説明

電子楽器及びプログラム

【課題】 電子楽器からオーディオプレイヤー内の音楽コンテンツを利用する。
【解決手段】 オーディオプレイヤーに記憶済みの音楽コンテンツと電子楽器における任意の演奏操作子とを関連付けた、所定の割り当て対応表を記憶しておき、該割り当て対応表に基づき、前記演奏操作子の操作に応じて割り当て済みの音楽コンテンツを選択・再生するよう、電子楽器から外部のオーディオプレイヤーに対して指示する。こうすると、ユーザは演奏操作子を操作するといった簡単な操作を行うだけで、オーディオプレイヤーに記憶されている数多くの音楽コンテンツの中から、必要に応じて所望の音楽コンテンツを電子楽器で利用することができるようになる。また、大容量の記憶装置や、エンコーダやデコーダ等の専用の再生機器が電子楽器に搭載されていなくても、ユーザはオーディオプレイヤーを有効に活用して、多数の音楽コンテンツを必要に応じて利用することができ便利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外部のオーディオプレイヤーに記憶されている多数の音楽コンテンツを、ユーザが簡単な操作で随時に選択・再生して利用することができるようにした電子楽器及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種データを多数記憶することが可能なハードディスク等の大容量記憶装置を搭載しており、この大容量記憶装置に予め楽音波形データやオーディオデータ等の楽音発生のためのデータを多数記憶しておき、記憶済みのこれら多数の楽音波形データやオーディオデータの中から任意のデータを選択/再生することにより、ユーザ所望の楽音を発生することができる電子楽器が知られている。例えば、下記に示す特許文献1に記載されている技術がその一例である。この特許文献1に記載の従来技術においては、大容量記憶装置に多数の楽音波形データを記憶することができると共に、該記憶した多数の楽音波形データの中から任意の楽音波形データを演奏操作子(例えば、鍵盤を構成する各鍵など)に予め割り当てておき、前記演奏操作子の操作に応じて、該操作された演奏操作子に予め割り当て済みの楽音波形データを大容量記憶装置から選択して再生することにより、ユーザ所望の楽音を簡単な操作で迅速に発生することができるようになっている。なお、この明細書において、楽音という場合、音楽的な音に限るものではなく、音声あるいはその他任意の音を含んでいてもよい意味あいで用いるものとする。
【特許文献1】特開2006−259213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した従来の技術においては、楽音波形データやオーディオデータ等の楽音発生のためのデータを多数記憶することができる大容量記憶装置が電子楽器自体に搭載されている必要があるが、これらを備えた電子楽器はコスト高になり安価な電子楽器に向かないだけでなく、また既に普及している既存の電子楽器に対しては簡単に適用することができずに都合が悪い。そこで、少ない記憶容量の記憶装置を備えた電子楽器であっても、楽音発生のためのデータをより数多く記憶装置に記憶すべく、例えばオーディオデータを、記憶容量を小さくした圧縮オーディオデータ(例えば、MP3データなど)に変換した上で、記憶装置に記憶することが考えられる。しかし、そのようにしたい場合には、オーディオデータを圧縮オーディオデータに変換するためのエンコーダや、圧縮オーディオデータを圧縮前の元のオーディオデータに戻すためのデコーダを、電子楽器自体に搭載する必要があるので、結局はそれらのコストが余計にかかり現実的でない。
【0004】
ところで、最近では、小型筐体内に納められたハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置に多数の音楽コンテンツ(例えばMP3データ等)を記憶することができるとともに、該記憶した多数の音楽コンテンツの中からユーザが適宜に選択した音楽コンテンツを再生することができる、少なくとも音楽コンテンツ記憶機能及び音楽コンテンツ再生機能を備えた携帯型のオーディオプレイヤー(メディアプレイヤー)が広く使用されるようになってきた。そこで、電子楽器においても、こうした外部のオーディオプレイヤーを有効に活用するべく、電子楽器からの簡単な操作で、外部のオーディオプレイヤーに記憶されている膨大な数の音楽コンテンツを利用することができるものがあれば有用であるが、従来そのようなものは考えられていなかった。
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、外部のオーディオプレイヤーに蓄積されている音楽コンテンツを、ユーザが簡単な操作を行うだけで、電子楽器側で適宜に利用することができるようにした、電子楽器及びプログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る電子楽器は、ユーザの演奏操作を入力する演奏操作子と、多数の音楽コンテンツを記憶し、該記憶した音楽コンテンツを再生する機能を少なくとも有するオーディオプレイヤーを接続する接続手段と、前記接続されたオーディオプレイヤーに記憶済みの音楽コンテンツと前記演奏操作子とを関連付けた所定の割り当て対応表を記憶する記憶手段と、前記演奏操作子に対する操作を検出する検出手段と、前記演奏操作子に対する操作の検出に応じて、前記記憶手段に記憶した割り当て対応表に基づき、該操作された演奏操作子に割り当てられている音楽コンテンツを特定する特定手段と、前記接続されたオーディオプレイヤーに記憶されている音楽コンテンツの中から、前記特定した音楽コンテンツを選択して再生するよう、前記オーディオプレイヤーに対して指示する指示手段とを具える。
【0007】
