説明

電子写真用ブラシ

【課題】押圧力の調整を容易かつ低コストで適切に行い得る電子写真用ブラシを提供する。
【解決手段】除電ブラシ20は、弾性を有するフィルム21aの表面の少なくとも一部に設けられて感光体ドラム1に接触されるブラシ毛22aを備えていると共に、感光体ドラム1に対してフィルム21aの撓みによる押圧力調整機能を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を採用する画像形成装置に用いる電子写真用ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を採用する画像形成装置では、転写後の感光体ドラムに残留したトナーをクリーニング又は除電するためにバー型ブラシ(板金貼り付けブラシ)を採用しているものがある。例えば、特許文献1に開示された除電ブラシ110は、図8に示すように、記録用紙101に転写後の感光体ドラム102に残留したトナーを除電するためのバー型ブラシとなっている。すなわち、除電ブラシ110は、バー状の基材111と、この基材111の表面に植毛された繊維材料からなる植毛部分112とによって構成されており、バー状の基材111の裏面は、クリーニング装置120の壁面121に固定(貼り付け)されている。そして、植毛部分112の先端部が被接触体である感光体ドラム102に接触している。
【特許文献1】特開2003−316202号公報(2003年11月7日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の特許文献1に開示された電子写真用ブラシとしての除電ブラシ110は、以下の問題を有している。
【0004】
すなわち、従来技術に基づくバー型ブラシの除電ブラシ110の使用によって、被接触体である感光体ドラム102に傷が付いたり、トナーの通過不足が発生したりするなどの問題が招来し易く、電子写真である画像形成品の品質保証において不良要因の一つとなっている。
【0005】
上記の問題は、除電ブラシ110がバー型ブラシの構造を有していることに起因している。すなわち、バー型ブラシからなる除電ブラシ110では、植毛部分112は基材111の表面の略全面に植毛され、かつ基材111の裏面の全面がクリーニング装置120の壁面121に固定されている。従って、除電ブラシ110が感光体ドラム102の表面をブラッシングするときに、植毛部分112は感光体ドラム102から押圧力を受けるが、その際、植毛部分112の裏面は基材111を介してクリーニング装置120の壁面121に拘束され、植毛部分112の表面側ではブラシの食込み量に対する許容幅も非常に狭いので、感光体ドラム102は多大な反発力としての押圧力を受ける。この結果、感光体ドラム102の表面が植毛部分112の先端で損傷したり、又は植毛部分112が圧縮された状態となり植毛部分112の間隙がなくなるのでトナー通過不足が発生したりする。
【0006】
また、従来の特許文献1に開示された除電ブラシ110は、板金に貼り付けられたバー型ブラシであるため、バー型ブラシの性能を制御するパラメーターは、繊維の長さ、繊維材料および繊度程度しかなく、一旦決められたら変更できないため、押圧力の調整幅が非常に狭いものである。
【0007】
上記問題の発生を防止するため、バネなどの弾力性を有する部品を導入して、ブラシの食い込み量に対する許容範囲を拡大する方法が考えられるが、ブラシの構造が複雑になるため、管理すべき項目やコストの増加、設計上の制限など新たに課題が生まれる。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、押圧力の調整を容易かつ低コストで適切に行い得る電子写真用ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電子写真用ブラシは、上記課題を解決するために、弾性を有するフィルムの表面の少なくとも一部に設けられて被接触体に接触されるブラシ体を備えていると共に、被接触体に対してフィルムの撓みによる押圧力調整機能を有していることを特徴としている。尚、本発明では、フィルムは、ブラシ体が被接触体に接触した状態で片持ち梁状又は両端支持梁状に支持されることになる。
【0010】
