説明

電子写真感光体の特性評価装置および特性評価方法

【課題】感光体の帯電電位に変動が生じた場合に、感光体側に異常があるのか計測装置側に異常があるのかについての判断を、周方向の位置まで精度良く検出する。
【解決手段】特性評価対象としての感光体1の周囲に、少なくとも帯電器6と、露光装置と、第1,第2の表面電位計プローブと、変位センサ11と、感光体1の回転量を制御するモータ13を備え、感光体1の特性評価を行う特性評価装置20において、振れ量に応じた帯電電位予測変動量を算出する第1算出手段22と、感光体1の回転制御をしつつ、変位センサ11により感光体1の振れ量を周方向の複数の異なる位置で測定し、測定した各位置において、測定した振れ量について帯電電位予測変動量と感光体1の特性測定時における帯電電位とに基づいて予測帯電電位を算出する第2算出手23と、予測帯電電位に基づいて感光体の異常を検出する異常検出手段24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体の特性評価装置および特性評価方法に関する。さらに詳述すると、感光体帯電電位の変動に基づいて、感光体の異常検出を行う際に好適な電子写真感光体の特性評価装置および特性評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、レーザプリンタ等の画像形成装置として、電子写真方式を利用した画像形成装置が種々考案されており公知技術となっている。その画像形成プロセスは、像担持体である電子写真感光体(以下、感光体、感光体ドラムともいう)の表面に静電潜像を形成し、感光体上の静電潜像を現像剤であるトナー等によって現像して可視像化し、現像された画像を転写装置により記録紙(用紙、記録媒体ともいう)に転写して画像を担持させ、圧力や熱等を用いる定着装置によって記録紙上のトナー画像を定着する過程により成立している。
【0003】
電子写真方式を利用した画像形成装置において、感光体は、最も重要な構成要素の一つであり、画像形成装置本体の性能を引き出すために、様々な特性を満足することが要求される。
【0004】
そのため、感光体は出荷前に電子写真に関わる様々な特性の検査が行われている。例えば、新規の画像形成装置に用いるための新規の感光体を開発する場合等において、その開発過程において試作した感光体の電子写真に関する様々な特性についての評価が行われており、その際に用いる電子写真感光体の特性評価装置および特性評価方法についても種々提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、着脱可能な感光体ドラムを回転可能に保持するとともに、保持された感光体ドラム表面を軸心方向のほぼ全域にわたって帯電させる帯電装置、及び該帯電装置による帯電位置から感光体ドラムの回転方向下流側位置にて、該感光体ドラムの表面を軸心方向のほぼ全域にわたって露光する光源を有する露光ユニットと、感光体ドラムを所定方向に回転させる感光体ドラム回転手段と、該感光体ドラムの軸心方向に移動可能に配置されており、前記光源による露光位置よりも感光体ドラムの回転方向下流側にて該感光体ドラムの表面の電位を測定する電位センサと、該電位センサを感光体ドラムの軸方向へ移動させるセンサ移動手段と、該電位センサによる測定位置よりも感光体ドラムの回転方向下流側位置にて該感光体ドラムの表面を軸方向のほぼ全域にわたって除電する除電装置とを具備する感光体ドラムの感光特性測定装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、少なくとも帯電手段、露光手段、表面電位測定手段を取り付けた作動ユニットを円筒形の感光体を母線方向に移動させて諸値を測定する感光体特性の評価方法であって、該感光体はアモルファスシリコンを主成分とする光導電層を有し、帯電手段の有効帯電範囲が2〜15cmであり、露光手段は、露光量、露光波長が可変であることを特徴とする方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、感光体の周囲に配置した帯電装置、除電装置、表面電位計を感光体に対して任意に移動して、感光体の外形と感光体の線速、レーザスキャン副走査方向の解像度、帯電時間及び帯電装置の周方向における配置位置情報及び表面電位計が測定した露光前後の感光体の表面電位から感光体の特性を評価する感光体の特性評価装置が開示されている。
【0008】
さらに、特許文献4には、少なくとも帯電装置と、露光装置と、表面電位検出装置と、電子写真感光体の振れ量測定装置とを備え、測定した振れ量から予測される帯電電位の予測変動量ΔV1を算出し、算出したΔV1と、感光体特性測定時に得られた帯電電位変動量ΔV2との関係から、感光体の異常を検出する特性評価装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記特許文献1〜3においては、特性評価中の電子写真感光体の表面電位を平滑化するためにスコロトロン帯電器を使用し、電子写真感光体の表面電位の平滑化を実現している。
