説明

電子写真用クリーニングブレード

【課題】本発明は、画像領域以外であるクリーニングブレードの感光ドラム当接部の両端部に最適な高硬度部位を形成し、クリーニングブレード両端部域の滑り性を向上させ、端部からのブレード捲れのないクリーニングブレード、および低湿環境下においても硬度が安定するまでの時間を短縮できるクリーニングブレードの製造方法および、本発明の電子写真用クリーニングブレードを搭載した電子写真装置を提供する。
【解決手段】電子写真装置の感光ドラム上に当接し、残留トナーを除去する為の、ポリウレタン樹脂で形成されたブレード及び該ブレードを保持する支持部材を有する電子写真用クリーニングブレードにおいて、前記ブレードが、ダイナミック硬さDH115が所定高度のポリウレタン樹脂部と、該ブレードの感光ドラム当接部の長手方向両端部位に高硬度部を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置において使用される、像担持体(感光ドラム)、転写ベルト、中間転写体等の上に残留するトナーを除去する為の電子写真用クリーニングブレード、その応用展開としての電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置には、感光ドラム、転写ベルト、中間転写体等の像担持体上に残留するトナーを除去する為に、種々のクリーニングブレードが配設されている。そして、これらのクリーニングブレードのブレード部は、熱可塑性または熱硬化性のポリウレタン樹脂等により製造されるが、塑性変形や耐磨耗性の観点から、主に、熱硬化性ポリウレタン樹脂より製造される。
【0003】
しかしながら、従来のように弾性部材がポリウレタン樹脂よりなるクリーニングブレードを用いた場合、ポリウレタン樹脂と感光ドラムとの摩擦係数が大きい為、感光ドラムの回転方向にクリーニングブレード先端が捲れたり、感光ドラムの駆動トルクを大きくする必要がある場合があった。また、クリーニングブレードの観光ドラムと当接している先端部が感光ドラムに巻き込まれ、感光ドラムの回転方向に引延ばされて切断されるという問題もあった。そして、これらの問題は、クリーニングブレードの弾性部材の硬度が低い場合に特に顕著となり、その結果、耐久性が不足する場合もあった。また、クリーニングブレードの弾性部材の硬度が高い場合には、耐久中に感光ドラムを傷つけてしまう場合があった。
【0004】
ポリウレタン樹脂製のブレードのかかる上記のような問題を解決するために、感光ドラムとの当接部全域に、クリーニングブレードの基体であるポリウレタン樹脂とイソシアネート化合物が反応した厚さ0.12〜1.2mmの硬化層を設けたクリーニングブレード及びその製造方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
クリーニングブレードの捲れに対して、更に細部に渡り分析したところ、クリーニングブレードの長手方向両端部より捲れ易いことがわかった。これは、感光ドラムの両端部は、記録紙の余白部分に位置するため、像は形成されず、像形成されない部分は、感光ドラム表面の残留トナー量が著しく少なくなるためである。ゆえに、局所的にその非画像領域部分のみクリーニングブレードの滑り性が悪化し、ブレード端部からの捲れが発生し易くなる。
【0006】
従来のように、感光ドラム当接部の全域を高硬度化しても捲れに対して効果があるが、製造過程においてイソシアネート化合物を含浸させた後、余分なイソシアネート化合物を除去する際に、均一に除去されない場合には、感光ドラムへの当接部の荒れたものができる危険性があるため、その対策としてイソシアネート除去の精度向上に伴う工程の複雑化、また、クリーニングブレードの感光ドラム当接部のイソシアネート化合物の全域処理に伴う材料費の増大等が生じる(例えば、特許文献2)。
【0007】
それに対して、像形成されない端部領域、いわゆる画像形成領域外の処理であれば、ある程度ブレードの当接部が荒れても問題ないため、イソシアネート化合物の含浸後の余分なイソシアネート除去工程の簡素化によって生産性も向上し、また、端部領域の数十mmのみの処理で済むため材料費も軽減できるというメリットもあり、効率的にクリーニングブレードの捲れを防止することが可能となる。
【0008】
これまで、クリーニングブレード両端部に硬化層を形成させた方法が提案されている(例えば、特許文献3)。しかしながら、特許文献3には、硬度範囲の規定がなく、画像領域部の硬度に対して両端部の非画像領域の高硬度の度合いが十分でない場合はブレードが捲れる恐れがある。また、画像領域部の硬度に対して両端部の非画像領域の硬度が高すぎると感光ドラムへの当接時に双方の硬度の境界で段差が生じ、その部分からトナーすり抜けが生じるなどのクリーニング不良による画像不良を引き起こす恐れがあるため、硬度の規定が必要となる。
【0009】
また、高硬度部位形成の工程において、ポリウレタン樹脂部にイソシアネート化合物を含浸させ、一定環境下で反応硬化させる工程を設けるが、それだけでは硬化反応が完全に終結しないため、その後硬度が安定するまでにある程度のエージング時間が必要となる。高硬度部位の形成においては、含浸されたイソシアネート化合物と雰囲気中の水分との反応によるウレア結合が主であるため、そのエージング環境が、例えば、冬場のように低湿になる場合、硬度安定までの時間が長くなり、工程の仕掛りが多くなりラインサイクルが悪化するという問題がある。この対策としては、硬度が安定する前にカートリッジに組み込むという手段が考えられるが、硬度が安定しないまま組み込むことによって、クリーニングブレードの高硬度部の感光ドラム当接部における変形量が大きくなり、十分なクリーニング性が得られないという問題が発生する。また、もう1つの解決手段としてはエージング環境の温湿度を制御する方法が考えられるが、工程追加および多額の設備投資によるコストアップにつながり、適切な手段とは言えない。
【特許文献1】特開2001−343874号公報 (第11頁、第1図)
【特許文献2】特開2004−280086号公報 (第16頁、第1図)
