説明

電子制御装置

【課題】自動車の制動制御システムの作動回数又は作動時間を記憶する電子制御装置において、コストアップを回避しつつ、より効率的に不揮発性メモリの書換え回数を低減可能な電子制御装置を提供する。
【解決手段】自動車の制動制御システム11の作動回数又は作動時間の積算値を、自動車のエンジン作動により供給される電源によって一時記憶する揮発性メモリ2と、電源の供給を受けなくても記憶内容を保持する不揮発性メモリ3と、少なくともシフトポジションがパーキングレンジに切換えられた場合、或いは少なくともパーキングブレーキが作動された場合に、揮発性メモリ2に一時記憶されている作動回数又は作動時間の積算値を不揮発性メモリ3に記憶する記憶処理実行手段4と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の制動制御システムの作動回数又は作動時間の積算値を記憶する電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置として、例えばスタータ駆動回数のようなカウンタデータを不揮発性メモリ(EEPROM)に記憶する電子制御装置が特許文献1に記載されている。一般的に不揮発性メモリには書換え保障回数があり、これを超えてしまうと正しく書換えを行うことができない虞がある。このため、カウンタデータの書換え回数を書換え保障回数以内で抑える必要がある。
【0003】
そこで、特許文献1の電子制御装置においては、複数の記憶領域を有した不揮発性メモリを用いている。複数の記憶領域を設けることで、各記憶領域の書換え保障回数の合計が不揮発性メモリ全体としての書換え保障回数となるので、より多くの書換えが可能となる。又、複数の記憶領域のうちデータが最小である領域に、カウンタデータを一時的に記憶している揮発性メモリ(RAM)の値を加算して書込むことにより、各記憶領域への書換え回数を平均化している。このため、不揮発性メモリの各記憶領域において、書換え回数が保障回数を超え難いという効果があるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4134477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の電子制御装置においては、IGスイッチがONからOFFに切換えられた時に不揮発性メモリに書換えを行うよう構成されている。このため、IGスイッチがOFFの状態においても不揮発性メモリに電源を供給する回路を設ける必要があり、回路の複雑化やコストの増大を招来していた。又、不揮発性メモリの記憶領域を複数設けることによって書換え回数の増加を図っているので、不揮発性メモリの容量増加に伴うコスト増大も免れ得ないものであった。
【0006】
本発明は以上の課題に鑑みてなされたもので、自動車の制動制御システムの作動回数又は作動時間の積算値を記憶する電子制御装置において、コストアップを回避しつつ、より効率的に不揮発性メモリの書換え回数を低減可能な電子制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電子制御装置の第1特徴構成は、自動車の制動制御システムの作動回数又は作動時間の積算値を、前記自動車のエンジン作動により供給される電源によって一時記憶する揮発性メモリと、前記電源の供給を受けなくても記憶内容を保持する不揮発性メモリと、少なくともシフトポジションがパーキングレンジに切換えられた場合、或いは少なくともパーキングブレーキが作動された場合に、前記揮発性メモリに一時記憶されている前記作動回数又は前記作動時間の積算値を前記不揮発性メモリに記憶する記憶処理実行手段と、を備えた点にある。
【0008】
本構成によると、運転中に複数回制動制御システムが作動された場合においても、その都度不揮発性メモリの値が書換えられるのではなく、シフトポジションがパーキングレンジに切換えられた場合やパーキングブレーキが作動された場合、即ち運転を終了する直前と考えられるタイミングで不揮発性メモリの値が書換えられるので、不揮発性メモリへの書換え回数を低減することができる。又、運転を終了する直前であれば、IGスイッチはまだON状態であるので、書換え時に不揮発性メモリは自動車のエンジン作動により供給される電源(メインバッテリ)の供給を受けることができる。このため、IGスイッチがOFF状態の時に不揮発性メモリに電源を供給するための専用回路が不要となり、コストの上昇を回避することができる。
