が挙げられる。
支持体2の形状はドラム状に限られず、シート状、プレート状としてもよい。
【0047】
導電性支持体2として金属パイプを用いる場合、表面は素管のままであってもよいし、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニングなどの処理が行われていてもよい。
【0048】
−下引き層−
下引き層4は、支持体2の表面における光反射の防止、支持体2から感光層3への不要なキャリアの流入の防止などの目的で、必要に応じて設けられる。
下引き層4としては、アルミニウム、銅、ニッケル、銀などの金属粉体や、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛などの導電性金属酸化物や、カーボンファイバ、カーボンブラック、グラファイト粉末などの導電性物質等を結着樹脂に分散し、支持体2上に塗布して形成したものが挙げられる。
【0049】
下引き層4に含まれる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などが用いられる。
下引き層4の形成の際には、上記成分を溶媒に加えた塗布液(下引き層形成用の塗布液)が使用される。溶媒としては、例えば、有機溶剤が挙げられる。
【0050】
下引き層形成用の塗布液を支持体2上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
下引き層4の厚さは15μm以上が望ましく、20μm以上50μm以下がより望ましい。
【0051】
−中間層−
電気特性向上、画質向上、画質維持性向上、感光層接着性向上などのために、下引き層4上に必要に応じて中間層(図示せず)をさらに設けてもよい。中間層に用いられる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子などを含有する有機金属化合物などがある。
中間層の形成は、例えば上記結着樹脂を溶媒に溶解させた塗布液を用いる。塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の公知の方法が用いられる。
中間層の厚さは例えば0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。また、この中間層を下引き層4として使用してもよい。
【0052】
−電荷発生層−
電荷発生層5は、電荷発生材料が結着樹脂中に分散して形成されている。
電荷発生材料としては、無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等のフタロシアニン顔料が使用され、特に、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.7゜、9.3゜、16.9゜、17.5゜、22.4゜及び28.8゜に強い回折ピークを有する無金属フタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも9.6゜、24.1゜及び27.2゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶等が使用される。その他、電荷発生材料としては、キノン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスベンゾイミダゾール顔料、アントロン顔料、キナクリドン顔料等が使用される。これらの電荷発生材料は、単独又は2種以上を混合して使用される。
【0053】
電荷発生層における結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が用いられる。これらの結着樹脂は、単独あるいは2種以上混合して用いられる。
電荷発生材料と結着樹脂の配合比(質量比)は、使用する材料にもよるが例えば10:1から1:10の範囲である。
【0054】
電荷発生層5の形成の際には、上記成分を溶剤に加えた塗布液が使用される。
電荷発生材料を結着樹脂中に分散させるために、塗布液には分散処理が施される。分散手段としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や、液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0055】
このようにして得られる電荷発生層形成用の塗布液を下引き層4上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
電荷発生層5の厚さは、望ましくは0.01μm以上5μm以下、より望ましくは0.05μm以上2.0μm以下の範囲に設定される。
【0056】
−電荷輸送層−
電荷輸送層6は、前述の通り、少なくとも結着樹脂として、上記一般式(1)で表される繰り返し単位及び上記一般式(2)で表される繰り返し単位を有しガラス転移温度が150℃以下の特定ポリカーボネート樹脂を含み、その他に電荷輸送材料を少なくとも含む。また電荷輸送層6は、必要に応じて、フッ素粒子やその他の成分を含んでもよい。
【0057】
(特定ポリカーボネート樹脂)
特定ポリカーボネート樹脂は、上記の通り、上記一般式(1)で表される繰り返し単位及び上記一般式(2)で表される繰り返し単位を有し、かつ、ガラス転移温度が150℃以下である。
また特定ポリカーボネート樹脂としては、例えば、下記一般式(3)で表される4,4′−ジヒドロキシビフェニル化合物及び下記一般式(4)で表されるビスフェノール化合物を原料として用い、ホスゲン等の炭酸エステル形成性化合物との重縮合又はビスアリールカーボネートとのエステル交換反応等の方法によって得られる樹脂が挙げられる。
【0058】
【化3】



【0059】
上記一般式(3)及び一般式(4)中、R、R、R、R、X、k、l、m、及びnは、上記一般式(1)及び一般式(2)中のR、R、R、R、X、k、l、m、及びnと同様である。
【0060】
一般式(1)及び一般式(2)中のR、R、R、及びRは、上記の通り各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基であり、その中でも炭素数1以上6以下のアルキル基が好ましく、さらにメチル基がより好ましい。
