電子制御装置
【課題】高密度化された基板面に設けられる遮断配線にて生じた熱による他の電子部品への影響を抑制し得る電子制御装置を提供する。
【解決手段】電源配線23には、遮断配線30に接続されるセラミックコンデンサ24を除く他の複数の電子部品22よりも当該遮断配線30に対して配線距離が短くなる位置に当該電源配線23と同一材料からなる放熱配線40が形成される。この放熱配線40は、電源配線23を介して伝わる熱を放熱するために、その放熱面積を大きくするように形成されている。
【解決手段】電源配線23には、遮断配線30に接続されるセラミックコンデンサ24を除く他の複数の電子部品22よりも当該遮断配線30に対して配線距離が短くなる位置に当該電源配線23と同一材料からなる放熱配線40が形成される。この放熱配線40は、電源配線23を介して伝わる熱を放熱するために、その放熱面積を大きくするように形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に過電流保護用の遮断配線が設けられる電子制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、小型部品により高密度化される電子制御装置では、小型化された部品内での短絡故障時に生じる短絡電流が大電流に至らないために、電子制御装置に関する故障に対応して設けられるヒューズでの遮断までに長時間を要することとなり、特にヒューズ設置数を削減してコスト低減を目的とした複数の電子制御装置を保護する大型ヒューズでは遮断に更に長時間を要することとなる。このため、遮断時に部品の高温度化や電源配線等での長時間の電圧低下などの問題が生じる。一方、電子制御の高度化や多機能化に伴い搭載される多くの回路や部品に共用されて作動に必要な電源を供給する電源配線(例えばバッテリ経路とアース経路)等の共用配線には、通常装置作動時でも比較的大きな電流が流れることとなる。このため、共用配線経路に設けられる大型ヒューズの遮断電流は更に大きくなる傾向から、個々の回路や部品の短絡故障で十分な遮断性能が確保出来ないことが懸念される。例えば、車両用の電子制御装置の様に、環境温度が高いだけでなく搭載装置が多い装置では、上述した問題が顕著となる。
【0003】
このため、下記特許文献1に開示されるプリント基板制御装置の様に、各基板上での電源配線経路に遮断配線を設けて、過電流が流れた時に遮断配線を溶断することで、短絡故障時には基板毎または装置毎に電源配線経路を遮断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−311467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、高密度化された基板面では、電子部品が実装されて接続されるランドなどの部品搭載配線とこの電子部品を含めた複数の電子部品により共用される共用配線とが近接するように配置される。このため、遮断配線にて溶断時に発生した熱が共用配線を介して当該共用配線に接続される他の電子部品に伝わり悪影響を及ぼすという問題がある。ここで、熱による悪影響としては、例えば、共用配線と電子部品とを電気的に接続するはんだが上述のように伝わる熱により溶融する場合が想定される。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、高密度化された基板面に設けられる遮断配線にて生じた熱による他の電子部品への影響を抑制し得る電子制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の電子制御装置では、基板上にて複数の電子部品がそれぞれ実装されて接続される部品搭載配線と前記複数の電子部品により共用される共用配線とを接続する配線間に、少なくとも1つの過電流保護用の遮断配線が設けられる電子制御装置であって、前記遮断配線は、過電流による発熱に応じて溶断することで当該遮断配線を介した接続を遮断する配線であって、前記共用配線には、前記遮断配線に接続される電子部品を除く他の複数の電子部品よりも当該遮断配線に対して配線距離が短くなる位置に当該共用配線と同一材料からなる放熱部が形成されることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電子制御装置において、前記放熱部は、前記基板上にて前記共用配線に隣接して形成される放熱配線から構成されることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載の電子制御装置において、前記放熱部は、前記基板に設けられる層間接続部の内部に形成される放熱用部材から構成されることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載の電子制御装置において、前記放熱部は、前記基板に設けられる複数の層間接続部の内部にそれぞれ形成される複数の放熱用部材から構成されることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項3または4に記載の電子制御装置において、前記層間接続部の内部に形成される放熱用部材は、前記共用配線が設けられる基板面に対して反対側の面または基板内部に設けられる放熱用部材に接触するように形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記遮断配線は、前記複数の電子部品に応じて複数設けられ、前記各遮断配線に接続される前記各電子部品を除く他の複数の電子部品よりも当該各遮断配線に対して配線距離が短くなる位置にそれぞれ前記放熱部が形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記遮断配線は、前記複数の電子部品に応じて複数設けられ、前記放熱部は、これら複数の遮断配線に接続される前記複数の電子部品を除く他の電子部品よりも当該複数の遮断配線に対して配線距離が短くなる位置に形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記遮断配線は、第1配線部とこの第1配線よりも配線長が短い第2配線部とが所定の角度で接続されて形成され、前記所定の角度は、前記第1配線部および前記第2配線部のうち一方が前記共用配線に接続され他方が前記部品搭載配線に接続されるように設定されることを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記基板には、前記遮断配線を含めた基板面を被覆する保護層が設けられており、前記保護層には、前記遮断配線の少なくとも一部を露出させる開口が形成されることを特徴とする。
【0016】
請求項10の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記遮断配線の近傍には、前記遮断配線の溶断に伴い生成された溶融導体を付着させる付着手段が設けられることを特徴とする。
【0017】
請求項11の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記遮断配線は、接続配線を介して前記部品搭載配線および前記共用配線の少なくともいずれかに接続されており、前記接続配線は、その側縁が前記遮断配線の側縁となだらかに連続しており前記接続対象に向かうにつれて徐々に広がるように、形成されることを特徴とする。
【0018】
請求項12の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記共用配線は、電源配線であることを特徴とする。
【0019】
請求項13の発明は、請求項12に記載の電子制御装置において、前記電源配線は、当該電子制御装置と異なる他の装置にも電力を供給する電源に接続されており、当該電子制御装置および前記他の装置を保護するための共通のヒューズが、前記電源からの電源経路上に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明では、共用配線には、遮断配線に接続される電子部品を除く他の複数の電子部品よりも当該遮断配線に対して配線距離が短くなる位置に当該共用配線と同一材料からなる放熱部が形成される。このため、過電流により遮断配線にて発生した熱が共用配線に伝わると、この熱は、近接する放熱部に伝わり放熱されて、当該共用配線に接続される他の電子部品に伝わりにくくなる。
したがって、高密度化された基板面に設けられる遮断配線にて生じた熱による他の電子部品への影響を抑制することができる。
【0021】
請求項2の発明では、放熱部は、基板上にて共用配線に隣接して形成される放熱配線から構成されるため、放熱機能を有する放熱領域を容易に形成することができる。
【0022】
請求項3の発明では、放熱部は、基板に設けられる層間接続部の内部に形成される放熱用部材から構成されるため、高密度化される基板面であっても、放熱領域を広く確保することができる。
【0023】
請求項4の発明では、放熱部は、基板に設けられる複数の層間接続部の内部にそれぞれ形成される複数の放熱用部材から構成されるため、高密度化される基板面であっても、放熱領域を確実に広く確保することができる。
【0024】
請求項5の発明では、層間接続部の内部に形成される放熱用部材は、共用配線が設けられる基板面に対して反対側の面または基板内部に設けられる放熱用部材に接触するように形成されるため、放熱領域をさらに広く確保することができる。
【0025】
請求項6の発明では、遮断配線は、複数の電子部品に応じて複数設けられ、各遮断配線に接続される各電子部品を除く他の複数の電子部品よりも当該各遮断配線に対して配線距離が短くなる位置にそれぞれ放熱部が形成される。これにより、複数の遮断配線が設けられる場合であっても、各遮断配線にて生じた熱による他の電子部品への影響を抑制することができる。
【0026】
請求項7の発明では、遮断配線は、複数の電子部品に応じて複数設けられ、放熱部は、これら複数の遮断配線に接続される複数の電子部品を除く他の電子部品よりも当該複数の遮断配線に対して配線距離が短くなる位置に形成される。このため、1つの放熱部により、各遮断配線にて生じた熱による他の電子部品への影響が抑制できる。これにより、遮断配線が複数設けられる場合であっても放熱部による放熱領域を遮断配線の数だけ確保する必要が無いので、限られたスペースを有効に活用して、各遮断配線にて生じた熱による他の電子部品への影響を抑制することができる。
【0027】
請求項8の発明では、遮断配線は、第1配線部とこの第1配線よりも配線長が短い第2配線部とが所定の角度で接続されて形成され、この所定の角度は、第1配線部および第2配線部のうち一方が共用配線に接続され他方が部品搭載配線に接続されるように設定される。このため、遮断配線が直線状に形成される場合と比較して、近接する共用配線と部品搭載配線とを接続しつつその配線長を長くすることができる。これにより、限られた実装領域であっても必要な遮断配線の配線長を確保しやすくなるので、遮断配線にて生じた熱による他の電子部品への影響を抑制するとともに、装置の小型化を図ることができる。
【0028】
請求項9の発明では、基板の表面を被覆する保護層には、遮断配線の少なくとも一部を露出させる開口が形成される。このため、過電流による発熱に応じて遮断配線が溶断すると、この溶断により生成された溶融導体が開口から流れ出ることとなる。これにより、溶融導体が溶断前の遮断配線の位置に滞留しにくくなるので、溶融導体の滞留に起因する溶断位置や溶断時間のばらつきが抑制するとともに、遮断配線にて生じた熱による他の電子部品への影響を抑制することができる。
【0029】
請求項10の発明では、遮断配線の溶断時に高温の溶融導体が生成されると、この溶融導体は、基板の表面を流動する際に、当該遮断配線に近接して設けられた付着手段に付着する。これにより、溶融導体は、付着手段に付着した状態で保持され、放熱とともに硬化することによって流動性を失う。したがって、遮断配線による遮断性能の低下(溶断時間および遮断電流のばらつきや増大)を抑制するとともに、溶融導体の流動による他の電子部品等への影響を抑制することができる。
【0030】