【0009】
第2特徴構成は、前記記憶処理実行手段は、前記シフトポジションがパーキングレンジに切換えられた場合、或いは前記パーキングブレーキが作動された場合、且つ、前記自動車に搭載されたナビゲーションシステムが目的地に到達したと判断した場合に、前記揮発性メモリに一時記憶されている前記作動回数又は前記作動時間の積算値を前記不揮発性メモリに記憶する点にある。
【0010】
運転者がシフトポジションをパーキングレンジに切換えたり、パーキングブレーキを作動したりするのは、運転終了時が大半であると考えられる。しかし、運転者によっては、信号での停止中等に、シフトポジションをパーキングレンジに切換えたり、パーキングブレーキを作動したりすることも考えられる。このような場合、シフトポジションをパーキングレンジに切換えたり、パーキングブレーキを作動したりする度に不揮発性メモリの書換えが行われるので、書換え回数が増加してしまい、早期に書換え回数の限界値(以下、「限界書換え回数)と称する)に達してしまう虞がある。
【0011】
そこで本構成のごとく、シフトポジションがパーキングレンジに切換えられた場合、或いはパーキングブレーキが作動された場合に加えて、ナビゲーションシステムが目的地に到達したと判断したことを不揮発性メモリへの書換え条件とすると、信号待ち等でシフトポジションがパーキングレンジに切換えられたり、パーキングブレーキが作動されたりしただけでは、不揮発性メモリへの書換えが実行されることがない。従って、より確実に不揮発性メモリへの書換え回数の低減を図ることができる。
【0012】
第3特徴構成は、前記不揮発性メモリは、前記作動回数又は前記作動時間が一定の繰上げ量に達した回数を記憶する繰上げ回数記憶部と、前記繰上げ量未満の端数を記憶する端数記憶部と、を有し、前記記憶処理実行手段は、前記揮発性メモリに一時記憶されている前記作動回数又は前記作動時間が前記繰上げ量に達すると、前記揮発性メモリの値をゼロ値にリセットするともに、前記繰上げ回数記憶部の値を増加させる繰上げ処理と、少なくとも前記シフトポジションがパーキングレンジに切換えられた場合、或いは少なくとも前記パーキングブレーキが作動された場合に、前記揮発性メモリに一時記憶されている前記作動回数又は前記作動時間を前記端数記憶部の値に加算し、当該加算値を前記繰上げ量で除した時の商を前記繰上げ回数記憶部に加算し、余りを前記端数記憶部に記憶する端数処理と、を実行する点にある。
【0013】
万が一、シフトポジションがパーキングレンジに切換えられたり、或いはパーキングブレーキが作動されたりすることなくIGスイッチがOFFとされることがあれば、揮発性メモリに一時記憶されていた作動回数又は作動時間の積算値が不揮発性メモリに記憶されることなく消去されてしまう。すると、揮発性メモリに一時記憶されていた作動回数又は作動時間の分だけ、積算値に誤差が発生する。
【0014】
そこで本構成では、揮発性メモリに一時記憶されている作動回数又は作動時間が一定の繰上げ量に達する毎に、不揮発性メモリに設けた繰上げ回数記憶部の値を増加させる繰上げ処理を実行することとした。繰上げ処理を行うことにより、シフトポジションがパーキングレンジに切換えられたり、或いはパーキングブレーキが作動されたりすることなくIGスイッチがOFFとされ、揮発性メモリに一時記憶されていた値が消去されても、その直前の繰上げまでの積算値は不揮発性メモリに記憶できているため、積算値の誤差を抑えることができる。
【0015】
さらに本構成によれば、少なくともシフトポジションがパーキングレンジに切換えられた場合、或いは少なくともパーキングブレーキが作動された場合に、揮発性メモリに一時記憶されている繰上げ量未満の端数も考慮して積算するように端数処理を実行するので、繰上げ量未満の端数も含めて正確に作動回数又は作動時間を積算することができる。
【0016】
第4特徴構成は、前記記憶処理実行手段は、少なくとも前記シフトポジションがパーキングレンジに切換えられた場合、或いは少なくとも前記パーキングブレーキが作動された場合に、それまでの前記不揮発性メモリへの書換え回数が所定回数以上であれば、前記繰上げ処理のみを実行する点にある。
