説明

電子写真用ゴムブレードの製造方法及び電子写真用ゴムブレードの製造装置

【課題】ポリウレタンゴムブレード上に塗布された余剰なイソシアネート化合物を、充分に、かつ均一に拭き取ることにより、拭き取りムラ、硬度のばらつきのない電子写真用ゴムブレードの製造方法を提供する。
【解決手段】少なくともポリウレタンゴムブレードにイソシアネート化合物を少なくとも一部に塗布含浸させる塗布工程と、前記塗布されたイソシアネート化合物の余剰分を除去する拭き取り工程と、前記ポリウレタンと含浸させたイソシアネート化合物とを反応させて高硬度層を形成する高硬度層形成工程と、を有する電子写真用ゴムブレードの製造方法において、前記拭き取り工程が、溶剤が塗布され張力が一定に保たれた除去部材に余剰にイソシアネート化合物の塗布された該ポリウレタンゴムブレードを押し当て、該除去部材を送り出す方向とは反対方向にポリウレタンゴムブレードを移動させる工程であることを特徴とする電子写真用ゴムブレードの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機等の電子写真画像形成装置において、電子写真感光体上のトナーを除去するための電子写真用ゴムブレードの製造方法及び電子写真用ゴムブレードの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置には、像担持体(電子写真感光体)、転写ベルト、中間転写体等上に残留するトナーを除去するために、種々のポリウレタンゴムブレードが配設されている。これらのポリウレタンゴムブレードは、熱可塑性又は熱硬化性のポリウレタン樹脂等から製造されるが、塑性変形や耐磨耗性の観点から、主に、熱硬化性ポリウレタン樹脂より製造される。
【0003】
しかしながら、ポリウレタン樹脂からなる従来のポリウレタンゴムブレードを用いた場合、ポリウレタン樹脂と電子写真感光体との摩擦係数が大きいため、ポリウレタンゴムブレードが捲れたり、電子写真感光体の駆動トルクを大きくする必要がある。また、ポリウレタンゴムブレードの先端が電子写真感光体等に巻き込まれ、引延ばされて切断され、ポリウレタンゴムブレードの先端が欠ける場合がある。これらの課題は、ポリウレタンゴムブレードの硬度が低い場合に特に顕著となり、その結果、耐久性が不足する場合がある。一方、ポリウレタンゴムブレードの硬度が高い場合には、耐久中に電子写真感光体を傷つける場合がある。
【0004】
前記課題を解決するために、ポリウレタンゴムブレードの電子写真感光体との当接部に、厚さ0.12〜1.2mmの硬化層(高硬度層)を設けた電子写真用ゴムブレード及びその製造方法が提案されている(例えば、特許文献1)。硬化層は、ポリウレタンゴムブレードの電子写真感光体との当接部にイソシアネート化合物を塗布し、含浸させ、ポリウレタンゴムブレードの基体であるポリウレタン樹脂とイソシアネート化合物とを反応させることにより、設けられる。
【0005】
前記イソシアネート化合物の塗布方法としては、浸漬塗工、刷け塗りなど直接イソシアネート化合物をポリウレタンゴムブレード上に塗布する方法や、非接触のスプレー塗布等を用いることができる。しかし、前記塗布方法では、余剰量のイソシアネート化合物も塗布されるため、ポリウレタンゴムブレードの電子写真感光体との当接部の硬度ばらつきを満足できない。
【0006】
その他の塗布方法として、ジェットディスペンサーによる塗布方法もある。この方法では、前記塗布方法と比較して余剰なイソシアネート化合物の塗布量は少量になるが、余剰分のイソシアネート化合物の拭き取りがいらないまでには至らない。
【0007】
硬度のばらつきの対策として、塗布後のポリウレタンゴムブレード上の余剰なイソシアネート化合物を拭き取り、除去する方法がある。従来の拭き取り方法として、除去部材に、ポリウレタンゴムブレード上のイソシアネート化合物を押し当て、拭き取る方法がある。しかし、前記方法では、拭き取ったイソシアネート化合物が除去部材に堆積し、除去部材に堆積したイソシアネート化合物がポリウレタンゴムブレードのイソシアネート化合物非塗布部に付着する場合がある。また、ポリウレタンゴムブレード上のイソシアネート化合物が綺麗に拭き取れず、拭きムラとなり、硬度ムラにつながる場合がある。さらに、乾いた状態の除去部材にイソシアネート化合物を押し当て、拭き取り操作を行うと、ポリウレタンゴムブレードが欠ける場合がある。
【0008】
エアーブロー、ホットエアーブローにより、余剰なイソシアネート化合物を除去する方法もある(特許文献2)。しかし、前記方法では、エアーの方向により、エアーが溜り易い箇所が発生し、均一にイソシアネート化合物を除去できない場合がある。また、ブローの際にイソシアネート化合物が周囲に飛散する場合があり、更なる改良が望まれる。
【0009】
溶剤にポリウレタンゴムブレードを浸漬させ、余剰なイソシアネート化合物を除去する方法もあるが、溶剤に浸漬させる時間を長くすると、溶剤によりポリウレタンゴムブレードの物性変化が生じる場合がある。また、物性変化が生じない短時間での浸漬では、余剰なイソシアネート化合物を完全には除去できない。
【特許文献1】特開2001−343874号公報
【特許文献2】特開2004−280086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ポリウレタンゴムブレード上の余剰なイソシアネート化合物の拭き取りを行わない場合、塗布ムラによる硬度のばらつきが生じる場合がある。また、拭き取り操作を行う場合にも、拭き取り後のポリウレタンゴムブレード上の余剰なイソシアネート化合物を充分に拭き取ることができず、また、均一な除去を行うことができないため、塗布ムラと同様の状態となり、硬度のばらつきが生じる場合がある。
【0011】
