説明

電子文書作成支援方法及びシステム

【目的】
簡便且つ効率的な電子契約に適合する電子契約書の作成を容易する如く電子文書の作成を支援する電子文書作成支援方法及びシステムを提供する。
【構成】
契約当事者間の電子契約書の作成を支援する電子文書作成支援方法及びシステムであり、当事者間で電子的に取り交わされる電子文書の作成を支援する電子文書作成支援方法であり、内容入力を伴う電子文書作成要求に応じて、前記内容から所定書式の文書データを生成し、前記文書データを画像化した文書画像を生成する。前記当事者のうちの少なくとも1に特有の秘密鍵入力を伴う署名要求に応じて、前記秘密鍵を用いて前記文書データを暗号化して電子署名を生成し、前記電子署名を前記文書データと共に前記文書画像に埋め込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばサイバー上で電子的になされる電子契約に基づいて作成されるべき契約書の如く当事者間の取引等の交渉により電子的に取り交わされる電子文書の作成を支援する電子文書作成支援方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの如きサイバー上で取引を行う電子契約が広く行われている。一般消費者による消費財の購入ばかりか、製造会社が部品購入をインターネットの介して行う如く企業間の取引においても一般化している。かかる電子契約においては、契約当事者が取引内容をコンピュータを介して相互に交渉し、最終的にはまとまった契約内容を互いに確認し合うことにより契約が成立する。例えば、特許文献1は、「契約の当事者間で、共通の鍵を使用した暗号通信を行いつつ契約の信頼性を高めることができると共に、簡易で普及性の高い電子契約システムを構築することができる」とする電子契約方法を開示している。かかる方法は、契約上に必要な情報を電子データとして扱い、該電子データを暗号通信技術を用いて送受信する構成により契約の信頼性が高め得るとする。
【0003】
かかる信頼性が求められる一方、電子契約においても後日発生するかもしれない法的紛争に備えて当該契約に基づく契約書を作成して、これを契約当事者双方が保管しておくことが求められる。契約書の作成は、契約内容を紙面に印字して契約当事者双方が捺印又は署名することで行われるのが普通である。
【特許文献1】特開平10−240826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる通常の契約書の作成形態では、電子契約によりもたらされる簡便性や効率性を滅失するものであり、著しく効率性に乏しいものになってしまう。
【0005】
本発明の目的は、簡便且つ効率的な電子契約に適合する電子契約書の作成を容易にする如くして電子文書の作成を支援する電子文書作成支援方法及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電子文書作成支援方法は、当事者間で電子的に取り交わされる電子文書の作成を支援する電子文書作成支援方法であり、内容入力を伴う電子文書作成要求に応じて、前記内容から所定書式の文書データを生成し、前記文書データを画像化した文書画像を生成する文書画像生成ステップと、前記当事者のうちの少なくとも1に特有の秘密鍵入力を伴う署名要求に応じて、前記秘密鍵を用いて前記文書データを暗号化して電子署名を生成し、前記電子署名を前記文書データと共に前記文書画像に埋め込む文書署名ステップと、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明による電子文書作成支援システムは、当事者間の電子文書の作成を支援する電子文書作成支援方法であり、内容入力を伴う電子文書作成要求に応じて、前記内容から所定書式の文書データを生成し、前記文書データを画像化した文書画像を生成する文書画像生成手段と、前記当事者のうちの少なくとも1に特有の秘密鍵入力を伴う署名要求に応じて、前記秘密鍵を用いて前記文書データを暗号化して電子署名を生成し、前記電子署名を前記文書データと共に前記文書画像に埋め込む文書署名手段と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明による電子文書作成支援方法及びシステムによれば、電子透かし技術等の手段により電子文書に当事者の電子署名を埋め込み、電子文書に埋め込まれた電子署名を抽出して署名確認を行う構成が与えられる。これにより、従来、契約内容を書面上に印字し契約の当事者双方が捺印又は署名する如き人的作業を多くに必要とする契約書に代えて、電子契約の備える簡便性及び効率性を維持したままの電子契約書の作成を容易にする如くして、容易に電子文書を作成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施例について添付の図面を参照して詳細に説明する。
