説明

電子式方位計、電子式方位計の調整方法および製造方法

【課題】 複数のステップモータを備えた電子式方位計において校正処理を短時間で行えるようにする。また、校正処理の時間短縮によって工程コストの低減を図れる電子式方位計の調整方法および製造方法を提案する。
【解決手段】 ステップモータのロータ57a,62aの向きがパターンA〜Dの組み合わせパターンの状態で、且つ、第1〜第4の方向I〜IVから外部磁界を印加したときの方位センサ53のセンサ出力値から、方位センサ53の校正処理を行う場合に、パターンAの状態でのみ第1〜第4の方向I〜IVから外部磁界を印加したときの各センサ出力値を取得する一方、パターンB〜Dの状態では第1方向Iから外部磁界を印加したときのセンサ出力値を取得して、残りのセンサ出力値は計算により求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステップモータを有する電子式方位計、この電子式方位計の調整方法および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、磁気センサを用いて電気的に方位の計測を行う電子式方位計が実用化されている。また、電子式方位計には、内部にステップモータ(ステッピングモータとも言う)を搭載し、このステップモータにより1個又は複数の指針を回転させる構成を有するものもある。
【0003】
ステップモータは、磁化されたロータが1ステップ(例えば180°)ずつ回転する構成であり、その回転位置によってロータから磁気センサに及ぼされる磁界の向きと大きさが変化する。ロータから磁気センサに及ぼされる磁界は、補正により磁気センサの出力値から除去しないと正確な方位の計測が行えない。
【0004】
そこで、従来、ステップモータを有する電子式方位計において、ロータの磁極の向きごとに異なる補正処理を行って方位を求める技術について提案されている(例えば特許文献1)。
【0005】
また、従来の電子式方位計においては、磁気検出に伴う種々の誤差(例えば、磁気センサの周囲に配置された磁性体の影響、磁気センサにより磁界検出がなされる2方向の直角度の誤差、磁気センサの搭載角度の誤差など)を除去するために、工場出荷前などに予め校正処理を行って、方位計測時の補正処理に必要な数値を求めておく技術も提案されている。例えば、特許文献2の校正技術は、電子式方位計に対して、予め定められた複数の方向から外部磁界を印加しつつ、各外部磁界の印加状態で磁気センサの出力値をそれぞれ取得し、これらの出力値から上記種々の誤差を除去するための数値を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−170664号公報
【特許文献2】特開2002−048651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
複数のステップモータを有する電子式方位計に対して、上記従来の校正処理を行う場合、なんら工夫がないと、複数のロータの磁極の向きの組み合わせパターンごとに、予め定められた複数の方向から外部磁界を印加し、各状態における磁気センサの出力をそれぞれ取得することになる。
【0008】
例えば、ステップモータが3個で、各ステップモータの極数が2極であり、校正処理において4方向から外部磁界を印加して磁気センサの出力値を取得する場合を想定する。すると、ロータの向きの組み合わせパターンは2=8パターンであるため、8パターン×4方向の32通りでロータの向きと外部磁界の向きとを変化させながら磁気センサの出力値を取得する必要が生じる。
【0009】
このように、ステップモータの数が増すと、磁気センサの出力値を取得しなければならない回数が増すため、1回の校正処理にかかる時間が長くなってしまう。また、製品の個体差による誤差を補正するためには、個々の製品ごとに校正処理を行うことも想定され、その場合、製品の数だけ校正処理にかかる時間は倍増する。
【0010】
この発明は、複数のステップモータを備えた電子式方位計において校正処理を短時間で遂行できるようにすることにある。また、校正処理の時間短縮により工程コストの低減を図れる電子式方位計の調整方法および製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
複数のステップモータと、
磁気センサと、
前記複数のステップモータにおける複数のロータの磁極の向きの組み合わせパターンが、当該組み合わせパターンとして取り得る所定数の組み合わせパターンのうち、何れの組み合わせパターンであるかを判別する極性向き判別手段と、
前記所定数の組み合わせパターンに対応する複数の方位算出用の補正値をそれぞれ算出する補正値演算手段と、
前記磁気センサの出力値を、前記極性向き判別手段により判別された前記組み合わせパターンに対応する前記方位算出用の補正値に基づき補正して、方位を求める方位演算手段と、
を備えた電子式方位計であって、
前記補正値演算手段は、
前記所定数の組み合わせパターンのうちの1つである特定組み合わせパターンの状態で、且つ、予め定められた複数の方向から別々に外部磁界が印加されたときの前記磁気センサの各出力値を記憶させる第1の記憶制御手段と、
前記第1の記憶制御手段により記憶された出力値に基づき前記特定組み合わせパターンのときの前記方位算出用の補正値を求める第1の補正値演算手段と、
前記組み合わせパターンとして取り得る所定数の組み合わせパターンのうち、前記特定組み合わせパターン以外の複数の組み合わせパターンの各状態で、且つ、前記予め定められた複数の方向のうち第1方向から外部磁界が印加されたときの前記磁気センサの出力値をそれぞれ記憶させる第2の記憶制御手段と、
前記第1の記憶制御手段により記憶された出力値と、前記第2の記憶制御手段により記憶された出力値とから、前記特定組み合わせパターン以外の複数の組み合わせパターンの各状態で、且つ、前記予め定められた複数の方向のうち前記第1方向以外の方向から外部磁界が印加されたときに前記磁気センサから得られるはずの出力値を算出し、これらの出力値に基づいて前記特定組み合わせパターン以外の各組み合わせパターンのときの前記方位算出用の補正値をそれぞれ求める第2の補正値演算手段と、
を備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電子式方位計において、
前記第1の記憶制御手段は、さらに、前記特定組み合わせパターンの状態で、且つ、外部磁界が印加されないときの前記磁気センサの出力値を記憶させ、
第2の補正値演算手段は、さらに、前記特定組み合わせパターン以外の複数の組み合わせパターンの各状態で、且つ、外部磁界が印加されないときに前記磁気センサから得られるはずの出力値を算出し、この出力値を含めて演算を行って、前記方位算出用の補正値をそれぞれ求めることを特徴としている。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の電子式方位計において、
不揮発性の記憶手段を備え、
前記第1の補正値演算手段および前記第2の補正値演算手段により求められた前記補正値が、前記不揮発性の記憶手段に記憶されることを特徴としている。
【0014】
請求項4記載の発明は、
複数のステップモータと、
磁気センサと、
前記複数のステップモータにおける複数のロータの磁極の向きの組み合わせパターンが、当該組み合わせパターンとして取り得る所定数の組み合わせパターンのうち、何れの組み合わせパターンであるかを判別する極性向き判別手段と、
前記磁気センサの出力値を、前記極性向き判別手段により判別された前記組み合わせパターンに応じて補正して、方位を求める方位演算手段と、
を備えた電子式方位計であって、
前記所定数の組み合わせパターンのうちの1つである特定組み合わせパターンの状態で、且つ、予め定められた複数の方向から別々に外部磁界が印加されたときの前記磁気センサの各出力値を記憶させる第1の記憶制御手段と、
前記所定数の組み合わせパターンのうち、前記特定組み合わせパターン以外の複数の組み合わせパターンの各状態で、且つ、前記予め定められた複数の方向のうち第1方向から外部磁界が印加されたときの前記磁気センサの出力値をそれぞれ記憶させる第2の記憶制御手段と、
