説明

電子放出源形成用水系組成物及びこれを利用した電子放出源

【課題】電子放出源形成用水系組成物及びこれを利用した電子放出源を提供する。
【解決手段】カーボン系化合物、ケイ酸化合物及び水を含む電子放出源形成用水系組成物である。これにより、電子放出源形成用水系組成物で所望のパターンを鮮明に形成させ、該組成物で製造した電子放出源は、残留炭素がほとんどないので、エミッションの性能及び寿命が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボン系化合物、ケイ酸化合物及び水を含む電子放出源形成用水系組成物、これを利用した電子放出源及び該電子放出源を含む電子放出素子に係り、さらに具体的には、所望のパターンを鮮明に形成させうる電子放出源形成用水系組成物、該組成物で製造した残留炭素のほとんどない電子放出源及びそれを備えた電子放出素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電子放出素子は、電子放出源として熱陰極を利用する方式と冷陰極を利用する方式とがある。冷陰極を利用する方式の電子放出素子としては、FEA(Field Emitter Array)型、SCE(Surface Conduction Emitter)型、MIM(Metal Insulator Metal)型及びMIS(Metal Insulator Semiconductor)型、BSE(Ballistic electron Surface Emitting)型が知られている。
【0003】
前記FEA型は、仕事関数が小さいか、またはβ関数が小さい物質を電子放出源として使用する場合、真空中で電位差によって容易に電子が放出される原理を利用したものであって、モリブデン(Mo)、シリコン(Si)を主な材質とする先端がとがっているチップ構造物やグラファイト、DLC(Diamond Like Carbon)などの炭素系物質、そして、最近ナノチューブやナノワイヤなどのナノ物質を電子放出源に適用した素子が開発されている。
【0004】
FEA型電子放出素子は、カソード電極とゲート電極との配置形態によって、トップゲート型とアンダーゲート型とに大別され、使われる電極の数によって、2極管、3極管または4極管に分けられる。FEA型電子放出素子を利用して、ディスプレイ装置を具現する場合の例を図1に示した。
【0005】
前述したような電子放出素子に含まれる電子を放出させる電子放出源の形成において、カソード電極とゲート電極とが対向する、いわば、パラレルラテラルゲート型構造では、カソード電極とゲート電極との間の犠牲層(または電子放出部の間の犠牲層)の形成のためには、多数のフォトリソグラフィ工程が必ず必要であるだけでなく、電極が厚膜である場合には、さらに難しくなる。電極がAgペーストなどの厚膜で形成される場合、犠牲層材料として有機フォトレジスト材料が可能であるが、電子放出源形成用感光性組成物がフォトレジストの界面で反応してパターンが不明確になることを避け難い。本発明は、このような問題点を克服するためにある。
【0006】
また、前記工程で使われる電子放出源形成用組成物に一般的に含まれる感光性成分は、焼成後に残留炭素として残って、電子放出素子の性能及び寿命に悪影響を及ぼすという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来の技術の問題点を解決するために、所望のパターンを鮮明に形成させうる電子放出源形成用水系組成物、前記組成物で製造した残留炭素がほとんどない電子放出源及びそれを備えた電子放出素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を達成するために、カーボン系化合物、ケイ酸化合物及び水を含む電子放出源形成用水系組成物を提供する。
【0009】
本発明は、前記課題を達成するために、カーボン系化合物及びケイ酸化合物を含む電子放出源を提供する。
【0010】
本発明は、前記課題を達成するために、前記電子放出源を備えた電子放出素子を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前記電子放出源形成用水系組成物として所望のパターンを鮮明に形成させることができ、前記組成物で製造した電子放出源は、残留炭素がほとんどないので、エミッションの性能及び寿命が向上している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付された図面を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
【0013】