<第1の実施例>
図1は、本発明の第1の実施例を示しシステム全体の構成を示している。本図を参照すると、本発明による電子文書作成支援システムである第1電子契約システム10aと第2電子契約システム10bとが対向してある。第1電子契約システム10aに属する第1契約当事者と第2電子契約システム10bに属する第2契約当事者との間で、インターネットの如きサイバー上で、例えば物品の売買の如き契約が成立したものとする。該売買契約に基づいた契約書として、先ず第1契約当事者による電子署名がなされた電子文書である電子署名入り契約書108が第1電子契約システム10aから第2電子契約システム10bに送付され、これに第2契約当事者による電子署名がなされた電子文書である電子署名入り契約書108’が第2電子契約システム10bから第1電子契約システム10aに送付される。尚、本実施例においては、通常の2当事者間の契約を前提として、2つの電子契約システムすなわち第1電子契約システム10a及び第2電子契約システム10bが示されているが、本発明にはかかる限定はなく、複数当事者間における1つの契約のために、2つ以上複数の電子契約システムにおいて1つの契約書を作成する形態においても適用され得る。
【0010】
第1電子契約システム10a及び第2電子契約システム10bは、それぞれ1つのコンピュータシステムにより実現され、そのソフトウェア構成は、大きく2つのブロック、すなわち電子署名入り契約書発行部101と電子署名入り契約書検証部102とから構成される。電子署名入り契約書発行部101は、入力された契約内容データから契約書データを生成し、契約書データに電子署名を付与し、画像化した契約書データに契約書データと電子署名を埋め込み電子署名入りの契約書画像を取得し、これを印刷することにより電子署名入り契約書108を出力する機能を有する。電子署名入り契約書検証部102は、入力された電子署名入り契約書108を読み取り、読み取った画像から契約書データと電子署名を抽出し、電子署名を確認する機能を有する。
【0011】
電子署名入り契約書発行部101は、外部から例えばキーボード等の入力装置により契約内容データを入力し、これを予め用意された契約書フォーマットの該当する領域に挿入することによって契約書データを生成する契約書データ生成部104と、作成された契約書データに対して契約当事者の秘密鍵を用いて契約書データに電子署名を付与する電子署名付与部105と、入力された電子署名の付与された契約書データについて、契約書データを画像化し、画像化された契約書データに電子透かし技術を用いて契約書データと電子署名を埋め込む電子透かし埋め込み部106と、入力された電子署名入り契約書画像を印刷する印刷部107とから構成される。電子署名入り契約書発行部101により出力される電子署名入り契約書108は、契約書データと契約当事者の電子署名が埋め込まれた媒体である。該媒体の形態は、通常は紙であるが、電子透かし印刷技術を用いた印字が可能であれば、他の材料が用いられても良い。電子署名のための契約当事者の秘密鍵は、予め電子署名付与部105に入力されているものとする。電子署名が、捺印又は署名と等価の証明力を備えのは,電子データの全部又は1部を署名者のみが知り得る秘密鍵により暗号化され、公開され且つ該秘密鍵にのみ対応する公開鍵により当該文書が復号化され得ることを以て、文書としての該電子データが当該署名者により真実作成されたものであると認められるからである。
【0012】
電子署名入り契約書検証部102は、入力された電子署名入り契約書108’を読み取り電子署名入り契約書のスキャン画像を取得する読取部109と、該スキャン画像から電子透かし技術を用いて契約書データと電子署名を抽出する電子透かし抽出部110と、入力された契約書データと電子署名から契約当事者の公開鍵を用いて電子署名の検証を行う電子署名確認部111とから構成される。両契約当事者の電子署名がなされた電子署名入り契約書は108、例えば契約書保管庫に保管される。尚、署名確認の際に必要となる相手方契約当事者の公開鍵は予め取得され、電子署名確認部111に入力されているものとする。
【0013】
