説明

電子写真感光体及びこの電子写真感光体を用いる電子写真装置

【課題】 感光体の基体上の欠陥をアルマイト処理以外の方法で除去することで、アルマイト処理における問題点を回避すると共に、欠陥に起因する電流のリークに伴う画像の品質低下を抑えるようにした電子写真感光体を提供するものである。
【解決手段】 導電性基体上に下引き層を介して感光層を形成した電子写真感光体において、前記下引き層が10μm以上の膜厚に形成され、且つ下引き層には平均粒径0.18μm以下の金属酸化物を含有する白色顔料が分散されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体及び及びこの電子写真感光体を用いて画像形成する電子写真装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真プリンターのような電子写真方式を利用して画像形成する電子写真装置においては、一般に感光体の表面を均一に帯電させる帯電工程と、前記感光体上に静電潜像を形成する像書込工程と、トナーを前記静電潜像の画像部に付着させてトナー像を形成する現像工程と、前記感光体上のトナー像を転写材に転写する転写工程と、前記転写材上のトナー像を定着する定着工程と、前記転写工程が完了した後に感光体上に残留したトナーを清掃するクリーニング工程とによって画像を形成する。また、前記転写工程が完了した後、次の帯電工程が開始される前に、感光体上に残像が形成されるのを防止するために除電工程を設けているものもある。そして、前記帯電工程及び転写工程では、一般にコロナ放電によって帯電及び転写が行われる。
【0003】
ところが、コロナ放電を利用した場合、オゾンが発生してしまうという問題がある。そこで、帯電ローラ及び転写ローラを利用して帯電及び転写を行なうことによって、オゾンの発生を抑えるようにしたオゾンフリープロセスが提案されている。例えば、感光体上に帯電ローラを押し当て、帯電ローラに電圧を印加して感光体を帯電させるものである。また、現像によって感光体上に形成されたトナー像に転写材を重ね、その上から転写ローラを押し当て、この転写ローラにトナーと逆の極性の電圧を印加するようにしている。これによって、前記転写材とトナー像の上層部との間の空隙に電界が発生し、この電界の静電気力によってトナー像が転写材に転写される。
【0004】
また、従来の感光体に上記の接触帯電方式や転写ローラ方式を適用すると、感光体の感光層に直接帯電ローラや転写ローラが接触するので、感光層に欠陥があると帯電や転写の接触部材から電流のリークが集中して感光体が損傷を受けるおそれがある。また感光体の基体部分に異物の付着や汚れ、バリ、微細な突起、穴等があると、その部分に感光層を介して電流が集中することで感光体が損傷を受けることもある。
【0005】
そのため、従来にあっては、電流の集中による感光体の損傷を考慮して、感光体がアルミニウム基体の場合には基体表面を陽極酸化処理(以下、アルマイト処理という。)し、表面上の汚れや突起、傷、凹み等の欠陥を除去することで、接触帯電によって生じる画像欠陥や感光層の局所的な凹みに由来する画像欠陥の影響を除去する方法が特許文献1に提案されている。
【0006】
また、基体表面に有機樹脂層からなる下引き層を設け、この下引き層の膜厚を4μm以上とし、電荷輸送層の膜厚を20μm以下として、帯電電位を電荷輸送層の膜厚の厚さに比例した電位に設定することで、感光体の帯電電位を長期に渡り安定化させることを目的とした提案が特許文献2になされている。
【特許文献1】特許第2661418号
【特許文献2】特開2000−314976
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載の方法では、帯電ローラと感光体とが直接接触する方式を採用し、感光体がアルミニウム基体の場合にはアルマイト処理することで感光体への悪影響が回避されるものの、アルマイト処理の工数が大幅に増えるために感光体のコストを押し上げてしまう。また、アルマイト処理では、酸性の溶媒を多量に用いるので環境に悪影響を与える、などの課題が新たに発生していた。
【0008】
また、前記特許文献2に記載の方法では、感光体を長期に使用した場合には電荷輸送層が大きく磨耗してしまうと、帯電装置から印加させる電圧に抗してリークを防止する電圧(耐リーク電圧)が低下してしまう。また、一般的には、電荷輸送層には製造時のピンホールが存在し、また外部から損傷を受けるときには膜の奥深くまでクラックが入ることがあるので、帯電や転写の接触部材から電流のリークが集中して感光体が損傷を受けたりすることがあった。
【0009】
特に、従来の下引き層は、平均粒径が0.25μmの酸化チタンを有機樹脂に分散させて構成したものが多く、また下引き層の膜厚は1〜4μm程度のものが実用に供されている。この下引き層を厚くすることでリーク対策した電子写真感光体も提案されているが、単に厚くしただけでは、有機樹脂層に分散された酸化チタンの偏在などの影響で、上記のリークに対して十分な効果を挙げていないのが現状である。また、従来のまま単に膜厚を厚くすると、下引き層の抵抗の上昇が大きくなり、感光体を露光したときの残留電位が上昇してしまい、結果として十分な印刷濃度が得られなくなる欠点もあった。
【0010】
そこで本発明は、感光体の基体上の欠陥をアルマイト処理以外の方法で除去することで、上記アルマイト処理における問題点を回避すると共に、欠陥に起因する電流のリークに伴う画像の品質低下を抑えるようにした電子写真感光体及びこの電子写真感光体を用いて画像形成する電子写真装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る電子写真感光体は、導電性支持体上に下引き層を介して感光層を形成した電子写真感光体において、前記下引き層が第1の下引き層と第2の下引き層との2層構造からなり、前記第1の下引き層は10μm以上の膜厚に形成され、且つ第1の下引き層には平均粒径0.18μm以下の金属酸化物を含有する白色顔料が分散されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の電子写真装置は、前記構成の電子写真感光体に、絶対値で1500V以下の電圧を印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電子写真感光体によれば、感光体は初期状態において下引き層の厚さが10μm以上あるので、接触帯電部材によって感光体を帯電させても電圧に対して十分な耐圧があり、感光体の基体部分に異物の付着や汚れ、バリ、微細な突起、穴等があってとしても、その欠陥部分に電流が集中することで感光体が損傷を受けるといったことがない。また、感光体を長期間使用した時には、従来は下引き層に分散された金属酸化物が凝集を起こして、局部的な抵抗値の低下を引き起こすことがあるが、本発明の電子写真感光体のように金属酸化物の粒径を0.18μm以下にすることで、金属酸化物の凝集を回避することができる。さらに、下引き層に金属白色顔料を分散させた構成であるので、従来のようなアルマイト処理方法に比べてコストの低減を図ることができ、さらにはアルマイト処理に伴う強酸性の溶媒を使用しないことで、環境にやさしい設備で感光体ドラムを製作することが可能となった。
