説明

電子写真装置用クリーニングシート基材

【課題】本発明の課題は、毛羽立ちが少なく、且つ熱寸法安定性が良好で、シリコンオイル等のオイルを付与して複写機の定着ロールに付着した紙粉やトナーかすを拭き取るクリーニングシートとして使用可能な基材を提供することである。
【解決手段】レーヨン、リヨセル等の再生繊維、未延伸ポリエステル繊維等の熱融着性バインダー繊維、ポリビニルアルコール繊維等の熱水可溶性バインダー繊維を含み、湿式抄紙法にて得られたウエブを加熱したカレンダーロールを通してなる電子写真装置用クリーニングシート基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置用クリーニングシート基材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の定着装置に用いる定着ロールに付着した紙粉やトナーかすなどの汚染物を取り除く際、オイルを含有する電子写真装置用クリーニングシート基材(以下、「クリーニングシート基材」と略す場合がある)を巻き出し、定着ロール表面をクリーニングすると同時にオイルを塗布し、巻き取る方法が広く用いられている。この方法に用いられるクリーニングシート基材は、拭き取り時に接触する定着ロールが200℃以上の高温となるため、高温条件でも破断やシワの発生、変形がないよう、高い熱寸法安定性が求められており、芳香族ポリアミド系樹脂からなる繊維を含んだ不織布などが用いられている(特許文献1および2参照)。しかし、該繊維は剛直かつ繊維同士の絡み合いが少ないことから、毛羽立ちが多くなり、繊維が脱落しやすい。そのため、脱落繊維によって定着ロールが汚れてクリーニング性能が悪化したり、蓄積した脱落繊維が記録用紙や装置内部に付着したり、また、脱落繊維が定着ロール表面を傷付け、複写画像の画像抜けなどの不具合が発生するという問題がある。
【0003】
一方で、毛羽立ちを防ぐために熱により軟化する繊維を用いた方法も開示されているが(特許文献3参照)、かかる方法では、十分な熱寸法安定性が得られないことがあり、高温になる定着ロールへ接触させて使用するには問題となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04−83283号公報
【特許文献2】特開平07−287496号公報
【特許文献3】特開平08−137319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、毛羽立ちが少なく、且つ良好な熱寸法安定性を有し、オイルを含有して使用可能な電子写真装置用クリーニングシート基材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、この課題を解決するため鋭意研究を行った結果、以下の本発明を見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、少なくとも再生繊維、熱融着性バインダー繊維、熱水可溶性バインダー繊維を含み、湿式抄紙法にて得られたウエブを加熱したカレンダーロールを通してなる電子写真装置用クリーニングシート基材に関するものである。
【0008】
本発明において、再生繊維がレーヨンまたはリヨセルで、該繊維を30〜60質量%含む電子写真装置用クリーニングシート基材であることが好ましい。
【0009】
本発明において、熱融着性バインダー繊維が融点220℃以上の未延伸ポリエステル繊維であり、該繊維を15〜65質量%含む電子写真装置用クリーニングシート基材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子写真装置用クリーニングシート基材は、再生繊維、熱融着性バインダー繊維、熱水可溶性バインダー繊維を含み、湿式抄紙法にて得られたウエブに、加熱したカレンダーロールを通す加工を施すことで、毛羽立ちが少なく、かつ熱寸法安定性に優れた電子写真装置用クリーニングシート基材を得ることができる。
【0011】
