説明

電子写真用転写紙

【課題】近年の電子写真用転写紙の高画像化に伴い、より印字後の品質が良いものが求められてきているが、反面プリンタの高速化に伴い印刷ムラが目につきやすくなる状況となっている。高速なプリンタであってもより均一な画像が出力できる電子写真用転写紙を提供するするものである。
【解決手段】基紙上に少なくとも1層以上の塗工層を設けた電子写真用転写紙において、MKsystem社製地合計での地合指数が100以上である事を特徴とし、あるいは、印刷速度がA4ヨコで分速20枚以上の電子写真プリンタで印字する坪量105g/m2以上かつ169g/m2以下の電子写真用転写紙であり、あるいは、塗工層の塗工量が10g/m2以上であって、かつ、JISP8142による塗工層の75度鏡面光沢度が60%以上となるように平滑化処理する事であり、あるいは、JISK6911による転写紙の表面電気抵抗値が1×1011Ω以上である事を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用転写紙に関するものである。さらに詳しくは、電子写真方式のプリンター、ファックス、複写機、オンデマンド印刷機により印刷することができ、特に、ベタ画像で微細なグロスムラや濃度ムラのなく高画質な画像が得られる電子写真用転写紙を提供する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による出力は、パーソナルコンピューターからの印刷やオンデマンド印刷の広がりにより、急速に拡大している。これまで、高級なアウトプットメディアとしては、昇華型熱転写方式が先行しており、医療における画像処理分野などで使用されてきたが、価格が高いことと印刷処理時間が長いことが普及の大きな問題点であった。
【0003】
最近になって、解像度の飛躍的な向上とインク滴の微細化技術が相まって、インクジェットプリント方式が写真画質に近づきつつあり、そのランニングコストの安さから幾つかのフォトシステムが市販されるに至っている。しかし、インクジェット方式は安価ではあるが、印刷処理に時間が掛かるという問題は解決されていない。
【0004】
比較的安価で印刷処理時間の短い電子写真方式は、テキスト中心のアウトプットだけでなく、ビジュアルを重視したフルカラーのアウトプット方式として注目されている。電子写真方式は、半導体材料の上に、オリジナルの潜像を形成し、これをトナーによって目に見えるようにして、受像材上に転写する。トナーは、一般に熱によって受像材上に定着される。
【0005】
電子写真方式による出力は年々高速化、高画質化しつつあり、これに伴い、用紙に求められる諸物性に対する要求も変化しつつある。用紙に求められる物性としては、乾式の電子写真方式に限れば、例えば、画像形成に用いる静電気の減衰に関する表面抵抗率・体積抵抗率、トナーの定着の加熱効率に関する熱伝導率(平滑、密度)、加熱時のブリスターを低減するための透気度もしくは紙の内部結合強度、用紙の高速搬送時の重送およびジャムリ問題に関する剛度および紙間摩擦係数などが挙げられる。
【0006】
このうち、印刷後の印刷画像に着目すると、転写に関連する表面・体積抵抗値や着肉ムラの要因となる平滑度が重要である事が知られている。
【0007】
電子写真方式の印刷機内では、電子写真用転写紙にトナーを転写させ、トナーを定着するために多く熱量が与えられる。トナーの転写原理は、紙を介してトナーと逆電位の静電気力を用いてトナーを引き付ける方法が基になっている。この時、紙の中で静電気が漏洩するとトナーを付着する静電気が弱くなり、トナーは紙に十分に転写しない。この紙の静電気の漏洩は、実験的に表面抵抗率、および、体積抵抗率に反比例する事が示されている事から、表面抵抗率、および、体積抵抗率は静電気の漏洩度合いの目安として使用されている。
【0008】
表面抵抗率・体積抵抗率に関しては、各特許において様々な条件が規定されており、各特許ともそれぞれの規定値を満たさない限り鮮明な画像は得られないと記述している。(例えば、特許文献1)。
【0009】
