説明

電子時計

【課題】
複雑な制御を行うことなく計測指示から最短のタイミングで方位計測を実施できる方位計測機能付き電子時計を提供する。
【解決手段】
電子時計1は、ステップモータ2の駆動による磁界の影響を排除するために、磁界センサ4とモータ駆動仕様設定手段12と磁界計測手段14と磁界計測周期設定手段15とキャンセルデータ数設定手段16と方位計測処理手段17と統括手段18を備え、ステップモータ2の駆動パルスと磁界計測タイミングが重なると予想される数だけ、測定したデータの中からデータを排除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界センサによる方位計測機能を有するアナログ電子時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、磁界センサによる方位計測機能を有するアナログ電子時計では、アナログの針を駆動するためにステップモータが駆動されると、大きな磁界が発生するために正しく方位計測できなかった。
図1を用いて正しく方位が測定できないタイミングについて説明する。
図1は、本発明の課題となる原因のタイミングを表した図である。
通常、ステップモータは秒針を1秒毎に駆動している。ステップモータを駆動するための駆動パルスが発生している期間(グレー表示されている期間)に磁界計測が行われると大きな磁界が発生しているために異常値を検出してしまう。
そこで、ステップモータが駆動される時に発生する磁界の影響を何らかの手段によって排除しないと正しく方位計測を行うことができなかった。
特許文献1によると、磁界センサの計測は、ステップモータの駆動タイミングと同期させ且つ重ならないタイミングで行うことにより、ステップモータが駆動されて磁界に影響が出ているタイミングで計測を行わないことで影響を排除している。
図2は、従来の構成における測定タイミングを表した図である。
図2を用いて簡単に説明すると特許文献1では、ステップモータの駆動パルスが終了するのを待って磁界計測を行うことでステップモータの駆動による磁界変化の影響を排除している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3596201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1記載の構成では、常にステップモータの駆動タイミングを検出して、駆動した後の所定期間内に方位計測を行なわなければならなかった。
特許文献1の技術では、図2から明らかなように、1秒毎にステップモータを駆動している場合で、駆動直後に方位計測指示が来た場合には、最悪1秒位方位計測を待たされるという事態が生じてしまっていた。
本来、ステップモータの駆動時間が数ミリ秒であれば、1秒近くも待たずに方位計測を行うことができるはずであるが、上記特許文献1では自由なタイミングで計測することができず常に方位計測を待たされてしまうという課題があった。
本発明の目的は、上記問題点を解決し、複雑な制御を行うことなく計測指示から最短のタイミングで方位計測を実施できる方位計測機能付き電子時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の方位計測機能付き電子時計は、下記記載の構成を採用する。
【0006】
表示手段と、
該表示手段を駆動するためのステップモータと、
該ステップモータの駆動仕様を設定するモータ駆動仕様設定手段と、
磁界センサと、
該磁界センサを駆動し磁界計測を行う磁界計測手段と、
該磁界計測手段の計測タイミングを設定する磁界計測周期設定手段と、
前記磁界計測手段の前記駆動周期毎に計測結果を取得し、
所定期間の計測結果から方位演算を行う方位計測処理手段と、
該方位計測処理手段に対し前記所定期間内の排除データ数を決定する
キャンセルデータ数設定手段と、を有し、
前記モータ駆動仕様設定手段からのモータ駆動仕様データ、
前記磁界計測周期設定手段からの計測タイミングデータ、
前記キャンセルデータ数設定手段からの排除データ数のうち、
いずれか2つを入力し、残る1つを設定する統括手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記の如く本発明によれば、ステップモータの駆動タイミングを気にすることなく方位計測指示に従って、最短で方位計測を正しく行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の課題となる原因のタイミングを表した図である。