また一般式(2)中のXは、−CR−、炭素数5以上11以下の1,1−シクロアルキレン基が好ましく、−CR−がより好ましい。また前記−CR−中のR及びRは、各々独立に、炭素数1以上6以下のアルキル基又は炭素数6以上12以下のアリール基が好ましく、その中でもメチル基又はフェニル基がより好ましい。
さらに一般式(1)及び一般式(2)中のk、l、m、及びnは、上記の通り各々独立に、0以上4以下の整数であり、その中でも0又は1が好ましい。
【0061】
特定ポリカーボネート樹脂中における一般式(1)で表される繰り返し単位の含有率としては、一般式(1)で表される繰り返し単位及び一般式(2)で表される繰り返し単位の合計に対し、例えば5モル%以上35モル%以下の範囲が挙げられる。
特定ポリカーボネート樹脂中に、上記一般式(1)で表される繰り返し単位及び上記一般式(2)で表される繰り返し単位以外の、その他の繰り返し単位が含まれる場合、特定ポリカーボネート樹脂を構成する繰り返し単位全体に対するその他の繰り返し単位の含有率は、例えば30モル%以下の範囲が挙げられる。
【0062】
また特定ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量としては、例えば20,000以上80,000以下の範囲が挙げられる。
なお、上記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量の測定方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。具体的には、例えば、樹脂1gをメチレンクロライド100cmに均一溶解し、25℃の測定環境下でウベローデ粘度計で、その比粘度ηspを測定し、ηsp/c=〔η〕+0.45〔η〕cの関係式(ただしcは濃度(g/cm)より極限粘度〔η〕(cm/g)をもとめ、H.Schnellによって与えられている式、〔η〕=1.23×10−4Mv0.83の関係式より粘度平均分子量Mvをもとめる一点測定法が用いられる。
【0063】
上記一般式(1)で表される繰り返し単位及び上記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂の中でも、ガラス転移温度が150℃以下のポリカーボネート樹脂としては、例えば上記一般式(2)のR、Rがメチル基、Xが−CR−で、R、Rがメチル基のものが挙げられる。
【0064】
特定ポリカーボネート樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。また、所望に応じて本発明の目的を阻害しない範囲で、特定ポリカーボネート樹脂以外の樹脂(すなわち、他のポリカーボネート樹脂や他の樹脂等)を結着樹脂成分として含有させてもよい。特定ポリカーボネート樹脂以外の樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、およびポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等があげられる。
電荷輸送層6中に、特定ポリカーボネート樹脂以外の樹脂を含有させる場合は、電荷輸送層6全体に対し、例えば30質量%以下の範囲で含有させてもよい。
【0065】
(電荷輸送材料)
電荷輸送材料としては、例えば、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、N,N′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4′−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4′−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体などの正孔輸送物質、クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質、および上記した化合物からなる基を主鎖または側鎖に有する重合体などが挙げられる。
【0066】
また、電荷輸送材料として、上記ブタジエン構造を含む化合物を用いる場合、ブタジエン構造を含む化合物としては、例えば、下記一般式(5)で表される化合物、又は下記一般式(6)で表される化合物が挙げられる。
なお、電荷輸送材料として2種類以上の化合物を用い、そのうちの少なくとも1種がブタジエン構造を含む化合物である場合、ブタジエン構造を含む化合物とその他の電荷輸送材料の重量比としては、例えば1:5から5:1の範囲が挙げられる。
【0067】
【化4】

【0068】
上記一般式(5)中、R、R、R、R10、R11、R12、及びR13は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、低級アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよいアリ−ル基を示す。nは0又は1を示す
【0069】
【化5】



【0070】
上記一般式(6)中、R14、R15、R16、R17、R18、及びR19は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、低級アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよいアリ−ル基を示す。m及びnは0又は1を示す
【0071】
上記一般式(5)中のR、R、R、R10、R11、R12、及びR13は、上記の中でも、水素原子、低級アルキル基、又はアルコキシ基が好ましく、水素原子、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数1以上3以下のアルコキシ基が好ましい。また、上記一般式(5)中のnは1が好ましい。
上記一般式(6)中のR14、R15、R16、R17、R18、及びR19は、上記の中でも、水素原子、低級アルキル基、又はアルコキシ基が好ましく、水素原子、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数1以上3以下のアルコキシ基が好ましい。また、上記一般式(6)中のmは1が好ましく、nは1が好ましい。
【0072】