【0010】
しかしながら、感光体の支持体の精度や、計測装置(特性評価装置)の機械精度によって、測定中の感光体に振れが生じ、感光体と帯電器との距離が安定しないため、スコロトロン帯電器を使用した場合でも、測定される感光体の表面電位に変動が生じることがあり、測定精度に影響を及ぼすことが問題となっていた。なお、上記特許文献1〜3には、当該問題点およびその解決手段については、何ら開示およびその示唆もされていない。
【0011】
また、上記特許文献4は、スコロトロン帯電器を使用した場合において、感光体と帯電器の距離が安定しない場合の感光体の特性評価方法が開示されており、感光体周方向の特性異常を判断するものであるが、感光体周方向の任意の位置における感光体異常についての検出については、開示されておらず、異常検出精度の向上について更なる検討の余地が残されていた。
【0012】
そこで本発明は、電子写真感光体の特性測定時において、感光体の帯電電位に変動が生じた場合に、感光体側に問題(異常)があるのか計測装置側に問題(異常)があるのかについての判断を、周方向の位置まで精度良く検出を行うことができる電子写真感光体の特性評価装置および特性評価方法を提供することを目的とする。
【0013】
なお、「感光体側の問題」とは、例えば、塗工ムラ、異物付着、膜厚ムラ、等の感光体の感光層側の問題をいい、「計測装置側の問題」とは、感光体回転主軸の振れ、ドラムチャック治具の振れ、ドラムチャック治具と感光体内径との隙間によって生じる感光体回転時の振れ、帯電器の傾き、等の感光体側には関係なく、計測装置側に問題があって振れが生じている場合を指すものとする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる目的を達成するため、請求項1に記載の電子写真感光体の特性評価装置は、特性評価対象としての感光体の周囲に、少なくとも帯電手段と、露光手段と、表面電位検出手段と、感光体の振れ量測定手段と、感光体の回転量を制御する駆動手段を備え、感光体の特性評価を行う電子写真感光体の特性評価装置において、振れ量測定手段が測定した感光体の振れ量と、該振れ量と該振れ量に応じて変動する帯電電位変動量との関係と、を集録する集録手段と、振れ量に応じた帯電電位予測変動量ΔV1を算出する第1算出手段と、駆動手段により感光体の回転制御をしつつ、振れ量測定手段により感光体の振れ量を該感光体の周方向の複数の異なる位置で測定し、測定した各位置において、測定した振れ量について第1算出手段で算出された帯電電位予測変動量ΔV1と感光体の特性測定時における帯電電位V2とに基づいて予測帯電電位V3を算出する第2算出手段と、予測帯電電位V3に基づいて感光体の異常を検出する異常検出手段と、を備えるものである。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子写真感光体の特性評価装置において、第1算出手段は、予め集録手段に記録され、予め測定された感光体と帯電手段間の距離変動に応じた帯電電位の関係に基づいて算出された、振れ量と帯電電位変動幅との関係を示す関係式に基づいて、振れ量から帯電電位予測変動量ΔV1を算出するものである。
【0016】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれかに記載の電子写真感光体の特性評価装置において、異常検出手段は、複数の位置で測定された予測帯電電位V3について、その最大値V3maxと最小値V3minとの差を用いて、感光体の異常を検出するものである。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の電子写真感光体の特性評価装置において、異常検出手段は、当該感光体が搭載される画像形成装置における帯電電位変動許容幅ΔV4とした場合に、最大値V3maxと最小値V3minとの差と、帯電電位変動許容幅ΔV4との関係が、次式(1)
|(V3max−V3min)|≦ΔV4 ・・・(1)
を満たしているか否かを判断し、満たしていない場合に感光体の異常を検出するものである。
【0018】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から4までのいずれかに記載の電子写真感光体の特性評価装置において、振れ量測定手段は、非接触変位センサであるものである。