また、再生繊維がレーヨンまたはリヨセルで、且つ該繊維を30〜60質量%を含むことで、より毛羽立ちの少ない電子写真装置用クリーニングシート基材を得ることができる。
【0012】
さらに、熱融着性バインダー繊維が、融点220℃以上の未延伸ポリエステル繊維であり、該繊維を15〜65質量%含むことで、熱寸法安定性に優れ、高温下においても問題なく使用が可能な電子写真装置用クリーニングシート基材を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の電子写真装置用クリーニングシート基材を詳細に説明する。本発明の電子写真装置用クリーニングシート基材は、シリコーンオイル等のオイルを含有し、複写機をはじめ、レーザービームプリンター、ファクシミリなどの電子写真装置における定着ロールに付着する紙粉やトナーかすを拭き取る装置に使用するものである。
【0014】
本発明の電子写真装置用クリーニングシート基材は、少なくとも再生繊維、熱融着性バインダー繊維、熱水可溶性バインダー繊維を含む。本発明における再生繊維は、レーヨン、リヨセル、ジアセテート、トリアセテート等から選ぶことができるが、安定したクリーニング性能が得られることから、レーヨンまたはリヨセルが好ましい。なお、ここで言うレーヨンは、ビスコースレーヨン、ポリノジックレーヨン、酢酸アンモニアレーヨンのことを言う。レーヨン、リヨセルなどのこれらの再生繊維は、高温において軟化しない特徴があり、電子写真装置用クリーニングシート基材に用いた場合、定着ロールに接しても繊維が変形、溶融することがなく、それに伴って起こるシートの破断やシワの発生もないため、安定してクリーニングが可能となる。一方、ジアセテート繊維、トリアセテート繊維等の半再生繊維は、高温条件において軟化、溶融するため、高温の定着ロールを拭き取る際にシワや破断の原因となるおそれがあり、安定したクリーニング性能が得られないことがある。また、レーヨン、リヨセルといった再生繊維は、他の合成繊維と比較して親水性があり、湿式抄紙時において一定の湿紙水分を持つことから、フエルトへの繊維とられが少なく、結果的に毛羽立ちの少ない電子写真装置用クリーニングシート基材が得られる。
【0015】
再生繊維の配合比率は、シート質量に対して30〜60質量%が好ましく、35〜55質量%がより好ましく、40〜50質量%がさらに好ましい。配合比率が30質量%未満の場合、熱寸法安定性や毛羽立ち抑制に関して十分な効果が得られないことがあり、配合比率が60質量%を超える場合、バインダー繊維として配合可能な繊維の量が少なくなるため、十分な強度が得られないことがある。また、本発明において、再生繊維の繊度は特に限定されないが、0.1〜7.0デシテックスが好ましく、より好ましくは0.3〜6.0デシテックスであり、さらに好ましくは0.5〜5.5デシテックスである。繊度が0.1デシテックス未満の場合、シートが密になりやすくなるため、十分な量のオイルを含有できず、トナー拭き取り性が劣ることがある。一方、7.0デシテックスを超える場合、単位面積当たりの再生繊維の本数が減るため強度が低下することがある。再生繊維の繊維長は特に限定されないが、1〜15mmが好ましく、より好ましくは2〜12mmであり、さらに好ましくは3〜10mmである。繊維長が1mm未満の場合、繊維の交絡が少なくなるため十分な強度が得られないことがある。一方、繊維長が15mmを超える場合、均一な地合いが得られないことがある。
【0016】
熱融着性バインダー繊維としては、単繊維の他、芯鞘繊維(コアセルタイプ)、並列繊維(サイドバイサイドタイプ)などの複合繊維が挙げられる。複合型熱融着性バインダー繊維としては、例えばポリプロピレン(芯)と、ポリエチレン(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせが挙げられる。本発明においては、熱カレンダー加工後に良好な熱寸法安定性が得られる、未延伸ポリエステル繊維を用いることが好ましい。