前記第1の記憶制御手段により記憶された出力値に基づき前記特定組み合わせパターンのときの方位算出用の補正値を求める第1の補正値演算手段と、
前記第1の記憶制御手段により記憶された出力値と、前記第2の記憶制御手段により記憶された出力値と、の差分を記憶させる差分記憶制御手段と、
を備え、
前記方位演算手段は、
方位の測定時、前記複数のロータの磁極の向きが前記特定組み合わせパターンである場合に、前記磁気センサの出力値を前記第1の補正値演算手段で求められた補正値により補正して方位の算出を行う第1方位算出手段と、
方位の測定時、前記複数のロータの磁極の向きが前記特定組み合わせパターン以外の組み合わせパターンである場合に、前記磁気センサの出力値を前記差分記憶手段に記憶された前記差分によって補正する差分補正手段と、
この差分補正手段により補正された出力値を、前記第1の補正値演算手段で求められた補正値により補正を行って方位の算出を行う第2方位算出手段と、
を備えていることを特徴としている。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の電子式方位計において、
前記第1の記憶制御手段は、さらに、前記特定組み合わせパターンの状態で、且つ、外部磁界が印加されないときの前記磁気センサの出力値を記憶させ、
ことを特徴としている。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項4記載の電子式方位計において、
不揮発性の記憶手段を備え、
前記第1の補正値演算手段により求められた前記補正値と、前記差分記憶制御手段により記憶される前記差分とが、前記不揮発性の記憶手段に記憶されることを特徴としている。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項1又は4に記載の電子式方位計において、
データを一時的に記憶する作業用記憶手段を備え、
前記第1の記憶制御手段および前記第2の記憶制御手段は、前記磁気センサの各出力値を前記作業用記憶手段へ一時的に記憶させる構成であることを特徴としている。
【0018】
請求項8記載の発明は、請求項1又は4に記載の電子式方位計において、
前記ステップモータはステータが2極で前記ロータが2極の構成であることを特徴としている。
【0019】
請求項9記載の発明は、請求項3記載の電子式方位計に対して方位計測用の調整を行う調整方法において、
前記電子式方位計に対して前記予め定められた複数の方向のうち第1方向から外部磁界を印加し、且つ、前記複数のロータの磁極の向きの組み合わせパターンを全ての組み合わせパターンに切り換えていき、その間に、前記第1の記憶制御手段および前記第2の記憶制御手段により前記磁気センサの出力値を一時的に記憶させる第1ステップと、
前記電子式方位計に対して前記予め定められた複数の方向のうち前記第1方向を除く各方向から別々に外部磁界を印加していき、且つ、前記複数のロータの磁極の向きの組み合わせパターンを前記特定組み合わせパターンに固定して、その間に、前記第1の記憶制御手段により前記磁気センサの出力値を一時的に記憶させる第2ステップと、
前記第1ステップと前記第2ステップとの後に、前記第1の補正値演算手段と前記第2の補正値演算手段により前記複数のロータの磁極の向きの全ての組み合わせパターンにそれぞれ対応する複数の補正値を算出させて、前記不揮発性の記憶手段へ記憶させる第3ステップと、
を含むことを特徴としている。
【0020】
請求項10記載の発明は、請求項6記載の電子式方位計に対して方位計測用の調整を行う調整方法において、
前記電子式方位計に対して前記予め定められた複数の方向のうち第1方向から外部磁界を印加し、且つ、前記複数のロータの磁極の向きの組み合わせパターンを全ての組み合わせパターンに切り換えていき、その間に、前記第1の記憶制御手段および前記第2の記憶制御手段により前記磁気センサの出力値を一時的に記憶させる第1ステップと、
前記電子式方位計に対して前記予め定められた複数の方向のうち前記第1方向を除く各方向から別々に外部磁界を印加していき、且つ、前記複数のロータの磁極の向きの組み合わせパターンを前記特定組み合わせパターンに固定して、その間に、前記第1の記憶制御手段により前記磁気センサの出力値を一時的に記憶させる第2ステップと、
前記第1ステップと前記第2ステップとの後に、前記第1の補正値演算手段により前記複数のロータの磁極の向きの前記特定組み合わせパターンに対応する補正値を算出させるとともに、当該補正値と、前記差分記憶制御手段により記憶させる前記差分とを、前記不揮発性の記憶手段に記憶させる第4ステップと、
を含むことを特徴としている。
【0021】
請求項11記載の発明は、
電子式方位計の組立を行う組立工程と、
請求項9又は10の電子式方位計の調整方法により調整を行う調整工程と、
を含んだことを特徴とする電子式方位計の製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に従うと、ロータの磁極の向きが特定組み合わせパターン以外のときには、第1方向のみから外部磁界を与えたときの磁気センサの出力値を取得するのみで、ロータの向きの各組み合わせパターンに対応する複数種類の方位算出用の補正値を取得できるので、校正処理の時間短縮が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態の電子式方位計の全体構成を示すブロック図である。
【図2】方位センサの具体的な一例を示す平面図である。
【図3】トリミング処理におけるロータの向きの各組み合わせパターンと外部磁界の印加方向とを示す説明図である。
【図4】トリミング処理中に測定と計算により取得されて一時記憶される複数のセンサ出力値を表わしたデータチャートである。
【図5】トリミング処理により算出されて記憶される補正値を表わしたデータチャートである。
【図6】方位計測処理において方位角を求める際の条件式を示す表である。
【図7】第1実施形態のトリミング処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図8】第1実施形態の方位計測処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図9】第2実施形態においてトリミング処理中に取得されて一時記憶される複数のセンサ出力値を示すデータチャートである。
【図10】第2実施形態のトリミング処理により算出されて記憶される補正値を表わしたデータチャートである。
【図11】第2実施形態のトリミング処理により記憶されるセンサ出力値の差分データを表わしたデータチャートである。
【図12】第2実施形態のトリミング処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図13】第2実施形態の方位計測処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の電子式方位計の全体構成を示すブロック図である。
【0026】
この実施の形態の電子式方位計1は、複数の指針(秒針、時針、分針)を回転させて時刻を表示する時計機能と、秒針を用いて特定の方位(例えば磁北)を指し示す電子方位計の機能とを有するもので、例えば腕装着型の形態にされている。この電子式方位計1は、図1に示すように、秒針を1ステップずつ駆動するステップモータ62と、ステップモータ62に駆動電流を供給するモータ駆動回路63と、ステップモータ62のロータの磁極の向きを記憶する極性記憶回路64と、複数の歯車が連結されてなりステップモータ62の回転運動を伝達して秒針を回転させる秒針駆動機構65と、時針および分針を連動させて1ステップずつ駆動するステップモータ57と、ステップモータ57に駆動電流を供給するモータ駆動回路58と、ステップモータ57のロータの磁極の向きを記憶する極性記憶回路59と、複数の歯車が連結されてなりステップモータ57の回転運動を伝達して時針および分針を回転させる時分針駆動機構60とを備えている。
【0027】
