説明

電子写真用半導電性部材、及びこれらを用いた電子写真装置

【課題】カーボンブラック等の導電性粉末材料が均一かつ良好に分散され、強度及び耐伸び率に優れ、電気的特性、特に抵抗率の印加バイアス依存性が少なく、割れや傷付きが少なく耐久性に優れた電子写真装置用半導体性部材、及び、これを用いた電子写真装置。
【解決手段】導電性微粒子を分散させた樹脂組成物(α)と熱可塑性樹脂をブレンドし、熱可塑性樹脂マトリクス中に樹脂組成物(α)が分散された海島構造を形成してなり、体積抵抗率が10〜1010(Ω・cm)、10Vのバイアスを印加したときの体積抵抗率をρv10、500Vのバイアスを印加したときの体積抵抗率をρV500としたとき、0≦Log(ρv10)−Log(ρv500)≦1の関係を満たし、前記樹脂組成物(α)は、主鎖または副鎖に下記いずれかの連結基を有するものであることを特徴とする電子写真用半導電性部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式にて画像形成を行う画像形成装置に用いられる、転写部材、帯電部材等の、電子写真用導電性部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置には、種々の半導電性材料が用いられている。とくに転写用ベルトとして用いられる半導電性材料としては、従来から熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂が用いられてきた。画像品位の悪影響を抑制するために、転写用ベルト材の抵抗率の印加バイアス依存性が小さいことが望ましい。印加バイアス依存性を小さくするには、添加するカーボンブラックなどの導電材料を均一且つ微分散化する必要がある。こういったことから、高品質の転写用ベルトには、低粘度の溶液の状態でカーボンブラックの分散が制御できるポリアミド、ポリアミドイミドなどの熱硬化性樹脂を用いることが一般的であった。しかし、近年、地球環境へのCO2排出量の低減が以前よりも望まれようになってきており、熱硬化性樹脂は、有機溶媒を使用しなければならず、また、連続生産できない、リサイクルできないなどCO2の排出量といった環境負荷が大きい。一方、ポリフッ化ビニリデン系樹脂に代表される熱可塑性樹脂は、連続生産が可能で、製造時の環境負荷の低減が図れ、リサイクルが容易など環境負荷は熱硬化性樹脂に比べ小さいという利点があるが、カーボンブラックなど導電性材料の分散が熱硬化性樹脂に比べて容易ではなく、抵抗率のバイアス依存性が大きくなってしまうという欠点があった。
【0003】
従来から、電子写真装置においては様々の目的で用いられる半導体性の部材、例えばベルト部材、搬送用ロール部材、帯電用シート部材等の半導体性部材があり、特に近年の電子写真装置においては、現像されたトナー画像を一旦中間転写媒体上に転写し、その後紙などの転写媒体に転写する中間転写ベルト方式が用いられている。またその際、フルカラー電子写真装置においては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の現像画像を一旦中間転写媒体上に色重ねし、その後一括して紙などの転写媒体に転写する中間転写ベルト方式が用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1の特開2008−291098号公報には、ポリフッ化ビニリデン中にカーボンブラックとイオン導電剤を添加してなるベルト部材が開示されている。この技術においては、ポリフッ化ビニリデンはカーボンを分散させにくいため、抵抗値のコントロールが難しく且つ均一性も得られにくいという問題点があったので、イオン導電剤を添加することによって、所望の体積抵抗値を安定して均一に得られるようにしている。ところがイオン導電剤を用いているため、環境による抵抗変化が大きいという問題点がある。
【0005】
特許文献2の特開2006−313308号公報には、カーボンを分散したポリフッ化ビニリデンのマトリクス相と、ポリエーテルエステルアミドなどの樹脂によるドメイン相から成る海島構造の電子写真用ベルト部材が記載されている。この技術においては、ポリフッ化ビニリデンはカーボンを分散させにくいため、添加量を多くしないかぎりカーボン間での電荷移動が速やかに行われず、除電性能が不充分となるので、これを転写ベルトに用いた場合、繰り返し画像濃度が不安定になるという問題点があるため、そこで、島状に分散されたポリエーテルエステルアミドなどの樹脂を、カーボン間に入り込むように存在させることによって、電荷移動を速めて除電性能を改善することを指向するものである。ところが、ベルト材の体積抵抗値はカーボンの分散状態と添加量に支配されているため、安定性や均一性については充分に改善されてはいない。
