説明

電子写真感光体の特性評価方法及び特性評価装置

【課題】特性評価中のドラム感光体一周内の帯電電位を平滑化する事が出来、且つ繰り返し精度の良い特性評価結果を得る事が出来る電子写真感光体の特性評価方法及び特性評価装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも帯電装置と、露光装置と、表面電位検出装置とを有するドラム状電子写真感光体の特性評価装置であって、
電子写真感光体の周方向の帯電電位を平滑化する平滑化手段を有する事を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザープリンタ、複写機等の画像形成装置に使用される電子写真感光体の特性評価方法及び特性評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体(以下、「感光体」と称することもある)は、複写機、レーザープリンタなどの電子写真プロセスを応用した画像形成装置において、最も重要な構成要素の一つであり、画像形成装置本体の性能を引き出すために、様々な特性を満足する必要がある。そのため、感光体は出荷前に電子写真に関る様々な特性の検査が行われている。また、新規の電子写真装置用として、新規の感光体を開発する場合には、開発過程において試作した感光体の電子写真に関する様々な特性についての評価が行われており、電子写真感光体の特性評価装置についても種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、着脱可能な感光体ドラムを回転可能に保持するとともに、保持された感光体ドラム表面を軸心方向のほぼ全域にわたって帯電させる帯電装置、及び該帯電装置による帯電位置から感光体ドラムの回転方向下流側位置にて、該感光体ドラムの表面を軸心方向のほぼ全域にわたって露光する光源を有する露光ユニットと、感光体ドラムを所定方向に回転させる感光体ドラム回転手段と、該感光体ドラムの軸心方向に移動可能に配置されており、前記光源による露光位置よりも感光体ドラムの回転方向下流側にて該感光体ドラムの表面の電位を測定する電位センサと、該電位センサを感光体ドラムの軸方向へ移動させるセンサ移動手段と、該電位センサによる測定位置よりも感光体ドラムの回転方向下流側位置にて該感光体ドラムの表面を軸方向のほぼ全域にわたって除電する除電装置とを具備する感光体ドラムの感光体特性測定装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、少なくとも帯電手段、露光手段、表面電位測定手段を取り付けた作動ユニットを円筒形の感光体を母線方向に移動させて諸値を測定する感光体の特性評価方法であって、該感光体はアモルファスシリコンを主成分とする光導電層を有し、帯電手段の有効帯電範囲が2〜15cmであり、露光手段は、露光量、露光波長が可変である事を特徴とする。これにより、上記の諸特性を総合的、かつ高精度に評価する事が可能となる評価方法が記載されている。
【0005】
特許文献1、特許文献2とも、特性評価中の電子写真感光体の表面電位を平滑化するためにスコロトロン帯電器を使用している。スコロトロン帯電器を使用する事で、電子写真感光体の表面電位の平滑化は可能となるが、スコロトロン帯電器を使用する場合には、グリッド用の電源が必要となる事や、グリッド電圧の制御が必要となり、コロトロン帯電器を使用する時よりも煩雑という問題がある。
【0006】
その他の従来技術として、特許文献3には、被試験体である感光体の周囲に配置する帯電装置、露光用光源、表面電位計、試料通過電流検出器、除電用光源、上記感光体を回転駆動する回転制御手段を備え、上記感光体の回転に応じて、帯電、露光、表面電位測定、試料通過電流測定、除電のプロセスにしたがって上記感光体の電気特性を検査する電子写真用感光体試験装置において、ベルト状の感光体を測定する際に該ベルト状の感光体内面全面を段差の無い一つの保持部材によって保持する手段を有することを特徴とする電子写真用感光体試験装置が記載されている。
【0007】
特許文献3では、コロトロン帯電器を使用した電子写真感光体試験装置が記載されているが、特性評価中の電子写真感光体の表面電位平滑化に関する記載や示唆はない。例えば、被試験体である感光体ドラムの外径が大きく重量のある感光体ドラムの場合は、重量バランスの悪さによって、回転時に非常に大きな振れが生じる。その為、重量バランスを補正せずそのままの状態で測るには、200rpm程度の低速回転で測定を実施しなければいけない。また、200rpm程度の低速回転であっても感光体周りに配置された帯電装置・露光装置・表面電位検出装置との距離が安定しない為に、特性評価中の表面電位は振れに応じて変化し帯電ムラとなるが、この現象に関する記載はない。
