説明

電子時計

【課題】時刻情報を迅速に取得でき、かつ電力消費を抑えた電子時計を提供する。
【解決手段】GPS付き腕時計は、GPS衛星からの衛星信号を捕捉するとともに、捕捉した衛星信号を受信し、受信した衛星信号に基づいて情報を取得するGPS受信部10と、取得した情報を表示制御する時刻表示装置20と、衛星信号に含まれる時刻情報を取得する測時モードおよび衛星信号に含まれる位置情報を取得して当該電子時計の位置を演算する測位モードを切り替える受信モード設定部215と、測位モードにおいて、信号受信閾値の初期値を、上限値に設定するとともに、相関回数に応じて信号受信閾値を段階的に所定の下限値まで減少させ、測時モードにおいて、信号受信閾値を下限値に固定する閾値設定部15と、を具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばGPS衛星などの位置情報衛星から衛星信号を受信して現在の日付や時刻を求める電子時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自己位置を測位するためのシステムであるGPS(Global Positioning System)システムでは、地球を周回する軌道を有するGPS衛星が用いられており、このGPS衛星からの衛星信号を受信して、衛星信号に含まれる時刻情報や位置情報に基づいて、時刻修正処理や、現在位置を測位する処理を実施するGPS装置が実用化されている。
【0003】
GPS衛星から送信される衛星信号の捕捉では、相関値や信号強度に閾値を持たせ、その閾値以上の信号レベルの衛星信号を受信して以降の同期処理およびNAVデータデコード処理の可否を判別させる。これにより、ノイズなどの影響が小さい良質の電波波形の信号を受信することができ、測位精度や日付時刻修正精度を向上させることが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1に記載のGPS受信装置は、高仰角衛星の衛星信号を受信すると、その衛星の受信信号レベルをメモリーに格納し、メモリーに格納されたデータが所定数以上となると、これらのデータの平均値(移動平均)を算出する。そして、GPS受信装置は、受信信号レベルに対する最適閾値の対応関係を示すテーブルデータを参照し、前記移動平均に対する最適閾値を設定して、低仰角衛星の衛星信号やマルチパスを排除する方法が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−149315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、GPS受信装置において、衛星信号に含まれる位置情報に基づいて、現在位置を求める測位演算を実施する場合、データサイズが大きい位置情報を取得するために、長時間の受信処理が必要であり、信頼性の高い情報を少なくとも3つ以上取得する必要もある。このため、高仰角衛星からの信号強度の大きい衛星信号を受信することが好ましい。
一方、衛星信号から時刻情報のみを取得して、時刻修正を実施する電子時計では、測位演算で必要となるような信号強度が高い衛星信号は必ずしも必要とはならない。つまり、衛星信号に含まれる時刻情報は、位置情報に比べてデータサイズが小さく、時刻情報の取得に要する時間も、測位演算時よりも短くてよい。また、ノイズ成分が含まれる場合であっても、時刻情報へのノイズの影響が十分小さいため、測位演算時よりも信号強度が低い衛星信号で時刻情報を取得することが可能となる。つまり、低仰角に位置するGPS衛星からの衛星信号やマルチパスの衛星信号など、信号強度が低い衛星信号であっても、時刻情報を取得することが可能となる。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1のようなGPS受信装置では、最適閾値に基づいて、高仰角衛星からの衛星信号のみを受信し、低仰角衛星からの衛星信号やマルチパスの衛星信号をカットしてしまう。したがって、GPS受信装置が室内や建物近傍など、高仰角衛星からの衛星信号が受信できない受信環境が悪い状況下にある場合、仮に時刻情報を取得可能な低仰角衛星からの衛星信号やマルチパスの衛星信号が入力されているとしても、時刻情報を取得することができないという問題がある。
【0008】
また、GPS受信装置には、受信可能な衛星信号の信号強度の閾値を、経過時間に応じて低下させることで、受信開始時点で受信できなかった衛星信号を、所定時間経過後に受信できるようにする装置もある。しかしながら、この場合、受信開始時から情報取得までの時間が長くなり、結果消費電力も大きくなるという問題がある。特に、腕時計のような小型の電子時計では、供給される電力に限度があるため、このような長時間の受信処理を実施することは消費電力上、好ましくない。
【0009】
本発明は上記のような問題に鑑みて、時刻情報を迅速に取得でき、かつ電力消費を抑えた電子時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電子時計は、複数の位置情報衛星から送信される衛星信号から捕捉可能な衛星信号をサーチするサーチ処理を実施し、サーチ処理により捕捉された衛星信号のうち、信号強度が所定の信号受信閾値以上となる衛星信号を受信する受信手段と、前記受信手段が受信した衛星信号に基づいて所定の情報を取得する情報取得手段と、取得した情報を表示する表示手段と、前記情報取得手段により前記衛星信号に含まれる時刻情報を取得する測時モード、および前記情報取得手段により前記衛星信号に含まれる位置情報を取得して当該電子時計の位置を演算する測位モードを切り替えるモード切替手段と、前記モード切替手段により切り替えられるモードに応じて、前記信号受信閾値を設定する閾値設定手段と、を備え、前記閾値設定手段は、前記測位モードに切り替えられた場合に、前記信号受信閾値の初期値を、所定の測位用閾値に設定するとともに、全位置情報衛星の前記衛星信号に対して前記サーチ処理を実施した回数であるサーチ回数に応じて、前記信号受信閾値を段階的に減少させ、前記測時モードに切り替えられた場合に、前記信号受信閾値を、前記測位用閾値未満、所定の下限値以上となる測時用固定閾値に設定することを特徴とする。
【0011】
ここで、全位置情報衛星の衛星信号に対してサーチ処理(相関処理)を実施する場合、その相関処理に要する時間(相関所要時間)はほぼ決まった時間となる。したがって、測位モードにおいて、閾値設定手段は、相関回数をカウントして、所定の相関回数がカウントされる毎に、信号受信閾値を減少させる処理をしてもよく、相関所要時間を計測して、所定の相関回数の相関処理に要する時間毎に、信号受信閾値を減少させる処理をしてもよい。
【0012】
この発明では、電子時計は、モード切替手段により、位置を計測する測位モードと、時刻情報を取得する測時モードとを切り替え可能であり、閾値設定手段は、これらのモードに応じて、衛星信号を受信する際の信号受信閾値を設定する。
すなわち、測位モードでは、少なくとも3つ以上の衛星信号から位置情報衛星信号の位置情報(軌道情報)を取得し、これらの情報に基づいて位置を演算する処理を実施するため、時刻情報のみを取り出す測時モードに比べて、より精度の高い正確な情報が必要となる。したがって、測位モードにおける衛星信号の受信では、信号受信閾値の初期値として、高レベル値の測位用閾値を設定する。そして、この測位用閾値で衛星信号が捕捉されない場合に、相関回数に応じて信号受信閾値を段階的に減少させる。これにより、信号強度の高い衛星信号を優先して捕捉することが可能となり、適切な位置演算処理を実施することが可能となる。
【0013】
一方、測時モードでは、送信される衛星信号から時刻情報のみを取得すればよい。このような場合測位モードのような精度の高い衛星信号は要求されず、信号強度が弱くノイズ成分が含まれる衛星信号であっても、十分に時刻情報を取得することが可能となる。したがって、時刻情報を取得可能な信号強度を有する衛星信号であれば、いずれの位置情報衛星からの衛星信号を受信してもよい。
このため、本発明では、測時モードにおいて、閾値設定手段は、測位用閾値未満で、所定の下限値以上となる測時用固定閾値を設定して固定する。ここで、下限値とは、取得した衛星信号から情報を取得可能な最低信号強度であり、この下限値よりも小さい信号強度の衛星信号では、ノイズ成分などが多く、正確な情報を取得することが困難となる。
このような測時用固定閾値を設定することで、測時モードにおける受信開始から受信完了までの時間を、短縮させることができる。すなわち、電子時計に、測時用固定閾値以上測位用閾値未満の信号強度を有する衛星信号が入力される場合において、測位モードと同様の測時用固定閾値により測時モードの受信処理を実施した場合、受信開始時に衛星信号が捕捉されず、例えば所定回の相関処理を実施して、信号受信閾値が減少させられた後に、衛星信号を捕捉することが可能となる。これに対して、測時モードにおいて、信号受信閾値が、測位用閾値より小さい測時用固定閾値に固定されているので、信号強度が測時用固定閾値以上となる衛星信号であれば捕捉することができる。したがって、上記のように、測時用固定閾値以上測位用閾値未満の信号強度を有する衛星信号が入力される場合、受信開始時から衛星信号を捕捉することが可能となる。これにより、衛星信号の捕捉にかかる時間が短縮され、情報処理手段による時刻情報の取得(デコード処理)完了までの時間もより早くなる。したがって、測時モードにおいて、衛星信号の受信動作に要する消費電力も減少し、電池電圧を長時間維持させることができる。また、電池電圧の電力低下を抑えることができるため、電圧低下によるシステムダウンをも防止することができる。
【0014】
本発明の電子時計では、前記測位モードおよび前記測時モードのうち、いずれか一方のモードに切り替える旨の設定情報を入力可能な入力手段を備え、前記モード切替手段は、前記入力手段から前記設定情報が入力されて前記衛星信号を受信する場合に、この設定情報に基づいて、前記測時モードおよび前記測位モードのいずれか一方に前記モードを切り替え、所定時刻に前記衛星信号を受信する場合に、前記時刻情報を取得する自動測時モードに切り替え、前記閾値設定手段は、前記測時モードに切り替えられた場合、前記信号受信閾値として、前記測位用閾値より小さく、下限値より大きい測時用固定閾値を設定し、前記自動測時モードに切り替えられた場合、前記信号受信閾値を、前記下限値に設定することが好ましい。
【0015】
この発明では、モード切替手段は、利用者による入力手段の操作により設定情報が入力されたか否かにより、手動モードと自動測時モードを切り替える。手動モードは、前記測位モードと、前記測時モードとがあり、設定情報に基づいて適宜切り替えられる。自動測時モードは、入力手段から設定情報が入力されない場合に設定され、定刻に自動で時刻情報を取得するモードである。そして、モード切替手段により、自動測時モードに切り替えられた場合、閾値設定手段は、信号受信閾値として下限値を設定して固定する。
衛星信号の受信において、信号強度が小さい衛星信号では、ノイズ成分も多く含まれるため、情報処理手段による情報取得処理(デコード処理)に多く時間がかかる場合がある。また、手動モードで測時モードによる処理(測時処理)を実施する場合、利用者が意図的に電子時計を受信環境の良好な位置に維持することが考えられる。したがって、手動モードでは、比較的信号強度が大きい衛星信号が電子時計に入力されることが予想される。ここで、信号受信閾値が下限値に設定されていると、信号強度が小さい衛星信号も捕捉され、利用者は処理が完了するまでに長時間待たされる場合がある。