【0006】
一般に、熱可塑性樹脂にカーボンブラックなど導電性材料を分散する際に投入する熱量とせん断エネルギを上げることで、カーボンブラックなど導電性材料を均一且つ微分散化することで達成できるが、多くの熱量とせん断エネルギを加えることで、熱可塑性樹脂の場合、高分子鎖が切断したり、結晶領域まで導電性微粒子が侵入したりするため、半導電性材料の引張弾性率やTgの低下を引き起こし、実際に画像形成装置に組み込んで使用した際に、ベルト伸び、クリープなどによる品質課題の原因となる。
逆に引張弾性率を維持することを優先させた場合、導電性の均一性が損なわれるため、転写用ベルトとして用いるとボソツキや白ポチといった画像欠陥が発生するという不具合が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、特に、カーボンブラック等の導電性粉末材料が均一かつ良好に分散され、強度及び耐伸び率に優れ、電気的特性、特に抵抗率の印加バイアス依存性が少なく、割れや傷付きが少なく耐久性に優れ、高品質画像の形成に適した電子写真装置用半導体性部材、及び、これを用いた電子写真装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般的に、熱可塑性樹脂材料は、導電性微粒子に対して親和性が充分あるとは云えず、特にフッ素系樹脂やシリコーン樹脂のような忌避性(Repellency)の高い樹脂ほどその傾向が著しいが、本発明者らは鋭意検討した結果、このような熱可塑性樹脂に導電性微粒子を良好に分散させる際、このような熱可塑性樹脂に導電性微粒子を、直接、溶融混練するのではなく、特定樹脂材料、即ち尿素残基(−NH・CO・NH−)、チオ尿素残基(−NH・CS・NH−)、チオカルバモイル残基(−NH・CS・O−)、カルバモイル残基(−NH・CO・O−)、スルホニルアミド残基(−SONH−)部位を有する樹脂材料、に導電性微粒子を分散させて得られた導電性微粒子含有樹脂組成物を、熱可塑性樹脂と混練することにより、前記本発明の目的が円滑かつ完全に達成されることを見い出し、更に検討を進めて本発明を完成した。
前記のように、熱可塑性樹脂にカーボンブラックなど導電性材料を溶融混練して分散する際には、溶融粘度を若干低めにした状態(過度の高温を避けた状態)のやや硬めの溶融樹脂材料を充分に圧延等変形させることにより、その樹脂可塑物の中に強固に保持された微粒子の会合物を、樹脂材料の変形に随伴させて、引き千切り等の二次粒子の充分な解ぐし作用を与えんとするので、甚大なせん断エネルギを加えることで、熱可塑性樹脂の高分子鎖が切断したり、結晶領域まで導電性微粒子が侵入したりして、半導電性材料の引張弾性率やTgの低下を引き起こすことになるが、本発明はこれを回避することができる。これは、前記特定樹脂材料が前記のような強い極性基部分と、熱可塑性樹脂に対して親和性のある炭化水素部位部分とを同時に有するもののうち、前記特定樹脂材料が特に、忌避性ある熱可塑性樹脂とも良好なポリマーブレンドを形成できるためであるとも想像している。但し、このような仮説により、本発明の効力実態、技術的範囲を左右すべきものではない。
【0009】
而して、上記目的は、以下の本発明により好適に解決される。
(1)「導電性微粒子を分散させた樹脂組成物(α)と熱可塑性樹脂をブレンドし、熱可塑性樹脂マトリクス中に樹脂組成物(α)が分散された海島構造を形成してなり、体積抵抗率が10〜1010(Ω・cm)、10Vのバイアスを印加したときの体積抵抗率をρv10、500Vのバイアスを印加したときの体積抵抗率をρV500としたとき、
0≦Log(ρv10)−Log(ρv500)≦1の関係を満たし、前記樹脂組成物(α)は、主鎖または副鎖に下記いずれかの連結基を有するものであることを特徴とする電子写真用半導電性部材。
【0010】
【化1】

(2)「前記熱可塑性樹脂がポリフッ化ビニリデン系樹脂であることを特徴とする前記(1)項に記載の電子写真用半導電性部材。」;