【0014】
また、本発明の電子写真装置によれば、電子写真感光体には絶対値で1500V以下の電圧を印加しているので、感光体上での電流のリークが起き難くなり、印刷画像の品質向上を図ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明で採用している画像形成方法を適用することができる電子写真装置の一例を示す説明図である。この電子写真装置には、感光体としての感光ドラム21を矢印A方向に回転自在に装着してある。この感光ドラム21は、導電性の基体上に光導電層を設けたものである。光導電層は、例えば、有機感光体、セレン感光体、酸化亜鉛感光体、アモルファスシリコン感光体などで構成される。これらの中でも、有機感光体(Organic Photo Conductor; OPC)が代表的なものである。
【0016】
前記感光ドラム21の周囲には、その周方向に沿って、帯電部材としての帯電ローラ22、露光装置としてのレーザー光照射装置23、現像装置29、転写ローラ210、クリーニングブレード212が配置されている。帯電工程は、帯電ローラ22により感光ドラム21の表面を、プラスまたはマイナスに一様に帯電する工程である。なお、帯電方式としては、図1で示した帯電ローラ22の他に、ファーブラシ、磁気ブラシ、ブレード等で帯電させる方式があり、前記帯電ローラ22をこれらに置き換えることも可能である。
【0017】
露光工程は、図1に示すようなレーザー光照射装置23により、画像信号に対応した光を感光ドラム21の表面に照射して像露光を行い、一様に帯電された感光ドラム21の表面に静電潜像を形成する工程である。レーザー光照射装置23は、例えば、レーザー照射装置と光学系レンズとで構成されている。露光装置として、前記レーザー光照射装置23の他に、LED照射装置を利用することも可能である。
【0018】
現像工程は、露光工程により感光ドラム21の表面に形成された静電潜像に、現像装置29により、トナー(現像剤)を付着させる工程である。反転現像においては、光照射部にのみトナーを付着させ、正規現像においては、光非照射部にのみトナーを付着させるように、現像ローラ24と感光ドラム21との間にバイアス電圧が印加される。
【0019】
図1に示す現像装置29は、トナーを用いた一成分接触現像方式に用いられるものである。トナー28を収容したケーシング27内に、現像ローラ24と供給ローラ26とが配置されている。現像ローラ24は、感光ドラム21に一部接触するように配置され、感光ドラム21と反対の方向Bに回転するようになっている。供給ローラ26は、現像ローラ24に接触して現像ローラ24と同じ方向Cに回転し、現像ローラ24の外周にトナー28を供給するようになっている。この他の現像方式としては、一成分非接触現像方式、二成分接触現像方式、二成分非接触現像方式などがある。
【0020】
現像ローラ24の周囲において、供給ローラ26との接触点から感光ドラム21との接触点との間の位置には、トナー層厚規制部材としての現像ローラ用ブレード25が配置されている。この現像ローラ用ブレード25は、例えば、導電性ゴム弾性体または金属で構成されている。
【0021】
転写工程は、現像工程で形成された感光ドラム21の表面のトナー像を、紙などの転写材211上に転写する工程である。転写工程では、通常、図1に示すような転写ローラ210を用いて転写が行なわれているが、その他にもベルト転写、コロナ転写がある。
【0022】
クリーニング工程は、転写工程後に感光ドラム21の表面に残留したトナーをクリーニングする工程である。クリーニング工程では、一般的に、図1に示すようなクリーニングブレード212が使用されているが、その他にもファーブラシや磁気ブラシによるクリーニングも可能である。本発明においては、前記クリーニングブレード212を使用してクリーニングを行なう。転写工程後、トナー像を有する転写材は、定着工程に移送される。定着工程では、例えば、定着ローラ213と加圧ローラ214との間に転写材を通過させ、加熱加圧することによりトナー像を転写材上に定着させている。
【0023】
図1に示す画像形成装置では、感光ドラム21は、帯電ローラ22により表面が負極性に全面均一に帯電された後、レ−ザー光照射装置23により静電潜像が形成され、さらに、現像装置29により現像されトナー像が形成される。感光ドラム21上のトナー像は、転写ローラ210により、紙などの転写材上に転写され、感光ドラム21表面に残留するトナー(転写残トナー)は、クリ−ニングブレード212によりクリ−ニングされる。クリーニング工程後、次の画像形成サイクルに入る。
【0024】
図1に示す画像形成装置は、モノクロ用のものであるが、カラー画像を形成する複写機やプリンター等のカラー画像形成装置にも、本発明の画像形成方法を適用することができる。カラー画像形成装置としては、感光体上で多色のトナー像を現像させ、それを転写材に一括転写させる多重現像方式、感光体上には単色のトナー像のみを現像させた後、転写材に転写させる工程を、カラートナーの色の数だけ繰り返し行なう多重転写方式がある。多重転写方式には、転写ドラムに転写材を巻きつけ、各色ごとに転写を行なう転写ドラム方式、中間転写体上に各色毎に一次転写を行い、中間転写体上に多色の画像を形成させた後、一括して二次転写を行なう中間転写方式、各色毎の感光体廻りをタンデムに配置させ、転写材を転写搬送ベルトで吸着搬送させて、順次各色を転写材に転写を行なうタンデム方式がある。これらの転写方式の中でも、画像形成速度を大きくすることができる点からタンデム方式が好ましい。
【0025】
前記帯電ローラ22は、感光ドラム21に接触しながら回転する。回転の駆動力は外部から加えてもよく、また感光ドラム21との接触摩擦力で回転させてもよい。帯電ローラ22の材質としては、導電性又は半導電性の弾性体であるゴム部材が好適である。ゴム材としては、NBR,EPDM,シリコンゴム、ネオプレンゴム、エピクロヒドリンゴム、天然ゴム、及びこれらにカーボン等の導電性粒子を練りこんだものが用いられる。