請求項11の発明では、遮断配線は、接続配線を介して部品搭載配線および共用配線の少なくともいずれかに接続されており、この接続配線は、その側縁が遮断配線の側縁となだらかに連続しており接続対象に向かうにつれて徐々に広がるように、形成される。
【0031】
このように、遮断配線および接続配線の側縁がなだらかに連続するため、これら両配線をエッチング液を用いて形成する場合には、遮断配線の側縁と接続配線の側縁との接続部位でエッチング液が均一に流れやすくなる。これにより、上記接続部位でのエッチング液の滞留が抑制されて遮断配線の配線幅のばらつきが抑えられるので、基板面に設けられる遮断配線による遮断性能の低下を抑制することができる。
【0032】
請求項12の発明では、共用配線は、電源配線であるため、大電流が流れるために比較的配線幅が広く形成される電源配線と部品搭載配線との間に上記遮断配線が設けられる場合であっても、この遮断配線にて生じた熱による他の電子部品への影響を抑制することができる。
【0033】
請求項13の発明では、電源配線は、当該電子制御装置と異なる他の装置にも電力を供給する電源に接続されており、当該電子制御装置および他の装置を保護するための共通のヒューズが、電源からの電源経路上に設けられる。これにより、遮断配線を設けた電子制御装置が短絡故障等する場合であっても、その遮断配線が溶断することで、他の装置への電源供給に関する影響をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態に係るトラクションコントロール装置を備える車両制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1のトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図3】図2のA−A線相当の切断面による断面図である。
【図4】第1実施形態の第1変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図5】第1実施形態の第2変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図6】第1実施形態の第3変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図7】第2実施形態に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図8】図7のB−B線相当の切断面による断面図である。
【図9】第2実施形態の変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図10】図9のC−C線相当の切断面による断面図である。
【図11】第3実施形態に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図12】第4実施形態に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図13】検証用遮断配線および検証用開口の詳細形状を説明するための説明図である。
【図14】検証用開口の有無について遮断電流値および溶断時間の関係を示すグラフである。
【図15】第4実施形態の第1変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図16】第5実施形態に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図17】第6実施形態に係る電子制御装置の要部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る電子制御装置について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係るトラクションコントロール装置20を備える車両制御システム11の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、車両制御システム11は、自動車10に車載される各種機器を制御するエンジンECUやブレーキECU,ステアリングECUをはじめボディECUやナビゲーション装置などの複数の電子制御装置12を備えて構成されている。
【0036】
また、車両制御システム11には、上記複数の電子制御装置12に加えて、本第1実施形態に係る電子制御装置が適用されたトラクションコントロール装置20が設けられている。このトラクションコントロール装置20は、駆動輪の加速スリップを防止する加速スリップ防止機能を有する装置で、走行制御等の主要な車両制御に関して他の電子制御装置よりも比較的重要性が低い装置である。
【0037】
トラクションコントロール装置20を含めた複数の電子制御装置12は、過電流保護用として採用されるヒューズ14aおよびヒューズ14bのいずれかを介して直流電源(以下、バッテリ13という)に電気的に接続されている。ヒューズ14aおよびヒューズ14bとしては、多くの電子制御装置等に対して作動に必要な電力を供給する経路に設けられるために、例えば15A用や20A用の大型のヒューズが採用されている。これにより、例えば、ヒューズ14aに接続される各種電子制御装置12のうちのいずれかに不具合が生じ所定の電流値を超える過電流が発生すると、この過電流によりヒューズ14aが溶断し、当該ヒューズ14aを介した電力供給が遮断されて、他の電子制御装置12への悪影響が防止される。なお、本実施形態では、各電子制御装置12は、2つの大型ヒューズ14aおよびヒューズ14bのいずれかを介してバッテリ13にそれぞれ電気的に接続されているが、これに限らず、単一の大型ヒューズを介してバッテリ13にそれぞれ電気的に接続されてもよいし、3つ以上のヒューズのいずれかを介してバッテリ13にそれぞれ電気的に接続されてもよい。
【0038】
次に、本第1実施形態に係るトラクションコントロール装置20の構成について、図2および図3を用いて説明する。図2は、図1のトラクションコントロール装置20の要部を示す説明図である。図3は、図2のA−A線相当の切断面による断面図である。
トラクションコントロール装置20は、上述した加速スリップ防止機能を実現するための複数の電子部品22を高密度化して実装した回路基板21が図略のケースに収容されて構成されている。この回路基板21は、図略のコネクタ等を介して外部の機器や他の電子制御装置12と電気的に接続されており、外部から入力される所定の信号に応じて駆動輪の加速スリップを防止するための制御を実行する。
【0039】
図2に示すように、回路基板21には、バッテリ13からの電力を供給する電源配線23が、各電子部品22に対してそれぞれ電気的に接続されている。このため、電源配線23は、各電子部品22により共用される共用配線として機能する。
【0040】
図2および図3に示すように、回路基板21には、複数の電子部品22の1つとして、セラミックコンデンサ24が実装されている。このセラミックコンデンサ24は、温度特性や周波数特性を向上させ小型で大容量を実現するため、例えば、チタン酸バリウム系の高誘電率セラミック誘電体24bと内部電極24cとを層状に積み重ねて一体化して構成されている。
【0041】
セラミックコンデンサ24の外部電極24aがはんだ25を介して接続されるランド26と電源配線23との間には、遮断配線30が配置されている。この遮断配線30は、過電流による発熱に応じて溶断することで過電流保護機能を発揮して当該遮断配線30を介した電気的接続を遮断する配線である。これにより、その基板に応じた過電流保護を実現することができる。
【0042】
ここで、遮断配線30は、その配線幅(基板面上で電流の方向に直交する配線の幅)が電源配線23の配線幅に対して十分に小さくなるように設定されている。具体的には、例えば、遮断配線30の配線幅が0.2〜0.3mm程度に設定され、電源配線23の配線幅が2mm程度に設定されている。なお、ランド26は、特許請求の範囲に記載の「部品搭載配線」の一例に相当し得る。また、基板面には、ソルダレジスト28がランド26等の一部を除き保護層として設けられている。
【0043】
また、図2に示すように、電源配線23には、遮断配線30に接続される電子部品22(本実施形態ではセラミックコンデンサ24)を除く他の複数の電子部品22よりも当該遮断配線30に対して配線距離が短くなる位置に当該電源配線23と同一材料から配線状に形成される放熱配線40が接続されている。この放熱配線40は、電源配線23を介して伝わる熱を放熱するために、その放熱面積を大きくするように形成されている。
【0044】
このように構成されるトラクションコントロール装置20では、例えば、セラミックコンデンサ24が損傷等して短絡し過電流が遮断配線30を流れると、この遮断配線30がその過電流に応じて発熱する。そして、この発熱が所定の温度以上になると、遮断配線30が溶断し、当該遮断配線30を介した電気的接続が遮断される。これにより、電源配線23に接続される他の電子部品22が上記過電流から保護される。また、上記遮断時の電流はヒューズ14aを遮断するほど大きくならないので、当該ヒューズ14aを介して電力供給される他の電子制御装置12に対して、トラクションコントロール装置20の損傷が影響することもない。さらに、過電流の発生から遮断配線30の溶断までの時間は、数mS(ミリ秒)程度であり、上述した大型ヒューズ14a,14b等の溶断時間は通常0.02S(秒)程度であることから、処理速度の向上が図られる電子制御装置や電子部品であっても好適に過電流保護を実施することができる。
【0045】
特に、本実施形態では、過電流により遮断配線30にて発生した熱が電源配線23に伝わると、この熱は、近接する放熱配線40に伝わり放熱されて、当該電源配線23に接続される他の電子部品22に伝わりにくくなる。
したがって、高密度化された基板面に設けられる遮断配線30にて生じた熱による他の電子部品22への影響を抑制することができる。
【0046】
また、電源配線23は、トラクションコントロール装置20と異なる他の電子制御装置12にも電力を供給するバッテリ13から電線を介して各々のコネクタに接続されており、当該トラクションコントロール装置20および他の電子制御装置12を過電流保護するための共通のヒューズ14aが、バッテリ13からの電源経路上に設けられている。これにより、遮断配線30を設けたトラクションコントロール装置20が短絡故障等する場合であっても、その遮断配線30が溶断することで、他の電子制御装置12への電源供給に関する影響をなくすことができる。
【0047】
図4は、第1実施形態の第1変形例に係るトラクションコントロール装置20の要部を示す説明図である。図5は、第1実施形態の第2変形例に係るトラクションコントロール装置20の要部を示す説明図である。図6は、第1実施形態の第3変形例に係るトラクションコントロール装置20の要部を示す説明図である。
図4に示すように、第1実施形態の第1変形例として、遮断配線30を複数の電子部品(本変形例ではセラミックコンデンサ24)に応じて複数設け、各遮断配線30に接続される電子部品22を除く他の複数の電子部品22よりも各遮断配線30に対して配線距離が短くなる位置に放熱配線40をそれぞれ形成してもよい。これにより、複数の遮断配線30が設けられる場合であっても、各遮断配線30にて生じた熱による他の電子部品22への影響を抑制することができる。
【0048】
また、図5に示すように、第1実施形態の第2変形例として、遮断配線30が2つの電子部品(本変形例ではセラミックコンデンサ24)に応じて2つ設けられる場合に、放熱配線40は、これら両遮断配線30に接続される電子部品22を除く他の複数の電子部品22よりもこれら両遮断配線30に対して配線距離が短くなる位置に1つ形成されてもよい。
【0049】
このようにしても、1つの放熱配線40により、両遮断配線30のいずれかにて生じた熱による他の電子部品22への影響が抑制できる。特に、遮断配線30が2つ設けられる場合であっても放熱配線40による放熱領域を遮断配線30の数だけ確保する必要が無いので、限られたスペースを有効に活用して、各遮断配線30にて生じた熱による他の電子部品22への影響を抑制することができる。なお、本変形例では、2つの遮断配線30が設けられる場合について説明したが、これに限らず、遮断配線30が3つ以上の電子部品22に応じて同数設けられる場合に、放熱配線40は、これら複数の遮断配線30に接続される電子部品22を除く他の複数の電子部品22よりもこれら複数の遮断配線30に対して配線距離が短くなる位置に1つ形成されることで共用されてもよい。