(3)「前記導電性微粒子がカーボンブラックであることを特徴とする前記(1)項又は(2)項に記載の電子写真用半導電性部材。」;
(4)「前記(1)項乃至(3)項のいずれかに記載の電子写真用半導電性部材を備えたことを特徴とする電子写真装置。」;
(5)「前記電子写真用半導電性部材が、像担持体に接触して設けられた転写用ベルトであることを特徴とする、前記(4)項に記載の電子写真装置。」;
(6)「前記電子写真用半導電性部材が、像担持体と転写用ベルトの接触部において、転写用ベルトの裏面に押圧して設けられた転写用シート部材であることを特徴とする、前記(4)項に記載の電子写真装置。」;
(7)「前記電子写真用半導電性部材が、像担持体に押圧して設けられた帯電用シート部材であることを特徴とする、前記(4)項に記載の電子写真装置。」。
【発明の効果】
【0011】
以下の詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明によれば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂などの熱可塑性樹脂の優れた物理的特性(耐薬品性、耐摩耗性、圧電性)などを維持しつつ、電気特性にも優れた電子写真用半導電性部材を得ることができる。
すなわち引張弾性率とカーボンブラックの分散均一性とを同時に高めることができる。とくに画像形成装置の転写用ベルト部材として用いた場合には、ベルト伸び変形や破損することなく、耐久に渡って安定した転写性能を維持できるので、ボソツキや白ポチの無い高品位画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の電子写真用半導性部材を中間転写ベルトとして用いた画像形成装置の1例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[画像形成装置]
まず本実施の形態が適用される電子写真用半導電性部材を使用する画像形成装置の一例について説明する。
図1は、本実施の形態が適用されるカラー画像形成装置の構成を示す概略図である。
各プロセスカートリッジユニット(1)は、感光体ドラム(2)、帯電ローラ(3)、現像手段(4)、およびクリーニング手段(5)を一体に結合した構成になっている。各プロセスカートリッジユニット(1)は各々のストッパーを解除することにより交換できる構成にもなっている。
【0014】
感光体ドラム(2)は、矢印方向に回転している。帯電ローラ(3)は、感光体ドラム(2)の表面に圧接されており、感光体ドラム(2)の回転により従動回転している。
帯電ローラ(3)には図示しない高圧電源によりバイアス電圧が印加され、感光体ドラム(2)の表面が所望の表面電位となるように帯電している。
露光手段(6)は感光体ドラム(2)に対して画像情報を露光し、表面電位を部分的に変化させることによって静電潜像を形成する。この露光手段(6)にはレーザーダイオードを用いたレーザービームスキャナやLEDなどが用いられる。
【0015】
現像手段(4)は一成分接触現像であり、図示しない高圧電源から所定の現像バイアスが供給される。現像手段(4)は予め摩擦帯電されたトナーを、感光体ドラム(2)上の静電潜像に従って付着させることによって、トナー像を形成する。
感光体クリーニング手段(5)は感光体ドラム(2)表面の転写残トナーのクリーニングを行なう。
各プロセスカートリッジユニット(1)は中間転写ベルト(7)の移動方向に並列に4個配設され、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの順で可視像を形成する。
一次転写ローラ(8)には一次転写バイアスが印加され、感光体ドラム(2)表面のトナー像は中間転写ベルト(7)表面に転写される。中間転写ベルト(7)は、図示しない駆動モータによって図中の矢印方向に回転駆動されるようになっており、各色の可視像が表面に順次重ね転写されることでフルカラー画像を形成する。
【0016】
形成されたフルカラー画像は、二次転写ローラ(9)に所定の電圧を印加することにより転写材である用紙(10)に転写され、図示しない定着装置にて定着され出力される。二次転写ローラ(9)で転写できず中間転写ベルト(7)上に残留したトナーは転写ベルトクリーニング手段(11)に回収される。
【0017】