本発明によると、オーディオプレイヤーに記憶済みの音楽コンテンツと電子楽器における任意の演奏操作子とを関連付けた、所定の割り当て対応表を記憶し、該割り当て対応表に基づき、前記演奏操作子の操作に応じて割り当て済みの音楽コンテンツを選択・再生するよう、電子楽器から外部のオーディオプレイヤーに対して指示を出す(つまり、電子楽器からオーディオプレイヤーを制御する)ようにした。こうすると、ユーザは、前記音楽コンテンツを割り当てた電子楽器の演奏操作子を操作するだけで、オーディオプレイヤーに記憶されている数多くの音楽コンテンツの中から、必要に応じて所望の音楽コンテンツを電子楽器で簡単に利用することができて便利である。また、電子楽器に多数のオーディオデータ等を予め記憶しておくための大容量の記憶装置を備えていなくても、さらには、圧縮オーディオデータのエンコーダやデコーダ等の専用の再生機器(再生機能)が電子楽器に搭載されていなくても、ユーザは携帯オーディオプレイヤーを有効に活用することで、多数の音楽コンテンツを必要に応じて利用することができる。
【0008】
本発明は、装置の発明として構成し実施することができるのみならず、方法の発明として構成し実施することができる。また、本発明は、コンピュータまたはDSP等のプロセッサのプログラムの形態で実施することができるし、そのようなプログラムを記憶した記憶媒体の形態で実施することもできる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、多数の音楽コンテンツを記憶し、該記憶した音楽コンテンツを再生する機能を少なくとも有するオーディオプレイヤーに対して、電子楽器の演奏操作子の操作に応じて音楽コンテンツの選択/再生指示を行うようにしたことから、外部のオーディオプレイヤーに記憶されているユーザ所望の音楽コンテンツを、ユーザは演奏操作子を操作するといった簡単な操作を行うだけで、電子楽器側で適宜に利用することができるようになる、という効果を得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に従って詳細に説明する。
【0011】
図1は、この発明に係る電子楽器の全体構成を示したハード構成ブロック図である。本実施例に示す電子楽器は、マイクロプロセッサユニット(CPU)1、リードオンリメモリ(ROM)2、ランダムアクセスメモリ(RAM)3からなるマイクロコンピュータによって制御される。CPU1は、この電子楽器全体の動作を制御するものである。このCPU1に対して、データ及びアドレスバス1Dを介してROM2、RAM3、検出回路4,5、表示回路6、音源回路7、ミキサー8、携帯オーディオ接続インタフェース(I/F)9、外部記憶装置10、MIDIインタフェース(I/F)11および通信インタフェース(I/F)12がそれぞれ接続されている。更に、CPU1には、タイマ割込み処理(インタラプト処理)における割込み時間や各種時間を計時するタイマ1Aが接続されている。例えば、タイマ1Aはクロックパルスを発生し、発生したクロックパルスをCPU1に対して処理タイミング命令として与えたり、あるいはCPU1に対してインタラプト命令として与える。CPU1は、これらの命令に従って各種処理を実行する。
【0012】
ROM2は、CPU1により実行される各種プログラムや各種データを格納するものである。RAM3は、CPU1が所定のプログラムを実行する際に発生する各種データを一時的に記憶するワーキングメモリとして、あるいは現在実行中のプログラムやそれに関連するデータを記憶するメモリ等として使用される。RAM3の所定のアドレス領域がそれぞれの機能に割り当てられ、レジスタやフラグ、テーブル、メモリなどとして利用される。特に、この実施例では、携帯オーディオ接続インタフェース9を介して電子楽器本体に接続された外部の携帯オーディオプレイヤー9Aから、該携帯オーディオプレイヤー9Aによる音楽コンテンツの再生に応じて発生されたオーディオデータを、一時的に記憶することができるようになっている(詳しくは後述する)。演奏操作子4Aは楽音の音高を選択するための複数の鍵を備えた例えば鍵盤等のようなものであり、各鍵に対応してキースイッチを有しており、この演奏操作子4A(鍵盤等)はユーザ自身の手弾きによるマニュアル演奏や自動伴奏用のコード入力などのために使用することができるのは勿論のこと、携帯オーディオ接続インタフェース9を介して電子楽器本体に接続された外部の携帯オーディオプレイヤー9Aを制御するための制御手段などとして使用することもできる(詳しくは後述する)。検出回路4は、演奏操作子4Aの各鍵の押圧及び離鍵を検出することによって検出出力を生じる。
【0013】
設定操作子(スイッチ等)5Aは、例えばユーザのマニュアル演奏にあわせて自動的に演奏される自動伴奏の開始/停止を指示するスイッチなどがある。自動伴奏の開始が指示されている場合には、演奏操作子4Aの操作に応じて、当該演奏操作子4Aに予め割り当て済みの楽音を自動的に発生することができるようになっている。勿論、設定操作子5Aは他にも、音高、音色、効果等を選択・設定・制御するために用いる数値データ入力用のテンキーや文字データ入力用のキーボード、あるいはディスプレイ6Aに表示される所定のポインティングデバイスを操作するために用いるマウスなどの各種操作子を含んでいてよい。検出回路5は、上記各スイッチの操作状態を検出し、その操作状態に応じたスイッチ情報をデータ及びアドレスバス1Dを介してCPU1に出力する。
【0014】
表示回路6は例えば液晶表示パネル(LCD)やCRT等から構成されるディスプレイ6Aに、例えば後述する「コンテンツ割り当て対応表」(図2参照)を編集するための画面(図示せず)などの各種画面、現在設定されている演奏環境、楽曲の楽譜や歌詞、あるいはCPU1の制御状態などを表示したりする。ユーザは該ディスプレイ6Aに表示されるこれらの各種情報を参照することで、例えば演奏操作子4A(鍵盤)の操作に応じて発生させる楽音の設定、ユーザ所望の楽曲をマニュアル演奏するのに適した演奏環境の設定、あるいはマニュアル演奏のための押鍵操作などを容易に行うことができるようになる。
【0015】