【0050】
また、図6に示すように、第1実施形態の第3変形例として、複数の外部電極を有するアレイ状のセラミックコンデンサ24dを採用し、このセラミックコンデンサ24dと電源配線23との各接続間に遮断配線30a〜30dをそれぞれ設けてもよい。このセラミックコンデンサ24dは、4つの積層セラミックコンデンサをコンデンサアレイとしてパッケージ化したものである。本変形例では、各遮断配線30a〜30dは、セラミックコンデンサ24dの各外部電極が接続されるランド26a〜26dと、電源配線23との間にそれぞれ設けられている。
【0051】
そして、放熱配線40aが遮断配線30aおよび遮断配線30bに対して他の電子部品22よりも配線距離が短くなる位置に形成され、放熱配線40bが遮断配線30cおよび遮断配線30dに対して他の電子部品22よりも配線距離が短くなる位置に形成される。このようにしても、1つの放熱配線40aにより、両遮断配線30a,30bのいずれかにて生じた熱による他の電子部品22への影響が抑制でき、1つの放熱配線40bにより、両遮断配線30c,30dのいずれかにて生じた熱による他の電子部品22への影響が抑制できる。
【0052】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るトラクションコントロール装置について図7および図8を用いて説明する。図7は、第2実施形態に係るトラクションコントロール装置20aの要部を示す説明図である。図8は、図7のB−B線相当の切断面による断面図である。
【0053】
本第2実施形態では、トラクションコントロール装置20aにおいて、遮断配線30から伝わる熱を放熱する放熱部として、放熱配線40に代えて層間接続部23aおよび、その内部に形成される放熱用部材42を採用する点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
図7および図8に示すように、回路基板21には、電源配線23に対してスルーホール(層間接続部)23aが1つ形成されており、このスルーホール23a内には、電源配線23と同一材料からなる放熱用部材42が形成されている。この放熱用部材42は、電源配線23が設けられる基板面に対して反対側の基板面または基板内部にも設けられ、スルーホール23aを介して接触されるように形成されている。
【0055】
これにより、高密度化される基板面であっても、放熱用部材42により、放熱領域を広く確保することができる。なお、本実施形態および第3実施形態における、スルーホール23aは回路基板の基板面と内層との層間の配線を接続する接続手段の一例であり、接続手段はこれだけに特定されない。
【0056】
図9は、第2実施形態の変形例に係るトラクションコントロール装置20aの要部を示す説明図である。図10は、図9のC−C線相当の切断面による断面図である。
第2実施形態の変形例として、遮断配線30から伝わる熱を放熱する放熱部として、複数のスルーホール23aの内部に放熱用部材42を設けてもよい。具体的には、図9および図10に示すように、電源配線23に対してスルーホール23aが2つ形成されており、これら両スルーホール23a内には、電源配線23と同一材料からなる放熱用部材42がそれぞれ形成されている。これら両放熱用部材42は、電源配線23が設けられる基板面に対して反対側の裏面または基板内部に設けられ、層間接続部23aを介してそれぞれ接触されるように形成されている。
【0057】
これにより、高密度化される基板面であっても、放熱用部材42により放熱領域を確実に広く確保することができる。なお、図9および図10では、電源配線23に対して形成される2つのスルーホール23a内の放熱用部材42を放熱部として利用しているが、これに限らず、電源配線23に対して複数のスルーホールを形成し、このスルーホール内に放熱用部材42をそれぞれ設けてもよい。その際、各放熱用部材は、裏面や基板内部に設けられ、スルーホールを介して接触するように形成されることで、放熱領域をさらに広くしてもよい。なお、上述したスルーホール23aおよび放熱用部材42の構成は、他の実施形態や変形例に採用されてもよい。
【0058】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係るトラクションコントロール装置について図11を用いて説明する。図11は、第3実施形態に係るトラクションコントロール装置20bの要部を示す説明図である。
本第3実施形態では、遮断配線30に代えて遮断配線30eを採用し、高密度化を図るため、セラミックコンデンサ24の両外部電極24aがそれぞれ接続されるランド26間に電源配線23が配置される点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
図11に示すように、遮断配線30eは、第1配線部31とこの第1配線部31よりも配線長が短い第2配線部32とが所定の角度で接続されて形成されている。この所定の角度は、第1配線部31が電源配線23に接続され、第2配線部32がランド26に接続されるように、例えば90°に設定される。放熱配線40は、電源配線23と同一材料からなり、遮断配線30eに接続される電子部品22を除く他の複数の電子部品22よりも当該遮断配線30eに対して配線距離が短くなる位置にて電源配線23に接続するように配線状に形成されている。
【0060】
このように遮断配線30eを曲げて形成することで、遮断配線が直線状に形成される場合と比較して、近接する電源配線23とランド26とを接続しつつその配線長を長くすることができる。これにより、限られた実装領域であっても必要な遮断配線30eの配線長を確保しやすくなるので、遮断配線30eにて生じた熱による他の電子部品22への影響を抑制するとともに、装置の小型化を図ることができる。
【0061】
なお、本実施形態では、第1配線部31が電源配線23に接続され、第2配線部32がランド26に接続されているが、これに限らず、第1配線部31がランド26に接続され、第2配線部32が電源配線23に接続されてもよい。また、上記所定の角度は、近接する電源配線23とランド26との位置に応じて設定されてもよい。また、放熱配線40に代えて、上述したスルーホール23aの内部に形成される放熱用部材42を設けてもよい。また、上述した第1配線部31と第2配線部32とが所定の角度で接続される遮断配線30eの構成は、他の実施形態および変形例に採用されてもよい。
【0062】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係るトラクションコントロール装置について図12を用いて説明する。図12は、第4実施形態に係るトラクションコントロール装置20cの要部を示す説明図である。なお、図12では、便宜上、開口28aを除き基板面を保護するソルダレジスト28の図示を省略している。
本第4実施形態では、基板面を保護するためのソルダレジスト28に、遮断配線30の少なくとも一部を露出させる開口28aが形成される点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0063】
図12からわかるように、ソルダレジスト28には、遮断配線30のうち最も発熱する部位であるその全長の中央近傍部位を外方に露出させるための開口28aが形成されている。
ここで、開口28aを形成する理由について、図13および図14を用いて説明する。図13は、検証用遮断配線101および検証用開口102の詳細形状を説明するための説明図である。図14は、検証用開口102の有無について遮断電流値Iおよび溶断時間tの関係を示すグラフである。
【0064】
図13に示す寸法の検証用開口102により一部が露出する検証用遮断配線101に対して所定の電流を流し、この検証用遮断配線101が溶断するときの遮断電流値Iと当該検証用遮断配線101が溶断するまでの溶断時間tとを測定する。また、検証用開口102が形成されない検証用遮断配線101に対して所定の電流を流したときの遮断電流値Iおよび溶断時間tを測定する。ここで、検証用遮断配線101は、その全体長さL1が2.85mmに設定され、その幅W1が0.25mmに設定される。また、検証用開口102は、L1に平行な開口長L2が0.6mmに設定され、その開口幅W2が0.25mmに設定される。なお、図13では、説明の便宜上、開口幅W2が幅W1よりも長くなるように図示されている。
【0065】
上述のように測定された遮断電流値Iおよび溶断時間tの関係を図14のグラフに示す。ここで、図14に示す太実線S1は、検証用開口102により一部が露出する検証用遮断配線101における遮断電流値Iと溶断時間tとの関係を示し、太実線S1を中心に太破線にて囲まれる範囲は、その遮断電流値Iにおける溶断時間tのばらつきの範囲を示す。また、図14に示す細実線S2は、検証用開口102が形成されない検証用遮断配線101における遮断電流値Iと溶断時間tとの関係を示し、細実線S2を中心に細破線にて囲まれる範囲は、その遮断電流値Iにおける溶断時間tのばらつきの範囲を示す。
【0066】
図14からわかるように、同じ遮断電流値では、検証用開口102を形成することで、溶断時間tが短くなっている。さらに、同じ遮断電流値では、溶断時間tのばらつきが小さくなっている。一方、検証用開口102が形成されない検証用遮断配線101では、検証用開口102が形成される場合と比較して、各過大電流域で溶断時間tが長くなり、かつ、溶断時間tのばらつきが生じている。これは、検証用遮断配線101が溶断することで生成された溶融導体が、検証用開口102から流れ出て、溶断前の検証用遮断配線101の位置に滞留しにくくなるからである。
【0067】
このようなことから、開口28aにより遮断配線30の少なくとも一部を露出させることで、溶断時間tが短くなり保護作用が早期に得られ、保護対象となる部品の温度上昇を抑制することができる。さらに、遮断配線30の遮断時における電源配線23への電圧低下の影響時間を大きく短縮することができる。また、溶断時間tのばらつきが小さくなることで、各装置や回路で遮断配線30の溶断時間を考慮した安定化コンデンサなど(電源安定化手段)について容量のより小さなものを採用することができ、低コスト化や小型化を図ることができる。さらに電流の定格領域でも溶断時間tを小さくできるので、回路設計における自由度を向上させることができる。
【0068】
このため、過電流による発熱に応じて遮断配線30が溶断すると、この溶断により生成された溶融導体が開口28aから流れ出ることとなる。これにより、溶融導体が溶断前の遮断配線30の位置に滞留しにくくなるので、溶融導体の滞留に起因する溶断位置や溶断時間のばらつきが抑制される。その結果、遮断配線30にて生じた熱による他の電子部品22への影響を抑制するとともに、遮断配線30による遮断性能の低下を抑制することができる。
【0069】
なお、本実施形態では、開口28aは、遮断配線30が溶断しやすい中央近傍部位に形成されているが、これに限らず、例えば、遮断配線30の他の一部を露出させるように形成されてもよいし、遮断配線30の上面全てを露出させるように形成されてもよい。また、遮断配線30の少なくとも一部を露出させる開口28aの構成は、他の実施形態および変形例に採用されてもよい。
【0070】
図15は、第4実施形態の第1変形例に係るトラクションコントロール装置20cの要部を示す説明図である。
図15に示すように、第4実施形態の第1変形例として、遮断配線30の近傍には、当該遮断配線30の溶断に伴い生成された溶融導体を付着(吸着)させる付着手段(吸着手段)として例えば電源配線23等と同じ配線材料にて形成される付着用配線29が、例えば一対設けられてもよい。これにより、遮断配線30の溶断時に高温の溶融導体が生成されると、この溶融導体は、回路基板21の表面を流動する際に、当該遮断配線30に近接して設けられた付着用配線29に付着する。
【0071】