上記一般式(5)で表される化合物の好ましい具体例である例示化合物1−1から1−32と、上記一般式(6)で表される化合物の好ましい具体例である例示化合物2−1から2−20と、における置換基等(すなわち、RからR19で示される置換基、並びにm及びnで示される数)を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
なお、上記トリブタジエン化合物は、一般式(6)で表される化合物のうち、m=1かつn=1である化合物である。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】



【0075】
電荷輸送層中における結着樹脂と電荷輸送材料との質量比としては、例えば2:8からい8:2の範囲が挙げられる。
【0076】
(電荷輸送層形成用の塗布液)
電荷輸送層6は、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用の塗布液を用いて形成される。
上記溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。また、これらの溶剤は、単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。混合して使用される溶剤は、混合溶剤として結着樹脂を溶解するものであれば、いかなるものでもよい。
【0077】
(フッ素粒子)
電荷輸送層6は、上記の通りフッ素粒子を含んでもよい。
フッ素粒子としては、例えばフッ素樹脂の粒子が挙げられ、フッ素樹脂としては、例えば、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂およびそれらの共重合体等が挙げられる。これらの中でも特に、4フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が好ましい。
【0078】
フッ素粒子の一次粒径としては、例えば0.05μm以上1μm以下の範囲が挙げられ、0.1μm以上0.5μm以下の範囲であってもよい。
電荷輸送層6中におけるフッ素粒子の含有量としては、例えば2質量%以上15質量%以下の範囲が挙げられる。
【0079】
上記電荷輸送層形成用の塗布液中にフッ素粒子を分散させるための分散方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー等のメディアレス分散機を利用する方法が挙げられる。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0080】
また、塗布液中におけるフッ素粒子の分散安定剤として、例えば、フッ素系界面活性剤や、フッ素系グラフトポリマーを用いてもよい。フッ素系グラフトポリマーとしては、例えば、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、スチレン化合物等からなるマクロモノマー及びパーフルオロアルキルエチルメタクリレートよりグラフト重合された樹脂等が挙げられる。
上記フッ素系界面活性剤やフッ素系グラフトポリマーの添加量としては、例えば、フッ素粒子の質量に対して1%以上5%以下の質量が挙げられる。
【0081】
画像形成装置中で発生するオゾンや窒素酸化物、あるいは光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、感光層3を構成する各層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤などの添加剤を添加してもよい。例えば、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機リン化合物等が挙げられる。光安定剤の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペン等の誘導体が挙げられる。
【0082】
(電荷輸送層の形成方法)
電荷輸送層6の形成方法としては、例えば、下引き層4及び電荷発生層5が形成された導電性基体2の電荷発生層5上に、上記電荷輸送層形成用の塗布液を塗布し、塗布液に含まれる特定ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度よりも高い温度で乾燥することにより、電荷発生層6を形成する方法が挙げられる。
【0083】
上記電荷輸送層形成用の塗布液を電荷発生層5上に塗布する方法としては、例えば、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
そして上記塗布液を電荷発生層5上に塗布した後、加熱乾燥工程により塗布液中の溶剤を除去する。電荷輸送層6の膜厚としては、例えば5μm以上50μm以下の範囲が挙げられ、10μm以上40μm以下の範囲であってもよい。
【0084】
なお、本実施形態の感光体1は、電荷発生層5と電荷輸送層6を有する機能分離型であり、電荷輸送層6が最表面層であるが、例えば電荷発生層と電荷輸送層とを兼ねた一層の感光層を有する機能一体型を採用してもよい。すなわち本実施形態の感光体は、例えば、導電性支持体上に、下引き層と、電荷発生層及び電荷輸送層を兼ねた一層の感光層と、がこの順序で積層された構造であってもよく、その場合は感光層が上記最表面層となる。また本実施形態の感光体は、下引き層を有さない構成であってもよい。
さらに、本実施形態の感光体1は、電荷輸送層6が最表面層であるが、電荷輸送層上にさらに保護層が形成された構成であってもよく、その場合は保護層が上記最表面層となる。
【0085】
また上記感光体1の製造方法は、導電性支持体2を準備する支持体準備工程と、下引き層4を形成する工程と、電荷発生層5を形成する工程と、下引き層4及び電荷発生層5が形成された導電性支持体2上に電荷輸送層形成用の塗布液を塗布する塗布工程と、導電性支持体2上に塗布された塗布液を乾燥して最表面層を形成する最表面層形成工程と、を有するが、支持体準備工程、塗布工程、及び最表面層形成工程を含めばよい。
【0086】
次に、本実施形態に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置及びプロセスカートリッジについて説明する。
【0087】
<画像形成装置>
−第1実施形態−