本発明は、ポリウレタンゴムブレード上に塗布された余剰なイソシアネート化合物を、充分に、かつ均一に拭き取ることにより、拭き取りムラ、硬度のばらつきのない電子写真用ゴムブレードの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の電子写真用ゴムブレードの製造方法は、少なくともポリウレタンゴムブレードの電子写真感光体との当接部に、少なくともイソシアネート化合物を含む塗布液を塗布し、少なくとも一部を該ポリウレタンゴムブレード表面に含浸させる塗布工程と、前記塗布工程で塗布されたイソシアネート化合物の余剰分を除去する拭き取り工程と、前記ポリウレタンゴムブレードのポリウレタンと、該ポリウレタンゴムブレード表面に含浸したイソシアネート化合物を反応させて高硬度層を形成する高硬度層形成工程と、を有する、少なくとも電子写真感光体との当接部に前記高硬度層を有する電子写真感光体上のトナーを除去するための電子写真用ゴムブレードの製造方法において、前記拭き取り工程は、溶剤が塗布され、張力が一定に保たれた除去部材に対して、余剰にイソシアネート化合物の塗布された前記ポリウレタンゴムブレードを押し当て、前記除去部材を送り出す方向とは反対方向に前記ポリウレタンゴムブレードを移動させることにより、余剰なイソシアネート化合物を除去する工程であることを特徴とする。
【0013】
また、前記除去部材が、多孔性或いは毛細管現象を示し、シート状に成形可能な材料からなることを特徴とする。
【0014】
また、前記除去部材の材料が、発泡ウレタンであることを特徴とする。
【0015】
また、前記拭き取り工程において、前記ポリウレタンゴムブレードを移動させる速度が、前記除去部材を送り出す速度に対して0.1倍以上、20倍以下であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の電子写真用ゴムブレードの製造装置は、少なくとも電子写真感光体との当接部に、イソシアネート化合物を含浸させて反応させて形成された高硬度層を有する、電子写真感光体上のトナーを除去するための電子写真用ゴムブレードの製造装置において、少なくとも前記イソシアネート化合物をポリウレタンゴムブレードの電子写真感光体との当接部の少なくとも一部へ塗布し、含浸させる塗布機構と、前記塗布機構により塗布されたイソシアネート化合物の余剰分を溶剤が塗布された除去部材により除去する拭き取り機構とを有し、前記拭き取り機構は、余剰にイソシアネート化合物の塗布された該ポリウレタンゴムブレードを前記除去部材に押し当てるポリウレタンゴムブレード押し当て機構と、前記除去部材を一定張力に保つ張力調整機構と、前記除去部材を送り出す除去部材送り機構と、前記除去部材の移動方向とは反対方向に前記ポリウレタンゴムブレードを移動させるポリウレタンゴムブレード長手移動機構と、を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の電子写真用ゴムブレードの製造方法は、前記電子写真用ゴムブレードの製造装置を用いて、電子写真用ゴムブレードを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ポリウレタンゴムブレード上に塗布された余剰なイソシアネート化合物を、充分に、かつ均一に拭き取ることができる。これにより、拭き取りムラを抑制することができるため、硬度のばらつきのない電子写真用ゴムブレードを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の電子写真用ゴムブレードの製造方法は、少なくともポリウレタンゴムブレードの電子写真感光体との当接部に、少なくともイソシアネート化合物を含む塗布液を塗布し、少なくとも一部を該ポリウレタンゴムブレード表面に含浸させる塗布工程と、前記塗布工程で塗布されたイソシアネート化合物の余剰分を除去する拭き取り工程と、前記ポリウレタンゴムブレードのポリウレタンと、該ポリウレタンゴムブレード表面に含浸したイソシアネート化合物を反応させて高硬度層を形成する高硬度層形成工程と、を有する、少なくとも電子写真感光体との当接部に前記高硬度層を有する電子写真感光体上のトナーを除去するための電子写真用ゴムブレードの製造方法において、前記拭き取り工程は、溶剤が塗布され、張力が一定に保たれた除去部材に対して、余剰にイソシアネート化合物の塗布された前記ポリウレタンゴムブレードを押し当て、前記除去部材を送り出す方向とは反対方向に前記ポリウレタンゴムブレードを移動させることにより、余剰なイソシアネート化合物を除去する工程であることを特徴とする。
【0020】
(電子写真用ゴムブレード)
本発明の製造方法により製造される電子写真用ゴムブレードは、図1に示されるように、ポリウレタンからなるポリウレタンゴムブレードゴム部3と、前記ポリウレタンとポリウレタンゴムブレード表面に含浸したイソシアネート化合物とを反応させて形成した高硬度層2と、ポリウレタンゴムブレードゴム部3を支持する金属板4から構成される。
【0021】
イソシアネート化合物塗布前の高硬度層を有しないポリウレタンゴムブレードは、以下の方法で得ることができる。まず、ポリウレタンゴムブレードの成形金型内に金属板を配置し、成形金型のキャビティー内にポリウレタンの材料を注入、硬化することで金属板とポリウレタンの材料とを一体に成型する。その後、成形金型から離型されたポリウレタンゴムブレード成型品のポリウレタンゴムブレードゴム部の余剰部分を切断することにより、得られる。前記ポリウレタンゴムブレードゴム部の切断部分の少なくとも一部が、イソシアネート化合物を少なくとも含む塗布液を塗布する部分となる。
【0022】
前記ポリウレタンの材料としては、主にポリイソシアネート化合物、高分子量ポリオール及び二官能、三官能などの低分子量ポリオールである鎖延長剤を用いることができ、任意でポリウレタン硬化用触媒を用いることができる。