図2は、図1に示される電子契約システムにより出力される電子署名入り契約書画像の例を示している。ここで、契約書データ151は、契約日、当事者氏名、居所、契約内容等の契約条件を含む契約内容データの各々を、書式並びに取引約款等が予め規定された契約書フォーマットの該当する領域に挿入して作成されるデータである。電子署名152は、契約当事者について予め設定された秘密鍵によって契約書データ151の全部又は1部を暗号化することにより得られるデータである。図示されるよう、契約書データ151と電子署名152との両方から透かし画像が取得される。この透かし画像と、元々の契約書データ151の画像とを重畳することにより電子署名入り契約書画像153が得られる。これを印刷出力することにより紙面状の電子署名入り契約書108が得られる。
【0014】
本実施例において用いられ得る電子透かし技術としては、「透かし情報埋め込み装置、及び、透かし情報検出装置」と題する特開2003−101762号公報並びに「電子透かし情報埋め込み装置、電子透かし情報検出装置、電子透かし情報埋め込み方法、及び、電子透かし情報検出方法」と題する特開2003−209676号公報が参照される。かかる技術は、印刷物としては最も広く利用される白黒の二値による印刷装置において、文字以外の秘密情報を埋め込む方法、さらにそれを検出するための方法を提供している。図2に示されるように、透かし画像では、ドット配列状に透かしが配置され、その1部の正方状の複数のドットで1ビットの情報が表現されている。
【0015】
図3は、第1の実施例において2つの電子契約システムが連携して電子契約書を交換する処理手順を示している。本図に示される処理手順について図1に示される構成要素を適宜参照して説明する。
【0016】
先ず、第1電子契約システム10aは、契約内容データを入力する(ステップS101)。ここで、契約内容データは、第1契約当事者である操作者が端末から直接入力することや、予め用意された契約内容データを選択するなどの方法によって契約内容データを設定することにより入力される。
【0017】
次に、第1電子契約システム10aの電子署名入り電子契約書発行部101は、契約書データ生成部104により、該契約内容データから契約書データを生成する(ステップS102)。ここでは、入力された契約内容データが予め用意された契約書フォーマットの該当する領域に挿入することにより契約書データが生成される。次いで、電子署名付与部105により,該契約書データに電子署名を付与する(ステップS103)。ここで、入力された契約書データに対して、第1契約当事者の秘密鍵を用いて契約書データに電子署名が付与される。電子署名付与のために、操作者は予め公開鍵暗号の秘密鍵を取得して電子署名付与部105に入力しておく必要がある。使用するハッシュ関数は、SHA−1やMD5が用いられ得る。公開鍵暗号方式は、RSA暗号、楕円曲線暗号又はElGamal暗号の何れかの方法が用いられ得る。
【0018】
次に、第1電子契約システム10aは、電子透かし埋め込み部106より、契約書データ及び電子署名を埋め込む(ステップS104)。ここで、入力された電子署名の付与された契約書データが画像化される。そして、該画像化された契約書データに電子透かし技術を用いて契約書データと電子署名とが埋め込まれる。すなわち、契約書データと電子署名とを透かし画像で表現し、画像化した契約書データに重ね合わせることにより、電子署名入り契約書画像が出力される(図2に示される例を参照)。次いで、これを印刷部107により印刷する(ステップS105)。これにより、電子署名入り契約書が出力される。該印刷された電子署名入り契約書は、人の操作により第2契約当事者側すなわち第2電子契約システム10bに送付される(ステップS106)。この送付は、郵送などの方法、電話回線を介したFAX伝送、あるいはデータ通信ネットワークを介したデータ通信によりなされても良い。
【0019】
送付された電子署名入り契約書に対して、第2電子契約システム10bの電子署名入り電子契約書検証部102は、その読取部109により、読み取りを行う(ステップS107)。これにより、電子署名入り契約書のスキャン画像が取得される。次いで、その電子透かし抽出部110により、該スキャン画像から、契約書データ及び電子署名を抽出する(ステップS108)。ここでは、電子透かし技術における透かしから元の画像を復元する逆のプロセスが実行される。次いで、第2電子契約システム10bは、その電子署名確認部111により、該復元された電子署名を確認する(ステップS109)。この確認は、該電子署名を第1契約当事者の公開鍵を用いて検証することにより行われる。尚、署名確認の際に必要となる相手方すなわち第1契約当事者の公開鍵は予め電子署名確認部111に入力されている。
【0020】