【0008】
【特許文献1】特開平4−26852号公報
【特許文献2】特開2003−29572号公報
【特許文献3】特開2001−161722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、特性評価中のドラム感光体一周内の帯電電位を平滑化する事が出来、且つ繰り返し精度の良い特性評価結果を得る事が出来る電子写真感光体の特性評価方法及び特性評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明に係る特性評価方法及び特性評価装置は、下記(1)〜(14)に記載の技術的特徴を有する。
(1):少なくとも帯電装置と、露光装置と、表面電位検出装置とを有するドラム状電子写真感光体の特性評価装置であって、電子写真感光体の周方向の帯電電位を平滑化する平滑化手段を有する事を特徴とする電子写真感光体の特性評価装置である。
(2):前記平滑化手段は、電子写真感光体の振れ量測定装置を備え、
該振れ量測定装置が測定した振れ量測定結果に応じて前記帯電装置の出力電圧を変化させる事を特徴とする上記(1)に記載の電子写真感光体の特性評価装置である。
(3):前記平滑化手段は、前記振れ量測定結果を集録する集録装置を備える事を特徴とする上記(2)に記載の電子写真感光体の特性評価装置である。
(4):前記振れ量測定装置と前記帯電装置は、電子写真感光体の径方向の同じ角度に設置されている事を特徴とする上記(2)に記載の電子写真感光体の特性評価装置である。
(5):前記振れ量測定装置は、電子写真感光体の特性評価中に振れ量を測定し、
前記平滑化手段は、当該振れ量測定結果に応じて前記帯電装置の出力電圧を特性評価中に変化させる事を特徴とする上記(2)乃至(4)のいずれか1に記載の電子写真感光体の特性評価装置である。
(6):前記振れ量測定装置は、回転中の電子写真感光体の振れ量を予め測定し、
前記平滑化手段は、当該予め測定した振れ量測定結果に応じて前記帯電装置の出力電圧を制御する出力電圧制御パターンを予め決定し、当該出力電圧制御パターンで前記帯電装置を出力させることを特徴とする上記(2)乃至(4)のいずれか1に記載の電子写真感光体の特性評価装置である。
(7):前記振れ量測定装置は、非接触変位センサである事を特徴とする上記(2)乃至(6)のいずれか1に記載の電子写真感光体の特性評価装置である。
(8):前記平滑化手段は、特性評価する電子写真感光体と同形状で感光層を有しない素管を試験体とし、該試験体において周方向の放電電流を位置によらず一定にする帯電装置の出力電圧制御パターン予め決め、電子写真感光体の特性評価中に当該出力電圧制御パターンで帯電装置を出力させる事を特徴とする上記(1)に記載の電子写真感光体の特性評価装置である。
(9):前記帯電装置は、コロトロン帯電器である事を特徴とする上記(1)乃至(8)のいずれか1に記載の電子写真感光体の特性評価装置である。
【0011】
(10):少なくとも帯電工程と、露光工程と、表面電位検出工程とを有するドラム状電子写真感光体の特性評価方法であって、電子写真感光体の周方向の帯電電位を平滑化する平滑化工程をさらに有する事を特徴とする電子写真感光体の特性評価方法である。
(11):前記平滑化工程は、電子写真感光体の振れ量を測定し、当該振れ量測定結果に応じて前記帯電工程における出力電圧を変化させる事を特徴とする上記(10)に記載の電子写真感光体の特性評価方法である。
(12):前記平滑化工程は、電子写真感光体の特性評価中に振れ量を測定し、当該振れ量測定結果に応じて前記帯電工程における出力電圧を特性評価中に変化させる事を特徴とする上記(10)に記載の電子写真感光体の特性評価方法である。
(13):前記平滑化工程は、予め回転中の電子写真感光体の振れ量を測定し、当該予め測定した振れ量測定結果に応じて前記帯電工程における出力電圧を制御する出力電圧制御パターンを予め決定し、当該出力電圧制御パターンで前記帯電工程を制御することを特徴とする上記(10)に記載の電子写真感光体の特性評価方法である。