未延伸ポリエステル繊維は結晶化していないため、融点よりやや低い温度にて熱カレンダー等の装置で熱圧着加工させると、繊維の溶融によって繊維同士が接着して強度が発現するとともに、加工時の熱によって結晶化が進むことで、高い熱寸法安定性が得られる。また、未延伸ポリエステル繊維の融点は、220℃以上が好ましい。融点が220℃を下回ると、高温の定着ロールを拭き取る際に繊維が溶融し、シートが伸びたり、破断したりすることがあるため、安定してクリーニングできないことがある。また、熱融着性バインダー繊維の配合比率は、シート質量に対して15〜65質量%が好ましく、より好ましくは20〜60質量%であり、さらに好ましくは25〜55質量%である。配合比率が15質量%未満の場合、十分な強度が得られず作動中に電子写真装置用クリーニングシート基材が破断することがある。65質量%を超える場合、溶融した熱融着性バインダー繊維がフィルム状になり、シート内の空隙が少なくなるため、オイルの吸収性に劣り、また表面が平滑になるため、結果的に拭き取り性が悪くなることがある。
【0017】
熱水可溶性バインダー繊維として、ポリビニルアルコール系繊維が挙げられる。該繊維は、常温の水では殆ど溶解せずその形態を維持しているが、抄紙後のドライヤー面で加熱すると徐々に溶解し、タッチロール等の装置で加圧することで、その他の繊維にまたがって繊維状バインダーとなり、さらに乾燥・脱水工程を得ると再凝固し、高い乾燥強度を発揮する。また、本発明において用いる熱融着性バインダー繊維の融点によっては、抄紙工程で熱融着性バインダー繊維が溶融せず、原布の強度低下や毛羽立ちが起こることがあるが、該熱水可溶性バインダー繊維を配合することで、抄紙段階において一定の強度を得、毛羽立ちを少なくすることができる。熱水可溶性バインダー繊維の配合比率は、シート質量に対して0.5〜10質量%が好ましく、より好ましくは1〜9質量%であり、さらに好ましくは3〜8質量%であり、特に好ましくは3〜5質量%である。配合比率が0.5質量%未満の場合、十分な強度が得られず、毛羽立ちが発生することがある。10質量%を超える場合、湿式抄紙時の乾燥にシリンダードライヤー、ヤンキードライヤー等の接触型ドライヤーを用いた際に表面が平滑になるため、オイルをシート内部に保持できず、結果的に定着ロールの拭き取り性が悪くなることがある。
【0018】
この他に、延伸ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびこれらのコポリマー等のポリエステル系繊維、ポリプロピレン(単繊維)、ポリスチレン等のポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリル、モダクリル等のアクリル系繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド系繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ウレタン繊維等の合成繊維を、本発明の特性を阻害しない限り用いることができる。これらの繊維を構成するポリマーは、ホモポリマー、変性ポリマー、ブレンド、共重合体などの形でも利用でき、また、複数の成分からなる複合繊維を用いても良い。但し、ガラス繊維、グラスウール等の無機繊維は、定着ロールの拭き取り時にロール表面を傷付けることがあるので、使用に適さない。
【0019】
本発明の電子写真装置用クリーニングシート基材に用いる繊維の繊度は特に限定されないが、0.1〜10デシテックスであることが好ましく、より好ましくは0.2〜8デシテックスであり、さらに好ましくは0.3〜6デシテックスである。0.1デシテックスより小さいと、抄紙ワイヤーから抜け落ちることがあり、また、10デシテックスより大きいと、単位面積当たりの繊維本数が減るため、十分な強度を得られないことがある。また、繊維長に関しても特に限定されないが、1〜20mmであることが好ましく、より好ましくは2〜15mmであり、さらに好ましくは3〜10mmである。1mmより小さいと、繊維同士が絡みにくくなるため十分な強度が得られず、また、20mmより大きいと、均一な地合いが得られないことがある。