【0026】
このような接触帯電装置を用いた場合は帯電の均一性が重要であり、帯電ローラ22の抵抗が小さすぎると感光ドラム21の帯電ムラが生じて、画像ムラやカブリの原因になる。また逆に抵抗が大きすぎると帯電不良が生じて潜像担持体が十分に帯電されない。そのため、帯電ローラ22の抵抗としては10〜1010Ωcmが好ましく、特に10〜10がより好ましい。
【0027】
また、帯電ローラ22の表面にオーバーコートを施すこともある。オーバーコートの材質としては、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が使用される。オーバーコート部材の抵抗としては、10〜1012Ωcmが好ましく、特に10〜1010Ωcmがより好ましい。オーバーコート部材の膜厚は、通常0.01μm〜1000μm、好ましくは0.1μm〜500μmである。オーバーコートの方法としては、ディップ法、スプレー法、真空蒸着法、プラズマコーティング法がある。これらの中では、ディップ法が量産には向いている。
【0028】
帯電ローラ22に印加して感光ドラム21を帯電させるための電圧は、直流電圧が適している。直流電圧の印加範囲は、正又は負の電圧で600V〜2000V、好ましくは600V〜1500Vである。また、直流電圧に交流電圧を重畳する方式もあるが、感光ドラム21への電流のリークの点からは好ましくない。
【0029】
本発明の電子写真感光体は、例えば、導電性基体上に、少なくとも電荷発生剤を含有する電荷発生層が形成され、その上に、少なくとも電荷移動剤を含有する電荷移動層が形成された機能分離型感光体である。この場合、電荷発生層と電荷移動層とにより感光層が形成される。また、電子写真感光体として、電荷発生剤と電荷移動剤が同一の層に含有される単層型感光体や、電荷移動層と電荷発生層とがこの順に積層された逆積層型感光体なども使用することができる。
【0030】
本発明で使用する導電性基体としては、例えば、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼、ニッケル、クロム、チタン、金、銀、銅、錫、白金、モリブデン、インジウム等の金属単体、又はこれらの合金の加工体、上記金属や炭素等の導電性物質を蒸着、メッキ等の方法で処理し、導電性を持たせたプラスチック板及びフィルム、酸化錫、酸化インジウム、ヨウ化アルミニウムで被覆した導電性ガラスなどがあり、種類や形状に制限されることはない。導電性を有する種々の材料を使用して導電性基体を構成することができる。また、導電性基体の形状については、ドラム状、棒状、板状、シート状、ベルト状など各種形状のものを使用することができる。
【0031】
導電性基体の中でも、JIS3000系、JIS5000系、JIS6000系等のアルミニウム合金を用いて、EI法(押出成形後しごき加工)、ED法(押出加工後引抜加工)、DI法(深絞り加工後しごき加工)、II法(衝撃押出加工後しごき加工)などの一般的な方法により成形を行い、そして、ダイヤモンドバイト等による表面切削加工や研磨等の表面処理を行っていない無切削管が、価格や下層形成処理の観点から好ましい。無切削管の直径は、通常16〜40mmで、厚みは通常0.5〜2.5mm程度である。
【0032】
本発明の電子写真感光体は、導電性基体上に樹脂材料を用いた下引き層を設けている。下引き層を設けることにより、導電性基体の表面の欠陥による悪影響を抑制し、新たな機能を付与することができる。
【0033】
樹脂材料を用いた下引き層(Under Coat Layer;UCL)としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等が用いられる。これらの樹脂の中でも、ポリイミド樹脂が特に好ましい。樹脂材料を用いた下引き層の膜厚は、通常10μm〜50μm、好ましくは10〜30μm、より好ましくは10〜20μmである。
【0034】
一般にポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸の二無水物と芳香族ジアミンとの縮合重合により生成され、中間体のポリアミン酸の溶液を物体に塗布したのち、通常200℃以上で乾燥させる。その際、脱水素反応が起こりポリイミド化する。しかしながら、本発明の下引き層では、すべてをポリイミド化せずにイミド化する前の中間体とイミド化してポリイミドとなったものを混合して用いている。このため、ポリアミン酸の溶液に酸化チタンなどの白色顔料を混合させ、その溶液を塗工した後、110℃〜170℃の間で乾燥させることで、イミド化する前の中間体(以下、ポリイミド前駆体という。)とイミド化してポリイミドとなったもの(以下、ポリイミド樹脂という。)を生成させて下引き層とした。
【0035】
ポリイミド前駆体とポリイミド樹脂との混合割合は、例えばポリイミド樹脂の割合がポリイミド樹脂と該ポリイミド前駆体との合計重量の20%〜70%であり、好ましくは30%〜50%である。ポリイミド樹脂の割合が20%未満だと下引き層が有機溶剤に溶解してしまい、逆に70%を超えるとイミド化に近い状態となり、繰り返し後の残留電位が蓄積されて、黒点(チリ)や白地の薄い黒ずみ(カブリ)が発生してしまう。なお、ポリイミド前駆体とポリイミド樹脂の分子量は、1千〜10万、特に1万〜3万の範囲のものが好ましい。
【0036】
また、下引き層を形成する際の乾燥温度は、110℃〜170℃の範囲が好ましい。110℃以下では下引き層が溶剤で溶解してしまうために感光体に塗布ができず、逆に170℃を超えると繰り返し後の残留電位が蓄積されて、チリ、カブリが発生してしまうからである。
【0037】
本発明の電子写真感光体は、半導体レーザー露光時の光干渉を抑制する目的で、下引き層に金属酸化物の白色顔料を含有させている。下引き層における金属酸化物の白色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムなどが挙げられる。これらの中でも、酸化チタンが好ましい。これら無機顔料の粒径は、通常0.02〜0.18μm、好ましくは0.02〜0.13μmである。酸化チタンは、体積抵抗値を低下させない限り、酸化チタン粒子表面に種々の処理を施したものでもよい。例えば、アルミニウム、ケイ素ニッケル等を処理剤として、その粒子表面に酸化膜の被覆を施すことができる。その他、必要に応じてカップリング剤等により、撥水性を付与することも可能である。
【0038】