音源回路7は複数のチャンネルで楽音信号の同時発生が可能であり、データ及びアドレスバス1Dを経由して与えられた、ユーザによる演奏操作子4Aのマニュアル操作に応じて発生される、あるいは予め記憶されている伴奏パターンデータなどに従って発生される各種演奏情報を入力し、これらの演奏情報に基づいて楽音信号を発生する。ミキサー8は、音源回路7から発生された楽音信号(オーディオデータ)と、後述する携帯オーディオプレイヤー9Aから発生されたオーディオデータ(ただし、後述するように電子楽器側に記憶済みのものを含む)とをミキシングして、これをアンプやスピーカなどを含むサウンドシステム9から楽音として発音する。なお、前記音源回路7とミキサー8とサウンドシステム9の構成には、従来のいかなる構成を用いてもよい。例えば、音源回路7はFM、PCM、物理モデル、フォルマント合成等の各種楽音合成方式のいずれを採用してもよく、また音源回路7やミキサー8は専用及びDSPなどの汎用のハードウェアで構成してもよいし、CPU1によるソフトウェア処理で構成してもよい。
【0016】
携帯オーディオ接続インタフェース(I/F)9は外付けのハードウェア装置として、携帯オーディオプレイヤー9Aなどの公知のコンテンツ再生装置を外部接続するためのインタフェース機器(例えば、USB(Universal Serial Bus)機器など)である。電子楽器は、該携帯オーディオ接続インタフェース(I/F)9経由で外部の携帯オーディオプレイヤー9Aに対し、携帯オーディオプレイヤー9Aが記憶する音楽コンテンツの再生開始/停止を随時に指示することができ、また当該携帯オーディオプレイヤー9Aでの音楽コンテンツの再生に応じて発生される楽音(オーディオ信号)を取得して、RAM3に一時記憶することができるようになっている(詳しくは後述する)。また、携帯オーディオプレイヤー9Aから各種情報を取得して、CPU1に渡すようになっている。なお、携帯オーディオプレイヤー9Aへの指示や情報取得用の信号線と、楽音信号用の信号線は共用してもよいし、別途設けてもよい。特に、楽音信号がディジタルの場合は共用するとよく、アナログの場合は別とするのがよい。
【0017】
携帯オーディオプレイヤー9Aは、MP3データなどのディジタルデータからなる多数の音楽コンテンツを、楽曲名や音楽ジャンル等の当該音楽コンテンツに関連付けられた楽曲付随情報(図示せず)と共に内蔵データストレージ(例えば、ハードディスクや半導体メモリなど)に記憶する音楽コンテンツ記憶機能、またユーザ操作に応じて内蔵データストレージ内に記憶した音楽コンテンツを再生(デコード)する音楽コンテンツ再生機能を少なくとも有する機器である。すなわち、携帯オーディオプレイヤー9Aは外付けのハードディスク装置やUSBメモリなどのような単に音楽コンテンツを記憶することができる機器(後述の外部記憶装置10)とは異なって、多数の音楽コンテンツを記憶することができるだけでなく、該記憶した多数の音楽コンテンツの中から任意の音楽コンテンツを、ユーザ指定に応じてあるいはランダムに再生することで楽音を発生することができる機器である。なお、携帯オーディオプレイヤー9Aは上記した以外にも他の機能、例えば内蔵データストレージ内に記憶済みの音楽コンテンツの一覧や再生中の音楽コンテンツの曲名やアルバム名などを、前記楽曲付随情報に基づいて、内蔵する液晶パネルなどの表示装置に表示する表示機能などを有していてもよい。また、オーディオプレイヤー9Aは携帯型でなくてもよいことは勿論である。
【0018】
外部記憶装置10は、楽音波形データやオーディオデータ等の楽音発生のためのデータ、伴奏スタイルに対応した自動伴奏用の伴奏パターンデータあるいはマニュアル音色などの各種データ、さらにはCPU1が実行する各種制御プログラム等の制御に関するデータなどを記憶する。なお、上述したROM2に制御プログラムが記憶されていない場合、この外部記憶装置10(例えばハードディスク)に制御プログラムを記憶させておき、それをRAM3に読み込むことにより、ROM2に制御プログラムを記憶している場合と同様の動作をCPU1にさせることができる。このようにすると、制御プログラムの追加やバージョンアップ等が容易に行える。なお、外部記憶装置10はハードディスク(HD)に限られず、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD‐ROM・CD‐RAM)、光磁気ディスク(MO)、あるいはDVD(Digital Versatile Disk)等の着脱自在な様々な形態の外部記憶媒体を利用する記憶装置であればどのようなものであってもよい。あるいは、フラッシュメモリなどの半導体メモリであってもよい。
【0019】
MIDIインタフェース(I/F)11は、外部接続された他のMIDI機器11A等からMIDI形式の自動演奏データ(MIDIデータ)を当該電子楽器へ入力したり、あるいは当該電子楽器からMIDI形式の自動演奏データを他のMIDI機器11A等へ出力するためのインタフェースである。他のMIDI機器11Aは、ユーザによるマニュアル演奏操作に応じてMIDI形式のデータを発生する機器であればよく、鍵盤型、ギター型、管楽器型、打楽器型、身振り型等どのようなタイプの操作子を具えた(若しくは、操作形態からなる)機器であってもよい。
【0020】
通信インタフェース(I/F)12は、例えばLANやインターネット、電話回線等の有線あるいは無線の通信ネットワークNに接続されており、該通信ネットワークNを介してサーバコンピュータ12Aと接続され、当該サーバコンピュータ12Aから制御プログラムあるいは各種データなどを電子楽器側に取り込むためのインタフェースである。すなわち、ROM2や外部記憶装置10(例えば、ハードディスク)等に制御プログラムや各種データが記憶されていない場合には、サーバコンピュータ12Aから制御プログラムや各種データをダウンロードするために用いられる。こうした通信インタフェース12は、有線あるいは無線のものいずれかでなく双方を具えていてよい。
【0021】
なお、電子楽器は演奏操作子4Aやディスプレイ6Aあるいは音源回路7などを1つの装置本体に内蔵したものに限らず、それぞれが別々に構成され、MIDIインタフェースや各種ネットワーク等の通信手段を用いて各装置を接続するように構成されたものであってもよいことは言うまでもない。さらに、本発明に係る電子楽器は上記したような形態に限らず、パーソナルコンピュータやカラオケ装置やゲーム装置など、演奏操作子としても機能するスイッチやボタンなどのユーザによるマニュアル操作に応じて楽音を発生するものであれば、どのような形態の装置・機器に適用してもよい。