従来のバー型ブラシでは、押圧力を制御するパラメーターは、繊維の長さ、繊維材料および繊度程度しかなく、被接触体である例えば感光体へ多大な押圧力が作用している状態において、経年劣化すると、ブラシ毛が硬化などし、感光体へさらに大きな押圧力が作用するので、感光体に損傷を与えることになり、トナー通過不足が発生したりすることになっていた。
【0011】
この点、本発明では、基材としての弾性を有するフィルムが撓むことによって押圧力の一部が吸収されるため、被接触体へ過大な押圧力が作用するのを回避することができる。
【0012】
また、本発明では、押圧力を制御するパラメーターが増え、調整可能域が大幅に広がる。これにより、押圧力の最適化が可能となり、性能が向上する。
【0013】
また、弾力性の付与のためにバネなどの別途の部品を導入するわけではないので、ブラシの構造も簡単であり、管理すべき項目やコストの増加等も回避できる。
【0014】
この結果、押圧力の調整を容易かつ低コストで適切に行い得る電子写真用ブラシを提供することができる。
【0015】
また、本発明の電子写真用ブラシでは、上記フィルムは、湾曲形状を有しているとすることができる。尚、湾曲形状としては、例えば、L字形状、くの字形状、U字形状などがある。
【0016】
上記構成によれば、湾曲形状のフィルムは平板状のフィルムよりも屈曲性に優れているため、押圧力の調整幅をより大きくすることができ、被接触体の傷防止とトナー通過性向上に繋がる。また、設置面積も小さくなるため、小スペース化が可能となる。
【0017】
また、本発明の電子写真用ブラシでは、上記フィルムは、高分子材料又は金属材料によって形成されているとすることができる。
【0018】
上記構成によれば、高分子材料又は金属材料は多種存在し、材料の種類、厚さ、弾性力、重量、長さ、形状などを容易に変化させることができる。したがって、押圧力の調整を容易かつ多種に行うことができる。
【0019】
本発明の電子写真用ブラシでは、上記ブラシ体は、繊維材料が導電性繊維からなるブラシ毛を有していることが可能である。
【0020】
これにより、電子写真用ブラシとして例えば除電ブラシに適用する場合に、残留トナーおよび例えば感光体に電荷を効率よく付与することができる。
【0021】
尚、本発明では、フィルムおよび接着剤の両方、又はいずれか一方が導電性である方が好ましい。これにより、さらに、例えば残留トナーおよび感光体に電荷を効率よく付与することができる。
【0022】
本発明の電子写真用ブラシでは、上記ブラシ毛には、電圧が印加されるとすることが可能である。
【0023】
これにより、ブラシ毛に電圧を印加して、残留トナーおよび例えば感光体に電荷を効率よく付与することができる。
【0024】
本発明の電子写真用ブラシでは、上記ブラシ体は、上記フィルムに静電植毛されたブラシ毛を有しているとすることができる。
【0025】
すなわち、従来のバー型ブラシでは静電植毛ブラシにより電子写真用ブラシを作製することは下記の理由により非常に困難であった。
【0026】
まず、第1に、ブラシ毛の長さが3mm以内程度に限られており、かつブラシ毛の植毛密度が高く、固定された基材と被接触体との間に挟装されているので、押圧力が非常に大きくなる。第2に、ブラシ毛の長さが短いことにより食込み量の変化による押圧力の増加率が著しく大きくなる。その結果、非常に精密なブラシ毛の長さ、設置箇所の公差管理が必要である。
【0027】
これに対して、本発明では、電子写真用ブラシが、被接触体に対してフィルムの撓みによる押圧力調整機能を有するものとなった静電植毛ブラシとなっている。
【0028】
したがって、基材であるフィルムは撓むことができるので、静電植毛ブラシであっても、押圧力が非常に大きくなるということはない。また、ブラシ毛の長さが短いことにより食込み量の変化による押圧力の増加率が著しく大きくなる問題についても、食込み量の変化は小さいものとなるので、押圧力の増加率が著しく大きくなるということもない。
【0029】
これにより、電子写真用ブラシを静電植毛により作製しても問題がないので、静電植毛を用いた優れた電子写真用ブラシを提供することができる。
【0030】
本発明の電子写真用ブラシでは、パイル織りにより作製された生地からなる上記ブラシ体を貼り付けてなっているとすることが可能である。尚、パイル織りとは、地糸とは別にパイル(輪奈)用の縦糸又は横糸を使って織物の表面にパイルを織り込んだ織物をいう。また、パイル(輪奈)の先端をカットしたカットパイルからなるものを含んでいる。
【0031】