(14):前記平滑化工程は、電子写真感光体の振れ量を非接触で測定する事を特徴とする上記(11)乃至(13)のいずれか1に記載の電子写真感光体の特性評価方法である。
(15):前記平滑化工程は、特性評価する電子写真感光体と同形状で感光層を有しない素管を試験体とし、該試験体において周方向の放電電流を位置によらず一定にする帯電工程の出力電圧制御パターン予め決め、電子写真感光体の特性評価中に当該出力電圧制御パターンで帯電工程を制御する事を特徴とする上記(10)に記載の電子写真感光体の特性評価方法である。
(16):前記帯電工程は、コロトロン帯電器で帯電する帯電工程ある事を特徴とする上記(10)乃至(16)のいずれか1に記載の電子写真感光体の特性評価装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特性評価中に発生する放電時の感光体の周方向帯電ムラを抑制して帯電電位を平滑化することが出来、且つ繰り返し精度の良い特性評価結果を得る事が出来る電子写真感光体の特性評価方法及び特性評価装置を提供する事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明に係る電子写真感光体の特性評価装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
なお、「放電電流」という用語を用いるが、これは、帯電装置の放電条件を決めるための値であり、測定する感光体と同形状(直径・全長・肉厚が同じ)の素管(感光層を塗布していない基体ドラムであり、通常はアルミニウムであるが、導電性の基体ドラムであればどのようなものでも使用できる。)に放電させ、素管側に流れる電流の事を意味している。この放電電流によって帯電装置の出力電圧を設定する。
【0014】
図1は、本発明に係る電子写真感光体の特性評価装置の構成を示す概略正面図、図2は、本発明に係る電子写真感光体の特性評価装置の構成を示す概略側面図である。図1と図2を参照しながら特性評価装置を説明する。
【0015】
特性評価装置は、感光体ドラム1を露光する露光ランプ11、感光体ドラム1の電位を計測する表面電位計プローブ3、感光体ドラム1を帯電するコロナ帯電器6、コロナ帯電器6へ電圧を供給するための電源7、電源7のスイッチ15、感光体ドラム1を除電する除電用光源8、露光ランプ11を覆うランプボックス10、露光した光を用感光体の照射面までガイドする露光ガイドボックス2、照度を調節する絞り12、感光体ドラム1の振れを計測するための変位センサ13を有している。また、変位センサ13とコロナ帯電器6は、感光体の径方向の同じ角度に設置されている。
【0016】
表面電位プローブ3、コロナ帯電器6、除電用光源8、露光光源ユニット(露光光源ユニットとは、露光ガイドボックス2、ランプボックス10、露光ランプ11、絞り12の全部位を1つのユニットと見なしたユニット)は、感光体ドラム1の表面と一定の間隔をもって配置できるように、感光体ドラム1の径方向に進退可能な構造となっており、様々な感光体ドラム1の外径に対応可能である。
【0017】
この特性評価装置では、感光体ドラム1は両端にドラムチャック治具20でドラムを保持され、主軸18がチャック治具20の中心を通っている。主軸18は、図2における感光体ドラム1の左側に配置された面板22と感光体ドラム1の右側に配置された面板21が主軸18の軸受け機能となっており、主軸18はモーター16に繋がったベルト19によって回転する機構となっており、図1の矢印の方向に回転する。電源7から高電圧が出力され、コロナ帯電器6によって感光体ドラム1が帯電される。その後、感光体ドラム1中の通過電流は、信号処理回路5に送られる。その後、A/D変換器23によってデジタル信号に変換されコントローラ17に送られデジタル信号が演算処理される。
【0018】
また、感光体ドラム1の表面電位は、表面電位計プローブ3からモニター部である表面電位計4に送られモニターされ、信号処理回路9に送られる。その後A/D変換器によって変換され、次にコントローラ17に送られ演算処理される。コントローラ17は、感光体ドラム1を回転させるモーター16内のモータードライバに接続されている。モータードライバでは、回転数を出力する機能、位置検出機能、回転数をリモート制御可能な機能も付加されており、回転数制御と回転数の認識や、設定した角度でドラムを停止する事も可能である。
【0019】