第2電子契約システム10bの電子署名入り電子契約書発行部101は、その電子署名付与部105により、第1契約当事者について検証がなされた電子署名と対をなす契約書データに対して自身の電子署名を付与する(ステップS110)。ここで、入力された契約書データに対して、第2契約当事者の秘密鍵を用いて契約書データに電子署名を付与する。尚、署名付与の際に必要となる契約者当事者の公開鍵暗号の秘密鍵は予め電子署名付与部105に入力されている。次いで、電子透かし埋め込み部106により、該契約書データの画像に契約書データ及び電子署名を埋め込む(ステップS111)。電子署名の埋め込みの際には、埋め込みを行う第2契約者当事者自身の付与した電子署名だけでなく、検証を行った相手方の第1契約当事者の電子署名についても埋め込みを行う。次いで、印刷部107により、埋め込みがなされた電子署名入り契約書の印刷を行う(ステップS112)。通例、電子署名入り契約書は、各契約者当事者のために2部印刷され、各契約書保管庫における保管に供する。2部印刷された電子署名入り契約書のうちの1部が、人の操作により第1契約当事者側すなわち第1電子契約システム10aに送付される(ステップS113)。この送付は、郵送などの方法、電話回線を介したFAX伝送、あるいはデータ通信ネットワークを介したデータ通信によりなされても良い。
【0021】
送付された電子署名入り契約書に対して、第1電子契約システム10aの電子署名入り電子契約書検証部102は、その読取部109により、読み取りを行う(ステップS115)。これにより、電子署名入り契約書のスキャン画像が取得される。次いで、電子透かし抽出部110により、契約書データ及び電子署名を抽出する(ステップS116)。ここでは、該電子署名入り契約書のスキャン画像から、電子透かし技術を用いて、契約書データと、第2契約当事者の電子署名と、第1契約者当事者自身の秘密鍵で付与した電子署名とを抽出する。次いで、電子署名確認部111により、電子署名を確認する(ステップS117)。この電子署名確認は、相手方の第2契約当事者の電子署名の検証だけでなく、第1契約者当事者自身の秘密鍵で付与した電子署名の検証をも行う。検証がなされた電子署名入り契約書は保管庫への保管に供される(ステップS118)。この保管は相手方すなわち第2電子契約システム10bにおいても同様になされる(ステップS114)。
【0022】
以上のように、第1の実施例においては、サイバー上で成立した契約に基づく契約書として両契約当事者が電子署名を付した契約書を作成して交換する。これにより、埋め込まれた電子データとこれに対応する電子署名により、該契約書が両契約当事者による真実の合意に基づいて作成されたものであることを証明することが可能となる。
<第2の実施例>
図4は、本発明の第2の実施例を示しシステム全体の構成を示している。本図を参照すると、第1の実施例と同様に、第1電子契約システム10aと第2電子契約システム10bとが対向してある。第1電子契約システム10aに属する第1の契約当事者と第2電子契約システム10bに属する第2の契約当事者との間で、インターネットの如きサイバー上で、例えば物品の売買の如き契約が成立したものとする。本第2の実施例では、第1の実施例における構成に加えて契約書に対する改ざんを検出する構成をさらに含む。従って、以下、第1の実施例から追加又は変更されたものについてのみ説明することとする。
【0023】
電子署名入り契約書検証部102の電子透かし埋め込み部106は、改ざん検出用の情報として画像化された契約書データの縮小画像等の特徴情報を契約書データと電子署名と共に画像化された契約書データに埋め込む機能をさらに有する。また、電子署名入り契約書検証部102は、さらに改ざん検出部201が追加されている。改ざん検出部201は、電子署名入り契約書のスキャン画像と改ざん検出用の縮小画像等の特徴情報との照合を行う機能を有する。
【0024】
図5は、図4に示される電子契約システムにより出力される電子署名入り契約書画像の例を示している。ここで、契約書データ151及び電子署名152は、第1の実施例におけると同様である。図示されるように、契約書データ151と電子署名152と契約書データの縮小画像とからなる3つから透かし画像が取得される。この透かし画像と、元々の契約書データ151から画像化された契約書データとを重畳することにより電子署名入り契約書画像153が得られる。これを印刷出力することにより紙面状の電子署名入り契約書108が得られる。本実施例において用いられ得る電子透かし技術としては、第1の実施例の場合と同様である。
【0025】
図6は、第2の実施例において2つの電子契約システムが連携して電子契約書を交換する処理手順を示している。本図に示される処理手順について図4に示される構成要素を適宜参照して説明する。
【0026】