本発明による電子放出源形成用水系組成物は、カーボン系化合物、ケイ酸化合物及び水を含む。
【0014】
本発明による電子放出源形成用水系組成物に含まれるカーボン系化合物は、カーボンナノチューブまたはカーバイド誘導炭素またはこれらの混合物でありうる。
【0015】
前記カーボンナノチューブは、グラファイトシートがナノサイズの直径で丸く取り巻かれてチューブ状になっているカーボン同素体であって、単一壁ナノチューブ、多重壁ナノチューブまたはこれらの混合物を何れも使用しうるが、これに制限されるものではない。本発明のカーボンナノチューブは、熱化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition:以下、“CVD法”という)、DCプラズマCVD法、RFプラズマCVD法、マイクロ波プラズマCVD法のようなCVD法を利用して製造されたものでありうる。
【0016】
前記カーバイド誘導炭素は、炭素と周期律表の2族、13族、14族、15族または16族元素との化合物であって、シリコンカーバイド(Si−C)またはボロンカーバイド(B−C)のようなダイアモンド類カーバイド;チタンカーバイド(T−C)またはジルコニウムカーバイド(Zr−C)のような金属類カーバイド;アルミニウムカーバイド(Al−C)またはカルシウムカーバイド(Ca−C)のような塩類カーバイド;チタン−タリウムカーバイド(Ti−Ta−C)またはモリブデン−タングステンカーバイド(Mo−W−C)のような錯体カーバイド;炭窒化チタン(T−C−N)または炭窒化ジルコニウム(Zr−C−N)のような炭窒化物;または前記カーバイド物質などの混合物を使用して製造されたものでありうるが、これに制限されるものではない。
【0017】
本発明による電子放出源形成用水系組成物に含まれるカーボン系化合物の含量は、ケイ酸化合物100重量部を基準に10ないし200重量部であることが望ましい。
【0018】
10重量部未満である場合、伝導ネットワークが不完全でエミッション性能の低下を誘発するという点で望ましくなく、200重量部を超える場合、スクリーン効果による電場増強の低下によってエミッション性能を低下させるという点で望ましくない。
【0019】
一方、本発明による電子放出源形成用水系組成物に含まれるケイ酸化合物の対イオンは、周期律表の1族、2族または13族の金属元素でありうる。このようなケイ酸化合物の非制限的な例として、ケイ酸リチウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ホウ素、ケイ酸マグネシウムまたはケイ酸ナトリウムが挙げられ、望ましくは、前記ケイ酸化合物は、ケイ酸リチウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウムまたはこれらの混合物である。電子放出源形成用水系組成物に使われるケイ酸化合物は、固体形態または水に混合された形態であり、望ましくは、水に混合された形態である。
【0020】
本発明による電子放出源形成用水系組成物に含まれる水は、特別に制限されるものではないので、純度は問題とならない。したがって、当該技術分野で使われる一般的な蒸溜水、純水または超純水が使用でき、望ましくは、純水を使用しうる。
【0021】
本発明による電子放出源形成用水系組成物に含まれる純水の含量は、ケイ酸化合物100重量部を基準に1500ないし1700重量部であることが望ましい。
【0022】
1500重量部未満である場合、粘度上昇による均一な塗布が難しいという点で望ましくなく、1700重量部を超える場合、粒子の沈殿を誘発するという点で望ましくない。
【0023】
また、本発明による電子放出源形成用水系組成物は、カーボン系化合物、ケイ酸化合物及び水以外にも、当該技術分野で通常的に使われるものとして、pH調節剤、有機バインダー、界面活性剤、揺変剤または分散及びコーティング性向上のための材料を適当量ほどさらに含みうる。
【0024】
pH調節剤は、分散を安定化させ、pHを調節するためのものであって、例えば、水酸化アンモニウム、硝酸アンモニウム、またはクエン酸ナトリウムがあるが、これらに制限されるものではない。
【0025】
前記pH調節剤の含量は、前記組成物のpHを8ないし11にすることが望ましい。
【0026】
pHが8未満である場合、カーボン粒子の再凝集及び沈殿が発生するために望ましくなく、また、11を超える場合にも、同様な結果をもたらすだけでなく、強アルカリ性による作業性低下の観点で望ましくない。
【0027】
有機バインダーは、水分の急な揮発防止、分散性向上を目的とし、水系組成物の安定性のためのものであって、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシメチルセルロースがあるが、これらに制限されるものではない。