しかし、実際に、各種用紙を試作し表面抵抗率、および、体積抵抗率を変化させた用紙に印字試験を実施すると、各種プリンタ毎に抵抗値の上限下限が存在する事が確認できる。一般的には、数年前までは抵抗値が低いほど良い、すなわち、上限が低い傾向があったのが、近年の電子写真プリンタの高速化に伴い、現在では下限が高くなりつつある。これは、高解像度になるに従いトナー粒径が小さくなり、トナーの転写に必要な転写電位が低くなる事が要因として考えられる。転写電位が低くなるほど、紙面上の静電気の拡散が少なくなければならず、結果として要求される表面・体積抵抗値は高くなる。ここに、表面抵抗率、および、体積抵抗率の範囲についての特許が数多く存在し、特許毎に規定値が異なる要因がある。以上の結果から印字速度との関連を無視した表面抵抗率、および、体積抵抗率の記述では規定の意味があいまいになる事が確認できる。
【0010】
また、電子写真用転写紙の表面・体積抵抗値が適性な範囲にあっても、印刷ムラ(以下、印刷ムラと略す)が発生する事がある。これは、電子写真用紙の平滑度および地合に関連していると考えられている。一般に地合が良いほど、平滑なほどムラは良化する。少なくとも一層以上の塗工層を有する電子写真用転写紙の基紙の地合係数を規定している特許がある(例えば、特許文献2)。しかし、地合の測定時の絞りが粗く地合の値も低い事、評価機の印字速度が低く現在高速かつ高解像度化しつつある電子写真用プリンタ用には品質が不十分であるといえる。また、塗工量やJISP8142による塗工層の75度鏡面光沢度(以下白紙光沢と略す)も低く、いわゆるオフセット印刷分野の塗工紙として主流のA2コート並みの品質は得る事はできない。
【0011】
通常、用紙の静電気容量および熱容量が紙厚もしくは坪量に依存するため、印字速度は紙厚もしくは坪量で変化し、これらの増加に伴い印字速度は低下する。紙厚もしくは坪量に対する印字速度の調節は、電子写真プリンタの各社もしくは各プリンタによって異なるが、105g/m2以上の用紙では特別に印字速度を遅くした印字モード、すなわち、厚紙モードというものを設けている場合が多い。ここに、厚紙の印字の高速化の困難がある。
【0012】
さらに塗工層を設けると、塗工層は原紙層より密度が高いため熱伝導率が高く、静電気の減衰率も大きくなる。したがって、同様に、塗工層が厚くなるほど印字速度を低下させねばならず、印字の高速化が難しくなる。
【0013】
電子写真用転写紙の普及に伴い、印字後の品質に関してはいわゆるオフセット印刷に相当するレベルの印字が求められるようになってきている。ただし、上記の理由により印字の高速化には困難が伴う。電子写真プリンタの速度が遅いうちは、市販のオフセット印刷用のA2コート紙を使用しても問題はなかったが、近年の電子写真プリンタの高速化に伴い、印字ムラの他、様々な問題が発生しやすくなっている。特に、オフセット印刷用のA2コート紙は白紙光沢が通常60%以上あるため、これに相当する塗工量には片面10g/m2以上が求められるが、熱伝導率が高くかつ静電気の減衰率も大きくなるため、さらに高速化が困難になるといえる。
【0014】
したがって、近年の電子写真用転写紙の高画像化に伴い、より印字後の品質が良いものが求められてきているが、反面プリンタの高速化に伴い印刷ムラが目につきやすくなる状況となっている。高速なプリンタであってもより均一な画像が出力できる電子写真用転写紙が求められている。
【特許文献1】特許第3232514号公報
【特許文献2】特開平8−123066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明の目的は、少なくとも一層以上の塗工層を有する電子写真用転写紙において、印刷後の印刷物の外観と印刷面の画質に優れた電子写真用転写紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、上記に鑑み鋭意検討した結果、本発明の電子写真用転写紙を発明するに至った。
【0017】
すなわち、本発明の電子写真用転写紙は、基紙上に少なくとも1層以上の塗工層を設けた電子写真用転写紙において、地合指数が100以上である事を特徴とする。
【0018】
また、105g/m2以上かつ169g/m2以下である事を特徴とする。
