説明

電子写真感光体の検査方法および製造方法

【課題】感光体上に存在する局所的な局所構造を精度よく、効率的に検査可能な電子写真感光体の検査方法を提供する。
【解決手段】感光体を帯電させる帯電工程と、帯電工程を経た感光体への現像工程と、現像工程を経て感光体の表面上に形成された一次顕像を中間転写体に転写する一次転写工程と、一次転写工程を感光体において複数回行う事により中間転写体上に複数の一次顕像の重畳してなる二次顕像を形成する二次顕像形成工程と、二次顕像を紙に転写する二次転写工程と、紙に転写された三次顕像を紙に定着させる定着工程と、定着工程を経て紙の上に定着された画像から画像データを取り込む画像取込工程と、画像データから特定パターンの有無を解析し、感光体の表面の局所構造に起因して生じる画像欠陥の有無を調べる解析工程とを有し、特定パターンは、感光体の一回転周期の整数倍と前記中間転写体の一回転周期との間に差を設けたことにより生じるパターンとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真感光体の検査方法ならびに製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やファクシミリ、プリンタで使用される電子写真感光体には直径数μm〜数mmの画像欠陥(以下、「ポチ」と呼ぶ)の原因となる局所構造が存在する場合がある。プラズマCVD法で導電性基体上に作製されるアモルファスシリコン感光体において、導電性基体上の微小な異物を起点として球状に成長する球状突起がその一例である。
電子写真感光体を負帯電感光体、画像露光方式をイメージ露光方式とし、負極性の現像剤(以下、「トナー」と呼ぶ)を使用して画像形成する場合を考える。画像形成プロセス中の帯電工程において局所構造のある箇所では電子写真感光体の最表面に電荷が保持されにくいため電位分布の凹みが生じる。この凹みに起因して、白ベタ画像を出力してもそこにトナーが付着し紙上に転写され、局所構造に対応した画像上の位置に画像欠陥が生じる。ポチは局所構造の数倍から数十倍の大きさとなって画質を損なわせる可能性があるため、局所構造の発生を抑制することが画質向上には不可欠である。しかし、局所構造の発生を抑制する方法は多数提案されているものの非常に小さい局所構造を皆無に保つことは技術的にもコスト的にも困難とされている。
【0003】
そこで良好な画像を市場に提供するために、電子写真感光体の製造時に局所構造を検出することで、電子写真感光体を選別する必要があり、そのための効率的な局所構造の検出方法が求められていた。
従来の局所構造の検出方法として、次の方法が提案されている。有機光半導体ドラムにおいて帯電工程と現像工程と用紙上への転写工程との一連の動作を連続して複数回実施することで、用紙上にドラム複数周回分の連続した画像を形成し、更にその画像上のポチをラインセンサで画像データとして取込む。このようにすることで、有機光半導体ドラムの局所構造を特定する検出方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
この方法では、用紙上に連続して形成された有機光半導体ドラム複数周回分の画像から1周目のポチの位置データおよび面積データと、2周目のポチの位置データおよび面積データを抽出し比較することで、有機光半導体ドラム上の局所構造を特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−034935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記従来例では、ドラム1周目で形成されるポチと、ドラム2周目で形成されるポチを比較する必要があるため、ドラム1周目で形成される画像及びそれに続けて形成されるドラム2周目の画像をラインセンサで画像データとして取込む必要があった。即ち、ドラムの周長の2倍の長さをもつ大面積の画像をラインセンサで画像データとして取込む必要があった。そのため取込時間が長くなるという課題があった。
また、近年、電子写真装置において文字原稿のみならず、写真や絵の如き出力も為されているため、さらなる高画質化が要求され、従来問題にならなかった小さなポチについても検査が不可欠になっている。そのため、視認可能限界近傍の非常に小さなポチ(例えば直径50μmのポチ)を精度良く検出する場合、高解像での取込を要するためデータ量が膨大となり、データハンドリングにも時間がかかるという課題があった。
【0007】
また、紙に形成された画像から画像データを高解像で取込むためには、ステージに紙を精度良く固定する必要がある。しかしステージに紙を固定する場合には紙位置のズレが生じやすい。このため、ドラム複数周回分という長距離離れたポチの位置データを比較する際、位置ズレの影響を強く受け、その結果、比較の精度が落ち、画像形成時に発生するトナー飛散部をポチとして誤検出することがあった。
またこのように正確な検出ができないため、検出結果を製造工程へ的確にフィードバックすることも困難だった。
【0008】
本発明の第1の目的は、上述したような局所構造の検査における課題を解決し、検査時間ならびに誤検出を改善した電子写真感光体の検査方法を提供することである。
また本発明の第2の目的は、局所構造を定常的に低減可能な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第1の特徴は、
感光体を帯電させる帯電工程と、
前記帯電工程を経た前記感光体への現像工程と、
前記現像工程を経て前記感光体の表面上に形成された一次顕像を中間転写体に転写する一次転写工程と、
前記一次転写工程を前記感光体において複数回行う事により前記中間転写体の上に複数の一次顕像を重畳してなる二次顕像を形成する二次顕像形成工程と、
前記二次顕像を紙に転写する二次転写工程と、
前記紙に転写された三次顕像を前記紙に定着させる定着工程と、
前記定着工程を経て前記紙の上に定着された画像から画像データを取り込む画像取込工程と、
前記画像データから特定パターンの有無を解析し、前記感光体の表面の局所構造に起因して生じる画像欠陥の有無を調べる解析工程とを有し、
前記特定パターンは、前記感光体の一回転周期の整数倍と前記中間転写体の一回転周期との間に差を設けたことにより生じるパターンであることを特徴とする検査方法である。
ここで顕像とは、トナー付着部のみならず、トナー付着がなく、感光体、中間転写体ならびに紙の表面が露出した部分も含めてなる像のことをいう。
【0010】
たとえば、直径84mmのドラム状感光体の場合、従来方法ではドラム二周長(約528mm)分の画像を検査しなければならなかったため長時間を要し、また誤検出を生じることがあった。しかし本発明者らは、上記手段によって、局所構造に対応した短距離内におさまる特定パターンを形成して解析することで、検査時間を短縮し、誤検知を飛躍的に減らす事ができることを見出し、本発明に至った。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、電子写真感光体の局所構造の検出において、検出時間を短縮し、誤検出なく検出ができる検査方法を提供することができる。
また電子写真感光体の局所構造を定常的に低減させる製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の適用可能な実施形態における感光体の検査方法を説明する図である。
【図2】本発明の適用可能な実施形態における特定パターンについて説明する図である。
【図3】本発明の適用可能な実施形態における特定パターンの検出方法について説明する図である。
【図4】本発明の適用可能な実施形態における特定パターンの検出方法について説明する図である。
【図5】本発明の適用可能な実施形態における感光体の製造方法を説明する図である。
【図6】本発明の適用可能な実施形態における特定パターンの検出方法について説明する図である
【図7】本発明の適用可能な実施形態における特定パターンの検出方法について説明する図である。
【図8】本発明の適用可能な実施形態における特定パターンの検出方法について説明する図である。
【図9】本発明の適用可能な実施形態における特定パターンの検出方法について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。
本発明に好適に用いられる検査方法について図1の概略構成図を参照して説明する。
検査機100は、画像形成部101と検出部112とで構成されている。