図1のカラー画像形成装置における、中間転写ベルト(7)の動作について詳細に説明する。中間転写ベルト(7)は、複数の張架ローラ(21)、(22)、(23)によって張架されながら、図中矢印の方向(反時計回り方向)に無端移動される。複数の張架ローラ(21)、(22)、(23)とは、具体的には、従動ローラ、駆動ローラ及びテンションローラのことである。また、一次転写ローラ(8)は、金属製の芯金にスポンジ等の弾性体が被覆されたローラであり、感光体ドラム(2)に向けて押圧されて、中間転写ベルト(7)を挟み込んでいる。そして、感光体ドラム(2)と中間転写ベルト(7)とにより、ベルト移動方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック用の一次転写ニップが順に形成されている。
【0018】
一次転写ローラ(8)の芯金には、図示しない転写バイアス電源によって定電流制御される一次転写バイアス電圧が印加されている。これにより、一次転写ローラ(8)を介して中間転写ベルト(7)の裏面に転写電荷が付与され、各一次転写ニップにおいて中間転写ベルト(7)と感光体ドラム(2)との間に転写電界が形成される。なお、本カラー画像形成装置では、中間転写ベルト(7)の裏面から転写電荷を付与する手段として一次転写ローラ(8)を用いているが、ローラ形態に限らず、フィルムや板バネの形態であってもかまわない。また、転写チャージャなどを用いてもよい。
各色の感光体ドラム(2)上に形成されたイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのトナー像は、各色の一次転写ニップで中間転写ベルト(7)上に重ね合わせて転写される。これにより、中間転写ベルト(7)上には4色重ね合わせたトナー像が形成される。
【0019】
中間転写ベルト(7)における二次転写ニップ部裏側ローラに対する掛け回し箇所には、二次転写ローラ(9)がベルト表面側から当接しており、これによって二次転写ニップ部が形成されている。この二次転写ローラ(9)には、図示しない電源や配線からなる電圧印加手段によって二次転写バイアスが印加されている。これにより、二次転写ローラ(9)と接地された二次転写ニップ部裏側ローラ(24)との間に二次転写電界が形成されている。中間転写ベルト(7)上に形成された4色重ね合わせトナー像は、ベルトの無端移動に伴って二次転写ニップ部に進入する。感光体ドラム(2)上に形成されたトナー像を中間転写ベルト(7)に転写させる場合、感光体ドラム(2)と中間転写ベルト(7)は、圧接していることが好ましい。このときの圧接力は、10〜60N/mの範囲にあることが好ましい。
【0020】
[電子写真用半導電性部材]
次に、本実施の形態において、画像形成装置に使用する電子写真用半導電性部材について、中間転写ベルト(7)を例に挙げて説明する。
本実施の形態において、電子写真用半導電性部材に用いる熱可塑性樹脂材料としては、耐薬品性、耐汚染性、成形加工性等に優れているという観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどが用いられる。さらに中間転写ベルトに要求される、耐熱性、耐摩耗性、非粘着性を加味すると、フッ化ビニリデン単独重合体(PVDF)に代表されるポリフッ化ビニリデン系樹脂が好適である。
【0021】
電子写真用半導電性部材の抵抗調整には、ケッチェンブラック,アセチレンブラック等の導電性カーボンブラックを、所定の樹脂に分散することにより導電性樹脂組成物として用いる。他に、SAF,ISAF,HAF,FEF,GPF,SRF,FT,MT等のゴム用カーボン、酸化処理等を施したカラ−(インク)用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト、アンチモンドープの酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属および金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー、カーボンウイスカー、黒鉛ウイスカー、炭化チタンウイスカー、導電性チタン酸カリウムウイスカー、導電性チタン酸バリウムウイスカー、導電性酸化チタンウイスカー、導電性酸化亜鉛ウイスカー等の導電性ウイスカー等を、本発明の目的達成を損なわない範囲(50%未満)で、前記導電性カーボンブラックに併用してもよい。そして前記の樹脂には、カーボンブラックとの親和性の観点から、ポリクレア、ポリウレタン、ポリチオクレア、ポリチオウレタン、ポリスルフォンアミドが好ましい。