また、この電子式方位計1は、CPUを内蔵して装置の全体的な制御を行う制御部40と、制御部40のCPUが実行する制御プログラムや制御データが格納されたROM46と、制御部40のCPUに作業用のメモリ空間を提供する作業用記憶手段としてのRAM47と、基板実装後に種々の設定データが書き込まれる不揮発性記憶手段としてのEEPROM(電気的消去型Programmable ROM)45と、計時用に一定周期の信号を生成する発振回路48および分周回路49と、分周回路49の信号をカウントして計時を行う計時回路50と、各部に電源電圧を供給する電源部51と、外部からの操作指令を入力する操作部52と、磁界の検出を行う磁気センサとしての方位センサ53と、方位センサ53の検出信号を合成して2つの検出方向の各磁界の大きさを表わすセンサ出力値を生成する方位検出部54等を備えている。
【0028】
ステップモータ57,62は、2極のステータと、2極のロータ57a,62a(図3参照)とをそれぞれ備えた構成であり、ステータに巻回されたコイルに正極の駆動電流を流すことでロータが0°から180°の回転位置まで回転し、コイルに負極の駆動電流を流すことでロータが180°から360°の回転位置まで回転するようになっている。ロータは、2極に磁化されているため、回転角度が0°のときと180°のときとで、磁極の向きが反転されてロータから周囲に及ぼされる磁界の向きや大きさが変化する。
【0029】
極性記憶回路59,64は、モータ駆動回路58,63からステップモータ57,62に直前に出力された駆動電流の極性を検出して保持する回路である。この保持された極性データによって、ステップモータ57,62のロータの磁極の向きを識別することが可能となる。これら極性記憶回路59,64と制御部40のCPUにより極性向き判別手段が構成される。
【0030】
図2には、方位センサ53の具体的な一例を表わした平面図を示す。
【0031】
方位センサ53は、互いに交差する2方向(例えば直交するX方向とY方向)について磁界の検出を行うデバイスである。具体的には、図2に示すように、基板63a上に4つの磁気抵抗素子MR1〜MR4と、外部接続用のパッドPd1〜Pd4とを形成するとともに、この基板63aにバイアス磁界B1〜B4を発生させるためのバイアスコイルCL1,CL2を巻回して構成される。4つの磁気抵抗素子MR1〜MR4は、基板63a上に順に90°ずつ向きを変えて回転対称に配設されるとともに、互いに隣接する磁気抵抗素子MR1〜MR4の端子同士が接続され、且つ、各端子の接続部と上記のパッドPd1,Pd2,Pd3,Pd4とが電気的に接続されている。また、対向する一組のパッドPd1,Pd3間には、所定の直流電圧Vが印加され、残りの対向する一組のパッドPd2,Pd4に検出電圧PS1,PS2が出力されるようになっている。
【0032】
上記の方位センサ53によれば、バイアスコイルCL1,CL2に相反転する電流を順に流しながら検出電圧PS1,PS2を出力させることで、次のようにしてX方向とY方向の磁界の計測を行うことが可能になっている。すなわち、先ず、バイアス磁界B1を発生させたときの検出電圧PS1,PS2の差分電圧から、バイアス磁界B2を発生させたときの検出電圧PS1,PS2の差分電圧を差し引いたときの電圧値によって、方位センサ53に外部から印加される磁界のX方向成分の大きさが計測される。次に、バイアス磁界B3を発生させたときの検出電圧PS1,PS2の差分電圧から、バイアス磁界B4を発生させたときの検出電圧PS1,PS2の差分電圧を差し引いたときの電圧値によって、方位センサ53に外部から印加される磁界のY方向成分の大きさが計測される。
【0033】
方位検出部54は、上記方位センサ53の検出電圧PS1,PS2の差分電圧をデジタルデータに変換するとともに、上記のバイアス磁界B1〜B4をそれぞれ印加したときの各差分電圧のデジタルデータに対して、上記の演算処理を行うことで、方位センサ53に外部から印加される磁界のX方向成分の大きさを表わすセンサ出力値“X”と、Y方向成分の大きさを表わすセンサ出力値“Y”とを制御部40に供給するようになっている。
【0034】
方位センサ53は、例えばX方向が文字板の12時方向と重なるように電子式方位計1に搭載され、方位検出部54からのX方向の磁界の大きさを表わすセンサ出力値と、Y方向の磁界の大きさを表わすセンサ出力値によって、電子式方位計1が地磁気に対してどの向きを向いているのかを算出することが可能になっている。
【0035】
上記の方位センサ53においては、電子式方位計1の外部から及ぼされる磁界の向きを計測する場合に、次のような誤差が生じる。すなわち、磁気抵抗素子MR1〜MR4の形成方向やバイアスコイルCL1,CL2の巻回方向のズレに基づく磁界の検出方向(X方向とY方向)の直角度の誤差、機器に対する方位センサ53の搭載角度の誤差、方位センサ53のX方向とY方向との検出感度の差異、ステップモータ57,62のロータから及ぼされる磁界に基づくオフセット誤差である。これらのうち、方位センサ53のX方向とY方向との感度誤差は、方位センサ53自体の感度誤差に加えて、方位センサ53の周囲に配置された磁性体に起因した感度誤差も含まれる。すなわち、方位センサ53の周囲に磁性体がある場合、地磁気などの外部磁界がこの磁性体を磁化することで、この磁化に基づく新たな磁界が方位センサ53に及ぼされることになる。従って、周囲の磁性体の配置によって方位センサ53のX方向とY方向との検出感度に誤差が生じる。
【0036】
上記ROM46には、制御部40のCPUが実行する制御プログラムとして、時間の経過に伴ってモータ駆動回路58,63を駆動させて文字板上で時刻を表示する時刻表示プログラムと、方位の検出を繰り返し実行しながら秒針を駆動して特定の方位を指し示させる方位計プログラムと、工場出荷前などの調整工程において方位センサ53の校正を行うトリミング処理のプログラム等が含まれる。
【0037】
上記EEPROM45には、補正値記憶部45aが設定され、上記のトリミング処理によって求められた方位センサ53の補正値データがこの補正値記憶部45aに記憶されるようになっている。
【0038】
次に、上記構成の電子式方位計1の動作について説明する。
【0039】
[時刻表示処理]
時刻表示処理は、時刻表示モードや方位計モードの際に、制御部40のCPUが時刻表示プログラムを実行することで行われる。制御部40のCPUは、時刻表示モードにおいて、分周回路49から1秒信号を入力するたびに秒針駆動用のモータ駆動回路63へ駆動パルスを出力し、また、計時回路50から10秒信号を入力するたびに時分針駆動用のモータ駆動回路58へ駆動パルスを出力する。上記の1秒信号は1秒ごとに出力される信号であり、10秒信号は10秒ごとに出力される信号である。そして、これらの動作によって、秒針は1秒ごとに1ステップずつ運針され、時針と分針とは10秒ごとに1ステップずつ運針され、この運針動作によって時刻が表示される。
【0040】
一方、方位計モードの際には、制御部40のCPUは、方位計プログラムと並列的に時刻表示プログラムを実行して、1秒信号に基づく駆動パルスの出力は行わずに、計時回路50から10秒信号を入力するたびに時分針駆動用のモータ駆動回路58へ駆動パルスを出力する。この動作によって、方位計モードの際にも時針と分針とが10秒ごとに1ステップずつ運針されて、時刻の時と分の値が表示される。
【0041】
[方位計処理]
方位計処理は、例えば、ユーザが操作部52を介して外部から方位計モードに切り換える操作指令を入力した場合に、制御部40のCPUが方位計プログラムの処理に移行することで開始される。方位計処理では、方位センサ53と方位検出部54とが所定の時間間隔で繰り返し作動して、方位検出部54から方位計測の結果を示すセンサ出力値が制御部40のCPUに供給される。制御部40のCPUは、このセンサ出力値に基づき演算を行って、電子式方位計1の地磁気に対する向き(例えば文字板上の12時位置が指し示す方位)を求める。
【0042】
方位を求める演算の際、制御部40のCPUは、極性記憶回路59,64に記憶されたデータを読み出し、ステップモータ57,62のロータ57a,62aの磁極の向きの組み合わせパターンを判別する。そして、この組み合わせパターンに対応した補正値を補正値記憶部45aから読み出し、この補正値を使用して方位の算出を行う。この補正値を使用した方位の算出方法については後に詳述する。
【0043】
電子式方位計1の地磁気に対する向きが求められたら、次いで、制御部40のCPUは文字板上のどの角度位置が磁北の方向と合致するか求めて、この角度位置まで秒針を駆動する。そして、このような方位の測定と秒針の駆動とか繰り返し行われることで、絶えず秒針により特定の方位が指し示されて、ユーザはこの秒針の位置から方位を求めることが可能となる。