【0019】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から5までのいずれかに記載の電子写真感光体の特性評価装置において、振れ量測定手段は、感光体の軸方向における位置を変動させる軸方向位置調整手段を備えているものである。
【0020】
また、請求項7に記載の電子写真感光体の特性評価方法は、特性評価対象としての感光体の周囲に、少なくとも帯電手段と、露光手段と、表面電位検出手段と、感光体の振れ量測定手段と、感光体の回転量を制御する駆動手段を設け、感光体の特性評価を行う電子写真感光体の特性評価方法において、振れ量測定手段が測定した感光体の振れ量と、該振れ量と該振れ量に応じて変動する帯電電位変動量との関係と、を集録する集録処理と、振れ量に応じた帯電電位予測変動量ΔV1を算出する第1算出処理と、駆動手段により感光体の回転制御をしつつ、振れ量測定手段により感光体の振れ量を該感光体の周方向の複数の異なる位置で測定し、測定した各位置において、測定した振れ量について第1算出手段で算出された帯電電位予測変動量ΔV1と感光体の特性測定時における帯電電位V2とに基づいて予測帯電電位V3を算出する第2算出処理と、予測帯電電位V3に基づいて感光体の異常を検出する異常検出処理と、を行うようにしている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電子写真感光体の特性測定時において、感光体の帯電電位に変動が生じた場合に、感光体側に異常があるのか計測装置側に異常があるのかについての判断を、精度良く検出することができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る電子写真感光体の特性評価装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】図1に示す電子写真感光体の特性評価装置の概略構成を示す上面図である。
【図3】図1に示す電子写真感光体の特性評価装置の概略構成を示す側面図である。
【図4】感光体―帯電器間距離1mmにおける帯電電位平均値を元に、感光体―帯電器間距離が変化した時の、帯電電位平均値の差について示すグラフである。
【図5】図4のグラフのX軸を振れ量に置き換えたグラフである。
【図6】帯電電位変動量を計測した結果と、変位センサと感光体間距離を測定した結果を示すグラフである。
【図7】図6のグラフについて、帯電電位の位置による対応関係のずれを補正したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る構成を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。本実施形態に係る電子写真感光体の特性評価装置(特性評価装置20)は、特性評価対象としての感光体(感光体1)の周囲に、少なくとも帯電手段(帯電器6)と、露光手段(露光装置3)と、表面電位検出手段(第1の表面電位計プローブ2、第2の表面電位計プローブ4)と、感光体の振れ量測定手段(変位センサ11)と、感光体の回転量を制御する駆動手段(モータ13)を備え、感光体の特性評価を行う電子写真感光体の特性評価装置において、振れ量測定手段が測定した感光体の振れ量と、該振れ量と該振れ量に応じて変動する帯電電位変動量との関係と、を集録する集録手段(集録手段21)と、振れ量に応じた帯電電位予測変動量ΔV1を算出する第1算出手段(第1算出手段22)と、駆動手段により感光体の回転制御をしつつ、振れ量測定手段により感光体の振れ量を該感光体の周方向の複数の異なる位置で測定し、測定した各位置において、測定した振れ量について第1算出手段で算出された帯電電位予測変動量ΔV1と感光体の特性測定時における帯電電位V2とに基づいて予測帯電電位V3を算出する第2算出手段(第2算出手段23)と、予測帯電電位V3に基づいて感光体の異常を検出する異常検出手段(異常検出手段24)と、を備えるものである。なお、以下の説明では、感光体1の長手方向を軸方向、感光体1の円周方向(回転方向)を周方向(径方向)と呼ぶ。
【0024】
(特性評価装置の構成)
先ず、図1〜図3を参照しつつ、本実施形態に係る電子写真感光体の特性評価装置20について説明する。なお、図1は本実施形態に係る電子写真感光体の特性評価装置の概略構成を示す正面図、図2は図1に示す特性評価装置の概略構成を示す上面図、図3は図1に示す特性評価装置の概略構成を示す側面図である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係る感光体評価装置20は、ドラム状の感光体1の周囲に、感光体1を帯電する帯電器6、潜像を形成する露光装置3、および感光体1上の残留電位を除去する除電器5等が、設けられている。
【0026】