図2は、第1実施形態の画像形成装置の基本構成を概略的に示している。図2に示す画像形成装置200は、本実施形態の電子写真感光体1と、電源209に接続され、電子写真感光体1を帯電させる接触帯電方式の帯電装置208と、帯電装置208により帯電された電子写真感光体1を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成装置(露光装置)210と、露光装置210により形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像装置211と、電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像を被転写媒体500に転写する転写装置212と、転写後、電子写真感光体1の表面に残留するトナーを除去するトナー除去装置213と、電子写真感光体1の残留電位を除去する除電器214と、被転写媒体500に転写されたトナー像を被転写媒体500に定着させる定着装置215と、を備える。なお、例えば、除電器214は必ずしも設けられている必要はない。
【0088】
帯電装置208は帯電部材を有しており、感光体1を帯電させる際には帯電部材に電圧が印加される。電圧の範囲としては、直流電圧を印加する場合、要求される感光体帯電電位に応じて正又は負の50V以上2000V以下が望ましく、100V以上1500V以下がより望ましい。交流電圧を重畳する場合は、ピーク間電圧が400V以上1800V以下、望ましくは800V以上1600V以下、さらに望ましくは1200V以上1600V以下が望ましい。交流電圧の周波数は50Hz以上20000Hz以下、望ましくは100Hz以上5000Hz以下である。
【0089】
帯電部材としては、例えば、ローラ、ブラシ、フィルム等が挙げられる。その中でもローラ状の帯電部材(以下、「帯電ローラ」と称する場合がある)としては、例えば電気抵抗が10Ω以上10Ω以下の範囲に調整された材料から構成されるものが挙げられる。また帯電ローラは、単層でもよく、複数の層から構成されていてもよい。
帯電部材として帯電ローラを用いる場合、感光体1に接触する圧力としては、例えば、250mgf以上600mgf以下の範囲が挙げられる。
【0090】
帯電部材を構成する材質としては、例えば、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)、エピクロルヒドリンゴム等の合成ゴムやポリオレフィン、ポリスチレン、塩化ビニル等からなるエラストマーを主材料とし、導電性カーボン、金属酸化物、イオン導電剤等の導電性付与剤を適量配合したもの等が挙げられる。
さらにナイロン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーン等の樹脂を塗料化し、そこに導電性カーボン、金属酸化物、イオン導電剤等の導電性付与剤を適量配合し、得られた塗料をデイッピング、スプレー、ロールコート等の手法により、積層して用いてもよい。
【0091】
露光装置210としては、電子写真感光体表面を、半導体レーザ、LED(Light Emitting Diode)、液晶シャッター等の光源により所望の像様に露光する光学系装置等が用いられる。
【0092】
現像装置211としては、一成分系、二成分系等の正規又は反転現像剤を用いた公知の現像装置等が用いられる。現像装置211に使用されるトナーの形状については、特に制限はなく、不定形、球形あるいは他の特定形状のものを使用してもよい。
【0093】
転写装置212としては、ローラー状の接触型帯電部材の他、ベルト、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、あるいはコロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等、が挙げられる。
【0094】
トナー除去装置213は、転写工程後の電子写真感光体1の表面に付着する残存トナーを除去するためのもので、これにより清浄面化された電子写真感光体1は上記の画像形成プロセスに繰り返し供される。トナー除去装置213としては、異物除去部材(クリーニングブレード)の他、ブラシクリーニング、ロールクリーニング等が用いられるが、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが望ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0095】
−第2実施形態−
図3は第2実施形態の画像形成装置の基本構成を概略的に示している。図3に示す画像形成装置220は中間転写方式の画像形成装置であり、ハウジング400内において4つの電子写真感光体1a,1b,1c,1dが中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。例えば、感光体1aがイエロー、感光体1bがマゼンタ、感光体1cがシアン、感光体1dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成する。
【0096】
ここで、画像形成装置220に搭載されている電子写真感光体1a,1b,1c,1dは、それぞれ本実施形態の電子写真感光体である。
電子写真感光体1a,1b,1c,1dはそれぞれ一方向(紙面上は反時計回り)に回転し、その回転方向に沿って帯電ロール402a,402b,402c,402d、現像装置404a,404b,404c,404d、1次転写ロール410a,410b,410c,410d、クリーニングブレード415a,415b,415c,415dが配置されている。現像装置404a,404b,404c,404dはそれぞれトナーカートリッジ405a,405b,405c,405dに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーを供給し、また、1次転写ロール410a,410b,410c,410dはそれぞれ中間転写ベルト409を介して電子写真感光体1a,1b,1c,1dに接している。
【0097】
