説明

電子基板の検査管理方法、検査管理装置および目視検査装置

【課題】不具合箇所が見付かった基板を検査ラインから除外せずに修理し、その修理が適正だったか後で調べられるようにし、検査部位を予めプログラムしておく必要を無くす。
【解決手段】a)少なくとも一部の検査工程12A〜12Hでは、不具合箇所の修理を行う;b)ステップa)で不具合箇所を修理した時に不具合箇所の不具合内容と、位置情報と、修理前および修理後の少なくとも一方の画像とを読込む;c)ステップb)で読込んだ不具合箇所の不具合内容と、位置情報と、修理前・後の少なくとも一方の画像とをデータベース16に蓄積する;d)ステップc)でデータベース16に蓄積した不具合内容と、位置情報と、修理前・後の少なくとも一方の画像とを、適時に読出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子基板を複数の検査工程を持つ検査ラインに導き、順次検査し不具合箇所を修理する電子基板の検査管理方法と、検査管理装置と、目視検査装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子基板(プリント配線基板、以下単に基板ともいう。)は近年実装密度が益々高くなり、電子回路も複雑になっている。そのため製造工程の最後に行う検査は、複数の検査工程に分けて順次段階的に行うようにしている。例えば自動外観検査(AOI)、自動X線検査(AXI)、電子回路の各部の検査(ICT)、製品としての機能検査(FCT)、重点目視検査、出荷検査などである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−102075
【0004】
特許文献1には、複数の自動外観検査装置(目視のための画像を取る(撮る)機能を持ち、検査員はここにはいない。段落0027)を用いる場合に、1名の検査員で複数の自動外観検査装置を運用できるようにすることが示されている。すなわち各自動外観検査装置は予め決まった(予めプログラムされた。段落0032)検査部位について不良の可能性があることを検出すると、その画像を集中管理装置のモニタ画面に送り、サーバに蓄積する(段落0029,0030)。集中管理装置ではモニタ手段に複数の目視検査装置から送信された検査部位の画像をスケジュールに従って順次表示し1名の検査員で本当の不良かどうか検査判定するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されたものは、各自動外観目視検査装置では不具合箇所(不良箇所)が仮にあっても修理を行わないから、この基板を検査ラインから外してライン外で個別に修理する必要がある。このため簡単な修理で不具合を解消できる場合にもその基板をラインから除外しなければならず、能率が悪いという問題がある。また除外した基板は別の作業者が修理しなければならないから、検査員が1名になってもライン全体に必要な人員数の減少には限界がある。
【0006】
また自動外観検査装置は予め決まった検査部位の画像を集中管理装置に送るだけだから、不具合がある基板を検査ラインから外して修理した場合に、修理が適正に行われたか否かを後で調べることができない。特に同じ基板が複数回修理された時には、どの修理に不備が有ったのかを後で検知することもできない。
【0007】
さらに不良の有無を検出する検査部位は予めプログラムにより定めておくため(段落0032)、プログラムされていない検査部位については画像が撮影できないばかりでなく、検査員は検査も判定もできない。
【0008】
この発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、不具合箇所が見付かった基板を検査ラインから除外せずに修理できるようにして検査・修理能率を向上し、修理が行われた場合にその修理が適正だったか否かを後で調べることができるようにして修理の信頼性を向上し、検査部位を予めプログラムしておく必要を無くし不具合箇所を新たに発見しまた任意に設定できるようにした電子基板の検査管理方法を提供することを第1の目的とする。
【0009】