感光体ドラム1周りのユニットは、デジタルリレー出力によってON/OFF制御されている。また、感光体の露光後電位は、露光ランプ11を使用することによって、測定ができ、感光体の表面電位を取り除く場合は、除電用光源8を使用し取り除くことが可能であり、感光体ドラム1の帯電特性、光減衰特性等の特性評価が可能である。
【0020】
また、変位センサ13に接続されたアンプヘッド14によって、感光体ドラム1の振れがコントローラ17に送られる。コントローラ17はコロナ帯電器6に電圧を供給するための電源7の出力電圧制御が可能であり、コントローラ17では、振れの大小判別、振れ結果の集録も可能である。ここで、本発明における振れ量測定装置は変位センサ13であり、集録装置はコントローラ17の一部であり、これらとアンプヘッド14とが平滑化手段を構成する。また、コントローラ17の記憶領域には、所定の放電電流を得るために、測定する感光体と同形状(直径・全長・肉厚が同じ)である素管(感光層を塗布していない)に対する帯電装置間距離と帯電装置の出力電圧との対応関係を保持する事が可能であり、特性評価中に振れによって試験体と帯電装置間の距離が変化した時に、前記対応関係から、素管時の放電電流を同じにするための帯電装置の出力電圧が判断され出力する事が可能である。
【0021】
また、コントローラ17の記憶領域には、変位センサ13で予め測定した回転中の電子写真感光体の振れ量のパターンを保持し、当該振れ量のパターンと、上記素管に対する帯電装置間距離と帯電装置の出力電圧との対応関係とから、帯電器6で出力する出力電圧のパターンを予め決定し、その出力電圧制御パターンを保持する機能がある。平滑化手段は、この機能で得られた出力電圧制御パターンで放電を制御する事も可能である。
【0022】
さらに、コントローラ17の記憶領域には、素管での放電電流を周方向位置によらず一定にする条件、即ち、素管全周に亘り放電電流が一定となるような出力電圧制御パターンを予め決めて保持する機能があり、この機能と、モータードライバの位置検出機能と組み合わせて、ドラムの主軸の位置を検出し、検出結果に応じて出力電圧を制御し、電子写真感光体に均一な帯電を形成して特性評価する事も可能である。
【0023】
露光装置には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもでき、照度を下げるために、ニュートラルデンシティフィルターを用いることもできる。
【0024】
変位センサには、接触式・非接触式があるが、回転体の振れを測定する目的から非接触式が好ましい。非接触式には、レーザ変位センサ、渦電流式変位センサを用いることができるが、レーザ変位センサでは、感光体に光をあて感光体特性に影響を与えるため、渦電流式変位センサを使用するのが好ましい。レーザを用いる場合は、感光層への照射がないように、感光体の未塗工部、主軸、回転体に照射するのであれば構わない。
【0025】
照度を調節するための絞りには、絞りを使わず照度調整可能なニュートラルデンシティフィルターを用いることもできる。
【0026】
被試験試料の表面を帯電処理するための帯電装置用電源回路の制御手段、該被試験試料を光照射するための光源用電源回路の制御手段は、図示されてないが、これらとしては、従来公知のものをそのまま用いることができる。
【0027】
特性評価装置は、光を透過しない暗箱、あるいは暗幕等で覆われている。暗箱あるいは暗幕で覆われていないと、試験時に外部環境(風・光・温度)の影響を受け、正確な特性評価が困難となる。但し、コントローラ・信号処理回路等、感光体ドラムの評価に影響の無いものに関しては、暗箱あるいは暗幕で覆う必要はない。
【0028】
本発明の実施に用いる感光体は、導電性支持体の上に電荷発生層、電荷輸送層が形成されたもの、更に電荷輸送層の上に保護層が形成されたもの等が使用される。導電性支持体および電荷発生層、電荷輸送層としては、公知のものを使用することができる。
【0029】
本発明に用いられる帯電装置には、コロナ帯電器であるコロトロン帯電器やスコロトロン帯電器を使用することができるが、簡略な構成で均一に帯電させることが可能なコロトロン帯電器が好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により、何等限定されるものではない。
【0031】
先ず、実施例の説明にあたり従来技術における電子写真感光体の特性評価装置及び特性評価方法について説明する。