さらに、ハウジング400内にはレーザ光源(露光装置)403が配置されており、レーザ光源403から出射されたレーザ光を帯電後の電子写真感光体1a,1b,1c,1dの表面に照射する。これにより、電子写真感光体1a,1b,1c,1dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニング(トナー等の異物除去)の各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。中間転写ベルト409は駆動ロール406、背面ロール408及び支持ロール407によって張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転する。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介して背面ロール408と接するように配置されている。背面ロール408と2次転写ロール413との間を通った中間転写ベルト409は、例えば駆動ロール406と対向して配置されたクリーニングブレード416により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
【0098】
また、ハウジング400内には被転写媒体を収容する容器411が設けられており、容器411内の紙などの被転写媒体500が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413との間、さらには相互に接する2個の定着ロール414の間に順次移送された後、ハウジング400の外部に排出される。
【0099】
なお、上述の説明においては中間転写体として中間転写ベルト409を使用する場合について説明したが、中間転写体は、上記中間転写ベルト409のようにベルト状であってもよいし、ドラム状であってもよい。ベルト状とする場合、中間転写体の基材を構成する樹脂材料としては、公知の樹脂が用いられる。例えば、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンテレフタレート(PAT)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド等の樹脂材料及びこれらを主原料としてなる樹脂材料が挙げられる。さらに、樹脂材料と弾性材料をブレンドして用いてもよい。
【0100】
また、上記実施形態にかかる被転写媒体とは、電子写真感光体上に形成されたトナー像を転写する媒体であれば特に制限はない。例えば、図2に示した第1実施形態のように電子写真感光体1から直接、紙等の被転写媒体に転写する場合は、紙等が被転写媒体である。また、図3に示した第2実施形態のように中間転写体を用いる場合には、中間転写体が被転写媒体である。
【0101】
<プロセスカートリッジ>
図4は、本実施形態の電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジの一例の基本構成を概略的に示している。このプロセスカートリッジ300は、電子写真感光体1と共に、電子写真感光体1を帯電させる接触帯電方式の帯電装置208、露光により電子写真感光体1上に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像装置211、転写後、電子写真感光体1の表面に残留するトナーを除去するトナー除去装置213、露光のための開口部218、及び、除電露光のための開口部217を、取り付けレール216を用いて組み合わせて一体化したものである。
【0102】
そして、このプロセスカートリッジ300は、電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像を被転写媒体500に転写する転写装置212と、被転写媒体500に転写されたトナー像を被転写媒体500に定着させる定着装置215と、図示しない他の構成部分とからなる画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成する。
【実施例】
【0103】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
−下引き層の形成−
酸化亜鉛粒子(テイカ社製、平均粒子径:70nm、比表面積値:15m/g)100質量部をメタノール500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤として、KBM603(信越化学社製)1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後、メタノールを減圧蒸留にて除去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤で表面処理した酸化亜鉛粒子を得た。
【0104】
前記シランカップリング剤で表面処理を施した酸化亜鉛粒子60質量部と、アリザリン0.6質量部と、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3173、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部と、ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15質量部とを、メチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)4.0質量部とを添加し、下引き層形成用の塗布液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法にて直径30mmのアルミニウム基材上に塗布し、180℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ25μmの下引き層を得た。
【0105】
−電荷発生層の形成−
次に、電荷発生材料として、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶15質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10質量部及びn−ブチルアルコール300質量部からなる混合物を、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散して電荷発生層用の塗布液を得た。この電荷発生層形成用の塗布液を前記下引き層上に浸漬塗布し、乾燥して、厚みが0.2μmの電荷発生層を得た。
【0106】
−電荷輸送層の形成−
次に、4フッ化エチレン樹脂粒子(平均粒径:0.2μm)0.6質量部及びフッ化アルキル基含有メタクリルコポリマー(重量平均分子量:30000)0.015質量部を、テトラヒドロフラン4質量部、トルエン1質量部とともに20℃の液温に保ち、48時間攪拌混合し、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を得た。