【図2】従来の構成における測定タイミングを表した図である。
【図3】本発明の実施形態における電子時計1の形態を表す概略図である。
【図4】地磁気ベクトルを2つの成分に分けた図である。
【図5】磁界センサの内部構成を表した図である。
【図6】本発明の実施形態における電子時計1の構成を表すブロック図である。
【図7】実施の形態1のタイミングを表した図である。
【図8】実施の形態2のタイミングを表した図である。
【図9】長い駆動パルスの出力タイミングを説明する図である。
【図10】実施の形態3のタイミングを表した図である。
【図11】検出磁界に異常値が有る場合を数直線で表した図である。
【図12】検出磁界に異常値が無い場合を数直線で表した図である。
【図13】ステップモータの駆動パルスより方位計測の時間が長い場合の重なりタイミングを表した図である。
【図14】実施の形態1の動作を説明するフローチャートである。
【図15】実施の形態2の動作を説明するフローチャートである。
【図16】実施の形態3の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係わる電子時計1を図面に基づいて概略の構成を説明する。図3は、本発明の実施形態における電子時計1の形態を表す概略図である。
本実施形態における電子時計1は、図3に表すようにステップモータ2で駆動されるアナログの指針3を有する電子時計1であって、磁界センサ4を用いて方位計測する機能を備えている。
【0010】
方位計測について、図4と図5を用いて簡単に説明する。
図4は、地磁気ベクトルを2つの成分に分けた図である。
図5は、磁界センサの内部構成を表した図である。
方位は、地磁気の磁界強度をXとYのベクトルに分けて測定する。磁界センサ4はX成分検出用センサ5とY成分検出用センサ6で構成され、それぞれのセンサで地磁気ベクトルを測定し、測定データをもとに演算によって方位角を求めることができる。
【0011】
次に、図6を用いて、本発明の実施の形態に係わる電子時計1の詳細な構成について説明
する。
図6は、本発明の実施形態における電子時計1の構成を表すブロック図である。
表示手段としての指針3は、アナログ電子時計の針であり主に時刻を表示している。
ステップモータ2は、針を駆動するためのモータであり、通常は、励磁コイル、NとSの2極のロータとその他部品で構成され、励磁コイルに交互な向きに電流を流すことで針は1ステップずつ駆動されて進む。
モータ駆動仕様設定手段12は、ステップモータを駆動するためのパルス周期、パルス形状、パルスの向きなどのモータ駆動パルス仕様を設定し、駆動パルスを発生する手段である。ステップモータの駆動パルスとは、ステップモータを1ステップ駆動するためのパルスのことであり、パルスの構成についてはパルス内でデューティコントロールするために細分割されていても、ここでの説明は1パルスとして扱うこととする。
(このようなパルスの例としては、例えば、特許3661264号公報を参照。)
【0012】
磁界センサ4は、地磁気を検出するためのセンサである。本発明に使用する磁界センサ4は、測定データのバラツキを少なくするために複数回測定し平均化処理を行うことを前提としているため、短い時間で方位計測ができる磁界センサが望ましい。具体的にはステップモータの駆動パルスより測定時間が短いことが条件である。
磁界計測手段14は、磁界計測周期設定手段15に従い磁界センサ4を駆動し磁界計測を行い、測定データを方位計測処理手段17に送信する手段である。
磁界計測周期設定手段15は、磁界センサを駆動するための計測周期や回数などの磁界計測タイミングを決定し、その内容を磁界計測手段14へ送信する手段である。
【0013】
キャンセルデータ数設定手段16は、方位計測処理手段17が排除するデータ数を設定する手段である。
キャンセルデータ数は、予め排除する数を所望の値として設定しておくか、又は、統括手段18によって設定される数である。
【0014】
方位計測処理手段17は、磁界計測手段14から取得した測定データの中から、キャンセルデータ数設定手段16が設定したキャンセルデータ数を排除して演算処理を行い、方位を求める手段である。
統括手段18は、モータ駆動仕様設定手段12と磁界計測周期設定手段15とキャンセルデータ数設定手段16のいずれか2つが設定されると残り1つを制御する手段である。
【0015】