【0044】
[トリミング処理]
トリミング処理は、方位センサ53の磁気検出方向であるX方向とY方向との直角度の誤差、方位センサ53の搭載角度の誤差(例えばX方向と文字板の12時方向とのズレ)、方位センサ53のX方向とY方向の検出感度の誤差、ステップモータ57,62のロータ57a,62aから方位センサ53に及ぼされる磁界によるオフセット誤差、をそれぞれ除去するための補正値を求めて、EEPROM45の補正値記憶部45aに記憶させる処理である。このトリミング処理を制御部40のCPUが実行することで補正値演算手段が構成される。
【0045】
トリミング処理は、電子式方位計1に対して所定の方向から所定の大きさの外部磁界を及ぼすことのできる環境で行われるものであり、例えば、製品製造過程における組立工程後の調整工程において行われるものである。このトリミング処理は、上記の環境においてオペレータが特定の動作指令を操作部52等を介して入力することで開始される。このトリミング処理中、制御部40のCPUにより時刻表示処理は実行されない。
【0046】
図3には、トリミング処理におけるロータの向きの各組み合わせパターンと外部磁界の印加方向とを表わした説明図を、図4には、トリミング処理中に測定および計算により取得されて一時記憶される複数のセンサ出力値を表わしたデータチャートを示す。図3において、1Aは電子式方位計1のハウジング、57a,62aはステップモータ57,62のロータ、I〜IVは外部磁界の印加方向を示している。
【0047】
トリミング処理では、先ず、制御部40のCPUは、次の各状態において方位センサ53と方位検出部54とを作動させ、方位検出部54からX方向およびY方向のセンサ出力値をそれぞれ取得する。すなわち、ロータ57a,62aの磁極の向きの組み合わせパターンが、図3(a)に示すパターンA(特定組み合わせパターン)の状態で、且つ、第1方向I〜第4方向IVにかけて個別に外部磁界が印加されたとき、ならびに、外部磁界が印加されていないときの各センサ出力値と、ロータ57a,62aの極性の向きの組み合わせパターンが、図3(b)〜(d)に示すパターンB〜パターンDの状態で、且つ、第1方向Iから外部磁界が印加されたときの各センサ出力値を取得する。
【0048】
なお、これらのセンサ出力値を取得していく順番は特に制限されるものではない。例えば、ロータ57a,62aの向きを切り換えるよりも、外部磁界の印加方向を切り換える方が手間を要するのであれば、先ず、第1方向Iから外部磁界を印加した状態で、ロータ57a,62aの向きの組み合わせパターンをパターンA〜パターンDと変化させて各状態のセンサ出力値を取得し、次いで、ロータ57a,62aをパターンAの組み合わせにして、第2方向II〜第4方向IVにかけて順に外部磁界の印加方向を変化させて、各状態のセンサ出力値を取得するようにすれば良い。
【0049】
そして、上記の各センサ出力値を取得したら、これらのセンサ出力値をRAM47の所定領域へ一時記憶させる。ここで一時記憶されるセンサ出力値が、図4のデータチャートにおいて白地の項目に記されたデータである。
【0050】
図4において、方位センサ53のX方向の磁界検出に係るセンサ出力値を変数記号「X」、Y方向の磁界検出に係るセンサ出力値を変数記号「Y」により表わしている。また、ロータ57a,62aの向きの組み合わせパターンがパターンA〜Dの何れの状態のときのセンサ出力値であるかを添え字「A〜D」により表わし、外部磁界が第1方向I〜第4方向IVの何れかから印加されているときのセンサ出力値であるか、或いは、外部磁界が印加されていないときのセンサ出力値であるかを添え字「1〜4,0」により表わしている。
【0051】
上記のようにセンサ出力値を取得したら、次に、制御部40のCPUは、ロータ57a,62aがパターンB〜パターンDの状態で、且つ、第2方向IIから第4方向IVの外部磁界が印加されたとき、ならびに、外部磁界が印加されていないときの各センサ出力値を、それぞれ計算によって求める。ここで算出されてRAM47に一時記憶されるセンサ出力値が、図3のデータチャートにおいて網掛けの項目に記されるデータである。
【0052】
上記のセンサ出力値の算出は、RAM47に一時記憶されている他のセンサ出力値に基づき、次式等によって実行される。
【数1】

【0053】
ここでは、センサ出力値XB2,YB2,XB3,YB3の計算式のみを示しているが、他のセンサ出力値についても同様の計算式によって求めることができる。算出対象のセンサ出力値に対応させて、左辺と右辺の各項の添え字を同様に変更することで、各センサ出力値を求めるための計算式を導くことができる。
【0054】
各センサ出力値を算出する計算式は次のような論理により得られたものである。例えば、計算式(1)について述べれば、先ず、パターンAとパターンBとではロータ57a,62aの向きの組み合わせのみが異なる。それゆえ、ロータ57a,62aの影響がなければ、パターンBのセンサ出力値XB2とパターンAのセンサ出力値XA2とは同値になるはずである。また、上記ロータ57a,62aの向きの組み合わせに基づくセンサ出力値への影響は、測定により取得済みの2つのセンサ出力値XB1,XA1にも同様に現れているはずである。そのため、これら取得ずみのセンサ出力値XB1,XA1の差分を、ロータ57a,62aの影響がなければ同値となるはずのセンサ出力値XA2に加算することで、ロータ57a,62aの影響が付加されたセンサ出力値XB2が算出されるという論理である。
【0055】
より具体的には、ロータ57a,62aは磁化されているため、それ自体が磁界を発生させて、この磁界が方位センサ53に印加されることで、センサ出力値XB2に影響を及ぼしている。さらに、ロータ57a,62aは磁性体であるため、外部磁界が印加された場合に、透磁率μで新たに磁化が生じて、この新たな磁化に基づく磁界が方位センサ53に印加されることで、センサ出力値XB2に影響を及ぼしている。それゆえ、センサ出力XB2は、第2方向IIの外部磁界により方位センサ53に印加される磁界HOUT2と、パターンBのロータ57a,62aの磁極から方位センサ53に印加される磁界Hbと、第2方向IIの外部磁界とロータ57a,62aの透磁率μに基づき新たにロータ57a,62aに発生されて方位センサ53に印加される磁界Hμとの合計のX成分「(HOUT2+Hb+Hμ」を表わす値となる。
【0056】
同様に、パターンAで第2方向IIの外部磁界が印加されているときのセンサ出力XA2は「(HOUT2+Ha+Hμ」、パターンBで第1方向Iの外部磁界が印加されているときのセンサ出力XB1は「(HOUT1+Hb+Hμ」、パターンAで第1方向Iの外部磁界が印加されているときのセンサ出力XA1は、「(HOUT1+Ha+Hμ」となる。ここで、Haは、パターンAのロータ57a,62aの磁極から方位センサ53に印加される磁界、HOUT1は第1方向Iの外部磁界により方位センサ53に印加される磁界、Hμは第1方向Iの外部磁界とロータ57a,62aの透磁率μに基づき新たにロータ57a,62aに発生されて方位センサ53に印加される磁界を表わしている。
【0057】
このように、各センサ出力値XB2,XA2,XB1,XA1を磁界の各成分により表わして、計算式(1)の左辺と右辺とを計算することで、両者が等号することを証明することができる。なお、上記の計算式(1)等は、ロータ57a,62aの透磁率μによる影響が無視できるほど小さいか、或いは、ロータ57a,62aの透磁率μの異方性が無視できるほど小さい範囲で成立するものであり、この透磁率μの影響或いは透磁率μの異方性が無視できない場合には、計算式(1)の計算結果と実際のセンサ出力値とで誤差が生じてくる。従って、その場合には、予めロータ57a,62aの透磁率の異方性を測定しておき、この測定結果をセンサ出力値の算出式に反映させるようにしても良い。
【0058】
図5には、トリミング処理により算出されてEEPROM45の補正値記憶部45aに記憶される補正値の内容を表わしたデータチャートを示す。
【0059】
制御部40のCPUは、上記の各センサ出力値の計算が完了して、図4(a)〜(d)に示すデータが得られたら、これらの値からパターンA〜パターンDの各場合における補正値を次式等によって求める。
