説明

電子回路装置

【課題】封止樹脂部と封止対象とのディゲート処理に伴う剥離をより良好に抑制する。
【解決手段】電子部品21が実装された回路基板22を含む電子回路装置20は、回路基板22に接着されて回路基板22と外部機器との電気的接続を可能とするフレキシブル配線板23と、少なくともフレキシブル配線板23に接着された放熱プレート24と、回路基板22とフレキシブル配線板23の一部と放熱プレート24の一部とを封止するように成形された樹脂からなる封止樹脂部25a,25bと、封止樹脂部25a,25bの成形に際して成形金型10内で固化する不要樹脂25dまたは25eと対向するようにフレキシブル配線板23と放熱プレート24とに設けられ、フレキシブル配線板23と放熱プレート24と不要樹脂25dまたは25eとの剥離を促進させる剥離促進部30a,30bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路装置に関し、特に、電子部品が実装された回路基板を含む電子回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の電子回路装置として、可撓性を有するベース基材の一方の面側に設けられた第1配線パターンとベース基材の他方の面側に設けられた第2配線パターンとを有するフレキシブル配線板と、フレキシブル配線板の一方の面側に実装されると共に第1配線パターンと電気的に接続された電子部品と、フレキシブル配線板の一方の面側に設けられて電子部品を封止する第1モールド樹脂部と、フレキシブル配線板の他方の面側に設けられて少なくとも電子部品に対向する領域を封止する第2モールド樹脂部とを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この電子回路装置の第1モールド樹脂部の外周縁かつその外周縁近傍の領域では、フレキシブル配線板の表面に第1配線パターンがなく、かつ、フレキシブル配線板の表面とベース基材との間に第1配線パターンがない。また、第2モールド樹脂部の外周縁かつその外周縁近傍の領域では、フレキシブル配線板の表面に第2配線パターンがなく、かつ、フレキシブル配線板の表面とベース基材との間に第2配線パターンがない。これにより、モールド樹脂部のトランスファーモールド成形に際して、第1、第2配線パターンを切断、損傷するような金型の型締め圧力が第1、第2配線パターンに加わることがなくなるので、配線パターンを切断、損傷することなくフレキシブル配線板上に実装された電子部品をモールド樹脂部により封止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−108362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように電子回路やフレキシブル配線板を樹脂により封止した構造を有する電子回路装置では、電子回路装置に熱衝撃が加えられても封止樹脂とフレキシブル配線板との界面で剥離を生じないように封止樹脂とフレキシブル配線板との密着性をできるだけ高めておくことが好ましい。ただし、封止樹脂とフレキシブル配線板との密着性が高いほど金型のランナ部で固化した樹脂や更にはカルといった不要な樹脂を成形完了後に取り除くディゲートに要する力が大きくなり、ディゲート処理の際に封止樹脂とフレキシブル配線板との界面やフレキシブル配線板の各層間で剥離を生じさせてしまうおそれもある。
【0005】
そこで、本発明による電子回路装置は、封止樹脂部と封止対象とのディゲート処理に伴う剥離をより良好に抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子回路装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採っている。
【0007】
本発明による電子回路装置は、
電子部品が実装された回路基板を含む電子回路装置であって、
前記回路基板と外部機器との電気的接続を可能とするフレキシブル配線板と、
前記フレキシブル配線板に接着された放熱部材と、
前記回路基板と前記フレキシブル配線板の一部と前記放熱部材の一部とを封止するようにモールド成形された樹脂からなる封止樹脂部と、
前記封止樹脂部のモールド成形に際して金型内で固化する不要樹脂と対向するように前記フレキシブル配線板と前記放熱部材との少なくとも一方に設けられて前記不要樹脂との剥離を促進させる剥離促進部と、