感光体1としては、例えば、導電性支持体の上に電荷発生層、電荷輸送層が形成され、さらに電荷輸送層の上に保護層が形成されたもの等を使用することができる。なお、導電性支持体、電荷発生層、電荷輸送層等としては、公知または新規のものを使用すればよく、特に限られるものではない。また、図1中のrは、感光体1のドラム径の半径を表している。
【0027】
また、感光体1は、図3に示すように、両端にドラムチャック治具17でドラムを保持され、感光体の主軸15がドラムチャック治具17の中心を通って支持されている。この主軸15は、感光体1の左側に配置された面板19と、右側に配置された面板18により、軸受けされる機構となっている。また、主軸15は、モータ13に繋がったベルト16によって回転する機構となっており、図1で示す矢印方向に回転する。
【0028】
また、感光体1を回転させる駆動手段としてのモータ13のモータドライバ13a(不図示)は、感光体1の回転数を出力する手段、感光体1の回転位置検出手段、感光体1の回転数を遠隔制御可能な手段等を備えており、感光体1の回転数制御、回転数の認識、設定した所望の角度(位置)で感光体1の回転を停止させることが可能である。また、所望の線速vで感光体1を回転させることが可能である。
【0029】
また、露光装置3は、図2に示すように、レーザダイオード8の光をポリゴンミラー10で感光体1の軸方向側へ露光させる構成を備えている。なお、図2では感光体1の周辺に配置される帯電器6、除電器5等の図示は省略している。
【0030】
露光装置3は、レーザダイオード8とポリゴンミラー10との間に、感光体1へ露光する露光量を調整可能なND(Neutral Density)フィルタ(減光フィルタ)7が配置されている。NDフィルタ7を使用することにより露光時に必要な露光エネルギーで露光することを可能としている。なお、NDフィルタ7は、光路上に複数枚配置されていることが好ましく、これにより、露光条件を大きく変化させることが可能となる。また、露光装置3には、NDフィルタ7を動作させるロータリソレノイド9が配置されている。なお、当該露光装置3の光源用電源回路の制御手段としては、公知または新規の制御手段を適用すればよく、特に限られるものではない。
【0031】
また、感光体上の表面電位を測定する表面電位計プローブ2,4が、帯電器6と露光装置3との間と、露光装置3と除電器5との間にそれぞれ設置されている。以下、帯電器6と露光装置3との間の表面電位計プローブを第1の表面電位計プローブ2、露光装置3と除電器5との間の表面電位計プローブを第2の表面電位計プローブ4とも呼ぶ。なお、表面電位計プローブ4は、露光装置3からの時間(感光体1の到達時間)を任意に設定できるように、感光体1に対する角度を調整することが可能な角度調整手段を備えている。なお、表面電位計プローブ2,4は、感光体1の軸方向における同じ位置に設置されていることが好ましい。
【0032】
また、除電器5としては、ラインLED等の除電用光源が用いられ、感光体1上の残留電位を除去する。
【0033】
また、帯電器6としては、コロナ帯電器であるコロトロン帯電器やスコロトロン帯電器を使用することができるが、均一、且つ所定の電位に到達させることが容易であるスコロトロン帯電器を用いることがより好ましい。なお、帯電器6は、ワイヤとグリッドに個別に接続された高圧電源によって、感光体1を帯電させるものである。また、当該帯電器6の帯電装置用電源回路の制御手段としては、公知または新規の制御手段を適用すればよく、特に限られるものではない。
【0034】
また、図3に示すように、感光体1の振れを測定するための変位センサ11が設置されている。変位センサ11と帯電器6は周方向における同じ角度に設置される。また、変位センサ11の軸方向位置は表面電位計プローブ2,4の軸方向位置に近い位置であることが好ましい。
【0035】
また、変位センサ11として、接触式のセンサと非接触式のセンサを用いることができるが、感光体1を損傷させることなく感光体1の振れを精度よく測定するためには、非接触式のセンサを用いることが好ましい。なお、非接触式のセンサとしては、レーザ変位センサ、渦電流式変位センサ等を用いることができるが、レーザ変位センサでは、感光体に光をあて、感光体特性に影響を与えることがあるため、渦電流式変位センサを使用することがより好ましい。なお、レーザ変位センサを用いる場合は、感光体1の感光層への照射がないように、感光体1の未塗工部、主軸、回転体に照射するようにすれば良い。
【0036】
以上説明した、表面電位計プローブ2,4、露光装置3、除電器5、帯電器6および変位センサ11の感光体1の周囲に設けられる各手段は、感光体1の表面と所望の間隔を有するように配置される。なお、上記各手段は、感光体1の表面に対し、回転中心方向に対して進退可能な間隔調整手段を備え、様々な外径の感光体1に適用することができるものであることが好ましい。
【0037】