【0022】
ここで、ROM2や外部記憶装置10などに記憶されており、電子楽器の演奏操作子4Aを、携帯オーディオ接続インタフェース9を介して電子楽器本体に接続された外部の携帯オーディオプレイヤー9Aを制御する制御手段として機能するように機器設定する「コンテンツ割り当て対応表」について、図2を用いて説明する。図2は、コンテンツ割り当て対応表の一実施例を示す概念図である。
【0023】
コンテンツ割り当て対応表は、携帯オーディオ接続インタフェース9を介して電子楽器本体に接続されうる個々の携帯オーディオプレイヤー9A毎に、各プレイヤー9Aを制御する制御手段として使用する演奏操作子4Aを1乃至複数定義した、電子楽器の「機器設定情報」である。ここに示す実施例では、「機器設定情報」として、例えば異なる固有の記号又はID(図示の例ではプレイヤーA,プレイヤーB,プレイヤーCと表す)等が付された個別の携帯オーディオプレイヤー9A毎に、プレイヤー9Aに対して音楽コンテンツの選択・再生を指示して、各プレイヤー9Aが記憶している音楽コンテンツを再生するよう制御する制御手段としての機能を割り当てる「演奏操作子」、前記「演奏操作子」に対して制御対象として割り当てる音楽コンテンツを示す「コンテンツ」、前記「演奏操作子」の操作に応じて前記「コンテンツ」を選択・再生する際における制御態様である「再生態様」が含まれている。
【0024】
例えば、「プレイヤーA」においては、押鍵操作に応じて音高「C1」の楽音を発生するよう割り当てられている演奏操作子「C1キー」を、携帯オーディオプレイヤー9A内に記憶されているコンテンツ名「AAAA」の音楽コンテンツを選択して、該選択した音楽コンテンツを「ワンショット&ベロシティ(VEL)」の再生態様で再生するように、また、押鍵操作に応じて音高「C♯1」の楽音を発生するよう割り当てられている演奏操作子「C♯1キー」を、携帯オーディオプレイヤー9内に記憶されているコンテンツ名「BBBB」の音楽コンテンツを選択して、該選択した音楽コンテンツを「ゲート&リピート」の再生態様で再生するように、携帯オーディオプレイヤー9に対して指示する、いわばプレイヤー9Aを制御する制御手段として機能するように、それぞれの演奏操作4A子に対して設定するように割り当てられている。
【0025】
上記「再生態様」にあげた「ワンショット」は、演奏操作子4Aに対するユーザによる1回の押鍵操作に応じて、押鍵から離鍵されるまでの鍵が押下されている時間(キーオン時間長)に関係なく、音楽コンテンツを1回だけデータ最後まで再生する再生態様である。「ゲート」は、ユーザが演奏操作子4Aに対する1回の押鍵操作を続けている間だけ、音楽コンテンツを再生する再生態様である。この場合には、ユーザが離鍵操作すると、音楽コンテンツのデータ途中であっても再生を停止する(つまり、キーオン時間長に関係する)。また、ユーザが押鍵操作を続けていたとしても、音楽コンテンツのデータ最後まで再生したら再生を停止する。「ゲート&リピート」は、ユーザが演奏操作子4Aに対する1回の押鍵操作を続けている間だけ、音楽コンテンツを繰り返し再生する再生態様である。この場合には、ユーザが押鍵操作を続けている間は、音楽コンテンツのデータ最後まで再生されてもデータ先頭に戻って再生が行われ、ユーザが離鍵操作すると、音楽コンテンツのデータ途中であっても再生を停止する(つまり、キーオン時間長に関係する)。「ベロシティ(VEL)」は、演奏操作子4Aに対するユーザによる押鍵操作時の鍵の押し込み速さであるキーオンベロシティの値に応じて、音楽コンテンツの再生時における再生音量を制御する。勿論、再生態様は上記したものに限らないことは言うまでもない。全演奏操作子において、再生態様は1種類に固定されていてもよい。
【0026】
次に、上記した「コンテンツ割り当て対応表」(図2参照)に基づき、携帯オーディオプレイヤー9Aを制御する制御手段として設定された演奏操作子4Aの操作に応じて実行される制御処理について、図3を用いて説明する。図3は、携帯オーディオプレイヤー9Aを制御する制御手段に設定された演奏操作子4Aが操作された際に実行される制御フローを概念的に示すブロック図である。ただし、図3(A)は該当の演奏操作子に関して1回目の操作が行われた場合を示し、図3(B)は同じ演奏操作子に関して2回目以降の操作が行われた場合を示している。
【0027】
図3(A)に示すように、携帯オーディオプレイヤー9Aを制御する制御手段に設定された演奏操作子4Aに関して1回目の操作が行われると、制御部A1は外部の携帯オーディオプレイヤー9Aに対して、上記「コンテンツ割り当て対応表」(図2参照)に基づき、定義されている音楽「コンテンツ」を選択して、定義されている「再生態様」で再生するように指示するコマンドを送る。携帯オーディオプレイヤー9Aでは、前記コマンドを受信すると、記憶されている音楽コンテンツの中から該当の音楽コンテンツを選択して、これを前記「再生態様」で再生する。音楽コンテンツが再生されることに伴い発生されるオーディオ信号は電子楽器に送られて、サウンドシステム8Aから発音されると共に、読み書き部A2による制御の下に、オーディオデータとしてバッファA3(具体的にはRAM3など)へと書き込みされる。ここで、送られてくるオーディオ信号(電気信号である)がアナログ信号であれば、ディジタル信号に変換した後にデータ(情報や信号の内容を示す)として書き込み、送られてくるオーディオ信号がディジタル信号であれば、そのままあるいは所定のデータ形式に変換した後にデータとして書き込む。この際に、読み書き部A2では、前記「再生態様」と演奏操作子4Aの操作状態とに基づき、バッファA3へのオーディオデータの書き込み及びデータ消去を行う「バッファの録音データの記録管理」を行う。この「バッファの録音データの記録管理」については後述することから、ここでの説明を省略する。なお、制御部A1は、演奏操作子4A毎に操作状態を監視していると共に、その操作状態の変化に応じて各演奏操作子4A毎に押鍵操作された回数を記録することができるようになっている。
【0028】