【0028】
前記有機バインダーの含量は、ケイ酸化合物100重量部を基準に15ないし25重量部であることが望ましい。
【0029】
15重量部未満である場合、カーボン粒子の沈殿など組成物の安定性低下によって望ましくなく、25重量部を超える場合、粘度上昇による作業性低下で望ましくない。
【0030】
界面活性剤は、陽イオンタイプ、陰イオンタイプ、ベタインタイプまたは非イオンタイプ界面活性剤が使われ、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルイミダゾリウムベタインがあるが、これらに制限されるものではない。
【0031】
前記界面活性剤の含量は、ケイ酸化合物100重量部を基準に25ないし35重量部であることが望ましい。
【0032】
25重量部未満である場合、カーボン粒子を基板へ完全に付着し難いという点で望ましくなく、35重量部を超える場合、エミッション性能低下の誘発によって望ましくない。
【0033】
揺変剤は、粘度調節のためのものであって、粘土、コロイド性酸化金属、ヒュームド酸化金属またはこれらの混合物を使用でき、例えば、CAB−O−SIL TS−530処理ヒュームドシリカ(ヘキサメチルジシラザン処理疎水性ヒュームドシリカ)、CAB−O−SIL TS−610処理ヒュームドシリカ(ジメチルジクロロシラン処理疎水性ヒュームドシリカ)、アクリル系化合物、またはウレタン系化合物があるが、これらに制限されるものではない。
【0034】
前記揺変剤の含量は、ケイ酸化合物100重量部を基準に3ないし5重量部であることが望ましい。
【0035】
前記揺変剤の含量が3重量部未満である場合、保存安定性の低下によって望ましくなく、5重量部を超える場合、分散性の低下によって望ましくない。
【0036】
分散及びコーティング性向上のための材料としては、例えば、天然ゴム、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースがあるが、これらに制限されるものではない。
【0037】
図1は、一般的なトップゲート型電子放出ディスプレイ装置の概略的な構成を示す部分斜視図である。
【0038】
図1に示したように、一般的な電子放出ディスプレイ装置100は、並んで配置されて真空である発光空間を形成する電子放出素子101及び前面パネル102と、前記電子放出素子101と前面パネル102との間隔を維持するスペーサ60と、を備えている。
【0039】
前記電子放出素子101は、第1基板110、前記第1基板110上に交互に配置されたゲート電極140、カソード電極120、及び前記ゲート電極140と前記カソード電極120との間に配置されて、前記ゲート電極140と前記カソード電極120とを電気的に絶縁する絶縁体層130を備えている。
【0040】
前記ゲート電極140と前記カソード電極120とが交差する領域には、電子放出源ホール131が形成されており、その内部に電子放出源(図示せず)が配置されている。
【0041】
前記前面パネル102は、第2基板90、前記第2基板90の底面に配置されたアノード電極80、前記アノード電極80の底面に配置された蛍光体層(図示せず)を備えている。
【0042】
本発明による電子放出源形成用水系組成物は、電子放出源間のギャップまたは電子放出源−電極間のギャップを効果的に形成できて、所望のパターンを鮮明に形成させうるので、ライン順次駆動型電子放出源、またはローカルディミング型電子放出源に適用可能であるが、これらに制限されるものではない。
【0043】
ライン順次駆動型電子放出源を例として、本発明による電子放出源形成用水系組成物の適用を、図面を参照して説明する。
【0044】
図2Aは、電極パターンの形成された基板上にフォトレジストが塗布されたことを示す斜視図及び塗布されたフォトレジストの断面の拡大図であり、図2Aを参照すれば、まず電極210パターンの形成された基板200上にリフトオフ型フォトレジスト220を塗布した後、中心波長が365,435nmであるUVを100mJ/m露光し、ハードベーキングした後、全面露光して現像し、フォトレジストを残存させた。前記フォトレジストの断面は、エッジ−カール形状である。
【0045】
図2Bは、電極パターンが形成され、フォトレジストの塗布された基板上に本発明による電子放出源形成用水系組成物を塗布したことを示す斜視図であり、図2Bを参照すれば、前記図2Aの工程後、本発明による電子放出源形成用水系組成物250を塗布する。塗布に使われる装置は、特別に制限されず、当該技術分野の一般的な装置を使用しうる。本発明による電子放出源形成用水系組成物を塗布した後、一般的な乾燥工程を経る。
