説明

電子写真機器用帯電ロール

【課題】画像不具合を抑制することができる電子写真機器用帯電ロールを提供すること。
【解決手段】電子写真機器用帯電ロール10は、軸体の外周に沿って導電性発泡層14が形成されており、この導電性発泡層14の外周に沿って低抵抗層18が形成されている。そして、この低抵抗層18の外周に沿って、イオン導電剤を含有する抵抗調整層16が形成されている。導電性発泡層14の体積電気抵抗値R1[Ω・cm]と、低抵抗層18の体積電気抵抗値R2[Ω・cm]は、R2/R1<1、5×10≦R1≦1×10、1×10≦R2≦1×10を満たすように構成されている。さらに、抵抗調整層16の外周には、保護層20が積層されていても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真機器用帯電ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器が広く使用されている。これら電子写真機器の内部には、静電潜像が形成される感光ドラムなどの感光体が組み込まれている。感光体に静電潜像を形成するためには、予め感光体表面を帯電させる必要がある。そのため、この感光体を帯電させるために、一般的に帯電ロールが使用される。
【0003】
上記帯電ロールとしては、導電性を有する軸体の外周に、導電性弾性体層などを設け、その外周に抵抗調整層を設けたものが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、軸体の外周に導電性弾性体層が形成され、この導電性弾性体層の外周に、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合体、水素化ニトリルゴム、イオン導電剤を主成分とする抵抗調整層が形成された導電性ロールが記載されている。また、帯電ロールには、感光ドラム表面へのトナー融着を抑制するために、導電性弾性体層を発泡させて低硬度化した導電性発泡層が用いられることが多い。
【0005】
【特許文献1】特開平7−140760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、軸体の外周に導電性発泡層が形成され、その外周に抵抗調整層が設けられた帯電ロールでは、導電性発泡層の発泡セルの開口部と抵抗調整層との界面付近で不均一な空隙ができて局所的な電流の流れが生じ、長期の使用によって、抵抗調整層に含有されたイオン導電剤が消費し易かった。
【0007】
そのため、帯電ロールの電気抵抗が変動して高抵抗となり易く、電荷供給が不安定になり、得られる画像に濃度ムラや端部にスジが発生するなどの画像不具合が生じる問題があった。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、上述した画像不具合を抑制することができる電子写真機器用帯電ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る電子写真機器用帯電ロールは、軸体と、軸体の外周に沿って形成された導電性発泡層と、上記導電性発泡層の外周に沿って形成された低抵抗層と、上記低抵抗層の外周に沿って形成されイオン導電剤を含有する抵抗調整層とを有し、以下の式(1)、(2)および(3)を満たすことを要旨とする。
R2/R1<1 ・・・(1)
5×10≦R1≦1×10 ・・・(2)
1×10≦R2≦1×10 ・・・(3)
但し、
R1[Ω・cm] :導電性発泡層の体積電気抵抗値
R2[Ω・cm] :低抵抗層の体積電気抵抗値
【0010】
この場合、上記低抵抗層の厚さは、5〜25μmの範囲内にあると良い。
【0011】
また、上記低抵抗層は、ポリアミド樹脂と導電剤とを含むと良い。
【0012】
そして、上記抵抗調整層の厚さは、300〜700μmの範囲内にあると良い。
【0013】
さらに、上記イオン導電剤は、第4級アンモニウム塩を含むと良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る電子写真機器用帯電ロールは、導電性発泡層の外周に沿って低抵抗層が形成されており、導電性発泡層の体積電気抵抗値R1と低抵抗層の体積電気抵抗値R2とが上記式(1)、(2)および(3)を満たすように構成されている。
【0015】
そのため、電気抵抗ムラを低減して局所的な電流の流れを抑え、イオン導電剤の消費を抑制することができる。そして、安定して電荷を供給することができ、濃度ムラやスジが発生するなどの画像不具合を抑制することができる。
【0016】
また、低抵抗層の厚さが、5〜25μmの範囲内にあれば、十分な帯電量を確保することができる。
【0017】
そして、低抵抗層が、ポリアミド樹脂と導電剤とを含んでいれば、上記式(1)および(3)を満たし易くなる。
【0018】
また、抵抗調整層の厚さが、300〜700μmの範囲内にあれば、感光ドラムとの接触を良好に保つことができる。
【0019】