これにより、溶融導体は、付着用配線29に付着した状態で保持され、放熱とともに硬化することによって流動性を失う。したがって、遮断配線30による遮断性能の低下を抑制するとともに、溶融導体の流動による他の電子部品等への影響を抑制することができる。なお、付着用配線29は、開口28aが設けられる遮断配線30に対して形成されることに限らず、開口28aが設けられない遮断配線30に対して形成されても同様の作用効果を奏する。
【0072】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係るトラクションコントロール装置について図16を用いて説明する。図16は、第5実施形態に係るトラクションコントロール装置20dの要部を示す説明図である。
【0073】
本第5実施形態では、遮断配線30が接続配線50を介してランド26に接続される点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0074】
図16に示すように、遮断配線30は、その一端にて接続配線50を介してランド26に電気的に接続されている。
【0075】
接続配線50は、その配線幅がランド26側ほど広くなるように略円弧状(R状)に形成されることで、遮断配線30との接続部位での断面積が接続対象であるランド26との接続部位での断面積よりも小さくなるように構成されている。このため、接続配線50は、その側縁が遮断配線30の側縁となだらかに連続しておりランド26に向かうにつれて徐々に広がることとなる。
【0076】
このため、過電流により遮断配線30に生じた熱が接続配線50を介してランド26に伝わる場合には、直接ランド26に伝わる場合と比較して、当該ランド26への遮断配線が溶断するために必要な熱が過渡に吸い出されてしまうことを抑制する。これにより、遮断配線30における温度上昇のばらつきが抑制されるので、高密度化された基板面に設けられる遮断配線30による遮断性能の低下を抑制することができる。特に、過電流により遮断配線30に生じた熱は、接続配線50内では徐々に拡散してランド26に広く伝わるため、当該ランド26における局所的な温度上昇も緩和される。これにより、ランド26に比較的融点の低いはんだを用いる場合であっても、遮断配線30からの熱によるはんだの溶融を抑制することができる。一方、定常状態(過電流状態とならない)において遮断配線を流れる電流による発熱についても接続配線を介して熱拡散することが可能となり、定常状態での遮断配線温度を適切に制御できるため長期的な信頼性を向上することが可能である。
【0077】
また、遮断配線30および接続配線50の側縁がなだらかに連続するため、これら各配線30,50をエッチング液を用いて形成する場合には、遮断配線30の側縁と接続配線50の側縁との接続部位でエッチング液が均一に流れやすくなる。これにより、上記接続部位でのエッチング液の滞留が抑制されて遮断配線30の配線幅のばらつきが抑えられるので、基板面に設けられる遮断配線30による遮断性能の低下を抑制することができる。
【0078】
なお、上述した接続配線50は、遮断配線30と電源配線23との間に配置されてもよい。また、接続配線50の構成は、他の実施形態や変形例に採用されてもよい。
【0079】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態に係る電子制御装置について図17を用いて説明する。図17は、第6実施形態に係る電子制御装置110の要部を示す説明図である。
本第6実施形態に係る電子制御装置110では、同一の基板120上に、上記第1実施形態に係るトラクションコントロール装置20の機能を回路ブロック化した回路ブロック130と、さらに他の機能を回路ブロック化した回路ブロック140,150とを配置して構成されている。なお、他の機能としては、回路ブロック130の機能よりも重要性が高い機能であって、例えば、エンジンECUに対応する機能やブレーキECUに対応する機能であり、回路ブロック140は、エンジンECUに対応する機能を回路ブロック化して構成され、回路ブロック150は、ブレーキECUに対応する機能を回路ブロック化して構成されている。
【0080】
図17に示すように、各回路ブロック130,140,150には、コネクタ121を介してバッテリ13からの電力を供給する電源配線23が、それぞれ分岐配線131,141,151を介して電気的に接続されている。そして、上述した遮断配線30が回路ブロック130の分岐配線131上に当該回路ブロック130に対して過電流保護として機能するように配置されている。そして、電源配線23上に、当該基板120に対して過電流保護として機能する遮断配線122が設けられている。すなわち、基板120上には、全ての回路ブロック130〜150を含めた基板120を保護する遮断配線122と、回路ブロック130を保護する遮断配線30との2つの遮断配線が設けられている。
【0081】
これにより、遮断配線30が設けられる回路ブロック130において短絡故障等により過電流が生じることから当該遮断配線30が溶断する場合でも、他の回路ブロック140,150では、分岐配線141,151を介した電源配線23との接続が維持されるので、溶断した遮断配線30を有する回路ブロック130のみ機能を停止して、他の回路ブロック140,150での機能を継続することができる。特に、回路ブロック130の機能は、他の回路ブロック140,150よりも重要性が低いので、重要性が低い回路ブロック130の機能停止が、重要性が高い回路ブロック140,150の機能に影響を及ぼすことを抑制することができる。また、遮断配線30が設けられない回路ブロック140,150において短絡故障等により過電流が生じる場合でも、その過電流が電源配線23を流れることで遮断配線122が溶断して各回路ブロック130,140,150での機能が停止するので、発生した過電流が他の回路ブロックへ流れることを抑制することができる。
【0082】
特に、遮断配線30を、遮断配線122に対して遮断時の電流値が小さくなるようにその配線幅を小さく形成することで、遮断配線30が設けられる回路ブロック130において短絡故障等により過電流が生じる場合には、遮断配線30が遮断配線122よりも確実に早く溶断する。これにより、他の回路ブロック140,150への影響を確実に抑制することができる。
なお、本実施形態における1つの基板上に2つの遮断配線を設ける構成は、他の実施形態や変形例に採用されてもよい。
【0083】
なお、本発明は上記各実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)上述した放熱部(放熱配線40,層間接続部23a)が近接して配置される遮断配線30や他の遮断配線は、電源配線23に代えて、過電流保護の対象である各電子部品22にて共用される共用配線に電気的に接続されてもよい。
【0084】
(2)上述した放熱部(放熱配線40,層間接続部23a)が近接して配置される遮断配線30や他の遮断配線は、ランド26に電気的に接続されることに限らず、例えば、ソルダレジスト等の保護膜により保護されて露出しない内層側の配線など、電子部品を搭載するための部品搭載配線に電気的に接続されてもよい。
【0085】
(3)上述した放熱部(放熱配線40,層間接続部23a)が近接して配置される遮断配線30や他の遮断配線は、上述したエンジンECUやブレーキECU,ステアリングECUをはじめボディECUやナビゲーション装置などの複数の電子制御装置12の過電流保護用として基板ごとに採用されてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10…自動車
11…車両制御システム
12…電子制御装置
13…バッテリ
14a,14b…ヒューズ
20,20a〜20c…トラクションコントロール装置(電子制御装置)
21…回路基板
22…電子部品
23…電源配線
23a…スルーホール(層間接続部)
24,24a〜24d…セラミックコンデンサ(電子部品)
25…はんだ
26…ランド(部品搭載配線)
28…ソルダレジスト(保護層)
28a…開口
29…付着用配線
30,30a〜30e…遮断配線
40…放熱配線(放熱部)
42…放熱用部材
50…接続配線
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に過電流保護用の遮断配線が設けられる電子制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、小型部品により高密度化される電子制御装置では、小型化された部品内での短絡故障時に生じる短絡電流が大電流に至らないために、電子制御装置に関する故障に対応して設けられるヒューズでの遮断までに長時間を要することとなり、特にヒューズ設置数を削減してコスト低減を目的とした複数の電子制御装置を保護する大型ヒューズでは遮断に更に長時間を要することとなる。このため、遮断時に部品の高温度化や電源配線等での長時間の電圧低下などの問題が生じる。一方、電子制御の高度化や多機能化に伴い搭載される多くの回路や部品に共用されて作動に必要な電源を供給する電源配線(例えばバッテリ経路とアース経路)等の共用配線には、通常装置作動時でも比較的大きな電流が流れることとなる。このため、共用配線経路に設けられる大型ヒューズの遮断電流は更に大きくなる傾向から、個々の回路や部品の短絡故障で十分な遮断性能が確保出来ないことが懸念される。例えば、車両用の電子制御装置の様に、環境温度が高いだけでなく搭載装置が多い装置では、上述した問題が顕著となる。
【0003】
このため、下記特許文献1に開示されるプリント基板制御装置の様に、各基板上での電源配線経路に遮断配線を設けて、過電流が流れた時に遮断配線を溶断することで、短絡故障時には基板毎または装置毎に電源配線経路を遮断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−311467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、高密度化された基板面では、電子部品が実装されて接続されるランドなどの部品搭載配線とこの電子部品を含めた複数の電子部品により共用される共用配線とが近接するように配置される。このため、遮断配線にて溶断時に発生した熱が共用配線を介して当該共用配線に接続される他の電子部品に伝わり悪影響を及ぼすという問題がある。ここで、熱による悪影響としては、例えば、共用配線と電子部品とを電気的に接続するはんだが上述のように伝わる熱により溶融する場合が想定される。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、高密度化された基板面に設けられる遮断配線にて生じた熱による他の電子部品への影響を抑制し得る電子制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の電子制御装置では、基板上にて複数の電子部品がそれぞれ実装されて接続される部品搭載配線と前記複数の電子部品により共用される共用配線とを接続する配線間に、少なくとも1つの過電流保護用の遮断配線が設けられる電子制御装置であって、前記遮断配線は、過電流による発熱に応じて溶断することで当該遮断配線を介した接続を遮断する配線であって、前記共用配線には、前記遮断配線に接続される電子部品を除く他の複数の電子部品よりも当該遮断配線に対して配線距離が短くなる位置に当該共用配線と同一材料からなる放熱部が形成されることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電子制御装置において、前記放熱部は、前記基板上にて前記共用配線に隣接して形成される放熱配線から構成されることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載の電子制御装置において、前記放熱部は、前記基板に設けられる層間接続部の内部に形成される放熱用部材から構成されることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載の電子制御装置において、前記放熱部は、前記基板に設けられる複数の層間接続部の内部にそれぞれ形成される複数の放熱用部材から構成されることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項3または4に記載の電子制御装置において、前記層間接続部の内部に形成される放熱用部材は、前記共用配線が設けられる基板面に対して反対側の面または基板内部に設けられる放熱用部材に接触するように形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記遮断配線は、前記複数の電子部品に応じて複数設けられ、前記各遮断配線に接続される前記各電子部品を除く他の複数の電子部品よりも当該各遮断配線に対して配線距離が短くなる位置にそれぞれ前記放熱部が形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記遮断配線は、前記複数の電子部品に応じて複数設けられ、前記放熱部は、これら複数の遮断配線に接続される前記複数の電子部品を除く他の電子部品よりも当該複数の遮断配線に対して配線距離が短くなる位置に形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記遮断配線は、第1配線部とこの第1配線よりも配線長が短い第2配線部とが所定の角度で接続されて形成され、前記所定の角度は、前記第1配線部および前記第2配線部のうち一方が前記共用配線に接続され他方が前記部品搭載配線に接続されるように設定されることを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記基板には、前記遮断配線を含めた基板面を被覆する保護層が設けられており、前記保護層には、前記遮断配線の少なくとも一部を露出させる開口が形成されることを特徴とする。