【0023】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(1,5−NDI)、p−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、カルボジイミド変性MDI、ポリメチレンフェニルポリイソシアネート(PAPI)等が挙げられる。これらの中でも、MDIを用いることが好ましい。これらは単独で、若しくは2種以上を併せて用いることができる。
【0024】
前記高分子量ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、カプロラクトンエステルポリオール、ポリカーボネートエステルポリオール、シリコーンポリオール等を挙げることができる。これらは単独で、若しくは2種以上を併せて用いることができる。また、数平均分子量が1500〜4000であることが好ましい。1500以上であれば、得られるポリウレタンの物性が良好であり、また4000以下であれば、プレポリマーの粘度が適当でハンドリングが容易であるため好ましい。
【0025】
前記鎖延長剤としては、グリコール、多価アルコール等を用いることができる。グリコールとしては、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール(DPG)、1,4−ブタンジオール(1,4―BD)、1,6−ヘキサンジオール(1,6−HD)、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール(テレフタリルアルコール)、トリエチレングリコール等が挙げられる。また、多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。これらは単独で、もしくは、2種以上併せて用いることができる。
【0026】
前記ポリウレタン硬化用触媒としては、イソシアヌレート結合を形成する三量化触媒の他に、一般に用いられるポリウレタン硬化用の触媒を使用することができる。例えば、三級アミン触媒が挙げられ、ジメチルエタノールアミンなどのアミノアルコール、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミンなどのテトラアルキルジアミン、トリエチレンジアミン、ピペラジン系、トリアジン系などが例示できる。また、通常、ポリウレタン硬化用触媒に用いられる有機金属触媒でもよく、ジブチル錫ジラウレートなどを例示することができる。
【0027】
また、必要に応じて、触媒、顔料、可塑剤、防水剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を配合することができる。
【0028】
(塗布工程)
本発明における塗布工程では、前記ポリウレタンゴムブレードの切断部分に、少なくともイソシアネート化合物を含む塗布液を塗布し、少なくとも一部を該ポリウレタンゴムブレード表面に含浸させる。
【0029】
前記イソシアネート化合物としては、分子中に1個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を用いることができる。
【0030】
分子中に1個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、オクタデシルイソシアネート(ODI)等の脂肪族モノイソシアネート、芳香族モノイソシアネート等を挙げることができる。
【0031】
分子中に2個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、m−フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0032】
また、ポリウレタンゴムブレードに塗布するイソシアネート化合物として、4,4’,4’’−トリフェニルメタントリイソシアネート、2,4,4’−ビフェニルトリイソシアネート、2,4,4’−ジフェニルメタントリイソシアネート等の3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物や、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物の変性誘導体、多量体等も使用することができる。
【0033】
以上に例示したイソシアネート化合物の中でも、立体障害の少ない脂肪族イソシアネート化合物や、分子量の小さいイソシアネート化合物はポリウレタンへの浸透性に優れるため、塗布制御がしやすい。一方、分子量の大きいイソシアネート化合物は、ポリウレタンへの浸透性に劣るものの、長鎖であるため揮発性が少なく、その結果比較的毒性が低く、製造時の作業安全性に優れる。
【0034】
前記イソシアネート化合物を少なくとも含む塗布液は、イソシアネート化合物とポリウレタンとの反応を促進するため、触媒を含んでもよい。また、イソシアネート化合物が常温で固体の場合は、該イソシアネート化合物を溶解可能な溶媒に溶解させて塗布液としてもよい。
【0035】
イソシアネート化合物と共に用いる触媒の例としては、第4級アンモニウム塩、カルボン酸塩等を挙げることができる。第4級アンモニウム塩としては、DABCO社製の「TMR触媒」(商品名)等を例示することができる。カルボン酸塩としては、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム等を例示することができる。これらの触媒は非常に粘調であったり、含浸時に固体であったりするため、予め溶剤に溶解してからイソシアネート化合物を少なくとも含む塗布液に添加し、ポリウレタンゴムブレードに塗布することが好ましい。
【0036】
他にも、必要に応じて、MEK、酢酸ブチル等を前記塗布液に混合することができる。
【0037】