またこの方法の実施に用いる検査管理装置を提供することを第2の目的とする。さらに目視検査装置を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明によれば第1の目的は、製造が完了した電子基板を、複数の異なる検査工程を持つ検査ラインに導き、順次検査し不具合箇所を修理する電子基板の検査管理方法であって、a)少なくとも一部の検査工程では、不具合箇所の修理を行う;b)前記ステップa)で不具合箇所を修理した時に前記不具合箇所の不具合内容と、位置情報と、修理前および修理後の少なくとも一方の画像とを読込む;c)前記ステップb)で読込んだ不具合箇所の不具合内容と、位置情報と、修理前・後の少なくとも一方の画像とをデータベースに蓄積する;d)前記ステップc)でデータベースに蓄積した不具合内容と、位置情報と、修理前・後の少なくとも一方の画像とを、適時に読出す;以上の各ステップa)〜d)を行う電子基板の検査管理方法、により達成される。
【0011】
第2の目的は、請求項1の方法の実施に用いる電子基板の検査管理装置であって、不具合箇所を検出しその画像を表示して修理を促すと共に、修理前・後の少なくとも一方の画像を撮影する複数の検査工程と;前記検査工程で検出した不具合箇所の不具合内容と、位置情報と、修理前・後の少なくとも一方の画像とを蓄積し、前記検査工程でこれらの蓄積データを読出し可能とするデータベースと;を備えることを特徴とする電子基板の検査管理装置、により達成される。
【0012】
また第3の目的は、請求項8の方法の実施に用いる目視検査装置であって、検査工程で検出した不具合箇所を読取る撮影手段と、この読取った画像を表示する表示手段と、この基板に付与するIDを自動生成するID自動生成手段と、基板にIDを表示するプリンタと、基板に付されたIDを読取るIDリーダとを備える目視検査装置、により達成される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、検査工程で不具合箇所が見付かった時にはこの基板を検査者が目視検査して修理を行うから、この基板をラインから除外して別途修理する必要が無い。ラインから外して別途修理する場合はこの基板を最初から検査し直して修理しなければならないので能率が極めて悪いが、本発明によれば各工程で発見した不具合は同じ工程で修理も行ってしまうから能率良く修理することができる。
【0014】
また修理前・後の少なくとも一方の画像をデータベース(サーバ、記憶手段)に蓄積し適時に読出せるようにしたから、どの修理が不適切であったのかを後で調べることができる。このため検査者(修理者)の適切かつ責任ある対応を求めることになり、修理の信頼性を向上できる。さらに予めプログラムした検査部位以外であっても検査で発見した部位を修理でき、不具合箇所は適宜設定できるから、不具合発生に対して柔軟な対応が可能である。
【0015】
請求項13に係る発明によれば、この方法の実施に用いる検査管理装置が得られる。請求項16に係る発明によればこの方法の実施に用いる目視検査装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例である検査工程を示す図である。
【図2】同じく動作の流れ図である。
【図3】目視検査装置の構成図である。
【図4】ID付与の動作流れ図である。
【図5】IDを付与した基板の平面図であり回路を省いた図である。
【図6】表示手段の表示画面の例を示す図である。
【図7】クレーム処理時の動作流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
データベース(あるいはサーバ、記憶手段)に蓄積した不具合内容、不具合位置、修理前・後の両方または一方の画像(以下単に修理前・後の画像ともいう。)は、後の工程で修理する際に読出せるようにすることができる(請求項2)。この場合は、後の工程で修理する際に前の工程で行った修理内容を確認することができ、的確な修理方針を決めるのに適する。この時データベースには修理した検査者(修理者)の氏名など(ID)、日時なども入力しておく。
【0018】
またこれらの不具合内容、不具合位置、修理前・後の画像は、検査ラインとは別に設けた検査モニタで読出せるようにしてもよい(請求項3)。この場合には熟練した検査者がこの検査モニタを見て、またこれまでの修理経過(履歴)を確認することによって一層的確な修理のための指示をいずれかの検査工程に出すことができ、修理の信頼性を上げることができる(請求項4)。
