電子楽音発生装置及びコンピュータプログラム
【課題】楽器編成や演奏スタイルが変わるたびに定位情報の設定を最初からやり直す手間を不要にして、楽器編成や演奏スタイルに応じて簡単に定位情報を変更できるようにする。
【解決手段】複数の音色を選択的に発音可能な音色系列を複数備えた電子楽音発生装置に、上記複数の音色系列毎に複数の楽音の空間定位情報をプリセットして記憶媒体に保持しておくようにすることにより、楽器編成や演奏スタイルが変わるたびに、各音色毎の定位情報をその都度設定しなくても済むようにする。
【解決手段】複数の音色を選択的に発音可能な音色系列を複数備えた電子楽音発生装置に、上記複数の音色系列毎に複数の楽音の空間定位情報をプリセットして記憶媒体に保持しておくようにすることにより、楽器編成や演奏スタイルが変わるたびに、各音色毎の定位情報をその都度設定しなくても済むようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子楽音発生装置及びコンピュータプログラムに関し、特に、選択的に発音可能な音色系列を複数備えた電子オルガンに用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子オルガンにおいては、各音色毎に定位情報を備えている。そして、この定位情報と、発音する際に別途定められた音色系列毎の定位情報とを演算して空間定位を決定するようにしている。
【0003】
複数の音色を重ねて発音することができる電子オルガンのパンニング処理に関する技術は、例えば、特許文献1にて提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002―175074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1において提案されているパンニング変更方法の場合には、楽器編成や演奏スタイルが変わるたびに、各音色毎の定位情報をその都度設定しなければならない。定位情報を設定する場合には、音色毎に数値的に設定しなければならないので、定位情報の設定作業が非常に煩雑である不都合が生じていた。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑み、楽器編成や演奏スタイルが変わるたびに定位情報の設定を最初からやり直す手間を不要にして、楽器編成や演奏スタイルに応じて簡単に定位情報を変更できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子楽音発生装置は、複数の音色を選択的に発音可能な音色系列を複数備えた電子楽音発生装置において、上記複数の音色系列毎に複数の楽音の空間定位情報がプリセットされて記憶媒体に保持されていることを特徴とする。
また、本発明の電子楽音発生装置の他の特徴とするところは、複数の音色を選択的に発音可能な音色系列を複数備えた電子楽音発生装置において、上記音色系列毎に発音される楽音の空間定位情報を第1の記憶媒体に記憶する第1の記憶手段と、上記第1の記憶媒体に記憶された楽音の空間定位情報に応じて、上記音色系列で発音される楽音の空間定位を設定する設定手段と、上記音色毎に予め設定された上記楽音の空間定位情報の複数セットを第2の記憶媒体に記憶する第2の記憶手段と、上記楽音の空間定位情報を切り替えるための切替情報を発生する情報発生手段と、上記情報発生手段が発生する切替情報に応じて、上記複数セットの楽音の空間定位情報のうちの一つを選択する選択手段と、上記選択手段により選択された上記楽音の空間定位情報のうち、上記音色系列で発音中の音色に対応する定位情報を上記第1の記憶媒体に転送する転送手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明のコンピュータプログラムは、複数の音色を選択的に発音可能な音色系列を複数備えた電子楽音発生装置を制御するコンピュータプログラムにおいて、上記音色系列毎に発音される楽音の空間定位情報を第1の記憶媒体に記憶する第1の記憶工程と、上記第1の記憶媒体に記憶された楽音の空間定位情報に応じて、上記音色系列で発音される楽音の空間定位を設定する設定工程と、上記音色毎に予め設定された上記楽音の空間定位情報の複数セットを第2の記憶媒体に記憶する第2の記憶工程と、上記楽音の空間定位情報を切り替えるための切替情報を発生する情報発生工程と、上記情報発生工程において発生される切替情報に応じて、上記複数セットの楽音の空間定位情報のうちの一つを選択する選択工程と、上記選択工程において選択された上記楽音の空間定位情報のうち、上記音色系列で発音中の音色に対応する定位情報を上記第1の記憶媒体に転送する転送工程とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、楽器編成や演奏スタイルが変わるたびに定位情報の設定を最初からやり直す手間を不要にすることができ、楽器編成や演奏スタイルに応じた定位情報の変更を簡単にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の電子オルガンの実施形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明を適用した電子オルガンの実施形態の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の電子オルガン100は、CPU101、プログラムROM102、プログラムRAM103より構成されるコンピュータシステムを備えている。
また、インタフェース(I/F)104を介して外部音源112と各種の情報を授受することが可能に構成されている。
【0012】
また、トーンジェネレータ(T.G:音源回路)105、波形メモリ106、DSP107、遅延メモリ108を有している。トーンジェネレータ105は、CPU101からの制御信号に従って、音源波形データ及びエンベロープデータを波形メモリ106から読み出し、この読み出した音源波形データにエンベロープデータを付加することによって、原音となる楽音信号を生成する。また、DSP107は、トーンジェネレータ105によって生成された楽音信号に所定の音響効果を付加する。