を備えるものである。
【0008】
この電子回路装置では、フレキシブル配線板と放熱部材との少なくとも一方に封止樹脂部のモールド成形に際して金型内で固化する不要樹脂と対向するように剥離促進部が設けられる。これにより、封止樹脂部の成形完了後のディゲート処理に際して、金型内のランナ部等で固化した不要な樹脂を封止樹脂部に大きな力を加えることなく容易に取り除くことが可能となり、ディゲート処理に伴う封止樹脂部とフレキシブル配線板と放熱部材との少なくとも何れか一方との剥離をより良好に抑制することができる。
【0009】
また、前記剥離促進部は、前記放熱部材と前記フレキシブル配線板との少なくとも何れか一方の前記不要樹脂と対向する部位に形成されたメッキ層であってもよい。この場合、メッキ層は、封止樹脂部を形成する樹脂(不要樹脂)に密着しにくいものであってもよく、放熱部材またはフレキシブル配線板に密着しにくいものであってもよい。
【0010】
更に、前記放熱部材は、低膨張性金属からなる板体であり、該放熱部材の前記不要樹脂と対向する部位に前記メッキ層としてニッケルメッキ層が形成されてもよい。すなわち、ニッケルメッキ層に対する樹脂(不要樹脂)の密着性はさほど高くないことから、放熱プレートの不要樹脂と対向する部位にニッケルメッキ層を形成しておけば、ディゲート処理に際して、封止樹脂部に大きな力を加えることなく不要樹脂を容易に取り除くことが可能となる。従って、この電子回路装置では、ディゲート処理に伴う封止樹脂部と放熱部材との剥離をより良好に抑制することができる。
【0011】
また、前記フレキシブル配線板は、ベースフィルムと、該ベースフィルムに接着された配線用導体と、該配線用導体を覆うカバーフィルムとを含んでもよく、前記フレキシブル配線板の前記不要樹脂と対向する部位には、前記配線用導体と同一材料からなると共に配線として利用されない導体の層が該配線用導体と同層に形成されると共に、該導体の層上には、前記メッキ層としての金メッキ層が外部に露出するように形成されてもよい。すなわち、金メッキ層に対する樹脂(不要樹脂)の密着性はさほど高くないことから、フレキシブル配線板の不要樹脂と対向する部位に金メッキ層を形成しておけば、ディゲート処理に際して、封止樹脂部に大きな力を加えることなく不要樹脂を容易に取り除くことが可能となる。また、導体の層に金メッキ層を形成すれば、フレキシブル配線板に対して剥離促進部(金メッキ層)を強く密着させることができる。従って、この電子回路装置では、ディゲート処理に伴う封止樹脂部とフレキシブル配線板との剥離をより良好に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例に係る電子回路装置20を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】フレキシブル配線板23を例示する断面図である。
【図4】電子回路装置20の製造工程を説明するための拡大断面図である。
【図5】フレキシブル配線板23Bを例示する断面図である。
【図6】変形例に係る電子回路装置20Bを示す断面図である。
【図7】変形例に係る電子回路装置20Cの製造工程を説明するための拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の一実施例に係る電子回路装置を示す平面図であり、図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。これらの図面に示す実施例の電子回路装置20は、図示しない車両用自動変速機を制御する電子制御装置として構成されており、例えばトランスミッションケースの下部に固定されたユニット台に搭載される。そして、実施例の電子回路装置20は、各種電子部品21が実装される回路基板22と、回路基板22に接着されて当該回路基板22と外部機器100との電気的接続を可能とするフレキシブル配線板(FPC:Flexible Printed Circuit Board)23と、フレキシブル配線板23に接着された放熱プレート(ヒートシンク)24と、回路基板22とフレキシブル配線板23の一部と放熱プレート24の一部とを封止するように成形された樹脂からなる封止樹脂部25aおよび25bとを備える。
【0015】