【0019】
さらにデータベースには、検査ラインとは別のリコール修理部を接続し、出荷済み製品に発生した不具合に対して、その基板の検査・修理工程のデータ(不具合内容、不具合位置、画像など)を参照することができる(請求項5)。この場合には不具合発生の原因をつき止めたり、今後の修理方針の決定、設計変更の指示などの対応をし易くすることができる。
【0020】
請求項1において、複数の異なる検査工程は、AOI(自動外観検査、Auto Optical Inspection)、AXI(Antomatic X-ray Inspection)、ICT(Incircuit Test)、FCT(Functional Test)、目視検査のいずれかを含むことができる(請求項6)。
【0021】
ここにAOIは、検査対象基板の撮影画像を予めプログラムした(設定した)正常な基板の画像と比較することによって外観を自動的に検査するものであり、配線パターンや部品配置などを外観検査する。ICTは電子回路の各部にスプリング付きコンタクトプローブ(ピン)をジグ方式やフライングプローブ方式によって接触させ、各ランド間あるいはピン間の導通、絶縁などの状況から電子部品(抵抗器、コンデンサなど)の定数、ダイオード特性、回路パターンのオープン・ショートなどを測定し、基準データと比較することにより不具合箇所と不具合内容を検出する。
【0022】
FCTは電源を接続して基板全体の機能を検査する。目視検査は、AOI、AXI、ICT、FCTにおいて不具合が無いか修理により不具合が解消した基板を検査者が直接あるいは顕微鏡やカメラによる拡大画像を目視観察することにより行う(請求項7)。検査者は画像を見ながら、不具合箇所の不具合内容、例えばハンダの不良、回路パターンの断線・ショート、回路素子の特性不適などを判定する。この判定はコンピュータによって自動で行ってもよい。例えば後記請求項14の不良追跡・特定処理部でソフトウェアを用いて判定することができる。
【0023】
この時データベースにはBOM(bill of materials、部品表、部品構成表、部品展開表)、ガーバーデータ(Gerber data、回路パターンの図形の中身の塗りつぶしなどを示すデータ)、CADデータ(回路パターンの図柄・パターンを作成・決定するデータでCAD上で設計したデータ)が予め蓄積され、あるいは適時にこれらのデータにアクセスして読出せるようにしておくのがよい(請求項12)。このようにすれば目視検査の際に不具合箇所の部品特性をBOMから読出したデータと対比して部品の実装間違いや部品自身の不良などが速やかかつ簡単に判定できる。また回路パターンの不具合はガーバーデータやCADデータを用いて速やかに判定できる。
【0024】
ステップa)では、不具合を検出した最先の検査工程でこの基板にIDが無い時には自動生成したIDを付し、後工程ではこのIDを付した基板の修理履歴(修理前・後の画像を含む)をデータベースから読み出せるようにすれば、適確な修理を行うのに適する(請求項8)。ここに用いる基板IDは、バーコードが適し、二次元バーコード(QRコード)などであってもよい(請求項9)。このようなバーコードを用いる場合は、検査工程にバーコードのプリンタ(あるいはレーザーマーカでもよい。)やリーダを必要に応じて設けておく(請求項10)。
【0025】
ステップd)では不具合箇所を基板の画像上に点滅させたり、カーソルなどでその位置を指示させれば、不具合箇所を容易に確認でき、作業能率が向上する(請求項11)。
【0026】
この方法の実施に用いる検査管理装置においては、不具合箇所の発生原因を追跡し原因を特定する不良追跡・特定処理部を設け、その結果を検査工程に出力可能とするのがよい(請求項14)。例えば不具合箇所の画像(AOI、AXIの場合には配線の断線やショートなどの画像)から不良を判別したり、測定データ(ICT、FCIの場合)から部品特性が適正かどうかをBOM、ガーバーデータ、CADデータなどを用いて判定できる(請求項15)。
【0027】