下引き層に無機顔料を含有させる場合、その結着樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等の熱可塑性樹脂;ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。結着樹脂として、ポリイミド樹脂など前記の下引き層を構成する樹脂材料を用いることも好ましい。
【0039】
下引き層の厚さを10μm以上とすることにより、感光体の感光層と下引き層の厚さを従来よりも厚くすることが可能となる。トナーの感光体への静電吸着力は、感光層と下引き層の厚さに反比例するので、静電吸着力を低下させるには感光層の厚さが大きいほどよい。静電潜像を従来より高精細に形成するには、感光層と下引き層の厚さを薄くすればよいが、このときは、感光層を薄くした分以上に下引き層を厚くすれば、トナーの感光体への静電吸着力を低下させることができる。
【0040】
次に、感光体の下引き層の厚さに対して、接触帯電での印加電圧と電流のリークの説明をする。
下引き層は、導電性基体の表面に直接塗布される層である。導電性基体は一般にはJIS3000系、JIS5000系、JIS6000系等のアルミニウム合金を用いて、EI法(押出成形後しごき加工)などの一般的な方法により成形を行ったものが使用される。即ち、ダイヤモンドバイト等による表面切削加工や研磨等の表面処理を行っていない無切削管が用いられることが多い。切削管でも同様であるが、導電性基体の表面には無数の凹凸や突起などが見られ、粗さで示すとRz=0.5〜1μm、最大高さで示すとRy=1〜3μm程度が一般的である。したがって、導電性基体の表面の欠陥(凹凸や突起)を被覆するためには最低でも4μm程度の下引き層の膜厚が必要となる。
【0041】
そこで、アルミニウム合金からなる導電性基体上に4μm以上の下引き層を塗布し、この下引き層の膜厚と、接触帯電装置に印加する電圧と、前記下引き層がリークするまでの電圧との関係を調べた。なお、接触帯電装置として、体積抵抗値10Ωcmのエピクロヒドリンゴム製の帯電ローラを用いた。
【0042】
具体的には、直径30mmの無切削アルミニウムからなる円筒ドラム上に、アルミナ被覆された粒径0.035μmの酸化チタン粒子(商品名:TTO−55,石原産業株式会社製)とポリイミド樹脂を重量比で1:5.9の割合で混合した溶液を塗布したのち140℃で30分乾燥し、膜厚が2、4、6、8、10、12、14μmの下引き層を形成した。
【0043】
前記円筒ドラムの内側にアースをとり、表面の下引き層の上に上記の帯電ローラ22を接触させて配置し、帯電ローラ22の芯金22aに直流電圧を印加して電流のリークを調べた。
【0044】
図2は、下引き層の膜厚と直流電圧の印加により電流がリークした電圧値を示すグラフである。この図からもわかるように、下引き層が6μm以下では、絶対値で100V以下で電流のリークが見られるため、リーク発生電圧は絶対値で100V以下になっている。これは、円筒ドラム上の表面にある凹凸や突起の影響で、電流のリークが低い電圧で発生したためだと推定できる。しかし、下引き層の膜厚が厚くなるにつれて、リーク発生電圧は上昇し、下引き層の膜厚が10μm以上ではリーク発生電圧が絶対値で1500V以上になる。すなわち、初期状態でのリーク発生電圧を1500V以上とするには、下引き層の膜厚が10μm以上必要となる。
【0045】
一般の接触帯電方式の場合、帯電ローラ22への印加電圧は−1100V〜−1300V程度の装置が多い。好ましくは、リークの発生電圧は絶対値で1500V以上が望ましい。
【0046】
また、一般の感光体では下引き層の上に電荷発生層や電荷移動層を設けている。電荷発生層は0.3μm程度の膜厚であるが、電荷移動層は10μm〜30μm程度の膜厚を有している。電荷移動層の膜厚を厚くすればリーク発生電圧をみかけ上は上昇させることができるが、電荷移動層は感光体の表面にあるものが多く、使用により膜が削れて減少してくる。そこで、電荷移動層にリーク発生電圧の上昇分を期待すると、感光体を長期間安定的に使用することができなくなる。一方、解像度を上げるためには、電荷移動層の膜厚は薄い方が有利であり、最近では膜厚が20μm以下の感光体で鮮明な画像が得られている。また、下引き層に分散された金属酸化物としての酸化チタンの状態により、リークの発生電圧が変化する。一般に樹脂中に分散された物質は、電界の作用で凝集が発生する。凝集が発生すると、力部的な抵抗値の低下が見られ、感光体を長期間使用すると、下引き層に分散した金属酸化物の粒径が大きい場合には凝集が多く発生する。ただし、従来の金属酸化物の粒径は0.25μm程度であるが、これを望ましくは約半分の0.13μm以下にすると、凝集が大きく改善される。したがって、長期に感光体を使用しても、下引き層で金属酸化物の凝集が発生しないので、下引き層の電気的な耐圧が長期にわたって安定化される。
【0047】
電荷発生層に含有させる電荷発生剤としては、ジスアゾ顔料やオキシチタニウムフタロシアニンが感度の点で望ましいが、それに限定されるものではなく、例えば、セレン、セレン−テルル、セレン−砒素、アモルファスシリコン、無金属フタロシアニン、他の金属フタロシアニン顔料、モノアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ポリアゾ顔料、インジゴ顔料、スレン顔料、トルイジン顔料、ピラゾリン顔料、ペリレン顔料、キナクリドン顔料、多環キノン顔料、ピリリウム塩等を用いることができる。特に、オキシチタニウムフタロシアニンは、比較的高感度であるため好ましい。
【0048】
電荷発生層の膜厚は、通常0.01〜5.0μm、好ましくは0.1〜1.0μm、より好ましくは0.2〜0.5μmである。電荷発生剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、適切な光感度波長や増感作用を得るために2種類以上を混合して用いてもよい。
【0049】
電荷移動層に含有させる電荷移動剤としては、例えば、ポリビニルカルバゾール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリキノリン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフタロシアニン等の高分子電荷移動剤が挙げられる。低分子の電荷移動剤としては、例えば、トリニトロフルオレノン、テトラシアノエチレン、キノン、ジフェノキノン、アントラキノン、イソオキサゾリリデン及びこれらの誘導体等、アントラセン、ピレン等の多環芳香族化合物、インドール、カルバゾール、イミダゾール等の含窒素複素環化合物、ピラゾリン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、トリフェニルアミン、エナミン、スチルベン、ブタジエン化合物等が挙げられる。