これに対して、本発明のように、手動測時モードでは、測時用固定閾値を下限値より大きくすることで、例えば下限値と略同値の信号強度を有する衛星信号など、信号強度が極めて小さい衛星信号を除外することができ、より迅速に測時処理を完了させることができる。
一方、自動測時モードでは、利用者の意思に関係なく、定刻に実施される測時処理であり、受信時間が長時間となっても、利用者を待たせることはない。また、例えば夜間など、電子時計が室内にある場合、受信環境が悪く、下限値近傍の信号強度しか捕捉できない場合がある。したがって、自動測時モードにおいて、信号受信閾値を下限値に設定することで、室内のような受信環境が悪い状態であっても、時刻情報を取得することができる。
【0016】
本発明の電子時計は、前記モード切替手段は、前記測時モードに切り替えられた場合に、さらに、前記時刻情報のみを取得する通常測時モードと、前記衛星信号に含まれる年月日情報および前記時刻情報を取得する詳細測時モードとを切り替え、前記閾値設定手段は、前記通常測時モードに切り替えられた場合に、前記信号受信閾値を、前記測時用固定閾値に設定し、前記詳細測時モードに切り替えられた場合に、前記信号受信閾値を、前記測位用閾値より小さく、前記測時用固定閾値より大きい第二測時用固定閾値に設定することが好ましい。
【0017】
位置情報衛星としてGPS衛星を利用する場合、GPS衛星では、6個のサブフレームにより構成される衛星信号を30秒間隔で送信し、各サブフレーム1〜6は、それぞれ6秒間隔で送信される。ここで、時刻情報は、各サブフレームに含まれる情報であり、年月日情報はサブフレーム1のみに含まれる情報である。つまり、時刻情報は、6秒間隔で送信され、年月日情報は30秒間隔で送信される。したがって、時刻情報のみの受信では、信号強度が小さい衛星信号で、ノイズ成分などにより情報が取得できなかった場合でも、6秒後に送信されるサブフレームにより、再度情報取得を試みることができる。一方で、年月日情報は、30秒間隔で送信されるため、信号強度が小さい衛星信号で、ノイズ成分などにより情報が取得できなかった場合、30秒後のサブフレーム1の送信を待つ必要がある。したがって、詳細測時モードにおいて、信号強度が小さい衛星信号から情報を取得する場合、受信時間が長くなる場合がある。
ここで、本発明では、詳細測時モードにおいて、時刻情報のみを取得する通常測時モードで設定される測時用固定閾値よりも大きく、測位用閾値よりも小さい第二測時用固定閾値が用いられる。このため、詳細測時モードにおいても、信号強度が高い衛星信号を優先的に受信することができ、年月日情報の取得失敗により受信時間が長時間になる不都合を防止できる。
【0018】
本発明の電子時計では、前記受信手段は、前記測時モードにおいて、所定数の衛星信号が捕捉された場合、または所定信号強度以上の衛星信号が捕捉された場合に、前記サーチ処理を停止させることが好ましい。
【0019】
ここで、所定数とは、2以上の整数である。測時モードでは、1つの衛星信号から時刻情報を取得できれば、取得した情報に基づいて時刻を修正することができる。しかしながら、信号強度の小さい衛星信号を1つのみ捕捉して情報を取得する場合、受信環境の変化などにより、信号強度が落ち込むと情報の取得が困難となる場合もあり、この場合、タイムアウトにより受信失敗となる場合がある。また、時刻情報の取得完了までの間、衛星信号のサーチ処理を継続して実施する構成とした場合、消費電力が大きくなるという問題がある。
これに対して、本発明のように、所定数の衛星信号を捕捉した後にサーチ処理を停止すると、これらの衛星信号のうち、いずれか1つの衛星信号の信号強度が落ち込み、デコード処理が困難となった場合でも、他の衛星信号により情報を取得することができる。これにより、受信手段により信号強度の小さい衛星信号しか捕捉できなかった場合でも、安定した受信動作を実施することができ、受信時間を短縮することができる。また、衛星信号が所定数捕捉された状態で、サーチ処理が停止されるため、サーチ処理に要する消費電力も抑えることができる。
一方、所定数の衛星信号を捕捉した後にサーチ処理を停止させる条件のみの場合では、信号強度の大きい衛星信号が1つのみ捕捉され、他の衛星信号が捕捉できない状態においても、サーチ処理が継続して実施されてしまい、消費電力も大きくなるおそれもある。これに対し、本発明では、所定信号強度以上の信号強度を有する衛星信号が捕捉された場合においても、サーチ処理を停止させる。すなわち、信号強度が大きい衛星信号を受信できれば、所定数の衛星信号を受信できなくても、早期に時刻情報を受信することができる。また、信号強度が所定値以上となる衛星信号が捕捉されると、サーチ処理が停止されるため、消費電力も抑えることができる。
以上のように、衛星信号の捕捉数、および捕捉した衛星信号の信号強度に基づいて、サーチ処理を停止させることで、衛星信号を安定して受信することができるとともに、受信動作をより迅速に実施することができ、電力消費を抑えることができる。
【0020】
ここで、本発明の電子時計は、光を受光して発電するソーラーセルと、ソーラーセルにおける発電量を検出する発電量検出手段と、を備え、前記受信手段は、前記測時モードにおいて、前記発電量検出手段により検出される発電量の変動値が所定値以上である場合は、所定数の衛星信号が捕捉された場合、または所定信号強度以上の衛星信号が捕捉された場合でも、前記情報取得手段により前記時刻情報が取得されるまで、前記サーチ処理を継続させる構成としてもよい。
【0021】
この発明では、上記のように、衛星信号の捕捉数、および捕捉した衛星信号の信号強度に基づいて、サーチ処理の停止を実施するが、この時、ソーラーセルによる発電量が所定値以上変動する場合は、サーチ処理を継続させる。ここで、ソーラーセルによる発電量が変動する状態では、利用者が当該電子時計を腕に装着した状態で歩行している状況が考えられ、このような状況では、例えば利用者が建物の影に入ったりすることで、受信環境が悪化する場合がある。このような場合、上記のようにサーチ処理を停止させると、衛星信号が捕捉されていても、情報取得中に電波が遮断されて受信動作が停止されてしまう場合もあり、安定した衛星信号の受信処理が実施できず、受信時間も長くなる場合がある。
本発明では、発電量検出手段により検出されるソーラーセルでの発電量の変動値により、利用者が歩行中であるか否かを容易に判断することができる。そして、ソーラーセルでの発電量の変動量が所定値以上であり、利用者が歩行中であると判断した場合、受信手段は、サーチ処理を継続させる。これにより、利用者の移動により受信環境が変化し、すでに捕捉した衛星信号の信号強度が落ち込み、受信動作が不可能となった場合でも、サーチ処理により他の信号強度の大きい衛星信号をサーチし、捕捉することができる。したがって、利用者が歩行中である場合においても、受信可能な衛星信号をサーチし続けることで、受信失敗などの不都合を防止することができる。
【0022】
本発明の電子時計は、時刻をカウントする内部計時部と、前記情報取得手段により取得された前記時刻情報に基づいて、前記内部計時部によりカウントされる前記時刻を修正する時刻修正手段と、を備え、前記時刻修正手段は、前記測時モードにおいて、前記情報取得手段により取得される前記時刻情報の時刻と、前記内部計時部の時刻との時刻差が所定値以下である場合に、前記時刻情報に基づいて前記内部計時部の時刻を修正することが好ましい。
【0023】
この発明では、時刻修正手段は、衛星信号から取得した時刻情報の時刻と、内部計時部によりカウントされる時刻との差が大きい場合にのみ、内部計時部の時刻を時刻情報の時刻に修正する。ここで、内部計時部は、電池の電力残量がなくなった場合や初期化処理を実施した場合を除き、常に時刻をカウントし続けるものである。このような内部計時部によりカウントされる時刻は、現在時刻との差が非常に小さくなる。したがって、定期的に内部計時部の時刻修正を実施している場合、内部計時部の時刻と衛星信号から取得される時刻との差も小さい値となる。このため、これらの内部計時部の時刻と衛星信号に含まれる時刻情報の時刻との差が所定値以上である場合、時刻情報にノイズ成分が含まれるために、正確な時刻が取得できなかったと判断でき、このような場合、時刻修正手段は、内部計時部の時刻修正を実施しない。これにより、誤った時刻情報により、内部計時部の時刻が誤った時刻に設定され、表示手段により誤った時刻が表示される不都合を防止することができる。
【0024】
また、本発明の電子時計は、時時刻をカウントする内部計時部と、前記情報取得手段により取得された前記時刻情報に基づいて、前記内部計時部によりカウントされる前記時刻を修正する時刻修正手段と、を備え、前記時刻修正手段は、前記測時モードにおいて、前記受信手段により、2つ以上の衛星信号が捕捉され、かつこれらの捕捉された衛星信号の信号強度が所定の信号強度よりも小さい場合、これらの衛星信号から取得される前記時刻情報が略一致しており、かつこれらの前記時刻情報の時刻と、前記内部計時部の時刻との時刻差が所定値以下である場合に、前記時刻情報に基づいて前記内部計時部の時刻を修正する構成としてもよい。
【0025】
この発明では、上記と同様に、内部計時部の時刻と時刻情報の時刻とを比較するが、この時、時刻修正手段は、2つ以上の衛星信号を捕捉して、これらの捕捉した衛星信号から取得した各時刻情報がそれぞれ一致し、かつこの一致した時刻情報の時刻と内部計時部の時刻との差が所定値以内である場合に、内部計時部の時刻を修正する。
すなわち、2つ以上の衛星信号において、データ上の同位置にノイズが入る可能性は小さいため、これらの衛星信号の時刻情報が一致している場合、ノイズ成分が入っていない信頼性の高い時刻情報であると判断できる。したがって、時刻修正手段は、2つ以上の衛星信号の時刻情報が一致する場合に、内部計時部の時刻を修正することで、信頼性の高い時刻修正を実施することができる。一方、2つ以上の衛星信号の時刻情報が一致している場合でも、データ上の同位置にノイズが入った場合、これらの時刻情報により正確な時刻を設定することが困難になる。この場合でも、時刻修正手段は、上記発明と同様に、内部計時部の時刻と時刻情報の時刻との差を算出し、この差が所定値以内である場合にのみ、内部計時部の時刻を修正し、誤った時刻に修正されることを防止する。
以上により、より信頼性の高い時刻修正を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る第1実施形態の電子時計であるGPS付き腕時計を示す概略図である。
【図2】GPS衛星から送信される衛星信号(航行メッセージ)の構成を説明するための概略構成図である。
【図3】前記実施形態のGPS付き腕時計1の回路構成について説明するための図である。
【図4】前記実施形態のGPS付き腕時計の衛星信号の受信処理を示すフローチャートである。
【図5】前記実施形態のGPS付き腕時計の衛星信号の受信処理における測位モードの受信動作を示すフローチャートである。
【図6】前記実施形態のGPS付き腕時計の衛星信号の受信処理における測時モードの受信動作を示すフローチャートである。
【図7】前記実施形態の測時モードにおける信号受信状態と、比較例における信号受信状態とを比較する図である。
【図8】前記実施形態および比較例における測時モードの信号強度と時刻情報取得までに要する時間との関係を示す図である。
【図9】第2実施形態のGPS付き腕時計の各モードにおいて設定される信号受信閾値を示す図である。