【0107】
次に、結着樹脂として下記構造式(7)で表される繰り返し単位及び下記構造式(8)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネート重合体(ガラス転移温度130℃、粘度平均分子量55,000)6質量部、電荷輸送物質として下記化合物(A)2質量部及び下記化合物(B)2質量部、酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.1質量部を混合して、テトラヒドロフラン24質量部及びトルエン11質量部を混合した溶剤に溶解し、溶液を得た。なお、上記ポリカーボネート重合体を構成する繰り返し単位全体に対し、下記構造式(7)で表される繰り返し単位の含有量は20モル%であり、下記構造式(8)で表される繰り返し単位の含有量は80モル%であった。
【0108】
【化6】



【0109】
【化7】



【0110】
得られた上記溶液に前記4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を加えて攪拌混合した縣濁液を、微細な流路を持つ貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー(吉田機械興行株式会社製)を用いて、500kgf/cmまで昇圧しての分散処理を6回繰り返した液に、フッ素変性シリコーンオイル(商品名:FL−100 信越シリコーン社製)を5ppm添加し、撹拌して電荷輸送層形成用塗布液を得た。
この塗布液を電荷発生層上に塗布して135℃で30分間乾燥し、膜厚が25μmの電荷輸送層を形成し、実施例1の電子写真感光体を得た。
【0111】
<実施例2>
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液において、電荷輸送物質である上記化合物(A)を、上記一般式(5)で表される化合物の具体例で示した例示化合物1−17に代えた以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調製し、これを用いて実施例1と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、実施例2の電子写真感光体を得た。
【0112】
<実施例3>
実施例2の電荷輸送層形成用塗布液において、電荷輸送物質である上記化合物(A)を2.5質量部、例示化合物1−17を2.5質量部、結着樹脂を5質量部、に代えた以外は、実施例2と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調製し、これを用いて実施例2と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、実施例3の電子写真感光体を得た。
【0113】
<実施例4>
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液において、電荷輸送物質である上記化合物(A)を、上記一般式(6)で表される化合物の具体例で示した例示化合物2-11に代えた以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調製し、これを用いて実施例1と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、実施例4の電子写真感光体を得た。
【0114】
<実施例5>
実施例4の電荷輸送層形成用塗布液において、電荷輸送物質である上記化合物(A)を2.5質量部、例示化合物2−11を2.5質量部、結着樹脂を5質量部、に代えた以外は、実施例4と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調製し、これを用いて実施例4と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、実施例5の電子写真感光体を得た。
【0115】
<実施例6>
実施例4の電荷輸送層形成用塗布液において、結着樹脂を、下記構造式(9)で表される繰り返し単位、下記構造式(10)で表される繰り返し単位、及び下記構造式(11)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネート重合体(ガラス転移温度145℃、粘度平均分子量50,000)に代え、塗布後の乾燥温度を150℃に代えた以外は、実施例4と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調製し、これを用いて実施例4と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、実施例6の電子写真感光体を得た。なお、上記ポリカーボネート重合体を構成する繰り返し単位全体に対し、下記構造式(9)で表される繰り返し単位の含有量は20モル%であり、下記構造式(10)で表される繰り返し単位の含有量は40モル%であり、下記構造式(11)で表される繰り返し単位の含有量は40モル%であった。
【0116】
【化8】



【0117】
<実施例7>
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液において、電荷輸送物質として化合物(A)4質量部のみを用いた以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調製し、これを用いて実施例1と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、実施例7の電子写真感光体を得た。
【0118】
<実施例8>
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液において、電荷輸送物質として化合物(B)4質量部のみを用いた以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調製し、これを用いて実施例1と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、実施例8の電子写真感光体を得た。