さらに、イオン導電剤が第4級アンモニウム塩を含んでいれば、より十分な帯電量を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本実施形態に係る電子写真機器用帯電ロール(以下、単に「帯電ロール」ということがある。)について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の帯電ロールの一例を示す断面図である。図1に示すように、本発明の帯電ロール10は、軸体の外周に沿って導電性発泡層14が形成されており、この導電性発泡層14の外周に沿って低抵抗層18が形成されている。そして、この低抵抗層18の外周に沿って、イオン導電剤を含有する抵抗調整層16が形成されている。
【0022】
さらに、抵抗調整層16の外周には、保護層20が設けられている。保護層20は必須ではないが、帯電ロールの最外層に保護層20が設けられていれば、ロール表面にトナーが付着し難くなり、得られる画像品質の向上に寄与し易い。
【0023】
ここで、上記導電性発泡層の体積電気抵抗値R1[Ω・cm]と、上記低抵抗層の体積電気抵抗値R2[Ω・cm]とは、以下の式(1)、(2)および(3)を満たすように構成されている。
R2/R1<1 ・・・(1)
5×10≦R1≦1×10 ・・・(2)
1×10≦R2≦1×10 ・・・(3)
【0024】
上記R2/R1が1以上では、導電性発泡層と抵抗調整層との界面付近の局所的な電流の流れを抑制することが難しい。そのため、帯電ロールの電気抵抗が上昇して、感光ドラムへの電荷供給が不安定になり、得られる画像に濃度ムラや端部にスジが発生するなどの画像不具合がある。
【0025】
本発明に係る帯電ロールは、上記式(1)を満たしているので、帯電ロールの電気抵抗ムラを抑え、安定して電荷を供給することができ、濃度ムラやスジが発生するなどの画像不具合を抑制することができる。また、式(2)および(3)も満たすので、十分な帯電を得ることができる。
【0026】
上記導電性発泡層の主成分としては、例えば、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ヒドリンゴム(ECO、CO)、ウレタン系エラストマー、天然ゴム(NR)などを例示することができる。これらは1種又は2種以上混合されていても良い。
【0027】
また、導電性発泡層には、導電剤として、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、c−TiO2 、c−ZnO、c−SnO2 、イオン導電剤(四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤等)を含有させると良い。なお、上記「c−」は、導電性を有するという意味である。導電剤の配合量を調整することで、体積電気抵抗値が5×10〜1×10Ω・cmの範囲内の導電性発泡層を得ることができる。
【0028】
そして、導電剤以外にも、必要に応じて、増量剤、補強剤、加工助剤、硬化剤、加硫促進剤、架橋剤、架橋助剤、発泡剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、シリコーンオイル、滑剤、助剤、界面活性剤などの各種添加剤を1種又は2種以上適宜含有していても良い。
【0029】
導電性発泡層の厚さは、特に限定されるものではないが、好ましくは、0.1〜10mm、より好ましくは、1〜5mmの範囲内から選択することができる。また、導電性発泡層は、単層から構成されていても良いし、複数層から構成されていても良い。
【0030】
この導電性発泡層の外周に設けられる低抵抗層の主成分としては、例えば、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ブチラール樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素ゴム、フッ素樹脂、フッ素樹脂とフッ素ゴムとの混合物、シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、ニトリルゴム、ウレタンゴム、これらを架橋した樹脂などを用いることができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。この中でも好ましくは、低抵抗化や、抵抗調整層との接着性の観点から、低抵抗層には、ポリアミド樹脂を含むベース樹脂を用いると良い。
【0031】
さらに、低抵抗層に用いられるベース樹脂には、導電剤が含有されていると良い。導電剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、c−TiO2 、c−ZnO、c−SnO2 、イオン導電剤(四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤等)等があげられる。導電剤の配合量を調整することで、体積電気抵抗値が1×10〜1×10Ω・cmの範囲内の低抵抗層を得ることができる。
【0032】
また、必要に応じて、発泡剤、加硫促進剤、架橋剤、架橋助剤、オイル等を適宜添加しても良い。また、低抵抗層は、単層から構成されていても良いし、複数層から構成されていても良い。
【0033】