【0016】
請求項10の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記遮断配線の近傍には、前記遮断配線の溶断に伴い生成された溶融導体を付着させる付着手段が設けられることを特徴とする。
【0017】
請求項11の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記遮断配線は、接続配線を介して前記部品搭載配線および前記共用配線の少なくともいずれかに接続されており、前記接続配線は、その側縁が前記遮断配線の側縁となだらかに連続しており前記接続対象に向かうにつれて徐々に広がるように、形成されることを特徴とする。
【0018】
請求項12の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記共用配線は、電源配線であることを特徴とする。
【0019】
請求項13の発明は、請求項12に記載の電子制御装置において、前記電源配線は、当該電子制御装置と異なる他の装置にも電力を供給する電源に接続されており、当該電子制御装置および前記他の装置を保護するための共通のヒューズが、前記電源からの電源経路上に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明では、共用配線には、遮断配線に接続される電子部品を除く他の複数の電子部品よりも当該遮断配線に対して配線距離が短くなる位置に当該共用配線と同一材料からなる放熱部が形成される。このため、過電流により遮断配線にて発生した熱が共用配線に伝わると、この熱は、近接する放熱部に伝わり放熱されて、当該共用配線に接続される他の電子部品に伝わりにくくなる。
したがって、高密度化された基板面に設けられる遮断配線にて生じた熱による他の電子部品への影響を抑制することができる。
【0021】
請求項2の発明では、放熱部は、基板上にて共用配線に隣接して形成される放熱配線から構成されるため、放熱機能を有する放熱領域を容易に形成することができる。
【0022】
請求項3の発明では、放熱部は、基板に設けられる層間接続部の内部に形成される放熱用部材から構成されるため、高密度化される基板面であっても、放熱領域を広く確保することができる。
【0023】
請求項4の発明では、放熱部は、基板に設けられる複数の層間接続部の内部にそれぞれ形成される複数の放熱用部材から構成されるため、高密度化される基板面であっても、放熱領域を確実に広く確保することができる。
【0024】
請求項5の発明では、層間接続部の内部に形成される放熱用部材は、共用配線が設けられる基板面に対して反対側の面または基板内部に設けられる放熱用部材に接触するように形成されるため、放熱領域をさらに広く確保することができる。
【0025】
請求項6の発明では、遮断配線は、複数の電子部品に応じて複数設けられ、各遮断配線に接続される各電子部品を除く他の複数の電子部品よりも当該各遮断配線に対して配線距離が短くなる位置にそれぞれ放熱部が形成される。これにより、複数の遮断配線が設けられる場合であっても、各遮断配線にて生じた熱による他の電子部品への影響を抑制することができる。
【0026】
請求項7の発明では、遮断配線は、複数の電子部品に応じて複数設けられ、放熱部は、これら複数の遮断配線に接続される複数の電子部品を除く他の電子部品よりも当該複数の遮断配線に対して配線距離が短くなる位置に形成される。このため、1つの放熱部により、各遮断配線にて生じた熱による他の電子部品への影響が抑制できる。これにより、遮断配線が複数設けられる場合であっても放熱部による放熱領域を遮断配線の数だけ確保する必要が無いので、限られたスペースを有効に活用して、各遮断配線にて生じた熱による他の電子部品への影響を抑制することができる。
【0027】
請求項8の発明では、遮断配線は、第1配線部とこの第1配線よりも配線長が短い第2配線部とが所定の角度で接続されて形成され、この所定の角度は、第1配線部および第2配線部のうち一方が共用配線に接続され他方が部品搭載配線に接続されるように設定される。このため、遮断配線が直線状に形成される場合と比較して、近接する共用配線と部品搭載配線とを接続しつつその配線長を長くすることができる。これにより、限られた実装領域であっても必要な遮断配線の配線長を確保しやすくなるので、遮断配線にて生じた熱による他の電子部品への影響を抑制するとともに、装置の小型化を図ることができる。
【0028】
請求項9の発明では、基板の表面を被覆する保護層には、遮断配線の少なくとも一部を露出させる開口が形成される。このため、過電流による発熱に応じて遮断配線が溶断すると、この溶断により生成された溶融導体が開口から流れ出ることとなる。これにより、溶融導体が溶断前の遮断配線の位置に滞留しにくくなるので、溶融導体の滞留に起因する溶断位置や溶断時間のばらつきが抑制するとともに、遮断配線にて生じた熱による他の電子部品への影響を抑制することができる。
【0029】
請求項10の発明では、遮断配線の溶断時に高温の溶融導体が生成されると、この溶融導体は、基板の表面を流動する際に、当該遮断配線に近接して設けられた付着手段に付着する。これにより、溶融導体は、付着手段に付着した状態で保持され、放熱とともに硬化することによって流動性を失う。したがって、遮断配線による遮断性能の低下(溶断時間および遮断電流のばらつきや増大)を抑制するとともに、溶融導体の流動による他の電子部品等への影響を抑制することができる。
【0030】
請求項11の発明では、遮断配線は、接続配線を介して部品搭載配線および共用配線の少なくともいずれかに接続されており、この接続配線は、その側縁が遮断配線の側縁となだらかに連続しており接続対象に向かうにつれて徐々に広がるように、形成される。
【0031】
このように、遮断配線および接続配線の側縁がなだらかに連続するため、これら両配線をエッチング液を用いて形成する場合には、遮断配線の側縁と接続配線の側縁との接続部位でエッチング液が均一に流れやすくなる。これにより、上記接続部位でのエッチング液の滞留が抑制されて遮断配線の配線幅のばらつきが抑えられるので、基板面に設けられる遮断配線による遮断性能の低下を抑制することができる。
【0032】
請求項12の発明では、共用配線は、電源配線であるため、大電流が流れるために比較的配線幅が広く形成される電源配線と部品搭載配線との間に上記遮断配線が設けられる場合であっても、この遮断配線にて生じた熱による他の電子部品への影響を抑制することができる。
【0033】
請求項13の発明では、電源配線は、当該電子制御装置と異なる他の装置にも電力を供給する電源に接続されており、当該電子制御装置および他の装置を保護するための共通のヒューズが、電源からの電源経路上に設けられる。これにより、遮断配線を設けた電子制御装置が短絡故障等する場合であっても、その遮断配線が溶断することで、他の装置への電源供給に関する影響をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態に係るトラクションコントロール装置を備える車両制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1のトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図3】図2のA−A線相当の切断面による断面図である。
【図4】第1実施形態の第1変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図5】第1実施形態の第2変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図6】第1実施形態の第3変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図7】第2実施形態に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図8】図7のB−B線相当の切断面による断面図である。
【図9】第2実施形態の変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図10】図9のC−C線相当の切断面による断面図である。
【図11】第3実施形態に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図12】第4実施形態に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図13】検証用遮断配線および検証用開口の詳細形状を説明するための説明図である。
【図14】検証用開口の有無について遮断電流値および溶断時間の関係を示すグラフである。
【図15】第4実施形態の第1変形例に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図16】第5実施形態に係るトラクションコントロール装置の要部を示す説明図である。
【図17】第6実施形態に係る電子制御装置の要部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る電子制御装置について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係るトラクションコントロール装置20を備える車両制御システム11の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、車両制御システム11は、自動車10に車載される各種機器を制御するエンジンECUやブレーキECU,ステアリングECUをはじめボディECUやナビゲーション装置などの複数の電子制御装置12を備えて構成されている。
【0036】
また、車両制御システム11には、上記複数の電子制御装置12に加えて、本第1実施形態に係る電子制御装置が適用されたトラクションコントロール装置20が設けられている。このトラクションコントロール装置20は、駆動輪の加速スリップを防止する加速スリップ防止機能を有する装置で、走行制御等の主要な車両制御に関して他の電子制御装置よりも比較的重要性が低い装置である。
【0037】