【図10】第3実施形態のGPS付き腕時計の各モードにおいて設定される信号受信閾値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を、添付図面等を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る電子時計であるGPS衛星信号受信装置付き腕時計1(以下「GPS付き腕時計1」という)を示す概略図である。
図1に示すように、GPS付き腕時計1は、文字板2および指針3からなる表示手段を備える。文字板2の一部には開口が形成され、LCD表示パネル等からなるディスプレイ4が組み込まれている。従って、GPS付き腕時計1は、指針3およびディスプレイ4を備えるコンビネーション時計である。
【0028】
指針3は、秒針、分針、時針等を備えて構成され、ステップモーターで歯車を介して駆動される。
ディスプレイ4はLCD表示パネル等で構成され、後述するように時差データを表示する他、現在時刻やメッセージ情報等も表示可能とされている。
そして、GPS付き腕時計1は、地球の上空を所定の軌道で周回している複数のGPS衛星5からの衛星信号を受信して衛星時刻情報を取得し、内部時刻情報を修正したり、測位情報つまり現在位置をディスプレイ4に表示したりできるように構成されている。
また、GPS付き腕時計1には、本発明の入力手段を構成するボタン6やリュウズ7が設けられている。
【0029】
GPS衛星5(5a,5b,5c,5d)は、地球の上空の所定の軌道上を周回しており、1.57542GHzのマイクロ波(Ll波)に航法メッセージを重畳させて地上に送信している。ここで、GPS衛星5は本発明における位置情報衛星の一例であり、航法メッセージが重畳された1.57542GHzのマイクロ波(以下、「衛星信号」という)は本発明における衛星信号の一例である。
【0030】
現在、約30個のGPS衛星5が存在しており、衛星信号がどのGPS衛星5から送信されたかを識別するために、各GPS衛星5はC/Aコード(Coarse/Acquisition Code)と呼ばれる1023chip(1ms周期)の固有のパターンを衛星信号に重畳する。C/Aコードは、各chipが+1又は−1のいずれかでありランダムパターンのように見える。従って、衛星信号と各C/Aコードのパターンの相関をとることにより、衛星信号に重畳されているC/Aコードを検出することができる。
【0031】
ここで、GPS衛星5から送信される衛星信号(航行メッセージ)の概略について説明する。
図2(A)〜(C)は、GPS衛星5から送信される衛星信号(航行メッセージ)の構成を説明するための概略構成図である。
図2(A)に示すように、航法メッセージは、全ビット数1500ビットのメインフレームを1単位とするデータとして構成される。メインフレームは、それぞれ300ビットの5つのサブフレーム1〜5に分割されている。1つのサブフレームのデータは、各GPS衛星5から6秒で送信される。従って、1つのメインフレームのデータは、各GPS衛星5から30秒で送信される。
【0032】
サブフレーム1には、週番号データ等の衛星補正データが含まれている。週番号データ(年月日情報)は、現在のGPS時刻情報が含まれる週を表す年月日情報である。GPS時刻情報の起点は、UTC(協定世界時)における1980年1月6日00:00:00であり、この日に始まる週は週番号0となっている。週番号データは、1週間単位で更新される。
サブフレーム2、3には、エフェメリスパラメータ(各GPS衛星5の詳細な軌道情報)が含まれる。また、サブフレーム4、5には、アルマナックパラメータ(全GPS衛星5の概略軌道情報)が含まれている。
【0033】
さらに、サブフレーム1〜5には、先頭から、30ビットのTLM(Telemetry word)データが格納されたTLM(Telemetry)ワードと30ビットのHOW(hand over word
)データが格納されたHOWワードが含まれている。
従って、TLMワードやHOWワードは、GPS衛星5から6秒間隔で送信されるのに対し、週番号データ等の衛星補正データ、エフェメリスパラメータ、アルマナックパラメータは30秒間隔で送信される。
【0034】
図2(B)に示すように、TLMワードには、プリアンブルデータ、TLMメッセージ、Reservedビット、パリティデータが含まれている。
図2(C)に示すように、HOWワードには、TOW(Time of Week、「Zカウント」ともいう)というGPS時刻情報が含まれている。なお、本発明の時刻情報とは、GPS時刻情報に含まれるこのZカウントデータを指す。Zカウントデータは毎週日曜日の0時からの経過時間が秒で表示され、翌週の日曜日の0時に0に戻るようになっている。つまり、Zカウントデータは、週の初めから一週間毎に示される秒単位の情報である。このZカウントデータは、次のサブフレームデータの先頭ビットが送信されるGPS時刻情報を示す。例えば、サブフレーム1のZカウントデータは、サブフレーム2の先頭ビットが送信されるGPS時刻情報を示す。また、HOWワードには、サブフレームのIDを示す3ビットのデータ(IDコード)も含まれている。すなわち、図2(A)に示すサブフレーム1〜5のHOWワードには、それぞれ「001」、「010」、「011」、「100」「101」のIDコードが含まれている。
【0035】
一般に、GPS受信機は、サブフレーム1に含まれる週番号データとサブフレーム1〜5に含まれるHOWワード(Zカウントデータ)を取得することで、GPS時刻情報を取得することができる。ただし、GPS受信機は、以前に週番号データを取得し、週番号データを取得した時期からの経過時間を内部でカウントしている場合は、週番号データを取得しなくてもGPS衛星の現在の過番号データを得ることができる。従って、GPS受信機は、Zカウントデータを取得すれば、日付以外の現在時刻が分かるようになっている。このため、GPS受信機は、通常、現在時刻として、時刻情報であるZカウントデータのみを取得する。
【0036】
なお、TLMワード、HOWワード(Zカウントデータ)、衛星補正データ、エフェメリスパラメータ、アルマナックパラメータ等は、本発明における衛星情報の一例である。
【0037】
GPS付き腕時計1において、測時処理を実施する測時モードでは、時刻情報であるZカウントデータを取得することを意味する。Zカウントデータは、1つのGPS衛星5からでも取得できる。また、Zカウントデータは、各サブフレームに含まれているので、6秒間隔で送信される。
このため、測時モードの受信では、捕捉衛星数は少なくとも1つであり、1個のZカウントデータを取得する受信所要時間は長くても6秒であり、取得できる情報はZカウントデータであり、前記エフェメリスパラメータやアルマナックパラメータは受信しなくともよい。したがって、受信所要時間は、6秒で1個のZカウントデータを取得でき、受信データの検証のために、2〜3個のZカウントデータを取得する場合でも12〜18秒という短時間で受信を完了できる。
したがって、測時モードでは、衛星信号のうちZカウントデータさえ取得できればよいため、信号強度の弱い衛星信号であっても、ノイズなどの影響が小さく、信頼性の高い情報を取得することができる。
【0038】
一方、測位モードの受信は、各GPS衛星5の軌道情報であるエフェメリスパラメータを3衛星分以上、受信することを意味する。測位のためには少なくとも3個以上のGPS衛星5からエフェメリスパラメータを取得する必要があるためである。なお、エフェメリスパラメータはサブフレーム2,3に含まれるため、最短で18秒間の受信(サブフレーム1〜3までの受信)を行えば取得できる。従って、複数のGPS衛星5を同時に捕捉して受信する場合、エフェメリスパラメータの受信および測位計算を行って測位データを取得するには、アルマナックデータを保持しないコールドスタート状態では約30秒〜1分の時間が必要である。
このため、測位モードの受信とは、捕捉衛星数は少なくとも3個であり、受信所要時間は約30秒〜1分であり、取得すべき情報はZカウントデータ(時刻情報)およびエフェメリスパラメータであり、アルマナックパラメータは受信しない処理を意味する。したがって、測位モードでは、測時モードよりも衛星信号の受信時間が長くなり、受信中に信号強度が悪化するなどすると、信頼性の高い衛星信号の受信が困難になることが考えられる。このため、測位モードにおいては、より信頼性の高い信号強度の高い衛星信号を受信することが好ましい。
【0039】
[GPS付き腕時計の回路構成]
図3は、第1実施形態のGPS付き腕時計1の回路構成について説明するための図である。
GPS付き腕時計1は、受信手段であるGPS受信部10、GPSアンテナ11、表示手段である時刻表示装置20、および電源回路30を含んで構成されている。
【0040】
[GPS受信部の構成]
GPS受信部10は、GPSアンテナ11が接続される。GPSアンテナ11は、複数のGPS衛星5からの衛星信号を受信するアンテナである。
【0041】
また、GPS受信部10は、RF(Radio Frequency:無線周波数)部12と、ベースバンド部13と、閾値設定部15と、閾値可変タイミング設定部16と、を含んで構成されている。なお、ベースバンド部13は、本発明の受信手段および情報取得手段として機能し、閾値設定部15は、本発明の閾値設定手段として機能する。
RF部12は、一般的なGPS受信装置におけるものと同じであるため、説明を省略する。このRF部12では、受信した衛星信号をデジタル信号に変換し、ベースバンド部13に出力する。
【0042】
ベースバンド部13は、DSP(Digital Signal Processor)131、CPU(Central Processing Unit)132、SRAM(Static Random Access Memory)133、RTC(リアルタイムクロック)134を含んで構成されている。また、GPS受信部10には、温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)14が接続され、ベースバンド部13にはフラッシュメモリー135等が接続されている。
【0043】
温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO)14は、温度に関係なくほぼ一定の周波数の基準クロック信号を生成する。
フラッシュメモリー135には時差情報が記憶されている。時差情報は、地理情報が分割された複数の領域の各々の時差が定義された情報である。
【0044】
ベースバンド部13は、RF部12が変換したデジタル信号(中間周波数帯の信号)からベースバンド信号を復調(デコード)する処理を行う。
また、ベースバンド部13は、衛星信号を捕捉するために、各C/Aコードと同一のパターンのローカルコードを発生し、ベースバンド信号に含まれる各C/Aコードとローカルコードの相関をとる処理を行う。
そして、ベースバンド部13は、各ローカルコードに対する相関値がピークになるようにローカルコードの発生タイミングを調整し、相関値が所定の相関閾値以上となる場合にはそのローカルコードのGPS衛星5に同期(すなわち、GPS衛星5からの衛星信号を捕捉)したものと判断する。
【0045】
ここで、GPSシステムでは、すべてのGPS衛星5が異なるC/Aコードを用いて同一周波数の衛星信号を送信するCDMA(Code Division Multiple Access)方式を採用している。従って、受信した衛星信号に含まれるC/Aコードを判別することで、捕捉可能なGPS衛星5を検索(サーチ)することができる。