方位表示手段19は、方位計測処理手段17が演算によって求めた方位を表する手段である。その構成は特定されず、指針などのアナログ表示であっても良いし、LCDなどのデジタル表示であっても良い。
また、図6では、指針3とは別個の方位表示手段19を設ける構成としたが、時刻表示を行っている指針3を兼用して表示しても良い。
【0016】
上記手段がどのように作用すると、ステップモータの駆動パルスによる影響を排除することができるのかを具体的に説明する。
通常、ステップモータ駆動パルスと非同期で測定すると、いつステップモータの駆動パルスが発生し何回計測と重なったかが不明であるため、測定データにどれだけ異常値が含まれているかが不明である。
本発明は、ステップモータの駆動パルスとまったく非同期で測定するが、ステップモータの駆動パルスと測定が重なると予想される測定データを排除することで、ステップモータの駆動パルスによる影響を排除している。
【0017】
〔本発明の実施の形態1〕
排除する測定データを決定するための手段として3つの形態がある。
実施の形態1では、磁界計測周期とステップモータの駆動パルスの2つが決まれば、キャンセルデータ数が決定されるという形態について図7を用いて説明する。
【0018】
図7は、モータ駆動パルスと磁界計測タイミングを表した図である。図7では、モータ駆動パルスと磁界計測タイミングが3回重なっているが、磁界計測はモータ駆動パルスに非同期で行われているため、まったく重ならないこともある。本発明では、最悪の事態を想定して最大数をキャンセルデータ数として決定している。
【0019】
磁界計測タイミングとは、計測周期と計測時間のことである。計測周期とは、磁界センサで繰り返し測定する場合の周期のことである。計測時間とは、磁界センサが実際に計測している時間のことであり、使用するセンサの種類毎に異なる時間でセンサの固有値である。
【0020】
図7を見れば明らかなように、駆動パルス幅と計測周期と計測時間が決定すると下記の式1からキャンセルデータ数が決定することができる。
[式1]
キャンセルデータ数>(駆動パルス幅+計測時間)/計測周期
小数点以下が出た場合に、キャンセル数は切り上げをする。
【0021】
図14は本発明の実施の形態1の動作を説明するためのフローチャートである。
図14を用いて、既定のステップモータの駆動パルス幅と磁界計測周期のデータより、[式1]を用いてキャンセルデータ数を求め、方位演算を行うまでの流れを説明する。
【0022】
最初にステップS100にて、統括手段18が、モータ駆動仕様設定手段12より既定のステップモータの駆動パルス幅を、磁界計測周期設定手段15より磁界計測周期を入力する。
次に、ステップS101では、統括手段18が、[式1]を用いてキャンセルデータ数を計算する。
続いて、ステップS102において、統括手段18が、ステップS101において[式1]を計算して求めたキャンセルデータ数をキャンセルデータ数設定手段16に設定する。次に、ステップS103において、方位計測処理手段17は、キャンセルデータ数設定手段16からキャンセルデータ数を取得する。
ステップS104において、方位計測処理手段17は、磁界計測手段14で測定したデータからキャンセルデータ数を排除し、方位演算を行う。
【0023】
このように、既定のステップモータの駆動パルス幅と磁界計測周期のデータより、[式1]を用いてキャンセルデータ数を求めることができ、それを用いることでステップモータのノイズに影響されず方位演算を適切に行うことが可能となる。
【0024】
次に、キャンセルデータ数が1の場合について、図11を用いて詳しく説明する。
図11は、1秒間隔で2度磁界強度を計測し、検出磁界に異常値が有る場合を数直線で表した図である。図11(b)は、横軸を経過時間、縦軸を検出磁界強度で表した図である。図11(a)は、1回目の測定データを数直線で表したものである。図11(c)は、2回目の測定データを数直線で表したものである。測定は、1度に6回行っているのでそれぞれ6個の測定データが存在している。2度とも同じ条件で測定しているので、本来であればほぼ同じようなデータを得られるはずであるが、1度目は上側に1個異常なデータがあり、2度目は下側に1個異常なデータがある。それぞれ1個の異常値は、ステップモータ2が駆動されたことにより磁界が乱れた為であるがステップモータの駆動パルスが逆方向にかかるために逆方向に異常値が発生してしまっている。
【0025】
1回目の数直線を見ると、1個だけ極端に磁界強度の大きいデータがある。このデータを排除して平均化処理を行えばばらつきの少ない正確な方位を求めることができる。