画像形成部101は内部にドラム型の感光体(電子写真感光体)102が搭載され、感光体102の周りには、帯電工程において感光体102の表面を所定の極性・電位に帯電させる一次帯電器103が配置されている。一次帯電器103としては接触帯電系、非接触帯電系、又は、注入帯電系のいずれの帯電器も使用することができ、非接触帯電系の帯電器としてはコロナ帯電器を使用できる。一例として断面形状がコの字状のアルミニウムからなるシールド部内に、高圧電源に接続されたタングステンワイヤーからなる帯電線を配置し、シールド開口部に数本のグリッド線を設けたスコロトロン帯電器を使用することができる。
【0014】
また、ブラックトナーBを付着させる第1現像器104aと、カラートナーを付着させる第2現像器104bが配置されている。ブラックトナーBとしては粉砕法により製造された磁性トナーを使用し、第1現像器としては感光体102に対して1成分非接触現像であるジャンピング現像方式の現像器を使用できる。第2現像器104bは、回転型の現像器であり、イエロートナーYを付着させる現像器と、マゼンタトナーMを付着させる現像器と、シアントナーCを付着させる現像器とが内蔵されている。これらカラー現像器としては、トナーと磁性のキャリアとを混合して調製したニ成分系現像剤を磁気力によってトナーを搬送し、感光体102に接触状態で現像するニ成分接触現像方式の現像器を使用できる。
【0015】
ベルト型の中間転写体105は、感光体102に当接ニップ部111を介して配置されており、内側には一次転写ローラ106が、一次転写バイアス電源(不図示)に接続されて配備されている。
中間転写体105の周りには、紙108へ転写する二次転写ローラ107が、中間転写体105下面部に接触するように設けられている。二次転写ローラ107には二次転写バイアスを印加するバイアス電源が接続されている。
【0016】
また、画像が形成される紙108を保持する給紙カセット109と、紙108を給紙カセット109から中間転写体105と二次転写ローラ107との当接ニップ部を介して搬送する搬送機構とが設けられている。紙108の搬送経路上には、紙108の上に転写された顕像を紙108の上に定着させる定着器110が配置されている。
以上に説明した構成は、画像露光光(潜像形成光照射)のない構成であるが、帯電工程で帯電された感光体102の表面に画像露光光を照射して静電潜像を形成する画像露光装置が配置されてもよい。
【0017】
次にこの画像形成部101の動作について説明する。
感光体102を画像形成部101に搭載し、図1に矢印で示すように、感光体102を反時計方向に所定の周速度で回転駆動させ、同時に中間転写体105を時計方向(時計回り)に回転駆動する。
回転駆動は、感光体102の一回転周期の整数倍(n倍)と中間転写体105の一回転周期との間に差が生じるようにする。この差は、感光体102と中間転写体105の周速度を等しくし、中間転写体105の一周長を感光体102の一周長の整数倍(n倍)からずらすことによって、生じさせることができる。また、この差は、中間転写体105の一周長が感光体102の一周長の整数倍(n倍)の場合は、中間転写体105の周速度を感光体102の周速度からずらすことによっても、生じさせることができる。
【0018】
感光体102及び中間転写体105を駆動するギヤは公差をもっているため、感光体102及び中間転写体105には周速度のフレがある。そのため、周速度を感光体102と中間転写体105とで等しくする場合は、各々の周速度のフレによる、感光体102に対する中間転写体105の周速度の差が、プラスにもマイナスにも生じる。このとき画像形成の再現性が低下する場合がある。一方、中間転写体105の周速度を感光体102の周速度からずらすことで、感光体102の一回転周期の整数倍(n倍)と中間転写体105の一回転周期との間の差を設ける場合を考える。このとき周速度のズレの幅を、ギヤの公差による周速度差のフレの幅よりも大きくすることで、周速度の差はプラスあるいはマイナスの一方向にのみ生じさせることができる。その場合は画像形成の再現性が比較的良くなる。また、感光体102に対する中間転写体105の周速度の差は、マイナスよりもプラスであるほうが、さらに画像形成の再現性が良い。
【0019】
以上より、感光体102の一回転周期の整数倍(n倍)と中間転写体105の一回転周期との間に差を生じさせるには、以下の(a)よりも(b)の方が画像形成の再現性の点で好ましい。
(a)感光体102と中間転写体105の周速度を等しくし、中間転写体105の一周長を感光体102の一周長の整数倍(n倍)からずらす
(b)中間転写体105の周速度を感光体102の周速度からずらす
また、中間転写体105の周速度を感光体102の周速度からずらすとき、感光体102の周速度に対する中間転写体105の周速度の差がプラスであるほうが画像形成の再現性の点でさらに好ましい。
以上の方法によって、中間転写体105が一回転したときに、感光体102と中間転写体105との周方向の相対位置を、感光体102の一回転周期の整数倍(n倍)と中間転写体105の一回転周期との間の差に応じてずらすことができる。
【0020】
(帯電工程)
感光体102は、回転過程で一次帯電器103により所定の極性・電位に一様に帯電処理されるが、感光体に局所構造がある場合、局所構造のある箇所には電荷が保持されにくい。そのため局所構造のある箇所には電位分布の凹みが感光体102の表面上に形成される。一方、局所構造がない箇所には感光体の表面上に電位分布の凹みは形成されない。
【0021】
(現像工程)
次いで、第1色として所望の色を選択し現像を行う。これにより第1色のトナーが感光体102の上の局所構造の有無に応じて現像される。
第1色としてマゼンタ、イエロー、シアンの内から選択される場合は、第2現像器104bが回転し、第1色のトナーを付着させる現像器が所定の位置にセットされ、第2現像器に現像バイアスが印加されることで現像される。このとき第1現像器104aは作動オフになっていて感光体102には作用せず、マゼンタ、イエローおよびシアンのトナーによる現像に影響を与えることはない。一方、所望の色がブラックの場合は、第2現像器104bは作動オフとなり、第1現像器104aに現像バイアスが印加され、感光体102にブラックトナーが現像される。
この感光体102の上に現像された顕像を一次顕像と呼ぶことにする。
【0022】
トナー極性に制限はなく、正極性および負極性のいずれも使用することができる。しかし、感光体102の帯電極性に応じて、負極性帯電では正極性トナー、または、正極性帯電では負極性トナーにより現像する組合せでは、トナー飛散部による誤検出が少なくなるものの、ポチ(画像欠陥)が再現良く画像上に形成されない場合がある。このため、感光体上の局所構造の特定が困難になる可能性がある。一方、負極性帯電では負極性トナー、または、正極性帯電では正極性トナーで現像する組合せでは、トナー飛散部による誤検出の可能性があるものの、画像上におけるポチの形成の再現性が良く、検出漏れの発生を抑えやすい。そのため、負極性帯電では負極性トナー、または、正極性帯電では正極性トナーで現像する組合せのほうが、確実に感光体上の局所構造を特定するうえで好ましい。
【0023】
以降、負極性帯電では負極性トナー、または、正極性帯電では正極性トナーで現像する組合せの場合を例に説明する。
この組合せでは、感光体102に局所構造がある場合、一次顕像は局所構造に対応した場所にトナー付着された顕像となる。一方、感光体102に局所構造がない場合、一次顕像はトナー付着のない顕像となる。
【0024】
(一次転写工程)
このようにして感光体102の上に形成された一次顕像は、感光体102と中間転写体105とのニップ部111を通過する過程で、一次転写バイアスが一次転写ローラ106に印加されることによって形成される電界により、中間転写体105の外周面に転写される。
次に再び帯電工程を経て、感光体102の表面上に、第2色の現像工程が、第1色の現像工程と同様の方法でなされる。こうして第2色の一次顕像が、第1色の一次顕像が転写された中間転写体105の外周面上に重畳転写される。
【0025】
ここで第1色の一次顕像が転写された中間転写体への、第2色の一次顕像の重畳転写は、第1色の一次顕像の中間転写体への転写位置と同じ位置になされる。
3色以上使用する場合は、以下同様に第3色以降の一次顕像が中間転写体105の外周面上に重畳転写される。全色重畳転写されて中間転写体105の上に形成された顕像を、二次顕像とよぶことにする。また、二次顕像を形成する工程を二次顕像形成工程とよぶ。
【0026】
(二次転写工程)
次に、給紙カセット109から中間転写体105と二次転写ローラ107との当接ニップ部に所定のタイミングで紙108を給送する。給送速度は中間転写体105の周速度と同一とする。二次転写ローラ107が中間転写体105に当接されると共に、二次転写バイアスがバイアス電源から二次転写ローラ107に印加される。この結果、中間転写体105の上に重畳転写された二次顕像が、第二の画像担持体である紙108に転写される。紙108に転写された顕像を三次顕像と呼ぶことにする。