【特許文献3】特開2003−122222号公報 (第12頁、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、クリーニングブレードの捲れのない電子写真用クリーニングブレード、該電子写真用クリーニングブレードを提供することにある。また、その製造方法及び本発明の電子写真用クリーニングブレードを搭載した電子写真装置を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る電子写真用クリーニングブレードは、電子写真画像形成装置の感光ドラム上に当接し、残留トナーを除去する為の、主にポリウレタン樹脂で形成された弾性部及び該弾性部を保持する支持部材を有する電子写真用クリーニングブレードにおいて、稜線角115°の三角すい圧子によるダイナミック硬さDH115が0.05以上0.16以下のポリウレタン樹脂部と、該ブレードの少なくとも感光ドラム当接部の長手方向両端部位に該ポリウレタン樹脂部のダイナミック硬さの1.3倍以上30倍以下の高硬度部とを具備し、該高硬度部は少なくとも画像形成領域に該当しない部位を含み、該高硬度部が、イソシアネート化合物を含浸させ、前記イソシアネート化合物を反応硬化することにより形成され、また、反応硬化が、温度が20℃以上45℃以下、かつ単位体積当たりの水分量が10mg/cm3以上の雰囲気下で施されることを特徴とする電子写真用クリーニングブレードにより達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、クリーニングブレードの感光ドラム当接部の両端部に高硬度部位を形成することができたものであり、これにより、特にクリーニングブレードの両端部の滑り性を向上させ、端部からのブレードめくれを防止する電子写真用クリーニングブレードを提供することができる。また、高硬度部におけるダイナミック硬さが安定するまでの時間が短縮可能となるクリーニングブレードの製造方法、及び、本発明のクリーニングブレードを搭載した電子写真装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の電子写真用クリーニングブレードは、電子写真装置の感光ドラム上に当接し、残留トナーを除去する為の、ポリウレタン樹脂で形成されたブレード及び該ブレードを保持する支持部材を有する電子写真用クリーニングブレードである。そして、前記ブレードは、稜線角115°の三角すい圧子によるダイナミック硬さDH115が0.05以上0.16以下のポリウレタン樹脂部と該ブレードの感光ドラム当接部の長手方向両端部位に該ポリウレタン樹脂部のダイナミック硬さの1.3倍以上30倍以下の高硬度部とを具備し、該高硬度部は少なくとも画像形成領域に該当しない部位を含み、該高硬度部が、イソシアネート化合物を含浸させ、前記イソシアネート化合物を反応硬化することにより形成され、また、反応硬化が、温度が20℃以上45℃以下、かつ単位体積当たりの水分量が10mg/cm3以上の雰囲気下で施されることを特徴とする電子写真用クリーニングブレードによりさらに効果があがる。
【0014】
高硬度部におけるイソシアネート化合物を硬化させる反応硬化環境が20℃以上45℃以下、かつ、その雰囲気中の単位体積当たりの水分量が10mg/cm3以上であることを特徴とする電子写真用クリーニングブレードの製造方法によって電子写真用クリーニングブレードは得ることができる。
【0015】
本発明における支持部材は、特に限定されるものではなく、通常、金属や硬質プラスチック等で形成されたものを好ましく用いることができる。
【0016】
また、本発明におけるクリーニングブレードのブレード部は、通常、矩形の形状のものが好ましいが、その形状は、該ブレードの当接部が感光ドラムと当接し摺擦して、感光ドラム上に残存するトナーを拭い去ることができる限り、特に限定されるものではない。
【0017】
本発明においては、このポリウレタン樹脂部からなる弾性体、すなわちクリーニングブレードの感光ドラムとの当接部が、基体ポリウレタン樹脂部と基体ポリウレタン樹脂部に含浸させたイソシアネート化合物が雰囲気中の水分と反応してウレア結合を形成したと思われる高硬度部を有する。また、高硬度部についてはイソシアネート化合物同士での反応(カルボジイミド化、イソシアヌレート化など)や、ポリウレタンとイソシアネート化合物の反応によるアロファネート結合も同時に進行し、高硬度部位の形成に寄与しているものと考えられる。
【0018】
図1に本発明の電子写真用クリーニングブレードの実施形態の一例を示す。
【0019】
図1に示した実施形態の電子写真用クリーニングブレードは、ポリウレタン樹脂で形成されたブレード部130と該ブレード部130を保持する支持部材170を有する。ブレード180は、ブレードの長手方向100自由長方向110に矩形の断面形状を有している。
【0020】
また、自由長方向110及びブレードの厚み方向120に矩形の断面形状を有する高硬度部150が、該ブレードの端部160を含む感光ドラムとの当接部140の、ブレードの長手方向100の両端部位に形成されている。
【0021】
本発明においては、高硬度部が当接部140の長手方向両端部に形成されているため、ポリウレタン樹脂部130のゴム弾性が保持される。このため、クリーニングブレード全体としての剛性が高くなりすぎることが抑制され、感光ドラムに対して良好な追従性が実現でき、優れたクリーニング性が実現できる。また、感光ドラムとクリーニングブレードとの間の良好な密着性が実現され、感光ドラムがクリーニングブレードにより損傷されることが抑制される。
【0022】
なお、ポリウレタン樹脂部とは、イソシアネート化合物により処理されておらず、高硬度部位が形成されていない部分を意味しており、未処理部とも記載する。
【0023】
図1(b)において、Tは、高硬度部150の厚みを示す。高硬度部150は、通常、白色不透明で観察されるところから、高硬度部150の厚みTとしては白色不透明で観察される部分の厚みとしてもよい。また、高硬度部150のダイナミック硬さは、ブレード部130のポリウレタン樹脂部よりも高いところから、ポリウレタン樹脂よりもダイナミック硬さの高い部分を高硬度部150としてその厚みをTとしてもよい。なお、自由長とはブレード部が支持部材から露出している自由長方向110のブレードの長さをいい、一般に、5〜15mmとすることが好ましい。