【0017】
本構成によれば、不揮発性メモリへの書換え回数が所定回数以上の場合に、端数処理を行わずに、繰上げ処理のみを実行するので、端数処理に伴う不揮発性メモリへの書換えが行われず、不揮発性メモリへの書換え回数を限界書換え回数内に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の電子制御装置に係る実施形態の構成図である。
【図2】全体処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】繰上げ処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】端数処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】別の実施形態の全体処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】別の実施形態の繰上げ処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】別の実施形態の端数処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、「制動制御システム」としてのACC(Adaptive Cruise Control)システムの作動回数の積算値を記憶する電子制御装置の実施形態について、図1〜図4に基づいて説明する。
【0020】
図1に示すように、「電子制御装置」としてのECU(Electronic Control Unit)1は、「揮発性メモリ」としてのRAM2、「不揮発性メモリ」としてのEEPROM3、「記憶処理実行手段」としてのCPU4を備えて構成される。RAM2は、IGスイッチがON状態の時にはメインバッテリから電源が供給されてデータの記憶が可能であるが、IGスイッチがOFF状態となると記憶内容が失われてしまう揮発性のメモリである。EEPROM3は、IGスイッチがOFF状態となっても、データの記憶保持が可能な不揮発性のメモリである。EEPROM3には、例えば12万回といったように限界書換え回数が規定されている。これは、データ書換えの際にEEPROM3に高電圧が印加され、物理的なストレスを受けるためである。RAM2とEEPROM3との間では、相互にデータのやり取りが可能である。CPU4は、RAM2及びEEPROM3からデータを読み込んで各種演算を含めた処理を行うことが可能であり、処理済みのデータをRAM2及びEEPROM3に書き込むことが可能である。
【0021】
ACCシステム11は、車速や前走車との車間距離を一定に維持することが可能な自動車の制動制御システムの1つである。ACCシステム11を作動させるためのスイッチを入れると、図示しない車速センサやミリ波センサ等の各種装置からの検出値に基づいて、車速や車間距離を一定に維持すべくスロットルアクチュエータやブレーキアクチュエータに対する制御が実行される。尚、運転者が上記スイッチを切った場合や、アクセルペダル或いはブレーキペダルを一定量以上踏み込んだ場合に、ACCシステム11が停止されるよう構成されているのが一般的である。
【0022】
ACCシステム11には、耐久仕様として作動回数又は作動時間の限界値が規定されている。ECU1は、ACCシステム11の作動回数又は作動時間を積算して記憶保持し、積算値が上記限界値を超過すると警報システム31を作動させて、ACCシステム11のメンテナンスの必要性を運転者に報知する。
【0023】
ACCシステム11が作動すると、作動検出信号がRAM2に入力されるように構成されている。運転中は、RAM2にてACCシステムの作動回数又は作動時間がカウントされ、これを基に作動回数又は作動時間の積算値がCPU4にて求められる。そして、適当なタイミングにおいて、EEPROM3の値がこの積算値で書換えられる。EEPROM3は、繰上げ回数記憶部EA、端数記憶部EB、及び書換え回数記憶部ECを備えている。繰上げ回数記憶部EAは、RAM2にて作動回数が一定の繰上げ量(本実施形態では10回)に達した回数を保持しておく記憶部である。尚、RAM2の値が繰上げ量に達すると、RAM2の値は0にリセットされる。端数記憶部EBは、繰上げ量に満たない作動回数を保持しておく記憶部である。書換え回数記憶部ECは、EEPROM3の書換え回数を保持しておく記憶部である。