これにより、パイル織りにより作製された生地からなるブラシ体にも適用することが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の電子写真用ブラシは、以上のように、弾性を有するフィルムの表面の少なくとも一部に設けられて被接触体に接触されるブラシ体を備えていると共に、被接触体に対してフィルムの撓みによる押圧力調整機能を有しているものである。
【0033】
それゆえ、押圧力の調整を容易かつ低コストで適切に行い得る電子写真用ブラシを提供するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の実施形態について図1ないし図7に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0035】
図1は、本実施の形態の電子写真用ブラシを用いた電子写真方式を採用する画像形成装置の構造を模式的に示す平面図である。
【0036】
画像形成装置は、画像形成装置が備えるスキャナにて読み込まれたデータや、画像形成装置に接続された外部機器(例えば、パーソナルコンピュータ等の画像処理装置)からのデータを電子写真である画像として出力するものである。
【0037】
図1に示すように、画像形成部40は、感光体ドラム1と、帯電ブラシ2と、露光装置3と、現像装置10と、転写ブラシ4と、搬送ベルト5と、除電ブラシ20と、クリーニング装置30とを備えており、感光体ドラム1の周囲に、回転方向に沿って、帯電ブラシ2、露光装置3、現像装置10、転写ブラシ4及び搬送ベルト5、除電ブラシ20、及びクリーニング装置30をこの順序で配置した構成となっている。各構成部分の機能は以下のとおりである。
【0038】
感光体ドラム1は、画像形成装置における本発明の被接触体となるものであり、円柱形状を有している。帯電ブラシ2は、感光体ドラム1と物理的に接触して、感光体ドラム1の表面を一様に所定の電位まで帯電させるためのものである。帯電ブラシ2は、感光体ドラム1と互いの回転軸を平行にして隣接対向して設置されている。
【0039】
露光装置3は、帯電ブラシ2によって帯電された感光体ドラム1の表面を、例えばパーソナルコンピュータ等の画像処理装置からのデータに基づき、レーザ光等により露光して、感光体ドラム1の表面に静電潜像を形成させるためのものである。露光装置3として、例えば半導体レーザや発光ダイオードを用いることができる。
【0040】
現像装置10は、感光体ドラム1の表面に現像剤を供給し、感光体ドラム1の表面に形成された静電潜像を現像剤像として顕像化するつまり現像するためのものである。搬送ベルト5は、感光体ドラム1の表面に現像剤像が形成された後に、PPC(Plain Paper Copy)用紙等の記録媒体6を感光体ドラム1に運搬するためのものである。転写ブラシ4は、感光体ドラム1の表面の現像剤像を、記録媒体6に転写するためのものである。除電ブラシ20は、感光体ドラム1の表面を除電するためのものである。尚、除電ブラシ20については後で詳述する。
【0041】
クリーニング装置30は、クリーニングブラシ31と固体潤滑剤供給装置32とクリーニングブレード33とを備えており、感光体ドラム1の表面に残留した現像剤や紙粉等を除去するためのものである。
【0042】
上記構成の画像形成装置においては、下記のサイクルで画像形成が行われる。
【0043】
まず、感光体ドラム1の表面は、帯電ブラシ2と接触することにより、均一に帯電される。表面が帯電された感光体ドラム1は、露光装置3によって、データに基づき露光され、感光体ドラム1の表面に静電潜像が形成される。そして、現像装置10の現像剤供給ローラ11を介して現像ローラ12により感光体ドラム1の表面に現像剤が供給され、感光体ドラム1の表面の静電潜像が、現像されて顕像化される。続いて、搬送ベルト5によって記録媒体6が感光体ドラム1へ運搬され、転写ブラシ4によって、感光体ドラム1の表面の現像剤像が、記録媒体6に転写される。転写後の感光体ドラム1は、除電ブラシ20によって除電される。除電後の感光体ドラム1は、固体潤滑剤が表面に塗布されたクリーニングブラシ31によって、表面に固体潤滑剤が塗布され、残留した現像剤や紙粉等が、クリーニングブラシ31及びクリーニングブレード33によって除去される。
【0044】
次に、本実施の形態の除電ブラシ20について、図1に基づき詳しく説明する。