【0027】
(定着工程)
三次顕像が形成された紙108は、定着器110に導かれ、ここで紙108の上に三次顕像が加熱定着されることで紙108の上に画像が形成される。
感光体102に局所構造がある場合、形成された画像には、次のようなパターンが含まれる。すなわち、局所構造に応じた第1色と第2色各々のトナー付着が、感光体102の一回転周期の整数倍(n倍)と中間転写体105の一回転周期との間の差に応じた距離離れて配列されたパターンが含まれる。
【0028】
このパターンの生成過程を図2の概略図を参照して説明する。
図2は、感光体102の一周長に対し中間転写体105の一周長が2倍であり、感光体102の周速度に対し中間転写体105の周速度が1.005倍速く、中間転写体105が一周したとき感光体102と中間転写体105の表面上の相対位置がずれるようにした場合の概略を示している。
図1の感光体102の上の点Aと、中間転写体105の上の点Bとが、ニップ部111を通過する時刻を図2(A)に示す。B点がニップ部を通過する時刻をb1、b2、b3とし、A点がニップ部を通過する時刻をa1、a2、a3、a4、a5とすると、図2(A)に示すようにB点に対するA点の相対通過時刻(B点通過後にA点が通過するまでの時間)が徐々に遅れていく。
【0029】
そのため点Aの場所に局所構造がある場合、中間転写体105が一周する毎に、一周長比、及び周速度比に応じた距離208だけ離れて配列されたトナー付着のパターンが中間転写体105上に形成される。
「一周長比」は、感光体102の一周長に対する中間転写体105の一周長の比を意味する。「周速度比」は、感光体102の周速度に対する中間転写体105の周速度の比を意味する。
【0030】
例えば感光体の直径を84mmとし、感光体を1秒間に1回転させる場合、周速度比(1.005倍)と一周長比(2倍)に応じた距離208は下記式より約2.64mmとなる。
84mmxπx(1.005−1)x2≒2.64mm(πは円周率)
このとき紙搬送のタイミングをB点が紙108の端部近傍となるように合わせたとき、紙108の上には図2(B)に示すようなパターン206が形成される。202は画像が形成された紙であり、203、204、205はそれぞれ図2(A)の時刻a1、a3、a5で現像されたトナー付着部に対応する。
【0031】
以上説明したように形成されたパターン206を以下のように「特定パターン」と呼ぶ。
即ち、帯電工程と現像工程と一次転写工程とを感光体において複数回行い(好ましくは3回以上行い)、中間転写体上に重畳転写した二次顕像から形成される画像を考える。この画像において感光体102の一回転周期の整数倍(n倍)と中間転写体105の一回転周期との間の差に応じた距離離れて配列された複数のトナー付着部からなるパターンを以後「特定パターン」と呼ぶ。
特定パターンは、感光体の表面上に異物の付着がなければ、感光体上の局所構造のみが原因となって形成される。しかし、特定パターンの検出方法によっては、画像形成時に発生するトナー飛散部を特定パターンとして誤検出してしまう場合がある。
【0032】
また、二次転写工程において、給紙カセット109の上の紙108の配置公差に起因する紙搬送方向の角度のバラツキがある。図2(C)に示すように紙108の長辺と短辺のうち、紙搬送方向との角度が小さいほうの一辺に対して、トナー付着の配列方向(紙搬送方向)に角度207が生じる場合がある。
特定パターンにおける、感光体102の一回転周期の整数倍(n倍)と中間転写体105の一回転周期との間の差に応じた距離208を以後「パターン間隔」と呼ぶ。また、紙の長辺と短辺のうち紙搬送方向との角度が小さいほうの一辺に対する、特定パターンを構成するトナー付着部の配列方向の角度207を以後「パターン角度」と呼ぶ。
【0033】
感光体102に異物が付着している場合、帯電工程時に異物付着箇所で一様な帯電が損なわれる場合がある。そのとき感光体の局所構造のある箇所と同様の画像形成がなされてしまい、特定パターンとして誤検出される要因となりうる。そのため感光体102を画像形成部101に搭載する直前に、付着物を取り除くことが誤検出を減らす上で好ましい。
また容易に除去できる異物の場合は、上述したような画像形成はされないため誤検出の要因とはならない。
【0034】
画像形成部は上記のような中間転写体を用いた構成でなくともよく、紙搬送体が感光体と当接ニップ部を介して配置された構成でもよい。この構成の場合では、紙搬送体と感光体との当接ニップ部において、紙転写ローラによって紙上に直接二次顕像を形成した後、定着器によって定着されることで画像が形成される。
つまり、前述の中間転写体を用いた構成では、各色の一次顕像を中間転写体へ重畳転写したうえで紙に転写する。これに対し、中間転写体を用いないこの構成では、紙を紙搬送体に担持させ、当接ニップ部において紙と感光体を接触させ、各色の一次顕像を直接、紙に重畳転写させる。
【0035】
各色の一次顕像を直接紙に重畳転写させることで形成させた二次顕像を、定着器によって紙上に加熱定着させることで、紙上に画像が形成される。
この構成の場合、紙搬送体が一回転したときに、紙搬送体上と感光体表面上との相対位置がずれるように、感光体の一回転周期の整数倍と紙搬送体の一回転周期との間に差を生じさせる。このことで、感光体の局所構造に応じて図2に示すパターンを画像上に形成することができる。
【0036】
次に、検出部112について説明する。画像が形成された紙113はステージ114上に固定される。ステージ114の部材はアルミ、鉄、ステンレス等が用いられるが、剛性が高く熱膨張率が小さい部材が好ましい。また、ステージの自重による撓みを抑えるため、ステージ下部に支柱(不図示)を設けることが好ましい。
紙113をステージ114の上へ固定する方法としては、排気吸着、静電吸着がある。いずれも固定時に紙113とステージ114の間に埃や異物を挟み込むことを防止するため、固定前にステージ114の上の異物を除去することが好ましい。異物除去方法の一例として、静電付着した異物をイオン送風機によって除去する方法が挙げられる。
【0037】
排気吸着によって紙113をステージ114の上に固定する場合、ステージ114の上にポンプ115の吸気口と接続される吸着孔を複数設ける。ポンプの排気量は、固定する紙113の面積や吸着孔の配置や形状、紙の材質や厚さに依存するが、50L/min以上であることが好ましい。しかし吸着孔が大きい場合はポンプの排気量が大きすぎると、吸着孔部で紙の凹みが生じ、カメラによる画像データ取込に焦点ズレが生じる。そのためポンプとステージとの間に調整バルブ116を設けて適宜排気量を調整できるようにすることが好ましい。
【0038】
ステージ114上に設ける複数の吸着孔の配置は、紙113の端部での反り上がりを防止するため、紙113端部に対応する箇所の吸着孔の数密度を大きくする事が好ましい。各吸着孔の孔径は、吸着時の孔部での紙113の凹みを抑えるため5mm以下が好ましい。
一例として、縦297mm横420mmの紙113に対し、直径1mmの吸着孔を、紙端部から内側10mmの範囲では縦横方向に5mm間隔であけ、内側10mmから紙中央部の範囲では縦横方向に10mm間隔で配置し500L/minのドライポンプで紙を排気固定する例が挙げられる。
【0039】
次に、ステージ114の上に固定された紙113の上に形成された画像を画像データとして解析部122に取込む。画像センサ118とレンズ117は画像を必要な解像度で得られれば特に制限はなく、例えば5μm程度の解像度が好ましい。画像センサ118としてはCCDエリアセンサ、CCDラインセンサを用いる事ができる。また画像形成部101で複数色から形成した画像の解析を可能とするため、画像センサ118はカラーセンサであることが好ましい。
【0040】
また、検査精度を高めるため、画像取込範囲の照明系119を設置することが好ましい。照明系の構成は、光ファイバを用いてカメラの光軸と照明の光軸を一致させる構成や、カメラの光軸に対して照明の光軸を斜めにしてカメラ近傍から取込範囲を照射する構成を用いる事ができる。照明光源としては、ハロゲンランプを使用することができるが、光源寿命や光強度の安定性から、LED光源を使用する方が好ましい。
一例として、画像センサ118として一素子の解像度が10μmの素子4096個からなるカラーCCDラインセンサ、レンズ117として2倍レンズ、照明系119として、LED光源によるカメラ近傍からの斜め光照射により、解像度5μmを得る例が挙げられる。
【0041】