イソシアネート化合物を含む塗布液のポリウレタンゴムブレードへの塗布、含浸は、前記ポリウレタンゴムブレードの切断面長手方向の両端部のみに対してであり、そうでないならば、切断面全面に対して行う。
【0038】
イソシアネート化合物を含む塗布液のポリウレタンゴムブレードへの塗布、含浸は、例えば、塗布液中にポリウレタンゴムブレードを浸漬させることにより行うことができる。また、繊維質状の部材や多孔質の部材に塗布液を含浸させてポリウレタンゴムブレードに塗布する方法や、ジェットディスペンサーにより塗布する方法なども挙げられる。この中でも、余剰なイソシアネート化合物の塗布量を少量にすることができ、また少なくとも一部のポリウレタンゴムブレード上に均一に塗布することができることから、ジェットディスペンサーにより塗布する方法が好ましい。
【0039】
(拭き取り工程)
本発明における拭き取り工程では、前記塗布工程で塗布されたイソシアネート化合物の余剰分を除去する。具体的には、溶剤が塗布され、張力が一定に保たれた除去部材に対して、余剰にイソシアネート化合物の塗布されたポリウレタンゴムブレードを押し当て、該除去部材を送り出す方向とは反対方向に該ポリウレタンゴムブレードを移動させる。これにより、余剰なイソシアネート化合物を除去する。
【0040】
この時、該除去部材はポリウレタンゴムブレードの中央から外側に向けて移動される。
【0041】
前記拭き取り工程では、溶媒が塗布された除去部材の新しい面を繰り出しながら、ポリウレタンゴムブレードを移動させ、余剰なイソシアネート化合物を拭き取るため、拭き取りムラ、硬度のばらつきを抑制することができる。
【0042】
まず、除去部材の張力を一定に保ち、イソシアネート化合物の除去に用いる除去部材面に対して溶媒を塗布する。
【0043】
前記除去部材は、多孔性或いは毛細管現象を示し、シート状に成形可能な材料からなることが好ましい。除去部材の材料としては、発泡ウレタン、PVA(ポリビニールアルコール)等を用いることができる。この中でも、発泡ウレタンを使用することが、吸水、弾性の点からより好ましい。
【0044】
前記除去部材の張力は、0.05g/mm2以上、1.3g/mm2以下の範囲にあることが好ましい。張力が0.05g/mm2未満のとき、除去部材の伸び量がばらつき、定寸での除去部材の送りが困難となる場合がある。また、張力が1.3g/mm2をこえると、除去部材が切れたり、除去部材の拭き取り面が硬くなり、イソシアネート化合物を弾いたりする場合がある。より好ましくは、0.15g/mm2以上、0.5g/mm2以下である。
【0045】
除去部材に塗布する溶剤としては、MEK(メチルエチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、酢酸ブチル等を用いることができる。
【0046】
除去部材への溶剤塗布量は、0.001mg/mm2以上、0.1mg/mm2以下であることが好ましい。0.001mg/mm2未満のとき、溶剤塗布量が少ないため溶剤が揮発し、ポリウレタンゴムブレードを押し付ける際にポリウレタンゴムブレードが欠ける場合がある。また、0.1mg/mm2をこえると、除去部材に含まれる溶剤の量が多いためイソシアネート化合物を十分に拭き取れず、拭きムラが生じたり、硬度がばらつく場合がある。より好ましくは、0.0075mg/mm2以上、0.06mg/mm2以下である。
【0047】
除去部材への溶剤の塗布は、イソシアネート化合物の除去に必要な面に対して行えばよい。しかし、溶剤の揮発を防ぐために、後述する余剰なイソシアネート化合物との接点付近に溶剤を塗布し、押し当て後、除去部材を送り出しながら溶剤を連続的に除去部材面に塗布する方法でもよい。
【0048】
次に、前記除去部材に、余剰にイソシアネート化合物の塗布されたポリウレタンゴムブレードを押し当てる。
【0049】
前記余剰にイソシアネート化合物の塗布されたポリウレタンゴムブレードを除去部材に押し当てる際の押し当て力は、25g/mm2以上、150g/mm2以下の範囲にあることが好ましい。なお、除去部材をイソシアネート化合物に押し当てる方法でもよい。この場合にも、同様の押し当て力で行うことができる。
【0050】
押し当ての際の、余剰にイソシアネート化合物の塗布されたポリウレタンゴムブレードと除去部材との接触部は、ポリウレタンゴムブレードの切断面長手方向の両端部にイソシアネート化合物を塗布した場合は、ポリウレタンゴムブレードの切断面長手方向のイソシアネート化合物を塗布された両端部以外であるゴムブレード中央部とする。すなわち、中央部から端部に向けてポリウレタンゴムブレードを移動させ、余剰なイソシアネート化合物を外側に掃きだすように除去する。これにより、ポリウレタンゴムブレード長手中央部にイソシアネート化合物が飛散することなく余剰なイソシアネート化合物を除去することができる。
【0051】
次に、該除去部材を送り出す方向とは反対方向にポリウレタンゴムブレードを移動させる。これにより、余剰なイソシアネート化合物を除去することができる。
【0052】
ポリウレタンゴムブレードを移動させる速度は、除去部材を送り出す速度に対して0.1倍以上、20倍以下であることが好ましい。0.1倍未満では、拭き取りとしては問題ないが、使用する除去部材の量が増加する。また、20倍をこえると、除去部材により除去されたイソシアネート化合物が再度ポリウレタンゴムブレードの拭き取り部分以外に付着する可能性があり、拭きムラの原因となる場合がある。
【0053】
除去部材の移動方向とポリウレタンゴムブレードの移動方向を反対方向にする理由は、除去部材上に吸い取った余剰のイソシアネート化合物を速やかに系外に搬送するためである。逆に同じ方向に移動する場合、除去部材上に吸い取られたイソシアネートは移動方向の前面にボタ落ちする可能性があるため、好ましくない。
【0054】