【0045】
図1に示すように、本実施の形態の除電ブラシ20は、略L型形状に湾曲した弾性を有するフィルム21aの先端部表面において、繊維材料を植毛してブラシ毛22aを形成しており、フィルム21aの一端は支持体であるクリーニング装置30の壁面34に支持されている。この結果、フィルム21aは片持ち梁状に支持されている。
【0046】
本実施の形態では、ブラシ毛22aを植毛する基材として弾性を有するフィルム21aを使用することによって、感光体ドラム1からブラシ毛22aへの押圧力の一部がフィルム21aによって吸収され、結果として感光体ドラム1へ付加する押圧力が低減される。
【0047】
ここで、フィルム21aに使用する材料は、目的に合わせて選択することができる。例えば、低押圧が最適とされる場合、圧調整が容易であるポリエステルなどの高分子材料を使用することができる。
【0048】
また、フィルム21aの弾性率も適宜変化させることができる。フィルム21aの弾性率は、例えば、フィルム21aの材質が同じであっても、寸法、厚みを変えることによって該フィルム21aの弾性率を変えることができる。また、フィルムの形状を変更することによっても弾性率を調整することができる。例えば、本実施の形態におけるL型形状のフィルム21aは、同じ材質、同じ寸法の板状のフィルム21aよりも弾性に優れている。このように、本実施の形態においては、フィルム21aの弾性を調整するパラメーターが多く、ブラシ毛22aの食込み量に対する誤差許容幅が従来技術と比べて大きくなっている。従って、感光体ドラム1の表面の損傷やトナー通過不足などの発生を防止することができる。
【0049】
尚、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、除電ブラシ20のフィルム21aは、L型形状に湾曲したものとなっているが、特にこれに限定するものではなく、例えば、図2に示すように、L型形状よりも湾曲の程度が小さい「くの字」形状のフィルム21bとすることが可能である。これによっても、弾性の優れた除電ブラシ20とすることができる。
【0050】
また、図3に示すように、感光体ドラム1に面する板形状のフィルム21cの表面全体にブラシ毛22cを植毛することができる。尚、この場合も、フィルム21cは、クリーニング装置30の壁面34に、フィルム21cが片持ち梁状に支持されている。
【0051】
これにより、植毛幅が広く、ブラシ毛22bと感光体ドラム1との接触面積が広く、作業効率を向上させることができる。
【0052】
また、図3におけるフィルム21cの表面全体に植毛されたブラシ毛22cに代えて、図4に示すように、フィルム21dの表面の一部にブラシ毛22dを植毛することが可能である。これにより、ブラシ毛22dの面積を低減することができる。
【0053】
さらに、上述のフィルム21a〜21dはいずれも、クリーニング装置30の壁面34に片持ち梁状に支持されているものであったが、必ずしもこれに限らず、例えば、図5に示すように、板形状のフィルム21eが両端支持梁状に支持されているとすることができる。この場合、ブラシ毛22eは、壁面34との支持体の間において、感光体ドラム1に面してフィルム21eの表面の一部に植毛される。
【0054】
このタイプの除電ブラシ20では、フィルム21eの両端が支持されているため、一定の弾性を維持しながらもより安定した押圧力を有する除電ブラシ20を提供することができる。従って、円筒形の感光体ドラム1に対して均一圧の広いニップ幅を取ることが可能となる。
【0055】
尚、本実施の形態では、電子写真用ブラシとしての除電ブラシ20についてのみについての説明を行ったが、本発明においては、必ずしもこれに限らず、電子写真用ブラシとしてのクリーニングブラシ、転写ローラ、帯電ローラ2、電荷制御ブラシ、紙粉取りブラシ、又は現像装置若しくは排紙用の除電ブラシ、ドクターブレードに適用することが可能である。したがって、電子写真用ブラシの具体的な各種の用途に応じて、フィルム21a〜21eの弾性率及び押圧力は、小さくするだけでなく大きくする場合もある。
【0056】
また、クリーニングブラシとしては、感光体ドラム1への適用のみならず、転写ベルト5にも適用することが可能である。
【0057】