【0046】
図2Cは、乾燥後にフォトレジストをリフトオフして生成された電子放出源の斜視図及び前記電子放出源の断面の拡大図であり、図2Cを参照すれば、生成された電子放出源350の断面は、図2Aのフォトレジスト220の断面と対応する形態を有している。フォトレジスト220は有機成分が主であり、本発明による電子放出源形成用水系組成物250は水系であるので、フォトレジスト220と前記電子放出源形成用水系組成物250とは相溶性がない。電子放出源形成用水系組成物とフォトレジスト220との間のかかる非相溶性は、フォトレジストパターン後に電子放出源形成用水系組成物の塗布及び乾燥過程で維持されて、乾燥後、リフトオフ過程で電子放出源350とフォトレジスト220とはきれいに分離される。次いで、焼成工程を経る単純な工程で所望の電子放出源パターンが鮮明に形成される。図2Dには、前記工程によって形成された本発明による電子放出源の断面を示した。
【0047】
本発明による電子放出源形成用水系組成物を利用した電子放出源は、カーボン系化合物及びケイ酸化合物を含む。
【0048】
前記カーボン系化合物は、カーボンナノチューブまたはカーバイド誘導炭素またはこれらの混合物でありうる。
【0049】
前記カーボンナノチューブは、グラファイトシートがナノサイズの直径で丸く取り巻かれてチューブ状になっているカーボン同素体であって、単一壁ナノチューブ、多重壁ナノチューブまたはこれらの混合物であるが、これらに制限されるものではない。
【0050】
前記カーバイド誘導炭素は、炭素と、周期律表の1族、13族、14族、15族または16族元素との化合物であって、シリコンカーバイド(Si−C)またはボロンカーバイド(B−C)のようなダイアモンド類カーバイド;チタンカーバイド(T−C)またはジルコニウムカーバイド(Zr−C)のような金属類カーバイド;アルミニウムカーバイド(Al−C)またはカルシウムカーバイド(Ca−C)のような塩類カーバイド;チタン−タリウムカーバイド(Ti−Ta−C)またはモリブデン−タングステンカーバイド(Mo−W−C)のような錯体カーバイド;炭窒化チタン(T−C−N)または炭窒化ジルコニウム(Zr−C−N)のような炭窒化物;または前記カーバイド物質の混合物から製造されたカーバイド誘導炭素でありうる。
【0051】
本発明による電子放出源に含まれるカーボン系化合物の含量は、ケイ酸化合物100重量部を基準に30ないし130重量部であることが望ましい。
【0052】
30重量部未満である場合、伝導ネットワークが不完全でエミッション性能の低下を誘発するという点で望ましくなく、130重量部を超える場合、スクリーン効果による電場増強の低下でエミッション性能を低下させるという点で望ましくない。
【0053】
前記ケイ酸化合物の対イオンは、周期律表の1族、2族または13族の金属元素であり、このようなケイ酸化合物の非制限的な例として、ケイ酸リチウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ホウ素、ケイ酸マグネシウムまたはケイ酸ナトリウムが挙げられ、望ましくは、前記ケイ酸化合物は、ケイ酸リチウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウムまたはこれらの混合物である。前記ケイ酸化合物は、焼成段階以後であるので、固状の化合物である。
【0054】
本発明による電子放出素子は、カーボン系化合物及びケイ酸化合物を含む電子放出源を備える。前記カーボン系化合物及びケイ酸化合物は、前述した通りであるので、これについての説明は省略する。
【0055】
以下、本発明を、下記実施例を通じてさらに詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。本実施例で使われる化合物、ミキサー器、塗布器、分析器具は、当該技術分野で使われる一般的なものとして特別に制限されない。
【実施例1】
【0056】
[電子放出源形成用水系組成物の製造]
カーバイド誘導炭素7.3g、純水79.5g、ケイ酸カリウム5g、水酸化アンモニウム4g、ヒドロキシエチルセルロース1g、界面活性剤(アルキルリン酸塩)1.5g、揺変剤(アルキル系化合物)0.2g、天然ガム1g及びヒドロキシメチルセルロース0.5gをミキサー器に投入して500rpmで30分間混合して、本発明による電子放出源形成用水系組成物を製造した。
【0057】
[電子放出源の製造]