図1及び図2と同様の構成の電子写真感光体の特性評価装置で、リコー imagio MF 7070に搭載された感光体ドラム(ドラム直径100mm、ドラム全長360mm、ドラムの肉厚1.2mm、ドラム重量362g)を使用して、特性評価を行なった。
【0032】
特性評価装置としては、露光ランプ11に富士電球株式会社製の120V100Wのタングステンランプを使用した内製の露光装置、電源7はTREK社製 高圧電源Model610E、表面電位計はTREK社製 Model344、表面電位計プローブ3はTREK社製 Model6000B−7C、帯電器6は内製したコロトロン帯電器、除電用光源8には波長660nmラインLED、モーター16はオリエンタル社製 モーターユニットDX6150SD、コントローラ17は市販PCとナショナルインスツルメンツ社製のA/D変換器23、それ以外の信号処理回路等は全て内製して製作した特性評価装置を使用した。
【0033】
まず、測定する感光体と同形状(直径・全長・肉厚が同じ)の感光層を塗布していない素管(材質:Al)を特性評価装置に取り付け、放電した際に、放電電流が−28μA/15cmになるように帯電装置の出力電圧を調整し、常に一定電圧となる定電圧出力条件で高圧電源出力を制御して特性評価を実施した。(放電電流の設定は停止状態で行い、任意の位置で実施した。)測定方法は、まず200rpmで回転し、回転が安定したところで高圧電源を出力する。帯電は20秒実施し、その後給電を断ち、20秒暗減衰させ、5秒除電する方法で測定を実施した。測定中は回転を停止することなく、常に200rpmで回転して実施した。
【0034】
電位推移結果を図3と図4に示す。図3は従来の電子写真感光体の特性評価装置を用いて200rpmで測定した帯電特性測定結果の一例を示すグラフ、図4は、図3における測定開始後18秒から40秒までの帯電特性測定結果を拡大したグラフであり、電子写真感光体上の複数の周方向測定位置における測定時間と電位との関係を示す。
【0035】
図3と図4の結果から、コロトロン帯電器を使用し、且つ200rpmという回転速度で感光体を帯電した場合には、感光体の周方向に帯電ムラが確認される事が分かる。ここで帯電ムラとは、図3及び図4で、ある測定時間における複数のプロットの位置の(即ち、ある測定時間における複数の周方向測定位置の電位の)、差が大きい結果の事を言う。帯電特性として20秒帯電後の帯電電位Vaとその後20秒暗減衰した後の電位Vbの比率(Vb/Va)で暗減衰特性を評価した場合、帯電20秒後に計測された電位と、その後20秒暗減衰させた時の電位は、計測したときのタイミングによって変化してしまうため、暗減衰特性(Vb/Va)は測定毎に違いが生じ、繰り返し精度良い安定した特性値算出が困難になる事が分かる。
【0036】
次に、実施例1〜3、及び比較例1〜3について説明する。実施例1〜3と比較例1〜3は、図1及び図2と同様の構成の電子写真感光体の特性評価装置で、リコー imagio MF 7070に搭載された感光体ドラム(ドラム直径100mm、ドラム全長360mm、ドラム肉厚1.2mm、ドラム重量362g)を3本(3本とも同じ日に同条件で作成したサンプル)使用して、特性評価を行なった。
【0037】
特性評価装置としては、露光ランプ11に富士電球株式会社製の120V100Wのタングステンランプを使用した内製の露光装置、電源7はTREK社製 高圧電源Model610E、表面電位計はTREK社製 Model344、表面電位計プローブ3はTREK社製 Model6000B−7C、帯電器6は内製したコロトロン帯電器、除電用光源8には波長660nmラインLED、モーター16はオリエンタル社製 モーターユニットDX6150SD、コントローラ17は市販PCとナショナルインスツルメンツ社製のA/D変換器23、それ以外の信号処理回路等は全て内製して製作した特性評価装置を使用した。振れ量を測定する変位センサ13には、非接触式の渦電流式変位センサを使用。(変位センサ13のセンサ部は、キーエンス製ANALOG SENSOR AH−145(アルミ仕様)を使用し、センサと感光体の距離は2mm離した位置に設定。)変位センサ13とコロナ帯電器6は、感光体の径方向の同じ角度に設置されている。
【0038】
(実施例1、比較例1)
実施例1では、感光体の特性評価中に振れ量を測定し、該振れ量測定結果に応じて帯電装置の出力電圧を特性評価中に変化させ感光体の特性を測定した。