トラクションコントロール装置20を含めた複数の電子制御装置12は、過電流保護用として採用されるヒューズ14aおよびヒューズ14bのいずれかを介して直流電源(以下、バッテリ13という)に電気的に接続されている。ヒューズ14aおよびヒューズ14bとしては、多くの電子制御装置等に対して作動に必要な電力を供給する経路に設けられるために、例えば15A用や20A用の大型のヒューズが採用されている。これにより、例えば、ヒューズ14aに接続される各種電子制御装置12のうちのいずれかに不具合が生じ所定の電流値を超える過電流が発生すると、この過電流によりヒューズ14aが溶断し、当該ヒューズ14aを介した電力供給が遮断されて、他の電子制御装置12への悪影響が防止される。なお、本実施形態では、各電子制御装置12は、2つの大型ヒューズ14aおよびヒューズ14bのいずれかを介してバッテリ13にそれぞれ電気的に接続されているが、これに限らず、単一の大型ヒューズを介してバッテリ13にそれぞれ電気的に接続されてもよいし、3つ以上のヒューズのいずれかを介してバッテリ13にそれぞれ電気的に接続されてもよい。
【0038】
次に、本第1実施形態に係るトラクションコントロール装置20の構成について、図2および図3を用いて説明する。図2は、図1のトラクションコントロール装置20の要部を示す説明図である。図3は、図2のA−A線相当の切断面による断面図である。
トラクションコントロール装置20は、上述した加速スリップ防止機能を実現するための複数の電子部品22を高密度化して実装した回路基板21が図略のケースに収容されて構成されている。この回路基板21は、図略のコネクタ等を介して外部の機器や他の電子制御装置12と電気的に接続されており、外部から入力される所定の信号に応じて駆動輪の加速スリップを防止するための制御を実行する。
【0039】
図2に示すように、回路基板21には、バッテリ13からの電力を供給する電源配線23が、各電子部品22に対してそれぞれ電気的に接続されている。このため、電源配線23は、各電子部品22により共用される共用配線として機能する。
【0040】
図2および図3に示すように、回路基板21には、複数の電子部品22の1つとして、セラミックコンデンサ24が実装されている。このセラミックコンデンサ24は、温度特性や周波数特性を向上させ小型で大容量を実現するため、例えば、チタン酸バリウム系の高誘電率セラミック誘電体24bと内部電極24cとを層状に積み重ねて一体化して構成されている。
【0041】
セラミックコンデンサ24の外部電極24aがはんだ25を介して接続されるランド26と電源配線23との間には、遮断配線30が配置されている。この遮断配線30は、過電流による発熱に応じて溶断することで過電流保護機能を発揮して当該遮断配線30を介した電気的接続を遮断する配線である。これにより、その基板に応じた過電流保護を実現することができる。
【0042】
ここで、遮断配線30は、その配線幅(基板面上で電流の方向に直交する配線の幅)が電源配線23の配線幅に対して十分に小さくなるように設定されている。具体的には、例えば、遮断配線30の配線幅が0.2〜0.3mm程度に設定され、電源配線23の配線幅が2mm程度に設定されている。なお、ランド26は、特許請求の範囲に記載の「部品搭載配線」の一例に相当し得る。また、基板面には、ソルダレジスト28がランド26等の一部を除き保護層として設けられている。
【0043】
また、図2に示すように、電源配線23には、遮断配線30に接続される電子部品22(本実施形態ではセラミックコンデンサ24)を除く他の複数の電子部品22よりも当該遮断配線30に対して配線距離が短くなる位置に当該電源配線23と同一材料から配線状に形成される放熱配線40が接続されている。この放熱配線40は、電源配線23を介して伝わる熱を放熱するために、その放熱面積を大きくするように形成されている。
【0044】
このように構成されるトラクションコントロール装置20では、例えば、セラミックコンデンサ24が損傷等して短絡し過電流が遮断配線30を流れると、この遮断配線30がその過電流に応じて発熱する。そして、この発熱が所定の温度以上になると、遮断配線30が溶断し、当該遮断配線30を介した電気的接続が遮断される。これにより、電源配線23に接続される他の電子部品22が上記過電流から保護される。また、上記遮断時の電流はヒューズ14aを遮断するほど大きくならないので、当該ヒューズ14aを介して電力供給される他の電子制御装置12に対して、トラクションコントロール装置20の損傷が影響することもない。さらに、過電流の発生から遮断配線30の溶断までの時間は、数mS(ミリ秒)程度であり、上述した大型ヒューズ14a,14b等の溶断時間は通常0.02S(秒)程度であることから、処理速度の向上が図られる電子制御装置や電子部品であっても好適に過電流保護を実施することができる。
【0045】
特に、本実施形態では、過電流により遮断配線30にて発生した熱が電源配線23に伝わると、この熱は、近接する放熱配線40に伝わり放熱されて、当該電源配線23に接続される他の電子部品22に伝わりにくくなる。
したがって、高密度化された基板面に設けられる遮断配線30にて生じた熱による他の電子部品22への影響を抑制することができる。
【0046】
また、電源配線23は、トラクションコントロール装置20と異なる他の電子制御装置12にも電力を供給するバッテリ13から電線を介して各々のコネクタに接続されており、当該トラクションコントロール装置20および他の電子制御装置12を過電流保護するための共通のヒューズ14aが、バッテリ13からの電源経路上に設けられている。これにより、遮断配線30を設けたトラクションコントロール装置20が短絡故障等する場合であっても、その遮断配線30が溶断することで、他の電子制御装置12への電源供給に関する影響をなくすことができる。
【0047】
図4は、第1実施形態の第1変形例に係るトラクションコントロール装置20の要部を示す説明図である。図5は、第1実施形態の第2変形例に係るトラクションコントロール装置20の要部を示す説明図である。図6は、第1実施形態の第3変形例に係るトラクションコントロール装置20の要部を示す説明図である。
図4に示すように、第1実施形態の第1変形例として、遮断配線30を複数の電子部品(本変形例ではセラミックコンデンサ24)に応じて複数設け、各遮断配線30に接続される電子部品22を除く他の複数の電子部品22よりも各遮断配線30に対して配線距離が短くなる位置に放熱配線40をそれぞれ形成してもよい。これにより、複数の遮断配線30が設けられる場合であっても、各遮断配線30にて生じた熱による他の電子部品22への影響を抑制することができる。
【0048】
また、図5に示すように、第1実施形態の第2変形例として、遮断配線30が2つの電子部品(本変形例ではセラミックコンデンサ24)に応じて2つ設けられる場合に、放熱配線40は、これら両遮断配線30に接続される電子部品22を除く他の複数の電子部品22よりもこれら両遮断配線30に対して配線距離が短くなる位置に1つ形成されてもよい。
【0049】
このようにしても、1つの放熱配線40により、両遮断配線30のいずれかにて生じた熱による他の電子部品22への影響が抑制できる。特に、遮断配線30が2つ設けられる場合であっても放熱配線40による放熱領域を遮断配線30の数だけ確保する必要が無いので、限られたスペースを有効に活用して、各遮断配線30にて生じた熱による他の電子部品22への影響を抑制することができる。なお、本変形例では、2つの遮断配線30が設けられる場合について説明したが、これに限らず、遮断配線30が3つ以上の電子部品22に応じて同数設けられる場合に、放熱配線40は、これら複数の遮断配線30に接続される電子部品22を除く他の複数の電子部品22よりもこれら複数の遮断配線30に対して配線距離が短くなる位置に1つ形成されることで共用されてもよい。
【0050】
また、図6に示すように、第1実施形態の第3変形例として、複数の外部電極を有するアレイ状のセラミックコンデンサ24dを採用し、このセラミックコンデンサ24dと電源配線23との各接続間に遮断配線30a〜30dをそれぞれ設けてもよい。このセラミックコンデンサ24dは、4つの積層セラミックコンデンサをコンデンサアレイとしてパッケージ化したものである。本変形例では、各遮断配線30a〜30dは、セラミックコンデンサ24dの各外部電極が接続されるランド26a〜26dと、電源配線23との間にそれぞれ設けられている。
【0051】
そして、放熱配線40aが遮断配線30aおよび遮断配線30bに対して他の電子部品22よりも配線距離が短くなる位置に形成され、放熱配線40bが遮断配線30cおよび遮断配線30dに対して他の電子部品22よりも配線距離が短くなる位置に形成される。このようにしても、1つの放熱配線40aにより、両遮断配線30a,30bのいずれかにて生じた熱による他の電子部品22への影響が抑制でき、1つの放熱配線40bにより、両遮断配線30c,30dのいずれかにて生じた熱による他の電子部品22への影響が抑制できる。
【0052】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るトラクションコントロール装置について図7および図8を用いて説明する。図7は、第2実施形態に係るトラクションコントロール装置20aの要部を示す説明図である。図8は、図7のB−B線相当の切断面による断面図である。
【0053】
本第2実施形態では、トラクションコントロール装置20aにおいて、遮断配線30から伝わる熱を放熱する放熱部として、放熱配線40に代えて層間接続部23aおよび、その内部に形成される放熱用部材42を採用する点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
図7および図8に示すように、回路基板21には、電源配線23に対してスルーホール(層間接続部)23aが1つ形成されており、このスルーホール23a内には、電源配線23と同一材料からなる放熱用部材42が形成されている。この放熱用部材42は、電源配線23が設けられる基板面に対して反対側の基板面または基板内部にも設けられ、スルーホール23aを介して接触されるように形成されている。
【0055】
これにより、高密度化される基板面であっても、放熱用部材42により、放熱領域を広く確保することができる。なお、本実施形態および第3実施形態における、スルーホール23aは回路基板の基板面と内層との層間の配線を接続する接続手段の一例であり、接続手段はこれだけに特定されない。
【0056】
図9は、第2実施形態の変形例に係るトラクションコントロール装置20aの要部を示す説明図である。図10は、図9のC−C線相当の切断面による断面図である。
第2実施形態の変形例として、遮断配線30から伝わる熱を放熱する放熱部として、複数のスルーホール23aの内部に放熱用部材42を設けてもよい。具体的には、図9および図10に示すように、電源配線23に対してスルーホール23aが2つ形成されており、これら両スルーホール23a内には、電源配線23と同一材料からなる放熱用部材42がそれぞれ形成されている。これら両放熱用部材42は、電源配線23が設けられる基板面に対して反対側の裏面または基板内部に設けられ、層間接続部23aを介してそれぞれ接触されるように形成されている。
【0057】
これにより、高密度化される基板面であっても、放熱用部材42により放熱領域を確実に広く確保することができる。なお、図9および図10では、電源配線23に対して形成される2つのスルーホール23a内の放熱用部材42を放熱部として利用しているが、これに限らず、電源配線23に対して複数のスルーホールを形成し、このスルーホール内に放熱用部材42をそれぞれ設けてもよい。その際、各放熱用部材は、裏面や基板内部に設けられ、スルーホールを介して接触するように形成されることで、放熱領域をさらに広くしてもよい。なお、上述したスルーホール23aおよび放熱用部材42の構成は、他の実施形態や変形例に採用されてもよい。
【0058】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係るトラクションコントロール装置について図11を用いて説明する。図11は、第3実施形態に係るトラクションコントロール装置20bの要部を示す説明図である。
本第3実施形態では、遮断配線30に代えて遮断配線30eを採用し、高密度化を図るため、セラミックコンデンサ24の両外部電極24aがそれぞれ接続されるランド26間に電源配線23が配置される点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