また、2回目の数直線を見ると1個だけ極端に磁界強度の小さいデータがある。このデータを排除して平均化処理を行えばばらつきの少ない正確な方位を求めることができる。
というように、2つの数直線を見るとキャンセルデータ数を1とすれば良い事が一目瞭然である。
【0026】
しかし、本実施形態1では数直線を見てからキャンセルデータ数を決めるのではなく、予め駆動パルス幅と計測周期と計測時間からキャンセルデータ数を決定することである。
そして、決定したキャンセルデータ数だけ測定データの最大値側と最小値側から自動的に排除することである。
図11の(a)であればAとB、(c)であればCとDを排除することになる。
数直線を見れば、異常値ではないBとDを排除してしまうが磁界計測数が多数あれば問題ないことは一目瞭然である。
【0027】
自動的に最大値側と最小値の両側から排除しているのは、どちら側に異常値が発生するのかわからないためである。計測直前に次はどちら側に駆動パルスが発生するのかを確認して置けば、最大値又は最小値のどちらかだけをキャンセルデータ数だけ排除すれば良い。図11の(a)であればA、(c)であればCだけを排除することになる。ここでは、実際に駆動パルスが発生したかどうかは関係ない。
ゆえに、駆動パルスの方向を検出しないと実際の排除される数はキャンセルデータ数の2倍となる。
【0028】
次に図12を用いて、モータ駆動パルスと磁界計測タイミングが重ならず異常値が出なかった場合について説明する。
図12は、1秒間隔で2度磁界強度を計測し、検出磁界に異常値が無い場合を数直線で表した図である。
ここでも数直線を見れば、異常値が出なかった場合にも本発明によりEとFとGとHを排除してしまっても問題が無い事は一目瞭然である。
【0029】
本実施形態では、駆動パルスの仕様を固定できるので、計時制御が単純となり、汎用時計ロジック等を用いて方位計付きアナログ電子時計が構成できる利点がある。
【0030】
〔本発明の実施の形態2〕
実施の形態2では、キャンセルデータ数と磁界計測周期の2つが決まれば、ステップモータの駆動パルスが決定するという形態について説明する。
図8は、磁界計測タイミング(計測周期と計測時間)が決定している場合に、キャンセルデータ数が決定すると自動的に、駆動パルスを決定する様子を表した図で有る。
ゆえに、下記の式2から最大モータ駆動パルス幅が決定する。
[式2]
最大駆動パルス幅<(計測周期*キャンセルデータ数−計測時間)
【0031】
図15は本発明の実施の形態2の動作を説明するフローチャートである。
図15を用いて、既定の磁界計測周期とキャンセルデータ数より、[式2]を用いてステップモータ駆動と磁界計測が両立可能なステップモータの最大駆動パルス幅を求め、方位演算を行うまでの流れを説明する。
【0032】
最初にステップS200で、統括手段18が、磁界計測周期設定手段15より既定の磁界計測周期を、キャンセルデータ数設定手段16よりキャンセルデータ数を入力する。
次に、ステップS201では、統括手段18が、[式2]を用いてステップモータの最大
駆動パルス幅を計算する。
続いて、ステップS202において、統括手段18が、ステップS201において計算で求めた最大駆動パルス幅でステップモータが駆動可能かどうかを判断する。
駆動可能と判断された場合は、ステップS203によって計算で求めた最大駆動パルス幅をモータ駆動仕様設定手段12に設定する。
【0033】
なお、この最大駆動パルス幅は、S200で入力した計測条件で設定可能な最大駆動パルス幅を示すものであり、ステップモータ2の駆動が可能であれば、それより小さな駆動パルス幅に設定しても良い。そのようにすることで、より低消費電力化が可能である。
ステップS202において駆動不可能と判定の場合は、ステップS206によって磁界計測周期とキャンセルデータ数のどちらか、又は両方を再設定し、ステップS201に戻る。ステップS202において、ステップS201で求められた最大駆動パルス幅でステップモータが駆動可能と判断されるまで、ステップS202、S206、S201を繰り返す。
【0034】
なお、磁界計測周期とキャンセルデータ数の再設定については、統括手段18が自動で再設定を行うようにしても良い。または、磁界計測周期設定手段15の磁界計測周期とキャンセルデータ数設定手段16のキャンセルデータ数を手動設定できるように構成しておき、ステップS202において駆動不可能と判定の場合に、使用者に再設定を促すようにしても良い。その際には、例えば、方位表示手段19で再設定喚起の表示を行うようにしても良い。