【0019】
また、塗工層の塗工量が10g/m2以上であって、かつ、JISP8142による塗工層の75度鏡面光沢度が60%以上となるように平滑化処理する事を特徴とする。
【0020】
さらに、JISK6911による転写紙の表面電気抵抗値が1×1011Ω以上である事を特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電子写真用転写紙を用いる事によって、電子写真プリンタでの印刷後の印刷物の外観と印刷面の画質に優れた画像を印字する事が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、電子写真用紙について、詳細に説明する。本発明者は、白紙光沢が60〜80%でかつ坪量105g/m2〜169g/m2の用紙の電子写真用紙転写紙を印字速度がA4ヨコで20枚/分以上の電子写真プリンタ各種で印字し検討を進めた。
【0023】
まず、表面・体積抵抗値について検討を進めた結果、印字速度が比較的速いため、23℃50%環境下での表面抵抗率が1.0×1011Ω以上でないと印字ムラが発生す事を明らかにした。
【0024】
ただし、表面抵抗値を管理しただけでは印字ムラは低減せず、他の要因の存在も示唆されたため、鋭意調査を進めた結果、電子写真用転写紙の地合が深く関わっている事を確認した。
【0025】
地合の測定方法は規格化されておらず、各社から数種類の地合測定装置が販売されている。装置としては、β線を用いるものと、光の透過光量を用いるものの2種類あり、さらに、光の透過光量を用いるものの評価方法に、光透過光量の変動を画像として処理するものと、変動の周期を処理するものがある。また、同じ光透過の画像解析型であっても、地合指数が高いほど地合が良いもの、低いほど地合が良いものなど各社によって評価基準も様々である。
【0026】
本発明では、それらの中で、比較的厚い紙であっても地合が測定できるM/Ksystem社製の「3−D SHEET ANALYZER」を使用して地合を測定した。この装置では、地合係数が高くなるほど地合が良くなる。通常、木材パルプなどで製造された紙のみの地合を測定するものであるが、比較的厚い紙であっても地合が測定できるため、塗工した紙にも適用可能である。通常、光透過光量を使用した場合、厚みによって係数が変化するが、この装置には光量を自動で調節する機能があり、厚みの影響をある程度まで排除する事ができる。
【0027】
実際に、原紙の地合係数を高くする手段としては、原紙配合による方法と抄紙方法による方法とに大別される。配合による方法としては、繊維長の短いパルプを使用したり、歩留まり向上剤の量を加減するといった方法が挙げられる。抄紙方法による方法としては、J/W比の制御や抄造時に使用するワイヤーの変更、および、加圧調節機構の付いた脱水ボードを有するハイブリッドフォーマーかギャップフォーマーを使用するといった手段を単独、もしくは組み合わせる事で達成される。
【0028】
また、塗工後の用紙の地合係数は塗液の配合によっても変化し、例えば、保水性の悪い、すなわち、塗液が原紙に染み込みやすい塗工液の場合は地合がより悪化しやすい傾向がある。したがって、塗工液の調液濃度が低い場合や保水性の低いバインダーを使用すると塗工後の用紙の地合係数は低下する。塗液濃度に関しては特に規定するものではないが、望ましくは、保水性が少なくとも60g/m2以下となるような一定以上の濃度が必要であるといえる。また、乾燥負荷、乾燥履歴の点からは濃度は高いほどよい。
【0029】
塗工量に関しては、カバリング、すなわち、原紙上を塗工液が十分覆う事がまず重要となり、次に、白紙光沢を十分に発現可能となるような塗工量を決定する必要がある。一般にカバリングには片面5g/m2以上、原紙の状態によっては片面8g/m2以上は必要である。白紙光沢の発現には塗工量、塗液配合の顔料系、および、平滑化処理の効果が大きい。このうち、平滑化処理に関しては、近年のカレンダ装置の能力向上により、7〜8g/m2の塗工量を満たしていれば白紙光沢60%以上の発現に関して特に困難な部分はない。しかし、塗工量を少なくし、平滑化処理にたよった白紙光沢の発現方法では、電子写真プリンタにおいて、重送などの別の問題が発生する傾向がある。したがって、顔料系にもよるが、塗工量は10g/m2以上が望ましく、平滑化処理の負荷は可能な限り小さくした方が良い。