【0020】
本発明の電子写真装置用クリーニングシート基材は、一般紙や湿式不織布を製造するための抄紙機、例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、傾斜ワイヤー式抄紙機が単独、またはこれらの抄紙機が同種または異種の2機以上がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機などにより製造される。抄紙機で製造された湿紙は、エアドライヤー、シリンダードライヤー、ヤンキードライヤー、サクションドラム式ドライヤー、赤外方式ドライヤー等で乾燥させる。抄造の際に配合する薬品として、湿紙状態での断紙対策として湿潤強度剤やヤンキードライヤーからの剥離を安定させるため、内添サイズ剤を使用しても良い。乾燥させた後のウエブに、熱履歴を与えて熱寸法安定性を向上させるとともに、厚みを均一に調整できるよう、加熱したカレンダーロール間を通して熱カレンダー処理を行う。カレンダーロールの温度は特に限定されないが、160〜260℃が好ましく、より好ましくは180〜250℃であり、さらに好ましくは200〜240℃である。160℃未満の場合、さらに高温である定着ロールに接した際に収縮やシワが起こることがあり、また、250℃より高い場合、溶融した繊維がカレンダーロールによって均されるため、平滑な仕上がりとなり、オイルの吸収性や定着ロールの拭き取り性が悪くなることがある。熱融着性バインダー繊維に未延伸ポリエステル繊維を用いる場合は、熱カレンダー処理を施すことで繊維の結晶化を促し、熱寸法安定性を向上させるため、その融点より10℃ほど低い温度で処理することが好ましい。また、ニップ線圧は100〜2000N/cmの条件下で行うのが好ましく、より好ましくは300〜1800N/cmであり、さらに好ましくは500〜1500N/cmである。線圧が100N/cm未満の場合、十分に原布の厚みを潰すことができず、所定の長さでシャフトに巻こうとすると、径が大きくなり装置に入らない場合がある。また、ニップ線圧が低いと、密度が低くなりやすく、この場合、シート中に空隙が大きいため、繊維の自由度が大きくなり、熱寸法安定性が劣ることがある。一方、ニップ線圧が1500N/cmを超える場合、原布の厚みが大きく潰れ、シート内にオイルを保持する空隙が減少するため、トナーを効率的に拭き取ることができない。なお、カレンダーロールの素材は、金属ロール同士の組み合わせ以外に、加熱した金属ロールと非加熱のコットンロール、加熱した金属ロールと非加熱の弾性ロールの組み合わせでも良い。
【0021】
本発明の電子写真装置用クリーニングシート基材の密度は、0.20〜0.80g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.25〜0.75g/cmであり、さらに好ましくは0.30〜0.70g/cmである。密度が0.20g/cm未満の場合、強度が弱くなったり、毛羽立ちが発生したりすることがある。また、シート中に空隙が多いため繊維の自由度が高く、熱寸法安定性が劣ることがある。一方、密度が0.80g/cmを超えると、シート内部の空隙が少なくなることから、オイル吸液量が低下し、トナーを効率的に拭き取れないことがある。また、本発明の電子写真装置用クリーニングシート基材の厚みは、20〜80μmが好ましく、より好ましくは25〜70μmであり、さらに好ましくは30〜60μmである。厚みが20μmの場合、強度が弱くなったり、また十分な量のオイルを含有できず、トナーの拭き取り性が悪くなることがある。一方、厚みが80μmを超えると、所定の長さでシャフトに巻こうとすると、径が大きくなり装置に入らない場合がある。
【実施例】
【0022】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部数や百分率は質量基準である。
【0023】
実施例1