【0022】
導電性樹脂組成物と熱可塑性樹脂材料をブレンドすることによって、熱可塑性樹脂マトリクス中に導電性樹脂組成物が非連続に存在する海島構造を形成する。このときの導電性樹脂組成物と熱可塑性樹脂材料とのブレンド比率によって、電子写真用半導電性部材の抵抗率を制御することが可能である。導電性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜45重量部の比率で配合することが望ましい。
【0023】
抵抗率に関しては、体積抵抗率及び表面抵抗率の値を如何に設定するかが重要である。とくに中間転写ベルトとして用いる場合には、体積抵抗率が10〜1010(Ω・cm)、より好ましくは、10〜10(Ω・cm)範囲にあり、表面抵抗率が10〜1010(Ω/□)の範囲にあることが好ましい。また、体積抵抗率≦表面抵抗率の関係にあることが好ましい。
体積抵抗率及び表面抵抗率が下限値以下になると、トナーとの静電的な付着力が増大し、二次転写効率を下げることになる。また、上限値を超えると、印加した転写バイアスによりベルトに誘起された電荷が除電されず、画像メモリなど画像品質に影響を与える。さらに体積抵抗率>表面抵抗率の関係になると、画像エッジが滲んだようになりシャープな画質が得られない。
【0024】
一般に導電材料を熱可塑性樹脂中に添加し分散させることによって得られた半導電性部材には、印加するバイアスの大きさに従って抵抗率が変化するという不具合点がある。とくに中間転写ベルトとして用いる場合には、ベルト材の抵抗率の印加バイアス依存性が大きいと細線のチリ、ベタ画像部のボソツキといった画像品位に悪影響を及ぼす。この抵抗率変化を抑えるには、導電材料を熱可塑性樹脂中に均一分散させることが有効とされている。
【0025】
そこで、半導電性に10Vもしくは500Vのバイアスを印加したときの体積抵抗率をρv10、ρV500としたときの、それらの関係が、 0≦Log(ρv10)−Log(ρv500)≦1 の範囲に入るように半導電部材の電気特性を調節することが好ましい。
【0026】
電気特性は例えば樹脂組成物を、熱可塑性樹脂に対して5〜45重量%とすることで調節できる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りこれらの実施例を適宜改変したものも本発明の範囲内である。
【0028】
[測定方法]
以下に、各評価項目の測定方法および測定条件を記す。
[(1)体積抵抗率]
JIS:K6911‐2006「熱硬化性プラスチック一般試験法」に基づいて、リング電極法による体積抵抗率を測定した。体積抵抗率ρvは、体積抵抗率の測定装置である三菱化学社製、商品名称ハイレスタUPを用い、その測定条件としてはリング状プローブ(三菱化学社製、商品名称URSプローブ;内側電極の直径5.9mm、外側電極の内径11.0mm、外側電極の外径17.8mm)と測定ステージ(三菱化学社製、商品名称レジテーブルFL)との間に試料を挟み、約30Nの荷重で押さえつつ、プローブの内側電極と測定ステージとの間に100Vの電圧を10秒間印加して求めた。
プローブの内側の電極と測定ステージの表面に、各々の電極サイズと同じサイズの導電性ゴム(コクゴ社製、商品名称REP−2、厚み1mm、体積抵抗率0.87Ωcm)を導電性粘着シート(応研商事社製、商品名称T−9181、厚み0.13mm)で貼り付けてある。これらの値を測定すべき試料のA4サイズ当たり任意に選んだ21点を測定し、その平均値を求めた。
【0029】
[(2)電圧依存性]
電圧依存性の評価は10V、500V電圧を変えたときの抵抗率の変動を見た。10V印加時と500V印加時の抵抗率を、それぞれρv10、ρv500としたときの
Log(ρv10)−Log(ρv500)
の値を算出した。
[(3)引張弾性率]
引張弾性率(ヤング率)は、JIS:K−7161「プラスチック〜引張特性の試験方法」に基づいて測定した。
【0030】
[(4)耐久寿命評価]