【0024】
高硬度部150の厚みTは、薄すぎると耐久性が低下する懸念があるため、通常、0.05mm以上0.8mm以下が好ましく、0.1mm以上0.8mm未満とすると更に好ましい。高硬度部の厚みが、この様な範囲であれば、たとえブレードの感光ドラムとの当接部表面が摩耗したとしても、ブレードの表面の良好な特性は長期間維持される。更に、高硬度部が十分な厚みを有しているため、感光ドラムとの摺動によりブレードの表面が大きく変形することが抑制され、近年頻繁に用いられつつある微小なトナーや球形トナーも効果的に除去することができる。
【0025】
ブレード180の感光ドラム当接部の長手方向両端部位に設ける高硬度部150の長手方向100における幅は、特に限定されないが、少なくとも非画像領域を含んでいればよい。
【0026】
ブレード部の感光ドラムに当接する両端部に存在する高硬度部のダイナミック硬さDH115は、該ブレードの高硬度部以外のポリウレタン樹脂部のダイナミック硬さの1.3倍以上30倍以下であることが好ましく、1.3倍以上15倍以下であることがより好ましい。さらに好ましくは1.3倍以上6.0倍以下である。高硬度部のダイナミック硬さが該ポリウレタン樹脂部のダイナミック硬さの1.3倍未満の場合は、感光ドラムとの摩擦が高くなりブレードが捲れやすくなり、また、30倍より大きくなると、ブレードの両端部の高硬度部と高硬度部以外の部分との硬度差が大きくなりすぎ、高硬度部と高硬度部以外のポリウレタン樹脂部との境界において界面剥離を起こしたり、高硬度部の硬度が高すぎて感光ドラムがブレードにより損傷されやすくなる。
【0027】
ブレードの両端部に形成された高硬度部において、基体であるポリウレタン樹脂部の硬度が高すぎると形成した高硬度部の硬度が高くなり過ぎる虞があるため、該ブレードのポリウレタン樹脂部のIRHDは60〜80°程度が好ましい。60°以下だとブレードが捲れやすく、80°以上だと感光ドラムがブレードにより損傷されやすい。また、高硬度部のダイナミック硬さDH115は0.05以上0.16以下が好ましい。また、より好ましくは0.07以上が0.14以下である。上記のダイナミック硬さを有するポリウレタン樹脂部を有するブレードは、全体として柔軟でゴム弾性に富んだものとなる。これにより、感光ドラムと電子写真用クリーニングブレードとの間の良好な密着性が実現でき、感光ドラムが電子写真用クリーニングブレードにより損傷されることを抑制することができる。
【0028】
また、本発明の電子写真用クリーニングブレードにおいては、上述したように、高硬度部がブレードの当接部140の長手方向100両端部位のみに形成されている。このため、該高硬度部の形成されていないポリウレタン樹脂部におけるブレード130のゴム弾性が保持される。これにより、ブレード130全体としての剛性が高くなり過ぎることが抑制され、感光ドラムに対して良好な追従性が実現でき、優れたクリーニング性が実現できる。また、感光ドラムとブレードとの間の良好な密着性が実現され、感光ドラムがブレードにより損傷されることが抑制される。
【0029】
なお、本発明におけるブレードの厚みは、一般的に電子写真用クリーニングブレードで用いられる厚みのものが用いられ、通常、0.5〜3mm程度の厚みとすることが好ましい。
【0030】
また、高硬度部を設けたことにより、本発明の電子写真用クリーニングブレードの感光ドラムに対する当接部の摩擦は著しく軽減される。なお、ブレードの当接部における感光ドラムに対する摩擦の程度は、高硬度部の厚みによって適宜調整することができる。すなわち、高硬度部の厚みを大きくすると、摩擦係数は徐々に低下してゆく。ここで、該摩擦係数は、電子写真用クリーニングブレードの摺動特性の観点から、2.0以下が好ましく、1.5以下が更に好ましい。また、高硬度部の厚みを大きくすると、摩擦係数は低減するが、ゴム性が低下し感光ドラムをクリーニングできない場合もあるため、この場合は、該高硬度部と摩擦係数は、ブレードの設定(当接角度、侵入量)、ドラムの設定、電子写真装置の構成によって適宜調整する。
【0031】
また、高硬度部の形成すなわちポリウレタン樹脂に含浸させたイソシアネート化合物の硬化反応後の硬度安定までのエージング時間は24h以上よりも長くなると、仕掛り品が多くなりラインサイクルが悪化するため、24h以内が好ましい。ポリウレタン樹脂に含浸させたイソシアネート化合物の硬化反応はイソシアネート化合物と空気中の水分との反応によるウレア結合の形成が主反応であるため、反応硬化後のエージング時間を短くするためには反応硬化時に十分な水分量を与えて硬化反応を促進させる必要がある。そのためには反応硬化環境は20℃〜45℃で、且つ、単位体積当たりの水分量が10mg/cm3以上に制御された環境内で施すのが好ましく、より好ましいのは23℃〜40℃で、且つ単位体積当たりの水分量が15mg/cm3以上である。この場合、反応硬化環境が20℃よりも低い環境では絶対水分量が少ないため、水分量を増やすことが難しく、硬度安定までのエージング時間がより長くなり、安定しないままカートリッジに組み込んでしまうと変形量が大きく、トナーすり抜け等につながり画像不良の原因となる。
【0032】
次に、本発明のクリーニングブレードの製造方法について説明する。
【0033】
(ブレードの成型)
本発明におけるブレードの高硬度部位を形成する前の基体となるポリウレタン樹脂製のブレードは、ポリイソシアネート化合物と多官能性の活性水素化合物から製造される。
【0034】
本発明で用いることのできるポリイソシアネート化合物としては、通常のポリイソシアネートと多官能の活性水素化合物である高分子ポリオールとを反応して得られるプレポリマーやセミプレポリマーを用いることが好ましい。プレポリマーやセミプレポリマーのイソシアネート基含有量(NCO%)としては、良好な弾性特性を実現するために、5〜20質量%が好ましい。
【0035】
なお、前記イソシアネート基含有量(NCO%)とは、ポリウレタン樹脂の原料であるプレポリマー又はセミプレポリマー中に含まれるイソシアネート官能基(NCO、分子量は42として計算する)の質量%である。本発明において前記イソシアネート基含有量(NCO%)は、以下の式により計算される。