図3(B)に示すように、携帯オーディオプレイヤー9Aを制御する制御手段に設定された演奏操作子4Aに関して、2回目以降の操作が行われた場合には、制御部A1から外部の携帯オーディオプレイヤー9Aに対して、記憶されている音楽「コンテンツ」を選択・再生するように指示するコマンドを送ることなく、読み書き部A2に対して、上記「コンテンツ割り当て対応表」(図2参照)に基づき、定義されている音楽「コンテンツ」に対応するバッファA3に記憶済みのオーディオデータを選択的に読み出し、定義されている「再生態様」で前記読み出したオーディオデータを再生するように指示する。読み書き部A2は、制御部A1からの指示に応じて、バッファA3から該当のオーディオデータを読み出し、これをサウンドシステム8Aに送る。こうすることで、携帯オーディオプレイヤー9Aにアクセスすることなく、演奏操作子4Aに割り当て済みの音楽コンテンツに基づく楽音を発生させるようにしている。このように、2回目以降の操作においては、1回目の操作時と異なり、携帯オーディオプレイヤー9Aではなんらの処理も行われない。
【0029】
このようにして、1回目の演奏操作子4Aの操作時において外部の携帯オーディオプレイヤー9Aにより再生された音楽コンテンツを、電子楽器側にオーディオデータとして取り込んで記憶しておき(録音)、2回目以降の操作時においては前記取り込んだオーディオデータを再生するようにすると、電子楽器に記憶容量が多少とも大きなメモリが必要となるが、2回目以降の演奏操作に対する反応速度(オーディオデータの発生開始)が比較的速くなり有利である。
【0030】
次に、演奏操作子4Aを外部の携帯オーディオプレイヤー9Aを制御するための制御手段として機能するように設定し、該演奏操作子4Aの操作に応じて外部の携帯オーディオプレイヤー9Aに記憶された音楽コンテンツの選択・再生を制御する「制御処理」の一連の処理概要について、図4〜図6を用いて説明する。ただし、ここでは図示の都合上、上記処理を処理順に前半・中盤・後半の3つの処理に分けて図示している。図4は、「制御処理」における前半処理の一実施例を示すフローチャートである。図5は、「制御処理」における前半処理に後続する中盤処理の一実施例を示すフローチャートである。図6は、「制御処理」における中盤処理に後続する後半処理の一実施例を示すフローチャートである。なお、この実施例では、電子楽器と、該電子楽器に接続された携帯オーディオプレイヤー9Aとの間で、所定の情報を送受信しながら並行して「制御処理」を行うことから、電子楽器及び携帯オーディオプレイヤー9Aでそれぞれ実行する処理を同時に示し、処理手順に従って説明する。電子楽器側の処理は、電子楽器本体の電源オンに応じて開始されるソフトウェアプログラムである。他方、携帯オーディオプレイヤー9A側の処理は、プレイヤー本体の電源オンに応じて開始されるソフトウェアプログラムであって、プログラム起動後は所定の待機状態にある。以下、図4〜図6に示したフローチャートに従って、「制御処理」について説明する。
【0031】
図4に示すように、まず、電子楽器は、携帯オーディオ接続インタフェース9を介して、本電子楽器に携帯オーディオプレイヤー9Aが接続されているかの接続チェックを行う(ステップS1)。ステップS2は、本電子楽器に携帯オーディオプレイヤー9Aが接続されるまで、上記接続チェックを繰り返し実行する。携帯オーディオプレイヤー9Aは電源オン状態で、携帯オーディオ接続インタフェース9を介して電子楽器本体に接続されていると、所定の応答信号を発することから(ステップK1)、電子楽器ではこの応答信号の受信に応じて、携帯オーディオプレイヤー9Aが接続されていることを認識するようになっている。ステップS3は、携帯オーディオ接続インタフェース9を介して接続されている携帯オーディオプレイヤー9Aに対して、プレイヤー毎に固有の機器番号(プレイヤーID等)や、該携帯オーディオプレイヤー9Aが記憶している全ての音楽コンテンツに関連する情報、例えば楽曲名などからなる音楽コンテンツリスト(記憶済み音楽コンテンツ一覧表)などの情報を送信するよう要求し(ステップS3)、携帯オーディオプレイヤー9Aから返信される該当の情報を受信する(ステップS4)。電子楽器本体に接続されている携帯オーディオプレイヤー9Aでは、上記情報送信を行うよう指示する要求(コマンド)を電子楽器から受信すると、該当する情報を電子楽器に対して返信する(ステップK2)。
【0032】
ステップS5は、携帯オーディオプレイヤー9Aから返信されたプレイヤーIDに基づき、本電子楽器に接続中の携帯オーディオプレイヤー9Aが今までに接続されたことのない新規のプレイヤーであるか否かを判定する。接続中の携帯オーディオプレイヤー9Aが今までに接続されたことのない新規のプレイヤーであると判定した場合には(ステップS5のYES)、本携帯オーディオプレイヤー9Aに対応するコンテンツ割り当て対応表(図2参照)を新規に作成する(ステップS10)。ここで、新規に作成するコンテンツ割り当て対応表は、予め決められた「割り当てルール」に従いデフォルト状態に作成される、あるいはユーザが後ほど(後述するステップS12参照)演奏操作子への音楽コンテンツの割り当てを全て任意に定義するための白紙状態(つまり、演奏操作子への割り当て状態が全く定義されていない状態)に作成される。前記「割り当てルール」としては、例えば、音楽コンテンツを割り当てる対象の鍵のうちの鍵盤の左側に位置する鍵から順に(言い換えると、押下操作に応じて発生される楽音の音高が低い順に)、コンテンツリストにおける上位の記載順に音楽コンテンツを割り当てる、など適宜のどのようなルールであってもよく、またユーザが任意に「割り当てルール」を定義できてよい。
【0033】