【0050】
電荷移動剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて添加することができる。電荷移動層の膜厚は、通常5〜30μm、好ましくは10〜20μmである。
【0051】
感光層を形成するために使用する結着樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエーテル、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ニトリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノール樹脂、エチレン・酢酸ビニル・共重合体(EVA)樹脂、アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン(ACS)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、エポキシアリレート等の光硬化樹脂等が挙げられる。
【0052】
これらの結着樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。結着樹脂として、分子量の異なった2種以上の樹脂を混合して用いれば、硬度や耐摩耗性を改善することができるのでより好ましい。結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂が好ましく、シロキサン骨格含有ポリカーボネート共重合体樹脂、パーフロロ基を末端基として設けたポリカーボネート共重合体樹脂などがより好ましい。
【0053】
本発明の電子写真感光体は、光導電材料や結着樹脂の酸化劣化による特性変化、クラックの防止、機械的強度の向上の目的で、その感光層中に酸化防止剤や紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。酸化防止剤と紫外線吸収剤とを同時に添加することもできる。これらの添加剤は、感光層中であれば何れの層に添加してもよいが、最表面の層、特に電荷移動層に添加することが好ましい。
【0054】
酸化防止剤は、結着樹脂に対して3〜20重量%の割合で添加するのが好ましい。また、紫外線吸収剤は、結着樹脂に対して3〜30重量%の割合で添加するのが好ましい。酸化防止剤と紫外線吸収剤との両者を添加する場合には、両成分の添加量を結着樹脂に対して5〜40重量%の範囲内とするのが好ましい。
【0055】
前記の酸化防止剤や紫外線吸収剤以外に、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール化合物等の光安定剤、ジフェニルアミン化合物等の老化防止剤、界面活性剤等を感光層に添加することもできる。
【0056】
感光層上に、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂等からなる有機薄膜や、シランカップリング剤の加水分解物で形成されるシロキサン構造体からなる薄膜を形成して、表面保護層としてもよい。
【0057】
感光層の形成方法としては、所定の感光材料と結着樹脂とを溶媒に分散または溶解して塗工液を作成し、この塗工液を所定の下地上に塗工する方法が一般的である。塗工方法としては、例えば、浸漬塗工、カーテンフロー、バーコート、ロールコート、リングコート、スピンコート、スプレーコート等があり、下地の形状や塗工液の状態に合わせて選択することができる。電荷発生層は、真空蒸着法により形成することもできる。
【0058】
塗工液に使用する溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、ブタノール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のアルコール類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素系炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類が挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【実施例】
【0059】
以下に本発明の実施例を詳細に説明する。
【0060】
実施例1
≪感光体の製造≫
直径30mmの無切削アルミニウムからなる円筒ドラム上に、アルミナによって被覆された粒径0.035μmの酸化チタン粒子(商品名:TTO−55,石原産業株式会社製)とポリイミド樹脂を重量比で1:5.9の割合で混合した溶液を塗布したのち、140℃で30分乾燥して、膜厚20.0μmの第1の下引き層を形成した。次いで、熱硬化性樹脂としてのメラミン・アルキド樹脂と粒径0.25μmの酸化チタン(商品名:CR−EL,石原産業株式会社製)とを1:3の割合とし、メチルエチルケトンに溶解して塗布液とした。この塗布液を前記第1の下引き層上に塗布し、膜厚1.0μmの第2の下引き層を形成した。
【0061】
次いで、結着樹脂としてポリビニルブチラールを用い、オキシチタニウムフタロシアニンの分散液を浸漬塗工により0.1μm塗布し、電荷発生層を形成した。
【0062】
さらに、結着樹脂としてのポリカーボネート共重合体と、電荷移動剤としてのブタジエン化合物と、酸化防止剤としての2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールとを、ポリカーボネート共重合体=1.0/0.8/0.18の重量比でクロロホルムに溶解して塗工液を調製した。そして、浸漬塗工によりこの塗工液を塗布した後、100℃の温度下で1時間乾燥し、膜厚20μmの電荷移動層を形成し、電子写真感光体を作製した。
【0063】
≪帯電ローラの製造≫
図1に示したように、芯金22aとして直径6mmのステンレスシャフトを使用し、ローラ部材22bとして抵抗10Ωcmエピクロヒドリンゴムを使用して、直径12mmの帯電ローラ22を作製した。そして、上記の感光体と帯電ローラとを市販のプリンター(沖データ製、ML5300)に組み込んで、画像評価を行った。該プリンターは帯電ローラを使用した接触帯電方式のプリンターで、帯電ローラには、−1200Vを外部から印加した。
【0064】