【数2】

【0060】
ここでは、パターンAの場合の補正値の演算式のみを示しているが、パターンB〜パターンDの補正値を演算する場合には、各センサ出力値の添え字を「A」のものから各パターンのものに変更した演算式を使用すれば良い。
【0061】
補正値が算出されたら、図5に示すように、制御部40のCPUは、これらの補正値をEEPROM45の補正値記憶部45aに書き込んで記憶させる。なお、図5において、パターンA〜パターンDの各補正値として同一記号を記しているが、パターンA〜パターンDの各補正値が同値であるとは限らない。
【0062】
上記の補正値のうち“a,b,c”は、“d=(YA2−YA4)/(YA2−YA4)=1”を追加して対称的な4項を作ると分かるように、互いに反対方向の外部磁界を印加したときのX方向のセンサ出力値の差異と、Y方向のセンサ出力値の差異とを、係数“1/(YA2−YA4)”でそれぞれ規格化した値を表わしている。次式に示すように、ロータ57a,62aの影響がなければ、上記の補正値“a,b,c”からなる2行2列の行列を、方位検出部54から供給されるX方向とY方向のセンサ出力値“X,Y”に掛け合わせることで、方位センサ53の直角度の誤差、搭載角度誤差、感度誤差が、それぞれ補正されたセンサ出力値“X1,Y1”を得ることができる。
【数3】

【0063】
さらに、この実施形態では、ロータ57a,62aの磁界によるオフセットを除去するために、次式(5)のように、補正値「XS0,YS0」を加算することで、ロータ57a,62aの磁界による誤差が補正された最終的なセンサ出力値“Xf,Yf”を得るようになっている。ロータ57a,62aの磁界に起因する方位センサ53のオフセット値は“XA0,YA0”であるが、このオフセット値も方位センサ53の直角度の誤差、搭載角度の誤差、感度誤差を含んでいるので、次式(6)に示すように、このオフセット値“XA0,YA0”を上記の補正値“a,b,c”からなる行列に掛け合わせることで、補正されたオフセット値“XS0,YS0”を求め、この値をオフセット除去用の補正値としている。
【0064】
その他、次式(7)に示すように、方位検出部54から出力されるセンサ出力値“X,Y”に、ロータ57a,62aの磁界によるオフセット値“XA0,YA0”を加算した上で、上記の補正値“a,b,c”からなる行列に掛け合わせることで、補正された最終的なセンサ出力値“Xf,Yf”を算出していると見なすこともできる。
【数4】

【0065】
従って、方位計測を行う際には、ロータ57a,62aの組み合わせパターンに応じた補正値“a,b,c,XS0,YS0”を用いて、次式の演算を行うことで、補正された方位角を求めることが可能になっている。
【数5】

【0066】
図6には、方位角を求める際の条件式を表わした表を示す。上記の方位計測の演算処理では、tan−1の関数に定数“π”分の不確定さが伴うため、“Xf”の正負符号、“Yf”の正負符号に応じて、図6に示す条件で180°または360°を加算することで、計測方向θとして0°〜360°の計算結果を求めている。
【0067】
次に、上記のトリミング処理および方位計測処理の詳細な制御手順をフローチャートに基づき説明する。
【0068】
図7には、制御部40のCPUが実行するトリミング処理のフローチャートを示す。
【0069】
トリミング処理が開始されると、先ず、CPUは、モータ駆動回路58,63への駆動パルスの出力、ならびに、極性記憶回路59,64の保持データの確認を行って、ステップモータ57,62のロータ57a,62aを図3(a)に示すパターンAの状態にする(ステップS1)。
【0070】
次いで、CPUは、方位センサ53と方位検出部54とを作動させて磁気の計測を行い(ステップS2)、方位検出部54のセンサ出力値に基づいて、地磁気シミュレータIによる外部磁界の印加(第1方向Iからの外部磁界の印加)がなされたか否かを判別する(ステップS3)。この段階で、オペレータが電子式方位計1の外部から地磁気シミュレータIの外部磁界を印加する。それにより、ステップS3の判別処理で“YES”と判別されて次のステップに移行する。この地磁気シミュレータIの外部磁界は、外部から正確に印加されることが保証されているため、CPUは大まかに第1方向Iからある程度の大きさの磁界が印加されたか否かを判別するだけで、地磁気シミュレータIの外部磁界が印加されたのか否かを判断することができる。
【0071】
ステップS3の判別処理の結果、地磁気シミュレータIが確認されたら、次に、CPUは方位センサ53と方位検出部54とを作動させて、方位検出部54からのX方向とY方向のセンサ出力値を取得する。そして、このセンサ出力値をRAM47に保存する(ステップS4)。続いて、CPUは、ロータ57a,62aの磁極の向きの組み合わせパターンがパターンA〜パターンDまで変更させたか判別し(ステップS5)、未だであれば、図3(a)〜(d)に示すようにパターンA〜パターンDへと1つずつ順に変更させ(ステップS6)、再び、ステップ4に戻ってセンサ出力値の取得とRAM47への保存を繰り返す。
【0072】
このステップS4〜S6の繰り返し処理によって、地磁気シミュレータIの外部磁界が印加され、且つ、ロータ57a,62aがパターンA〜パターンDの各状態にあるときのセンサ出力値“XA1,YA1,XB1,YB1,XC1,YC1,XD1,YD1”が取得されて、図4(a)〜(d)に示すようにRAM47の所定領域に格納される。
【0073】
上記の処理のうち、地磁気シミュレータIを発生させる操作と、ステップS4〜S6の処理により、電子式方位計の調整方法の第1ステップが構成される。
【0074】
上記のセンサ出力値が取得されたら、続いて、CPUはステップモータ57,62を駆動させてロータ57a,62aを図4(a)のパターンAの状態に戻す(ステップS7)。さらに、方位センサ53と方位検出部54とを作動させて磁気の計測を行い(ステップS8)、方位検出部54のセンサ出力値に基づいて、地磁気シミュレータIIの外部磁界の印加(第2方向IIからの外部磁界の印加)がなされたか否かを判別する(ステップS9)。そして、この外部磁界の印加が判別されたら、方位検出部54からのX方向とY方向のセンサ出力値“XA2,YA2”を取得してRAM47に保存する(ステップS10)。
【0075】
同様に、地磁気シミュレータIIIの外部磁界が印加された場合と、地磁気シミュレータIVが印加された場合と、全く磁界の印加がされていない場合にも、同様にこれらの確認処理(ステップS11,S12,S14,S15,S17,S18)を経た後に、方位検出部54のセンサ出力値“XA3,YA3,XA4,YA4,XA0,YA0”の取得および保存の処理(S13,S16,S19)を行う。これらの処理により、図4(a)の白地の項目のデータが全て取得される。
【0076】
上記ステップS1〜S19の処理のうち、図4(a)のデータを取得・記憶させる処理により第1の記憶制御手段が構成され、図4(b)〜(d)のデータを取得・記憶させる処理により第2の記憶制御手段が構成される。
【0077】
また、上記の処理のうち、地磁気シミュレータII〜IVを発生させる操作と、ステップS10,S13,S16の処理によって、電子式方位計の調整方法の第2ステップが構成される。
【0078】
必要なセンサ出力値の取得が完了したら、次に、CPUは、図4(b)〜(d)の網掛けの項目のデータを演算するために、パターンAの状態で地磁気シミュレータIが発動されたときのセンサ出力値“XA1,YA1”と、パターンB〜Dの状態で地磁気シミュレータIが発動されたときのセンサ出力値“XB1,YB1”,“XC1,YC1”,“XD1,YD1”との差分を計算する(ステップS20)。ここでは、上記の[数1]に示した計算式における右辺のカッコ内の値を予め計算している。
【0079】
続いて、このステップS20で計算したセンサ出力値の差分を用いて、地磁気シミュレータII〜IVが発動されたときと、外部磁界無しのときにおけるパターンB〜Dの状態のセンサ出力値、すなわち、図4(b)〜(d)の網掛けの項目のデータを計算し、RAM47の所定領域に書き込む(ステップS21)。ここでの計算は、上記の[数1]の計算式等に従って行われる。