再生繊維として、レーヨン繊維(繊度0.8デシテックス、繊維長5mm)、熱融着性バインダー繊維として未延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維(繊度1.2デシテックス、繊維長5mm、融点230℃)、熱水可溶性バインダー繊維としてポリビニルアルコール(PVA)繊維(繊度0.1デシテックス、繊維長5mm)、その他の繊維として延伸PET繊維(繊度0.6デシテックス、繊維長5mm)を用いた。これらの繊維を、レーヨン繊維/未延伸PET繊維/PVA繊維/延伸PET繊維=35/35/5/25となるようパルパーで分散し、円網抄紙機で抄紙後、シリンダードライヤーにて乾燥し、25g/mのウエブを得た。このウエブを、上下ロールともに220℃に過熱したシリンダーロールに通し、クリーニングシート基材を得た。
【0024】
実施例2
再生繊維として、レーヨンではなくリヨセル繊維(繊度0.3デシテックス、繊維長5mm)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2のクリーニングシート基材を得た。
【0025】
実施例3
ウエブの組成を、レーヨン繊維/未延伸PET繊維/PVA繊維/延伸PET繊維=25/35/5/35とした以外は、実施例1と同様にして実施例3のクリーニングシート基材を得た。
【0026】
実施例4
ウエブの組成を、レーヨン繊維/未延伸PET繊維/PVA繊維/延伸PET繊維=30/35/5/30とした以外は、実施例1と同様にして実施例4のクリーニングシート基材を得た。
【0027】
実施例5
ウエブの組成を、レーヨン繊維/未延伸PET繊維/PVA繊維/延伸PET繊維=60/35/5/0とした以外は、実施例1と同様にして実施例5のクリーニングシート基材を得た。
【0028】
実施例6
ウエブの組成を、レーヨン繊維/未延伸PET繊維/PVA繊維/延伸PET繊維=65/32/3/0とした以外は、実施例1と同様にして実施例6のクリーニングシート基材を得た。
【0029】
実施例7
熱融着性バインダーとして、未延伸PETではなく、PET−低融点PETの芯鞘繊維(繊度1.1デシテックス、繊維長5mm、低融点PETの融点110℃)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例7のクリーニングシート基材を得た。
【0030】
実施例8
ウエブの組成を、レーヨン繊維/未延伸PET繊維/PVA繊維/延伸PET繊維=35/10/5/50とした以外は、実施例1と同様にして実施例8のクリーニングシート基材を得た。
【0031】
実施例9
ウエブの組成を、レーヨン繊維/未延伸PET繊維/PVA繊維/延伸PET繊維=35/15/5/45とした以外は、実施例1と同様にして実施例9のクリーニングシート基材を得た。
【0032】
実施例10
ウエブの組成を、レーヨン繊維/未延伸PET繊維/PVA繊維/延伸PET繊維=30/65/5/0とした以外は、実施例1と同様にして実施例10のクリーニングシート基材を得た。
【0033】
実施例11
ウエブの組成を、レーヨン繊維/未延伸PET繊維/PVA繊維/延伸PET繊維=30/67/3/0とした以外は、実施例1と同様にして実施例11のクリーニングシート基材を得た。
【0034】
実施例12
再生繊維として、レーヨンではなくジアセテート繊維(繊度0.3デシテックス、繊維長5mm)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例12のクリーニングシート基材を得た。
【0035】
実施例13
ウエブの組成を、レーヨン繊維/未延伸PET繊維/PVA繊維/延伸PET繊維=35/33/7/25とした以外は、実施例1と同様にして実施例13のクリーニングシート基材を得た。
【0036】
比較例1
ウエブの組成を、レーヨン繊維/未延伸PET繊維/PVA繊維/延伸PET繊維=0/35/5/40とした以外は、実施例1と同様にして比較例1のクリーニングシート基材を得た。
【0037】
比較例2