図11に示すように、遮断配線30eは、第1配線部31とこの第1配線部31よりも配線長が短い第2配線部32とが所定の角度で接続されて形成されている。この所定の角度は、第1配線部31が電源配線23に接続され、第2配線部32がランド26に接続されるように、例えば90°に設定される。放熱配線40は、電源配線23と同一材料からなり、遮断配線30eに接続される電子部品22を除く他の複数の電子部品22よりも当該遮断配線30eに対して配線距離が短くなる位置にて電源配線23に接続するように配線状に形成されている。
【0060】
このように遮断配線30eを曲げて形成することで、遮断配線が直線状に形成される場合と比較して、近接する電源配線23とランド26とを接続しつつその配線長を長くすることができる。これにより、限られた実装領域であっても必要な遮断配線30eの配線長を確保しやすくなるので、遮断配線30eにて生じた熱による他の電子部品22への影響を抑制するとともに、装置の小型化を図ることができる。
【0061】
なお、本実施形態では、第1配線部31が電源配線23に接続され、第2配線部32がランド26に接続されているが、これに限らず、第1配線部31がランド26に接続され、第2配線部32が電源配線23に接続されてもよい。また、上記所定の角度は、近接する電源配線23とランド26との位置に応じて設定されてもよい。また、放熱配線40に代えて、上述したスルーホール23aの内部に形成される放熱用部材42を設けてもよい。また、上述した第1配線部31と第2配線部32とが所定の角度で接続される遮断配線30eの構成は、他の実施形態および変形例に採用されてもよい。
【0062】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係るトラクションコントロール装置について図12を用いて説明する。図12は、第4実施形態に係るトラクションコントロール装置20cの要部を示す説明図である。なお、図12では、便宜上、開口28aを除き基板面を保護するソルダレジスト28の図示を省略している。
本第4実施形態では、基板面を保護するためのソルダレジスト28に、遮断配線30の少なくとも一部を露出させる開口28aが形成される点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0063】
図12からわかるように、ソルダレジスト28には、遮断配線30のうち最も発熱する部位であるその全長の中央近傍部位を外方に露出させるための開口28aが形成されている。
ここで、開口28aを形成する理由について、図13および図14を用いて説明する。図13は、検証用遮断配線101および検証用開口102の詳細形状を説明するための説明図である。図14は、検証用開口102の有無について遮断電流値Iおよび溶断時間tの関係を示すグラフである。
【0064】
図13に示す寸法の検証用開口102により一部が露出する検証用遮断配線101に対して所定の電流を流し、この検証用遮断配線101が溶断するときの遮断電流値Iと当該検証用遮断配線101が溶断するまでの溶断時間tとを測定する。また、検証用開口102が形成されない検証用遮断配線101に対して所定の電流を流したときの遮断電流値Iおよび溶断時間tを測定する。ここで、検証用遮断配線101は、その全体長さL1が2.85mmに設定され、その幅W1が0.25mmに設定される。また、検証用開口102は、L1に平行な開口長L2が0.6mmに設定され、その開口幅W2が0.25mmに設定される。なお、図13では、説明の便宜上、開口幅W2が幅W1よりも長くなるように図示されている。
【0065】
上述のように測定された遮断電流値Iおよび溶断時間tの関係を図14のグラフに示す。ここで、図14に示す太実線S1は、検証用開口102により一部が露出する検証用遮断配線101における遮断電流値Iと溶断時間tとの関係を示し、太実線S1を中心に太破線にて囲まれる範囲は、その遮断電流値Iにおける溶断時間tのばらつきの範囲を示す。また、図14に示す細実線S2は、検証用開口102が形成されない検証用遮断配線101における遮断電流値Iと溶断時間tとの関係を示し、細実線S2を中心に細破線にて囲まれる範囲は、その遮断電流値Iにおける溶断時間tのばらつきの範囲を示す。
【0066】
図14からわかるように、同じ遮断電流値では、検証用開口102を形成することで、溶断時間tが短くなっている。さらに、同じ遮断電流値では、溶断時間tのばらつきが小さくなっている。一方、検証用開口102が形成されない検証用遮断配線101では、検証用開口102が形成される場合と比較して、各過大電流域で溶断時間tが長くなり、かつ、溶断時間tのばらつきが生じている。これは、検証用遮断配線101が溶断することで生成された溶融導体が、検証用開口102から流れ出て、溶断前の検証用遮断配線101の位置に滞留しにくくなるからである。
【0067】
このようなことから、開口28aにより遮断配線30の少なくとも一部を露出させることで、溶断時間tが短くなり保護作用が早期に得られ、保護対象となる部品の温度上昇を抑制することができる。さらに、遮断配線30の遮断時における電源配線23への電圧低下の影響時間を大きく短縮することができる。また、溶断時間tのばらつきが小さくなることで、各装置や回路で遮断配線30の溶断時間を考慮した安定化コンデンサなど(電源安定化手段)について容量のより小さなものを採用することができ、低コスト化や小型化を図ることができる。さらに電流の定格領域でも溶断時間tを小さくできるので、回路設計における自由度を向上させることができる。
【0068】
このため、過電流による発熱に応じて遮断配線30が溶断すると、この溶断により生成された溶融導体が開口28aから流れ出ることとなる。これにより、溶融導体が溶断前の遮断配線30の位置に滞留しにくくなるので、溶融導体の滞留に起因する溶断位置や溶断時間のばらつきが抑制される。その結果、遮断配線30にて生じた熱による他の電子部品22への影響を抑制するとともに、遮断配線30による遮断性能の低下を抑制することができる。
【0069】
なお、本実施形態では、開口28aは、遮断配線30が溶断しやすい中央近傍部位に形成されているが、これに限らず、例えば、遮断配線30の他の一部を露出させるように形成されてもよいし、遮断配線30の上面全てを露出させるように形成されてもよい。また、遮断配線30の少なくとも一部を露出させる開口28aの構成は、他の実施形態および変形例に採用されてもよい。
【0070】
図15は、第4実施形態の第1変形例に係るトラクションコントロール装置20cの要部を示す説明図である。
図15に示すように、第4実施形態の第1変形例として、遮断配線30の近傍には、当該遮断配線30の溶断に伴い生成された溶融導体を付着(吸着)させる付着手段(吸着手段)として例えば電源配線23等と同じ配線材料にて形成される付着用配線29が、例えば一対設けられてもよい。これにより、遮断配線30の溶断時に高温の溶融導体が生成されると、この溶融導体は、回路基板21の表面を流動する際に、当該遮断配線30に近接して設けられた付着用配線29に付着する。
【0071】
これにより、溶融導体は、付着用配線29に付着した状態で保持され、放熱とともに硬化することによって流動性を失う。したがって、遮断配線30による遮断性能の低下を抑制するとともに、溶融導体の流動による他の電子部品等への影響を抑制することができる。なお、付着用配線29は、開口28aが設けられる遮断配線30に対して形成されることに限らず、開口28aが設けられない遮断配線30に対して形成されても同様の作用効果を奏する。
【0072】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係るトラクションコントロール装置について図16を用いて説明する。図16は、第5実施形態に係るトラクションコントロール装置20dの要部を示す説明図である。
【0073】
本第5実施形態では、遮断配線30が接続配線50を介してランド26に接続される点が主に上記第1実施形態と異なる。このため、第1実施形態と実質的に同様の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0074】
図16に示すように、遮断配線30は、その一端にて接続配線50を介してランド26に電気的に接続されている。
【0075】
接続配線50は、その配線幅がランド26側ほど広くなるように略円弧状(R状)に形成されることで、遮断配線30との接続部位での断面積が接続対象であるランド26との接続部位での断面積よりも小さくなるように構成されている。このため、接続配線50は、その側縁が遮断配線30の側縁となだらかに連続しておりランド26に向かうにつれて徐々に広がることとなる。
【0076】
このため、過電流により遮断配線30に生じた熱が接続配線50を介してランド26に伝わる場合には、直接ランド26に伝わる場合と比較して、当該ランド26への遮断配線が溶断するために必要な熱が過渡に吸い出されてしまうことを抑制する。これにより、遮断配線30における温度上昇のばらつきが抑制されるので、高密度化された基板面に設けられる遮断配線30による遮断性能の低下を抑制することができる。特に、過電流により遮断配線30に生じた熱は、接続配線50内では徐々に拡散してランド26に広く伝わるため、当該ランド26における局所的な温度上昇も緩和される。これにより、ランド26に比較的融点の低いはんだを用いる場合であっても、遮断配線30からの熱によるはんだの溶融を抑制することができる。一方、定常状態(過電流状態とならない)において遮断配線を流れる電流による発熱についても接続配線を介して熱拡散することが可能となり、定常状態での遮断配線温度を適切に制御できるため長期的な信頼性を向上することが可能である。
【0077】
また、遮断配線30および接続配線50の側縁がなだらかに連続するため、これら各配線30,50をエッチング液を用いて形成する場合には、遮断配線30の側縁と接続配線50の側縁との接続部位でエッチング液が均一に流れやすくなる。これにより、上記接続部位でのエッチング液の滞留が抑制されて遮断配線30の配線幅のばらつきが抑えられるので、基板面に設けられる遮断配線30による遮断性能の低下を抑制することができる。
【0078】
なお、上述した接続配線50は、遮断配線30と電源配線23との間に配置されてもよい。また、接続配線50の構成は、他の実施形態や変形例に採用されてもよい。
【0079】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態に係る電子制御装置について図17を用いて説明する。図17は、第6実施形態に係る電子制御装置110の要部を示す説明図である。
本第6実施形態に係る電子制御装置110では、同一の基板120上に、上記第1実施形態に係るトラクションコントロール装置20の機能を回路ブロック化した回路ブロック130と、さらに他の機能を回路ブロック化した回路ブロック140,150とを配置して構成されている。なお、他の機能としては、回路ブロック130の機能よりも重要性が高い機能であって、例えば、エンジンECUに対応する機能やブレーキECUに対応する機能であり、回路ブロック140は、エンジンECUに対応する機能を回路ブロック化して構成され、回路ブロック150は、ブレーキECUに対応する機能を回路ブロック化して構成されている。
【0080】
図17に示すように、各回路ブロック130,140,150には、コネクタ121を介してバッテリ13からの電力を供給する電源配線23が、それぞれ分岐配線131,141,151を介して電気的に接続されている。そして、上述した遮断配線30が回路ブロック130の分岐配線131上に当該回路ブロック130に対して過電流保護として機能するように配置されている。そして、電源配線23上に、当該基板120に対して過電流保護として機能する遮断配線122が設けられている。すなわち、基板120上には、全ての回路ブロック130〜150を含めた基板120を保護する遮断配線122と、回路ブロック130を保護する遮断配線30との2つの遮断配線が設けられている。
【0081】