帯電装置の出力電圧は、測定する感光体と同形状(直径・全長・肉厚が同じ)の感光層を塗布していない素管(材質:Al)を放電した際に、放電電流が−28μA/15cmとなる、試験体−帯電装置間距離と放電電圧の関係が予め測定されコントローラに記録されており、測定した振れ量の結果から、出力すべき放電電流が自動的に出力される機構となっている。試験体−帯電装置間距離と放電電圧(帯電装置の出力電圧)の関係のグラフを図5に示す。
比較例1では、設定放電電流を−28μA/15cmに設定し特性評価を実施した。このとき、帯電装置の出力電圧は常に一定である。
【0039】
測定方法は、まず200rpmで回転し、回転が安定したところで、各条件で決めたパターンで高圧電源の出力を実施する。帯電は20秒実施し、その後給電を断ち、20秒間暗減衰させ、5秒除電する方法で測定を実施した。測定中は回転を停止することなく、常に200rpmで回転して実施した。
【0040】
帯電20秒後の電位Vaと、その後給電を断ち20秒間暗減衰させた後の電位Vbの比率(Vb/Va)について確認した。確認結果を表1、実施例1の電位推移結果を図6と図7に、比較例1の電位推移結果を図8に示す。図6は実施例1の電子写真感光体の特性評価装置を用いて200rpmで測定した帯電特性測定結果を示すグラフ、図4は、図3における測定開始後18秒から40秒までの帯電特性測定結果を拡大したグラフであり、図8は比較例1の電子写真感光体の特性評価装置を用いて200rpmで測定した帯電特性測定結果を示すグラフである。また、図6、図7及び図8は、1のサンプルの結果を示す。
【0041】
【表1】

【0042】
以上の結果から、感光体の特性評価中に振れ量を測定し、該振れ量測定結果に応じて帯電装置の出力電圧を特性評価中に変化させる事で、感光体の周方向の帯電ムラが抑制され、帯電電位が平滑化する事が分かる。また、表1の結果から、暗減衰結果も繰り返し精度の良い安定した結果を得る事が出来る事が分かる。
更に、振れを接触式変位センサで計測する事を検討したが、回転時に耐えうる接触式変位センサは無く、例え使えたとしても感光体表面にキズがつき好ましくない為、接触式ではない非接触変位センサを使用する事で感光体にダメージを与えず計測できる事が分かった。
【0043】
また、感光体の振れ量測定装置と帯電装置の取り付け角度について検討したが、感光体の径方向の同じ角度に設置していないと、感光体と帯電装置間の距離変動に対応出来ないため好ましくないことが分かった。
【0044】
(実施例2、比較例2)
実施例2では、特性評価前に、回転中の感光体の振れ量を予め測定した。電子写真感光体のドラム周方向位置と振れ幅との関係の測定結果を図9に示す。その結果を受け、被試験体−帯電装置間距離による結果(図5参照)から、測定する感光体と同形状(直径・全長・肉厚が同じ)の感光層を塗布していない素管(材質:Al)を放電した際に、放電電流が−28μA/15cmで一定となる時の帯電装置の出力電圧を制御するパターンを予め決めた。この決定した実施例2に用いる帯電装置の出力電圧制御パターンを図10に示す。特性評価中に、当該出力電圧制御パターンで帯電装置を出力させ感光体の測定を実施した。
比較例2では、設定放電電流を−28μA/15cmに設定し特性評価を実施した。このとき、帯電装置の出力電圧は常に一定である。
【0045】
測定方法は、上記実施例1及び比較例1と同様の方法で行った。
帯電20秒後の電位Vaと、その後給電を断ち20秒間暗減衰させた後の電位Vbの比率(Vb/Va)について確認した。確認結果を表2、実施例2の電位推移結果を図11と図12に示す。図11は実施例2の電子写真感光体の特性評価装置を用いて200rpmで測定した帯電特性測定結果を示すグラフ、図13は、図12における測定開始後18秒から40秒までの帯電特性測定結果を拡大したグラフである。また、図11及び図12は、1のサンプルの結果を示す。
【0046】
【表2】

【0047】
図11と図12の結果から、特性評価実施前に予め測定した回転中の電子写真感光体の振れ量に応じて、帯電装置の出力電圧を制御するパターンを予め決め、電子写真感光体の特性評価中に該出力制御パターンで、帯電装置を出力させ評価する事で、感光体の周方向の帯電ムラが抑制され、帯電電位が平滑化する事が分かる。また、表2の結果から、暗減衰結果も繰り返し精度の良い安定した結果を得る事が出来る事が分かる。
【0048】
(実施例3、比較例3)