リコー社製のレーザープリンタ Ipsio SP C310 の中間転写ベルトとして用いた。このプリンタを、5%印字率で連続印刷させた。ただし24枚毎に印刷動作の一時休止を行った。転写材にはリコー社製T6200を用いた。90Kの印刷枚数に達するまでに中間転写ベルトにクラックやワレの生じたものは×判定、90Kの印刷枚数を越えてもクラックやワレの発生しなかったものは○判定とした。
【0031】
[(5)画像評価]
上記レーザープリンタを各種環境(10℃/15%Rh、23℃/65%Rh、30℃/80%Rh)にて、グリーン、レッド、ブルーのベタ画像の両面印刷を行った。転写材には再生紙からなるクラシックホワイトを用いた。得られた画像にボソツキや白ポチが目立ったものを×、やや目立ったものを△、まったく目立たなかったものを○とした。
【実施例1】
【0032】
ポリウレタン樹脂(日本ミラクトラン製P995)10重量部に対し、カーボンブラック(電気化学工業製デンカブラック)10重量部をそれぞれ真空中80℃で12時間予備乾燥した後に所定の割合でドライブレンド物Aを作製した。
さらにこのドライブレンド物Aの10重量部に対して、30重量部のフッ化ビニリデン単独重合体(クレハ製KF#1000)をブレンドした。
次に、このドライブレンド物を微量型高せん断成形加工機に投入し、ギャップならびに内部帰還型スクリュー内径を、それぞれ1〜2ミリ、2.5φに設定し、240℃に加熱溶融して混練(スクリュー回転数:100rpmと1000rpm、混練時間:2分)した後、T−ダイから押出した。続いて熱プレスを行い、厚さ200μmの均一なフィルムを得た。
【実施例2】
【0033】
特開2002−69149号公報に記載の方法にて得られたポリウレア樹脂10重量部に対し、カーボンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル製ケッチェンブラックEC−600JD)10重量部をそれぞれ真空中80℃で12時間予備乾燥した後に所定の割合でドライブレンド物Aを作製した。
さらにこのドライブレンド物Aの10重量部に対して、200重量部のフッ化ビニリデン単独重合体(クレハ製KF#1000)をブレンドしたものを、微量型高せん断成形加工機に投入し、ギャップならびに内部帰還型スクリュー内径を、それぞれ1〜2ミリ、2.5φに設定し、220℃に加熱溶融して混練(スクリュー回転数:100rpmと1000rpm、混練時間:2分)した後、T−ダイから押出した。続いて熱プレスを行い、厚さ200μmの均一なフィルムを得た。
【実施例3】
【0034】
ホルムアルデヒド−トルエン−スルホンアミド縮合ポリマー(アクゾケミエ製ケジェンフレックスMS80)10重量部に対し、カーボンブラック(電気化学工業製デンカブラック)20重量部をそれぞれ真空中80℃で12時間予備乾燥した後に所定の割合でドライブレンド物Aを作製した。
さらにこのドライブレンド物Aの10重量部に対して、12.5重量部のフッ化ビニリデン単独重合体(クレハ製KF#1000)をブレンドしたものを、微量型高せん断成形加工機に投入し、ギャップならびに内部帰還型スクリュー内径を、それぞれ1〜2ミリ、2.5φに設定し、240℃に加熱溶融して混練(スクリュー回転数:100rpmと1000rpm、混練時間:2分)した後、T−ダイから押出した。続いて熱プレスを行い、厚さ200μmの均一なフィルムを得た。
【0035】
[比較例1]
ポリウレタン樹脂(日本ミラクトラン製P995)10重量部に対し、カーボンブラック(電気化学工業製デンカブラック)10重量部をそれぞれ真空中80℃で12時間予備乾燥した後に所定の割合でドライブレンド物Aを作製した。
さらにこのドライブレンド物Aの10重量部に対して、400重量部のフッ化ビニリデン単独重合体(クレハ製KF#1000)をブレンドしたものを、微量型高せん断成形加工機に投入し、ギャップならびに内部帰還型スクリュー内径を、それぞれ1〜2ミリ、2.5φに設定し、240℃に加熱溶融して混練(スクリュー回転数:100rpmと1000rpm、混練時間:2分)した後、T−ダイから押出した。続いて熱プレスを行い、厚さ200μmの均一なフィルムを得た。
【0036】
[比較例2]
ポリウレタン樹脂(日本ミラクトラン製P995)10重量部に対し、カーボンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル製ケッチェンブラックEC)5重量部をそれぞれ真空中80℃で12時間予備乾燥した後に所定の割合でドライブレンド物Aを作製した。