画像センサ118の一度の取込範囲によっては、画像センサ118とレンズ117とで構成されるカメラと、ステージ114との位置関係を、縦横の2軸あるいは、縦か横の1軸方向に相対的に移動させることで、画像全域または感光体一周分に対応した画像範囲の取込を行う。
カメラとステージ114の相対的移動方法には、カメラを固定しステージを移動させる、ステージを固定しカメラを移動させる、ステージとカメラの両方を移動させる、のいずれかの方法を用いることができる。特に高解像度で画像データを取込む際には、移動によって発生する機械振動がカメラに伝わり、画像データ取込に悪い影響を与えやすい。そのためカメラを固定し、ステージ114を移動させる方法が好ましい。
【0042】
ステージ114の移動方法の一例として、ステージ114をモータコントロールボード123によってステッピングモータ121を制御し、移動ギヤ120を介して移動させる例が挙げられる。この移動方法を縦横の2軸に対して実施することで画像全域を走査する。
画像データ取込の一例として、縦297mm横420mmの紙113に対し、長さ20.5mmを取込めるカラーCCDラインセンサを横方向に配置して縦方向に走査し、紙113の縦方向の両端間を走査し終えたらステージ114を横方向に移動させ、同様の動作をさせることで、画像域全体の画像データ取込を行う例が挙げられる。
【0043】
画像データの取込を高解像で実施する場合、一般的にカメラの被写界深度が浅くなるため、ステージ114の表面の平面精度、ならびに、カメラ取付けの傾き精度における要求精度が高くなる。そのため画像全域でカメラのフォーカスをあわせることが困難になる場合がある。その場合、カメラと紙113の表面との距離を画像全域で一定にするために、カメラ部にレーザ測長計と、レーザ測長計の測長結果に応じてカメラの高さを調整する駆動モータとコントローラからなる高さ自動調整機構を設置することが好ましい。
【0044】
画像センサ118により取込まれた画像データは解析部122における画像処理ボード124を介して解析コンピュータ125に入力され、特定パターンの有無を解析する。この解析において、画像データを各色に分解し、各色濃度の閾値に対して画像データを2値化し、濃度の濃い部分を抽出する。2値化の際、各ピクセル濃度値から、2次元座標に対する近似関数によってピクセル間の濃度変化を補完し、補完された濃度分布から2値化する方法を使用する方が、高精度の解析ができるため好ましい。
2値化によって抽出された閾値以上の濃度をもつ、画像データ上の各ピクセルまたは互いに隣接するピクセルを接合させてなる集合を以後「島」と呼ぶ。
【0045】
画像データ取込の際に生じる画像センサ118のノイズにより、取込まれた画像データの濃度が局所的に高くなることがある。そのようなノイズは画像データ取込時において1画素毎に瞬間的に発生するため、2値化された画像データ上では1ピクセルのみで構成された島となる。従って1ピクセルの面積の島を消去する処理を2値化後の画像データに施すことで、このようなノイズの影響を除外し、誤検出を減らすことができる。
【0046】
次に解析工程において特定パターンの有無を解析する方法について述べる。
図3(A)に示すように、画像形成で第1色と第2色のみ使用した場合、第1色の島304の重心座標に対して、パターン間隔301だけ離れた座標近傍に、第2色の島305の重心座標があれば、特定パターンとして検出する。一方、もし前述の座標近傍に第2色の島305の重心座標がなければ、特定パターンとして検出されない。
第3色を使用した場合は、図3(B)に示すように第1色の島304に対する第2色の島305の重心座標、さらに第2色の島305に対する第3色の島306の重心座標を同様の方法で解析することにより、すべての色の島がパターン間隔301で配列していれば特定パターンとして検出する。第4色以上使用した場合も同様である。
【0047】
実際のパターン間隔は、感光体102、中間転写体105を駆動するギヤの公差による周速度の振れがあるためバラツキをもっている。また前述したように二次転写工程において、給紙カセット109の上の紙108の配置位置ズレにより、バラツキをもったパターン角度が生じうる。
そのため、図3(C)のようにパターン解析の際、パターン間隔のバラツキを考慮して設定した距離の幅302とパターン角度のバラツキを考慮して設定した角度の幅303とで囲まれる範囲を設ける。そしてこの範囲内に第2色の島の重心305が入っていれば特定パターンとして検出することにより、島の重心座標にある程度のバラツキがあっても検出漏れしないようにすることが好ましい。
以後、302を「パターン許容間隔」と呼び、303を「パターン許容角度」と呼ぶ。また、このパターン許容間隔302とパターン許容角度303によって囲まれた範囲を「パターン許容範囲」と呼ぶ。
【0048】
現像工程において、感光体102の上に局所構造がなくても、感光体102の上のランダムな位置にトナーが付着するトナー飛散が生じ、紙113の上にもこのトナー飛散によるトナーが転写され、画像上のランダムな位置にトナーが付着する場合がある。帯電工程で印加された帯電量にも依存するが、トナー飛散によるトナー付着部の径は殆ど30μm以下であり、肉眼で視認されることはなく画質に影響しない。しかし高解像度で取込んだ画像データを2値化したとき、トナー飛散によるトナー付着部も島として抽出され誤検出の原因となりうる。
以後、感光体の局所構造によって生じる島を「ポチ」と呼び、それと区別するため、トナー飛散によって生じる島を「トナー飛散部」と呼ぶ。
【0049】
図3(D)に示すように、トナー飛散があるとき第1色と第2色のみから特定パターンが形成される場合、第1色のトナー飛散部307の1つに対し、第2色のトナー飛散部308の1つがパターン許容範囲に入ると、特定パターンとして誤検出してしまう場合がある。
一方、第3色を使用した場合は、図3(E)に示すように第3色のトナー飛散部309が生じるものの、第2色のトナー飛散部308、第3色のトナー飛散部309がともにパターン許容範囲に含まれる頻度は少ないため誤検出を減少できる。そのため画像形成部101における画像形成は3色以上を使用することが好ましい。
【0050】
パターン間隔が長い場合、給紙カセット109の上に置かれた紙108の配置位置ズレのパターンに与える影響が大きくなる。
図6は、感光体102の一回転周期の整数倍(n倍)と中間転写体105の一回転周期との間の差を長くした場合に1つの局所構造に対応する第1色の島601と第2色の島603における重心座標の関係をパターン解析する際の状況を説明するための図である。
感光体102の一回転周期の整数倍(n倍)と中間転写体105の一回転周期との間の差を長くして、この差に対応するパターン間隔605の特定パターンを検出するとき、紙108の配置位置ズレの影響が大きくなる。よって、第2色の島603の検出漏れ防止のためにパターン許容間隔608とパターン許容角度606を大きく設ける必要がある。このとき、第1色のトナー飛散部609に対して、第2色のトナー飛散部610の重心座標もパターン許容範囲に入りやすくなるため、誤検出が生じやすくなる。
【0051】
一方、感光体102の一回転周期の整数倍(n倍)と中間転写体105の一回転周期との間の差が短い場合、パターン間隔604が短いため紙108の配置ズレの影響が小さい。そのためパターン許容範囲は小さくなっても検出漏れすることがない。このとき第2色のトナー飛散部610を検出しにくく誤検出は少ない。
そのため、パターン間隔は各色の島が重ならない限り短いことが好ましく、1mmから5mmが好ましい。
【0052】
パターン解析の際、図8(A)に示すように、パターン許容間隔810とパターン許容角度811とによるパターン許容範囲内に、複数の島の重心座標が含まれる場合がある。図8(A)は、第1色の島801に対して、第2色の島803の重心座標804と島807の重心座標808とが含まれる状況を示す。トナー飛散部はトナー1個の粒子からなる場合が多いのに対し、ポチはトナー複数個からなる場合が多く、2値化後の島の面積はポチの方がトナー飛散部よりも大きい傾向がある。
そのためパターン許容範囲内に複数の島の重心座標が含まれる場合には、面積の大きい島803を優先して解析の対象とし、面積の小さい島807を解析の対象から除外する処理を行うことが、誤検出を減らす上で好ましい。
【0053】
また、図8(C)に示すように、第2色のパターン許容範囲内に島820の重心座標821が含まれるものの、第1色の島818および第3色の島822の面積に対し、第2色の島820の面積が大きく異なる場合がある。特定パターンを構成する各色のポチは、同一の局所構造を原因として形成されるため、図8(B)に示す第1色の島812、第2色の島814、第3色の島816のように、各々の島の面積が同一に近くなる。