実施例3では、測定する感光体と同形状(直径・全長・肉厚が同じ)である感光層を塗布していない素管(材質:Al)を使用して、素管全周に亘り設定放電電流が−28μA/15cmになるよう、帯電装置の出力電圧を調整して帯電装置の出力電圧パターンを決め、その条件を用いて感光体の特性評価を実施した。素管を3°刻みで回転し、帯電装置の出力電圧を調整した。また、帯電装置の出力パターンは、ドラム主軸で位置を確認し同じ位置で同じ出力になるようにパターンを決めて実施した。
比較例3では、設定放電電流を−28μAに設定し特性評価を実施した。このとき、帯電装置の出力電圧は常に一定である。
【0049】
測定方法は、上記実施例1、2及び比較例1、2と同様の方法で行った。
帯電20秒後の電位Vaと、その後給電を断ち20秒間暗減衰させた後の電位Vbの比率(Vb/Va)について確認した。確認結果を表3、実施例3で実施した帯電装置の出力電圧制御パターンの結果のグラフを図13、実施例3の電位推移結果を図14と図15に示す。図14は実施例3の電子写真感光体の特性評価装置を用いて200rpmで測定した帯電特性測定結果を示すグラフ、図15は、図14における測定開始後18秒から40秒までの帯電特性測定結果を拡大したグラフである。また、図14及び図15は、1のサンプルの結果を示す。
【0050】
【表3】

【0051】
図14と図15の結果から、感光体の周方向全域にわたり素管に対する放電電流が一定になる様帯電装置の出力電圧を制御するパターンを予め決め、感光体の特性評価中に当該出力電圧制御パターンで帯電装置を出力させる事で、感光体の周方向の帯電ムラが抑制され、帯電電位が平滑化する事が分かる。更に、表3の結果から、暗減衰結果も安定した結果を得る事が出来る事が分かる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る電子写真感光体の特性評価装置の構成を示す概略正面図である。
【図2】本発明に係る電子写真感光体の特性評価装置の構成を示す概略側面図である。本発明に係る特性評価装置の概略図の一例(正面図)である。
【図3】従来の電子写真感光体の特性評価装置を用いて200rpmで測定した帯電特性測定結果の一例を示すグラフである。従来方式の200rpmで測定した帯電特性測定結果の一例である。
【図4】図4は、図3における測定開始後18秒から40秒までの帯電特性測定結果を拡大したグラフである。
【図5】試験体と帯電装置間距離と放電電圧との対応関係を示すグラフである。
【図6】実施例1の電子写真感光体の特性評価装置を用いて200rpmで測定した帯電特性測定結果を示すグラフである。
【図7】図6における測定開始後18秒から40秒までの帯電特性測定結果を拡大したグラフである。
【図8】比較例1の電子写真感光体の特性評価装置を用いて200rpmで測定した帯電特性測定結果を示すグラフである。
【図9】電子写真感光体のドラム周方向位置と振れ幅との関係の測定結果を示すグラフである。
【図10】実施例2に用いる帯電装置の出力電圧制御パターンを示すグラフである。
【図11】実施例2の電子写真感光体の特性評価装置を用いて200rpmで測定した帯電特性測定結果を示すグラフである。
【図12】図11における測定開始後18秒から40秒までの帯電特性測定結果を拡大したグラフである。
【図13】実施例3と比較例3の放電電圧制御パターンを示すグラフである。
【図14】実施例3の電子写真感光体の特性評価装置を用いて200rpmで測定した帯電特性測定結果を示すグラフである。
【図15】図14における測定開始後18秒から40秒までの帯電特性測定結果を拡大したグラフである。
【符号の説明】
【0053】
1 感光体ドラム
2 露光ガイドボックス
3 表面電位計プローブ
4 表面電位計
5 信号処理回路
6 帯電器
7 電源
8 除電用光源
9 信号処理回路
10 ランプボックス
11 露光ランプ
12 絞り
13 変位センサ
14 アンプユニット
15 電源スイッチ
16 モーター
17 コントローラ
18 主軸
19 ベルト
20 ドラムチャック治具
21 面板(手前側)
22 面板(奥側)
23 AD変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも帯電装置と、露光装置と、表面電位検出装置とを有するドラム状電子写真感光体の特性評価装置であって、
電子写真感光体の周方向の帯電電位を平滑化する平滑化手段を有する事を特徴とする電子写真感光体の特性評価装置。
【請求項2】
前記平滑化手段は、電子写真感光体の振れ量測定装置を備え、