また、上記各手段は、感光体1の軸方向に移動可能な軸方向位置調整手段(不図示)を備えることが好ましい。これにより、感光体1の軸方向における任意の位置における測定等が可能となる。例えば、変位センサ11が軸方向位置調整手段を備えることにより、感光体1の軸方向の複数の位置において、当該感光体1の異常検出を行うことが可能となる。なお、上記各手段は、例えば、信号処理回路(不図示)のデジタルリレー出力によってON/OFF制御が可能なものである。
【0038】
変位センサ11は、図3に示すように、アンプヘッド12に接続されており、変位センサ11により測定された感光体1の回転による振れ量は、アンプヘッド12を介してコントローラ(制御手段)14に送られる。
【0039】
本実施形態では、コントローラ14は、集録手段21、第1算出手段(帯電電位予測変動量算出手段)22、第2算出手段(予測帯電電位算出手段)23、異常検出手段24を備えている。
【0040】
集録手段21は、変位センサ11の検知結果である感光体1の振れ量と、感光体1の振れ量と該振れ量に応じて変動する帯電電位変動量との関係等をコントローラ14が備えている記憶装置(不図示)に集録するものである。
【0041】
また、第1算出手段(帯電電位予測変動量算出手段)22は、感光体1の振れ量に応じた帯電電位予測変動量ΔV1を算出するものであり、例えば、予め集録手段21に記録され、予め測定された感光体1と帯電器6の距離変動に応じた帯電電位の関係に基づいて算出された、振れ量と帯電電位変動幅との関係を示す関係式(後述する式(2)等)に基づいて、振れ量から帯電電位予測変動量ΔV1を算出するものである。
【0042】
また、第2算出手段(予測帯電電位算出手段)23は、測定した振れ量について第1算出手段22で算出された帯電電位予測変動量ΔV1と感光体特性測定時における帯電電位V2とに基づいて予測帯電電位V3を算出するものである。
【0043】
さらに、異常検出手段24は、予測帯電電位V3に基づいて感光体1の異常を検出するものであり、例えば、モータドライバ13aによるモータ13の制御により、複数の周方向の位置で測定された予測帯電電位V3について、その最大値V3maxと最小値V3minとの差を用いて、感光体1の異常を検出するものである。具体的には、例えば、感光体1が実際に搭載される画像形成装置における帯電電位変動許容幅ΔV4として、最大値V3maxと最小値V3minとの差と、帯電電位変動許容幅ΔV4との関係が、|(V3max−V3min)|≦ΔV4、を満たしているか否かを判断し、満たしていない場合に感光体1の異常を検出するものである。
【0044】
また、以上のように構成された特性評価装置20は、帯電器6によって感光体1を帯電させた後、帯電開始位置が露光位置3に来た時に露光するように、帯電と露光のON/OFFのタイミングを図り、静電潜像を形成させることができる。また、この帯電と露光のプロセスを所定回数繰り返し、感光体1を劣化させることが可能である。また、除電器5を使用して、露光後電位V1と露光後電位V2をと比較、評価することもできる。
【0045】
なお、特性評価装置20は、光を透過しない暗箱、暗幕等で覆われて使用される。このようにしないと、評価時に外部環境(風、光、温度等をいう)の影響を受けて正確な特性評価が難しいからである。ただし、各コントローラ、信号処理回路等の感光体1の評価に直接影響の無い構成については、必ずしも暗箱あるいは暗幕で覆う必要はない。
【0046】
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例に基づいて本発明に係る電子写真感光体の特性評価方法について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により、何等限定されるものではない。
【0048】
(参考例)
先ず、実施例の説明に先立って、従来の電子写真感光体の特性評価装置及び特性評価方法(参考例)について説明する。
【0049】
図1〜図3に示したものと同様(コントローラ14の構成を除く)の電子写真感光体の特性評価装置20を用いて、ドラム直径100mm、ドラム全長360mm、ドラムの肉厚1.2mm、ドラム重量362gの感光体ドラム1(リコー ImagioMF7070に搭載)を使用して、特性評価を行なった。
【0050】
また、帯電器6に接続されている高圧電源、表面電位計、表面電位計プローブ2,4はTREK社製の装置を使用した。帯電器6は内製したスコロトロン帯電器、除電器(除電用光源)5には波長660nmのラインLED、モータ13にはオリエンタル社製モータ、変位センサ11にはキーエンス社製の非接触型渦電流式変位センサを用い、その他の信号処理回路等は全て内製して製作した特性評価装置20を使用した。
【0051】