さらにこのドライブレンド物Aの10重量部に対して、10重量部のフッ化ビニリデン単独重合体(クレハ製KF#1000)をブレンドしたものを、微量型高せん断成形加工機に投入し、ギャップならびに内部帰還型スクリュー内径を、それぞれ1〜2ミリ、2.5φに設定し、240℃に加熱溶融して混練(スクリュー回転数:100rpmと1000rpm、混練時間:2分)した後、T−ダイから押出した。続いて熱プレスを行い、厚さ200μmの均一なフィルムを得た。
配合処方一覧及び評価結果をそれぞれ表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
以上の詳細かつ具体的な説明から明らかなように、導電性微粒子を分散させ、主鎖または副鎖に−NH−CO−NH−、−NH−CS−NH−、−NH−CS−O−、−NH−CO−O−、−SONH−のいずれかの連結基を有する樹脂組成物(α)と、熱可塑性樹脂をブレンドし、熱可塑性樹脂マトリクス中に樹脂組成物(α)が分散された海島構造を形成してなり、体積抵抗率が10〜1010(Ω・cm)、10Vもしくは500Vのバイアスを印加したときの体積抵抗率をρv10、ρV500としたとき 0≦Log(ρv10)−Log(ρv500)≦1の関係を満たす本発明の電子写真用半導電性部材は、導電性微粒子をポリウレタン中に分散させた導電性樹脂組成物と、熱可塑性樹脂をブレンドしたものを用いた比較例1、比較例2の電子写真用半導電性部材に比し、耐久寿命の点でも、形成される画像の点も、非常に優れていることが分かる。
【符号の説明】
【0039】
1 プロセスカートリッジユニット
2 感光体ドラム
3 帯電ローラ
4 現像手段
5 感光体クリーニング手段
6 露光手段
7 中間転写ベルト
8 一次転写ローラ
9 二次転写ローラ
10 用紙
11 転写ベルトクリーニング手段
21、22、23 張架ローラ
24 二次転写ニップ部裏側ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】特開2008−291098号公報
【特許文献2】特開2006−313308号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性微粒子を分散させた樹脂組成物(α)と熱可塑性樹脂をブレンドし、熱可塑性樹脂マトリクス中に樹脂組成物(α)が分散された海島構造を形成してなり、体積抵抗率が10〜1010(Ω・cm)、10Vのバイアスを印加したときの体積抵抗率をρv10、500Vのバイアスを印加したときの体積抵抗率をρV500としたとき、
0≦Log(ρv10)−Log(ρv500)≦1の関係を満たし、
前記樹脂組成物(α)は、主鎖または副鎖に下記いずれかの連結基を有するものであることを特徴とする電子写真用半導電性部材。

【請求項2】
前記熱可塑性樹脂がポリフッ化ビニリデン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用半導電性部材。
【請求項3】
前記導電性微粒子がカーボンブラックであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真用半導電性部材。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真用半導電性部材を備えたことを特徴とする電子写真装置。
【請求項5】
前記電子写真用半導電性部材が、像担持体に接触して設けられた転写用ベルトであることを特徴とする、請求項4に記載の電子写真装置。
【請求項6】
前記電子写真用半導電性部材が、像担持体と転写用ベルトの接触部において、転写用ベルトの裏面に押圧して設けられた転写用シート部材であることを特徴とする、請求項4に記載の電子写真装置。
【請求項7】
前記電子写真用半導電性部材が、像担持体に押圧して設けられた帯電用シート部材であることを特徴とする、請求項4に記載の電子写真装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−133552(P2011−133552A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290760(P2009−290760)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】