【0024】
ECU1には、シフトポジションセンサ21、パーキングブレーキセンサ22、及びナビゲーションシステム23から各種検出信号がECU1に入力される。これらの検出信号は、EEPROM3へのデータの書換えのタイミングを決定するために利用される。本実施形態では、シフトポジションセンサ21からの検出信号を用いて、シフトポジションがパーキングレンジに切換えられた場合にEEPROM3の書換えを行っている。しかしこれに限られるものではなく、パーキングブレーキセンサ22からの検出信号を用いて、パーキングブレーキが作動された場合にEEPROM3の書換えを行ってもよい。さらには、シフトポジションがパーキングレンジに切換えられた場合、或いはパーキングブレーキが作動された場合に加えて、他の条件をAND条件として設けてもよい。他の条件の一例としては、ナビゲーションシステム23が目的地に到達したと判断した場合が考えられるが、これ以外の条件設定も可能であるし、他の条件を複数設けることも可能である。
【0025】
ECU1における、ACCシステム11の作動回数を記憶するための処理の流れを図2〜図4のフローチャートに基づいて説明する。尚、各フローチャートにおいて、RAM2の値をRAM、繰上げ回数記憶部EAの値をEA、端数記憶部EBの値をEB、及び書換え回数記憶部ECの値をECと記載している。各種演算を含む処理については、CPU4がRAM2及びEEPROM3の値を適宜読み込んで処理を行い、その結果得られる値をRAM2及びEEPROM3に書き込むよう構成してある。
【0026】
全体処理の流れを図2に示す。まず、ECU1は、ACCシステム11からの作動検出信号を確認し、ACCシステム11がOFFからONとなったか否かを判定する(#11)。その結果、ACCシステム11がOFFからONとなったと判定された場合は、RAM2の値を増加させ(#12)、後述する繰上げ処理が実行される(#13)。続いて、シフトポジションセンサ21からの検出信号を確認してシフトポジションがパーキングレンジであるか否か(#14)、書換え回数記憶部ECの値が所定回数(ここでは10万回)未満か否か(#15)を判定する。ステップ#14及びステップ#15で共にYESと判定された場合は、後述する端数処理を実行する(#16)。ステップ#14及びステップ#15の何れかでNOと判定された場合には、端数処理は実行されない。
【0027】
繰上げ処理の流れを図3に示す。まず、ECU1は、RAM2の値が10であるか否かを判定する(#21)。その結果、RAM2の値が10であった場合には、RAM2の値を0にリセットし、EEPROM3の繰上げ回数記憶部EAの値を増加させる(#22)。ステップ#21にてRAM2の値が10でないと判定された場合には、繰上げする必要がないのでEEPROM3の書換えは行われない。
【0028】
端数処理の流れを図4に示す。まず、ECU1は、RAM2の値が0でないか否かを判定する(#31)。その結果、RAM2の値が0でない場合には、端数記憶部EBの値とRAM2の値との和を10で除した時の商を、繰上げ回数記憶部EAに加算する。又、この時の余りを端数記憶部EBに記憶すると共に、書換え回数記憶部ECの値を増加させる(#32)。ステップ#31にてRAM2の値が0であると判定された場合には、EEPROM3に新たに積算すべき値がないということなので、EEPROM3の書換えは行われない。
【0029】
以上の処理によれば、EEPROM3の書換えが実行されるのは、繰上げ処理のステップ#22及び端数処理のステップ#32においてである。ステップ#22が実行されるのはRAM2の値が繰上げ量である10に達した時であるから、ステップ#22によるEEPROM3の書換え回数はACCシステム11の作動回数の1/10である。又、ステップ#32が実行されるのはシフトポジションがパーキングレンジに切換えられた時のみであるから、EEPROM3の書換え回数を低減することができる。
【0030】