従って、パターン許容範囲内に島の重心座標が含まれても、各色の島の面積が極端に異なる場合は、ポチでない可能性がある。そのため、第1色の島818、第2色の島820、第3色の島822、において最小の面積に対する最大の面積の比を算出し、その比が別途設定した閾値比に対して大きければ解析の対象から除外する処理を実施することが、誤検出を減らす上で好ましい。
【0054】
さらに、図8(D)に示すように、3色から構成される画像から特定パターンの有無を解析する際、線分830と線分831とがなす小さい方の角度(劣角)が180度より小さくなる場合がある。線分830は第1色の島824の重心座標825と第2色の島826の重心座標827とを結ぶ線分である。線分831は、第2色の島826の重心座標827と第3色の島828の重心座標829とを結ぶ線分である。
特定パターンにおける各色のポチの重心座標は直線上に並ぶことから、図8(D)のように各色の島の重心座標がパターン許容範囲内に含まれていても、劣角が極端に小さくなる場合、これらの島はトナー飛散部である可能性がある。そのため、図8(D)のような場合をパターンから除外する処理を行なうことが、誤検出を減らすうえで好ましい。
また、ポチの形状は、局所構造の形状を反映した形状となる傾向がある。例えば感光体102上の局所構造が三日月型の形状であれば、ポチの形状も三日月型の形状になり易い。しかし数十μmの径のポチでは、島を構成するトナー粒子の数が少ないため、局所構造の形状を正確に反映できない場合もある。
【0055】
1つの局所構造に対して第1色または第2色のポチが複数生じる場合がある。
図4の401、402、403は1つの局所構造に対応して発生した第1色の複数のポチであり、404、405、406、407は1つの局所構造に対応して発生した第2色の複数のポチである。
このとき、図4(A)に示すように第1色における各ポチのうちの1つ401の重心座標410に対し、第2色における各ポチのうちの1つ407の重心座標413について特定パターンであるか否かを解析する。この解析過程で、パターン許容間隔408およびパターン許容角度409で規定される許容範囲内に重心座標413が含まれなず、特定パターンとして検出されない場合がある。401と407の関係の他に、第1色のポチ401、402、403に対する第2色のポチ404、405、406、407との重心座標の全ての関係においても同様であり、特定パターンとして検出されず、検出漏れが生じてしまう。
【0056】
このように、1つの局所構造に対して第1色または第2色のポチが複数生じる場合、検出漏れを防止するため許容範囲を広げる必要が生じるが、許容範囲を広げるとトナー飛散部による誤検出を増やす要因となりうる。
そのため図4(B)に示すように、互いに近接した同一色の複数の島全部を1つの島の群とみなす処理を行い、第1色の島の群を415、第2色の島の群を416とする。そして、この島の群の面積と濃度の重みを考慮した第1色の島の群415の重心座標412と、第2色の島の群416の重心座標414から特定パターンであるか否かを解析することが、誤検出を無くすために好ましい。
上述した互いに近接した同一色の複数の島全部について1つの島の群とする処理を以後「結合処理」と呼ぶ。
【0057】
結合処理の一例について図9を用いて説明する。
図9(A)において901と904は島であり、902と905は各々の島の濃度分布を考慮した重心座標である。903は、重心座標902を中心とし、島901と面積が等しい円である。同様に、906は、重心座標905を中心とし、島904と面積が等しい円である。908は、円903と906の各々の円周間の距離であり、この距離908が所定の閾値距離に対して小さければ、島901と島904とを1つの島の群として含ませる。
【0058】
このような解析は解析コンピュータ125によって行なわれるが、この方法は各島の重心座標と面積のデータを解析コンピュータに転送すれば可能であるため、解析に要するメモリ容量を小さくでき、高速処理が可能となる。
その他の方法として、図9(B)に示すように、各島の輪郭間の最短距離909を所定の閾値距離と比較してもよい。この方法では各島の輪郭座標のデータが必要となるため、比較的多いデータ量の処理がなされるが、解析コンピュータのメモリに余裕があれば高速処理も可能である。
【0059】
画像形成の際に使用する第1色および第2色は、同一色でも良いが、異なる色を使用する方が誤検出を減らすうえで好ましい。このことについて図7を用いて説明する。
704は第1色と、第1色とは異なる色である第2色とから形成された画像データである。701は画像データ704を色ごとに分解することにより第1色のみ表示した画像データであり、705はポチ、706はトナー飛散部である。同様に702は画像データ704を色ごとに分解することにより第2色のみ表示した画像データであり、707はポチ、708はトナー飛散部である。
【0060】
第1色と第2色として互いに異なる色を使用して形成した画像データ704の場合、特定パターンは、第1色の島と、第1色の島に対しパターン角度の方向にパターン間隔だけ離れた第1色とは異なる色の第2色の島とから形成される。したがって、第1色の島に対してパターン角度の方向にパターン間隔だけ離れた位置に第1色の島があっても特定パターンとして検出されない。例えば画像データ704に対して、パターン間隔709及びパターン角度0度(縦方向)の特定パターンの有無を解析すると、結果としてポチ705とポチ707から構成される1個の特定パターンが検出される。
【0061】
一方、第2色として第1色と同一色を使用して形成した画像データ703に対して特定パターンの有無を解析する場合、第1色と第2色とが区別できない。そのため、画像データ703に対して、パターン間隔709及びパターン角度0度の特定パターンの有無を解析した結果、特定パターン710とともにトナー飛散部からなる配列711も特定パターンとして誤検出されてしまう。以上より、画像形成の際に第1色および第2色は異なる色を使用する方が、誤検出を減らすうえで好ましい。
【0062】
画像形成の際に使用する色について制限はなく、通常複写機で使用されるトナー色である、ブラック、マゼンタ、イエロー、シアンから選択することができる。紙113についても特に制限はないが、白色の紙113に対し、ブラック、マゼンタ、シアンのトナー色の組合せにすると、画像取込時にトナー付着部と非トナー付着部とのコントラスト差を大きくとり易く、2値化後の島の面積、大きさおよび重心座標の算出精度を高められるため好ましい。
【0063】
また、複数回の画像形成と解析とを繰返し、特定パターンの検出再現性を確認する処理を実施することが、誤検出を減らすうえで好ましい。また、特定パターンを構成する各色のポチの面積、大きさおよび重心座標の再現性を確認する処理を実施することが、ポチの面積、大きさおよび重心座標の算出精度を高めるうえで好ましい。
以上に述べた解析に加えて、目視による再検査、および、さらに詳細な解析を別途実施できるように、画像データ取込によって2値化処理される前の画像全体の画像データを解析コンピュータ125内に保存することが好ましい。
【0064】
また、検査結果のハンドリング性を高めるため、特定パターンとして検出された配列を構成する各色の島が含まれる微小な範囲の画像データを、画像全体の画像データから切り出す。そして、切り出した画像データを、各色の島の面積、大きさおよび重心座標のデータとリンクさせて保存することが好ましい。
さらに、特定パターンとして検出された配列をナンバリングし、ナンバーとリンクさせて島の画像データを保存することが好ましい。また特定パターンとして検出されない島の画像データについても、島の面積、大きさおよび重心座標のデータとリンクさせて保存してもよい。
【0065】
これらの保存処理の動作は、画像処理ボード124のメモリ部の容量が多ければ、画像全体の画像データ取込後に実施してもよく、また画像データ取込と保存処理とを並行して逐次的に実施してもよい。
保存処理の動作の一例を説明する。縦297mm横420mmの紙113に対し、長さ20.5mmを取込み可能なカラーCCDラインセンサを横方向に配置して縦方向に紙113の両端間を一回走査した後、ステージ114を横方向に移動させ次の縦方向走査を行なうまでの間に、一回走査分の保存処理を行う。
このような逐次処理では、保存処理の時間を別途設ける必要がないとともに、画像処理ボード124に必要となるメモリ量も少なくて済む。
【0066】
解析された結果は、特定パターンとして検出された配列を構成する各色の島に関し、面積、大きさ、重心座標のうちの少なくとも1つに対するヒストグラムを出力させることが好ましい。また、面積、大きさが閾値以上の島を抽出した後に重心座標に対するヒストグラムを出力させることが好ましい。