ライン順次型カソード基板にリフトオフ型フォトレジストを使用してパターンを形成させ、前記電子放出源形成用水系組成物を塗布した。図3には、フォトレジストパターンを形成させた後、前記電子放出源形成用水系組成物を塗布したSEM(Scanning Electron Microscopic)写真を示した。次いで、前記基板を450℃で30分間焼成した後、フォトレジストを除去して、本発明による電子放出源を製造した。図4は、フォトレジストを除去した後、対面する電子放出部分の光学写真(300倍)であって、ギャップが鮮明に形成されたことが観察されている。
【0058】
前記電子放出源の残留炭素を分析した結果、約0.1%の残留炭素(ケイ酸化合物の含量を除外した時の測定物質対比)が検出された。
【0059】
[電子放出素子の製作]
前記電子放出源の形成されたITOガラス基板を冷陰極カソードとして使用し、100μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムをスペーサとして、銅プレートをアノード電極として使用して、電子放出素子を製作した。
【実施例2】
【0060】
カーバイド誘導炭素の代わりに、カーボンナノチューブを使用したことを除いては、実施例1と同一に電子放出源形成用水系組成物、電子放出源及び電子放出素子を製造した。
【0061】
前記電子放出源の残留炭素を分析した結果、0.1%の残留炭素が検出された。
【実施例3】
【0062】
カーバイド誘導炭素の代わりに、カーバイド誘導炭素3.65g及びカーボンナノチューブ3.65gを使用したことを除いては、実施例1と同一に電子放出源形成用水系組成物、電子放出源及び電子放出素子を製造した。
【0063】
前記電子放出源の残留炭素を分析した結果、0.1%未満の残留炭素が検出された。
【0064】
[比較例1]
カーバイド誘導炭素1g、アクリレートバインダー6.5g、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(TMPEOTA)5.5g、テキサノール5.5g、ベンゾフェノン1g及びジオクチルフタレート(DOP)0.5gを混合した後、3−ロールミルを使用して均一に混合分散させることによって、電子放出源形成用有機系組成物を製造した。以後に前記実施例1と同じ工程で電子放出源の間にギャップを形成させようとしたが、図5に示されたように、電子放出源とフォトレジストとの界面での化学的反応によって電子放出源とフォトレジストとの界面が不明になって、フォトレジストの除去時に電子放出源も共に除去されて、所望の構造を形成できなかった。
【0065】
前記電子放出源の残留炭素を分析した結果、1.5%の残留炭素が検出された。
【0066】
[比較例2]
カーバイド誘導炭素の代わりに、カーボンナノチューブを使用したことを除いては、比較例1と同様に製造した電子放出源形成用有機系組成物を、実施例1と同じライン順次型カソード基板にスクリーン印刷し、60℃で25分間乾燥させて溶媒を除去した後、中心波長が365,435nmであるUVを500mJ/m露光し、アルカリ現像してパターンを形成させた。次いで、450℃で30分間、窒素雰囲気で焼成して有機化合物を除去し、電子放出源を製造した。前記電子放出源の残留炭素を分析した結果、1.5%の残留炭素が検出された。
【0067】
次いで、前記電子放出源を冷陰極カソードとして使用し、100μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムをスペーサとして、銅プレートをアノード電極として使用して、電子放出素子を製作した。
【0068】
[電子放出素子の性能の測定]
実施例2及び比較例2で製作された電子放出素子に対して駆動電圧の関数で測定された電流密度を比較した。水系組成物に対して2.7V/μm、既存の有機系組成物に対して3.8V/μmのターンオンフィールドを表し、また4.3V/μm、6.2V/μmの電場でそれぞれ600μA/cmに達した。その結果を図6に示す。これから、実施例2の電子放出素子の電子放出能がさらに優秀であるということが分かる。
【0069】
[寿命特性の測定]
前記実施例2及び比較例2の電子放出源に対して寿命特性を評価するために、それぞれに対する電子放出寿命を測定し、その結果を下記表1に表した。表1から本発明の水系組成物を使用した電子放出源は、従来の有機系組成物を使用した電子放出源に比べて、はるかに少ない残留炭素含量及び向上した寿命特性を有するということが分かる。
【表1】

【0070】
寿命は、500時間の期間で測定された電流のグラフを利用して電流が0.5mA/cmとなる時間を推定する方法で測定された。その際、1mA/cmの条件で測定を開始した。一般的に、電子放出電流は、時間によって、初期には急減し、次第に飽和されて一定時間が経過すれば、ほぼ線形にゆっくり減少する傾向を示す。したがって、500時間が過ぎた後は、このように飽和された線を外挿して寿命を推定した。