これにより、遮断配線30が設けられる回路ブロック130において短絡故障等により過電流が生じることから当該遮断配線30が溶断する場合でも、他の回路ブロック140,150では、分岐配線141,151を介した電源配線23との接続が維持されるので、溶断した遮断配線30を有する回路ブロック130のみ機能を停止して、他の回路ブロック140,150での機能を継続することができる。特に、回路ブロック130の機能は、他の回路ブロック140,150よりも重要性が低いので、重要性が低い回路ブロック130の機能停止が、重要性が高い回路ブロック140,150の機能に影響を及ぼすことを抑制することができる。また、遮断配線30が設けられない回路ブロック140,150において短絡故障等により過電流が生じる場合でも、その過電流が電源配線23を流れることで遮断配線122が溶断して各回路ブロック130,140,150での機能が停止するので、発生した過電流が他の回路ブロックへ流れることを抑制することができる。
【0082】
特に、遮断配線30を、遮断配線122に対して遮断時の電流値が小さくなるようにその配線幅を小さく形成することで、遮断配線30が設けられる回路ブロック130において短絡故障等により過電流が生じる場合には、遮断配線30が遮断配線122よりも確実に早く溶断する。これにより、他の回路ブロック140,150への影響を確実に抑制することができる。
なお、本実施形態における1つの基板上に2つの遮断配線を設ける構成は、他の実施形態や変形例に採用されてもよい。
【0083】
なお、本発明は上記各実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)上述した放熱部(放熱配線40,層間接続部23a)が近接して配置される遮断配線30や他の遮断配線は、電源配線23に代えて、過電流保護の対象である各電子部品22にて共用される共用配線に電気的に接続されてもよい。
【0084】
(2)上述した放熱部(放熱配線40,層間接続部23a)が近接して配置される遮断配線30や他の遮断配線は、ランド26に電気的に接続されることに限らず、例えば、ソルダレジスト等の保護膜により保護されて露出しない内層側の配線など、電子部品を搭載するための部品搭載配線に電気的に接続されてもよい。
【0085】
(3)上述した放熱部(放熱配線40,層間接続部23a)が近接して配置される遮断配線30や他の遮断配線は、上述したエンジンECUやブレーキECU,ステアリングECUをはじめボディECUやナビゲーション装置などの複数の電子制御装置12の過電流保護用として基板ごとに採用されてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10…自動車
11…車両制御システム
12…電子制御装置
13…バッテリ
14a,14b…ヒューズ
20,20a〜20c…トラクションコントロール装置(電子制御装置)
21…回路基板
22…電子部品
23…電源配線
23a…スルーホール(層間接続部)
24,24a〜24d…セラミックコンデンサ(電子部品)
25…はんだ
26…ランド(部品搭載配線)
28…ソルダレジスト(保護層)
28a…開口
29…付着用配線
30,30a〜30e…遮断配線
40…放熱配線(放熱部)
42…放熱用部材
50…接続配線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にて複数の電子部品がそれぞれ実装されて接続される部品搭載配線と前記複数の電子部品により共用される共用配線とを接続する配線間に、少なくとも1つの過電流保護用の遮断配線が設けられる電子制御装置であって、
前記遮断配線は、過電流による発熱に応じて溶断することで当該遮断配線を介した接続を遮断する配線であって、
前記共用配線には、前記遮断配線に接続される電子部品を除く他の複数の電子部品よりも当該遮断配線に対して配線距離が短くなる位置に当該共用配線と同一材料からなる放熱部が形成されることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記放熱部は、前記基板上にて前記共用配線に隣接して形成される放熱配線から構成されることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記放熱部は、前記基板に設けられる層間接続部の内部に形成される放熱用部材から構成されることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記放熱部は、前記基板に設けられる複数の層間接続部の内部にそれぞれ形成される複数の放熱用部材から構成されることを特徴とする請求項3に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記層間接続部の内部に形成される放熱用部材は、前記共用配線が設けられる基板面に対して反対側の面または基板内部に設けられる放熱用部材に接触するように形成されることを特徴とする請求項3または4に記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記遮断配線は、前記複数の電子部品に応じて複数設けられ、前記各遮断配線に接続される前記各電子部品を除く他の複数の電子部品よりも当該各遮断配線に対して配線距離が短くなる位置にそれぞれ前記放熱部が形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項7】
前記遮断配線は、前記複数の電子部品に応じて複数設けられ、
前記放熱部は、これら複数の遮断配線に接続される前記複数の電子部品を除く他の電子部品よりも当該複数の遮断配線に対して配線距離が短くなる位置に形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項8】
前記遮断配線は、第1配線部とこの第1配線よりも配線長が短い第2配線部とが所定の角度で接続されて形成され、
前記所定の角度は、前記第1配線部および前記第2配線部のうち一方が前記共用配線に接続され他方が前記部品搭載配線に接続されるように設定されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項9】
前記基板には、前記遮断配線を含めた基板面を被覆する保護層が設けられており、
前記保護層には、前記遮断配線の少なくとも一部を露出させる開口が形成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項10】
前記遮断配線の近傍には、前記遮断配線の溶断に伴い生成された溶融導体を付着させる付着手段が設けられることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項11】
前記遮断配線は、接続配線を介して前記部品搭載配線および前記共用配線の少なくともいずれかに接続されており、
前記接続配線は、その側縁が前記遮断配線の側縁となだらかに連続しており前記接続対象に向かうにつれて徐々に広がるように、形成されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項12】
前記共用配線は、電源配線であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項13】
前記電源配線は、当該電子制御装置と異なる他の装置にも電力を供給する電源に接続されており、
当該電子制御装置および前記他の装置を保護するための共通のヒューズが、前記電源からの電源経路上に設けられることを特徴とする請求項12に記載の電子制御装置。
【請求項1】
基板上にて複数の電子部品がそれぞれ実装されて接続される部品搭載配線と前記複数の電子部品により共用される共用配線とを接続する配線間に、少なくとも1つの過電流保護用の遮断配線が設けられる電子制御装置であって、
前記遮断配線は、過電流による発熱に応じて溶断することで当該遮断配線を介した接続を遮断する配線であって、
前記共用配線には、前記遮断配線に接続される電子部品を除く他の複数の電子部品よりも当該遮断配線に対して配線距離が短くなる位置に当該共用配線と同一材料からなる放熱部が形成されることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記放熱部は、前記基板上にて前記共用配線に隣接して形成される放熱配線から構成されることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記放熱部は、前記基板に設けられる層間接続部の内部に形成される放熱用部材から構成されることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記放熱部は、前記基板に設けられる複数の層間接続部の内部にそれぞれ形成される複数の放熱用部材から構成されることを特徴とする請求項3に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記層間接続部の内部に形成される放熱用部材は、前記共用配線が設けられる基板面に対して反対側の面または基板内部に設けられる放熱用部材に接触するように形成されることを特徴とする請求項3または4に記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記遮断配線は、前記複数の電子部品に応じて複数設けられ、前記各遮断配線に接続される前記各電子部品を除く他の複数の電子部品よりも当該各遮断配線に対して配線距離が短くなる位置にそれぞれ前記放熱部が形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項7】
前記遮断配線は、前記複数の電子部品に応じて複数設けられ、
前記放熱部は、これら複数の遮断配線に接続される前記複数の電子部品を除く他の電子部品よりも当該複数の遮断配線に対して配線距離が短くなる位置に形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項8】
前記遮断配線は、第1配線部とこの第1配線よりも配線長が短い第2配線部とが所定の角度で接続されて形成され、
前記所定の角度は、前記第1配線部および前記第2配線部のうち一方が前記共用配線に接続され他方が前記部品搭載配線に接続されるように設定されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項9】
前記基板には、前記遮断配線を含めた基板面を被覆する保護層が設けられており、
前記保護層には、前記遮断配線の少なくとも一部を露出させる開口が形成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項10】
前記遮断配線の近傍には、前記遮断配線の溶断に伴い生成された溶融導体を付着させる付着手段が設けられることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項11】
前記遮断配線は、接続配線を介して前記部品搭載配線および前記共用配線の少なくともいずれかに接続されており、
前記接続配線は、その側縁が前記遮断配線の側縁となだらかに連続しており前記接続対象に向かうにつれて徐々に広がるように、形成されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項12】
前記共用配線は、電源配線であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項13】
前記電源配線は、当該電子制御装置と異なる他の装置にも電力を供給する電源に接続されており、
当該電子制御装置および前記他の装置を保護するための共通のヒューズが、前記電源からの電源経路上に設けられることを特徴とする請求項12に記載の電子制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−164760(P2012−164760A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22929(P2011−22929)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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