大きさについては、紙の長軸方向および短軸方向の長さ、島の長軸方向の長さおよび短軸方向の長さ、島と同一の面積をもつ円における直径のうちの少なくとも1つを出力させることが好ましい。
以上のような検出方法の結果に基づいて、感光体102の製造工程において、製造装置のメンテナンス実施の要否を判断することで、局所構造の発生を定常的に抑制することができる。
【0067】
製造装置のメンテナンス実施の要否判断の一例として、感光体102がアモルファスシリコン感光体の場合について説明する。
アモルファスシリコン感光体の製造方法は、一般的に知られている真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、光CVD法、プラズマCVD法の如き成膜方法により、基体上にアモルファスシリコン膜を形成すればよい。
それらの中でも、原料ガスにRF帯やVHF帯の高周波電力を印加してグロー放電により分解し、基体上に堆積膜を形成するプラズマCVD法を用いると、アモルファスシリコン感光体を好適に製造することができる。
【0068】
次に、アモルファスシリコン感光体の製造装置、および、これを用いた製造方法について、以下に説明する。図5は、電源周波数としてRF帯を用いた高周波プラズマCVD法による感光体製造装置の一例を、模式的に示した構成図である。
この装置は、大別すると、堆積装置5100、原料ガスの供給系5200、反応容器5111の中を減圧するための排気装置(不図示)から構成されている。堆積装置5100中の反応容器5111の中には円筒状基体5112を載置する載置台5110、基体加熱用ヒータ5113、原料ガス導入管5114が設置される。更に高周波マッチングボックス5115を介して高周波電源5120が反応容器5111を兼ねるカソード電極に接続されている。
【0069】
原料ガス供給装置5200は、原料ガスのボンベ5221〜5226とバルブ5231〜5236、5241〜5246、5251〜5256、及び、マスフローコントローラ5211〜5216から構成される。各原料ガスのボンベはバルブ5260を介して反応容器5111の中のガス導入管5114に接続されている。
この装置を用いた堆堆膜の形成は、例えば以下のような手順によって行われる。
まず、反応容器5111の中に円筒状基体5112を設置し、例えば真空ポンプなどの排気装置(図示せず)により反応容器5111の中を排気する。続いて、基体加熱用ヒータ5113により円筒状の基体5112の温度を200℃乃至350℃の所定の温度に制御する。
【0070】
次に、堆積膜形成用の原料ガスを、ガス供給装置5200により流量制御し、反応容器5111の中に導入する。そして、排気速度を調整することにより所定の圧力に設定する。
以上のようにして膜堆積の準備が完了した後、以下に示す手順で各層の形成を行う。
内圧が安定したところで、高周波電源5120を所望の電力に設定して、高周波マッチングボックス5115を通じてカソード電極に高周波電力を供給し高周波グロー放電を生起させる。放電に用いる周波数は1〜30MHzのRF帯が好適に使用できる。
この放電エネルギーによって反応容器5111の中に導入された各原料ガスが分解され、円筒状の基体5112上に所定のシリコン原子を主成分とする堆積膜が形成される。所望の膜厚の形成が行われた後、高周波電力の供給を止め、ガス供給装置の各バルブを閉じて反応容器5111への各原料ガスの流入を止め、堆積膜の形成を終える。
【0071】
同様の操作を複数回繰り返すことによって、所望の多層構造の感光層が形成される。また、膜形成の均一化を図るために、層形成を行っている間は、円筒状の基体5112を駆動装置(不図示)によって所定の速度で回転させることも有効である。さらに、上述のガス種およびバルブ操作は各々の層の作製条件にしたがって変更が加えられることは言うまでもない。
【0072】
反応容器5111の中に異物があるとき、異物が円筒状の基体5112上に付着し、付着した異物が起点となって局所構造が形成される場合がある。
このような異物は反応容器5111の中の下部の排気口近傍に溜まりやすく、感光体上の局所構造が、排気口近傍に対応する箇所(図5に示されるように配置された円筒状の基体5112の下部)において多く発生する場合がある。
また、反応容器5111上部に配置される蓋に付着した異物が、蓋の開閉時に円筒状の基体5112上に移動して付着する場合がある。このとき蓋に近い感光体表面上の箇所(図5に示されるように配置された円筒状の基体5112の上部)に、局所構造が多く発生する場合がある。
【0073】
これら感光体表面上に生じた局所構造の位置は、特定パターンの画像上の位置と対応づけることができる。
そのため、特定パターンの位置から感光体表面上の局所構造の位置を特定し、局所構造発生位置に対応する反応容器5111の中の箇所の清掃あるいは部品交換といったメンテナンスの実施判断を行う。このことにより、局所構造の少ない感光体を定常的に製造することができる。
例えば、図5に示されるように配置された円筒状の基体5112の上部に対応した画像の箇所に特定パターンが集中して検出された場合には、蓋を分解し清掃することにより、局所構造の発生数を抑制することができる。
【実施例】
【0074】
(実施例1)
図1に示す画像形成部101としてキヤノン製電子写真装置(iRC6800)を用い、ドラム状の感光体(直径84mm)102の周速度に対して、ベルト状の中間転写体105の周速度が1.0035倍となるように改造した。この改造によって、感光体102の表面上の位置(例えば図1のA点)と、中間転写体105の上の位置(例えば図1のB点)との相対位置関係が、中間転写体105が一回転した際に1.84mmずれるようになった。また帯電極性が負極性となるように改造した。
【0075】
この改造機を画像形成部101とし、画像形成部101に感光体102を搭載して、感光体102を1秒あたり1回転させると同時に中間転写体105を回転させ、第1現像器104a位置での帯電電位が−450Vとなるように感光体102の表面を帯電させた。トナー極性は負極性のトナーを使用し、第1現像器(現像色はブラック)104aには直流電圧−350Vと周波数1.8kHz、電圧振幅1.6kVの交流電圧とを重畳させた現像バイアスを印加することで、ジャンピング現像を行わせた。第2現像器(現像色はシアン、マゼンタ、イエロー)104bには直流電圧−350Vと周波数1kHz、電圧振幅2.4kVの交流電圧とを重畳させた現像バイアスを印加することで、2成分接触現像を行わせた。
【0076】
紙108として白色のA3用紙(420mmx297mm)を使用し、A3用紙の長軸方向が紙搬送方向となるように給紙カセット109の上に配置した。
帯電工程と現像工程と一次転写工程の順に2回繰り返すことで、中間転写体105の上に第1色と第2色からなる二次顕像を形成した。次いで、中間転写体105の上の二次顕像を紙108の上に転写し、紙108の上に第1色と第2色からなる三次顕像を形成した後、定着工程を経て画像形成した。
【0077】
尚、後述するように、感光体102の上の局所構造の誤検出数を評価するため、感光体102の表面の一部に傷をつけて帯電を損なわせることで、画像上にもその傷に対応したトナー付着部が生じるようにしている。このようにして、画像上の位置と、その位置の画像形成に寄与した感光体102の表面上の位置とが、一対一に対応付けられるようにしている。
現像に使用した第1色と第2色の組合せは表1に示すように、次の6個の組合せとした。マゼンタとイエロー(検査条件番号1)、イエローとシアン(検査条件番号2)、イエローとブラック(検査条件番号3)、シアンとブラック(検査条件番号4)、ブラックとマゼンタ(検査条件番号5)、マゼンタとシアン(検査条件番号6)。
【0078】
このようにして作製した画像を、あらかじめ顕微鏡(オリンパス製 STM−UM)で観察し、画像上に形成されたポチに関して、紙の長軸方向および短軸方向の長さを100倍の倍率で測定した。そして紙の長軸方向の長さ又は短軸方向の長さのいずれか短い側が30μm以上のポチ50個をピックアップした。
その後、画像が形成された紙108を検出部112に設置し、センサ118(カラーCCDラインセンサ)によって感光体一周分強(266mmx 297mm)の画像データを取り込んだ後、解析コンピュータ125において2値化処理を実施した。次いで2値化処理によって抽出された高濃度部の島に関して、紙の長軸方向および短軸方向の長さを出力させた。
【0079】
また、パターン間隔を1.84mm、パターン許容間隔を±0.1mm、パターン角度を0度、パターン許容角度を±0.1度として、特定パターンの有無を解析した。