【0080】
図4(a)〜(d)のセンサ出力値が求められたら、次に、CPUは、これらのセンサ出力値を用いて、ロータ57a,62aの向きがパターンA〜パターンDの状態にそれぞれ対応した補正値を計算し、図5に示すように、EEPROM45の補正値記憶部45aに保存する(ステップS22)。補正値の演算は、上記の[数2]の計算式等に従って行う。
【0081】
上記の処理ステップのうち、ステップS22のパターンAの補正値を演算する処理によって第1の補正値演算手段が構成され、ステップS20,S21およびステップS22のパターンB〜Dの補正値を演算する処理によって第2の補正値演算手段が構成される。また、これらステップS20〜S22の処理により、電子式方位計の調整方法の第3ステップが構成される。
【0082】
そして、補正値を保存したら、このトリミング処理を終了する。
【0083】
図8には、制御部40のCPUにより実行される方位計測処理のフローチャートを示す。
【0084】
この方位計測処理は、方位計モードの際に、計測方向の方位角を求めるために所定の時間間隔で実行される処理である。方位計測処理が開始されると、先ず、制御部40のCPUは、方位センサ53と方位検出部54とを作動させて、方位検出部54からX方向とY方向のセンサ出力値を取得する(ステップS31)。
【0085】
次に、CPUは、極性記憶回路59,64から保持データを読み出して、ステップモータ57,62のロータ57a,62aがパターンA〜パターンDの何れの組み合わせパターンにあるかを判別する(ステップS32)。
【0086】
センサ出力値を取得し、且つ、ロータ57a,62aの組み合わせパターンを判別したら、続いて、CPUはEEPROM45の補正値記憶部45aからロータ57a,62aの組み合わせパターンに応じた補正値“a,b,c,XS0,YS0”を読み出す(ステップS33)。
【0087】
そして、上記の[数5]に示したように、補正値“a,b,c,XS0,YS0”を用いてセンサ出力値“X,Y”を補正し、計測方向の方位角θを算出する(ステップS34:方位演算手段)。これにより、ロータ57a,62aの磁界によるオフセット誤差や、方位センサ53の直角度誤差、搭載角度誤差、X方向とY方向との感度誤差が補正されて、電子式方位計1の文字板の12時位置の方位角が正確に求められる。そして、この方位計測処理を終了する。
【0088】
以上のように、この実施形態の電子式方位計1、および、上記トリミング処理による電子方位計1の調整方法によれば、複数のステップモータ57,62があってロータ57a,62aの磁極の向きの組み合わせパターンが多数パターンあっても、トリミング処理では、1つの組み合わせパターンについてのみ全ての地磁気シミュレータI〜IVを発動させたときのセンサ出力値を取得し、他の組み合わせパターンについては一つの地磁気シミュレータIを発動させたときのセンサ出力値を取得するのみで、ロータ57a,62aの全組み合わせパターンにおける補正値が得られるようになっている。従って、全ての状態でセンサ出力値を取得する場合と比較して、トリミング処理の時間短縮を図ることができ、上記の組み合わせパターンが多数あっても短時間のうちにトリミング処理を完了させることができる。
【0089】
このようなトリミング処理の時間短縮の効果は、製品出荷前の調整工程において個々の製品ごとにトリミング処理を行う場合に、特に有用である。
【0090】
また、この実施形態の電子式方位計1によれば、トリミング処理によってパターンA〜パターンDに対応した複数組の補正値“a,b,c,XS0,YS0”を求めてEEPROM45に記憶させている。従って、方位計測処理においては、EEPROM45から対応する補正値を読み出して、負荷の少ない演算処理でセンサ出力値を補正して計測方向の方位角を求めることができる。
【0091】
また、この実施形態の電子式方位計1によれば、上記の補正値を算出するための各センサ出力値(図4(a)〜(d)参照)を、RAM47に一時記憶して、補正値を求めた後には消去可能な状態にしている。それゆえ、トリミング処理により記憶容量が無駄に占有されることもない。
【0092】
[第2実施形態]
第2実施形態の電子式方位計は、トリミング処理においてEEPROM45に記憶させておくデータの内容と、方位計測処理において行われる補正演算の内容とを、第1実施形態のものから幾分変更したものである。その他の処理や構成等は第1実施形態のものとほぼ同様であり、同様の構成については説明を省略する。
【0093】
図9には、トリミング処理においてRAM47に一時記憶されるセンサ出力値の内容を表わしたデータチャートを示す。また、図10には、EEPROM45の補正値記憶部に記憶される補正値の内容を表わしたデータチャートを、図11には、トリミング処理においてEEPROM45の差分記憶部に記憶される補正値の内容を表わしたデータチャートを、それぞれ示す。
【0094】
第2実施形態の電子式方位計においては、EEPROM45に、図10の補正値記憶部と図11の差分記憶部とが設定され、補正値記憶部にはパターンAに対応した補正値“a,b,c,XS0,YS0”が記憶され、差分記憶部にはトリミング処理で取得されるセンサ出力値の差分データが記憶されるようになっている。
【0095】
[トリミング処理]
第2実施形態のトリミング処理においても、電子式方位計に対して第1方向I〜第4方向IVの外部磁界を個別に印加し、且つ、ロータ57a,62aの磁極の向きの組み合わせパターンを変化させて、所定の状態における方位検出部54のセンサ出力値を取得する。取得するセンサ出力値は、第1実施形態と同様で、図9に示すように、パターンAの状態では、第1方向I〜第4方向IVの外部磁界が個別に印加されたとき、および、外部磁界が印加されていないときのセンサ出力値であり、パターンB〜パターンDの状態では、第1方向Iから外部磁界が印加されたときのセンサ出力値である。
【0096】
第2実施形態のトリミング処理では、第1実施形態と異なり、上記の各センサ出力値を取得した後に、パターンB〜パターンDの状態で第2方向II〜第4方向IVの外部磁界が印加されたときのセンサ出力値の算出は行わない。
【0097】
第2実施形態のトリミング処理では、その代わりに、方位計測処理の際に、パターンB〜パターンDの状態で計測されたセンサ出力値に対して補正処理を行えるように、各センサ出力値の差分(図11参照)を算出して差分記憶部に記憶させる。
【0098】
また、第2実施形態のトリミング処理では、パターンAのときの複数のセンサ出力値を用いて、パターンAに対応する補正値“a,b,c,XS0,YS0”を算出し(図10参照)、これらの補正値を補正値記憶部に記憶させる。
【0099】
[方位計測処理]
第2実施形態の方位計測処理では、図10に示したパターンAに対応する補正値“a,b,c,XS0,YS0”と、図11に示した差分データとを用いて、方位検出部54のセンサ出力値を補正して計測方向の方位角θを求める。
【0100】
ロータ57a,62aの向きがパターンAの場合には、補正値記憶部の補正値“a,b,c,XS0,YS0”を用いてセンサ出力値を補正し、計測方向の補正された方位角θを求めることができる。第1実施形態の[数5]に示した通りである。
【0101】
また、ロータ57a,62aの向きがパターンCの場合には、先ず、次式のように、方位検出部54から供給されたセンサ出力値“X,Y”に対して、差分記憶部のパターンCに対応する差分データを加算して、擬似的なパターンAの状態におけるセンサ出力値“X,Y”に変換する。
【数6】

【0102】
次に、この擬似的なパターンAのセンサ出力値“X,Y”と、パターンAに対応する補正値“a,b,c,XS0,YS0”とを用いて、次式に示すような補正演算を行って、補正された計測方向の方位角θを求める。
【数7】

【0103】
なお、パターンCのセンサ出力値“X,Y”に対応した補正演算(次式(10);数式(7)を参照)と、上記変換された擬似的なパターンAのセンサ出力値“X,Y”を用いた補正演算(次式(11);数式(7)を参照)とは、次に示すように同値である。次式(10)から式(11)への変換は、[数1]の変換式と[数6]の変換式とを用いて、パターンCのセンサ出力値からパターンAのセンサ出力値に変換されるように展開したものである。また、補正値“a,b,c”とその行列とを、添え字A,CによってパターンAに対応したものと、パターンCに対応したものと区別しているが、次式(8),(9)に示すように、これらは同値となる。