低抵抗層の厚さは、3〜25μmの範囲内にあると良い。好ましくは、7〜20μm、より好ましくは、10〜15μmである。低抵抗層の厚さが5μm以上であれば、均一な低抵抗層が得られ易く、また、未発泡の導電性発泡層を発泡成形する際に、亀裂が生じ難いからである。そして、低抵抗層の厚さが25μm以下であれば、抵抗値の制御が容易だからである。
【0034】
抵抗調整層の主成分としては、例えば、ヒドリンゴム(ECO)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)などを例示することができる。
【0035】
上記抵抗調整層には、イオン導電剤が配合されている。イオン導電剤としては、例えば、トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレート、トリメチルプロピルアンモニウムパークロレート、テトラメチルアンモニウムパークロレートなどの第4級アンモニウム塩や、過塩素酸リチウム、過塩素酸カリウムなどの過塩素酸塩等を用いることができる。
【0036】
イオン導電剤の配合量は、抵抗調整層のベース樹脂100質量部に対して、0.3〜3.0質量部の範囲内にあると良い。好ましくは、0.5〜2.5質量部、より好ましくは、1.0〜2.0質量部である。イオン導電剤がベース樹脂100質量部に対して、0.3質量部以上含有されていれば、十分な抵抗値の制御が可能であり、3.0質量部以下であれば、ブリードが抑えられるからである。
【0037】
さらに、抵抗調整層には、イオン導電剤の他に、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、c−TiO2 、c−ZnO、c−SnO2等の電子導電剤が配合されていても良い。
【0038】
また、必要に応じて、発泡剤、加硫促進剤、架橋剤、架橋助剤、オイル等を適宜添加しても良い。また、抵抗調整層は、単層から構成されていても良いし、複数層から構成されていても良い。
【0039】
抵抗調整層の厚さは、300〜700μmの範囲内にあると良い。好ましくは、350〜650μm、より好ましくは、400〜600μmである。抵抗調整層の厚さが、300μm以上であれば、十分な強度を有するからであり、700μm以下であれば、感光ドラムとの間に隙間ができ難く、良好な接触を保つことができるからである。
【0040】
保護層の主成分としては、例えば、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素ゴム、フッ素樹脂、フッ素樹脂とフッ素ゴムとの混合物、シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、ニトリルゴム、ウレタンゴム、これらを架橋した樹脂などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。とりわけ、耐摩耗性に優れるなどの観点から、架橋ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素変性アクリル樹脂などを好適に用いることができる。
【0041】
さらに、保護層は、導電剤(電子導電剤および/またはイオン導電剤)を含有していると良い。必要に応じて、粗さ形成剤、可塑剤、レベリング剤などの各種添加剤を1種または2種以上適宜含有していても良い。また、保護層は、単層から構成されていても良いし、複数層から構成されていても良い。
【0042】
保護層の厚さは、特に限定されるものではないが、抵抗値を上昇させ難いなどの観点から、好ましくは0.01〜100μm、より好ましくは、2.0〜20μm、さらにより好ましくは、5.0〜10μmの範囲内から選択すると良い。
【0043】
上記軸体は、導電性を有するものであればよく、具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などを例示することができる。
【0044】
以上、本実施形態に係る帯電ロールの構成について説明した。
【0045】
次に、本実施形態に係る帯電ロールの製造方法(以下、「本製造方法」ということがある。)の一例について説明する。
【0046】
まず、未発泡の導電性発泡層形成材料を調製し、これを軸体の外周に押出成形などにより形成する。
【0047】
そして、この未発泡の導電性発泡層形成材料の外周に、低抵抗層形成材料をロールコーティング法、ディッピング法、スプレーコート法などにより塗工して形成する。
【0048】
次いで、抵抗調整層形成材料を調製し、例えば、これを押し出しによりチューブ状に成型し、それを抵抗調整層として用いることができる。そして、このチューブ状の抵抗調整層を金型内に挿入する。次いで、このチューブの中空部に、上記低抵抗層形成材料および未発泡の導電性発泡層形成材料が外周に形成された軸体を同軸にセットし、金型内で未発泡の導電性発泡層形成材料を発泡成形した後、脱型する。
【0049】
また、低抵抗層形成材料は、未発泡の導電性発泡層形成材料の外周に塗工するのではなく、チューブ状に形成された抵抗調整層の内周面に塗工しても良い。
【0050】
そして、保護層を設ける場合には、抵抗調整層の外周に、保護層形成材料を塗工などの方法により形成することができる。このようにして本発明に係る帯電ロールを製造することができる。