また、本実施形態では、相関方式としてスライディング相関方式を採用しており、主にDSP131において実行されている。
【0046】
さらに、この時、ベースバンド部13は、受信した衛星信号の信号強度を検出し、この信号強度が所定の信号受信閾値以上である場合に、衛星信号を捕捉する処理を実施する。ここで、信号受信閾値は、閾値設定部15および閾値可変タイミング設定部16により設定される。
【0047】
閾値設定部15は、信号受信閾値の値を設定する処理を実施する。ここで、閾値設定部15は、後述する時刻表示装置20の受信モード設定部215により設定された受信モードにより、衛星信号を受信する際に用いる信号受信閾値を設定する。
本実施の形態のGPS付き腕時計1では、受信モード設定部215により、測位モード、測時モード、および自動測時モードのいずれかに切り替えられて設定される。ここで、測位モードおよび測時モードは、手動受信処理であり、利用者により入力手段であるボタン6が操作されて、所定の設定情報が入力されることで、切り替えられるモードである。そして、測位モードは、前述したように、少なくとも3つの衛星信号からZカウントデータ、エフェメリスパラメータを取得し、GPS付き腕時計1が位置する現在位置を演算する測位演算処理を実施する。また、測時モードは、前述したように、少なくとも1つの衛星信号からZカウントデータのみを取得して、取得したZカウントデータに基づいて時刻修正処理を実施する、
一方、自動測時モードは、予め設定された定刻に自動的に移行されるモードであり、Zカウントデータの取得および時刻修正処理を実施する。
【0048】
ここで、測位モードでは、閾値設定部15は、信号受信閾値の初期値として、予め設定され、フラッシュメモリー135に記録される測位用閾値に設定する。本実施の形態では、測位用閾値として、高仰角のGPS衛星5からの衛星信号のみを捕捉可能な上限値に設定する。ここで、この上限値は、受信処理の開始から、衛星信号を捕捉し、捕捉した衛星信号をデコード処理するために要する時間(受信時間)が安定する信号強度であり、例えば「−134dBm」に設定されている。すなわち、信号受信閾値として、「−134Bm」に設定した場合、「−134dBm」以上の信号強度の衛星信号を捕捉可能となる。このような衛星信号の受信時間は、約30秒〜約40秒の略一定値となり、安定した衛星信号の受信が可能となる。一方、信号受信閾値が「−134Bm」よりも小さい衛星信号では、ノイズ成分の増加のために、デコード処理に時間を要し、例えば「−136dBm」に設定した場合では、受信時間は約70秒となる。したがって、信号受信閾値の上限値として、「−134dBm」を設定することで、ノイズ成分の少ない信頼性の高い衛星信号を優先的に受信することが可能となる。
【0049】
そして、測位モードでは、閾値設定部15は、後述の閾値可変タイミング設定部16によりカウントされる相関回数(サーチ回数)に応じて、信号受信閾値を減少させる閾値減少処理を実施する。本実施の形態では、測位演算に必要な3つ以上の衛星信号が捕捉できない状態で、閾値可変タイミング設定部16による相関回数のカウントが「3」となる毎に、信号受信閾値を段階的に所定量減少させる処理をする。この閾値の減少幅としては、適宜設定されていればよいが、減少幅を大きくすれば、衛星信号の捕捉および受信完了までの時間をより短縮でき、減少幅を小さくすれば、複数の衛星信号から信号強度が大きい衛星信号を適切に取得することが可能となる。
また、例えばフラッシュメモリー135には、信号受信閾値の下限値が記録されており、信号受信閾値が下限値まで減少させられた場合、それ以上の閾値減少処理を実施しない。そして、信号受信閾値が下限値まで減少させられた後、閾値可変タイミング設定部16により所定の相関回数(本実施の形態では3回)がカウントされると、閾値設定部15は、再び、信号受信閾値を上限値に設定し、相関回数に応じて信号受信閾値を減少させる閾値減少処理を実施する。また、GPS受信部10は、衛星信号の受信動作開始時点から、所定の相関回数、または、所定の時間経過後に、信号受信閾値に基づいて例えば3つ以上の衛星信号から情報を取得できなかった場合に、タイムアウトと判断し、衛星信号の受信処理を停止させる。
ここで、下限値とは、衛星信号から情報を取得可能な最低信号強度であり、例えば「−142dBm」に設定されている。この下限値よりも小さい信号強度の衛星信号では、ノイズ成分が多く、正確な情報を取得することが困難となる。
【0050】
一方、閾値設定部15は、受信モード設定部により、測時モードおよび自動測時モードに設定されている場合、信号受信閾値として、測位用閾値(上限値)よりも小さい測時用固定閾値に設定する。本実施の形態では、この測時用固定閾値として、前記下限値が設定される。そして、測時モードおよび自動測時モードでは、閾値設定部15は、衛星信号の受信処理中、信号受信閾値を、この測時用固定閾値(下限値)に固定する。
【0051】
閾値可変タイミング設定部16は、ベースバンド部13により相関処理が実施された回数をカウントし、所定の相関回数毎に閾値可変手段に閾値減少処理を実施させるタイミングを知らせる信号を出力する。ここで、相関処理とは、C/Aコードを用いて、入力された衛星信号に対応するGPS衛星5がどの衛星かをサーチする処理であり、本発明のサーチ処理に相当し、相関回数とは、このサーチ処理が実施された回数、すなわち本発明のサーチ回数に相当する。
具体的には、閾値可変タイミング設定部16は、入力された衛星信号に対して、1〜30のローカルコードとの相関をとる各処理が一度ずつ実施されると、相関回数を「1」としてカウントする。
なお、閾値可変タイミング設定部16は、相関を実施する時間は一定であるため、相関回数が「1」となるための所要時間をカウントすることで、相関回数をカウントする構成としてもよい。
【0052】
さらに、ベースバンド部13は、捕捉したGPS衛星5のC/Aコードと同一のパターンのローカルコードとベースバンド信号とをミキシングして航法メッセージを復調(デコード)し、航法メッセージに含まれる軌道情報やGPS時刻情報等の衛星情報を取得してSRAM133に記憶する。
【0053】
航法メッセージに含まれる軌道情報やGPS時刻情報は、本発明における位置情報、時刻情報の一例であり、GPS受信部10は、本発明における受信部として機能する。また、GPS受信部10のベースバンド部13は、位置情報や時刻情報を取得しているため、本発明における情報取得手段としても機能する。
【0054】
なお、ベースバンド部13の動作は、温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO)14が出力する基準クロック信号に同期する。RTC134は、衛星信号を処理するためのタイミングを生成するものである。このRTC134は、温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO)14から出力される基準クロック信号でカウントアップされる。
【0055】
[時刻表示装置の構成]
時刻表示装置20は、制御部21及び水晶振動子22を含んで構成されている。
【0056】
制御部21は、内部計時部211、発振回路212、駆動回路213,214、モード切替手段としての受信モード設定部215、捕捉動作制御部216、およびデコード処理制御部217を備え、各種制御を行う。
【0057】
内部計時部211は、内部時刻情報をカウントし、記憶する。この内部時刻情報は、GPS付き腕時計1の内部で計時される時刻の情報である。内部計時部211は、水晶振動子22および発振回路212によって生成される基準クロック信号によって内部時刻情報を更新する。従って、GPS受信部10への電力供給が停止されていても、内部時刻情報を更新して指針3の運針を継続することができるようになっている。
駆動回路213は、指針3の動作を制御する。駆動回路214は、ディスプレイ4の表示を制御する。
受信モード設定部215は、前述したように、利用者によりボタン6等が操作されることで、受信モードを、測位モードおよび測時モードのいずれか一方に設定し、ボタン6等から設定入力がない場合には、予め設定された定刻に、受信モードを自動測時モードに設定する。
【0058】
捕捉動作制御部216およびデコード処理制御部217は、GPS受信部10を制御して受信処理を実行する。すなわち、捕捉動作制御部216は、制御信号をGPS受信部10に送り、GPS受信部10の受信動作を制御し、特に衛星信号を捕捉する動作を制御する。
デコード処理制御部217も、GPS受信部10の受信動作を制御し、特にベースバンド部13におけるデコード処理を制御する。
【0059】
また、捕捉動作制御部216およびデコード処理制御部217は、本発明の時刻修正手段を構成する。すなわち、捕捉動作制御部216およびデコード処理制御部217は、受信モードが測時モードまたは自動測時モードの場合に、GPS受信部10の動作を制御して衛星信号からZカウントデータを含むGPS時刻情報を取得し、そのGPS時刻情報に基づいて内部時刻情報を修正して内部計時部211にてカウントされる内部時刻情報を更新する。
この時、捕捉動作制御部216およびデコード処理制御部217は、取得したGPS時刻情報のZカウントデータに基づいたGPS時刻と、内部計時部211によりカウントされる内部時刻との時間差を算出し、この時間差が所定値以内であれば、内部計時部211の内部時刻情報を修正する。なお、この所定値として、前回測時モードが成功した時点から現在までの経過時間により適宜設定されるものである。
すなわち、水晶振動子22および発振回路212によって生成される基準クロック信号によって内部時刻情報が更新される場合、一日につき、±0.5sの誤差が発生する。したがって、前回時刻修正時から現在の測時モードにおける時刻修正までに、最大で「0.5s×経過日数」の内部時刻の時刻ずれが発生する場合がある。一方、衛星信号にノイズなどが入り、正確なGPS時刻情報が取得できなかった場合、内部時刻とGPS時刻との時間差は、内部時計の時刻ずれよりも大きい値となる。
したがって、所定値として、「0.5s×経過日数」を設定することで、内部計時部211の内部時刻とGPS時刻との時間差が、内部時刻のずれによるものであるか、不適切な衛星信号のGPS時刻情報によるものであるかを判断することができる。そして、捕捉動作制御部216およびデコード処理制御部217は、内部時刻とGPS時刻との時間差が、所定値以内である場合、内部時刻のずれによるものであると判断し、内部計時部211の内部時刻情報を更新する。
【0060】
また、測位モードの場合には、捕捉動作制御部216およびデコード処理制御部217は、GPS受信部10の動作を制御し、GPS時刻情報およびUTCパラメーターと、位置情報に基づいてフラッシュメモリー135から取得された時差データに基づいて、内部時刻情報を修正して内部計時部211に記憶する。
そして、制御部21は、内部時刻情報が修正されると、駆動回路213を介して指針3の指示を修正する。また、駆動回路214を介してディスプレイ4に時刻や位置情報等を適宜表示する。
【0061】
[電源供給装置の構成]
電源回路30は、レギュレーター31、二次電池32、電池電圧検出回路33、充電制御回路34、ソーラーセル35、発電量検出手段を構成する発電量検出回路36を備えている。
【0062】
二次電池32は、レギュレーター31を介して、GPS受信部10及び時刻表示装置20等に駆動電力を供給する。