ウエブの組成を、レーヨン繊維/未延伸PET繊維/PVA繊維/延伸PET繊維=35/0/5/60とした以外は、実施例1と同様にして比較例2のクリーニングシート基材を得た。
【0038】
比較例3
ウエブの組成を、レーヨン繊維/未延伸PET繊維/PVA繊維/延伸PET繊維=35/35/0/30とした以外は、実施例1と同様にして比較例3のクリーニングシート基材を得た。
【0039】
比較例4
ウエブの組成を、レーヨン繊維/未延伸PET繊維/PVA繊維/延伸PET繊維=35/35/5/25とし、熱カレンダー処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして比較礼4のクリーニングシート基材を得た。
【0040】
比較例5
繊度1.7デシテックス、繊維長38mmのメタ型芳香族ポリアミド繊維60質量%と、繊度7.7デシテックス、繊維長51mmのポリフェニレンサルファイド繊維40質量%とをガーネット機で混綿し、繊維が一方向に配列するようにカード機で開繊し、25g/mの繊維ウエブを形成した。これを、表面温度220℃の加熱ロールとシリコンゴムロールの対ロールで1000N/cmの線圧力にて熱圧着し、比較例5のクリーニングシート基材を得た。
【0041】
比較例6
繊度2.2デシテックス、繊維長38mm、繊維断面における繊維表面の凹凸部が2箇所のメタ型芳香族ポリアミド繊維を用いて、乾式法にて25g/mの繊維ウエブを作製した。これを、表面温度280℃に加熱した金属ロールの対ロールで1000N/cmの線圧力にて熱圧着し、比較例6のクリーニングシート基材を得た。
【0042】
比較例7
軟化点240℃の繊度1.7デシテックス、繊維長38mmのポリエステル繊維35質量%、軟化点240℃の繊度5.5デシテックス、繊維長38mmの未延伸ポリエステル繊維40質量%、繊度1.7デシテックス、繊維長38mmのメタ型芳香族ポリアミド繊維25質量%とを、繊維が一方向に配列するようにカード機で開繊し、25g/mの繊維ウエブを形成した。表面温度210℃の加熱ロールとシリコンゴムロールの対ロールで400N/cmの線圧力にて熱圧着し、比較例7のクリーニングシート基材を得た。
【0043】
上記の実施例1〜13、比較例1〜7で作製したクリーニングシート基材について、下記の評価方法により評価し、その結果を表1に示した。
【0044】
(1)密度(単位:g/cm
JIS P 8118に準じて測定を行った。
【0045】
(2)引張強度(単位:N/50mm)
実施例1〜13、比較例1〜7で作製したクリーニングシート基材について、それぞれ幅方向:50mm×流れ方向:200mmに断裁し、シリコーンオイル(商品名:KF−96−1万cs、信越化学工業社製)をグラビアコーター方式で15g/mを含浸させ、試験片を作製した。JIS L 1906に準じて、テンシロン機を用いてチャック間距離10cm、ヘッドスピード20cm/minで流れ方向での引張強度を測定した。流れ方向の引張強度は、30N/50mm以上が好ましく、より好ましくは40N/50mm以上である。30N/50mmよりも小さいと、作動時に破断することがあるため、実用上問題がある。
【0046】
(3)拭き取り性
実施例1〜13、比較例1〜7で作製したクリーニングシート基材について、それぞれ100mm×100mmに断裁し、シリコーンオイル(商品名:KF−96−1万cs、信越化学工業社製)をグラビアコーター方式で15g/mを含浸させ、試験片を作製した。ガラス板状にJIS8種粉体を10mg滴下し、100mm×100mm角の試験片で3回拭き取った後に、ガラス板上の粉体の残存程度を目視観察し、評価した。拭き取り性の評価基準としては、以下の通りである。
◎:粉体が全く残らず良好。
○:粉体が殆ど残らず良好。
△:粉体が僅かに残るものの、効果は認められる。
×:粉体が殆ど残り、実用上問題がある。
【0047】
(4)オイル保液性(単位:g/m