【0030】
本発明の電子写真用転写紙を製造する際に使用する内添填料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムの他に、カオリン、クレー、スチレンアクリル系中空顔料が挙げられる。
【0031】
本発明の電子写真用転写紙の原紙を製造する際に使用する内添サイズ剤としては、例えば、酸性抄紙の場合には、ロジンサイズ剤、中性抄紙の場合には、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、中性ロジンサイズ剤、カチオン性スチレンアクリルなどが挙げられる。
【0032】
本発明の電子写真用転写紙の原紙表面には、澱粉、ポリビニルアルコールなどのバインダー、スチレン/アクリル酸系共重合体、スチレン/メタアクリル酸系共重合体、スチレン/メタアクリル酸系共重合体、アクリロニトリル/ビニルホルマール/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体などの表面サイズ剤、エチレン−尿素樹脂などの寸法安定化剤、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの無機導電剤、有機導電剤、界面活性剤、顔料、染料を含浸させる事は可能である。
【0033】
上記のバインダーおよび表面サイズ剤等を塗工する装置としては、コンベンショナルサイズプレス、ゲートロールサイズプレス、あるいはフィルムトランスファー方式のサイズプレス、ロッドコーター、ビルブレード、ショートドウェルコーターなどを用いる事ができる。これら塗工装置の中では紙層内部へも上記のサイズプレス液を含浸させるような方式のものが望ましい。
【0034】
本発明の電子写真用転写紙の原紙を中性紙として製造する際に使用できるパルプとしては、NBKP、LBKP、NBSP、LBSP、GP、TMPなどの他に、ケナフやバガス等の非木材パルプや古紙パルプが挙げられ、必要に応じて単独あるいは併用して用いられる。
【0035】
その他の添加剤としては、例えば、pH調整剤、金属封鎖剤、防カビ剤、粘度調節剤、表面張力調節剤、潤滑剤、界面活性剤、および、防錆剤などが挙げられる。
【0036】
本発明において、塗工層としての塗工液に用いられる顔料は、特に限定されるものではなく、例えば、各種カオリン、タルク、粉砕炭酸カルシウムなどの精製した天然鉱物顔料、サチンホワイト、リトポンなどの複合合成顔料、酸化チタン、沈降性炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどの半合成顔料、プラスチック顔料などの合成顔料が挙げられる。
【0037】
また、塗工液に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ポリアクリル酸ソーダなどの水溶性高分子、ポリアクリル酸塩、スチレンマレイン酸無水共重合体などの合成重合体、珪酸塩などの無機重合体などが挙げられる。
【0038】
塗工液に用いられるバインダーとしては、通常の澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉などの各種市販澱粉、スチレン−ブタジエン系、アクリル系、酢酸ビニル系などの各種共重合体SBRラテックス、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物、ワックス、カゼイン、大豆蛋白などの天然物およびこれらをカチオン化したものなどが挙げられる。
【0039】
また、必要に応じて、分散剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤などの通常使用されている各種助剤、およびこれらの各種助剤をカチオン化したものが好適に用いられる。一連の操業で、塗工、乾燥された塗工紙は、必要に応じて各種カレンダー処理が施される。
【0040】