一方、接続中の携帯オーディオプレイヤー9Aが今までに接続されたことのない新規のプレイヤーでないと判定した場合、つまり過去に本電子楽器に接続されたことのある携帯オーディオプレイヤー9Aが再度接続された場合には(ステップS5のYES)、記憶済みの多数のコンテンツ割り当て対応表の中から、上記ステップS4において携帯オーディオプレイヤー9Aから受信したプレイヤーIDに対応するコンテンツ割り当て対応表を選択する(ステップS6)。ステップS7は、前記選択した「コンテンツ割り当て対応表」と、上記ステップS4において携帯オーディオプレイヤー9Aから受信した「コンテンツリスト」とを比較する。具体的には、コンテンツ割り当て対応表に定義されている音楽コンテンツが、携帯オーディオプレイヤー9Aから受信したコンテンツリストに全て記載されているかの不一致を判定するための比較を行う。ステップS8は、コンテンツ割り当て対応表とコンテンツリストとが不一致であるか否かを判定する。ここで、「コンテンツ割り当て対応表とコンテンツリストとが不一致である」とは、ある音楽コンテンツがコンテンツ割り当て対応表に定義されている一方で、コンテンツリストには記載されていない場合であって、コンテンツ割り当て対応表に定義されていない音楽コンテンツがコンテンツリストには記載されている場合は、「コンテンツ割り当て対応表とコンテンツリストとが不一致である」ことに該当しない。
【0034】
コンテンツ割り当て対応表とコンテンツリストとが不一致であると判定した場合には(ステップS8のYES)、「コンテンツ割り当て対応表とコンテンツリストとが不一致である」旨を、ディスプレイ6Aに表示するなどしてユーザに対して警告する(ステップS9)。他方、コンテンツ割り当て対応表とコンテンツリストとが不一致でないと判定した場合、つまりコンテンツ割り当て対応表に定義されている音楽コンテンツがコンテンツリストに全て記載されている場合には(ステップS8のNO)、コンテンツ割り当て対応表の編集指示が行われたか否かを判定する(ステップS11)。コンテンツ割り当て対応表の編集指示が行われたと判定した場合(ステップS11のYES)、あるいはコンテンツ割り当て対応表とコンテンツリストとが不一致であると判定されて、その旨を警告する処理が行われた後に(ステップS9参照)、コンテンツ割り当て対応表を編集するための編集処理を実行する(ステップS12)。この編集処理では、「コンテンツ割り当て対応表」(図2参照)に定義されている、音楽コンテンツを割り当てる対象とする演奏操作子、前記演奏操作子に割り当てるべき音楽コンテンツ、音楽コンテンツの再生態様について、ユーザがその内容を適宜に設定/変更することができる。
【0035】
図5に示すように、電子楽器は、ユーザによる演奏操作子のオン操作(例えば押鍵操作など)が行われたか否かを判定する(ステップS13)。ユーザによる演奏操作子のオン操作が行われたと判定した場合には(ステップS13のYES)、コンテンツ割り当て対応表に従って、該オン操作された演奏操作子に音楽コンテンツが割り当てられているか否かを判定する(ステップS14)。オン操作された演奏操作子に音楽コンテンツが割り当てられていると判定した場合には(ステップS14のYES)、バッファ内に該オン操作された演奏操作子に対応付けられた録音データ(音楽コンテンツの再生に応じて発生されるオーディオデータを録音したもの)が記憶されているか否かを判定する(ステップS15)。バッファ内に該オン操作された演奏操作子に対応付けられた録音データが記憶されていると判定した場合には(ステップS15のNO)、コンテンツ割り当て対応表に従って、該オン操作された演奏操作子に対応する再生態様に応じて、音量やリピート有無を決定し、バッファに記憶されている該当の録音データに基づきオーディオを再生開始する(ステップS24)。
【0036】
バッファ内に該オン操作された演奏操作子に対応付けられた録音データが記憶されていないと判定した場合には(ステップS15のYES)、コンテンツ割り当て対応表に従って、該オン操作された演奏操作子に対応する再生態様が「VEL(ベロシティ)」と定義されているか否かを判定する(ステップS16)。該オン操作された演奏操作子に対応する再生態様が「VEL(ベロシティ)」と定義されている場合には(ステップS16のYES)、携帯オーディオプレイヤー9Aに対して、音楽コンテンツ再生時に用いるべき音量として、前記オン操作された演奏操作子に対するキーオンベロシティに応じた音量を指示する(ステップS17)。該オン操作された演奏操作子に対応する再生態様が「VEL(ベロシティ)」と定義されていない場合には(ステップS16のNO)、携帯オーディオプレイヤー9Aに対して、音楽コンテンツ再生時に用いるべき音量として、デフォルト値の音量を指示する(ステップS18)。ステップS19は、コンテンツ割り当て対応表に従って、該オン操作された演奏操作子に対応する再生態様が「ゲート&リピート」と定義されているか否かを判定する。該オン操作された演奏操作子に対応する再生態様が「ゲート&リピート」と定義されている場合には(ステップS19のYES)、携帯オーディオプレイヤー9Aに対して、音楽コンテンツを繰り返し再生するよう1曲リピートを指示する(ステップS20)。該オン操作された演奏操作子に対応する再生態様が「ゲート&リピート」と定義されていない場合には(ステップS19のNO)、音楽コンテンツを繰り返し再生しないよう1曲リピートを解除するよう指示する(ステップS21)。
【0037】
ステップS22は、携帯オーディオプレイヤー9Aに対して、コンテンツ割り当て対応表に従って、該オン操作された演奏操作子に対応する音楽コンテンツの選択及び再生開始を指示する。携帯オーディオプレイヤー9Aは、電子楽器からの音楽コンテンツの選択及び再生開始の指示に従って、該当する音楽コンテンツの選択及び再生を開始する(ステップK3)。また、該当する音楽コンテンツの選択及び再生の開始に伴い、携帯オーディオプレイヤー9Aにおける音楽コンテンツ再生に係る動作状態を、電子楽器に対して報告する処理を開始する(ステップK4)。電子楽器は、携帯オーディオプレイヤー9Aにおける音楽コンテンツ再生処理に伴い、音楽コンテンツの再生に応じて発生されるオーディオ信号をオーディオデータとしてバッファに記録する処理を開始する(ステップS23)。
【0038】
図6に示すように、電子楽器は、ユーザによる演奏操作子のオフ操作(例えば離鍵操作など)が行われたか否かを判定する(ステップS25)。ユーザによる演奏操作子のオフ操作が行われたと判定した場合には(ステップS25のYES)、コンテンツ割り当て対応表に従って、該オフ操作された演奏操作子に音楽コンテンツが割り当てられているか否かを判定する(ステップS26)。オフ操作された演奏操作子に音楽コンテンツが割り当てられていると判定した場合には(ステップS26のYES)、バッファ内に該オフ操作された演奏操作子に対応付けられた録音データ(音楽コンテンツの再生に応じて発生されるオーディオデータを録音したもの)が記憶されているか否かを判定する(ステップS27)。