画像パターンは、白地、黒地、階調パターン等を収集して、それぞれの初期の画像が良好であることを確認した。次いで、A4の印刷用紙を用いて、温度23℃、湿度50%の環境下で、5%濃度の印刷パターンで、連続印字試験を行い、1,000枚ごとに、白地、黒地、階調パターンの画像パターンを収集して、画像上に黒点や白点を目視にて評価することで、電流のリークの有無を評価した。連続試験は30,000枚まで行った。連続試験後、白地、黒地、階調パターンの画像に黒点や白点の発生は見られなかった。このように、白地、黒地、階調パターンの各画像に黒点や白点が見られなかったことから、感光体には電流のリークが無かったものと考えられる。
【0065】
実施例2
芯金として直径6mmのステンレスシャフトを使用し、ローラ部材として抵抗10Ωcmエピクロヒドリンゴムを使用して、直径φ12mmの帯電ローラを作成した。それ以外は、実施例1と同様にして初期の画像評価を行った。その結果、白地、黒地、階調パターンそれぞれの画像が良好であることを確認し、感光体の電流のリークが原因で発生する黒点は見られなかった。次いで、30,000枚の連続試験を実施したが、ここでも白地、黒地、階調パターンそれぞれの画像が良好であることを確認し、前記と同様の黒点も見られなかった。
【0066】
実施例3
帯電ローラに印加する電源のバイアスを直流−1500Vに設定し、それ以外は実施例1と同様にして初期の画像評価を行った。その結果、白地、黒地、階調パターンそれぞれの画像が良好であることを確認し、感光体の電流のリークが原因で発生する黒点は見られなかった。次いで、30,000枚の連続試験を実施したが、ここでも白地、黒地、階調パターンそれぞれの画像が良好であることを確認し、前記と同様の黒点も見られなかった。
【0067】
実施例4
芯金として直径6mmのステンレスシャフトを使用し、支持部材として抵抗10Ωcmエピクロヒドリンゴムを使用して、直径12mmの帯電ローラを作成した。
【0068】
帯電ローラに印加する電源のバイアスを直流−1500Vに設定し、それ以外は実施例1と同様にして初期の画像評価を行った。その結果、白地、黒地、階調パターンそれぞれの画像が良好であることを確認し、感光体の電流のリークが原因で発生する黒点は見られなかった。次いで、30,000枚の連続試験を実施したが、ここでも白地、黒地、階調パターンそれぞれの画像が良好であることを確認し、前記と同様の黒点も見られなかった。
【0069】
実施例5
直径30mmの無切削アルミニウムからなる円筒ドラム上に、アルミナによって被覆された粒径0.035μmの酸化チタン粒子(商品名:TTO−55,石原産業株式会社製)とポリイミド樹脂を重量比で1:5.9の割合で混合した溶液を塗布したのち、140℃で30分乾燥して、膜厚10.0μmの第1の下引き層を形成した。次いで、熱硬化性樹脂としてのメラミン・アルキド樹脂と粒径0.25μmの酸化チタン(商品名:CR−EL,石原産業株式会社製)とを1:3の割合とし、メチルエチルケトンに溶解して塗布液とし、この塗布液を前記下引き層上に塗布して膜厚1.0μmの第2の下引き層を形成した。
【0070】
帯電ローラに印加する電源のバイアスを直流−1500Vに設定し、それ以外は実施例1と同様にして初期の画像評価を行った。その結果、白地、黒地、階調パターンそれぞれの画像が良好であることを確認し、感光体の電流のリークが原因で発生する黒点は見られなかった。次いで、30,000枚の連続試験を実施したが、ここでも白地、黒地、階調パターンそれぞれの画像が良好であることを確認し、前記と同様の黒点も見られなかった。
【0071】
実施例6
直径30mmの無切削アルミニウムからなる円筒ドラム上に、アルミナによって被覆された粒径0.020μmの酸化チタン粒子(商品名:TTO−51,石原産業株式会社製)とポリイミド樹脂を重量比で1:11.8の割合で混合した溶液を塗布したのち、140℃で30分乾燥して、膜厚10.0μmの第1の下引き層を形成した。次いで、熱硬化性樹脂としてのメラミン・アルキド樹脂と粒径0.25μmの酸化チタン(商品名:CR−EL,石原産業株式会社製)とを1:3の割合とし、メチルエチルケトンに溶解して塗布液とし、この塗布液を前記下引き層上に塗布して膜厚1.0μmの第2の下引き層を形成した。
【0072】
帯電ローラに印加する電源のバイアスを直流−1500Vに設定し、それ以外は実施例1と同様にして初期の画像評価を行った。その結果、白地、黒地、階調パターンそれぞれの画像が良好であることを確認し、感光体の電流のリークが原因で発生する黒点は見られなかった。次いで、30,000枚の連続試験を実施したが、ここでも白地、黒地、階調パターンそれぞれの画像が良好であることを確認し、前記と同様の黒点も見られなかった。
【0073】
実施例7
直径30mmの無切削アルミニウムからなる円筒ドラム上に、粒径0.07μmの酸化チタン粒子(商品名:PT−401M,石原産業株式会社製)とポリイミド樹脂を重量比で1:3の割合で混合した溶液を塗布したのち、140℃で30分乾燥して、膜厚10.0μmの第1の下引き層を形成した。次いで、熱硬化性樹脂としてのメラミン・アルキド樹脂と粒径0.25μmの酸化チタン(商品名:CR−EL,石原産業株式会社製)とを1:3の割合とし、メチルエチルケトンに溶解して塗布液とし、この塗布液を前記下引き層上に塗布して膜厚1.0μmの第2の下引き層を形成した。
【0074】
帯電ローラに印加する電源のバイアスを直流−1500Vに設定し、それ以外は実施例1と同様にして初期の画像評価を行った。その結果、白地、黒地、階調パターンそれぞれの画像が良好であることを確認し、感光体の電流のリークが原因で発生する黒点は見られなかった。次いで、30,000枚の連続試験を実施したが、ここでも白地、黒地、階調パターンそれぞれの画像が良好であることを確認し、前記と同様の黒点も見られなかった。
【0075】
実施例8
直径30mmの無切削アルミニウムからなる円筒ドラム上に、粒径0.13μmの酸化チタン粒子(商品名:PT−401L,石原産業株式会社製)とポリイミド樹脂を重量比で1:1.8の割合で混合した溶液を塗布したのち、140℃で30分乾燥して、膜厚10.0μmの第1の下引き層を形成した。次いで、熱硬化性樹脂としてのメラミン・アルキド樹脂と粒径0.25μmの酸化チタン(商品名:CR−EL,石原産業株式会社製)とを1:3の割合とし、メチルエチルケトンに溶解して塗布液とし、この塗布液を前記下引き層上に塗布して膜厚1.0μmの第2の下引き層を形成した。
【0076】
帯電ローラに印加する電源のバイアスを直流−1500Vに設定し、それ以外は実施例1と同様にして初期の画像評価を行った。その結果、白地、黒地、階調パターンそれぞれの画像が良好であることを確認し、感光体の電流のリークが原因で発生する黒点は見られなかった。次いで、30,000枚の連続試験を実施したが、ここでも白地、黒地、階調パターンそれぞれの画像が良好であることを確認し、前記と同様の黒点も見られなかった。