先ず、第1電子契約システム10aは、契約内容データを入力し、契約書データを生成し、次いで、該契約書データに電子署名を付与する(ステップS201乃至S203)。次に、第1電子契約システム10aは、その電子透かし埋め込み部106により、契約書データ及び電子署名を埋め込む(ステップS204)。ここで、画像化された契約書データに埋め込まれるデータとして、さらに改ざん検出用のデータとして画像化された契約書データを縮小した縮小画像が電子透かし技術を用いて契約書データと電子署名とともに埋め込められる。次いで、これを印刷し、第2電子契約システム10bに送付する(ステップS205乃至S206)。
【0027】
送付された電子署名入り契約書に対して、第2電子契約システム10bは読み取りを行い、契約書データ、電子署名及び縮小画像を抽出する(ステップS207乃至S208)。次いで、第2電子契約システム10bは、その改竄検出部201により改ざんを検出する(ステップS209)。ここで、埋め込まれていた縮小画像と電子署名入り契約書のスキャン画像とを照合することによって、該契約書に対する改ざんを検出する。次いで、該電子署名を確認する(ステップS210)。
【0028】
次に、第2電子契約システム10bの電子署名入り電子契約書発行部101は、第2契約当事者自身の電子署名を付与する(ステップS211)。次いで、第2電子契約システム10bは、電子透かし埋め込み部106により、契約書データ、電子署名及び改ざん検出用の縮小画像を埋め込む(ステップS212)。次いで、電子署名入り契約書の印刷を行い、第1契約当事者側すなわち第1電子契約システム10aに送付する(ステップS213乃至S214)。さらに、印刷された電子署名入り契約書を保管する(ステップS215)。
【0029】
送付された電子署名入り契約書に対して、第1電子契約システム10aは読み取りを行う(ステップS216)。次いで、第1電子契約システム10aは、その電子透かし抽出部110により、契約書データ及び電子署名を抽出する(ステップS217)。ここで、抽出される情報についても、第1の実施例から更に、改ざん検出用の縮小画像が契約書データと電子署名と共に画像化された契約書データから抽出される。次いで、第2電子契約システム10bは、その改竄検出部201により改ざんを検出する(ステップS218)。ここで、埋め込まれていた縮小画像と電子署名入り契約書のスキャン画像とを照合することによって、該契約書に対する改ざんを検出する。次いで、電子署名を確認し、保管に供する(ステップS219乃至220)。
【0030】
以上の第2の実施例においては、第1の実施例における埋め込み情報としてさらに契約書の縮小画像を埋め込むことが行われる。これにより、契約書の文書表面上の印刷内容に対する改ざんを検出できるようになり、文書としての契約書の信頼性より向上させることが可能になる。
【0031】
尚、以上の第2の実施例において示された契約書データの縮小画像に代えて、特定の形状に強く反応する特徴抽出フィルタを該契約書データに対して施すことにより得られる特定情報が用いられても良い。
<第3の実施例>
図7は、本発明の第3の実施例を示しシステム全体の構成を示している。本図を参照すると、第1の実施例と同様に、第1電子契約システム10aと第2電子契約システム10bとが対向してある。第1電子契約システム10aに属する第1の契約当事者と第2電子契約システム10bに属する第2の契約当事者との間で、インターネットの如きサイバー上で、例えば物品の売買の如き契約が成立したものとする。本第3の実施例では、第1の実施例における構成に加えて、契約書への埋め込み情報として印影データを埋め込み、契約書に捺印された印影と埋め込まれた印影データを照合する構成を有する。従って、以下、第1の実施例から追加又は変更されたものについてのみ説明することとする。
【0032】
電子署名入り契約書発行部101には、第1の実施例に比して、印影データ301の入力が追加される。印影データ301は、契約書に捺印される印鑑について、予め紙などに捺印された印鑑の印影を、スキャナなどによって読み取り、画像化することによって得られたデータである。該印影データ301は、予め紙などに捺印された印鑑の印影を、スキャナなどによって読み取り、画像化したデータを印影データとして用意しておく必要がある。該印影データは、契約書データ151や電子署名152と共に画像化された契約書データに埋め込まれる。
【0033】
電子署名入り契約書発行部101において、契約書データ生成部104は、第1の実施例から更に、印影データが入力として追加され、契約書データと印影データを出力する機能を有する。電子署名付与部105は、契約書データと印影データを一体化したデータに対する電子署名の付与を行う機能を有する。電子透かし埋め込み部106は、契約書データと電子署名とともに、印影データを画像化された契約書データに埋め込む機能を有する。電子署名入り契約書が、印刷部107から出力される。出力される電子署名入り契約書は、埋め込みがなされた印影データに対応する印鑑が捺印されるものとする。