このように、本実施の形態の除電ブラシ20は、基材としての弾性を有するフィルム21a〜21eの表面の少なくとも一部に植毛されて感光体ドラム1に接触されるブラシ毛22a〜22eを備えていると共に、感光体ドラム1に対してフィルム21a〜21eの撓みによる押圧力調整機能を有している。尚、本実施の形態では、フィルム21a〜21eはブラシ毛22a〜22eが感光体ドラム1に接触した状態で片持ち梁状又は両端支持梁状に支持されることになる。換言すれば、除電ブラシ20は、非支持部が被接触体及び対向物である感光体ドラム1に接触していることになる。
【0058】
ところで、従来のバー型ブラシでは、押圧力を制御するパラメーターは、繊維の長さ、繊維材料および繊度程度しかなく、被接触体である例えば感光体ドラムへ多大な押圧力が作用している状態において、経年劣化すると、ブラシ毛が硬化などし、感光体ドラムへさらに大きな押圧力が作用するので、感光体に損傷を与えることになり、トナー通過不足が発生したりすることになっていた。また、押し圧が非常に強く、食込み量に対する誤差が厳格である。
【0059】
この点、本実施の形態では、弾性を有するフィルム21a〜21eが撓むことによって押圧力の一部が吸収されるため、感光体ドラム1へ過大な押圧力が作用するのを回避することができる。
【0060】
すなわち、除電ブラシ20の感光体ドラム1への接触がソフトタッチとなり、トナーの通過性も向上する。また、感光体ドラム1への押圧力が低減するので、感光体ドラム1のトルクが低下するのを防止することができる。さらに、除電ブラシ20の感光体ドラム1への食い込み量について、設定誤差に対して許容幅を大きくすることができる。
【0061】
また、フィルム21a〜21eのフィルム厚、フィルム硬度、接着位置、又は感光体ドラム1との対向距離等により、除電ブラシ20の押圧力の設定値を大幅に拡大することができる。尚、これらの各要素は、電子写真用ブラシの適用箇所、フィルム21a〜21eの材料種に応じて適宜選択することができる。
【0062】
さらに、フィルム21a〜21eの貼り付け角度、ブラシ毛22aの感光体ドラム1への接触位置などにより押圧力に差異を設けることも可能となる。この結果、クリーニング装置20への導入部を弱い押圧力とし、トナーのブラシ通過を容易にすることができる。
【0063】
また、弾力性の付与のためにバネなどの別途の部品を導入するわけではないので、ブラシの構造も簡単であり、管理すべき項目やコストの増加等も回避できる。
【0064】
この結果、押圧力の調整を容易かつ低コストで適切に行い得る除電ブラシ20を提供することができる。
【0065】
尚、フィルム21a〜21eは、膜厚が非常に薄くても弾性を有しており、その弾性範囲内で撓みによる押圧力調整機能を有している。この結果、接触ニップの調整を行うことが可能である。すなわち、従来技術のバー型ブラシでは、被接触体との接触ニップ幅が形状の都合上制限されるので、必ずしも最適な接触ニップ幅で設定することができなかった。しかし、本実施の形態では、例えば、図5に示すフィルム21eとすることによって、フィルム21eの撓みをフィルム21eの弾性力を調整することにより感光体ドラム1の円弧に沿わすことができるので、接触ニップ幅を任意に調整することができる。このため、最適な設定値で除電ブラシ20を使用することができる。
【0066】
ここで、本実施の形態の除電ブラシ20では、ブラシ毛22cは、フィルム21cの表面の全体に植毛されているとすることができる。これにより、ブラシ毛22cと感光体ドラム1との接触面がより広くなるため、作業効率を向上させることができる。
【0067】
また、本実施の形態の除電ブラシ20では、フィルム21a〜21bは、湾曲形状を有しているとすることができる。尚、湾曲形状としては、例えば、L字形状、「くの字」形状、U字形状などがある。この湾曲形状のフィルム21a〜21bは平板状のフィルムよりも屈曲性に優れているため、押圧力の調整幅をより大きくすることができ、感光体ドラム1の傷防止とトナー通過性向上に繋がる。また、設置面積も小さくなるため、小スペース化が可能となる。
【0068】
また、本実施の形態の除電ブラシ20では、フィルム21a〜21eは、高分子材料又は金属材料によって形成されているとすることができる。すなわち、高分子材料又は金属材料は多種存在し、材料の種類、厚さ、弾性力、重量、長さ、形状などを容易に変化させることができる。したがって、押圧力の調整をその用途に応じて容易かつ多種に行うことができる。尚、高分子材料としては、ポリエステル、ナイロン、アクリル、塩化ビニル、カーボン、ゴム、その他の高分子材料を用いることができる。また、金属材料としては、鉄、銅、金、銀、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、これらの合金、その他の金属材料を用いることができる。