感光体線速を244mm/s、放電電圧を表面電位計プローブ2で計測される感光体周長分の帯電電位平均値が−800Vとなるような放電電圧とし、感光体−帯電器(チャージャ)間の距離を変動(1mm〜2mm)させた時に、感光体周長分の帯電電位の平均値を測定し、感光体−帯電器間距離1mmと比較した時の帯電電位の差を図4に示す。なお、感光体軸方向の測定位置は、感光体の中央部とした。
【0052】
ここで、感光体−帯電器間距離が変動する事は、感光体1の振れ量が変化(0〜1mm)したことと同一とみなすことができるため、図4は感光体1の振れ量が変化した時の帯電電位変動量と見ることができる(すなわち、「感光体−帯電器間距離」=「振れ量」)。図5に、図4のグラフのX軸を振れ量に置き換えたグラフを示す。図5より、振れ量が大きいと帯電電位変動量が大きくなる関係にあることが分かる。
【0053】
次に、感光体線速を244mm/s、表面電位計プローブ2で計測される感光体周長の帯電電位平均値が−800Vとなるような放電電圧で感光体1を帯電させ、感光体周長分の3倍である942mmを帯電させた時の帯電電位を計測した結果と、変位センサ11で変位センサ−感光体間距離を測定した結果のグラフを図6に示す。ここで、図6では、変位センサ11と表面電位計プローブ2とは、感光体径方向角度が45度異なる位置に設置されているため、帯電電位と変位センサ11の計測結果の対応が取れておらず、帯電電位の方が45度分遅れた時間に計測されている。
【0054】
そこで、帯電電位の結果を45度分の時間を早いほうにシフトして算出し、帯電電位と振れ量の対応関係を確認できるように変更した結果を図7に示す。なお、感光体軸方向の測定位置は、感光体の中央部とした。
【0055】
図7より、変位センサ−感光体間距離は一定ではなく、変動していること、すなわち、感光体1が測定中に振れていることが分かる。また、変位センサ−感光体間距離が近づくにつれ、感光体1の帯電電位が高くなることが示され、距離が離れると感光体1の帯電電位が低くなることが示されていることから、感光体1の振れは、帯電電位に大きく影響し、帯電電位の変動量が大きくても、感光体が振れていることによって影響を受けている部分があることが分かる。したがって、感光体1の帯電電位変動量を算出する際には、感光体の振れ量も算出することが重要であるといえる。
【0056】
以上、図5および図7より、帯電電位変動量が大きい場合であっても、回転の振れ量が大きいことによる影響も受けていることがわかり、従来のように、帯電電位変動量のみに基づいて感光体の評価を判断する判断方法では、評価装置の機械精度に起因する回転による振れの影響が排除されておらず、精度の高い感光体の異常検出ができないことが確認できる。
【0057】
(実施例1/比較例1)
以下、実施例1および比較例1について説明する。実施例1および比較例1では、図1〜図3に示したものと同様の電子写真感光体の特性評価装置20を用いて、ドラム直径100mm、ドラム全長360mm、ドラムの肉厚1.2mm、ドラム重量362gの感光体1(リコー Imagio MF7070に搭載)を使用して、特性評価を行なった。
【0058】
また、感光体線速を244mm/s、表面電位計プローブ2で計測される感光体周長分の帯電電位平均値が−800Vとなるような放電電圧で感光体1を帯電させ、感光体周長分である314mmを帯電させ、帯電電位の変動と変位センサ11での振れ量を測定した。なお、感光体軸方向の測定位置は、感光体の中央部とした。
【0059】
また、実施例1および比較例1では、感光体1として、測定ポイントである中心位置に塗膜欠陥があるサンプルを用いて評価を行った。なお、塗膜欠陥は、目視で外観検査を行った結果で判断した。
【0060】
(実施例1)
先ず、予め測定した感光体の振れ量と帯電電位変動幅との関係をコントローラ14の記憶領域14aに記録し(集録手段21)、且つ、振れ量(xとする)と帯電電位変動幅(yとする)との関係式を算出したところ、関係式は次式(2)のように算出された。
y=30.313x+66.947x−0.5806 ・・・(2)
【0061】
次に、基準となる感光体1の周方向のポイント(0°とする)を1点決定し、その点を含めて円周方向に、90°,180°,270°の計4つのポイントでの振れ量から、上記関係式(1)を用いて帯電電位予測変動量ΔV1を各ポイントで予測した(第1算出手段22)。このように予め関係式を算出して、該関係式を用いて演算を行うようにすることにより、処理量の低減、処理の高速化を図ることが可能となる。
【0062】
また、帯電電位予測変動量ΔV1と、実測の帯電電位V2との差分から予測帯電電位V3を各ポイントで求めた(第2算出手段23)。
【0063】