【0036】
NCO%=(100g中のイソシアネート官能基等量)×42
前記プレポリマー又はセミプレポリマー等のポリイソシアネート化合物を調製するために通常用いるポリイソシアネートの具体例としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等を挙げることができる。また、前記プレポリマー又はセミプレポリマー等を調製するための活性水素化合物である高分子ポリオールの具体例としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、カプロラクトンエステルポリオール、ポリカーボネートエステルポリオール、シリコーンポリオール等を挙げることができ、これらの重量平均分子量は通常500〜5000が好ましい。
【0037】
また、本発明に用いることのできる架橋剤の具体例としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、トリメチロールプロパン等を挙げることができる。
【0038】
なお、前記ポリイソシアネートと高分子ポリオール、ポリイソシアネート及び架橋剤を反応させる際には、ポリウレタン樹脂の形成に用いられる通常の触媒を添加する場合もある。このような触媒の具体例としては、トリエチレンジアミン等を挙げることができる。
【0039】
本発明においてはブレードのポリウレタン樹脂部のダイナミック硬度を0.05mN/μm2以上0.16mN/μm2以下とする。
【0040】
本発明におけるポリウレタン樹脂で形成されたブレードの成形方法としては、
(あ)高分子ポリオール、ポリイソシアネート、架橋剤及び触媒等を一度に混合して、金型または遠心成形円筒金型に注型して成形するワンショット法、
(い)高分子ポリオール及びポリイソシアネートを予備反応させてプレポリマーとし、その後架橋剤や触媒等を混
合して、金型または遠心成形円筒金型に注型して成形するプレポリマー法、
(う)ポリイソシアネートに高分子ポリオールを反応させたセミプレポリマーと、架橋剤に高分子ポリオールを添加した硬化剤を反応させて、金型または遠心成形円筒金型に注型して成形するセミワンショット法
等を挙げることができる。
【0041】
また、ブレードとして必要な厚みのポリウレタン樹脂シートを予め作製し、このシートからブレードの形状に切り出して支持材にそのシートを接着したものを、高硬度部位を形成する前の基体としてもよい。
【0042】
上記(あ)〜(う)によるときは、支持部材に直接ポリウレタン樹脂からなるブレードを形成して高硬度部を備えていないクリーニングブレードを作製し、その後に該ブレードに高硬度部を設けてもよい。また、以下に記載するような方法でポリウレタン樹脂で形成されたブレードに高硬度部を形成した後に支持部材を取り付けて電子写真用クリーニングブレードとしてもよい。
【0043】
また、ブレードの感光ドラムの当接部を精度よく作製する為、ポリウレタン樹脂で形成したブレードの先端部を切断して作製してもよい。
【0044】
(高硬度部の形成)
次に、上記したようにして得られたポリウレタン樹脂で形成されたブレード基体に高硬度部を形成する方法について説明する。
【0045】
下記工程により、高硬度部位を有するクリーニングブレードが製造できる。
【0046】
本発明において、前記高硬度部は、前記ポリウレタン樹脂で形成されたブレードにイソシアネート化合物を含浸させ反応硬化することにより形成することが好ましい。
【0047】
前記高硬度部の形成方法としては、例えば、下記工程を有する方法を挙げることができる。
(1)ポリウレタン樹脂で形成されたブレードの感光体ドラム当接部の長手方向両端部位にイソシアネート化合物を接触させる工程、
(2)該イソシアネート化合物を該ブレード表面に接触させた状態で、放置することによりポリウレタン樹脂内に含浸させる工程、
(3)含浸後、該ブレードの表面に残留している該イソシアネート化合物を除去する工程、及び、
(4)該ブレード中に含浸した該イソシアネート化合物を反応硬化することにより高硬度部を形成する工程。
【0048】
また、工程という位置付けではないが、高硬度部の硬度が安定するまでにある程度のエージング時間は必要となる。
【0049】
すなわち、工程(2)において、ポリウレタン樹脂で形成されたブレードの感光ドラム当接部の長手方向両端部位にイソシアネート化合物を適当量含浸させ、工程(3)において余分なイソシアネート化合物をブレードの表面から取り除き、工程(4)の反応硬化により工程(2)において含浸した該イソシアネート化合物と雰囲気中の水分との反応によるウレア結合が主となり高硬度部位が形成される。
【0050】
また、イソシアネート化合物同士での反応による多量化反応(例えば、カルボジイミド化反応、イソシアヌレート化反応など)も同時に進行し、高硬度部の形成に寄与するものと考えられる。この結果、高硬度部の硬さは十分に向上され、摩擦係数は十分に低下され、ブレードの耐久性を改良することができるものと考えられる。
【0051】
前記ブレードに含浸させるイソシアネート化合物としては、分子中に1個もしくは2のイソシアネート基を有するオクタデシルイソシアネート(ODI)等の脂肪族モノイソシアネート、芳香族モノイソシアネート等を挙げることができる。分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物として、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、m−フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等を好ましく用いることができる。
【0052】
また、前記ブレードに含浸させるイソシアネート化合物として、4,4′,4″−トリフェニルメタントリイソシアネート、2,4,4’−ビフェニルトリイソシアネート、2,4,4’−ジフェニルメタントリイソシアネート等の3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物や、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物の変性誘導体、多量体等も使用することができる。