実施例
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、これらの例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部および%はそれぞれ質量部および質量%を示す。
<原紙配合>
LBKP(濾水度440mlcsf) 100部
【0041】
<内添薬品>
軽質炭酸カルシウム(*原紙中灰分で表示) *7部
市販カチオン化澱粉 1.0部
市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留まり向上剤 0.02部
パルプ、内添薬品を上記の配合で調整した。
【0042】
<塗工液>
ポリスチレン系中空顔料(平均粒子径1.0μm、中空率50%) 7部
重質炭酸カルシウムA(平均粒子径1.2μm) 53部
重質炭酸カルシウムB(平均粒子径2.0μm) 40部
市販ポリアクリル酸系分散剤 0.1部
市販接着剤(SBRラテックス) 10部
市販燐酸エステル澱粉 1部
水酸化ナトリウム pH9.6に調製
【実施例1】
【0043】
上記原紙配合に従って、パルプスラリーを調成し、0.5%のパルプスラリーを抄幅5000mm、抄紙速度900m/分で脱水シューとして固定シューを使用したハイブリッドフォーマー(三菱重工業製;ベルフォームフォーマー)を使って坪量97.9g/m2の原紙を製造した。ボトムワイヤーとして2.5織りワイヤーを使用し、製造時におけるJ/W比が0.95であった。
【0044】
得られた原紙に対して、塗工液を上記の配合により調整し濃度約63%の塗工液を得た。得られた塗工液をファウンテンアプリケーション/ブレード方式塗工機を用いて、塗工速度1600m/分で塗工液を片面15g/m2を両面塗工し、乾燥して坪量127.9g/m2の塗工紙を得た。
【0045】
得られた塗工紙に対し、オフラインでスーパーカレンダー装置(段数:10段、剛性ロール:外径400mmのチルドロール、弾性ロール:外径400mmのコットンロール、線圧:220kN/m)を用いてカレンダリング処理を施し、実施例1の電子写真用転写紙を製造した。
【実施例2】
【0046】
実施例1においてJ/W比を1.2とした以外は、同様にして実施例2の電子写真用転写紙を作製した。
【実施例3】
【0047】
実施例1においてパルプの濾水度を480mlcsfとした以外は同様にして実施例3の電子写真用転写紙を作製した。
【実施例4】
【0048】
実施例1において片面塗工量を10g/m2とし、スーパーカレンダ線圧を250kN/mにした以外は同様にして実施例4の電子写真用転写紙を作製した。
【実施例5】
【0049】
実施例1において塗工液配合中のバインダー配合を、SBRラテックス5部、市販PVA(重合度400)5部にした以外は同様にして実施例5の電子写真用転写紙を作製した。
【実施例6】
【0050】
実施例1において原紙坪量を127.0g/m2とし、塗工後坪量を157.0g/m2とした以外は同様にして実施例6の電子写真用転写紙を作製した。
【0051】
比較例1
実施例1においてJ/W比を1.05とした以外は、同様にして比較例1の電子写真用転写紙を作製した。
【0052】
比較例2
実施例1においてパルプの濾水度を500mlcsfとした以外は、同様にして比較例2の電子写真用転写紙を作製した。
【0053】
比較例3
実施例1において塗工液の塗工量を8g/m2とし、スーパーカレンダ線圧を280kN/mにした以外は同様にして比較例3の電子写真用転写紙を作製した。
【0054】
比較例4
実施例1においてスーパーカレンダー線圧を100kN/mとした以外は同様にして比較例4の電子写真用転写紙を作製した。なお、この時白紙光沢は50%であった。
【0055】
比較例5
実施例1において塗工液配合中の市販燐酸エステル化澱粉の配合部数を0部にした以外は同様にして比較例5の電子写真用転写紙を作製した。
【0056】
比較例6
実施例1において原紙坪量を144.4g/m2とし、塗工後坪量を174.4g/m2とした以外は同様にして比較例6の電子写真用転写紙を作製した。
【0057】