【0039】
バッファ内に該オフ操作された演奏操作子に対応付けられた録音データが記憶されていないと判定した場合には(ステップS27のYES)、コンテンツ割り当て対応表に従って、該オフ操作された演奏操作子に対応する再生態様に応じて、再生態様が「ゲート」である場合には再生中の音楽コンテンツの再生停止を携帯オーディオプレイヤー9Aに対して指示し、再生態様が「ワンショット」である場合には特に何らの処理も行わない(ステップS28)。一方、バッファ内に該オフ操作された演奏操作子に対応付けられた録音データが記憶されていると判定した場合には(ステップS27のNO)、コンテンツ割り当て対応表に従って、該オフ操作された演奏操作子に対応する再生態様に応じて、再生態様が「ゲート」である場合には再生中の録音データの再生を停止し、再生態様が「ワンショット」である場合には録音データの再生を継続する(ステップS29)。ステップS30は、「バッファの録音データの記録管理」を実行する。この「バッファの録音データの記録管理」は、演奏操作子の操作状態と、携帯オーディオプレイヤーからの再生停止やリピート再生等の動作状態の報告に応じて、バッファに対する異なる処理が実行される。
【0040】
ここで、「バッファの録音データの記録管理」(図6のステップS30)におけるバッファに対する異なる処理について、場合を分けて説明する。第1の場合として、1回分のデータ最後までの再生が終了する前に、他の演奏操作子が押鍵操作(キーオン操作)された場合には、「再生態様」が「ワンショット」、「ゲート」、「ゲート&リピート」のいずれの場合であっても、バッファに記録した録音データ(データ先頭から他の演奏操作子が操作された時点で再生中のデータまでに対応する分のオーディオデータである)をクリア(削除)する。すなわち、バッファへのオーディオデータの記録を失敗とみなし、バッファに記録された当該演奏操作子に対応づけて記録した録音データを削除する。第2の場合として、1回分のデータ最後までの再生が終了する前に、当該演奏操作子の離鍵操作(キーオフ操作)された場合には、「再生態様」が「ゲート」である場合のみ、バッファに記録した録音データ(データ先頭から他の演奏操作子が操作された時点で再生中のデータまでに対応する分のオーディオデータである)をクリア(削除)する。この場合も、バッファへのオーディオデータの記録を失敗とみなし、バッファに記録された当該演奏操作子に対応付けられた録音データを削除する。
【0041】
第3の場合として、1回分のデータ最後までの再生が終了した以降に、他の演奏操作子が押鍵操作(キーオン操作)された、あるいは当該演奏操作子の離鍵操作(キーオフ操作)された場合には、「再生態様」に関わらずバッファに記録した録音データをクリアすることなくそのまま残す。すなわち、バッファへのオーディオデータの記録が完了しているとみなし、バッファに記録された当該演奏操作子に対応付けられた録音データを残しておき、2回目以降の操作に応じて該記録した録音データを用いることができるようにする。なお、各演奏操作子に対応付けられてバッファに記録された録音データは、携帯オーディオプレイヤー内のコンテンツの著作権保護の観点から、電子楽器から本携帯オーディオプレイヤーが取り外された時点(1台のみ接続可能な場合)、他の携帯オーディオプレイヤーが接続された時点(複数台接続可能な場合)、あるいは電子楽器の電源がオフされた時点などにおいて全て消去されるのが好ましい。
【0042】
以上のようにして、「コンテンツ割り当て対応表」(図2参照)に基づき、電子楽器における任意の演奏操作子に対して、外部の携帯オーディオプレイヤーに記憶されている音楽コンテンツを割り当てることができ、該演奏操作子の操作に応じて割り当て済みの音楽コンテンツを選択・再生するよう、外部の携帯オーディオプレイヤーに対して指示を出し、携帯オーディオプレイヤーで再生した音楽コンテンツに基づくオーディオデータを電子楽器側で利用できるようにした(つまり、電子楽器側から携帯オーディオプレイヤーを制御して利用することができる)。これにより、ユーザは、前記音楽コンテンツを割り当てた演奏操作子を操作するだけで楽音を自動的に発生させることができるので、特に自らのマニュアル演奏(音楽コンテンツが割り当てられていない演奏操作子の操作)にあわせて伴奏や他のパートの楽音(携帯オーディオプレイヤー内の音楽コンテンツ)を容易に発生させることができ便利である。また、電子楽器に多数のオーディオデータ等を予め記憶しておくための大容量の記憶装置を備えていなくても、さらには、圧縮オーディオデータのエンコーダやデコーダ等の専用の再生機器(再生機能)が電子楽器に搭載されていなくても、ユーザは多数の音楽コンテンツを簡単に扱うことができるようになる。特に、ユーザは既に所有している携帯オーディオプレイヤーを取り替えるだけで、多数の音楽コンテンツを必要に応じて入れ替え利用することができるようになり、携帯オーディオプレイヤーを有効に活用することができる。
また、電子楽器に接続可能な携帯オーディオプレイヤーに対応した複数の「コンテンツ割り当て対応表」を予め用意しておき、電子楽器に接続された携帯オーディオプレイヤーを識別して、対応するプレイヤー用の「コンテンツ割り当て対応表」を特定するようにしたことから、ユーザが複数台の携帯オーディオプレイヤーを有している場合や、他者が所有する携帯オーディオプレイヤーを利用する場合などにも、適切に演奏操作子に対して音楽コンテンツを割り当てることができる。
【0043】
なお、上述した「コンテンツ割り当て対応表」(図2参照)において、外部の携帯オーディオプレイヤー9Aを制御する制御手段としての機能を割り当てる演奏操作子は上述した鍵盤を構成する各鍵のほか、ドラムパッドやフレーズ割り当て用の専用のパッドなど、楽音を発生するよう指示できるものであればどのようなものであってもよい。