【0071】
本発明は、図面及び実施例を参照して説明したが、これは、例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点が分かるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、ディスプレイ関連の技術分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】一般的な電子放出素子の構成を概略的に示す斜視図である。
【図2A】ライン順次駆動型電子放出源用電極パターンの形成された基板上にフォトレジストが塗布されたことを示す斜視図及び塗布されたフォトレジストの断面の拡大図である。
【図2B】ライン順次駆動型電子放出源用電極パターンが形成され、フォトレジストの塗布された基板上に本発明による電子放出源形成用水系組成物を塗布したことを示す斜視図である。
【図2C】焼成後フォトレジストをリフトオフさせて生成された本発明による電子放出源の斜視図及び前記電子放出源の断面の拡大図である。
【図2D】本発明によるライン順次駆動型電子放出源の断面図である。
【図3】フォトレジストパターンを形成させた後、本発明による電子放出源形成用水系組成物を塗布したSEM写真である。
【図4】フォトレジストを除去した後、本発明による対面する電子放出源部分の光学写真である。
【図5】従来の技術の有機系組成物を利用して形成した電子放出源とフォトレジストとの界面の断面のSEM写真である。
【図6】本発明による電子放出素子及び従来の技術による電子放出素子の電場に対して電流密度を示すグラフである。
【符号の説明】
【0074】
60 スペーサ
80 アノード電極
90 第2基板
100 電子放出ディスプレイ装置
101 電子放出素子
102 全面パネル
110 第1基板
120 カソード電極
130 絶縁体層
131 放出源ホール
140 ゲート電極
200 基板
210 電極
220 フォトレジスト
250 電子放出源形成用水系組成物
350 電子放出源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン系化合物、ケイ酸化合物及び水を含む電子放出源形成用水系組成物。
【請求項2】
前記カーボン系化合物は、カーボンナノチューブまたはカーバイド誘導炭素またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の電子放出源形成用水系組成物。
【請求項3】
前記カーボン系化合物の含量は、前記ケイ酸化合物100重量部を基準に10ないし200重量部であることを特徴とする請求項1に記載の電子放出源形成用水系組成物。
【請求項4】
前記ケイ酸化合物は、周期律表の1族、2族または13族の金属元素を対イオンとして含むことを特徴とする請求項1に記載の電子放出源形成用水系組成物。
【請求項5】
前記ケイ酸化合物は、ケイ酸リチウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウムまたはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の電子放出源形成用水系組成物。
【請求項6】
カーボン系化合物及びケイ酸化合物を含む電子放出源。
【請求項7】
前記カーボン系化合物は、カーボンナノチューブまたはカーバイド誘導炭素またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項6に記載の電子放出源。
【請求項8】
前記カーボン系化合物の含量は、前記ケイ酸化合物100重量部を基準に30ないし130重量部であることを特徴とする請求項6に記載の電子放出源。
【請求項9】
前記ケイ酸化合物は、周期律表の1族、2族または13族の金属元素を対イオンとして含むことを特徴とする請求項6に記載の電子放出源。
【請求項10】
前記ケイ酸化合物は、ケイ酸リチウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウムまたはこれらの混合物であることを特徴とする請求項6に記載の電子放出源。
【請求項11】
請求項6ないし10のうち何れか1項に記載の電子放出源を含む電子放出素子。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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