【数8】

【0104】
従って、上記擬似的なパターンAのセンサ出力値と、パターンAに対応した補正値を用いた方位計測の演算によって、パターンCの場合における計測方向の方位角を正確に求めることができる。
【0105】
次に、第2実施形態のトリミング処理と方位計測処理の制御手順についてフローチャートに基づいて説明する。
【0106】
図12には、第2実施形態のトリミング処理のフローチャートを示す。
【0107】
第2実施形態のトリミング処理の制御手順において、ロータ57a,62aの向きを各組み合わせパターンにして、地磁気シミュレータI〜IVを発動させたときと磁気を発生させないときとで、各センサ出力値を取得するステップS1〜S19の処理は、第1実施形態と同様である。この処理により、図9(a)〜(d)のセンサ出力値が取得されてRAM47に一時記憶される。
【0108】
第2実施形態のトリミング処理においては、上記センサ出力値を取得したら、先ず、図9(a)に示すパターンAのセンサ出力値に基づき[数2]の演算を行って、パターンAに対応する補正値“a,b,c,XS0,YS0”を求める。そして、これをEEPROM45の補正値記憶部(図10)に書き込んで記憶させる(ステップS40:第1の補正値演算手段)。
【0109】
次に、制御部40のCPUは、図9(a)〜(d)の地磁気シミュレータIを発動させたときのセンサ出力値を用いて、パターンAの状態のセンサ出力値と他のパターンの状態のセンサ出力値との差分をそれぞれ求め、これをEEPROM45の差分記憶部(図11)に書き込んで記憶させる(ステップS41:差分記憶制御手段)。これらステップS40,S41の処理により電子式方位計の調整方法の第4ステップが構成される。そして、上記の補正値データと差分データとを記憶させたらトリミング処理を終了する。
【0110】
図13には、第2実施形態の方位計測処理のフローチャートを示す。第2実施形態において、この方位計測処理を制御部40のCPUが実行することで方位演算手段が構成される。
【0111】
第2実施形態の方位計測処理では、ステップS51のセンサ計測の処理と、ステップS52のロータ57a,62aの磁極の向きの組み合わせパターンを判別する処理は、第1実施形態のステップS31,S32の処理と同様である。
【0112】
センサ出力値の取得とロータ57a,62aの向きの組み合わせパターンの判別とを行ったら、次に、制御部40のCPUは、図11の差分記憶部からロータ57a,62aの組み合わせパターンに応じたデータを読み出す(ステップS53)。例えば、パターンCであれば差分データ“XC1−XA1,YC1−YA1”を読み出す。なお、ステップS52のパターン判別の結果がパターンAであれば、差分データは不要なので読み出しは行わない。
【0113】
続いて、制御部40のCPUは、ステップS51で取得したセンサ出力値に、ステップS53で読み出した差分データを加算することで、擬似的なパターンAのセンサ出力値“X,Y”を求める(差分補正手段)。さらに、この擬似的なパターンAのセンサ出力値“X,Y”と補正値記憶部(図10)の補正値データを使って、[数7]の演算を行って計測方向の方位角θを求める(ステップS54:第2方位算出手段)。なお、ステップS52のパターン判別の結果がパターンAであれば、単に、補正値記憶部(図10)の補正値データを使って計測方向の方位角θを求める(第1方位算出手段)。
【0114】
このようなトリミング処理および方位計測処理により、第2実施形態の電子式方位計においても、第1実施形態と同様に種々の誤差を補正して、正確な方位角θを算出することができる。
【0115】
以上のように、この第2実施形態の電子式方位計、および、そのトリミング処理を用いた電子式方位計の調整方法によれば、複数のステップモータ57,62があってロータ57a,62aの磁極の向きの組み合わせパターンが多数パターンあっても、トリミング処理において1つの組み合わせパターンについてのみ全ての地磁気シミュレータI〜IVを発動させたときのセンサ出力値を取得し、他の組み合わせパターンについては一つの地磁気シミュレータIを発動させたときのセンサ出力値を取得するのみで、その後の方位計測処理に必要な補正値データと差分データとを求めてEEPROM45に記憶させることができる。従って、トリミング処理の時間短縮を図ることができ、上記の組み合わせパターンが多数あっても短時間のうちにトリミング処理を完了させることができる。
【0116】
また、第2実施形態の電子式方位計によれば、トリミング処理においてパターンAに対応する補正値“a,b,c,XS0,YS0”と、パターンAの状態のセンサ出力値とその他のパターンB〜Dの状態のセンサ出力値との差分データを求めてEEPROM45に記憶させるようにしている。従って、第1実施形態のものと比較して必要なEEPROM45の記憶容量を少なくすることができる。また、方位計測処理においては、EEPROM45から対応する差分データと、パターンAの補正値とを読み出して、簡単な演算によって補正された計測方向の方位角を求めることが可能になっている。
【0117】
また、この実施形態の電子式方位計1によれば、上記の補正値を算出するための各センサ出力値(図9(a)〜(d)参照)は、RAM47に一時記憶させて補正値を求めた後、消去可能な状態にしている。従って、トリミング処理によりRAM47の記憶容量が無駄に占有されることもない。
【0118】
なお、本発明は、上記第1および第2の実施形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記第1および第2実施形態では、ステップモータ57,62の極数が2極のものを適用しているが、もっと極数の多いものを適用しても良い。また、磁気センサとして図2の構成の方位センサ53を例示したが、交差する2方向の磁界の計測が可能な構成であれば何れの形式のものでも本実施形態のトリミング処理を同様に適用することができる。また、その他の方式によって磁界の向きを計測する構成であっても、異なる方向から外部磁界を与えたときのセンサ出力に基づき校正処理を行えるものであれば本発明を同様に適用することができる。
【0119】
また、上記実施形態では、トリミング処理において、四方向から同一強度の外部磁界を印加して、各状態のセンサ出力値から方位センサの校正を行う方式を示したが、もっと多方向から外部磁界を印加したり、或いは、交差する2方向や3方向から外部磁界を印加したり、または、各方向ごとに複数の強度の外部磁界を印加したりして、それぞれの状態のときのセンサ出力値から方位センサの校正を行う方式のものであっても、本発明を適用することが可能である。
【0120】
また、上記実施形態では、方位センサの各検出方向の直角度の誤差、搭載角度の誤差、各検出方向の感度誤差、および、ロータ57a,62aの磁界によるオフセット誤差を除去するための校正処理と、これらの誤差を除去する方位計測時の補正処理とを具体的に例示したが、校正処理や補正処理で修正される誤差の内容は上記の誤差に制限されるものではない。
【0121】
その他、本発明の電子式方位計は、時計機能を有さなくても良いし、腕装着型の形態に制限されることもない。また、ステップモータのロータの向きの判別は、直前に出力した駆動パルスの極性をRAMに記憶させておくことで、ソフトウェアにより行うことも可能である。また、方位計測時に方位を示す方式なども上記実施形態のものに制限されず、実施形態で示した細部等は発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0122】
1 電子式方位計
40 制御部
45 EEPROM
45a 補正値記憶部
46 ROM
47 RAM
53 方位センサ
MR1〜MR4 磁気抵抗素子
54 方位検出部
57,62 ステップモータ
57a,62a ロータ
58,63 モータ駆動回路
59,64 極性記憶回路



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のステップモータと、
磁気センサと、