【0051】
上記製造方法以外に、本実施形態に係る帯電ロールは、例えば、低抵抗層形成材料と抵抗調整層形成材料とを、軸体の外周に形成された未発泡の導電性発泡層形成材料の外周に、同時に押出成形して、製造することもできる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。ここでは、軸体の外周に、導電性発泡層、低抵抗層、抵抗調整層、保護層をこの順に積層した帯電ロールを製造した。
【0053】
(供試材料および製造元など)
本実施例において使用した供試材料を製造元、商品名、物性値などとともに示す。
【0054】
<軸体>
外径8.0mm、長さ354mmのSUS製の軸体を準備した。
【0055】
<導電性発泡層形成材料の調製>
EPDM[三井化学(株)製、「EPT4045」]100重量部と、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC)20重量部と、酸化亜鉛5重量部と、ステアリン酸1重量部と、プロセスオイル[出光化学(株)製、「ダイアナプロセスPW380」]30重量部と、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(発泡剤)15重量部と、硫黄1重量部と、ジベンゾチアゾールジスルフィド(架橋促進剤)2重量部と、テトラメチルチウラムモノサルファイド(架橋促進剤)1重量部とを配合し、導電性発泡層形成材料を調製した。
【0056】
<低抵抗層形成材料の調製>
N−メトキシメチル化ナイロン[帝国化学産業(株)製、商品名「トレジンEF30T」]100質量部に対し、カーボンブラック[ケッチェンブラックインターナショナル(株)製、商品名「ケッチェンブラックEC300J」]、メラミン樹脂[住友化学(株)製、商品名「スミテックスレジンM3」]を後述の表1および2に示す配合量で低抵抗層形成材料を調製した。
【0057】
<抵抗調整層形成材料の調製>
エピクロルヒドリンゴム(ECO)[ダイソー(株)製、商品名「エピクロマーCG102」]70質量部と、アクリロニトリル−ブタジエンゴム[日本ゼオン(株)製、商品名「ニポールDN101」]30質量部と、シリカ[日本シリカ工業(株)製、商品名「ニプシールVN3」]50質量部と、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド1質量部と、酸化亜鉛5質量部と、ステアリン酸[花王(株)製、商品名「ルーナックS30」]1質量部と、加硫促進剤A[大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーDM」]0.5質量部と、加硫促進剤B[大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーTT」]0.5質量部と、加硫促進剤C[大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーTRA」]0.5質量部とをニーダーで混練し、抵抗調整層形成材料を調製した。
【0058】
<保護層形成材料の調製>
アクリル系ポリマー[住友化学(株)製、スミペックスLG6A]]100質量部、カーボンブラック[三菱化学(株)製、商品名:「MA100」]30質量部を、メチルエチルケトン(MEK)700質量部に混合し、これをビーズミルを用いて分散し、保護層形成材料を調製した。
【0059】
<帯電ロールの製造>
まず、軸体の外周に、未発泡の導電性発泡層形成材料を厚さ1.0mmで、押出成形により形成した。そして、この未発泡の導電性発泡層形成材料の外周に、低抵抗層形成材料を厚さ10μmで塗工し、乾燥させた。次いでこれを、チューブ状に形成された抵抗調整層内に挿入して、金型内で発泡成形した。さらに、この抵抗調整層の表面に、保護層形成材料を厚さ10μm塗布し、100℃で30分間加熱し、直径14.0mmの帯電ロールを製造した。
【0060】
<測定方法>
(導電性発泡層の体積電気抵抗値)
図2に示すように、ステンレス板50上に、上記導電性発泡層形成材料を発泡させたものからなるシート52(厚み2mm)を載置した後、上記ステンレス板50に10Vの電圧を印加し、上記シート52の体積電気抵抗値を測定した。
【0061】
(低抵抗層の体積電気抵抗値)
図3に示すように、導電性ポリエチレンテレフタレートフィルム(マイラーシート)60上に、上記低抵抗層形成材料を塗布して150℃で30分間加熱し、塗膜62(厚み50〜60μm)を形成する。そして、これをSME−8311電極64(東亜電波工業(株)製)で挟み、1Vの電圧を印加した時の電流を電流計66(KEITHLEY−6517、ケースレーインスツルメンツ(株)製)を用いて測定し、これを体積電気抵抗値に換算して求めた。なお、図において、68はアルミ箔であり、上記導電性ポリエチレンテレフタレートフィルム(マイラーシート)60とクリップ(図示せず)で固定されている。
【0062】
(帯電ロールの体積電気抵抗値)