また、前述したように、ポリウレタンゴムブレードの切断面長手方向の両端部にのみイソシアネート化合物を塗布した場合は、ポリウレタンゴムブレードの移動方向は、除去部材との接触部が、ポリウレタンゴムブレードの切断面中央部から端部に向かう方向に、ポリウレタンゴムブレードを移動させる。
【0055】
なお、除去部材の送りを停止させて、ポリウレタンゴムブレードのみを移動させると、イソシアネート化合物の拭き残りが発生し、拭きムラ、硬度のばらつきが生じる。したがって、ポリウレタンゴムブレードが移動している間は、除去部材が送り続けられている必要がある。
【0056】
(高硬度層形成工程)
本発明における高硬度層形成工程では、前記工程により得られたポリウレタンゴムブレード又は、前記工程により得られたポリウレタンゴムブレードを加熱したものを、ポリウレタンと、含浸させたイソシアネート化合物を反応させて、高硬度層を形成する。これにより、電子写真用ゴムブレードを得ることができる。
【0057】
ポリウレタンゴムブレードを加熱する際の温度は、30℃以上、140℃以下が好ましく、その時の反応時間は反応効率とポリウレタンの熱劣化の観点から、5分以上、100分以下が好ましい。
【0058】
(電子写真用ゴムブレードの製造装置)
また、本発明の電子写真用ゴムブレードの製造装置は、少なくとも電子写真感光体との当接部に、イソシアネート化合物を含浸させて反応させて形成された高硬度層を有する、電子写真感光体上のトナーを除去するための電子写真用ゴムブレードの製造装置において、少なくとも前記イソシアネート化合物をポリウレタンゴムブレードの電子写真感光体との当接部の少なくとも一部へ塗布し、含浸させる塗布機構と、前記塗布機構により塗布されたイソシアネート化合物の余剰分を溶剤が塗布された除去部材により除去する拭き取り機構とを有し、前記拭き取り機構は、余剰にイソシアネート化合物の塗布された該ポリウレタンゴムブレードを前記除去部材に押し当てるポリウレタンゴムブレード押し当て機構と、前記除去部材を一定張力に保つ張力調整機構と、前記除去部材を送り出す除去部材送り機構と、前記除去部材の移動方向とは反対方向に前記ポリウレタンゴムブレードを移動させるポリウレタンゴムブレード長手移動機構と、を有することを特徴とする。
【0059】
本発明の製造装置における塗布機構は、ジェットディスペンサーを用い、モータ、ガイドにより構成されたポリウレタンゴムブレード長手移動機構、エンコーダなどにより構成された位置検出機構を備えたものである。吐出動作は、ポリウレタンゴムブレード長手位置検出をしながら、ジェットディスペンサーにより、間欠吐出を行い、ポリウレタンゴムブレード塗布面に塗布液を塗布する。
【0060】
本発明の製造装置における拭き取り機構の一例として、図2に示す装置の機構が挙げられる。
【0061】
図2に示す装置は、除去部材送り機構A(移動チャックA)5、除去部材送り機構B(移動チャックB)6、張力調整機構7、溶剤塗布機構8から構成される拭き手段17と、ポリウレタンゴムブレード長手移動機構18、ポリウレタンゴムブレード押し当て機構19及びポリウレタンゴムブレードZ軸移動機構(不図示)から構成されるポリウレタンゴムブレード移動手段16を有する。
【0062】
除去部材13は、ガイドロールA9、ガイドロールB10の間で、張力調整機構7により所定の張力に調整される。張力調整機構7は、ばね、シリンダ、モータトルク等を用いることができる。スペース、コスト等の観点から、低摩擦シリンダを用いることが好ましい。
【0063】
ガイドロールA9、ガイドロールB10の間の除去部材13の張り角度は、図3に示すポリウレタンゴムブレード1長手方向と拭き押し当て手段15から除去部材排出方向側のなす張り角度A11及びポリウレタンゴムブレード1長手方向と拭き押し当て手段15から除去部材投入方向側のなす張り角度B12が、共に10°以上であることが好ましい。10°未満になると、イソシアネート化合物と、拭き前除去部材が拭き手段押し当て部15以外で接触する可能性がある。
【0064】
張力調整完了後、図4に示す除去部材送り量14相当の除去部材面に所定量の溶剤を塗布する。
【0065】
溶剤の塗布は、溶剤塗布機構8により行われる。溶剤塗布機構8には、2流体スプレーノズル、1流体スプレーノズル、ディスペンサー、ロール塗布などがあるが、飛散、塗布領域を考え1流体ノズルが好ましい。
【0066】
除去部材13に溶剤が塗布された後、ポリウレタンゴムブレード長手移動機構18により、拭き手段押し当て部15の下にポリウレタンゴムブレード1を移動させる。その後、ポリウレタンゴムブレード押し当て機構19により、ポリウレタンゴムブレード移動方向(Y軸)21の方向に移動し、拭き手段押し当て部15に対し、イソシアネート化合物を所定の押し当て力で押し当てる。なお、拭き手段押し当て部15をイソシアネート化合物に押し当ててもよい。
【0067】
ポリウレタンゴムブレード長手移動機構18には、モータ+エンコーダによる制御、シリンダによる制御等を用いることができるが、多点移動が必要なため、モータ+エンコーダによる制御が好ましい。
【0068】
ポリウレタンゴムブレード押し当て機構19には、ばね、シリンダ、モータ等を用いることができるが、スペース、コスト等の関係から、低摩擦シリンダが好ましい。
【0069】
その後、除去部材13を移動チャックA5及び移動チャックB6により所定の速度で送り出し、ポリウレタンゴムブレード長手移動機構18により除去部材13を送り出す方向とは反対方向にポリウレタンゴムブレード1を移動させ、余剰分のイソシアネート化合物を除去する。
【0070】
移動チャックA5及び移動チャックB6は、それぞれ、モータ+エンコーダ制御、シリンダ制御を用いることができるが、モータ+エンコーダ制御が好ましい。また、移動チャックA5及び移動チャックB6は、除去部材13を送り出す際に同期、または、除去部材の送り出しをポリウレタンゴムブレード移動に対して早く行うことが好ましい。