この発明に用いる目視検査装置は、撮影手段、表示手段、基板IDの自動生成手段、プリンタ、IDリーダを備えるが(請求項16)、ここに用いる基板IDはバーコードが適する(請求項17)。また表示手段は、基板全体画像と不具合箇所の拡大画像とを同じ画面上に同時に表示すれば、両画面の対比がし易くなり能率が良い(請求項18)。この時基板全体画像に不具合箇所を示すマーカー(点滅マーカー、カーソルなど)を付せば、一層見易くなる(請求項19)。
【実施例1】
【0028】
図1において、符号10は検査ラインであり、異なる検査工程12(12A〜12H)を順に配列したものである。製造が完了した電子基板14はこの検査ライン10の一端から導入し、異なる検査工程12(12A〜12H)で順次検査を行い、不具合が無い基板14と不具合箇所を修理した基板14が出荷され、不具合が解消してない基板14は検査ライン10の所定の検査工程すなわちICT12Cに戻して順次工程12C〜12Hで再度検査と修理を行う。
【0029】
図1で16はデータベース(DB)であり、バス18を介して各検査工程12に接続され、各検査工程12における不具合箇所や不具合内容や修理前・後の画像などのデータを蓄積している。このデータベース16には、BOM20、ガーバーデータ22、CADデータ24が予め蓄積(メモリ)されている。なおこれらはデータベース16に蓄積しておくのに代えてバス18に接続しておき、適宜の検査工程12や後記する検査モニタ50やクレーム処理部52や不良追跡・特定処理部54がバス18を介して直接アクセスして必要なデータを取出せるようにしてもよい。
【0030】
検査工程12AはAOI(自動外観検査)であり、基板14の画像を撮影して予めプログラムした正常な画像と比較することにより不具合の有無を自動判定する(図2、ステップS100)。例えば回路パターンのショート(短絡)やオープン(断線)、部品配置などを外観から検査する。このAOI12Aで撮影した画像Aは、検出した不具合箇所の位置(アドレス、X−Y座標)、基板IDなどと共にデータベース16に蓄積する。このAOI12Aで行う処理内容は図2の「処理内容」欄に記されている。ここに基板IDはこの時点で未だ付されていない場合には自動生成したIDを付し、不具合がある場合は次の目視検査工程12Bで自動生成して付してもよい。
【0031】
AOI12Aで不具合箇所を検出した時(ステップS102)には、次の目視検査工程12Bでこの不具合箇所を目視検査する(ステップS104)。この目視検査に用いる装置(目視検査装置)26は図3に示す。この装置26は、基板14を撮影する撮影手段としてのカメラ28と、撮影した画像を表示する表示手段30と、バーコードリーダプリンタ32と、カメラ駆動部34と、制御部36と、データベース38とを備える。データベース38は前記したデータベース16であってもよいが、これとは別個に目視検査装置26に内蔵したメモリであってもよい。
【0032】
制御部36は、カメラ位置制御部36Aと、画像処理部36Bと、ID生成・判別部36Cと、画像生成部36Dとを持つ。カメラ位置制御部36Aは、AOI12Aで検出した不具合箇所の位置データを読込んでカメラ28の撮影位置をこの不具合箇所に設定する。カメラ駆動部34はこの位置にカメラ28を移動させる。また検査者は画像を見ながら場合によっては検査箇所を指示し、撮影位置をこの位置に変更させる。画像は表示手段30に表示される。
【0033】
検査者は表示手段の画像を目視し、不具合箇所を判定する。そして不具合箇所の修理を行うと共に、修理前・後の画像Bを読取って画像処理部36Bで所定の画像処理を施してデータベース38または16に蓄積する。
【0034】
ID生成・判別手段36Cは、AOI12Aで不具合があると判定された基板14で未だ基板IDが付与されていない時には(図4、ステップS106)、この基板14に対するID(基板ID)を例えばバーコードで生成し、このID(バーコード)をバーコードリーダプリンタ32でカード40(図5)にプリントする(図4、ステップS108)。プリンタ32はレーザーマーカで印字するものであってもよい。このカード40は検査者が基板14に貼着する。図5はこの基板14を示している。なおこのIDは制御部36が内蔵する自動生成ソフトウェアにより生成されるユニークシリアルIDであり、データベース38または16に記録される。この基板14は以後このIDによって識別される。