【0053】
以上に例示したイソシアネート化合物の中で、立体障害の少ない脂肪族イソシアネート化合物や、分子量の小さいイソシアネート化合物は浸透性に優れるため、得られる高硬度部の厚みを制御し易い。一方、分子量の大きいイソシアネート化合物は浸透性に劣るものの長鎖であるため、揮発性が少なくその結果、比較的毒性が低く製造時の作業安全性に優れる。
【0054】
本発明においては、イソシアネート化合物の反応を促進するために、イソシアネート化合物に加え、触媒もポリウレタン樹脂に含浸させることができる。
【0055】
イソシアネート化合物と共に用いる触媒の例としては、第4級アンモニウム塩、カルボン酸塩等を挙げることができる。第4級アンモニウム塩としては、DABCO社製のTMR触媒等を例示することができる。カルボン酸塩としては、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム等を例示することができる。これらの触媒は非常に粘調であったり、含浸時に固体であったりするので、予め溶剤に溶解してからイソシアネート化合物に添加し、ポリウレタン樹脂に含浸することが好ましい。
【0056】
本発明において、イソシアネート化合物をポリウレタン樹脂で形成されたブレードに含浸させる際には、ブレードはそれ単体の状態でも良く、支持部材に接合された状態でも構わない。また、ポリウレタン樹脂で形成されたシートイソシアネート化合物を含浸させ反応硬化させた後、シートからブレードを切り出して支持部材に接合し、ブレードの感光ドラムとの当接部の両端部に高硬度部を有するブレードとすることもできる。イソシアネート化合物を含浸させるブレードの領域は、該ブレードと感光ドラムとが接する当接部分を有する。
【0057】
イソシアネート化合物のブレードへの含浸は、例えば、繊維質状の部材や多孔質の部材にイソシアネート化合物を含浸させブレードに塗布する方法や、スプレーにより塗布する方法などによって行うことができる。
【0058】
以上の様にして、所定時間イソシアネート化合物をブレードに含浸させる。最終的に得られるブレードの高硬度部の厚みを所望の範囲とするためには、イソシアネート化合物とポリウレタン樹脂で形成されたブレードとの接触時間は1分以上6時間以下とすることが好ましく、3分以上60分以下がより好ましい。
【0059】
また、含浸温度は、加熱手段を用いなくて済むように、室温が好ましい。その為、イソシアネート化合物のポリウレタン樹脂部に対する接触角は50°以下(25℃の温度にて)が好ましく、40°以下が更に好ましい。
【0060】
ついで、工程(3)において、ブレード表面に残存するイソシアネート化合物を、該イソシアネート化合物を溶解できる溶剤を用いて拭き取る。もし、含浸後に、過剰に残留しているイソシアネート化合物の除去が均一に行われないと、高硬度部の表面の荒れたものができ、感光ドラム上に残留したトナーがその凹凸部ですり抜けが発生しクリーニング不良を生じる恐れがあるため、余分なイソシアネートの除去を高精度に施せる工程が必要となる。
【0061】
それに対し、非画像領域である両端部のみに高硬度処理をする場合は、高硬度部の感光ドラムへの当接面が多少荒れていても非画像領域であるため、余分なイソシアネートの除去方法は簡易的にできる。
【0062】
また、余分なイソシアネート化合物の除去の際に用いうる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
【0063】
また、除去する手段としては、例えば、ポリウレタンで形成されたブレードを傷つけない程度の硬さのスポンジ等に上記溶剤を少量含ませ、該ブレード表面に付着している過剰なイソシアネート化合物を拭き取るなどの方法が挙げられる。ここで、必要以上に溶剤を用いると、ポリウレタン樹脂で形成されたブレード内に含浸されたイソシアネート化合物が抽出されてしまい、高硬度部を安定に形成できないことがある。そのために、例えば、予備の工程としてブレードを用いて表面に付着しているイソシアネート化合物の大部分を除去する工程を設けることが好ましい。この予備の除去工程により付着した過剰のイソシアネート化合物の大部分を除去してから、必要最少量の溶剤を付着させたスポンジ等で表面に付着するイソシアネート化合物の除去工程を行うことでさらに好ましい表面性を得ることができる。
【0064】
以上の工程を経た後、工程(4)において、含浸させたイソシアネート化合物は、空気中の水分との反応によるウレア結合の形成やアロファネート結合を形成することによって殆ど失われ、白色不透明な高硬度部が形成され、かつ表面が平滑なブレードを得ることができる。
【0065】
この際反応を促進する意味で加温することもできる。反応硬化温度は、通常20℃以上、45℃以下が好ましく、その時の反応時間は、反応効率とポリウレタン樹脂の熱劣化防止の観点から、5分以上250分以内とすることが好ましい。
【0066】
形成された高硬度部の感光ドラムへの当接部の十点平均粗さRzjis(JIS B0601−2001)は、5μm以下であることが好適である。
【0067】
ところで、高硬度部の厚みが大きくなると、高硬度部以外のポリウレタン樹脂部に比し、感光ドラムとの摩擦の程度は徐々に低減されるため、ポリウレタン樹脂とイソシアネート化合物との反応を制御することで高硬度部位の厚みが調整でき、その結果摩擦係数も調整することができる。
【0068】
本発明においては、高硬度部が必要最小限の厚みで形成されるため、ブレード先端のゴム弾性が保持される。このため、ブレード全体としての剛性が高くなり過ぎることが抑制され、感光ドラムに対して良好な追従性が実現でき、優れたクリーニング性が実現できる。また、感光ドラムとブレードとの間の良好な密着性が実現され、感光ドラムがブレードにより損傷されることが抑制される。
【0069】
また、以上のように、本発明により、ブレードの感光ドラム当接部の長手方向両端部位を低摩擦係数で高硬度化し、良好なクリーニング性と耐久性を維持しながら、優れた表面平滑性を実現したクリーニングブレードの製造方法を提供することができる。