【0119】
<実施例9>
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液において、電荷輸送物質として上記例示化合物1−17を4質量部のみ用いた以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調製し、これを用いて実施例1と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、実施例9の電子写真感光体を得た。
【0120】
<比較例1>
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液において、結着樹脂をビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(ガラス転移温度175℃、粘度平均分子量50,000)に代えた以外は実施例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調製し、これを用いて実施例1と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、比較例1の電子写真感光体を得た。
【0121】
<比較例2>
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液において、結着樹脂を、下記構造式(12)で表される繰り返し単位、及び下記構造式(13)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネート重合体(ガラス転移温度171℃、粘度平均分子量60,000)に代えた以外は実施例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調製し、これを用いて実施例1と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、比較例2の電子写真感光体を得た。なお、上記ポリカーボネート重合体を構成する繰り返し単位全体に対し、下記構造式(12)で表される繰り返し単位の含有量は30モル%であり、下記構造式(13)で表される繰り返し単位の含有量は70モル%であった。
【0122】
【化9】



【0123】
<比較例3>
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液において、結着樹脂を下記構造式(14)で表される繰り返し単位、及び下記構造式(15)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネート重合体(ガラス転移温度150℃、粘度平均分子量55,000)に代え、塗布後の乾燥温度を150℃に代えた以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調製し、これを用いて実施例1と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、比較例3の電子写真感光体を得た。なお、上記ポリカーボネート重合体を構成する繰り返し単位全体に対し、下記構造式(14)で表される繰り返し単位の含有量は50モル%であり、下記構造式(15)で表される繰り返し単位の含有量は50モル%であった。
【0124】
【化10】



【0125】
<実施例10>
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液において、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を用いないこと以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を調製し、これを用いて実施例1と同様にして電荷発生層上に厚さ25μmの電荷輸送層を形成し、実施例10の電子写真感光体を得た。
【0126】
<感光体の評価>
−帯電ロールの作製−
下記組成の混合物をオープンロールで混練りし、SUS303からなる直径8mmの導電性支持体表面に接着層を介してプレス成形機を用いて直径15mmのロールを形成、その後研磨により直径14mmの導電性弾性ロールを得た。
【0127】
・ゴム材(エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム Gechron3106:日本ゼオン社製):100質量部
・導電剤(カーボンブラック アサヒサーマル:旭カーボン社製):15質量部
・導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製):5質量部
・イオン導電剤(過塩素酸リチウム):1質量部
・加硫剤(硫黄 200メッシュ:鶴見化学工業社製):1質量部
・加硫促進剤(ノクセラーDM:大内新興化学工業社製):2.0質量部
・加硫促進剤(ノクセラーTT:大内新興化学工業社製):0.5質量部
・加硫促進助剤(酸化亜鉛 酸化亜鉛1種:正同化学工業社製):3質量部
・ステアリン酸:1.5質量部
【0128】
次に、下記組成の混合物をビーズミルにて分散し得られた分散液をメチルエチルケトンで希釈し、前記導電性弾性ロールAの表面に浸漬塗布した後、180℃で30分間加熱乾燥し、厚さ7μmの表面層を形成し、評価用帯電ロールを得た。
【0129】
・高分子材料(飽和共重合ポリエステル樹脂溶液 バイロン30SS:東洋紡績社製):100質量部
・硬化剤(アミノ樹脂溶液 スーパーベッカミンG−821−60:大日本インキ化学工業社製):26.3質量部
・導電剤(カーボンブラック MONARCH1000:キャボット社製、比表面積:343m 2 /g、DBP吸油量:105ml/100g、pH:2.5):10質量部
【0130】
−保管安定性評価(初期)−
実施例及び比較例の電子写真感光体と、前記評価用帯電ロールをDocuCentre 505a(富士ゼロックス社製)のドラムカートリッジに装着し、45℃、90%RHで7日間保管した後、DocuCentre 505aの改造機に組込み、帯電手段に400Vの直流電圧を印加して50%ハーフトーン画像を印刷したときの画像ディフェクトより以下の基準で判定した。結果を表3に示す。
【0131】