【0071】
前記ポリウレタンゴムブレード長手移動機構18は、前記除去部材移動方向22に対して反対方向に移動が可能である。ポリウレタンゴムブレード移動方向20と除去部材移動方向22を同一の方向に移動させる場合、除去部材13の新しい面を繰り出す際に、余分なイソシアネート化合物の拭き取り能力が低下し、拭きムラが発生するため好ましくない。
【0072】
拭き取り工程完了後に、ポリウレタンゴムブレード押し当て機構19を待機位置へ戻す。その後、ポリウレタンゴムブレード1をポリウレタンゴムブレードZ軸移動機構(不図示)により、図4に示す1回拭き取り必要幅23分Z軸方向に移動する。これにより、イソシアネート化合物に新たな除去部材13が現れるため、再度拭き取り工程を行うことができる。なお、Z軸の移動回数が所定の回数に達し、除去部材の幅24を全て使用した場合は、未使用の除去部材面に対し、除去部材送り量14相当の除去部材面に所定量の溶剤を塗布後、除去部材13を定寸送りし、拭き前準備状態とする。
【0073】
除去部材送り量14に対するポリウレタンゴムブレードZ軸移動回数と、除去部材の幅24及び1回拭き取り必要幅23との間には、以下の式が定義される。
【0074】
(ポリウレタンゴムブレードZ軸移動回数)=(除去部材の幅24)÷(1回拭き取り必要幅23)
なお、図4では便宜上、Z軸方向の使用済みの除去部材間に未使用部分が残るように示されている。
【0075】
また、ポリウレタンゴムブレード1をZ軸方向に移動せず、除去部材13を定寸送りすることにより新たな除去部材面を現してもよい。しかし、除去部材13の使用効率を向上させるため、ポリウレタンゴムブレード1をZ軸方向に移動させ、除去部材の幅24を出来る限り使用する方法が好ましい。
【0076】
また、上記式を満たす回数分Z軸方向にポリウレタンゴムブレードを移動させると、Z軸方向の使用済みの除去部材間に未使用部分は残らないが、図4に示すように未使用部分を残して確実に余剰なイソシアネート化合物を除去できるようにしてもよい。
【0077】
ポリウレタンゴムブレードZ軸移動機構(不図示)としては、モータ+エンコーダによる制御、シリンダによる制御等を用いることができるが、多点制御のため、モータ+エンコーダ制御が好ましい。
【実施例】
【0078】
以下に、本発明に係る実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
(画像評価方法)
本発明における画像評価は、ポリウレタンゴムブレードの硬度ムラ、拭きムラがある場合には、硬度のばらつきにより、電子写真感光体との当たり方が変化し、部分的なトナーのすり抜けが発生するため、トナーのすり抜けに注目して行った。
【0080】
[実施例1]
本実施例で用いるイソシアネート化合物塗布前のポリウレタンゴムブレードは、ポリウレタンゴムブレードゴム部と、ポリウレタンゴムブレードゴム部を一端に支持する断面略L字状の金属板より構成される。前記イソシアネート化合物塗布前のポリウレタンゴムブレードは、金型(不図示)に金属板を配置した後、ポリウレタンを注型し、硬化されたポリウレタンゴムブレードゴム部の余剰部分(不図示)を切断して作製した。
【0081】
イソシアネート化合物には、「ミリオネートMTL」(商品名、日本ポリウレタン社製)を用いた。また、イソシアネート化合物以外には、使用しなかった
ポリウレタンゴムブレード切断面への前記塗布液の塗布方法としては、ジェットディスペンサーを用い、前記塗布液をポリウレタンゴムブレード切断面長手全面に塗布し、イソシアネート化合物をポリウレタンゴムブレードの切断面全面に含浸させた。
【0082】
次に、イソシアネート化合物の余剰分を除去する拭き取り工程を行った。拭き取り工程に用いた製造装置について、以下に説明する。
【0083】
本実施例の拭き取り工程では、図2に示す製造装置を用いた。除去部材13には、圧縮倍率3.5倍、幅100mm、厚み5mmの発砲ウレタンシート(商品名:「ホワイトワイパー」、ブリヂストン製)を使用した。
【0084】
ガイドロールA9、ガイドロールB10の間の除去部材13の張り角度は、図3に示すように、ポリウレタンゴムブレード1長手方向と拭き押し当て手段15から除去部材排出方向側のなす張り角度A11、ポリウレタンゴムブレード1長手方向と拭き押し当て手段15から除去部材投入方向側のなす張り角度B12を共に50°とした。張力調整機構7には、低摩擦シリンダを用いた。
【0085】
溶剤塗布機構8には、1流体スプレーノズル(スプレーインクシステムズ製)を用いた。
【0086】
ポリウレタンゴムブレード長手移動機構18としては、モータ+エンコーダによる制御を用いた。また、ポリウレタンゴムブレード押し当て機構19には、低摩擦シリンダを用いた。
【0087】
移動チャックA5、移動チャックB6の移動機構には、それぞれ、モータ+エンコーダ制御を用いて、移動チャックA5、移動チャックB6の移動時、除去部材の送り出しをポリウレタンゴムブレードの移動に対して0.1sec早く動作する制御を用いた。
【0088】
除去部材13の幅方向に移動する不図示のポリウレタンゴムブレードZ軸移動機構には、モータ+エンコーダ制御を用いた。
【0089】
上記製造装置を用いて余剰分のイソシアネート化合物を除去する工程について、以下に説明する。
【0090】
まず、除去部材13のガイドロールA9、ガイドロールB10間の張力を、0.5g/mm2に調整した。
【0091】
張力調整完了後、図4に示す除去部材送り量14の設定値を30mmとし、その30mmに相当する除去部材面に、1流体スプレーノズルにより溶剤を0.025mg/mm2塗布した。溶剤には、酢酸ブチルを用いた。
【0092】