【0035】
ステップS203で最大駆動パルス幅をモータ駆動仕様設定手段12に設定したら、ステップS204において方位計測処理手段17は、キャンセルデータ数設定手段16からキャンセルデータ数を取得する。
そして、ステップS205において、方位計測処理手段17は、磁界計測手段14で測定したデータからキャンセルデータ数を排除し、方位演算を行う。
【0036】
このように、既定の磁界計測周期とキャンセルデータ数のデータより、[式2]を用いてステップモータ駆動と磁界計測が両立可能な最大駆動パルス幅を求めることができ、それを用いることでステップモータを駆動しながら、ステップモータのノイズに影響されず方位演算を適切に行うことが可能となる。
【0037】
本実施形態では、方位計測に関連する所定数を固定設定できるので、方位計測制御が簡単になる利点を有する。
【0038】
〔本発明の実施の形態3〕
実施の形態3では、キャンセルデータ数とステップモータの駆動パルスの2つが決まれば、磁界計測周期が決定するという形態について説明する。
図10は、ステップモータの駆動パルスが決定している場合に、キャンセルデータ数が決定すると自動的に、次回計測周期を決定してしまう様子を表したもので有る。
ゆえに、下記の式3から計測周期が決定する。
[式3]
計測周期>(駆動パルス幅+計測時間)/キャンセルデータ数
【0039】
図16は、本発明の実施の形態3の動作を説明するフローチャートである。
図16を用いて、既定のステップモータの駆動パルス幅とキャンセルデータ数より、[式3]を用いてステップモータ駆動と磁界計測が両立可能な磁界計測周期を求め、方位演算を行うまでの流れを説明する。
【0040】
最初にステップS300で、統括手段18が、モータ駆動仕様設定手段12より既定のステップモータの駆動パルス幅を、キャンセルデータ数設定手段16よりキャンセルデータ数を入力する。
次に、ステップS301において、統括手段18が、[式3]を用いて磁界計測周期を計算する。
次に、ステップS302において、統括手段18が、ステップS301において計算で求めた磁界計測周期を磁界計測周期設定手段15に設定する。磁界計測手段14はこの設定された磁界計測周期で方位計測を行う。
次に、ステップS303において、方位計測処理手段17は、キャンセルデータ数設定手段16からキャンセルデータ数を取得する。
そしてステップS304において、方位計測処理手段17は、磁界計測手段14で測定したデータからキャンセルデータ数を排除し、方位演算を行う。
【0041】
このように、既定のステップモータの駆動パルス幅とキャンセルデータ数のデータより、[式3]を用いてステップモータ駆動と磁界計測が両立可能な磁界計測周期を求めることができ、それを用いることでステップモータを駆動しながら、ステップモータのノイズに影響されず方位演算を適切に行うことが可能となる。
【0042】
本実施形態では、駆動パルスの仕様が固定されるので、計時制御が単純となり、汎用時計ロジック等を用いて方位計付きアナログ電子時計が構成できる。
また、キャンセル数が多くなるものの、短い間隔で計測できるので計測期間は短くなる。そのため、多数のデータを短時間で取得する場合に適用することが可能である。
【0043】
〔本発明の実施の形態の変形例1〕
実施の形態1と3では先に駆動パルスを決定してしまっているが、時計ではステップモータを駆動する時にできるだけ消費電流を少なくする為に通常の駆動パルスはできるだけ短くしておき、ぎりぎりな状態で駆動する。そして、ステップモータ回転検出手段を設けておき、通常パルスでは動作をしなかった場合だけ通常パルスより長い駆動パルスを出している。このようなシステムの場合、常に最悪の状態を想定して駆動パルス幅として決めておくか、若しくは、通常パルスより長い駆動パルスが出た場合は、ステップモータ回転検出手段から長い駆動パルスが出力されたことを表す信号を受け取り、その場合だけキャンセルデータ数を増やすことも可能で有る。
【0044】
〔本発明の実施の形態の変形例2〕