さらにマゼンタとシアンの組合せについては、以下の3つの処理(a),(b),(c)について、処理(a)のみを加えた場合(検査条件番号7)、処理(a)と(b)を加えた場合(検査条件番号8)、処理(a)と(b)と(c)を加えた場合(検査条件番号9)を実施した。
【0080】
(a):2値化によって抽出された島について結合処理を行う。結合処理は以下のようにする。まず、2つの各々の島と同一の面積をもつ円の半径を求める。次いで、2つの島の重心間距離から2つの円の半径を引いた長さが、閾値距離と比較して短ければ1つの島の群として処理する。閾値距離は10μmとする。
(b):(a)の処理の後、パターン許容範囲内に複数の島または島の群が含まれるとき、面積の最も大きい島または島の群をパターン解析の対象として使用する処理を行う。
(c):(a)と(b)との処理を順に実施した後、以下の処理を行う。まず、第1色の島または島の群に対し、第2色の島または島の群の重心座標がパターン許容範囲内に含まれるときに、第1色と第2色との島または島の群のうち、小さい面積に対する大きい面積の比を求める。そして、その比が閾値を上回る場合にパターンから除外する処理を行う。閾値は2とする。
【0081】
その結果全ての検査条件において、検出部112で要した検査時間は20分以内であった。
表1に各検査条件における検出部112で要した検査時間のランクを示す。検査時間のランクは以下のように付けた。以降の比較例および実施例についても同様にランクを付けた。
10分以上、25分未満 ・・・A(4点)
25分以上、40分未満 ・・・B(3点)
40分以上、55分未満 ・・・C(2点)
55分以上、70分未満 ・・・D(1点)
70分以上 ・・・E(0点)
【0082】
また、顕微鏡にて測長した画像上に形成された50個のポチに関し、すべて特定パターンとして検出されるか否かを調べ、特定パターンとして検出されないポチがあれば、検出漏れとしてカウントした。
その結果いずれの検査条件においても検出漏れはなかった。
表1に各検査条件における検出漏れのランクを示す。検出漏れのランクは以下のように付けた。以降の比較例および実施例についても同様にランクを付けた。
検出漏れ0個 ・・・A (5点)
検出漏れ1個以上 ・・・B (0点)
【0083】
また、顕微鏡にて測長した画像上に形成された50個のポチに関し、顕微鏡による測長結果に対する、検出部による長さの検査結果の測長誤差を評価した。
その結果、マゼンタとイエロー、イエローとシアン、イエローとブラックの組合せを使用した検査条件では、イエローの島において顕微鏡による測長結果に対していずれの検査条件でも±5μm超、±20μm以内の測長誤差があった。一方、シアンとブラック、ブラックとマゼンタ、マゼンタとシアンの組合せを使用した2色パターンでは、全ての島で±5μm以内の測長誤差でおさまった。
【0084】
表1に各検査条件における測長誤差のランクを示す。測長誤差のランクは以下のように付けた。以降の比較例および実施例についても同様にランクを付けた。
光顕測定に対し±5μm以内の誤差 ・・・A(5点)
光顕測定に対し±5μm超、±20μm以内の誤差 ・・・B(3点)
光顕測定に対し±20μm超の誤差 ・・・C(0点)
【0085】
次に、検査機で特定パターンとして検出された箇所に対応する感光体の表面を顕微鏡観察し、局所構造の有無を調べた。その結果、処理(a)、(b)、(c)を実施しなかった検査条件においては、特定パターンとして検出されたにもかかわらず、感光体の表面の対応する箇所に局所構造がない場合(即ち誤検出)が21〜25個あった。一方、処理(a)を施した場合は18箇所、処理(a)、(b)を施した場合は14箇所、処理(a)、(b)、 (c)を施した場合は7箇所あった。
【0086】
表1に各検査条件の誤検出数のランクを示す。誤検出数のランクは以下のように付けた。
以降の比較例および実施例についても同様にランクを付けた。
0個 ・・・AA(8点)
1個以上5個以下 ・・・A(7点)
6個以上10個以下 ・・・B(6点)
11個以上15個以下 ・・・C(5点)
16個以上20個以下 ・・・D(4点)
21個以上25個以下 ・・・E(3点)
26個以上30個以下 ・・・F(2点)
31個以上35個以下 ・・・G(1点)
36個以上 ・・・H(0点)
【0087】
また、表1に示す総合判定のランクは、検査時間、誤検出数、測長誤差、誤検出数の各々の点数における合計から以下のように付けた。以降の比較例および実施例についても同様にランクを付けた。
AA ・・・21点以上22点以下
A ・・・19点以上20点以下
B ・・・17点以上18点以下
C ・・・15点以上16点以下
D ・・・9点以上14点以下
E ・・・8点以下
【0088】
【表1】

【0089】
以上から、本発明によれば、感光体上の局所構造に対応したポチ検出検査の検査時間を20分以内という短時間に短縮でき、誤検出数を抑えられることが分かった。また検査に用いるトナーの色をマゼンタ、シアン、ブラックから選択することによって測長誤差を抑えられることが分かった。さらに処理(a)、(b)、(c)を加えることで誤検出数を減らし、(a)のみの処理と比較して(a)と(b)を加えた処理の方が、また(a)と(b)を加えた処理と比較して(a)と(b)と(c)を加えた処理の方がさらに誤検出数低減効果が高いことが解った。
【0090】
(比較例1)
実施例1と同様の画像形成部101と感光体102にて、帯電工程と現像工程と一次転写工程を1回のみ実施し、A3用紙上に1色からなる三次顕像を形成した後、定着工程を経て画像形成した。現像するトナー色はブラックとした。
この帯電工程と現像工程と一次転写工程の順を1回のみ実施することによって、同じ局所構造に対するブラックのポチが、感光体一周長間隔で画像上に生じる。
形成された画像上において、実施例1と同様の方法でピックアップした50個のポチについて、測長顕微鏡にて観察した後、紙を検出部112に設置し、ドラム一周長をパターン間隔として特定パターンを検出させた。
【0091】
なお、パターン間隔は263.89mm、パターン角度は0度とし、パターン許容間隔およびパターン許容角度は以下の(パターン許容範囲1)と(パターン許容範囲2)の2種類として特定パターンを解析した。(パターン許容範囲2)は実施例1と同様のパターン許容範囲である。
(パターン許容範囲1) :パターン許容間隔を±14.3mm、パターン許容角度を±0.1度(検査条件番号10)
(パターン許容範囲2) :パターン許容間隔を±0.1mm、パターン許容角度を±0.1度(検査条件番号11)
【0092】
その結果、検出部112で要した検査時間はいずれも80分だった。
また、誤検出数は(パターン許容範囲1) で39個、(パターン許容範囲2)では22個であった。検出漏れは(パターン許容範囲1)では0個であったが、(パターン許容範囲2)では33個あった。島の測長誤差はいずれも±5μm以内におさまっていた。以上の結果を表2に示す。
【0093】
【表2】

【0094】
以上より、感光体の一周長という長距離のパターン間隔から特定パターンの有無を解析する場合は、検査時間が長くなることが確認された。また、パターン許容範囲を広げれば検出漏れは生じないものの誤検出数が多くなる一方、パターン許容範囲を狭めると検出漏れを生じてしまうことが解った。
【0095】
(実施例2)
画像形成部が、中間転写体を使用せず、紙搬送体が感光体と当接ニップ部を介して配置され、感光体上の一次顕像が直接紙に転写される構成の画像形成装置を用いた。紙搬送体の一周の長さを、直径84mmの感光体一周の長に対して2倍とし、紙搬送体の周速度を感光体の周速度の1.0035倍となるようにした。
このとき感光体表面に対する紙搬送体及び紙表面上の相対位置が、紙搬送体が一回転した際に1.84mmずれるようになった。
【0096】
この画像形成部を使用して実施例1の検査条件番号1と同様の検査を行った。その結果、検出部112で要した検査時間は17分、測長誤差は最大で±20μmであった。また検出漏れはなく、誤検出数が23個あった。ランクとしては実施例1の検査条件番号1と同様となった。
以上から、中間転写体を使用せず、紙搬送体が感光体と当接ニップ部を介して配置され、感光体上の一次顕像が直接紙に転写される構成の画像形成部であっても、中間転写体を使用した場合と同様に、検査時間と誤検出を抑えることができることが分かった。
【0097】
(実施例3)
実施例1と同様の画像形成部を用い、帯電工程と現像工程と一次転写工程を3回繰り返すことで、中間転写体105の上に第1色、第2色、第3色からなる二次顕像を形成した。次いで、中間転写体105の上の二次顕像を紙108の上に転写し、紙108の上に第1色、第2色、第3色からなる三次顕像を形成した後、定着工程を経て画像を形成した。