電池電圧検出回路33は、制御部21からの制御信号によって作動されて二次電池32の電圧を監視する。
【0063】
充電制御回路34は、ソーラーセル35と二次電池32の間に配置され、ソーラーセル35から供給される電流による二次電池32の充電を制御している。
【0064】
発電量検出回路36は、上述したように、ソーラーセル35により発電された発電量を検出し、発電量に応じた発電検出信号を時刻表示装置20の制御部21に出力する。
【0065】
[受信処理]
以下、第1実施形態のGPS付き腕時計1における受信処理の手順について、図4のフローチャートも参照して説明する。
GPS付き腕時計1は、まず、利用者のボタン6等の操作により、測時モードおよび測位モードのいずれかを設定する旨の設定情報が入力されたか否か、すなわち手動モードか否かを判断する(ステップS1)。
【0066】
このステップS1において、時刻表示装置20の制御部21は、設定情報の入力を認識して手動モードであると判断すると、さらに、その設定情報が測位モードに切り替える旨の情報であるか否かを判断する(ステップS2)。
そして、ステップS2において、制御部21は、測位モードに切り替える旨の設定情報が入力されたと判断した場合、すなわち、「Yes」と判断した場合、制御部21の捕捉動作制御部216およびデコード処理制御部217は、GPS受信部10に制御信号を出力し、測位モードに対応した衛星信号の受信処理を実施させる(ステップS10)。
【0067】
また、ステップS2において、制御部21は、測時モードに切り替える旨の設定情報が入力されたと判断した場合、すなわち、「No」と判断した場合、制御部21の捕捉動作制御部216およびデコード処理制御部217は、GPS受信部10に制御信号を出力し、測時モードに対応した衛星信号の受信処理を実施させる(ステップS20)。
【0068】
一方、ステップS1において、制御部21が設定情報の入力がないと判断した場合、すなわち「No」と判断した場合、受信モード設定部215は、受信モードを自動測時モードに設定する(ステップS3)。
【0069】
この自動測時モードでは、制御部21は、内部計時部211の内部時刻情報を参照し、予め設定された定刻、例えば0時0分がカウントされたか否かを判断する(ステップS4)。そして、このステップS4において、定刻であると判断した場合、すなわち「Yes」と判断した場合、制御部21の捕捉動作制御部216およびデコード処理制御部217は、GPS受信部10に制御信号を出力し、ステップS20の測時モードに対応した衛星信号の受信処理を実施させる。また、定刻でないと判断した場合、すなわち「No」と判断した場合、利用者の設定情報の入力待機状態となり、ステップS1の処理に戻る。
【0070】
(測位モードの受信処理)
次に、ステップS10の測位モードにおける受信処理について、図5のフローチャートを参照して説明する。
ステップS10の測位モードにおける受信処理では、GPS受信部10の閾値設定部15は、フラッシュメモリー135に予め記録されている上限値Th1を読み出し、信号受信閾値の初期値として設定する(ステップS11)。
【0071】
この後、ベースバンド部13は、GPS衛星5から送信される衛星信号をサーチし、衛星信号を捕捉する衛星捕捉動作(サーチ動作)を実行する(ステップS12)。
具体的には、ベースバンド部13は、衛星番号SVを1から30まで順次変更しながら衛星番号SVのC/Aコードと同一のパターンのローカルコードを発生させる。次に、ベースバンド部13は、ベースバンド信号に含まれるC/Aコードとローカルコードの相関値を計算する。ベースバンド信号に含まれるC/Aコードとローカルコードが同じコードであれば相関値は所定のタイミングでピークを持つが、異なるコードであれば相関値はピークをもたず常にほぼゼロとなる。
ベースバンド部13は、ベースバンド信号に含まれるC/Aコードとローカルコードの相関値が最大になるようにローカルコードの発生タイミングを調整する。また、ベースバンド部13は、相関値が所定の閥値以上の場合、衛星信号の信号強度(SNR)を検出し、検出した信号強度が、信号受信閾値以上であるか否かを判断する。そして、ベースバンド部13は、相関値が所定の閥値以上であり、かつ信号強度が信号受信閾値以上である場合には、衛星番号SVのGPS衛星5を捕捉したものと判断する。
また、この時、閾値設定部15の閾値可変タイミング設定部16は、ベースバンド部13による相関回数のカウントを開始する。すなわち、閾値可変タイミング設定部16は、衛星番号SVを1から30までの相関が1回ずつ実施されると、相関回数を1としてカウントする。
【0072】
そして、ベースバンド部13は、衛星信号が捕捉されたか否かを判断する(ステップS13)。すなわち、ベースバンド部13は、閾値可変タイミング設定部16によりカウントされる相関回数が所定数(本実施形態では3)となるまで、衛星捕捉処理を実施し、この所定相関回数内で少なくとも3つ以上の衛星信号が捕捉できたか否かを判断する。
そして、このステップS13において、3つ以上の衛星信号が捕捉できなかったと判断した場合、すなわち、「No」と判断された場合、閾値設定部15は、信号受信閾値が予め設定されている下限値Th2であるか否かを判断する(ステップS14)。
このステップS14において、信号受信閾値が下限値Th2ではないと判断した場合、閾値設定部15は、現在設定されている信号受信閾値を、予め設定された所定値だけ減少させる閾値減少処理を実施し(ステップS15)、再びステップS12の処理を実施させる。
【0073】
一方、ステップS14において、信号受信閾値が下限値であると判断された場合、その後、所定の相関回数(例えば3回)以内に少なくとも3つ以上の衛星信号を捕捉できない場合、GPS受信部10による衛星信号の受信動作を終了させる。この時、時刻表示装置20は、例えばディスプレイ4に、受信が失敗した旨の情報を表示させ、内部計時部211によりカウントされる内部時刻を指針3にて表示させる処理をする(ステップS16)。
【0074】
また、ステップS13において、衛星信号が捕捉されたと判断されると、ベースバンド部13は、捕捉した衛星信号のデコード処理を実行する(ステップS17)。
そして、時刻表示装置20は、ディスプレイ4に受信が成功した旨の情報を表示させるとともに、GPS時刻情報およびUTCパラメーターと、位置情報に基づいてフラッシュメモリー135から取得された時差データに基づいて、内部時刻情報を修正して内部計時部211を更新する。
そして、制御部21は、内部時刻情報が更新されると、駆動回路213を介して指針3の指示を修正する。また、駆動回路214を介してディスプレイ4に時刻や位置情報等を適宜表示する(ステップS18)。従って、時刻表示装置20によって、本発明の表示手段が構成されている。
【0075】
(測時モードの受信処理)
次に、ステップS20の測時モードにおける受信処理について、図6のフローチャートを参照して説明する。
ステップS20の測時モードにおける受信処理では、GPS受信部10の閾値設定部15は、フラッシュメモリー135に予め記録されている下限値Th2を読み出し、信号受信閾値として固定する(ステップS21)。
【0076】
この後、ベースバンド部13は、GPS衛星5から送信される衛星信号をサーチし、サーチにより検出される衛星信号を捕捉する衛星捕捉動作を実行する(ステップS22)。
具体的には、測位モードにおける受信処理と同様に、ベースバンド部13は、衛星番号SVを1から30まで順次変更しながら衛星番号SVのC/Aコードと同一のパターンのローカルコードを発生させ、ベースバンド信号に含まれるC/Aコードとローカルコードの相関値を計算する。
そして、ベースバンド部13は、ベースバンド信号に含まれるC/Aコードとローカルコードの相関値が最大になるようにローカルコードの発生タイミングを調整する。また、ベースバンド部13は、相関値が所定の閥値以上の場合、衛星信号の信号強度(SNR)を検出し、検出した信号強度が、信号受信閾値以上であるか否かを判断する。そして、ベースバンド部13は、相関値が所定の閥値以上であり、かつ信号強度が信号受信閾値以上である場合には、衛星番号SVのGPS衛星5を捕捉したものと判断する。
【0077】
この後、ベースバンド部13は、所望の衛星信号が捕捉されたか否かを判断する(ステップS23)。具体的には、このステップS23では、ベースバンド部13は、この所定相関回数内において、2つの衛星信号を捕捉したか、または所定信号強度の衛星信号を捕捉したかを判断する。ここで、所定信号強度の衛星信号とは、例えば、上限値Th1および下限値Th2の中間値Th3であり、ステップS23では、この中間値Th3以上の信号強度の衛星信号が捕捉されたか否かを判断する。
【0078】
このステップS23において、2つの衛星信号が捕捉できず、所定信号強度以上の衛星信号も捕捉できなかった場合、タイムアウトとなったか否かを判断する(ステップS24)。すなわち、ベースバンド部13は、閾値可変タイミング設定部16によりカウントされる相関数が、所定回数(例えば3回)となったか否かと判断する。そして、このステップS24において、タイムアウトと判断された場合、GPS受信部10による衛星信号の受信動作を終了させる。この時、測位モードのステップS16と同様に、時刻表示装置20は、例えばディスプレイ4に、受信が失敗した旨の情報を表示させ、内部計時部211によりカウントされる内部時刻を指針3にて表示させる処理をする(ステップS25)。また、ステップS24において、タイムアウトでないと判断した場合、ベースバンド部13は、ステップS22の処理、すなわち、衛星捕捉動作を継続する。
【0079】
一方、ステップS23において、2つの衛星信号が捕捉された場合、または所定信号強度以上の衛星信号が捕捉された場合、ベースバンド部13は、さらに、発電量検出回路36により検出されるソーラーセル35の発電量の変動値が所定振幅以上であるか否かを判断する(ステップS26)。
そして、このステップS26において、発電量の変動値(振幅)が所定値より小さい場合、GPS付き腕時計1を装着した利用者が歩行中ではなく、一定の位置に静止していると判断する。このような場合、捕捉した衛星信号の信号強度の変化が小さく、安定して衛星信号を受信可能であるため、衛星信号の捕捉動作を停止する(ステップS27)。また、捕捉した衛星信号は、捕捉と同時にデコード処理を開始する(ステップS28)。
【0080】
一方、ステップS26において、発電量の変動値が所定値以上である場合、GPS付き腕時計1を装着した利用者が歩行中であると判断する。このような場合、衛星信号を捕捉できていたとしても、受信環境の変化により衛星信号のデコード中に受信不可能な状態となる場合が考えられる。このため、ベースバンド部13は、衛星捕捉動作を継続させた状態で、ステップS28の衛星信号のデコード処理を実施する。
【0081】
上記のように、ステップS23の処理により、所望の衛星信号を捕捉したか否かを判断して、ステップS26〜ステップS27の処理により捕捉動作を停止させることにより、取得するGPS時刻情報の信頼性をより高めることが可能となり、かつ電力消費をも抑えることが可能となる。
すなわち、測時モードでの受信処理では、信号受信閾値が下限値Th2に設定されるため、下限値近傍の信号強度が低い衛星信号のみが受信される場合がある。このような場合、例えば受信環境の変化により僅かに信号強度が落ち込むと、捕捉した衛星信号からGPS時刻情報を取得できない場合があり、1つの信号強度の弱い衛星信号のみで、GPS時刻情報を取得すると、誤った情報を取得してしまったり、受信時間が長くなってしまったりする場合がある。