抵抗値は、帯電ロールの両端を、荷重700gで直径30mmの金属ドラムに押圧した状態で、金属ドラムを回転数30rpmで回転させるとともに、帯電ロールを金属ドラムの連れ回りにより回転させる。そして、帯電ロールの一端に−300VのDC電圧を印加して電流値の最大値(DCmax)と最小値(DCmin)を測定し、その平均値を求める。抵抗値は、電圧/電流で計算する。また、抵抗変動桁数を耐久試験前と耐久試験後の帯電ロールの体積電気抵抗値から求めた。
【0063】
(画像評価)
各帯電ロールを、市販のカラーレーザープリンター(キヤノン(株)製、「IR4570」)に組み込み、温度15℃、湿度10%の環境下でハーフトーン画像出しを通紙2000枚(A4サイズ)行い、耐久後の画像出し画像を目視にて確認した。その結果、濃度ムラが無く良好な画像が得られたものを「◎」、濃度ムラが無かったものを「○」、濃度ムラが発生したものを「×」、画像端部にスジ(以下「端部スジ」という。)が無く良好な画像が得られたものを「◎」、端部スジが無かったものを「○」、端部スジが発生したものを「×」とした。
【0064】
表1および表2に、この結果を示す。なお、表1および表2に示す低抵抗層の配合量は、質量部で表したものである。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
表2によれば、比較例に係る帯電ロールは、濃度ムラまたは端部スジのいずれかが劣っていることがわかる。
【0068】
具体的には、比較例1〜3は、低抵抗層が無いため、導電性発泡層の不均一な発泡セル形状に起因する電気抵抗ムラの影響を受け、安定した電荷供給ができず、帯電ロールの体積電気抵抗値が上昇して、画像不具合が発生している。
【0069】
比較例4および5は、R2/R1の値が1以上であるため、導電性発泡層の電気抵抗ムラを抑制することができず、帯電ロールの電気抵抗が上昇して、画像不具合が発生している。
【0070】
比較例6は、上記式(1)を満たしているが、導電性発泡層の体積電気抵抗値が大きく上記式(2)を満たしていないため、画像不具合が発生している。比較例7は、導電性発泡層および低抵抗層の体積電気抵抗値が低く、上記式(2)および上記式(3)を満たしていないため、帯電ロールと感光ドラムとの間で異常放電が生じ、画像不具合が発生している。
【0071】
比較例8は、上記式(1)を満たしているが、導電性発泡層の体積電気抵抗値が大きく上記式(2)を満たさず、また、低抵抗層の体積電気抵抗値が低いため、画像不具合が発生している。比較例9は、低抵抗層の体積電気抵抗値が低いため、上記式(3)を満たさず、画像不具合が発生している。
【0072】
これらに対して、実施例に係る帯電ロールでは、濃度ムラや端部スジが発生せず、画像不具合を抑制できることが確認できた。
【0073】
以上、本実施形態、実施例に係る帯電ロールについて説明したが、本発明は、上記実施形態、実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態に係る帯電ロールの軸方向断面図である。
【図2】導電性発泡層の体積電気抵抗値の測定方法を示す説明図である。
【図3】低抵抗層の体積電気抵抗値の測定方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0075】
10・・・帯電ロール
12・・・軸体
14・・・導電性発泡層
16・・・抵抗調整層
18・・・低抵抗層
20・・・保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、軸体の外周に沿って形成された導電性発泡層と、前記導電性発泡層の外周に沿って形成された低抵抗層と、前記低抵抗層の外周に沿って形成されイオン導電剤を含有する抵抗調整層とを有し、
以下の式(1)、(2)および(3)を満たすことを特徴とする電子写真機器用帯電ロール。
R2/R1<1 ・・・(1)
5×10≦R1≦1×10 ・・・(2)
1×10≦R2≦1×10 ・・・(3)
但し、
R1[Ω・cm] :導電性発泡層の体積電気抵抗値
R2[Ω・cm] :低抵抗層の体積電気抵抗値
【請求項2】
前記低抵抗層の厚さは、5〜25μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項3】
前記低抵抗層は、ポリアミド樹脂と導電剤とを含むことを特徴とする請求項1または2の何れかに記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項4】
前記抵抗調整層の厚さは、300〜700μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項5】
前記イオン導電剤は、第4級アンモニウム塩を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の電子写真機器用帯電ロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−229874(P2009−229874A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75904(P2008−75904)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】