さらに、算出した予測帯電電位V3の結果の中から、最大値となるポイント(V3max)と最小値となるポイント(V3min)を判断し、そのポイントでの差分が10V以上になる場合を感光体1の異常と判断し、感光体1を評価した(異常検出手段24)。なお、感光体1の異常を判定する判断基準(本実施例では10V)は、搭載して評価する画像形成装置における帯電電位変動幅ΔV4が10Vであったため、これを閾値としたものである。このように、感光体1の搭載する画像形成装置における帯電電位変動幅ΔV4を判断基準に用いることにより、実際の使用に際し、正常に使用できるかどうかを判断することができる。
【0064】
このように、帯電電位予測変動量ΔV1と実測の帯電電位V2から求めた予測帯電電位V3の最大値V3maxと最小値V3minの差分を取り、帯電電位変動幅ΔV4を閾値として判断することにより、感光体1の感光層側の問題(例えば、塗工ムラ・異物付着・膜厚ムラ等)を正確に検知することができる。
【0065】
(比較例1)
比較例1では、実施例1と同じサンプル(感光体1)を使用し、同じ4つのポイント(0°,90°,180°,270°)での実測の帯電電位から、予測帯電電位の最大値と最小値の差分を求め、その差分が10V以上になる場合を感光体の異常と判断し、感光体を評価した。
【0066】
実施例1および比較例1における評価結果を表1に示す。
【表1】


なお、表1中の「振れ量(μm)」は、感光体1を評価装置20に取り付け回転させた時に測定した振れ量である。すなわち、感光体1に起因する振れおよび評価装置20に起因する振れ量である。
【0067】
上述のように、実施例1および比較例1では、感光体1として、測定ポイントである中心位置に塗膜欠陥があるサンプルを用いて評価を行ったが、比較例1では、表1に示すように、最終判断(≦10V)として、OK(異常なし)と判断しており、実測値の最大値と最小値の差で感光体の異常(塗膜欠陥)について、誤った判断をしてしまう事が分かった。
【0068】
これに対し、実施例1のように、振れ量から帯電電位変動量を予測し、実測の帯電電位との差分を取った予測帯電電位の最大値と最小値の差分から感光体の異常を判断した場合は、感光体1の異常を精度良く判断できていることが分かった。また、複数のポイントにおける帯電電位を判断することにより、感光体1の帯電電位分布が分かり、感光体1の異常を検出する手段として有効であることが分かった。
【0069】
なお、変位センサ11として、接触式変位センサを用いて計測することを検討したが、回転時に対応可能な接触式変位センサが無く、使用したとしても感光体1の表面にキズがつき好ましくないため、非接触変位センサを用いることにより感光体1を傷つけることなく計測が可能であることが分かった。
【0070】
また、変位センサ11と帯電器6との取り付け角度について検討したところ、感光体1の径方向の同じ角度で設置することが最も好ましいことが分かった。異なる角度とすると、感光体1と帯電器6間の距離変動に対応できない場合があるためである。
【0071】
(実施例2)
実施例2では、感光体軸方向の測定位置を、感光体軸方向の中央部ではなく、感光体塗工上端側から40mmの位置としたこと以外は、実施例1と同様のサンプル、方法で評価を行った。実施例2における評価結果を表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
実施例1(表1)と実施例2(表2)との違いは、感光体軸方向における測定位置の違いであるため、表1と表2の結果によれば、測定位置の感光体の軸方向位置の違いにより、振れ量および帯電電位が変化していることが分かる。すなわち、軸方向の複数箇所で測定を行い(軸方向位置調整手段を備える)、異常を判断することにより、より正確に感光体の異常を正確に判断できることが分かる。
【0074】
なお、測定サンプルとした感光体1は、測定ポイントである感光体塗工上端位置から40mmの位置にも塗膜欠陥があるものを用いた。
【0075】
このように、実施例1,2により、振れ量から帯電電位変動幅を予測し、実測の帯電電位との差分を取った予測帯電電位の最大値と最小値の差分から感光体の異常を判断した場合は、感光体の異常を精度良く判断できている事が分かり、本発明の有効性を確認することができた。
【符号の説明】
【0076】
1 感光体(感光体ドラム)
2 第1の表面電位計プローブ
3 露光装置
4 第2の表面電位計プローブ
5 除電器
6 帯電器
7 NDフィルタ
8 レーザダイオード
9 ロータリソレノイド
10 ポリゴンミラー
11 変位センサ
12 アンプヘッド
13 モータ
13a モータドライバ
14 コントローラ
15 主軸
16 ベルト
17 ドラムチャック治具
18 面板
19 面板
20 特性評価装置
21 集録手段
22 第1算出手段(帯電電位予測変動量算出手段)
23 第2算出手段(予測帯電電位算出手段)