これに対して、2つの衛星信号を捕捉することで、一方の衛星信号の信号強度が低くなり、GPS時刻情報を取得できなくなった場合でも、他方の衛星信号によりGPS時刻情報を取得することが可能となる。また、2つ以上の衛星信号が取得できない場合であっても、信号強度が所定値以上となる衛星信号を捕捉できた場合、この衛星信号に基づいて信頼性の高いGPS時刻情報を取得することが可能となる。したがって、2つの衛星信号が捕捉されるタイミング、または、所定信号強度以上の衛星信号を捕捉したタイミングで、衛星捕捉動作を停止させることで、信頼性の高い衛星信号が受信可能となる。また、衛星信号のデコード処理が完了するまで、衛星捕捉動作を継続させる場合、電力消費が大きくなる場合があるが、上記ステップS23の条件を満たす衛星信号が捕捉された場合に、捕捉動作を停止させることで、電力消費を抑えることができる。
【0082】
そして、ステップS28のデコード処理では、ベースバンド部13は、所望の衛星信号が捕捉されると同時に、捕捉した衛星信号のデコード処理を実施し、GPS時刻を取得する。
この後、時刻表示装置20の捕捉動作制御部216およびデコード処理制御部217は、このステップS28で取得したGPS時刻と、内部計時部211によりカウントされ記憶される内部時刻との時間差を算出し、この時間差が所定値以内であるか否かを判断する(ステップS29)。
そして、ステップS29において、GPS時刻と内部時刻との時間差が所定値以内であると判断されると、すなわち「Yes」と判断されると、捕捉動作制御部216およびデコード処理制御部217は、内部計時部211の内部時刻をGPS時刻に修正する。また、この後、時刻表示装置20は、受信が成功した旨の情報を表示させるとともに、修正された内部時刻に基づいて、駆動回路213を介して指針3の指示を修正する(ステップS30)。
【0083】
また、ステップS29において、GPS時刻と内部時刻との時間差が所定値以上であると判断されると、すなわち「No」と判断されると、ステップS25の処理を実施し、受信動作が失敗した旨をディスプレイ4に表示させるとともに、内部計時部211の内部時刻に基づいて指針3を駆動させる。
【0084】
なお、上記の例では、ステップS23において、所定信号強度未満の衛星信号が1つだけ捕捉される場合では、衛星信号のデコード処理を実施しない処理を例示したが、これに限定されるものではない。すなわち、ステップS23において、信号強度の弱い衛星信号が1つだけ取得された場合でも、ステップS28のデコード処理を実施してもよく、この場合、衛星捕捉動作を停止させず、衛星捕捉動作と同時に捕捉した衛星信号のデコード処理を実施する。このように信号強度が弱い1つの衛星信号のみによりGPS時刻情報を取得する場合、衛星信号のデコード完了までの時間が長くなる場合もあるが、ステップS29の処理を実施することで、取得したGPS時刻情報の信頼性を判断した上で内部時刻を修正するため、一定の時計信頼性を維持することができる。
【0085】
次に、本実施形態における測時モードの衛星信号の受信時間について、図7および図8を参照して説明する。なお、図7において、衛星Aの点線部分はその衛星信号はサーチ中であり、まだ捕捉されていない状態を意味する。また、実線部分は、その衛星が捕捉され、衛星信号をデコード処理している状態を意味する。さらに、図7において、図中上側は比較例での信号受信状態を示し、図中下側は本実施形態での信号受信状態を示す。図8は、信号強度とGPS時刻情報取得までに要する時間との関係を示す図であり、破線は比較例、実線は本実施形態を示している。
【0086】
ここで、測時モードにおいて、測位モードと同様に、信号受信閾値の初期値として上限値Th1を設定し、相関回数に応じて減少させる処理を実施する例を本実施形態の比較例とする。
図7に示すように、測時モードにおいて、比較例に示すように、信号受信閾値の初期値をTh1に設定した場合、信号受信閾値の減少処理が実施されるまでの間は、どの衛星信号も捕捉することができず、信号受信閾値が減少処理後にはじめて低仰角に位置するGPS衛星5(衛星A)の衛星信号を捕捉することが可能となる。
一方、本実施形態のGPS付き腕時計1では、測時モードにおいて、信号受信閾値を下限値に固定する。したがって、この下限値以上の信号強度を有する衛星信号が受信可能となるため、受信開始時から早期に衛星Aの衛星信号を捕捉することができる。これにより、図中T1の時間分だけ、比較例よりも早く衛星Dの衛星信号を捕捉することができ、情報取得にかかる時間もT2だけ、早めることができる。
【0087】
また、図8に示すように、高い信号強度の衛星信号が捕捉できる場合には、比較例および本実施形態において、GPS時刻情報の取得までの受信時間として大きな差は出ない。一方、信号強度の小さい衛星信号しか捕捉できない場合では、本実施形態のGPS付き腕時計1は、比較例よりも早期に衛星信号の受信を完了することが可能となり、その結果、受信処理に要する電力の消費を抑えることが可能となる。
【0088】
[第1実施形態の作用効果]
上述したように、上記第1実施形態のGPS付き腕時計1では、受信モード設定部215により、GPS時刻情報(Zカウントデータ)および軌道情報を取得する測位モードと、GPS時刻情報(Zカウントデータ)のみを取得する測時モードとを切り替え、閾値設定部15は、このモードによって、衛星信号受信時の信号受信閾値を設定する。すなわち、閾値設定部15は、測位モードにおいて、信号受信閾値の初期値として、測位用閾値(上限値Th1)を設定し、相関回数に応じて信号受信閾値を段階的に減少させる。一方、測時モードにおいて、信号受信閾値を測位用閾値より小さい測時用固定閾値(下限値Th2)に設定する。そして、ベースバンド部13は、これらの設定された信号受信閾値以上となる信号強度の衛星信号を捕捉し、デコード処理をする。
このため、精度の高い正確な位置情報を取得する必要がある測位モードでは、高い信号受信閾値に基づいて、信号強度の高い衛星信号を優先的に取得することができ、測位処理の精度を高めることができる。また、測時モードでは、測位用閾値より小さい測時用固定閾値を用いることで、信号強度の大きい衛星信号が入力されていない環境であっても、受信開始時から信号強度の小さい衛星信号を捕捉でき、デコード処理することができる。したがって、測位モードと同様の信号受信閾値により測時モードの受信処理を実施する場合に比べて、受信開始から衛星信号の捕捉までの時間が短くでき、これによりGPS時刻情報の取得完了までの受信時間も短くできる。よって、受信に要する消費電力も抑えることができ、電源電圧の低下によるシステムダウンなどの不都合をも防止することができる。
【0089】
また、ベースバンド部13は、測時モードにおいて、2つの衛星信号が捕捉された場合、または所定信号強度以上の衛星信号が捕捉された場合に、衛星捕捉動作、すなわち、捕捉可能な衛星信号をサーチするサーチ動作を停止させる。
このため、2つの衛星信号を捕捉した時点に衛星捕捉動作を停止させるため、衛星捕捉動作を継続させる場合に比べて、消費電力を抑えることができる。また、信号強度の小さい1つの衛星信号のみを捕捉し、デコード処理を実施する場合、信号強度が低下した場合にデコード処理が困難となり処理に時間がかかったり、ノイズ成分の混入により正確なGPS時刻情報を取得できなかったりするおそれがある。これに対して、2つの衛星信号を捕捉し、それぞれデコード処理を実施する場合、一方の衛星信号の信号強度が落ち込んだとしても、他方の衛星信号からGPS時刻情報を取得することができ、デコード処理をスムーズに実施できる。また、2つの衛星信号のうち、先にデコード処理が完了した衛星信号のGPS時刻情報を取得すればよいため、受信時間の長時間化を防止できる。さらに、一般的に2つの衛星信号を受信した場合、信号強度が高い一方が先にデコード処理が完了する。したがって、信号強度の高い衛星信号からGPS時刻情報を取得することができ、GPS時刻情報の信頼性も高くなる。
また、ベースバンド部13は、2つの衛星信号が取得できない場合であっても、所定信号強度以上の衛星信号を捕捉することで、衛星捕捉動作を停止させる。このような衛星信号では、ノイズ成分が少なく、デコード処理に要する時間も短くなり、取得するGPS時刻情報の信頼性も高くなる。そして、信号強度が高く信頼性の高い衛星信号が捕捉された場合では、その衛星信号が捕捉された時点で衛星捕捉動作を停止させることで、衛星の捕捉動作が継続されることなく、捕捉動作に伴う消費電力を抑えることができる。
【0090】
また、この時、ベースバンド部13は、発電量検出回路36により検出されるソーラーセル35の発電量を参照し、この発電量の変動値が所定値以上である場合、衛星捕捉動作を継続させ、発電量の変動値が所定値より小さい場合に衛星捕捉動作を停止させる。
ソーラーセル35の発電量の変動値が所定値以上である場合には、利用者が歩行中であると判断でき、このような場合、利用者が建物の影に入るなどすると、GPS付き腕時計1の受信環境が悪化する場合がある。ここで、上述のように、2つの衛星信号のみによりデコード処理を実施する場合、これらの2つの衛星信号の信号強度がともに落ち込むことが考えられ、デコード処理が困難となる。これに対して、本実施形態では、発電量の変動値が所定値以上であり、利用者が歩行中であると判断した場合には、衛星捕捉動作を継続させることで、上記のように受信環境が悪化した場合でも、他の捕捉可能な衛星信号をサーチすることができる。そして、捕捉可能な衛星信号が検出されると、この衛星信号を捕捉して、デコード処理を実施する。これにより、測時モードにおける受信処理をより安定させることができ、受信環境の変化による受信時間の長時間化を防止することができる。
【0091】
そして、時刻表示装置20の捕捉動作制御部216およびデコード処理制御部217は、衛星信号から取得したGPS時刻情報のGPS時刻と、内部計時部211によりカウントされ、記憶される内部時刻との時間差を算出し、この時間差が所定値以内である場合に、内部時刻をGPS時刻に修正する。
内部計時部によりカウントされる内部時刻は、水晶振動子22および発振回路212によって生成される基準クロック信号によって更新されるものであり、一日あたりの時間ずれ量は、0.5秒程度となる。したがって、GPS時刻と内部時刻との時間差が大きい場合、取得した衛星信号にノイズなどが混入し、正確なGPS時刻情報が取得できなかった場合となる。この場合、捕捉動作制御部216およびデコード処理制御部217は、内部時刻情報を修正しない。これにより、誤ったGPS時刻情報により誤った時刻が表示されることを防止でき、時計の信頼性を高めることができる。
【0092】
また、閾値設定部15は、測位モードにおいて、信号受信閾値の初期値を上限値Th1に設定し、測時モードにおいて、信号受信閾値を下限値Th2に固定する。
このため、測位モードでは、受信開始時において、上限値Th1を超える信号強度の衛星信号のみが受信され、ノイズ成分が少ない良質の衛星信号に基づいて軌道情報およびGPS時刻情報を取得することができる。また、測時モードでは、信号受信閾値が下限値Th2に設定されることで、GPS時刻情報を取得可能な衛星信号を全て捕捉することができ、これらの衛星信号のうちのいずれかからGPS時刻情報を取得するため、より迅速な受信処理を実施することができる。
【0093】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図9を参照して説明する。図9は、第2実施形態のGPS付き腕時計の各モードにおいて設定される信号受信閾値を示す図である。