その後、ポリウレタンゴムブレード押し当て機構19により、余剰にイソシアネート化合物の塗布された前記ポリウレタンゴムブレードを拭き手段押し当て部15に押し当てた。押し当ての際の押し当て力は、75g/mm2とした。
【0093】
ポリウレタンゴムブレード1の押し当て後、ポリウレタンゴムブレード1を図2に示すポリウレタンゴムブレード移動方向(X軸)20に100mm/secで移動させた。同時に、除去部材13を移動チャックA5、移動チャックB6によりポリウレタンゴムブレード移動方向20とは反対方向の除去部材移動方向22へ35mm/secで移動させた。これにより、余剰分のイソシアネート化合物を除去した。
【0094】
前記拭き取り操作終了後、図4に示すように、除去部材の幅24(100mm)に対し、1回拭き取り必要幅23(2.5mm)の分、ポリウレタンゴムブレード1をポリウレタンゴムブレードZ軸移動機構(不図示)により移動後、再び拭き取り操作を行った。前記操作を繰り返し、除去部材拭き回数を40回とした。
【0095】
所定の拭き回数が完了した後、除去部材13を定寸送りして、拭き取り済みの除去部材部と未拭き取りの除去部材部を入れ替えた。その後、再び拭き取り操作を行った。除去部材13の定寸送りの操作は、除去部材の入れ替えの度に行った。また、除去部材13が不足しそうな場合には補給した。このようにして、拭き取り操作を連続的に行った。余剰なイソシアネート化合物を充分に除去したことは、目視により、拭きムラを確認することにより行った。
【0096】
その後、拭き取り工程後のポリウレタンゴムブレードを、3hエージングし、ポリウレタンと、ポリウレタンゴムブレード表面に含浸されたイソシアネート化合物を反応させ、硬化させることにより高硬度層を形成し、電子写真用ゴムブレードを得た。
【0097】
本実施例では、常に新しい除去部材面を繰り出しながら、余剰のポリウレタンゴムブレード上のイソシアネート化合物を拭き取ったため、拭き取りムラ、硬度のばらつきの発生を抑制できた。また、これにより、得られた電子写真用ゴムブレードを、電子写真装置における電子写真感光体上のトナーを除去するための電子写真用ゴムブレードとして用いた場合、電子写真感光体との摺動によるポリウレタンゴムブレードの変形が抑制された。このため、近年頻繁に用いられつつある微小なトナーや球形トナーも効果的に除去することができた。また、画像評価において、良好なクリーニング画像が得られた。
【0098】
[実施例2]
本実施例では、別の実施の形態(ポリウレタンゴムブレードの両端の所望範囲のみ、イソシアネート処理する場合)を示す。本実施例では、ポリウレタンゴムブレード切断面への前記塗布液の塗布方法としてジェットディスペンサーを用いた。前記塗布液をポリウレタンゴムブレード切断面の長手方向で両端部15mm領域に塗布し、イソシアネート化合物をポリウレタンゴムブレードの切断面に含浸させた。
【0099】
イソシアネート化合物を拭き手段押し当て部15に押し当てる際、イソシアネート化合物が塗布されたポリウレタンゴムブレード1の長手方向端部から中央部側に5mmのイソシアネートが塗布されていない位置が拭き手段押し当て部15に接触するように押し当てた。その後、ゴムブレード移動手段16をゴムブレードの中央部側から端部側に移動させた。この際、図5に示すように、まず除去部材13を除去部材移動方向A25に移動させてから、0.1sec後にポリウレタンゴムブレード移動手段16を、除去部材移動方向A25とは逆方向(ポリウレタンゴムブレード移動方向A27)に移動した。除去部材13の移動がポリウレタンゴムブレードの移動よりも後に動作すると、イソシアネート化合物の余剰分が除去部材13で吸収できなくなる場合があるため、除去部材13を移動させてから、ポリウレタンゴムブレード移動手段16の移動を行った。
【0100】
ポリウレタンゴムブレード1の長手方向両端にイソシアネート化合物が塗布されているため、図5に示すように、もう一方の端部に対しても同様の拭き取り操作を行った。
【0101】
ここで、仮に、逆方向に拭き取りをした場合、余剰のイソシアネートは除去部材13に拭かれて、ポリウレタンゴムブレード1の中央部のイソシアネートが塗布されていない領域に飛散する場合がある。これにより、ポリウレタンゴムブレード1の両端部所定領域のみイソシアネート処理をすることができない。即ち、中央部にはイソシアネート飛散部分とイソシアネートが塗布されていない部分とが混在し、ポリウレタンゴムブレードの摩擦係数や硬さの異なる部位が存在することになる。この場合、電子写真用ゴムブレードとしての使用、特にクリーニングブレードとしての使用において、不具合の生じる可能性がある。
【0102】
また、拭き取り操作1回ごとに、長手方向の2箇所の端部を交互に拭き取るようにした。
【0103】
それ以外は実施例1と同様に行った。なお、ガイドロールA9、ガイドロールB10間の除去部材13の張り方は、図4に示す除去部材13とポリウレタンゴムブレード1長手方向と拭き押し当て手段15から除去部材排出方向側のなす張り角度A11、ポリウレタンゴムブレード1長手方向と拭き押し当て手段15から除去部材投入方向側のなす張り角度B12が、共に50°となるようにした。
【0104】
得られた電子写真用ゴムブレードは、拭き取りムラ、硬度のばらつきがなく、画像評価において、良好なクリーニング画像が得られた。
【0105】
[比較例1]
ポリウレタンゴムブレード押し当て機構19により、イソシアネート化合物を除去部材13に押し当てた。その後、除去部材13の送りを停止させたまま、ポリウレタンゴムブレード長手移動機構18により、ポリウレタンゴムブレード1を100mm/secで移動させ、余剰なイソシアネート化合物を除去した。それ以外は、実施例1と同様に行った。
【0106】