【0070】
(電子写真装置)
本発明によるクリーニングブレードを組み込んだ電子写真装置の一例の概略図を図3に示す。この電子写真装置は、感光体2、帯電手段である帯電器1、露光手段であるROS(潜像書込装置)13を備えている。さらに、現像手段である四体の現像器31〜34を有する現像ロール4、転写手段である中間転写ベルト40及び二次転写器48、クリーニング手段であるクリーナ50、除電手段である前露光装置3、定着器64を有する。また、給排トレイ60、ピックアップロール61、レジロール対62、シート搬送ベルト63、記録シート排出トレイ65等の紙搬送システムを有する。
【0071】
画像読み取り手段は、原稿台ガラス10と、原稿台ガラス10に向けて光を照射する光源11と、原稿台ガラス10からの反射光を赤(R)、緑(G)及び青(B)の電気信号に変換するCCD12とを有する。CCD12から出力される前記RGBの電気信号は、IPS(イメージプロセッシングシステム)(不図示)で受けられる。そして、黒(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の画像データに変換され、変換した画像に応じた電気信号がレーザー発生装置に出力され、それに応じた強度のレーザビームが潜像書込装置から出力される。なお、図3では、原稿台ガラス10の上に原稿Gが載置されている。
【0072】
現像器31は、二成分現像剤を収容する現像容器37aと、現像容器37aの開口部に回転自在に設けられた現像スリーブ35aと、現像スリーブ35a上に担持される現像剤を規制する規制ブレード36aを有する。該規制ブレード36aは、スリーブ上に形成される磁気ブラシの穂高を規制する。さらに、現像容器37a内の現像剤を攪拌するための回転ロッドと、現像時に現像スリーブ35aに電圧を印加する電源(図示せず)とを有する。現像スリーブ35a内には、複数の磁極を有する磁石体(図示せず)が固定されている。現像器32にはYの現像剤が、現像器33にはMの現像剤が、現像器34にはCの現像剤がそれぞれ収容されており、収容される現像剤以外は現像器31と同様の構成とされている。
【0073】
現像器31〜34は、回転自在な現像ロール4に設けられている。現像ロール4は回転軸30を有し、静電潜像の色データに対応する現像器を現像時に現像領域Bへ搬送するように回転するロールであり、ロータリ式の現像手段を構成している。この現像ロール4により、現像スリーブ35a〜35dは、配置され、現像スリーブ上の磁気ブラシが感光体2に対して接触する状態で静電潜像を現像できるように配置される。
【0074】
感光体2表面の下方には、中間転写ベルト40と、ベルト駆動ロール45、テンションロール43、アイドラロール46及び47、二次転写用バックアップロール44を含む複数のベルト支持ロールとが設けられている。さらに、一次転写ロール42と、図示はしていないが、それらを支持するベルトフレームと、転写前の中間転写ベルト40に付着する残トナー等を除去するためのブレード式のベルトクリーナ49とが設けられている。
【0075】
中間転写ベルト40から離間した位置には、中間転写ベルトの非転写部に設けられるホームポジションを検知する位置センサ41が設けられている。また、中間転写ベルト40を介して二次転写用バックアップロール44に対向する位置には、中間転写されたトナー像を転写材である記録シートに転写するための二次転写器48が設けられている。
【0076】
感光体クリーナ50は、感光体2の表面に当接するクリーニングブレード52と、該クリーニングブレード52を保持し、クリーニングブレードによって除去されたトナー粒子等を収容するクリーニング容器51とを有する。
【0077】
感光体2は矢印Da方向に回転しており、その表面は帯電器1により一様に帯電された後、潜像書込位置AにおいてROS13からのレーザービームL(主波長655nm)により露光走査されて静電潜像が形成される。フルカラー画像を形成する場合は、K(黒)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の四色の画像に対応した静電潜像が順次形成され、モノクロ画像の場合はK(黒)画像に対応した静電潜像のみが形成される。
【0078】
静電潜像が形成された感光体2表面は回転移動して現像領域B、一次転写領域Dを順次通過する。現像器31〜34は、現像ロール4の回転によって現像位置へ搬送され、現像領域Bを通過する感光体2表面上の静電潜像をトナー像にする。
【0079】
フルカラー画像を形成する場合、潜像書込位置Aにおいて第一色目の静電潜像が形成され、現像領域Bにおいて一色目のトナー像が形成される。このトナー像は、一次転写領域Dを通過する際に、一次転写ロール42によって中間転写ベルト40上に静電的に一次転写される。その後同様にして、第一色目のトナー像を担持した中間転写ベルト40上に、第二色目、第三色目、第四色目のトナー像が順次重ねて一次転写され、最終的にフルカラーの多重トナー像が中間転写ベルト40上に形成される。単色の白黒画像を形成する場合には現像器31のみを使用し、単色トナー像が中間転写ベルト40上に一次転写される。
【0080】
一次転写後、感光体2表面上の残留トナーは、クリーニングブレード52により除去される。
【0081】
給紙トレイ60に収容された記録シートSは、所定のタイミングでピックアップロール61により取り出され、レジロール対62に搬送される。レジロール対62は、一次転写された多重トナー像または単色トナー像が二次転写領域Eに移動するのにタイミングを合わせて、二次転写領域Eに記録シートSを搬送する。二次転写領域Eにおいて前記二次転写器48は、中間転写ベルト40上のトナー像を記録シートSに静電的に一括して二次転写する。二次転写後の中間転写ベルト40はベルトクリーナ47によりクリーニングされ、ベルト上の残留トナーが除去される。
【0082】
トナー像が二次転写された前記記録シートSは、シート搬送ベルト63により定着器64に搬送され、定着器64により加熱定着される。トナー像が定着された記録シートSは、記録シート排出トレイ65に排出される。
【0083】