【0035】
IDが付与された基板14は検査者が不具合位置(不良位置)を目視により確認し、不具合内容(不良内容)をキーボード30A(図3)から入力する。そして不具合箇所を手作業で、あるいは適切な治具を用いて修理すると共に、修理前・後の画像Bを前記の通りデータベース38、16に蓄積する(S104)。
【0036】
なお基板14に不具合が無い時には(図4、ステップS102)、IDが無ければ(ステップS103)IDを自動生成して基板14に付す(ステップ109)。
【0037】
図3において画像生成部36Dは、例えば図6に示す画面を生成し表示手段30に表示させる。この図6でaは基板名、検査日、検査者名等の表示欄、bは基板14の全体画像、cはこの画像bの中にある不具合箇所、dはこの不具合箇所cの拡大画像、eはこの不具合の原因となる部品名や修理内容や修理履歴などの表示欄である。不具合箇所cは図5の不具合箇所cに対応するものであり、図6の画面上ではこの不具合箇所cがX−Yカーソル線で示される。カーソルに代えて不具合箇所を点滅させたり、他のマーカーを用いてもよい。
【0038】
表示欄eに表示する部品名などの表示内容は、前記BOM20、ガーバーデータ22、CADデータ24を参照したり、データベース16から読出したデータを用いて作成する。また画像生成部36Dでは前工程で蓄積した不具合箇所の修理前・後の画像Aなどを検査者の指示に基づいて表示手段30に表示させる。
【0039】
このように構成される目視検査装置26と同じものは、目視検査工程12D、12F、12G、12H(図1参照)でも用いられる。これらは、基板IDがすでに付与されている場合には(図4のステップS106→有)、重ねて基板IDを付与することなく目視検査(S104)を行う点が工程12Bと異なる。また画像生成部36Dが読み出せる前工程の修理前・後の画像A〜Eも異なることは勿論である。
【0040】
目視検査工程12Bにおける処理(ステップS104)が済むと、次にICTによる検査工程12Cを行う。この工程12Cでは前記したように基板14にコンタクトプローブを接触させ、ランド間あるいはピン間の導通、抵抗、容量などの特性を測定し基準データと比較して、回路や部品の不良、部品の間違いなどを検査し(図2、ステップS110)、その結果をデータベース16に送る。不具合があれば(図2のステップS112)、目視検査工程12Dに入り目視検査を行う(ステップS114)。この時不良追跡・特定処理部54は不良位置を自動的に追跡し判定する。
【0041】
この目視検査工程12Dでは前記目視検査装置26(図3)を用い、図4に示すように基板IDの有無を確認し(ステップS106)、すでに前の目視検査工程12Bで付与されていれば基板IDをバーコードリーダプリンタ32(図3)で読取る(図4、ステップS116)。そしてステップS104と同様に修理を行い、修理前・後の画像Cをデータベース16に蓄積する(ステップS114)。
【0042】
この目視検査工程12Dが終わると次にFCTによる検査工程12Gに入る(図2、ステップS118)。この工程12Eでは前記したように基板14に電源をつなぎ、基板全体として所定の機能を持っているか否かを検査する(ステップS120)。この結果はデータベース16に送る。不具合があれば目視検査工程12Fを行う(ステップS122)。この時の処理内容は前記工程12Dと同じである。
【0043】
目視検査工程12Fが終わると次に目視検査工程12Gに入る(ステップS124)。この工程12Gでは検査者が基板14の全体の検査を行う。例えば基板14に特有な発生頻度の高い不具合箇所(重点検査箇所)を重点的に検査する。この位置のデータは予めデータベース36または16に入れておき、検査時にこの位置を点滅表示などで見易くすれば、作業能率が向上する。
【0044】
この検査で不具合が有れば(ステップS126)、修理し、修理前・後の画像Eを蓄積する。この時には以前の工程12A〜12Fで蓄積した画像A〜Dを参照する(ステップS128)。そして最後に出荷検査12Hを行う(ステップS130)。この出荷検査12Hでは主として基板14の抜き取り検査を行い、また外観精密検査を行って品質管理(QC)の資料とする。この段階で不具合が有れば検査工程12Cに戻して再び各検査工程12C〜12Hの検査を行う(ステップS132)。不具合が無ければ出荷される。また不具合があれば、その基板を含むロットに含まれる他の基板を再点検して不良品の出荷を防ぐ。