実施例1〜13、比較例1〜7で作製したクリーニングシート基材について、それぞれ100mm×100mmに断裁して試験片を作製し、乾燥質量を測定する。次に、シリコーンオイル(商品名:KF−96−1万cs、信越化学工業社製)中に試験片を広げて浸漬し、10分間放置したのち液体中から取り出し、表面のオイルを濾紙で軽く拭いた。これを120℃のオーブン内にて30分間吊し置きした後、湿潤質量を測定し、試験片の乾燥質量と湿潤質量から試験片のオイル保液量を算出し、オイル保液性を評価した。オイル保液性が悪いと、トナーの拭き取り性が悪化し、特にオイル保液量が7g/m以下であると実用上問題がある。
【0048】
(5)毛羽立ち
実施例1〜13、比較例1〜7で作製したクリーニングシート基材について、それぞれ50mm×50mmに断裁し、シリコーンオイル(商品名:KF−96−1万cs、信越化学工業社製)をグラビアコーター方式で15g/mを含浸させ、試験片を作製した。これをシートの流れ方向と直角に折り、折った背の部分を10倍のルーペで観察し、立ち上がっている繊維の本数を数える。表、裏ともに同様に測定を行い、表裏の平均を毛羽の本数とする。毛羽の本数が多いほど、定着ロールを傷付けて印刷抜けとなったり、脱落した繊維が付着して記録用紙や装置内部を汚したりするなどのトラブルが起こりやすく、安定な印字性能が得られない。特に、毛羽の本数が20本以上になるとこれらの問題から実用には適さない。なお、ここで言う「表」とは、抄紙の際の湿紙乾燥時に接触型ドライヤーに接していた面、もしくは、非接触型の乾燥機を用いた際は熱量が多くかかった側の面を言う。
【0049】
(6)熱寸法安定性
実施例1〜13、比較例1〜7で作製したクリーニングシート基材について、それぞれ100mm×100mmに断裁し、シリコーンオイル(商品名:KF−96−1万cs、信越化学工業社製)をグラビアコーター方式で15g/mを含浸させ、試験片を作製した。この試験片を220℃の熱風乾燥機中で1時間保持し、熱処理後各辺の収縮率(%)を下記式で求め、シートの流れ方向、幅方向それぞれ2辺を平均して熱収縮率を算出し、熱寸法安定性を評価した。なお、熱収縮率は、定着ロール拭き取り時の破断や収縮を回避するため2.0%未満が好ましく、より好ましくは1.5%未満である。熱収縮率が2.0%より大きいと、実用上問題がある。
【0050】
熱収縮率=[(熱処理前の試験片長さ−熱処理後の試験片長さ)/(熱処理前の試験片長さ)]×100
【0051】
(7)トナー除去性
実施例1〜13、比較例1〜7で作製したクリーニングシート基材について、それぞれ50mm×50mmに断裁し、シリコーンオイル(商品名:KF−96−1万cs、信越化学工業社製)をグラビアコーター方式で15g/mを含浸させ、試験片を作製した。ホットプレートをシリコーンゴムで被覆した上に、複写機用トナーを50mm×50mmの区間に10mg均一に塗布し、ホットプレートを200℃に加熱したのち、トナー上に試験片を載せる。直ちにこの上に500gの錘を乗せ、5秒後に錘と試験片を剥がす。これを5回繰り返し、残ったトナーを以下に示す4段階で評価した。評価はモニター6名によって行われ、各人がそれぞれ評価した等級の最多数をその等級とした。
◎:トナーが全く残っておらず、除去性が非常に良好。
○:一部にトナーが薄く残っているが、除去性が良好。
△:全面にトナーが薄く残っているが、効果は認められる。
×:全面にトナーが濃く残っており、除去性不良。実用上問題がある。
【0052】
【表1】

【0053】
表1から明らかなように、再生繊維、熱融着性バインダー繊維、熱水可溶性バインダー繊維を含んだ湿式抄紙法にて得られたウエブを加熱したカレンダーロールを通して得られる実施例1〜13のクリーニングシート基材は、毛羽立ちが少なく、且つ、引張強度、拭き取り性、オイル保液性、熱寸法安定性、トナー除去性に優れている。
【0054】