回路基板22は、セラミックといった耐熱性と熱伝導性とに優れると共に比較的小さい熱膨張係数をもった材料により形成された基材からなり、この基材の一方の面に形成された配線パターンを有する。回路基板22の配線パターンが形成された面は、ICチップを始めとする複数の電子部品21の実装面とされ、この実装面には、配線パターンに接続されたボンディング端子(回路側接続端子)26が複数配設されている。
【0016】
フレキシブル配線板23は、可撓性をもった変形可能な配線材であって、例えば0.1〜0.2mm程度の厚みを有するものである。実施例の電子回路装置20に含まれるフレキシブル配線板23は、図3に示すような、いわゆる片面構造を有するものであり、ポリイミド樹脂といった樹脂により形成されたベースフィルム230と、このベースフィルム230上に接着剤層231を介して貼着された銅箔等からなる配線用導体232と、配線用導体232やベースフィルム230に対して接着剤層233を介して貼着されて配線用導体232を覆うカバーフィルム234とを含む。また、フレキシブル配線板23は、図1に示すように、それぞれ対応する配線用導体232に接続された複数のボンディング端子(配線板側接続端子)236を有する。各ボンディング端子236は、カバーフィルム234から露出しており、ボンディングワイヤ27を介して回路基板22の対応するボンディング端子26と接続される。そして、フレキシブル配線板23(配線用導体232)には、外部機器100との接続に供されるコネクタ(図示省略)が接続されている。フレキシブル配線板23を介して回路基板22と接続される外部機器100には、自動変速機の油圧クラッチや油圧ブレーキを作動させる油圧回路に含まれるソレノイドバルブ、油温センサや油圧センサといった各種センサ類、他の電子制御ユニット等が含まれる。
【0017】
放熱プレート24は、実施例において、普通鋼(SPCC)やクラッド材といった熱伝導性に優れると共に比較的小さい熱膨張係数をもった低膨張性金属からなる例えば矩形状の板体である。図2に示すように、放熱プレート24は、フレキシブル配線板23に対して回路基板22とは反対側から接着される。なお、実施例では、フレキシブル配線板23のベースフィルム230と放熱プレート24とが接合された後、フレキシブル配線板23のカバーフィルム234に対して回路基板22が接着され、それにより回路基板22、フレキシブル配線板23および放熱プレート24が一体化される。
【0018】
封止樹脂部25aおよび25bは、図4に示すように、一体化された回路基板22、フレキシブル配線板23および放熱プレート24を上型11と下型12とからなる成形金型10内にセットした後、例えばエポキシ樹脂といった熱硬化性樹脂を加熱加圧して溶融させると共に、ポット15を介して溶融樹脂を成形金型10内に注入・加圧するトランスファーモールド成形により成形される。図2に示すように、図中上側の封止樹脂部25aは、回路基板22とフレキシブル配線板23の一部とを封止し、図中下側の封止樹脂部25bは、放熱プレート24の一部を封止する。図中上側の封止樹脂部25aと図中下側の封止樹脂部25bとの形状(質量)や位置は、封止樹脂部25a,25bと他の部材との間に作用する応力が緩和されるように定められる。なお、実施例の電子回路装置20が配置される自動変速機のユニット台にはATF(オートマチックトランスミッションフルード)が導入され、放熱プレート24の封止樹脂部25aおよび25bにより封止されていない露出部や封止樹脂部25aおよび25bの表面とATFとが熱交換することにより回路基板22にて発生する熱が外部に放出されることになる。
【0019】
ここで、上述のように回路基板22やフレキシブル配線板23等を樹脂により封止した構造を有する電子回路装置20では、当該電子回路装置20に熱衝撃が加えられても封止樹脂部25aとフレキシブル配線板23との界面や封止樹脂部25bと放熱プレート24との界面で剥離を生じないように封止樹脂部25a,25bとフレキシブル配線板23や放熱プレート24との密着性をできるだけ高めておくことが好ましい。ただし、封止樹脂部25aとフレキシブル配線板23との間および封止樹脂部25bと放熱プレート24との間の密着性が高いほど成形金型10のランナ部で固化した樹脂や更にはカルといった不要な樹脂を成形完了後に取り除くディゲートに要する力が大きくなってディゲート処理の際に封止樹脂部25a,25bに大きな力が加えられてしまい、封止樹脂部25aとフレキシブル配線板23との界面や封止樹脂部25bと放熱プレート24との界面で剥離を生じさせてしまうおそれもある。