【0077】
実施例9
直径30mmの無切削アルミニウムからなる円筒ドラム上に、粒径0.18μmの酸化チタン粒子(商品名:PT−501R,石原産業株式会社製)とポリイミド樹脂を重量比で1:1.3の割合で混合した溶液を塗布したのち、140℃で30分乾燥して、膜厚10.0μmの第1の下引き層を形成した。次いで、熱硬化性樹脂としてのメラミン・アルキド樹脂と粒径0.25μmの酸化チタン(商品名:CR−EL,石原産業株式会社製)とを1:3の割合とし、メチルエチルケトンに溶解して塗布液とし、この塗布液を前記下引き層上に塗布して膜厚1.0μmの第2の下引き層を形成した。
【0078】
帯電ローラに印加する電源のバイアスを直流−1500Vに設定し、それ以外は実施例1と同様にして初期の画像評価を行った。その結果、白地、黒地、階調パターンそれぞれの画像が良好であることを確認し、感光体の電流のリークが原因で発生する黒点は見られなかった。次いで、連続試験を実施したところ、約23,000枚を経過した時点まで、カブリ、濃度等は良好であったが、階調パターンにおいて黒点の発生が見られた。この黒点は感光体の局所的欠陥に起因する電流のリークが発生原因と考えられる。
【0079】
実施例10
直径30mmの無切削アルミニウムからなる円筒ドラム上に、アルミナによって被覆された粒径0.035μmの酸化チタン粒子(商品名:TTO−55,石原産業株式会社製)とポリイミド樹脂を重量比で1:5.9の割合で混合した溶液を塗布したのち、140℃で30分乾燥して、膜厚40.0μmの第1の下引き層を形成した。次いで、熱硬化性樹脂としてのメラミン・アルキド樹脂と粒径0.25μmの酸化チタン(商品名:CR−EL,石原産業株式会社製)とを1:3の割合とし、メチルエチルケトンに溶解して塗布液とし、この塗布液を前記下引き層上に塗布して膜厚1.0μmの第2の下引き層を形成した。
【0080】
帯電ローラに印加する電源のバイアスを直流−1500Vに設定し、それ以外は実施例1と同様にして初期の画像評価を行った。その結果、白地、黒地、階調パターンそれぞれの画像が良好であることを確認し、感光体の電流のリークが原因で発生する黒点は見られなかった。次いで、30,000枚の連続試験を実施したところ、ここでも白地、黒地、階調パターンそれぞれの画像が良好であることを確認し、前記と同様の黒点も見られなかった。
【0081】
実施例11
直径30mmの無切削アルミニウムからなる円筒ドラム上に、アルミナによって被覆された粒径0.035μmの酸化チタン粒子(商品名:TTO−55,石原産業株式会社製)とポリイミド樹脂を重量比で1:5.9の割合で混合した溶液を塗布したのち、140℃で30分乾燥して、膜厚10.0μmの第1の下引き層を形成した。ただし、ここでは第2の下引き層は形成しなかった。
【0082】
帯電ローラに印加する電源のバイアスを直流−1200Vに設定し、それ以外は実施例1と同様にして初期の画像評価を行った。その結果、白地、黒地、階調パターン等それぞれの画像が良好であることを確認した。また、電子写真感光体の局所的欠陥に起因して電流がリークし、それが原因で発生する黒点は見られなかった。次いで、30,000枚の連続試験を実施したところ、ここでも白地、黒地、階調パターン等それぞれの画像が良好であることを確認した。ただし、白地画像において、問題のない程度のカブリがみられたが、実用上は問題なしと判断した。したがって、電子写真感光体の局所的欠陥に起因して電流がリークし、それが原因で発生する黒点は見られなかった。
【0083】
実施例12
直径30mmの無切削アルミニウムからなる円筒ドラム上に、アルミナによって被覆された粒径0.035μmの酸化チタン粒子(商品名:TTO−55,石原産業株式会社製)とポリイミド樹脂を重量比で1:5.9の割合で混合した溶液を塗布したのち、140℃で30分乾燥して、膜厚20.0μmの第1の下引き層を形成した。但し、ここでは第2の下引き層は形成しなかった。
【0084】
それ以外は実施例1と同様にして初期の画像評価を行ったところ、白地、黒地、階調パターン等それぞれの画像は良好であることを確認した。また、電子写真感光体の局所的欠陥に起因して電流がリークし発生する黒点は見られなかった。次いで、30,000枚の連続試験を実施したところ、ここでも白地、黒地、階調パターン等それぞれの画像が良好であることを確認した。ただし、白地画像において、問題のない程度のカブリがみられたが、実用上は問題なしと判断した。したがって、電子写真感光体の局所的欠陥に起因して電流がリークし、それが原因で発生する黒点は見られなかった。
【0085】
比較例1
直径30mmの無切削アルミニウムからなる円筒ドラム上に、粒径0.25μmの酸化チタン粒子(商品名:CR−EL,石原産業株式会社製)とポリイミド樹脂を重量比で1:1の割合で混合した溶液を塗布したのち、140℃で30分乾燥して、膜厚10.0μmの第1の下引き層を形成した。次いで、熱硬化性樹脂としてのメラミン・アルキド樹脂と粒径0.25μmの酸化チタン(商品名:CR−EL,石原産業株式会社製)とを1:3の割合とし、メチルエチルケトンに溶解して塗布液とし、この塗布液を前記下引き層上に塗布して膜厚1.0μmの第2の下引き層を形成した。
【0086】
それ以外は実施例1と同様にして初期の画像評価を行ったところ、白地、黒地、階調パターンそれぞれの画像が良好であることを確認し、感光体の電流のリークが原因で発生する黒点は見られなかった。次いで、連続試験を実施したところ、約10,000枚を経過した時点までカブリ、濃度等は良好であったが、階調パターンにおいて黒点の発生が見られた。この黒点は感光体の局所的欠陥に起因する電流のリークが発生原因と考えられる。
【0087】
比較例2
直径30mmの無切削アルミニウムからなる円筒ドラム上に、粒径0.25μmの酸化チタン粒子(商品名:CR−EL,石原産業株式会社製)とポリイミド樹脂を重量比で1:1の割合で混合した溶液を塗布したのち、140℃で30分乾燥して、膜厚10.0μmの第1の下引き層を形成した。次いで、熱硬化性樹脂としてのメラミン・アルキド樹脂と粒径0.25μmの酸化チタン(商品名:CR−EL,石原産業株式会社製)とを1:3の割合とし、メチルエチルケトンに溶解して塗布液とし、この塗布液を前記下引き層上に塗布して膜厚1.0μmの第2の下引き層を形成した。
【0088】