【実施例2】
【0045】
前記実施例1において、各検査工程12A〜12Hの処理状況を他の熟練した検査者が把握して適切な指示を出せるようにすることが望ましい。このためには図1のバス18に検査モニタ50を接続し、このモニタ50からデータベース16に蓄積した各工程12A〜12Hの検査データを読出せるようにすればよい。
【0046】
このモニタ50を操作する熟練検査者は、適時に各工程12A〜12Hの検査結果や、工程12B、12D、12F、12Gなどの修理内容をデータベース16から読出し、適時に修正方針を与えて適切な修理を指示することができる。この時モニタ50では、以前に行った修理状況を、修理前・後の画像から確認できるので、指示は一層適切なものになる。また不適切な修理を行った修理者(検査者)に対してその点を指摘し、修理者の教育に用いることもできる。
【実施例3】
【0047】
またデータベース16に蓄積されたデータを用いれば、出荷した製品に発生した不具合、クレームや、メーカー(販売者)によるリコール処理に対する対応を迅速にとることが可能になる。このためには図1のバス18に接続したクレーム処理部52を設け、各工程12A〜12Hの検査データを用いて修理などの対応方針を決めるようにするのがよい。
【0048】
図7はこの場合にクレーム処理部52で行う処理の流れ図である。まず販売した(ステップS200)製品に不具合が発生した時には(ステップS202)、その不具合内容をクレーム処理担当者に伝える。この担当者はクレーム処理部52を起動させる一方(ステップS204)、不具合が発生した基板14の基板IDを入力する(ステップS206)。そしてデータベース(DB)16からこの基板14の検査工程12A〜12Hにおける蓄積データを読出す(ステップS208)。
【0049】
この蓄積データには過去の修理内容、修理経過、修理前・後の画像などが含まれるから、担当者はこれらを参照して原因を追及し、適切な修理方針を決めることができる。従ってこの修理方針に従って修理を指示することができる(ステップS210)。この修理の前・後の画像は撮影して保存し、後の品質管理の資料としてもよい(ステップS211)。またその原因が製造工程や設計にあると考えられる場合には、製造工程変更や設計変更をそれぞれの対応部署に指示する(ステップS212)。この結果同じ不具合の発生を未然に防ぐことができる。さらに不具合があった基板14を含むロットには同じ不具合が発生するおそれがあり得るものとして、そのロット単位の基板を組込んだ製品のリコールなどの対応を検討する(ステップS214)。
【符号の説明】
【0050】
10 検査ライン
12(12A〜12H) 検査工程
14 基板
16 データベース
18 バス
20 BOM
22 ガーバーデータ
24 CADデータ
26 目視検査装置
28 カメラ(撮影手段)
30 表示手段
32 バーコードリーダプリンタ
34 カメラ駆動部
36 制御部
38 データベース
50 検査モニタ
52 クレーム処理部
54 不良追跡・特定処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造が完了した電子基板を、複数の異なる検査工程を持つ検査ラインに導き、順次検査し不具合箇所を修理する電子基板の検査管理方法であって、
a)少なくとも一部の検査工程では、不具合箇所の修理を行う;
b)前記ステップa)で不具合箇所を修理した時に前記不具合箇所の不具合内容と、位置情報と、修理前および修理後の少なくとも一方の画像とを読込む;
c)前記ステップb)で読込んだ不具合箇所の不具合内容と、位置情報と、修理前・後の少なくとも一方の画像とをデータベースに蓄積する;
d)前記ステップc)でデータベースに蓄積した不具合内容と、位置情報と、修理前・後の少なくとも一方の画像とを、適時に読出す;
以上の各ステップa)〜d)を行う電子基板の検査管理方法。
【請求項2】
ステップd)では、ステップa)より後の検査工程で行う修理時に、ステップc)でメモリしたステップa)の不具合箇所の不具合内容と、位置情報と、修理前・後の少なくとも一方の画像とを読出す請求項1の電子基板の検査管理方法。