【0069】
また、本実施の形態の除電ブラシ20では、ブラシ毛22a〜22eは、繊維材料が導電性繊維からなっている。これにより、電子写真用ブラシとして例えば除電ブラシ20に適用する場合に、残留トナーおよび感光体ドラム1に電荷を効率よく付与することができる。
【0070】
また、フィルム21a〜21eが、絶縁性であっても、導通が可能となる。尚、本実施の形態では、ブラシ毛22a〜22eは、繊維材料が導電性繊維であるが、本発明においては、必ずしもこれに限らない。すなわち、電子写真用ブラシの用途によっては、ブラシ毛22a〜22eは絶縁性でもよい。さらに、ブラシ毛22a〜22eをフィルム21a〜21eに接着するための図示しない接着剤についても、導電性を付与することが可能である。
【0071】
また、本実施の形態の除電ブラシ20では、図1に示すように、除電ブラシ20のブラシ毛22a〜22eには、電圧23が印加される。これにより、ブラシ毛22a〜22eに電圧を印加して、残留トナーおよび感光体ドラム1に電荷を効率よく付与することができる。
【0072】
また、本実施の形態の除電ブラシ20では、フィルムに静電植毛されたブラシ毛22a〜22eを有している。
【0073】
すなわち、従来のバー型ブラシでは静電植毛ブラシにより電子写真用ブラシを作製することは下記の理由により非常に困難であった。
【0074】
まず、第1に、ブラシ毛の長さが3mm以内程度に限られており、かつブラシ毛の植毛密度が高く、固定された基材と被接触体との間に挟装されているので、押圧力が非常に大きくなる。第2に、ブラシ毛の長さが短いことにより食込み量の変化による押圧力の増加率が著しく大きくなる。その結果、非常に精密なブラシ毛の長さ、設置箇所の公差管理が必要である。
【0075】
これに対して、本実施の形態では、除電ブラシ20が、感光体ドラム1に対してフィルム21a〜21eの撓みによる押圧力調整機能を有するものとなった静電植毛ブラシとなっている。
【0076】
したがって、基材であるフィルム21a〜21eは撓むことができるので、静電植毛ブラシであっても、押圧力が非常に大きくなるということはない。また、ブラシ毛22a〜22eの長さが短いことにより食込み量の変化による押圧力の増加率が著しく大きくなる問題についても、食込み量の変化は小さいものとなるので、押圧力の増加率が著しく大きくなるということもない。
【0077】
これにより、除電ブラシ20を静電植毛により作製しても問題がないので、静電植毛を用いた優れた除電ブラシ20を提供することができる。
【0078】
また、本実施の形態の除電ブラシ20では、パイル織りにより作製された生地からなるブラシ体を貼り付けてなっているとすることが可能である。尚、パイル織りとは、地糸とは別にパイル(輪奈)用の縦糸又は横糸を使って織物の表面にパイルを織り込んだ織物をいう。また、パイル(輪奈)の先端をカットしたカットパイルからなるものを含んでいる。
【0079】
これにより、パイル織りにより作製された生地からなるブラシ体にも適用することが可能となる。
【実施例】
【0080】
本実施の形態の除電ブラシ20の性能を確認するために、以下の試験を行った。
【0081】
すなわち、図6(a)に示す従来のバー型ブラシと、図6(b)に示す本実施の形態の除電ブラシ20の機能を有する電荷制御ブラシとについて、耐久性試験を行った。尚、電荷制御ブラシとは、予めブラシをそれぞれ「+」に印加し、感光体ドラム1への転写後の+/−混在のトナーの帯電を「+」に揃えるように制御するブラシである。
【0082】
耐久性試験は、表1に示す評価仕様の下、3000枚の用紙を印刷したときのそれぞれの感光体ドラム1におけるクリーニング後の帯電量を従来例との比較において評価した。尚、表1において、距離とは、ブラシが設置されている部材と被接触体間との距離をいう。バー型ブラシの場合、パイル長−距離=食込み量の関係を有する。
【0083】
【表1】

【0084】