実施の形態の変形例1とは異なる形態について図9を用いて説明する。図9は、通常パルスでステップモータが駆動しなかった場合の、長いパルスの出力タイミングを説明した図である。通常、駆動パルスを出力した後に回転検出を行い、ステップモータが動作しなかった場合は、設定した駆動パルスより長い駆動パルスを直ぐに出力していた。実施の形態の変形例1では、出てしまった長い駆動パルスの対処について説明した。ここでは、出てしまった長い駆動パルスの対応ではなく、長い駆動パルスを出す前の対応について説明する。長い駆動パルスによる磁界計測への影響を避けるため、図9のごとく磁界計測が終了するまで長い駆動パルスを待たせれば良い。この場合、この時だけ一瞬針の駆動が遅れてしまうことになるが、針を駆動する基本的なタイミングがずれるのではないので、磁界計測が終了すれば、正常なタイミングに戻ることになる。
【0045】
3つの実施の形態で説明したようにモータ駆動仕様設定手段からのモータ駆動仕様データ、前記磁界計測周期設定手段からの計測周期データ、前記キャンセルデータ数設定手段からの排除データ数のうち、いずれか2つが決定すればテップモータの駆動パルスによる影響がある測定データを排除することができ正確な方位計測ができる。
【0046】
本実施の形態では、2極のステップモータを説明したが、針を駆動するためにコイルに電流を流した時に磁界が変化するようなモータであれば本発明は有効である。
【0047】
本実施の形態では、ステップモータの駆動パルスより測定時間が短いことが条件であると記載したが、ステップモータの駆動パルスより、方位計測の時間が長く、ステップモータの駆動周期より十分短い場合について説明する。
図13は、ステップモータの駆動パルスより方位計測の時間が長い場合の重なりタイミングを表した図である。
図13のようにステップモータの駆動パルスと時期計測タイミングが重なる回数は最大2回なので、常にキャンセルデータ数は2として本発明が適用できる。
【符号の説明】
【0048】
2 ステップモータ
3 指針
4 磁界センサ
12 モータ駆動仕様設定手段
14 磁界計測手段
15 磁界計測周期設定手段
16 キャンセルデータ数設定手段
17 方位計測処理手段
18 統括手段
19 方位表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示手段と、
該表示手段を駆動するためのステップモータと、
該ステップモータの駆動仕様を設定するモータ駆動仕様設定手段と、
磁界センサと、
該磁界センサを駆動し磁界計測を行う磁界計測手段と、
該磁界計測手段の計測タイミングを設定する磁界計測周期設定手段と、
前記磁界計測手段の前記駆動周期毎に計測結果を取得し、
所定期間の計測結果から方位演算を行う方位計測処理手段と、
該方位計測処理手段に対し前記所定期間内の排除データ数を決定する
キャンセルデータ数設定手段と、を有し、
前記モータ駆動仕様設定手段からのモータ駆動仕様データ、
前記磁界計測周期設定手段からの計測タイミングデータ、
前記キャンセルデータ数設定手段からの排除データ数のうち、
いずれか2つを入力し、残る1つを設定する統括手段を有する
ことを特徴とする方位計測機能付き電子時計。
【請求項2】
前記統括手段が、
前記モータ駆動仕様設定手段からのモータ駆動仕様データ、
前記磁界計測周期設定手段から計測タイミングデータを入力し、
前記キャンセルデータ数設定手段に対し排除データ数を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の方位計測機能付き電子時計。
【請求項3】
前記統括手段が、
前記キャンセルデータ数設定手段から排除データ数、
前記磁界計測周期設定手段から計測タイミングデータを入力し、
前記モータ駆動仕様設定手段に対しモータ駆動仕様データを設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の方位計測機能付き電子時計。
【請求項4】
前記統括手段が、
前記キャンセルデータ数設定手段から排除データ数、
前記モータ駆動仕様設定手段からのモータ駆動仕様データを入力し、
前記磁界計測周期設定手段に対し計測タイミングデータを設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の方位計測機能付き電子時計。


【図4】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−194157(P2012−194157A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60373(P2011−60373)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
【Fターム(参考)】