【0094】
上記第1実施形態のGPS付き腕時計1は、利用者によりボタン6等が操作され、手動により測時モード(手動測時モード)に切り替えられた場合、および定刻に測時処理を実施する自動測時モードに切り替えられた場合の双方において、信号受信閾値を下限値Th2に設定したが、第二実施形態のGPS付き腕時計1では、手動測時モードと、自動測時モードにおいて、異なる信号受信閾値を設定する。
【0095】
図9において、一点鎖線B1は、測位モードにおける信号受信閾値、破線B2は、測時モードにおける信号受信閾値、実線B3は、自動測時モードにおける信号受信閾値を示す。
第2実施形態のGPS付き腕時計1では、閾値設定部15は、図9に示すように、受信モード設定部215により自動測時モードが設定された場合、閾値設定部15は、信号受信閾値を、第1実施形態と同様に、下限値Th2に設定する。一方、閾値設定部15は、受信モード設定部215により、手動測時モードが設定された場合、測位用閾値(上限値Th1)より小さく、下限値Th2より大きい値に設定する。
この値としては、利用者の設定入力により適宜設定可能な値としてもよく、予め設定された値を用いてもよい。
なお、予め設定される値を用いる場合、上限値Th1および下限値Th2の中間値Th3を設定することが好ましい。すなわち、手動測時モードにおける信号受信閾値を、中間値Th3から上限値Th1の間の値で固定する場合、信号強度が高い衛星信号を取得可能であるが、受信環境によっては、衛星信号を受信できない場合がある。一方、信号受信閾値を下限値Th2から中間値Th3の間に設定する場合、GPS時刻情報を受信可能な衛星信号をより多く捕捉することができるが、ノイズ成分の混入などにより、デコード処理に時間がかかる場合がある。特に手動測時モードでは、利用者が意図して測時処理を実施することが多く、このような場合、より迅速に処理を完了させることが好ましい。したがって、本第2実施形態では、衛星の捕捉に要する時間に加えて、デコード処理に要する時間をも短縮するために、信号受信閾値を中間値Th3に設定する。
【0096】
〔第2実施形態の作用効果〕
第2実施形態のGPS付き腕時計1では、閾値設定部15は、自動測時モードにおいて、信号受信閾値として下限値Th2を設定して固定し、手動測時モードにおいて、信号受信閾値として上限値Th1および下限値Th2の中間値Th3を設定して固定する。
このため、手動測時モードにおいて、中間値Th3以上の信号強度を有する衛星信号が捕捉される。このような衛星信号では、下限値Th2近傍の信号強度の衛星信号に比べて、ノイズ成分が少なく、デコード処理に要する時間が短くなる。したがって、手動により測時処理を実施する場合に受信処理を短くできる。また、手動測時モードは、利用者が意図して測時処理を実施するものであり、意図的にGPS付き腕時計1を受信環境が良好となる状態に維持する場合が多い。したがって、上記のように、信号受信閾値を、下限値Th2よりも大きい中間値Th3に設定したとしても、入力される衛星信号の信号強度が比較的大きくなる。このため、信号受信閾値を下限値Th2に設定していない場合であっても、受信開始初期から衛星信号を捕捉することができ、受信開始時点から衛星捕捉までの時間が長くなる不都合は回避できる。
【0097】
一方、自動測時モードでは、定刻である0時00分に測時処理が実施される。このような定刻に測時処理を実施する場合、GPS付き腕時計1が、受信環境の悪い室内にある場合も考えられ、入力される衛星信号の信号強度もより小さくなる。したがって、信号受信閾値として下限値Th3に設定して固定することで、信号強度が小さい衛星信号をより早く捕捉することができ、早期に受信処理を完了させることができる。
【0098】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について図10を参照して説明する。図10は、第3実施形態のGPS付き腕時計の各モードにおいて設定される信号受信閾値を示す図である。
図10において、一点鎖線B1は、測位モードにおける信号受信閾値、破線B2は、通常測時モードにおける信号受信閾値、実線B4は、自動測時モードにおける信号受信閾値を示す。
【0099】
上記第1および第2実施形態のGPS付き腕時計1では、受信モード設定部215は、Zカウントデータ、週番号データおよび軌道情報を取得する測位モード、Zカウントデータのみを取得する測時モードおよび自動測時モードを切り替える構成とした。これに対して、第3実施形態のGPS付き腕時計1では、測時モードにおいて、さらに、Zカウントデータのみを取得する通常測時モードと、Zカウントデータに加えて年月日情報である週番号データをも取得する詳細測時モードとのいずれか一方を設定する。
【0100】
具体的には、第3実施形態のGPS付き腕時計1では、利用者によるボタン6等の操作により、通常測時モードに切り替える旨の設定情報が入力されると、受信モード設定部215は、受信モードを通常測時モードに切り替え、詳細測時モードに切り替える旨の設定情報が入力されると、受信モード設定部215は、受信モードを詳細測時モードに切り替える。
【0101】
そして、閾値設定部15は、図10に示すように、通常測時モードに切り替えられると、信号受信閾値として、中間値Th3を設定して固定する。なお、本実施形態では、通常測時モードにおいて、中間値Th3を信号受信閾値として設定するが、上記第1実施形態と同様に、下限値Th2を設定する構成としてもよい。なお、通常測時モードの説明は、上記第1実施形態および第2実施形態の測時モードと同様であり、測位モードは、第1および第2実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0102】
一方、閾値設定部15は、詳細測時モードに切り替えられると、信号受信閾値として、中間値Th3より大きく上限値Th1より小さい詳細測時用閾値Th4に設定する。
これは、詳細測時モードでは、衛星信号から、Zカウントデータに加えて週番号データをも取得するためであり、より信頼性の高い衛星信号を取得することが受信時間の短縮にもつながるためである。すなわち、前述したように、Zカウントデータは6秒毎に送信されるため、Zカウントデータのデコード処理が失敗した場合でも、6秒後に送信される次のサブフレームのZカウントデータを取得すればよい。一方、週番号データは、10ビットのデータであり、データサイズが小さいためノイズの影響を受けにくいが、図2に示すように、サブフレーム1のみに含まれ、30秒毎に送信されるデータである。したがって、サブフレーム1での週番号データの取得に失敗した場合、次に送信されるサブフレーム1の週番号データの取得までに30秒間待つ必要がある。このため、週番号データの取得においては、信号強度が高い衛星信号により、正確なデータを確実に取得することが好ましい。したがって、詳細測時モードでは、上述のように、通常測時モードで用いられる測時用固定閾値よりも大きい第二測時用固定閾値である詳細測時用閾値Th4に設定することが好ましい。
【0103】
また、詳細測時モードでは、捕捉動作制御部216およびデコード処理制御部217は、取得した週番号データに基づいて、その週始めの年月日を演算し、演算された週始めの年月日にZカウントデータを加算することで、現在年月日および時刻を求める。
【0104】
なお、第3実施形態では、受信モード設定部215は、利用者の設定入力により、詳細測時モードを設定する構成としたが、これに限定されない。例えば、週始めに最初に実施される自動測時モードを詳細測時モードに切り替える構成としてもよい。すなわち、週番号は、1週間単位で更新されるデータであるため、週始めに一度週番号を取得した場合、その後1週間は、更新されない。したがって、週始めに1回週番号を取得すれば、Zカウントデータのみを取得することで、年月日および時刻の修正を実施することができる。
【0105】
〔第3実施形態の作用効果〕
第3実施形態のGPS付き腕時計1では、受信モード設定部215は、測時モードにおいて、さらに、時刻情報(Zカウントデータ)に加えて年月日情報(週番号データ)を取得する詳細測時モードと、時刻情報(Zカウントデータ)のみを取得する通常測時モードとを切り替えて設定する。そして、閾値設定部15は、通常測時モードにおいて、信号受信閾値を中間値Th3に設定するとともに、詳細測時モードにおいて、中間値Th3より大きく上限値Th1より小さい第二測時用固定閾値である詳細測時用閾値Th4に設定する。
このため、詳細測時モードにおいて、30秒間隔で送信される週番号データを確実に取得することができ、週番号データの取得失敗により受信処理が長くなる不都合を回避することができる。
【0106】
〔第4実施形態〕
次に本発明の第4実施形態について説明する。
上記した第1実施形態のGPS付き腕時計1では、捕捉動作制御部216およびデコード処理制御部217は、取得したGPS時刻情報のGPS時刻と、内部計時部211に記憶される内部時刻との時間差が所定値以内である場合に、内部時刻をGPS時刻に修正した。これに対し、第4実施形態では、捕捉された2つの衛星信号のGPS時刻情報をデコード処理し、これらのGPS時刻情報のGPS時刻が一致する場合に、内部時刻とGPS時刻との時間差を参照し、時間差が所定値以内である場合に内部時刻を修正する。
【0107】
ここで、上述したように、測時モードでは、信号強度の小さい衛星信号のみによるデコード処理を回避するために、2つの衛星信号を捕捉してデコード処理を実施する。上記第1実施形態では、これらの2つの衛星信号のうちいずれか一方のデコード処理が完了した時点で、デコードされたGPS時刻情報に基づいて内部時刻を修正するが、第4実施形態では、2つの衛星信号のデコード処理が完了するまで、受信動作を継続させる。そして、これらの2つの衛星信号のデコード処理が完了し、2つのGPS時刻情報が取得されると、捕捉動作制御部216およびデコード処理制御部217は、これらのGPS時刻情報が一致するか否かを判断する。ここで、2つのGPS時刻情報が一致すると判断した場合、上記のように、このGPS時刻情報のGPS時刻と、内部計時部211に記録される内部時刻との時間差を算出し、時間差が所定値以内である場合に内部時刻を修正する。
【0108】
一方、2つのGPS時刻情報が一致しない場合、取得した2つのGPS時刻情報のうち、少なくともいずれか一方が誤った情報であると判断し、受信動作を停止させる。この場合は、第1実施形態のステップS25の処理を実施し、例えばディスプレイ4に、受信が失敗した旨の情報を表示させ、内部計時部211によりカウントされる内部時刻を指針3にて表示させる処理をする。
【0109】
なお、捕捉動作制御部216およびデコード処理制御部217は、2つのGPS時刻情報が一致しないと判断した場合、衛星捕捉動作を継続させ、さらに他の衛星信号を捕捉する処理を実施してもよい。この場合、新たに捕捉された衛星信号をデコード処理してGPS時刻情報を取得し、先の取得したGPS時刻情報と比較して一致するGPS時刻情報があるか否かを判断してもよい。ここで、一致するGPS時刻情報がある場合には、これらの一致したGPS時刻情報のGPS時刻と、内部時刻との時間差を算出し、この時間差が所定値以内である場合に内部時刻をGPS時刻に修正する処理を実施する。
【0110】
〔第4実施形態の作用効果〕