その結果、図7に示すように、従来のバー型ブラシを使用した場合には、3000枚の用紙を印刷した後は、トナーの詰まりが発生し、ブラシの性能が劣化したことが明らかであった。これに対し、実施例では、帯電性能の変化は小さかった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、押圧力の調整を容易かつ低コストで行い得る電子写真用ブラシに適用できる。具体的には、除電ブラシの他、電子写真用ブラシとしてのクリーニングブラシ、転写ローラ、帯電ローラ、電荷制御ブラシ、紙粉取りブラシ、又は現像装置若しくは排紙用の除電ブラシに適用することが可能である。
【0086】
また、クリーニングブラシとしては、感光体ドラムへの適用のみならず、転写ベルトのクリーニングブラシにも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明における電子写真用ブラシの実施の一形態を示すものであり、電気写真ブラシを用いた画像形成装置を示す構成図である。
【図2】上記電子写真用ブラシとしての除電ブラシにおける変形例の構成を示す断面図である。
【図3】上記電子写真用ブラシとしての除電ブラシにおける他の変形例の構成を示す断面図である。
【図4】上記電子写真用ブラシとしての除電ブラシにおけるさらに他の変形例の構成を示す断面図である。
【図5】上記電子写真用ブラシとしての除電ブラシにおけるさらに他の変形例の構成を示す断面図である。
【図6】(a)は性能試験に用いた従来のバー型ブラシを示す断面図であり、(b)は性能試験に用いた本実施例の除電ブラシを示す断面図である。
【図7】本実施例の除電ブラシの性能試験結果を従来のバー型ブラシとの比較により示すグラフである。
【図8】従来技術におけるバー型ブラシを用いた画像形成装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0088】
1 感光体ドラム
2 帯電ブラシ
3 露光装置
4 転写ブラシ
5 搬送ベルト
6 記録媒体
10 現像装置
11 現像剤供給ローラ
12 現像ローラ
20 除電ブラシ
21a フィルム
21b フィルム
21c フィルム
21d フィルム
21e フィルム
22a ブラシ毛
22b ブラシ毛
22c ブラシ毛
22d ブラシ毛
22e ブラシ毛
23 電圧
30 クリーニング装置
31 クリーニングブラシ
32 固体潤滑剤供給装置
33 クリーニングブレード
34 壁面
40 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有するフィルムの表面の少なくとも一部に設けられて被接触体に接触されるブラシ体を備えていると共に、被接触体に対してフィルムの撓みによる押圧力調整機能を有していることを特徴とする電子写真用ブラシ。
【請求項2】
上記フィルムは、湾曲形状を有していることを特徴と請求項1記載の電子写真用ブラシ。
【請求項3】
上記フィルムは、高分子材料又は金属材料によって形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電子写真用ブラシ。
【請求項4】
上記ブラシ体は、繊維材料が導電性繊維からなるブラシ毛を有していることを特徴とする請求項1,2又は3記載の電子写真用ブラシ。
【請求項5】
上記ブラシ毛には、電圧が印加されることを特徴とする請求項4記載の電子写真用ブラシ。
【請求項6】
上記ブラシ体は、上記フィルムに静電植毛されたブラシ毛を有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真用ブラシ。
【請求項7】
パイル織りにより作製された生地からなる上記ブラシ体を貼り付けてなっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真用ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−117520(P2010−117520A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290233(P2008−290233)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(390026147)東英産業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】