しかし、除去部材13に余剰にイソシアネート化合物の塗布された前記ポリウレタンゴムブレードを押し当て、ポリウレタンゴムブレード1を動かすだけでは、ポリウレタンゴムブレード上のイソシアネート化合物で除去部材13が満たされた。これにより、得られた電子写真用ゴムブレードに拭き取りムラ、硬度のばらつきが発生した。硬度のばらつきのある前記電子写真用ゴムブレードを画像評価すると、前記電子写真用ゴムブレードを電子写真感光体に当接させ、摺動させた際に、電子写真感光体との当接部のポリウレタンゴムブレード形状が変化した。また、微小なトナーや球状トナーの除去が不十分であり、縦スジ不良が発生した。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明に係る電子写真用ゴムブレードの製造方法により製造される電子写真用ゴムブレードを示す側面図である。
【図2】本発明に係る電子写真用ゴムブレードの製造装置の一例を示す模式図である。
【図3】本発明に係る電子写真用ゴムブレードの製造装置における拭き手段押し当て部の拡大図である。
【図4】本発明に係る電子写真用ゴムブレードの製造装置で図2の矢視A部の除去部材面を表す図である。
【図5】実施例2の電子写真用ゴムブレードの製造方法で用いられる電子写真用ゴムブレードの製造装置を表す図である。
【符号の説明】
【0108】
1 ポリウレタンゴムブレード
2 イソシアネート化合物(高硬度層)
3 ポリウレタンゴムブレードゴム部
4 金属板
5 移動チャックA(除去部材送り機構A)
6 移動チャックB(除去部材送り機構B)
7 張力調整機構
8 溶剤塗布機構
9 ガイドロールA
10 ガイドロールB
11 張り角度A
12 張り角度B
13 除去部材
14 除去部材送り量
15 拭き手段押し当て部
16 ポリウレタンゴムブレード移動手段
17 拭き手段
18 ポリウレタンゴムブレード長手移動機構(X軸)
19 ポリウレタンゴムブレード押し当て機構(Y軸)
20 ポリウレタンゴムブレード移動方向(X軸)
21 ポリウレタンゴムブレード移動方向(Y軸)
22 除去部材移動方向
23 1回拭きとり必要幅
24 除去部材の幅
25 除去部材移動方向A
26 除去部材移動方向B
27 ポリウレタンゴムブレード移動方向A
28 ポリウレタンゴムブレード移動方向B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリウレタンゴムブレードの電子写真感光体との当接部に、少なくともイソシアネート化合物を含む塗布液を塗布し、少なくとも一部を該ポリウレタンゴムブレード表面に含浸させる塗布工程と、
前記塗布工程で塗布されたイソシアネート化合物の余剰分を除去する拭き取り工程と、
前記ポリウレタンゴムブレードのポリウレタンと、該ポリウレタンゴムブレード表面に含浸したイソシアネート化合物を反応させて高硬度層を形成する高硬度層形成工程と、
を有する、少なくとも電子写真感光体との当接部に前記高硬度層を有する電子写真感光体上のトナーを除去するための電子写真用ゴムブレードの製造方法において、
前記拭き取り工程は、溶剤が塗布され、張力が一定に保たれた除去部材に対して、余剰にイソシアネート化合物の塗布された前記ポリウレタンゴムブレードを押し当て、
前記除去部材を送り出す方向とは反対方向に前記ポリウレタンゴムブレードを移動させることにより、余剰なイソシアネート化合物を除去する工程であることを特徴とする電子写真用ゴムブレードの製造方法。
【請求項2】
前記除去部材が、多孔性或いは毛細管現象を示し、シート状に成形可能な材料からなることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用ゴムブレードの製造方法。
【請求項3】
前記除去部材の材料が、発泡ウレタンであることを特徴とする請求項2に記載の電子写真用ゴムブレードの製造方法。
【請求項4】
前記拭き取り工程において、前記ポリウレタンゴムブレードを移動させる速度が、前記除去部材を送り出す速度に対して0.1倍以上、20倍以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の電子写真用ゴムブレードの製造方法。
【請求項5】
少なくとも電子写真感光体との当接部に、イソシアネート化合物を含浸させて反応させて形成された高硬度層を有する、電子写真感光体上のトナーを除去するための電子写真用ゴムブレードの製造装置において、
少なくとも前記イソシアネート化合物をポリウレタンゴムブレードの電子写真感光体との当接部の少なくとも一部へ塗布し、含浸させる塗布機構と、
前記塗布機構により塗布されたイソシアネート化合物の余剰分を溶剤が塗布された除去部材により除去する拭き取り機構とを有し、
前記拭き取り機構は、余剰にイソシアネート化合物の塗布された該ポリウレタンゴムブレードを前記除去部材に押し当てるポリウレタンゴムブレード押し当て機構と、
前記除去部材を一定張力に保つ張力調整機構と、
前記除去部材を送り出す除去部材送り機構と、
前記除去部材の移動方向とは反対方向に前記ポリウレタンゴムブレードを移動させるポリウレタンゴムブレード長手移動機構と、を有することを特徴とする電子写真用ゴムブレードの製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電子写真用ゴムブレードの製造装置を用いて、電子写真用ゴムブレードを製造することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電子写真用ゴムブレードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−32703(P2010−32703A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193620(P2008−193620)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】