【0020】
これを踏まえて、実施例の電子回路装置20では、封止樹脂部25aおよび25bの成形に際して成形金型10内で固化する不要樹脂と対向するようにフレキシブル配線板23に当該フレキシブル配線板23と不要樹脂との剥離を促進させる剥離促進部30aが設けられると共に、放熱プレート24に当該放熱プレート24と不要樹脂との剥離を促進させる剥離促進部30bとが設けられる。実施例において、フレキシブル配線板23側の剥離促進部30aは、図1および図4に示すように、カバーフィルム234の表面の成形金型10内で固化する不要樹脂25dと対向することになる部位にメッキ層を形成することにより構成される。また、放熱プレート24側の剥離促進部30bは、図4に示すように、放熱プレート24の図中下面(フレキシブル配線板23との接着面とは反対側の面)の成形金型10のランナ部で固化する不要樹脂25eと対向することになる部位にメッキ層を形成することにより構成される。フレキシブル配線板23側の剥離促進部30a(メッキ層)を形成する材料としては、エポキシ樹脂といった熱硬化性樹脂に対して比較的密着しにくい金等を用いることができる。ここで、フレキシブル配線板23のボンディング端子236等は、一般に配線用導体から延設された端子部に金メッキを施すことにより構成されることから、剥離促進部30aを金メッキ層とすれば、フレキシブル配線板23すなわち電子回路装置20の製造工程を増加させることなく剥離促進部30aを形成することが可能となる。また、放熱プレート24側の剥離促進部30b(メッキ層)を形成する材料としては、エポキシ樹脂といった熱硬化性樹脂に対して比較的密着しにくいニッケルや亜鉛といった金属材料を用いることができる。なお、剥離促進部30aおよび30bは、一体化された回路基板22、フレキシブル配線板23および放熱プレート24が成形金型10内にセットされる前にフレキシブル配線板23(カバーフィルム234)や放熱プレート上に形成されればよく、剥離促進部30aおよび30bは、フレキシブル配線板23と放熱プレート24との接合前と、フレキシブル配線板23と回路基板22との接合前と、フレキシブル配線板23と回路基板22との接合後との何れの段階に形成されてもよい。
【0021】
以上説明したように、実施例の電子回路装置20では、フレキシブル配線板23に封止樹脂部25aの成形に際して成形金型10内で固化する不要樹脂25dと対向するように剥離促進部30aが設けられると共に、放熱プレート24に封止樹脂部25bの成形に際して成形金型10内で固化する不要樹脂25dまたは25eと対向するように剥離促進部30bが設けられる。これにより、封止樹脂部25aおよび25bの成形完了後のディゲート処理に際して、成形金型10の内のランナ部やその周辺等で固化した不要樹脂25d,25eや更にはカル25c等を封止樹脂部25a,25bに大きな力を加えることなく容易に取り除くことが可能となり、ディゲート処理に伴う封止樹脂部25aとフレキシブル配線板23との剥離や封止樹脂部25bと放熱プレート24との剥離をより良好に抑制することができる。ただし、成形金型10の構造や成形金型10内で不要樹脂が形成される部位によっては、必ずしもフレキシブル配線板23と放熱プレート24との双方に剥離促進部30a,30bを設ける必要はなく、フレキシブル配線板23側の剥離促進部30aと放熱プレート24側の剥離促進部30bとの何れか一方が省略されてもよい。また、剥離促進部30aおよび30bは、フレキシブル配線板23や放熱プレート24と封止樹脂部25aまたは25bとの剥離を促進させるものであればよいので、ディゲート処理に際して不要樹脂と共にフレキシブル配線板23や放熱プレート24から剥離するものであってもよい。
【0022】
更に、ディゲート処理に際して封止樹脂部25aとフレキシブル配線板23との剥離や封止樹脂部25bと放熱プレート24との剥離をより一層促進させるためには、封止樹脂部25aおよび25bの外周に沿って凹部(溝)を形成可能な成形金型10を用いると好ましい。また、ディゲート処理を容易に実行可能とするために、封止樹脂部25aおよび25bのトランスファーモールド成形前、フレキシブル配線板23や放熱プレート24の不要樹脂と対向することになる部位にマスキングテープ等を貼着しておいてもよい。