再生繊維を用いなかった比較例1は、引張強度は良好であったが、熱寸法安定性が悪く、また、抄紙工程においてブランケットに繊維がとられ、毛羽立ちが多かった。一方、熱融着性バインダー繊維を用いなかった比較例2は、毛羽立ちが多く、引張強度、および熱寸法安定性も悪かった。また、熱水可溶性バインダー繊維を用いなかった比較例3も、毛羽立ちおよび引張強度の点で劣った。熱カレンダー処理を行わなかった比較例4は、熱融着性バインダー繊維が十分に溶融しないため、引張強度が弱く、毛羽立ちが多かった。また、低密度の仕上がりとなることから、繊維の可動域が大きく、熱寸法安定性も悪かった。芳香族ポリアミド繊維を用いた比較例5および6は、熱寸法安定性は良好だが、毛羽立ちが多かった。また、高温にて軟化する繊維を多く用いた比較例7は、毛羽立ちは少ないが、熱寸法安定性が悪かった。また、高密度の仕上がりとなることから、オイルをシート内に十分に保持することができず、オイル保液性およびトナー拭き取り性に劣った。
【0055】
実施例1、3〜6の比較から、再生繊維の含有量が30質量%より少ない実施例3は、毛羽立ちや熱収縮率が大きくなり、一方、再生繊維の量が60質量%より多い実施例6は、毛羽立ちは少なくなるが、引張強度が低下した。しかし、いずれも実用上問題ないレベルであった。また、実施例1と実施例12の比較から、再生繊維として、レーヨンおよびリヨセルを用いなかった実施例12は、引張強度、および熱寸法安定性に劣るが、実用上問題ないレベルであった。
【0056】
実施例1と7の比較から、熱融着性バインダー繊維として、PET−低融点PETの芯鞘繊維(低融点PETの融点110℃)を用いた実施例7は、融点が低いため、実際の使用を想定した高温での熱収縮が大きく、また、熱カレンダー処理時に繊維が溶融してフィルム状となるため、拭き取り性、オイル保液性、およびトナー除去性が若干劣ったが、実用上問題ないレベルであった。また、実施例1、8〜11の比較から、熱融着性バインダー繊維の含有量が15質量%よりも少ない実施例8は、引張強度が弱くなり、また、毛羽立ちや熱収縮が大きくなる傾向が見られたが、実用上問題ないレベルであった。一方、熱融着性バインダー繊維の含有量65質量%より多い実施例11は、熱カレンダー処理により表面が平滑になるため、拭き取り性、オイル保液性、およびトナー除去性が若干劣ったが、いずれも実用上問題ないレベルであった。
【0057】
実施例1と13の比較から、熱水可溶性バインダー繊維の配合量が5%より多い実施例13は、シリンダードライヤーでの乾燥時に表面が平滑になるため、吸油量が若干劣ったが、実用上問題ないレベルであった。
【0058】
以上説明したように、本発明の電子写真装置用クリーニングシート基材は、再生繊維、熱融着性バインダー繊維、熱水可溶性バインダー繊維を含むウエブに、加熱したカレンダーロールを通して熱処理を施すことによって、毛羽立ちが少なく良好な熱寸法安定性が得られ、シリコーンオイル等のオイルを付与して、電子写真装置用クリーニングシートとしての使用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の電子写真装置用クリーニングシート基材は、シリコーンオイル等のオイルを付与して、複写機をはじめ、レーザービームプリンター、ファクシミリなどの電子写真装置における定着ロールに付着する紙粉やトナーかすを拭き取る装置に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも再生繊維、熱融着性バインダー繊維、熱水可溶性バインダー繊維を含み、湿式抄紙法にて得られたウエブを加熱したカレンダーロールを通してなる電子写真装置用クリーニングシート基材。
【請求項2】
再生繊維がレーヨンまたはリヨセルで、且つ該繊維を30〜60質量%を含む請求項1に記載の電子写真装置用クリーニングシート基材。
【請求項3】
熱融着性バインダー繊維が融点220℃以上の未延伸ポリエステル繊維であり、該繊維を15〜65質量%含む請求項1または2に記載の電子写真装置用クリーニングシート基材。

【公開番号】特開2012−132992(P2012−132992A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283031(P2010−283031)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】