なお、演奏操作子に割り当てる制御対象とする携帯オーディオプレイヤー9内に記憶されている音楽コンテンツは1曲分の楽曲に限らず、例えば1乃至複数小節程度の短い楽曲からなる音楽フレーズ、あるいは効果音など、どのようなものであってもよい。また、音楽コンテンツが1曲分又は音楽フレーズなどの場合、全てのパートの楽曲であってもよいし、一部パートの楽曲であってもよい。
【0044】
なお、コンテンツ割り当て対応表内に定義されている演奏操作子の中には、制御対象とする音楽コンテンツ及び再生態様を割り当てていないものがあってもよい。音楽コンテンツ及び再生態様が割り当てられていない演奏操作子が操作された場合には、予め割り当て済みの音高で通常の楽音を発生させてもよいし、なんらの楽音も発生させないようにしてもよい。また、コンテンツ割り当て対応表内に定義されている演奏操作子のうち、複数の演奏操作子に対して同じ音楽コンテンツを割り当ててもよい。その場合、再生態様は同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、所定の操作子(例えばフットスイッチ)の操作中のみコンテンツ割り当て機能を有効とし、前記所定の操作子の非操作中においてはコンテンツ割り当て対応表内に定義されている演奏操作子が操作されたとしても通常の楽音を発生させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明に係る電子楽器の全体構成を示したハード構成ブロック図である。
【図2】コンテンツ割り当て対応表の一実施例を示す概念図である。
【図3】携帯オーディオプレイヤーを制御する制御手段として使用できる演奏操作子が操作された際の制御フローを概念的に示すブロック図であり、図3(A)は1回目の操作が行われた場合、図3(B)は2回目以降の操作が行われた場合を示す。
【図4】制御処理における前半処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図5】制御処理における前半処理に後続する中盤処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図6】制御処理における中盤の処理に後続する後半処理の一実施例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
1…CPU、1A・・・タイマ、2…ROM、3…RAM、4,5…検出回路、4A…演奏操作子、5A…設定操作子、6…表示回路、6A…ディスプレイ、7…音源回路、8…ミキサー、8A…サウンドシステム、9・・・携帯オーディオ接続インタフェース、9A・・・携帯オーディオプレイヤー、10…外部記憶装置、11…MIDIインタフェース、11A…MIDI機器、12…通信インタフェース、12A…サーバコンピュータ、1D…通信バス、X…通信ネットワーク、A1・・・制御部、A2・・・読み書き部、A3・・・バッファ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの演奏操作を入力する演奏操作子と、
多数の音楽コンテンツを記憶し、該記憶した音楽コンテンツを再生する機能を少なくとも有するオーディオプレイヤーを接続する接続手段と、
前記接続されたオーディオプレイヤーに記憶済みの音楽コンテンツと前記演奏操作子とを関連付けた所定の割り当て対応表を記憶する記憶手段と、
前記演奏操作子に対する操作を検出する検出手段と、
前記演奏操作子に対する操作の検出に応じて、前記記憶手段に記憶した割り当て対応表に基づき、該操作された演奏操作子に割り当てられている音楽コンテンツを特定する特定手段と、
前記接続されたオーディオプレイヤーに記憶されている音楽コンテンツの中から、前記特定した音楽コンテンツを選択して再生するよう、前記オーディオプレイヤーに対して指示する指示手段と
を具える電子楽器。
【請求項2】
前記接続されたオーディオプレイヤーから、該オーディオプレイヤーが前記特定された音楽コンテンツを再生することにより生成されるオーディオ信号を取得し、該取得したオーディオ信号をオーディオデータとして記憶するメモリを有してなり、
前記検出手段が同じ演奏操作子に対する2回目以降の操作を検出した場合に、前記指示手段は、前記メモリに記憶した操作を検出した演奏操作子に割り当てられている音楽コンテンツに対応するオーディオデータを読み出して再生するよう制御することを特徴とする請求項1に記載の電子楽器。
【請求項3】
前記記憶手段は、前記接続手段に接続可能な複数種類のオーディオプレイヤー毎に対応付けて複数の割り当て対応表を記憶してなり、前記接続手段に接続されたオーディオプレイヤーの種類を識別し、該識別したオーディオプレイヤーに対応付けられた割り当て対応表を選択する選択手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の電子楽器。
【請求項4】
コンピュータに、
多数の音楽コンテンツを記憶し、該記憶した音楽コンテンツを再生する機能を少なくとも有するオーディオプレイヤーを接続する手順と、
前記接続されたオーディオプレイヤーに記憶済みの音楽コンテンツと、ユーザの演奏操作を入力する演奏操作子とを関連付けた所定の割り当て対応表を記憶手段に記憶する手順と、
前記演奏操作子に対する操作を検出する手順と、
前記演奏操作子に対する操作の検出に応じて、前記記憶手段に記憶した割り当て対応表に基づき、該操作された演奏操作子に割り当てられている音楽コンテンツを特定する手順と、
前記接続されたオーディオプレイヤーに記憶されている音楽コンテンツの中から、前記特定した音楽コンテンツを選択して再生するよう、前記オーディオプレイヤーに対して指示する手順と
を実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−176117(P2008−176117A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10301(P2007−10301)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】