本発明では、本電子写真装置において、上記クリーニングブレード52として、感光体2との当接部の長手方向両端部位に高硬度部を具備するブレード及び該ブレードを保持する支持部材を有する本発明のクリーニングブレードが用いられ、優れた効果が達成される。また、本発明のクリーニングブレードは上記ベルトクリーナ47としても使用可能である。
【0084】
以下に実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0085】
<クリーニングブレードの成型>
あらかじめホルダーの一端側片端部にフェノール系接着剤を塗布したホルダーを準備した。クリーニングブレード用成形型を準備し、金型のブレード部形成用のキャビティ内にホルダーの一端片端部を突出した状態で配置した。
【0086】
4, 4'―ジフェニルメタンジイソシアネート296.6g、数平均分子量2000のブチレンアジペートポリエステルポリオール703.4gを80℃で3時間反応させ、NCOが7.00%のプレポリマーを得た。これに1, 4−ブタンジオール39.1g、トリメチロールプロパン21.0g、DABCO P15(酢酸カリウムのEG溶液、エアープロダクツジャパン社製)0.06g、TEDA0.18gを加えた硬化剤を混合し金型に注入し、5分間、130℃で硬化反応させ、硬化物を脱型し、当接部のエッジ精度を出すために切断を行った。切断面にイソシアネート化合物としてMTL(商品名:ミリオネートMTL;日本ポリウレタン社製)を図1の150の面の長手方向両端部においてブレード部材端部から14mmの位置まで塗布し(25℃)、ブレード部材に接触させた状態で所定時間(実施例および比較例に記載)放置した(25℃)。放置後、ブレード部材の表面上に残った余分なイソシアネートを少量の酢酸ブチルを含ませたスポンジで1度で拭き取った。その後、実施例および比較例に記載の温湿度に制御された環境内に3時間投入し、イソシアネート化合物を反応硬化させた。反応硬化後のクリーニングブレードは23℃/20RH%の低湿環境下にてエージングを施した。
【0087】
得られたクリーニングブレード1の高硬度部における感光ドラム当接部の断面を光学顕微鏡で観察したところ、高硬度部位は白濁した層として観察され、高硬度部位の自由長方向の硬化層厚さは0.05〜0.2mmであった。
【実施例】
【0088】
本実施例および比較例にて得られたクリーニングブレードについて以下のような評価を行った。
【0089】
(1)ゴムのダイナミック硬さ
島津製作所製の「島津ダイナミック超微小硬度計」(DUH−W201S、商品名)を用い、23℃の条件のもとで測定を行った。測定圧子は、115°三角すい圧子を用い、以下の計算式によりダイナミック硬さを求めた。
【0090】
ダイナミック硬さ: DH=α × P/×D
(式中、αは、圧子形状による定数、Pは、試験力(mN)を、Dは、圧子の試料への進入量(押し込み深さ)(μm)を表す。)
なお、本発明中の測定においては上記圧子のαは3.8584であり、P=1.0mN、負荷速度0.028439mN/s、保持時間5secにて測定を行った。
【0091】
なお、ダイナミック硬さは、図3の1の面の硬化層処理部および非処理部について長手各3点ずつ測定し、それぞれ平均したものとして求めた。
【0092】
(2)十点平均粗さRzjis
小坂研究所社製の表面粗さ測定器サーフコーダ(SE3500、商品名)を用い、JIS B 0601−2001に基づき、ブレードの高硬度部の感光ドラムへの当接部において十点平均粗さRzjisを測定した。
【0093】
(3)摩擦係数
新東科学社製のHEIDON表面性試験機を用い、温度23℃、湿度50%の条件のもとで、高硬度部に0.1kgの荷重を加えたステンレス製ボール圧子を接触させ、ボール圧子を50mm/分で移動させる設定にて測定した。
【0094】
(4)クリーニング性
本実施例および比較例によって得られたクリーニングブレードをレーザービームプリンターに組み込み、常温環境下で耐久試験を行った。1万枚耐久を行い、めくれずにクリーニング不良の発生のない場合を○、めくれた場合や、耐摩耗性が悪くエッジが欠けてクリーニング不良が発生した場合を×として評価を行った。
【0095】
(5)へたり試験
本実施例および比較例の条件にて作成したクリーニングブレードを反応硬化終了後、23℃/20RH%環境下に24時間放置し、その後感光ドラムに当接するエッジ部をへたり冶具にセットし、1.7mm変形させたところで保持したまま45℃環境に5日間放置し、その後取り外してから3時間常温下で放置し、キーエンス社製の超深度形状測定顕微鏡にて感光ドラムへの当接部の形状を測定し、へたり試験投入前からの変異量をへたり量として定義した。へたり量の指標としては以下の通りである。
【0096】
○:50μm以内
×:50μmより大きい
以下に本実施例および比較例について詳細に述べる。
【0097】
[実施例1]
実施例1〜5はポリウレタン樹脂部のダイナミック硬さDH115が0.05以上0.16以下であり、かつ、高硬度部位のダイナミック硬さがポリウレタン樹脂部のダイナミック硬さの1.3〜30倍であり、また、イソシアネート化合物の反応硬化における環境内の水分量が10mg/cm3以上であるとき、高硬度部のダイナミック硬さが24h以内に安定するため、へたり量も少なく、低摩擦係数のため、トナーすり抜けおよび捲れのないクリーニング性の良好なブレードであることを示す事例である。
【0098】
[比較例]
比較例1は高硬度部を有さず、ポリウレタン樹脂部のダイナミック硬さが0.08の時、摩擦係数が高くなり、ブレードの捲れが発生したクリーニング不良となってしまうことを示す事例である。
【0099】
比較例2は高硬度部を有さず、ポリウレタン樹脂部のダイナミック硬さが0.16の時、ゴム硬度が高すぎて感光ドラムへの当接がうまくいかず、さらには感光ドラム表面を削ってしまいクリーニング不良となってしまうことを示す事例である。
【0100】