前記複数のステップモータにおける複数のロータの磁極の向きの組み合わせパターンが、当該組み合わせパターンとして取り得る所定数の組み合わせパターンのうち、何れの組み合わせパターンであるかを判別する極性向き判別手段と、
前記所定数の組み合わせパターンに対応する複数の方位算出用の補正値をそれぞれ算出する補正値演算手段と、
前記磁気センサの出力値を、前記極性向き判別手段により判別された前記組み合わせパターンに対応する前記方位算出用の補正値に基づき補正して、方位を求める方位演算手段と、
を備えた電子式方位計であって、
前記補正値演算手段は、
前記所定数の組み合わせパターンのうちの1つである特定組み合わせパターンの状態で、且つ、予め定められた複数の方向から別々に外部磁界が印加されたときの前記磁気センサの各出力値を記憶させる第1の記憶制御手段と、
前記第1の記憶制御手段により記憶された出力値に基づき前記特定組み合わせパターンのときの前記方位算出用の補正値を求める第1の補正値演算手段と、
前記組み合わせパターンとして取り得る所定数の組み合わせパターンのうち、前記特定組み合わせパターン以外の複数の組み合わせパターンの各状態で、且つ、前記予め定められた複数の方向のうち第1方向から外部磁界が印加されたときの前記磁気センサの出力値をそれぞれ記憶させる第2の記憶制御手段と、
前記第1の記憶制御手段により記憶された出力値と、前記第2の記憶制御手段により記憶された出力値とから、前記特定組み合わせパターン以外の複数の組み合わせパターンの各状態で、且つ、前記予め定められた複数の方向のうち前記第1方向以外の方向から外部磁界が印加されたときに前記磁気センサから得られるはずの出力値を算出し、これらの出力値に基づいて前記特定組み合わせパターン以外の各組み合わせパターンのときの前記方位算出用の補正値をそれぞれ求める第2の補正値演算手段と、
を備えたことを特徴とする電子式方位計。
【請求項2】
前記第1の記憶制御手段は、さらに、前記特定組み合わせパターンの状態で、且つ、外部磁界が印加されないときの前記磁気センサの出力値を記憶させ、
第2の補正値演算手段は、さらに、前記特定組み合わせパターン以外の複数の組み合わせパターンの各状態で、且つ、外部磁界が印加されないときに前記磁気センサから得られるはずの出力値を算出し、この出力値を含めて演算を行って、前記方位算出用の補正値をそれぞれ求める
ことを特徴とする請求項1記載の電子式方位計。
【請求項3】
不揮発性の記憶手段を備え、
前記第1の補正値演算手段および前記第2の補正値演算手段により求められた前記補正値が、前記不揮発性の記憶手段に記憶されることを特徴とする請求項1記載の電子式方位計。
【請求項4】
複数のステップモータと、
磁気センサと、
前記複数のステップモータにおける複数のロータの磁極の向きの組み合わせパターンが、当該組み合わせパターンとして取り得る所定数の組み合わせパターンのうち、何れの組み合わせパターンであるかを判別する極性向き判別手段と、
前記磁気センサの出力値を、前記極性向き判別手段により判別された前記組み合わせパターンに応じて補正して、方位を求める方位演算手段と、
を備えた電子式方位計であって、
前記所定数の組み合わせパターンのうちの1つである特定組み合わせパターンの状態で、且つ、予め定められた複数の方向から別々に外部磁界が印加されたときの前記磁気センサの各出力値を記憶させる第1の記憶制御手段と、
前記所定数の組み合わせパターンのうち、前記特定組み合わせパターン以外の複数の組み合わせパターンの各状態で、且つ、前記予め定められた複数の方向のうち第1方向から外部磁界が印加されたときの前記磁気センサの出力値をそれぞれ記憶させる第2の記憶制御手段と、
前記第1の記憶制御手段により記憶された出力値に基づき前記特定組み合わせパターンのときの方位算出用の補正値を求める第1の補正値演算手段と、
前記第1の記憶制御手段により記憶された出力値と、前記第2の記憶制御手段により記憶された出力値と、の差分を記憶させる差分記憶制御手段と、
を備え、
前記方位演算手段は、
方位の測定時、前記複数のロータの磁極の向きが前記特定組み合わせパターンである場合に、前記磁気センサの出力値を前記第1の補正値演算手段で求められた補正値により補正して方位の算出を行う第1方位算出手段と、
方位の測定時、前記複数のロータの磁極の向きが前記特定組み合わせパターン以外の組み合わせパターンである場合に、前記磁気センサの出力値を前記差分記憶手段に記憶された前記差分によって補正する差分補正手段と、
この差分補正手段により補正された出力値を、前記第1の補正値演算手段で求められた補正値により補正を行って方位の算出を行う第2方位算出手段と、
を備えていることを特徴とする電子式方位計。
【請求項5】
前記第1の記憶制御手段は、さらに、前記特定組み合わせパターンの状態で、且つ、外部磁界が印加されないときの前記磁気センサの出力値を記憶させることを特徴とする請求項4記載の電子式方位計。
【請求項6】
不揮発性の記憶手段を備え、
前記第1の補正値演算手段により求められた前記補正値と、前記差分記憶制御手段により記憶される前記差分とが、前記不揮発性の記憶手段に記憶されることを特徴とする請求項4記載の電子式方位計。
【請求項7】
データを一時的に記憶する作業用記憶手段を備え、
前記第1の記憶制御手段および前記第2の記憶制御手段は、前記磁気センサの各出力値を前記作業用記憶手段へ一時的に記憶させる構成であることを特徴とする請求項1又は4に記載の電子式方位計。
【請求項8】
前記ステップモータはステータが2極で前記ロータが2極の構成であることを特徴とする請求項1又は4に記載の電子式方位計。
【請求項9】
請求項3記載の電子式方位計に対して方位計測用の調整を行う調整方法において、
前記電子式方位計に対して前記予め定められた複数の方向のうち第1方向から外部磁界を印加し、且つ、前記複数のロータの磁極の向きの組み合わせパターンを全ての組み合わせパターンに切り換えていき、その間に、前記第1の記憶制御手段および前記第2の記憶制御手段により前記磁気センサの出力値を一時的に記憶させる第1ステップと、
前記電子式方位計に対して前記予め定められた複数の方向のうち前記第1方向を除く各方向から別々に外部磁界を印加していき、且つ、前記複数のロータの磁極の向きの組み合わせパターンを前記特定組み合わせパターンに固定して、その間に、前記第1の記憶制御手段により前記磁気センサの出力値を一時的に記憶させる第2ステップと、
前記第1ステップと前記第2ステップとの後に、前記第1の補正値演算手段と前記第2の補正値演算手段により前記複数のロータの磁極の向きの全ての組み合わせパターンにそれぞれ対応する複数の補正値を算出させて、前記不揮発性の記憶手段へ記憶させる第3ステップと、
を含むことを特徴とする電子式方位計の調整方法。
【請求項10】
請求項6記載の電子式方位計について方位計測用の調整を行う調整方法において、
前記電子式方位計に対して前記予め定められた複数の方向のうち第1方向から外部磁界を印加し、且つ、前記複数のロータの磁極の向きの組み合わせパターンを全ての組み合わせパターンに切り換えていき、その間に、前記第1の記憶制御手段および前記第2の記憶制御手段により前記磁気センサの出力値を一時的に記憶させる第1ステップと、
前記電子式方位計に対して前記予め定められた複数の方向のうち前記第1方向を除く各方向から別々に外部磁界を印加していき、且つ、前記複数のロータの磁極の向きの組み合わせパターンを前記特定組み合わせパターンに固定して、その間に、前記第1の記憶制御手段により前記磁気センサの出力値を一時的に記憶させる第2ステップと、
前記第1ステップと前記第2ステップとの後に、前記第1の補正値演算手段により前記複数のロータの磁極の向きの前記特定組み合わせパターンに対応する補正値を算出させるとともに、当該補正値と、前記差分記憶制御手段により記憶させる前記差分とを、前記不揮発性の記憶手段に記憶させる第4ステップと、
を含むことを特徴とする電子式方位計の調整方法。
【請求項11】
電子式方位計の組立を行う組立工程と、
請求項9又は10の電子式方位計の調整方法により調整を行う調整工程と、
を含んだことを特徴とする電子式方位計の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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