該振れ量測定装置が測定した振れ量測定結果に応じて前記帯電装置の出力電圧を変化させる事を特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体の特性評価装置。
【請求項3】
前記平滑化手段は、前記振れ量測定結果を集録する集録装置を備える事を特徴とする請求項2に記載の電子写真感光体の特性評価装置。
【請求項4】
前記振れ量測定装置と前記帯電装置は、電子写真感光体の径方向の同じ角度に設置されている事を特徴とする請求項2に記載の電子写真感光体の特性評価装置。
【請求項5】
前記振れ量測定装置は、電子写真感光体の特性評価中に振れ量を測定し、
前記平滑化手段は、当該振れ量測定結果に応じて前記帯電装置の出力電圧を特性評価中に変化させる事を特徴とする請求項2乃至4のいずれか1に記載の電子写真感光体の特性評価特性評価装置。
【請求項6】
前記振れ量測定装置は、回転中の電子写真感光体の振れ量を予め測定し、
前記平滑化手段は、当該予め測定した振れ量測定結果に応じて前記帯電装置の出力電圧を制御する出力電圧制御パターンを予め決定し、当該出力電圧制御パターンで前記帯電装置を出力させることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1に記載の電子写真感光体の特性評価装置。
【請求項7】
前記振れ量測定装置は、非接触変位センサである事を特徴とする請求項2乃至6のいずれか1に記載の電子写真感光体の特性評価装置。
【請求項8】
前記平滑化手段は、特性評価する電子写真感光体と同形状で感光層を有しない素管を試験体とし、該試験体において周方向の放電電流を位置によらず一定にする帯電装置の出力電圧制御パターン予め決め、電子写真感光体の特性評価中に当該出力電圧制御パターンで帯電装置を出力させる事を特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体の特性評価装置。
【請求項9】
前記帯電装置は、コロトロン帯電器である事を特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載の電子写真感光体の特性評価装置。
【請求項10】
少なくとも帯電工程と、露光工程と、表面電位検出工程とを有するドラム状電子写真感光体の特性評価方法であって、
電子写真感光体の周方向の帯電電位を平滑化する平滑化工程をさらに有する事を特徴とする電子写真感光体の特性評価方法。
【請求項11】
前記平滑化工程は、電子写真感光体の振れ量を測定し、当該振れ量測定結果に応じて前記帯電工程における出力電圧を変化させる事を特徴とする請求項10に記載の電子写真感光体の特性評価方法。
【請求項12】
前記平滑化工程は、電子写真感光体の特性評価中に振れ量を測定し、当該振れ量測定結果に応じて前記帯電工程における出力電圧を特性評価中に変化させる事を特徴とする請求項10に記載の電子写真感光体の特性評価の特性評価方法。
【請求項13】
前記平滑化工程は、予め回転中の電子写真感光体の振れ量を測定し、当該予め測定した振れ量測定結果に応じて前記帯電工程における出力電圧を制御する出力電圧制御パターンを予め決定し、当該出力電圧制御パターンで前記帯電工程を制御することを特徴とする請求項10に記載の電子写真感光体の特性評価方法。
【請求項14】
前記平滑化工程は、電子写真感光体の振れ量を非接触で測定する事を特徴とする請求項11乃至13のいずれか1に記載の電子写真感光体の特性評価方法。
【請求項15】
前記平滑化工程は、特性評価する電子写真感光体と同形状で感光層を有しない素管を試験体とし、該試験体において周方向の放電電流を位置によらず一定にする帯電工程の出力電圧制御パターン予め決め、電子写真感光体の特性評価中に当該出力電圧制御パターンで帯電工程を制御する事を特徴とする請求項10に記載の電子写真感光体の特性評価方法。
【請求項16】
前記帯電工程は、コロトロン帯電器で帯電する帯電工程ある事を特徴とする請求項10乃至15のいずれか1に記載の電子写真感光体の特性評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−36657(P2009−36657A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201840(P2007−201840)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】