比較例3は、ブレードの感光ドラム当接面全域に高硬度処理を施したものであり、イソシアネート化合物の含浸後の余分なイソシアネート化合物の除去において酢酸ブチルを少量染み込ませたスポンジで一度拭き取っただけでは除去が不均一であるため、感光ドラム当接部のRzjisが大きくなり、トナーすり抜けが発生しクリーニング不良となるため、全域処理の場合は余分なイソシアネート化合物の除去精度を上げる方法が必要であることを示す事例である。
【0101】
比較例4は、ポリウレタン樹脂部のダイナミック硬さが0.08であり、高硬度部のダイナミック硬さがポリウレタン樹脂部のダイナミック硬さの1.2倍であるとき、高硬度部の摩擦係数が大きすぎてブレードの捲れが発生しクリーニング不良となってしまうことを示す事例である。
【0102】
比較例5に使用したクリーニングブレードは樹脂コーティングによって高硬度部を形成しているが、樹脂のコーティングは以下の様に行った。
【0103】
バインダー樹脂コーティング材として、プラタミドM995(ポリアミド脂樹脂)、潤滑粒子として、セフボン−DM(フッ化黒鉛)(平均粒子径3μm)を用い、クリーニングブレード切断面の両端部に、プラタミド20重量部をメチルアルコール100重量部に予め溶解し、フッ化黒鉛4重量部を平均分散させた溶液を滴下によりコートし、自然乾燥後130℃で10分加熱乾燥を行い両端部へ被膜層を形成した。樹脂のコーティングにより両端部へ被膜層を形成したブレードであるが、ポリウレタン樹脂部のダイナミック硬さが0.08であり、高硬度部のダイナミック硬さがポリウレタン樹脂部のダイナミック硬さの31倍であるとき、ポリウレタン樹脂部と高硬度部のダイナミック硬さの差が大きすぎ、その境界で段差が生じ、トナーのすり抜けが発生しクリーニング不良となってしまうことを示す事例である。
【0104】
比較例6は、ポリウレタン樹脂部のダイナミック硬さが0.08であり、高硬度部のダイナミック硬さがポリウレタン樹脂部のダイナミック硬さの2.0倍であるが、反応硬化環境が23℃/20%であるため、水分量が4.1mg/cm3と少ないため、硬度の安定までの時間が24h以上となってしまい、へたりが悪化するためクリーニング性が悪化してしまうことを示す事例である。
【0105】
比較例7はポリウレタン樹脂部のダイナミック硬さが0.08であり、反応硬化環境が47℃/60%と温度が高すぎるために含浸したイソシアネート化合物が拡散しすぎるために高硬度部のダイナミック硬さがポリウレタン樹脂部のダイナミック硬さの1.2倍となってしまい、捲れが発生しクリーニング不良となる事例である。
【0106】
以上で得られた結果を表1に示す。

【0107】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明のクリーニングブレードを説明するための模式図である。
【図2】本発明のクリーニングブレードを組み込んだ電子写真装置の一例の概略図である。
【符号の説明】
【0109】
1 帯電器
2 感光体
3 前露光装置
4 現像ロール
10 原稿台ガラス
11 光源
12 CCD
13 潜像書込装置(ROS)
30 現像ロール回転軸
31〜34 現像器
35a〜d 現像スリーブ
36a〜d 規制ブレード
37a〜d 現像容器
40 中間転写ベルト
41 位置センサ
42 一次転写ロール
43 テンションロール
44 二次転写用バックアップロール
45 ベルト駆動ロール
46、47 アイドラロール
48 二次転写器
49 ベルトクリーナ
50 感光体クリーナ
51 クリーニング容器
52 クリーニングブレード
60 給紙トレイ
61 ピックアップロール
62 レジロール対
63 シート搬送ベルト
64a〜b 定着器
65 記録シート排出トレイ
100 クリーニングブレードの長手方向
110 クリーニングブレードの自由長方向
120 クリーニングブレードの厚み方向
130 ポリウレタン樹脂部
140 感光ドラムへの当接部
150 高硬度部
160 感光ドラムへの当接エッジ
170 支持部材
A 潜像書込位置
B 現像領域
D 一次転写領域
Da 感光体の回転方向
E 二次転写領域
G 原稿
L ROSからのレーザービーム
S 記録シート
T 高硬度部位自体の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真装置の感光ドラム上に当接し、残留トナーを除去する為の、ポリウレタン樹脂で形成されたブレード及び該ブレードを保持する支持部材を有する電子写真用クリーニングブレードにおいて、稜線角115°の三角すい圧子によるダイナミック硬さDH115が0.05以上0.16以下のポリウレタン樹脂部と、該ブレードの少なくとも感光ドラム当接部の長手方向両端部位に該ポリウレタン樹脂部のダイナミック硬さの1.3倍以上30倍以下のダイナミック硬さを有する高硬度部とを具備することを特徴とする電子写真用クリーニングブレード。
【請求項2】
前記高硬度部が、少なくとも感光ドラムの画像形成領域外の領域に当接する部位を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子写真用クリーニングブレード。
【請求項3】
前記高硬度部が、イソシアネート化合物を含浸させ反応硬化することにより形成されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真用クリーニングブレードの製造方法。
【請求項4】
前記反応硬化が、温度が20℃以上45℃以下、且つ、単位体積当たりの水分量が10mg/cm3以上の雰囲気下で施されることを特徴とする請求項1乃3至のいずれかに記載の電子写真用クリーニングブレードの製造方法。
【請求項5】
感光ドラムに当接し摺擦して、残留トナーを除去する為のクリーニングブレードを搭載する電子写真装置において、前記クリーニングブレードが請求項1乃4至のいずれかに記載のクリーニングブレードであることを特徴とする電子写真装置。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−63993(P2009−63993A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117498(P2008−117498)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】