A:画像ディフェクト発生なし。
B:許容範囲の薄い帯状の画像ディフェクトが、帯電ロールの回転ピッチ毎に発生。
C:帯状の画像ディフェクトが、帯電ロールの回転ピッチ毎に発生。
【0132】
−長期使用耐久性評価−
実施例及び比較例の電子写真感光体をDocuCentre 505aの改造機に装着し、低温低湿(10℃、20%RH)の環境下にて1万枚の画像形成テストを行い、次に、高温高湿(28℃、75%RH)の環境下で1万枚の画像形成テストを行った。その後、50%ハーフトーン(黒)の画像形成を行い、得られた画像を下記指標で評価した。結果を表3に示す。
【0133】
A:良好
B:わずかに画像濃度低下
C:スジ状の画像欠陥が画像として問題ない程度発生
D:スジ状の画像欠陥が著しく発生
【0134】
−保管安定性評価(長期使用後)−
上記の長期使用耐久性評価を行った後に、再び上記「保管安定性評価(初期)」と同様の評価を実施した。評価基準も上記と同様である。結果を表3に示す。
【0135】
【表3】



【0136】
上記評価結果より、実施例の電子写真感光体は、比較例の電子写真感光体に比べ、長期使用耐久性が良好であることが確認された。
【0137】
以上、実施形態及び実施例について説明したが、これらに限定されない。例えば、本実施形態に係る電子写真感光体は、図2及び図3に示した画像形成装置に限定されず、電子写真方式、静電記録方式、イオノグラフィー、磁気記録方式等の画像形成方法を採用し、カラーや白黒の画像を形成する複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に使用される。
【符号の説明】
【0138】
1,1a,1b,1c,1d 電子写真感光体、2 支持体、3 感光層、4下引き層、5 電荷発生層、6電荷輸送層、200 画像形成装置、208 帯電装置、210 露光装置、211 現像装置、212 転写装置、213 トナー除去装置、214 除電器、215定着装置、220 画像形成装置、300 プロセスカートリッジ、404a,404b,404c,404d 現像装置、500 被転写媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、少なくとも感光層を含み前記支持体上に形成された1つ以上の層と、を備え、
最表面層が、電荷輸送材料と、少なくとも下記一般式(1)で表される繰り返し単位及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有すると共にガラス転移温度が120℃以上150℃以下であるポリカーボネート樹脂と、を含有し、且つ前記ガラス転移温度よりも高い温度で乾燥して形成された層である、電子写真感光体。
【化1】



〔上記一般式(1)及び一般式(2)中、R、R、R、及びRは、各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を示し、Xは、−CR−(ただし、R及びRは、各々独立に、水素原子、トリフルオロメチル基、炭素数1以上6以下のアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を示す。)、炭素数5以上11以下の1,1−シクロアルキレン基、炭素数2以上10以下のα,ω−アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、又は−SO−を示し、k、l、m、及びnは、各々独立に、0以上4以下の整数を示す。〕
【請求項2】
前記電荷輸送材料として、2種類以上の電荷輸送材料を含有する、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記電荷輸送材料の少なくとも1種は、ブタジエン構造を含む化合物である、請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記ブタジエン構造を含む化合物は、1分子中にブタジエン構造を3つ有する化合物である、請求項3に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記最表面層は、フッ素原子を含む粒子をさらに含有する、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
支持体を準備する支持体準備工程と、
電荷輸送材料と前記一般式(1)で表される繰り返し単位及び前記一般式(2)で表される繰り返し単位を有すると共にガラス転移温度が120℃以上150℃以下であるポリカーボネート樹脂とを含有する塗布液を、前記支持体上に塗布する塗布工程と、
前記ガラス転移温度よりも高い温度で、前記支持体上に塗布された塗布液を乾燥し、最表面層を形成する最表面層形成工程と、
を有する、電子写真感光体の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体に直接接触して帯電させる接触帯電手段、前記電子写真感光体に形成された静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段、及び前記電子写真感光体の表面に残存したトナーを除去するトナー除去手段からなる群より選ばれる少なくとも1つと、
を備えるプロセスカートリッジ。
【請求項8】
前記接触帯電手段を備え、
前記接触帯電手段は、直流電圧のみを印加する方式の帯電手段である、請求項7に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項9】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体に直接接触して帯電させる接触帯電手段と、
前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項10】
前記接触帯電手段は、直流電圧のみを印加する方式の帯電手段である、請求項9に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−203497(P2011−203497A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70718(P2010−70718)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】