【0023】
そして、片面構造を有するフレキシブル配線板23の代わりに、図5に示すような、いわゆる両面構造を有するフレキシブル配線板23Bが採用されてもよいことはいうまでもない。図5に示すフレキシブル配線板23Bは、ポリイミド樹脂といった樹脂により形成されたベースフィルム230と、このベースフィルム230の一方の面に接着剤層231uを介して貼着された銅箔等からなる配線用導体232uと、ベースフィルム230の他方の面に接着剤層231lを介して貼着された銅箔等からなる配線用導体232lと、配線用導体232uやベースフィルム230に対して接着剤層233uを介して貼着されて配線用導体232uを覆うカバーフィルム234uと、配線用導体232lやベースフィルム230に対して接着剤層233lを介して貼着されて配線用導体232lを覆うカバーフィルム234lとを含むものである。フレキシブル配線板23Bを備えた電子回路装置20Bを図6に例示する。上述のような両面構造を有するフレキシブル配線板23Bを備えた電子回路装置20Bでは、図6に示すように、適宜スルーホール238等を用いて回路基板22側の配線用導体232uと放熱プレート24側に配線用導体232lとを接続することにより、回路基板22側における封止樹脂部25aとフレキシブル配線板23との界面付近に配線用導体(銅箔)232uが存在しないようにするとよい。これにより、封止樹脂部25a,25bのモールド成形に際して、金型の型締めに伴って回路基板22側の配線用導体232uが断線してしまうのを抑制することが可能となる。
【0024】
なお、上述の電子回路装置20は、車両用自動変速機を制御するのに用いられるものとして説明されたが、これに限られるものではない。すなわち、電子回路装置20は、例えば内燃機関や電動機といった他の車載機器を制御する電子制御ユニットとして構成されてもよく、車載機器以外の機器を制御等する電子回路装置として構成されてもよい。
【0025】
図7は、変形例に係る電子回路装置20Cを示す断面図である。同図に示す電子回路装置20Cにおいて、フレキシブル配線板23Cの不要樹脂25dと対向する部位には、配線用導体232と同一材料からなると共に配線として利用されない銅箔層232Cが配線用導体232と同層に形成されており、カバーフィルム234から外部に露出するように銅箔層232C上に形成される金メッキ層が剥離促進部30aを構成する。すなわち、図7の電子回路装置20Cに適用されるフレキシブル配線板23Cの製造に際して、ベースフィルム230上に配線用導体232の層を形成するときにベースフィルム230の不要樹脂25dと対向することになる部位にも銅箔層232Cが形成されると共に、ベースフィルム230や配線用導体232に対して銅箔層232Cを覆わないようにカバーフィルム234が貼着され、その後、銅箔層232C上に剥離促進部30aとしての金メッキ層が形成される。上述のように、金メッキ層に対する熱硬化性樹脂(不要樹脂)の密着性はさほど高くないことから、フレキシブル配線板23Cの不要樹脂25dと対向する部位に金メッキ層からなる剥離促進部30aを形成しておけば、ディゲート処理に際して、封止樹脂部25aに大きな力を加えることなく不要樹脂25dを容易に取り除くことが可能となる。また、銅箔層232Cに金メッキ層を形成すれば、フレキシブル配線板23Cに対して剥離促進部30a(金メッキ層)を強く密着させることができる。従って、電子回路装置20Cにおいても、ディゲート処理に伴う封止樹脂部25aとフレキシブル配線板23Cとの剥離をより良好に抑制することができる。更に、フレキシブル配線板23のボンディング端子236等は、一般に配線用導体から延設された端子部に金メッキを施すことにより構成されることから、剥離促進部30aを金メッキ層とすれば、フレキシブル配線板23Cすなわち電子回路装置20Cの製造工程を増加させることなく剥離促進部30aを形成することが可能となる。
【0026】