比較例7
市販されている一般オフセットA2コート紙127.9g/m2を比較例7として示す。
【0058】
<地合係数>
実施例1〜6および比較例1〜7で得た電子写真用転写紙の地合指数の測定には、M/Ksystem社製の「3−D SHEET ANALYZER」を使用して測定した。測定条件としては、絞りの直径として1mmの絞りを使って測定を行った。各実施例および比較例のA4サイズの電子写真用転写紙5枚について地合指数を測定し、その平均値を報告した。
【0059】
<印刷ムラ>
実施例1〜6および比較例1〜7で得た電子写真用転写紙の印刷後の印刷ムラについては、電子写真プリンタとしてCanon社製「CLC5000」を使用した。10cm×10cmのベタ部を各電子写真用転写紙にA4横印字速度を50枚/分、25枚/分、および、12.5枚/分の3段階で印刷し、ベタ印刷ムラを目視によって5段階で判断した。判断基準については以下の通り。25枚/分で「3」以上のレベルであれば実用レベルといえる。
「5」:印刷ムラなし。
「4」:印刷ムラが少し認められる。
「3」:印刷ムラが認められるが、実用レベル。
「2」:印刷ムラがすぐ認識できる。
「1」:印刷ムラが目立つ。
【0060】
<搬送性>
実施例1〜6および比較例1〜7で得た電子写真用転写紙の印刷時の搬送性については、電子写真プリンタとしてCanon社製「CLC5000」を使用し、A4サイズの各電子写真用紙を片面500枚、片面印刷と両面印刷を実施し、プリンタ内での紙詰まり回数を測定した。判断基準については以下の通り。
「○」:1回以内
「△」:5回以内
「×」:6回以上
【0061】
【表1】

【0062】
上記実施例1〜6および比較例1〜7で得た電子写真用転写紙について、白紙光沢、表面抵抗値、地合指数、搬送性、各印刷速度での印刷後の画像の印刷ムラの評価結果を表1に示した。これらの結果から、地合が良好で、かつ、白紙光沢値、表面抵抗値が適切であれば、印刷面に優れた画像を得られる事を確認できる。具体的には、実施例1、実施例2、比較例1より、J/W比が1.0から離れるほど、ワイヤーパート上での繊維の混合が進み、それに伴う地合の良化を確認できる。また、実施例1、実施例3、比較例2より、パルプ濾水度が低いほど地合が良好である事が確認できる。塗工量に関しては、実施例1、実施例4、比較例3から、地合と白紙光沢を維持しつつ印刷面に優れた画像を得るためには、10g/m2以上の塗工量が必要と確認できる。塗液に関しては、塗液の保水性が高いほど良いため、バインダーにPVAを導入した実施例5は良いが、澱粉減の比較例5では十分ではない。原紙の坪量に関しては、設計の範囲である実施例1、実施例6では問題はないが、設計の範囲を超える比較例6では、A4横20枚/分以上では十分な画質が得られていない。また、比較例7は電子写真適性を全く考慮していない一般オフセットA2コート紙であり、印字ムラが目立つ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙上に少なくとも1層以上の塗工層を設けた電子写真用転写紙において、地合指数が100以上である事を特徴とする電子写真用転写紙。
【請求項2】
該電子写真用転写紙が坪量105g/m2以上かつ169g/m2以下である事を特徴とする請求項1記載の電子写真用転写紙。
【請求項3】
塗工層の塗工量が10g/m2以上であって、かつ、JISP8142による塗工層の75度鏡面光沢度が60%以上となるように平滑化処理する事を特徴とする請求項1または2記載の電子写真用転写紙。
【請求項4】
JISK6911による転写紙の表面電気抵抗値が1×1011Ω以上である事を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真用転写紙。

【公開番号】特開2007−264288(P2007−264288A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88942(P2006−88942)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】