【0034】
電子署名入り契約書検証部102おいて、第1の実施例に比して、印鑑照合部303がさらに追加される。印鑑照合部303は、電子契約システム10a又は10bによって埋め込まれた印影データと、電子署名入り契約書のスキャン画像から取得される印影とを照合することによって、正当な印鑑が捺印された契約書であるかを確認する機能を有する。電子透かし抽出部110は、電子署名入り契約書のスキャン画像から、契約書データと電子署名と共に印影データを抽出する機能を有する。
【0035】
図8は、図7に示される電子契約システムにより出力される電子署名入り契約書画像の例を示している。ここで、契約書データ151及び電子署名152は、第1の実施例におけると同様である。図示されるように、契約書データ151と電子署名152と印影データ301とからなる3つから透かし画像が取得される。この透かし画像と、元々の契約書データ151の画像とを重畳することにより電子署名入り契約書画像153が得られ、これを印刷出力することにより紙面状の電子署名入り契約書108が得られる。電子署名入り契約書108には、埋め込みがなされた印影データに対応する印鑑が捺印される。本実施例において用いられ得る電子透かし技術としては、第1の実施例の場合と同様である。
【0036】
図9は、第3の実施例において2つの電子契約システムが連携して電子契約書を交換する処理手順を示している。本図に示される処理手順について図7に示される構成要素を適宜参照して説明する。
【0037】
先ず、第1電子契約システム10aの電子署名入り契約書発行部101は、契約内容データ及び印影データを入力する(ステップS301)。次いで、該契約内容データから契約書データを生成する(ステップS302)。次いで、電子署名付与部105により、電子署名を付与する(ステップS303)。ここで、契約書データと印影データを一体化したデータに対する電子署名が付与される。次いで、電子透かし埋め込み部106により、契約書データ、印影データ及び電子署名を埋め込む(ステップS304)。ここで、埋め込まれる情報には、第1の実施例における契約書データと電子署名に加えて、更に印影データが埋め込まれる(図8参照)。次いで、これを印刷する(ステップS305)。これにより、電子署名入り契約書が出力される。
【0038】
次に、出力された電子署名入り契約書に対して、第1電子契約システム10aによって埋め込まれた印影データに対応する印鑑で、第1契約当事者が捺印する(ステップS306)。次いで、該電子署名入り契約書は、人の操作により第2契約当事者側すなわち第2電子契約システム10bに送付する(ステップS307)。
【0039】
送付された電子署名入り契約書に対して、第2電子契約システム10bは読み取りを行う(ステップS308)。次いで、電子透かし抽出部110により、契約書データ、印影データ及び電子署名を抽出する(ステップS309)。ここで、抽出される情報は、第1の実施例における契約書データと電子署名に加えて、更に印影データが抽出される。次いで、第2電子契約システム10bは、その印鑑照合部303により、印鑑を照合する(ステップS310)。ここで、電子透かし抽出部110によって抽出された印影データと、電子署名入り契約書のスキャン画像から取得される印影画像とを照合することによって、正当な印鑑が捺印された契約書であるかを確認する。さらに、その電子署名確認部111により、電子署名を確認する(ステップS311)。
【0040】
次に、第2電子契約システム10bの電子署名入り契約書発行部101は、印影データを入力する(ステップS312)。次いで、電子署名付与部105により、電子署名を付与する(ステップS313)。ここで、契約書データと抽出した印影データと入力した印影データとを一体化したデータに対する電子署名が付与される。次いで、電子透かし埋め込み部106により、契約書データ、印影データ及び電子署名を埋め込む(ステップS314)。ここで、埋め込まれる情報は、第1の実施例における契約書データと電子署名に加えて、更に印影データが埋め込まれる。電子署名と印影データには、それぞれ電子透かし抽出部から抽出された第1契約当事者のものと、新たに電子署名付与部105により付与された第2契約当事者のものとが埋め込まれる。次いで、印刷部107により、埋め込みがなされた電子署名入り契約書の印刷を行う(ステップS315)。
【0041】