ここで、実施例や変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。すなわち、実施例や変形例において、電子部品21が実装された回路基板22が「回路基板」に相当し、回路基板22に接着されて当該回路基板22と外部機器100との電気的接続を可能とするフレキシブル配線板23,23B,23Cが「フレキシブル配線板」に相当し、フレキシブル配線板23等に接着された放熱プレート24が「放熱部材」に相当し、回路基板22とフレキシブル配線板23等の一部と放熱プレート24の一部とを封止するように成形された樹脂からなる封止樹脂部25aおよび25bが「封止樹脂部」に相当し、封止樹脂部25aおよび25bの成形に際して成形金型10内で固化する不要樹脂25d,25eと対向するようにフレキシブル配線板23等と放熱プレート24とに設けられ、フレキシブル配線板23等または放熱プレート24と不要樹脂25dまたは25eとの剥離を促進させる剥離促進部30a,30bが「剥離促進部」に相当する。ただし、これら実施例および変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。すなわち、実施例はあくまで課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の解釈は、その欄の記載に基づいて行なわれるべきものである。
【0027】
以上、実施例を用いて本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、電子回路装置の製造産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
10 成形金型、11 上型、12 下型、15 ポット、20,20B,20C 電子回路装置、22 回路基板、23,23B,23C フレキシブル配線板、24 放熱プレート、25a,25b 封止樹脂部、25d,25e 不要樹脂、26 ボンディング端子、27 ボンディングワイヤ、30a,30b 剥離促進部、100 外部機器、230 ベースフィルム、231,231u,231l,233,233u,233l 接着剤層、232,232u,232l 配線用導体、232C 銅箔層、234,234u,234l カバーフィルム、236 ボンディング端子、238 スルーホール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装された回路基板を含む電子回路装置であって、
前記回路基板と外部機器との電気的接続を可能とするフレキシブル配線板と、
前記フレキシブル配線板に接着された放熱部材と、
前記回路基板と前記フレキシブル配線板の一部と前記放熱部材の一部とを封止するようにモールド成形された樹脂からなる封止樹脂部と、
前記封止樹脂部のモールド成形に際して金型内で固化する不要樹脂と対向するように前記フレキシブル配線板と前記放熱部材との少なくとも一方に設けられて前記不要樹脂との剥離を促進させる剥離促進部と、
を備える電子回路装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子回路装置において、
前記剥離促進部は、前記放熱部材と前記フレキシブル配線板との少なくとも何れか一方の前記不要樹脂と対向する部位に形成されたメッキ層である電子回路装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電子回路装置において、
前記放熱部材は、低膨張性金属からなる板体であり、該放熱部材の前記不要樹脂と対向する部位に前記メッキ層としてニッケルメッキ層が形成されている電子回路装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の電子回路装置において、
前記フレキシブル配線板は、ベースフィルムと、該ベースフィルムに接着された配線用導体と、該配線用導体を覆うカバーフィルムとを含み、前記フレキシブル配線板の前記不要樹脂と対向する部位には、前記配線用導体と同一材料からなると共に配線として利用されない導体の層が該配線用導体と同層に形成されると共に、該導体の層上には、前記メッキ層としての金メッキ層が外部に露出するように形成されている電子回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−219092(P2010−219092A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60726(P2009−60726)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】