帯電ローラに印加する電源のバイアスを直流−1500Vに設定し、それ以外は実施例1と同様にして初期の画像評価を行った。その結果、白地、黒地、階調パターンそれぞれの画像が良好であることを確認し、感光体の電流のリークが原因で発生する黒点は見られなかった。次いで、連続試験を実施したところ、約7,500枚を経過した時点までカブリ、濃度等は良好であったが、階調パターンにおいて黒点の発生が見られた。この黒点は感光体の局所的欠陥に起因する電流のリークが発生原因と考えられる。
【0089】
比較例3
直径30mmの無切削アルミニウムからなる円筒ドラムを作成し、第1の下引き層を形成する代わりに弱アルカリの洗浄液で洗浄して、実施例1と同様に第2の下引き層、電荷発生層、電荷移動層を順次設けた。次に、実施例1と同様な帯電ローラを作製した。そして実施例1と同様に、初期の画像を評価したところ、カブリ、濃度等は良好であったが、階調パターンにおいて、感光体の局所的欠陥に起因する電流のリークで発生する黒色が見られた。連続試験は、初期において電流のリークが発生していたので、実施しなかった。
【0090】
比較例4
直径30mmの無切削アルミニウムからなる円筒ドラムを作成し、第1の下引き層を形成する代わりに弱アルカリの洗浄液で洗浄してから第2の下引き層を形成した。第2の下引き層は、ポリアミド樹脂(アルコール可溶性ナイロン樹脂:商品名CM4000)と粒径0.25μmの酸化チタン(商品名:CR−EL,石原産業株式会社製)とを1:3の割合で混合し、これをメタノールとクロロホルムの混合溶液に溶解分散して下引き層用塗工液とした。次に、この下引き層用塗工液に前記円筒ドラムを浸漬塗工したのち、120℃で20分乾燥して、3.0μmの下引き層を形成した。そして、この下引き層の上に電荷発生層、電荷移動層を実施例1と同様にして順次設けた。
【0091】
次に、実施例1と同様の帯電ローラを作製し、この帯電ローラに印加する電源のバイアスを直流−1200Vに設定した以外は実施例1と同様にして初期の画像を評価した。その結果、白地、黒地、階調パターンそれぞれの画像が良好であることを確認し、感光体の電流のリークが原因で発生する黒点は見られなかった。次いで、連続試験を実施したところ、約5,500枚を経過した時点までカブリ、濃度等は良好であったが、階調パターンにおいて黒点の発生が見られた。この黒点は感光体の局所的欠陥に起因する電流のリークが発生原因と考えられる。
【0092】
比較例5
直径30mmの無切削アルミニウムからなる円筒ドラム上に、アルミナによって被覆された粒径0.035μmの酸化チタン粒子(商品名:TTO−55,石原産業株式会社製)とポリアミド樹脂(アルコール可溶性ナイロン樹脂:商品名CM4000)を重量比で1:5.9の割合で混合し、この混合した溶液をメタノールとクロロホルムとの混合溶液に溶解分散して下引き層用塗工液として準備した。次に、この下引き層用塗工液に前記円筒ドラムを浸漬塗工したのち、120℃で20分乾燥して、膜厚20μmの下引き層を形成した。次いで、熱硬化性樹脂としてのメラミン・アルキド樹脂と粒径0.25μmの酸化チタン(商品名:CR−EL,石原産業株式会社製)とを1:3の割合とし、メチルエチルケトンに溶解して塗布液とし、この塗布液を前記下引き層上に塗布して膜厚1.0μmの第2の下引き層を形成した。
【0093】
それ以外は実施例1と同様にして初期の画像評価を行ったところ、白地、黒地、階調パターンそれぞれの画像は良好であることを確認し、感光体の電流のリークが原因で発生する黒点は見られなかった。次いで、連続試験を実施したところ、約12,000枚を経過した時点で、白地画像においてカブリが発生していた。但し、白地、黒地、諧調パターンでの黒点、白点の発生等は見られなかった。さらに、連続試験を続けたところ、約30,000枚の時点では、白地画像においてカブリがより悪化していた。但し、白地、黒地、諧調パターンでの黒点、白点の発生等は見られなかった。
【0094】
上記の実施例と比較例を表1に示す。
【0095】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明に係る電子写真感光体を用いた電子写真装置を示す概略図である。
【図2】本発明において、下引き層の膜厚とリーク発生電圧の関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0097】
21 感光ドラム
22 帯電ローラ
23 レーザー光照射装置
24 現像ローラ
25 現像ローラ用ブレード
26 供給ローラ
27 ケーシング
28 トナー
29 現像装置
210 転写ローラ
211 転写材
212 クリーニングブレード
213 定着ローラ
214 加圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体上に下引き層を介して感光層を形成した電子写真感光体において、
前記下引き層が10μm以上の膜厚に形成され、且つ下引き層には平均粒径0.18μm以下の金属酸化物を含有する白色顔料が分散されていることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記下引き層が第1の下引き層と第2の下引き層との2層構造からなり、前記第1の下引き層が10μm以上の膜厚に形成され、且つ第1の下引き層には平均粒径0.18μm以下の金属酸化物を含有する白色顔料が分散されている請求項1記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記下引き層は、ポリイミド樹脂を含有する請求項1又は2記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記白色顔料が酸化チタンである請求項1又は2記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記感光層は、膜厚が20μm以下である請求項1記載の電子写真感光体。
【請求項6】
請求項1記載の電子写真感光体に、絶対値で1500V以下の電圧を印加することを特徴とする電子写真装置。
【請求項7】
前記写真感光体に直接接触する接触帯電方式を用いる請求項6記載の電子写真装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−216929(P2008−216929A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57949(P2007−57949)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000180128)山梨電子工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】