次に、出力された電子署名入り契約書に対して、電子契約システム10bによって埋め込まれた印影データに対応する印鑑で、第2契約当事者が捺印する(ステップS316)。次いで、該電子署名入り契約書は、人の操作により第1契約当事者側すなわち第1電子契約システム10aに送付する(ステップS317)。
【0042】
送付された電子署名入り契約書に対して、第1電子契約システム10aの電子署名入り電子契約書検証部102は読み取りを行う(ステップS319)。次いで、電子透かし抽出部110により、契約書データ、印影データ及び電子署名を抽出する(ステップS320)。ここで抽出される情報は、第1の実施例における契約書データと電子署名に加えて、更に印影データが抽出される。電子署名と印影データは、互いの電子契約システムにおいて付与及び入力されたものが抽出される。次に、印鑑照合部303により、抽出された印影データに対して印鑑照合を行う(ステップS321)。ここで、電子透かし抽出部によって抽出された印影データと、電子署名入り契約書のスキャン画像から取得される印影画像とを照合することによって、正当な印鑑が捺印された契約書であるかが確認される。次いで、電子署名確認部111により、電子署名を確認する(ステップS322)。該電子署名入り契約書は保管庫への保管に供される(ステップS323)。この保管は相手方すなわち第2電子契約システム10bにおいても同様になされる(ステップS318)。
【0043】
以上の第3の実施例においては、契約書への埋め込み情報として印影データを埋め込み、契約書に捺印された印影と埋め込まれた印影データとを照合することにより、契約書に捺印された印影が正当なものであることを確認することができるようになる。これにより、電子署名入り契約書であると共に、従来の捺印又は署名による契約書の形式を踏襲することも可能となる。
【0044】
本発明による電子文書作成支援方法及びシステムの他の形態として、複数の電子契約システムをネットワークを介して相互に接続した場合には、印刷前の電子署名入り契約書画像をネットワークを介して送受信することにより、契約内容データ入力から電子署名入り契約書出力までの契約当事者双方の処理を全て自動化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の適用において、印紙税が非課税となる電子データの契約書にするために、契約当事者双方の電子署名が埋め込まれた印刷前の電子署名入り契約書画像を本契約書とし、印刷され保管される電子署名入り契約書を謄本として必要に応じて印刷するという形態も考えられる。また、本発明における電子文書は契約文書に限られず、例えば、請求書や領収書又は各種の申請書や届出書等の電子文書でも良く、当事者間で電子的に取り交わされる多様な電子文書についても同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施例を示しシステム全体の構成を示しているブロック図である。
【図2】図1に示される電子契約システムにより出力される電子署名入り契約書画像の例を示している説明図である。
【図3】第1の実施例において2つの電子契約システムが連携して電子契約書を交換する処理手順を示しているシーケンス図である。
【図4】本発明の第2の実施例を示しシステム全体の構成を示しているブロック図である。
【図5】図4に示される電子契約システムにより出力される電子署名入り契約書画像の例を示している説明図である。
【図6】第2の実施例において2つの電子契約システムが連携して電子契約書を交換する処理手順を示しているシーケンス図である。
【図7】本発明の第3の実施例を示しシステム全体の構成を示しているブロック図である。
【図8】図7に示される電子契約システムにより出力される電子署名入り契約書画像の例を示している説明図である。
【図9】第3の実施例において2つの電子契約システムが連携して電子契約書を交換する処理手順を示しているシーケンス図である。
【符号の説明】
【0047】
10a 第1電子契約システム
10b 第2電子契約システム
101 電子署名入り契約書発行部
102 電子署名入り契約書検証部
104 契約書データ作成部
105 電子署名付与部
106 電子透かし埋め込み部
107 印刷部
108 電子署名入り契約書
109 読取部
110 電子透かし抽出部
111 電子署名確認部
151 契約書データ
152 電子署名
153 電子署名入り契約書画像
201 改ざん検出部
301 印影データ
303 印鑑照合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
当事者間で電子的に取り交わされる電子文書の作成を支援する電子文書作成支援方法であって、