又、本実施形態によれば、作動回数が繰上げ量である10回に達しない状態でシフトポジションがパーキングレンジに切換えられた場合には、10回未満の端数を端数記憶部EBに記憶保持しておく端数処理を実行しているので、作動回数の記憶漏れがなく、正確な積算値を得ることができる。
【0031】
さらに、ステップ#15で書換え回数記憶部ECの値が所定回数(ここでは10万回)未満か否かを判定し、所定回数以上であった場合は端数処理を行わないようにしている。従って、例えばEEPROM3の限界書換え回数が12万回の場合、書換え回数が10万回〜12万回の間は、ステップ#32におけるEEPROM3の書換えが不要となる。この時、繰上げ量である10回未満の作動回数は積算されずに切り捨てされることになるが、少なくともEEPROM3の書換え回数が10万回に至るまでの作動回数のカウントは正確であるので、大きな誤差となる可能性は低い。
【0032】
〔別の実施形態〕
本発明の別の実施形態として、ACCシステム11の作動時間を積算する実施形態について、図5〜図7に基づいて説明する。尚、電子制御装置の基本構成や処理の手順については、上述の作動回数を積算する実施形態と同様であるので、主に相違点について説明する。
【0033】
ACCシステム11の作動時間を積算する場合、全体処理の流れは図5に示すフローチャートのようになる。まず、ACCシステム11が作動中であるか否かを判定する(#41)。ACCシステム11が作動中の場合、次に作動時間が100ms経過したか否かを判定する(#42)。作動時間が100ms経過している場合には、RAM2の値を増加させる(#43)。作動時間が100ms経過していない場合には、ステップ#41及びステップ#42を繰り返す。このように作動時間を積算する場合には、所定の時間(ここでは100ms)を一単位とし、100ms経過する毎にRAM2の値を増加させるように構成している。このように構成することにより、以下の繰上げ処理及び端数処理を、作動回数を積算する場合と同様に行うことができる。全体処理における以降の流れは前述の実施形態と同じなので説明を省略する。
【0034】
繰上げ処理の流れを図6に示す。まず、ECU1は、RAM2の値が500であるか否かを判定する(#51)。これは即ち、繰上げ量を50秒(=100ms×500)に設定しているということを意味する。ステップ#51においてRAM2の値が500であった場合には、RAM2の値を0にリセットし、EEPROM3の繰上げ回数記憶部EAの値を増加させる(#52)。ステップ#51にてRAM2の値が500でないと判定された場合には、繰上げする必要がないのでEEPROM3の書換えは行われない。
【0035】
端数処理の流れを図7に示す。まず、ECU1は、RAM2の値が0でないか否かを判定する(#61)。その結果、RAM2の値が0でない場合には、端数記憶部EBの値とRAM2の値との和を500で除した時の商を、繰上げ回数記憶部EAに加算する。又、この時の余りを端数記憶部EBに記憶すると共に、書換え回数記憶部ECの値を増加させる(#62)。ステップ#61にてRAM2の値が0であると判定された場合には、EEPROM3に新たに積算すべき値がないということなので、EEPROM3の書換えは行われない。
【0036】
以上の処理によれば、上述の実施形態と同様に、EEPROM3の書換え回数の低減を図りつつ、書換え回数が所定回数(ここでは10万回)に至るまでは作動時間の積算を精度よく行うことができる。
【0037】
〔他の実施形態〕
(1)ACCシステム11の作動回数又は作動時間を繰上げ処理せずに記憶してもよく、この場合はEEPROM3に繰上げ回数記憶部EAと端数記憶部EBとを区別して設ける必要はない。具体的には、運転中のACCシステム11の作動回数又は作動時間を繰上げ処理することなくRAM2でカウントし、シフトポジションがパーキングレンジに切換えられた時にRAM2に記憶されている値をEEPROM3に加算するようにしてもよい。又、エンジン始動時にEEPROM3の値をRAM2に読み込み、運転中のACCシステム11の作動回数又は作動時間を繰上げ処理することなくRAM2でカウントし、シフトポジションがパーキングレンジに切換えられた時に、EEPROM3の値をRAM2に記憶されている値で書換えるようにしてもよい。