上記第4実施形態のGPS付き腕時計1では、測時モードにおいて、捕捉動作制御部216およびデコード処理制御部217は、2つの衛星信号をデコードしてそれぞれGPS時刻情報を取得し、これらのGPS時刻情報が一致する場合に、このGPS時刻情報のGPS時刻と、内部計時部の内部時刻との時間差を算出する。そして、この時間差が所定値以内であれば、内部時刻をGPS時刻に修正する。
このため、第1実施形態のGPS付き腕時計1に比べて、受信動作が完了するまでの時間が長くなるが、衛星信号から取得するGPS時刻情報としてより信頼できる情報を取得することができ、より確実に誤った情報の表示を防止することができる。
【0111】
[変形例]
なお、本発明は前記各実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
例えば、測位モードにおいて、相関回数が所定数(例えば3回)となる毎に、信号受信閾値を減少させる処理を実施したが、閾値設定部15は、信号受信閾値を減少させるタイミングを徐々に遅らせる処理を実施してもよい。例えば、閾値設定部15は、受信開始から相関回数が3回となった時点で1回目の閾値減少処理を実施し、その後さらに5回の相関が行われた後に、2回目の閾値減少処理を実施し、その後さらに、7回の相関が実施された際に、3回目の閾値減少処理を実施する処理をしてもよい。
また、閾値設定部15は、測位モードにおいて、相関回数に応じて、信号受信閾値を減少させる処理を実施したが、例えば、内部タイマーにより受信開始から経過時間を参照し、所定相関回数に必要な時間経過毎に信号受信閾値を減少させる処理を実施してもよい。
【0112】
また、第1実施形態において、閾値設定部15は、測時モードにおける信号受信閾値として、下限値Th2を設定したが、これに限定されず、測位用閾値よりも小さい値に設定すればよい。ただし、測位用閾値に近い値を設定すると、捕捉できない衛星受信が増加し、その結果受信時間が長時間化するため、上限値Th1および下限値Th2の中間値Th3以下に設定することが好ましい。このような信号受信閾値に設定することで、少なくともGPS時刻情報を取得可能な信号強度を有する衛星信号を、迅速に捕捉でき、受信時間を短縮させることができる。
【0113】
また、第2実施形態において、閾値設定部15は、手動測時モードにおける信号受信閾値として中間値Th3を設定する構成とし、第3実施形態において、通常測時モードにおける信号受信閾値として中間値Th3を設定する構成としたが、上限値Th1より小さく、下限値L2より大きい他の値に設定されてもよく、下限値Th2より大きく、中間値Th3より小さい値に設定することで、受信時間をより短縮することができる。
【0114】
さらに、上記第1から第3実施形態において、捕捉動作制御部216およびデコード処理制御部217は、2つの衛星信号を受信させ、これらの衛星信号のうちデコード処理が完了した一方の衛星信号のGPS時刻情報と、内部時刻との時間差が所定値以内である場合に時刻修正を実施したが、これに限定されない。例えば、第4実施形態のように、2つの衛星信号のGPS時刻情報が一致する場合に時刻修正を実施する処理をしてもよい。また、信号強度が十分に大きい場合には、取得したGPS時刻情報のGPS時刻と内部時刻との時間差を算出せずに、内部時刻を修正する処理をしてもよい。
【0115】
また、2つの衛星信号のGPS時刻情報が一致するか否かを判断したが、2つ以上の衛星信号、例えば3つの衛星信号のGPS時刻情報が一致するか否かを判断する処理をしてもよい。この場合、誤ったGPS時刻情報が取得される不都合をより確実に回避できる。
【0116】
さらには、上記各実施形態において、衛星捕捉動作の停止タイミングとして、2つ以上の衛星信号が捕捉された場合、または所定信号強度以上の衛星信号が捕捉された場合としたが、これに限定されない。例えば、GPS時刻情報を取得するためには、1つの衛星信号から時刻取得すればよいため、1つの衛星信号が捕捉されたタイミングで衛星捕捉動作を停止させる処理をしてもよい。また、2つの衛星信号が捕捉されるタイミングとしたが、例えば3つ以上の所定数の衛星信号が捕捉された場合に捕捉動作を停止させる処理をしてもよく、所定信号強度以上の衛星信号が2つ以上の所定数捕捉された場合に捕捉動作を停止させる構成などとしてもよい。
【0117】
また、捕捉動作制御部216およびデコード処理制御部217は、ソーラーセル35の発電量の変動値に基づいて、利用者が歩行中であるか否かを判断したが、例えば、ジャイロセンサーなどにより振動を検出することで、利用者が歩行中であるか否かを判断してもよく、さらには、回転錘の回動により発電を実施する発電式の電子時計では、その発電量を検出することで、利用者が歩行中であるか否かを判断してもよい。
【0118】
また、上述の実施形態は、位置情報衛星の例としてGPS衛星5について説明したが、本発明の位置情報衛星としては、GPS衛星5だけではなく、ガリレオ(EU)、GLONASS(ロシア)、北斗(中国)などの他の全地球的航法衛星システム(GNSS)や、SBASなどの静止衛星や準天頂衛星などの時刻情報を含む衛星信号を送信する位置情報衛星でも良い。
【0119】
本発明の電子時計は、指針およびディスプレイを有するコンビネーション時計に限らず、指針のみを有するアナログ時計や、ディスプレイのみを有するデジタル時計に適用してもよい。さらに、本発明は、腕時計に限らず、懐中時計などの各種時計や、携帯電話機、デジタルカメラや各種携帯情報端末等の時計機能を備える電子機器に適用してもよい。
【符号の説明】
【0120】
1…電子時計であるGPS付き腕時計、5,5a,5b,5c,5d…位置情報衛星であるGPS衛星、6…入力手段を構成するボタン、13…受信手段および情報取得手段として機能するベースバンド部、15…閾値設定手段である閾値設定部、20…表示手段を構成する時刻表示装置、35…ソーラーセル、36…発電量検出手段である発電量検出回路、211…内部計時部、215…モード切替手段である受信モード設定部、216…時刻修正手段を構成する捕捉動作制御部、217…時刻修正手段を構成するデコード処理制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の位置情報衛星から送信される衛星信号から捕捉可能な衛星信号をサーチするサーチ処理を実施し、サーチ処理により捕捉された衛星信号のうち、信号強度が所定の信号受信閾値以上となる衛星信号を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した衛星信号に基づいて所定の情報を取得する情報取得手段と、
取得した情報を表示する表示手段と、
前記情報取得手段により前記衛星信号に含まれる時刻情報を取得する測時モード、および前記情報取得手段により前記衛星信号に含まれる位置情報を取得して当該電子時計の位置を演算する測位モードを切り替えるモード切替手段と、
前記モード切替手段により切り替えられるモードに応じて、前記信号受信閾値を設定する閾値設定手段と、を備え、
前記閾値設定手段は、
前記測位モードに切り替えられた場合に、前記信号受信閾値の初期値を、所定の測位用閾値に設定するとともに、全位置情報衛星の前記衛星信号に対して前記サーチ処理を実施した回数であるサーチ回数に応じて、前記信号受信閾値を段階的に減少させ、
前記測時モードに切り替えられた場合に、前記信号受信閾値を、前記測位用閾値未満、所定の下限値以上となる測時用固定閾値に設定する
ことを特徴とする電子時計。
【請求項2】
請求項1に記載の電子時計において、
前記測位モードおよび前記測時モードのうち、いずれか一方のモードに切り替える旨の設定情報を入力可能な入力手段を備え、
前記モード切替手段は、
前記入力手段から前記設定情報が入力されて前記衛星信号を受信する場合に、この設定情報に基づいて、前記測時モードおよび前記測位モードのいずれか一方に前記モードを切り替え、
所定時刻に前記衛星信号を受信する場合に、前記時刻情報を取得する自動測時モードに切り替え、
前記閾値設定手段は、
前記測時モードに切り替えられた場合、前記信号受信閾値として、前記測位用閾値より小さく、下限値より大きい測時用固定閾値を設定し、
前記自動測時モードに切り替えられた場合、前記信号受信閾値を、前記下限値に設定する
ことを特徴とする電子時計。
【請求項3】
請求項1に記載の電子時計において、
前記モード切替手段は、前記測時モードに切り替えられた場合に、さらに、前記時刻情報のみを取得する通常測時モードと、前記衛星信号に含まれる年月日情報および前記時刻情報を取得する詳細測時モードとを切り替え、
前記閾値設定手段は、
前記通常測時モードに切り替えられた場合に、前記信号受信閾値を、前記測時用固定閾値に設定し、
前記詳細測時モードに切り替えられた場合に、前記信号受信閾値を、前記測位用閾値より小さく、前記測時用固定閾値より大きい第二測時用固定閾値に設定する
ことを特徴とする電子時計。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の電子時計において、
前記受信手段は、前記測時モードにおいて、所定数の衛星信号が捕捉された場合、または所定信号強度以上の衛星信号が捕捉された場合に、前記サーチ処理を停止させる
ことを特徴とする電子時計。
【請求項5】
請求項4に記載の電子時計において、
光を受光して発電するソーラーセルと、ソーラーセルにおける発電量を検出する発電量検出手段と、を備え、
前記受信手段は、前記測時モードにおいて、前記発電量検出手段により検出される発電量の変動値が所定値以上である場合は、所定数の衛星信号が捕捉された場合、または所定信号強度以上の衛星信号が捕捉された場合でも、前記情報取得手段により前記時刻情報が取得されるまで、前記サーチ処理を継続させる
ことを特徴とする電子時計。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の電子時計において、
時刻をカウントする内部計時部と、
前記情報取得手段により取得された前記時刻情報に基づいて、前記内部計時部によりカウントされる前記時刻を修正する時刻修正手段と、を備え、
前記時刻修正手段は、前記測時モードにおいて、前記情報取得手段により取得される前記時刻情報の時刻と、前記内部計時部の時刻との時刻差が所定値以下である場合に、前記時刻情報に基づいて前記内部計時部の時刻を修正する
ことを特徴とする電子時計。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の電子時計において、
時刻をカウントする内部計時部と、
前記情報取得手段により取得された前記時刻情報に基づいて、前記内部計時部によりカウントされる前記時刻を修正する時刻修正手段と、を備え、
前記時刻修正手段は、前記測時モードにおいて、前記受信手段により、2つ以上の衛星信号が捕捉され、かつこれらの捕捉された衛星信号の信号強度が所定の信号強度よりも小さい場合、これらの衛星信号から取得される前記時刻情報が略一致しており、かつこれらの前記時刻情報の時刻と、前記内部計時部の時刻との時刻差が所定値以下である場合に、前記時刻情報に基づいて前記内部計時部の時刻を修正する
ことを特徴とする電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−38989(P2011−38989A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189144(P2009−189144)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】