内容入力を伴う電子文書作成要求に応じて、前記内容から所定書式の文書データを生成し、前記文書データを画像化した文書画像を生成する文書画像生成ステップと、
前記当事者のうちの少なくとも1に特有の秘密鍵入力を伴う署名要求に応じて、前記秘密鍵を用いて前記文書データを暗号化して電子署名を生成し、前記電子署名を前記文書データと共に前記文書画像に埋め込む文書署名ステップと、
を含むことを特徴とする電子文書作成支援方法。
【請求項2】
前記文書画像を印刷出力するステップを更に含むことを特徴とする請求項1記載の電子文書作成支援方法。
【請求項3】
前記文書画像を通信ネットワークを介して送受信するステップを更に含むことを特徴とする請求項1記載の電子文書作成支援方法。
【請求項4】
文書画像入力を伴う文書署名確認要求に応じて、前記文書画像から少なくとも1つの電子署名及び文書データを抽出し、前記電子署名に対応する当事者に特有の公開鍵を用いて前記電子署名を復号し、前記電子署名を確認する文書確認ステップを更に含むことを特徴とする請求項1記載の電子文書作成支援方法。
【請求項5】
前記文書画像に前記文書画像それ自体を埋込画像として埋め込むステップと、文書画像入力を伴う文書改竄検証要求に応じて、前記文書画像から埋込画像を抽出し、前記埋込画像と照合することにより前記文書画像に対する改竄の有無を検証する改竄検証ステップと、を更に含むことを特徴とする請求項1記載の電子文書作成支援方法。
【請求項6】
前記当事者の各々の印鑑の印影データの入力に応じて、前記印影データを前記文書画像に埋め込むステップと、
文書画像入力を伴う文書捺印検証要求に応じて、前記文書画像から印影データを抽出し、前記印影データと前記文書画像に捺印として含まれる印鑑の印影データとを照合し、前記捺印を検証する捺印検証ステップを更に含むことを特徴とする請求項1記載の電子文書作成支援方法。
【請求項7】
前記文書画像に情報を埋め込む方式は、電子透かし技術に基づく方式であることを特徴とする先行する請求項何れか1記載の電子文書作成支援方法。
【請求項8】
当事者間の電子文書の作成を支援する電子文書作成支援システムであって、
内容入力を伴う電子文書作成要求に応じて、前記内容から所定書式の文書データを生成し、前記文書データを画像化した文書画像を生成する文書画像生成手段と、
前記当事者のうちの少なくとも1に特有の秘密鍵入力を伴う署名要求に応じて、前記秘密鍵を用いて前記文書データを暗号化して電子署名を生成し、前記電子署名を前記文書データと共に前記文書画像に埋め込む文書署名手段と、
を含むことを特徴とする電子文書作成支援システム。
【請求項9】
前記文書画像を印刷出力する手段を更に含むことを特徴とする請求項8記載の電子文書作成支援システム。
【請求項10】
前記文書画像を通信ネットワークを介して送受信する手段を更に含むことを特徴とする請求項8記載の電子文書作成支援システム。
【請求項11】
文書画像入力を伴う文書署名確認要求に応じて、前記文書画像から少なくとも1つの電子署名及び文書データを抽出し、前記電子署名に対応する当事者に特有の公開鍵を用いて前記電子署名を復号し、前記電子署名を確認する文書確認手段を更に含むことを特徴とする請求項8記載の電子文書作成支援システム。
【請求項12】
前記文書画像に前記文書画像それ自体を埋込画像として埋め込む手段と、文書画像入力を伴う文書改竄検証要求に応じて、前記文書画像から埋込画像を抽出し、前記埋込画像と照合することにより前記文書画像に対する改竄の有無を検証する改竄検証手段と、を更に含むことを特徴とする請求項8記載の電子文書作成支援システム。
【請求項13】
前記当事者の各々の印鑑の印影データの入力に応じて、前記印影データを前記文書画像に埋め込む手段と、
文書画像入力を伴う文書捺印検証要求に応じて、前記文書画像から印影データを抽出し、前記印影データと前記文書画像に捺印として含まれる印鑑の印影データとを照合し、前記捺印を検証する捺印検証手段を更に含むことを特徴とする請求項8記載の電子文書作成支援システム。
【請求項14】
前記文書画像に情報を埋め込む方式は、電子透かし技術に基づく方式であることを特徴とする請求項8乃至13の何れか1記載の電子文書作成支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−135483(P2006−135483A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−320277(P2004−320277)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】