(2)エンジン始動時にRAM2にEEPROM3の端数記憶部EBの値を読み込み、この値にACCシステム11の作動回数又は作動時間を、繰上げ処理をしながら積算していくように構成してもよい。この場合、シフトポジションがパーキングレンジに切換えられた時に、EEPROM3の端数記憶部EBの値をRAM2に記憶されている値で書換えるようにすればよい。
(3)EEPROM3の書換え回数を記憶しておくことは本発明の必須要件ではなく、EEPROM3に書換え回数記憶部ECを設けない構成も可能である。又、書換え回数を記憶する記憶装置をEEPROM3とは別に設けることも可能である。
(4)上記実施形態における繰上げ量や所定回数の設定は例示に過ぎず、EEPROM3の限界書換え回数や、ACCシステム11の作動回数又は作動時間の限界値等に応じて適宜設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、ACCシステムに限らず、レーンキープシステム、プリクラッシュシステム、衝突回避システム等の各システムの作動回数又は作動時間の積算値を記憶する電子制御装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 ECU(電子制御装置)
2 RAM(揮発性メモリ)
3 EEPROM(不揮発性メモリ)
4 CPU(記憶処理実行手段)
EA 繰上げ回数記憶部
EB 端数記憶部
11 ACCシステム(制動制御システム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の制動制御システムの作動回数又は作動時間の積算値を、前記自動車のエンジン作動により供給される電源によって一時記憶する揮発性メモリと、
前記電源の供給を受けなくても記憶内容を保持する不揮発性メモリと、
少なくともシフトポジションがパーキングレンジに切換えられた場合、或いは少なくともパーキングブレーキが作動された場合に、前記揮発性メモリに一時記憶されている前記作動回数又は前記作動時間の積算値を前記不揮発性メモリに記憶する記憶処理実行手段と、を備えた電子制御装置。
【請求項2】
前記記憶処理実行手段は、
前記シフトポジションがパーキングレンジに切換えられた場合、或いは前記パーキングブレーキが作動された場合、且つ、前記自動車に搭載されたナビゲーションシステムが目的地に到達したと判断した場合に、前記揮発性メモリに一時記憶されている前記作動回数又は前記作動時間の積算値を前記不揮発性メモリに記憶する請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記不揮発性メモリは、前記作動回数又は前記作動時間が一定の繰上げ量に達した回数を記憶する繰上げ回数記憶部と、前記繰上げ量未満の端数を記憶する端数記憶部と、を有し、
前記記憶処理実行手段は、
前記揮発性メモリに一時記憶されている前記作動回数又は前記作動時間が前記繰上げ量に達すると、前記揮発性メモリの値をゼロ値にリセットするともに、前記繰上げ回数記憶部の値を増加させる繰上げ処理と、
少なくとも前記シフトポジションがパーキングレンジに切換えられた場合、或いは少なくとも前記パーキングブレーキが作動された場合に、前記揮発性メモリに一時記憶されている前記作動回数又は前記作動時間を前記端数記憶部の値に加算し、当該加算値を前記繰上げ量で除した時の商を前記繰上げ回数記憶部に加算し、余りを前記端数記憶部に記憶する端数処理と、を実行する請求項1又は2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記記憶処理実行手段は、
少なくとも前記シフトポジションがパーキングレンジに切換えられた場合、或いは少なくとも前記パーキングブレーキが作動された場合に、それまでの前記不揮発性メモリへの書換え回数が所定回数以上であれば、前記繰上げ処理のみを実行する請求項3に記載の電子制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−73958(P2012−73958A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219954(P2010−219954)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】