【請求項3】
データベースに接続された検査モニタを持ち、この検査モニタは、ステップc)でメモリした不具合箇所の不具合内容と、位置情報と、修理前・後の少なくとも一方の画像とを適時に読出す請求項1の電子基板の検査管理方法。
【請求項4】
検査モニタは適宜の検査工程に対して修理指示指令を出力する請求項3の電子基板の検査管理方法。
【請求項5】
データベースと接続されたリコール処理部を持ち、リコール処理部は、出荷済み製品に発生した不具合を調べるためにデータベースに蓄積されたデータを適時に読出す請求項1の電子基板の検査管理方法。
【請求項6】
複数の異なる検査工程は、AOI、AXI、ICT、FCT、目視検査装置のいずれかを含む請求項1の電子基板の検査管理方法。
【請求項7】
ステップa)で行う修理は、検査者が目視検査装置で検査対象である電子基板の画像を目視検査しながら行う請求項1の電子基板の検査管理方法。
【請求項8】
ステップa)で不具合箇所を検出し修理した最先の検査工程では、この修理した基板に基板IDが無い時に新たに生成した基板IDを付すと共に、後工程ではこの基板IDから前工程で修理した基板の不具合内容と、修理位置と、修理前・後の少なくとも一方の画像とをデータベースから読出す請求項1の電子基板の検査管理方法。
【請求項9】
基板に付す基板IDはバーコードである請求項8の電子基板の検査管理方法。
【請求項10】
基板に付す基板IDはバーコードであり、不具合箇所を検出した最先の検査工程には前記バーコードのプリンタが、またこのバーコードを付した検査工程より後の検査工程にはこのバーコードのリーダを設けた請求項8の電子基板の検査管理方法。
【請求項11】
ステップd)では、前工程で修理した箇所を点滅マークなどにより表示する請求項1の電子基板の検査管理方法。
【請求項12】
データベースには、BOM、ガーバーデータ、CADデータが予め蓄積され、各検査工程では修理時にこれらのデータを読み出す請求項1の電子基板の検査管理方法。
【請求項13】
請求項1の方法の実施に用いる電子基板の検査管理装置であって、
不具合箇所を検出しその画像を表示して修理を促すと共に、修理前・後の少なくとも一方の画像を撮影する複数の検査工程と;
前記検査工程で検出した不具合箇所の不具合内容と、位置情報と、修理前・後の少なくとも一方の画像とを蓄積し、前記検査工程でこれらの蓄積データを読出し可能とするデータベースと;
を備えることを特徴とする電子基板の検査管理装置。
【請求項14】
請求項13において、さらに、データベースに蓄積されたデータを用いて不具合箇所の発生原因を追跡し原因を特定する不良追跡・特定処理部を備え、その結果を検査工程に出力可能とした電子基板の検査管理装置。
【請求項15】
不良追跡・特定処理部は、BOM、ガーバーデータ、CADデータのいずれかを用いて不良原因を特定するコンピュータソフトウェアに基づいて処理を行う請求項14の電子基板の検査管理装置。
【請求項16】
請求項8の方法の実施に用いる目視検査装置であって、検査工程で検出した不具合箇所を読取る撮影手段と、この読取った画像を表示する表示手段と、この基板に付与する基板IDを自動生成するID自動生成手段と、基板に基板IDを表示するプリンタと、基板に付された基板IDを読取るIDリーダとを備える目視検査装置。
【請求項17】
基板IDはバーコードで表示する請求項16の目視検査装置。
【請求項18】
表示手段は、基板の全体画像と不具合箇所の拡大画像とを同時に表示可能とした請求項16の目視検査装置。
【請求項19】
基板の全体画像には不具合箇所を示すマーカーが付されている請求項18の目視検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−138930(P2011−138930A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297974(P2009−297974)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(508183782)WIT株式会社 (3)
【Fターム(参考)】