24 異常検出手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】
【特許文献1】特開平4−26852号公報
【特許文献2】特開2003−29572号公報
【特許文献3】特開2000−275872号公報
【特許文献4】特開2010−117580号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特性評価対象としての感光体の周囲に、少なくとも帯電手段と、露光手段と、表面電位検出手段と、前記感光体の振れ量測定手段と、前記感光体の回転量を制御する駆動手段を備え、前記感光体の特性評価を行う電子写真感光体の特性評価装置において、
前記振れ量測定手段が測定した前記感光体の振れ量と、該振れ量と該振れ量に応じて変動する帯電電位変動量との関係と、を集録する集録手段と、
前記振れ量に応じた帯電電位予測変動量ΔV1を算出する第1算出手段と、
前記駆動手段により前記感光体の回転制御をしつつ、前記振れ量測定手段により前記感光体の振れ量を該感光体の周方向の複数の異なる位置で測定し、測定した各位置において、測定した振れ量について前記第1算出手段で算出された前記帯電電位予測変動量ΔV1と前記感光体の特性測定時における帯電電位V2とに基づいて予測帯電電位V3を算出する第2算出手段と、
前記予測帯電電位V3に基づいて前記感光体の異常を検出する異常検出手段と、
を備えることを特徴とする電子写真感光体の特性評価装置。
【請求項2】
前記第1算出手段は、予め前記集録手段に記録され、予め測定された前記感光体と前記帯電手段間の距離変動に応じた帯電電位の関係に基づいて算出された、前記振れ量と帯電電位変動幅との関係を示す関係式に基づいて、前記振れ量から前記帯電電位予測変動量ΔV1を算出することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体の特性評価装置。
【請求項3】
前記異常検出手段は、複数の位置で測定された前記予測帯電電位V3について、その最大値V3maxと最小値V3minとの差を用いて、前記感光体の異常を検出することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の電子写真感光体の特性評価装置。
【請求項4】
前記異常検出手段は、当該感光体が搭載される画像形成装置における帯電電位変動許容幅ΔV4とした場合に、前記最大値V3maxと前記最小値V3minとの差と、前記帯電電位変動許容幅ΔV4との関係が、次式(1)
|(V3max−V3min)|≦ΔV4 ・・・(1)
を満たしているか否かを判断し、満たしていない場合に前記感光体の異常を検出することを特徴とする請求項3に記載の電子写真感光体の特性評価装置。
【請求項5】
前記振れ量測定手段は、非接触変位センサであることを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の電子写真感光体の特性評価装置。
【請求項6】
前記振れ量測定手段は、前記感光体の軸方向における位置を変動させる軸方向位置調整手段を備えていることを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の電子写真感光体の特性評価装置。
【請求項7】
特性評価対象としての感光体の周囲に、少なくとも帯電手段と、露光手段と、表面電位検出手段と、前記感光体の振れ量測定手段と、前記感光体の回転量を制御する駆動手段を設け、前記感光体の特性評価を行う電子写真感光体の特性評価方法において、
前記振れ量測定手段が測定した前記感光体の振れ量と、該振れ量と該振れ量に応じて変動する帯電電位変動量との関係と、を集録する集録処理と、
前記振れ量に応じた帯電電位予測変動量ΔV1を算出する第1算出処理と、
前記駆動手段により前記感光体の回転制御をしつつ、前記振れ量測定手段により前記感光体の振れ量を該感光体の周方向の複数の異なる位置で測定し、測定した各位置において、測定した振れ量について前記第1算出手段で算出された前記帯電電位予測変動量ΔV1と前記感光体の特性測定時における帯電電位V2とに基づいて予測帯電電位V3を算出する第2算出処理と、
前記予測帯電電位V3に基づいて前記感光体の異常を検出する異常検出処理と、を行うようにしたことを特徴とする電子写真感光体の特性評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−189952(P2012−189952A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55486(P2011−55486)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】