現像に使用した3色の組合せは表3に示すように、次の4種類の組合せとした。第1色と第2色と第3色との組合せを、第1色から第3色まですべてマゼンタのみ、第1色と第3色をマゼンタとし第2色をイエロー、マゼンタとイエローとシアン、マゼンタとブラックとシアン。
【0098】
検出部112での処理において、マゼンタとイエローとシアンの組合せでは、実施例1に示した処理(a)、(b)及び(c)を加えた(検査条件番号14)。
またマゼンタとブラックとシアンの組合せについては、以下の(処理パターン1)、(処理パターン2)、(処理パターン3)の3種類の処理を実施した。
(処理パターン1):処理(a)、(b)、(c)のいずれも加えない。(検査条件番号15)
(処理パターン2):処理(a)、(b)及び(c)を加える。(検査条件番号16)
(処理パターン3):処理(a)、(b)及び(c)に加えてさらに下記処理(d)を加える。(検査条件番号17)
【0099】
(d):処理(a)、(b)及び(c)を順次実施した後、第1色の島の重心座標と第2色の島の重心座標とを結ぶ線分と、第2色の島の重心座標と第3色の島の重心座標とを結ぶ線分とのなす劣角が、角度閾値以下の場合にパターンから除外する。角度閾値は179.2度とする。
また、第1色から第3色まですべてマゼンタのみ(検査条件番号12)、第1色と第3色をマゼンタとし第2色をイエロー(検査条件番号13)の2種類の組合せでは、いずれも、処理(a)、(b)、(c)のいずれも加えずに実施した。
その他の検査条件は実施例1と同様である。
その結果、いずれの検査条件でも検査時間は20分以内におさまるとともに検出漏れはなかった。
【0100】
また、誤検出数は検査条件番号12で12個、検査条件番号13で7個であった。いずれも実施例1の検査条件番号4から6に示した第1色と第2色のみから現像した場合の検査条件よりも誤検知数が少なかった。さらに、第1色から第3色が同一色の場合よりも、異なる色の場合のほうが、誤検知数が少なかった。
また、その他の検査条件の誤検知数として、検査条件番号14で2個、検査条件番号15(処理パターン1)で3個、検査条件番号16(処理パターン2)で2個、検査条件番号17(処理パターン3)で0個であった。
【0101】
測長誤差は第1色と第3色をマゼンタとし第2色をイエローの組合せ、および、マゼンタとイエローとシアンの組合せでは±5μm超、±20μm以内の誤差におさまった。また、第1色から第3色まですべてマゼンタのみの組合せ、および、マゼンタとブラックとシアンの組合せでは±5μm以内の誤差におさまった。
以上の結果を表3に示す。
【0102】
【表3】

【0103】
以上から、3色による画像形成によって、2色のみの場合に対して誤検出が減ることが解った。
また、マゼンタ、シアン、ブラックから現像する色を選択することにより、測長精度を高めることができることが解った。
また、処理(a)、(b)及び(c)に加えて処理(d)を施すことによってさらに誤検出を減らせることが解った。
【0104】
(実施例4)
図5に示す下部に排気口のある反応容器から構成されるアモルファスシリコン感光体の製造装置によりアモルファスシリコン感光体を作製した。作製した感光体に対し、実施例3における検査条件番号15と同様の検査条件にて、実施例1と同様の方法で特定パターンを検出した。
その際、本発明の効果を確認するため、あらかじめ反応容器内のメンテナンス間隔を伸ばして、異物が反応容器下部に溜まりやすい状況にした上で感光体を作製した。
【0105】
また、大きさに関する閾値(サイズ閾値)と個数に関する閾値(個数閾値)を各々設定し、まず、サイズ閾値以上の大きさのポチを1つ以上有する特定パターンの個数を抽出した。次に、抽出された特定パターンの個数が個数閾値以上であれば、製造装置のメンテナンス実施判断を行うようにした。
サイズ閾値は40μmとし、ポチの長軸方向の長さと比較することで大きさ比較を行った。また、個数閾値は5個と設定した。
その結果、従来では問題とならなかった小さなポチからなる特定パターンが、反応容器下部に対応する画像位置から多数検出された。検出された特定パターンの位置に対応する感光体表面上に、小さな局所構造があることを確認した。
【0106】
検出されたポチの径はすべて50μm未満であり、長軸方向長さが40μmを超えるポチを含む特定パターンの個数は6個だった。
この結果を受けて、反応容器の下部を清掃するメンテナンスを実施し、その後感光体を製造した。この感光体に対して同様の検査と確認を行ったところ、成膜炉(反応容器)の下部に対応した感光体表面上における局所構造の検出数は減少し、長軸方向長さが40μmを越えるポチを含む特定パターンの個数は0個となった。
以上のように、サイズ閾値以上となる長軸方向長さを有するポチを含んだ特定パターンの個数を抽出し、抽出された特定パターンの個数が個数閾値以上であれば製造装置のメンテナンス実施判断をする。このことにより、局所構造の少ない感光体を定常供給できることが分かった。
【符号の説明】
【0107】
100‥‥検査機
101‥‥画像形成部
102‥‥感光体
104a‥‥第一現像器
104b‥‥第二現像器
105‥‥中間転写体
106‥‥一次転写ローラ
107‥‥二次転写ローラ
108‥‥紙
112‥‥検出部
113‥‥画像が形成された紙
117‥‥レンズ
118‥‥センサ
119‥‥照明系
122‥‥解析部
124‥‥画像処理ボード
125‥‥解析コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体を帯電させる帯電工程と、
前記帯電工程を経た前記感光体への現像工程と、
前記現像工程を経て前記感光体の表面上に形成された一次顕像を中間転写体に転写する一次転写工程と、
前記一次転写工程を前記感光体において複数回行うことにより前記中間転写体の上に複数の一次顕像を重畳してなる二次顕像を形成する二次顕像形成工程と、
前記二次顕像を紙に転写する二次転写工程と、
前記紙に転写された三次顕像を前記紙に定着させる定着工程と、
前記定着工程を経て前記紙の上に定着された画像から画像データを取り込む画像取込工程と、
前記画像データから特定パターンの有無を解析し、前記感光体の表面の局所構造に起因して生じる画像欠陥の有無を調べる解析工程とを有し、
前記特定パターンは、前記感光体の一回転周期の整数倍と前記中間転写体の一回転周期との間に差を設けたことにより生じるパターンであることを特徴とする感光体の検査方法。
【請求項2】
感光体を帯電させる帯電工程と、
前記帯電工程を経た前記感光体への現像工程と、
前記現像工程を経て前記感光体の表面上に形成された一次顕像を紙搬送体で搬送される紙に転写する一次転写工程と、
前記一次転写工程を前記感光体において複数回行うことにより前記紙の上に複数の一次顕像を重畳してなる二次顕像を形成する二次顕像形成工程と、
前記紙に転写された二次顕像を前記紙に定着させる定着工程と、
前記定着工程を経て前記紙の上に定着された画像から画像データを取り込む画像取込工程と、
前記画像データから特定パターンの有無を解析し、前記感光体の表面の局所構造に起因して生じる画像欠陥の有無を調べる解析工程とを有し、
前記特定パターンは、前記感光体の一回転周期の整数倍と前記紙搬送体の一回転周期との間に差を設けたことにより生じるパターンであることを特徴とする感光体の検査方法。
【請求項3】
前記現像工程においてマゼンタ、シアン、ブラックのうち少なくとも2色を用いて現像することによって前記特定パターンを構成する請求項1または2に記載の感光体の検査方法。
【請求項4】
前記帯電工程と前記現像工程と前記一次転写工程との各々を前記感光体に対して少なくとも3回以上行う請求項1及至3のいずれかに記載の感光体の検査方法。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれかに記載の感光体の検査方法を用いてアモルファスシリコン感光体を検査する検査工程を有し、
前記検査工程の結果、サイズ閾値以上の大きさのポチを1つ以上有する特定パターンの個数が個数閾値以上である場合に、アモルファスシリコン感光体の製造装置の反応容器の清掃が必要と判断する判断工程とを有する電子写真感光体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−170114(P2011−170114A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34102(P2010−34102)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】