【0013】
DSP107によって所定の音響効果を付加された楽音信号は、D/A変換器(DAC)109によってデジタル信号からアナログ信号に変換される。パワーアンプ(Amp)110は、D/A変換器109によって変換されたアナログ信号を所定の利得で増幅する。スピーカ111は、パワーアンプ110によって増幅されたアナログ信号を再生し、楽音として放音する。
【0014】
また、各鍵スイッチを有するキーボード113、及び操作パネル114を備えている。操作パネル114は、本実施形態の電子オルガンでは、表示装置として、例えばLCD(Liquid Crystal Display;液晶ディスプレイ)が操作パネル114に設けられている。
【0015】
図2に、操作パネル114に設けられている表示装置200の一例を示す。この表示装置200は、ほぼ中央に表示部201が設けられており、この表示部201の周囲に操作スイッチ類202が配置されている。
【0016】
前記操作スイッチ類202としては、例えば、電子オルガンに電源を供給するための電源スイッチや、電子オルガンの設定状態を初期値にリセットするためのリセットスイッチや、テンポや音量を設定するためのダイアルや、音色を選択するための音色選択スイッチが設けられている。
【0017】
また、前記操作スイッチ類202として、レジストレーションの記憶を行うためのRegist設定スイッチや、設定したレジストレーションを呼び出すためのRegistボタンが設けられている。なお、レジストレーションとは、ユーザが鍵盤(図示せず)を押鍵及び離鍵して行う演奏時の設定を言う。ここで、演奏時の設定は、操作パネル114や鍵盤の操作内容に基づいて行われるものであり、例えば、音色、伴奏、テンポ、及び演奏効果(音色に変化を与えること)等が設定項目となる。
【0018】
特に、本実施形態においては、複数の音色毎に複数の空間定位(パンニング)の情報をプリセットしたり、プリセットした複数の空間定位の情報を記憶媒体に保持したりするための操作スイッチ類202が備えられている。
【0019】
パンニングの情報は、ステレオのL側出力とR側出力の配分を指定するためのパラメータである。このパンニング情報にはラウドネスに関するパラメータも含まれる。このラウドネスに関するパラメータは、通常音高範囲に対しては少なくとも2つのチャンネルのパラメータが設定され、特定音高範囲に対しては1つのチャンネルのパラメータが設定される。
【0020】
パンニングによるローカライゼイション(位置の認識)とラウドネス(音量)は、音源がどのくらい遠くに位置するかを認識するための手がかりの一つとなる。各々の耳におけるサウンドの相対的なラウドネスは、サウンドがどの方向に位置するかを認識する手がかりになる。
【0021】
MIDIでは、パンニングは通常0から127までの1つの値によってコントロールされる。どちらの場合も、各々のチャンネルの様々な中間位置での明確な振幅は多くの異なった方法で計算できるにも関わらず、1つの連続した値が2つのステレオチャンネルの間のバランスを記述するために使用される。
【0022】
他のすべての要素が同じであるとき、小さなサウンドはより大きなサウンドより遠くにあるように感じられるため、(複数の)チャンネルの関連づけによって作り出される全体的な音の大きさの効果は、距離に関しての重要な要素となる。本実施形態においては、このような重要な演奏要素であるパンニングを、複数の音色毎にプリセットされて記憶媒体に保持している。
【0023】
図2に示した表示装置200の右側には、「上部スペシャル(減衰音系)(Upper Spec」、「上部オーケストラ(持続音系)(Upper Orch)」、「ペダルスペシャル(Pedal Spec)」を選択可能となっている。また、表示装置200の左側には、「下部スペシャル(Lower Spec)」、「下部オーケストラ(Lower Orch)、「ペダルオーケストラ(Pedal Orch)」を選択可能となっている。また、上部及び下部スペシャルの選択項目には、「ピアノグループ」、「オルガングループ」、「ギターグループ」の音色系列を選択可能となっており、上部及び下部オーケストラの選択項目には、「ブラスグループ」、「ストリングスグループ」、「ウッドウイング」の音色系列を選択可能となっている。
【0024】
本実施形態の電子オルガンでは、これらの音色系列毎に複数の空間定位の情報をプリセットして記憶媒体に保持できるようにしている。表示部201には、グループのパン編集を行っている様子を表示しており、「ピアノグループは(L37)」、「オルガングループは(R44)」、「ギターグループは(L03)」、「ブラスグループは(L37)」に編集されている。
【0025】
次に、図3〜図9のフローチャートを参照しながら本実施形態の電子オルガンで行う処理内容の一例を説明する。
図3は、メイン処理の概略を説明するフローチャートである。
処理が開始されると、ステップS301で初期化が行われる。次に、ステップS302においてイベントの発生有無が判断される。この判断の結果、イベント発生が有った場合にはステップS303に進んでイベント処理が行われる。また、ステップS302の判断の結果、イベント発生でなかった場合にはステップS304に進んで非イベント処理が行われる。
【0026】
ステップS303またはステップS304の処理が終了するとステップS305において終了の判断が行われる。この判断の結果、処理を終了しない場合にはステップS302に戻って上述した処理を繰り返し行う。また、ステップS305の判断の結果、終了の場合には処理を終了する。
【0027】
次に、図4のフローチャートを参照しながらプリセット選択処理の概略を説明する。
処理が開始されると、ステップS41においてプリセット番号を取得する。次に、ステップS42に進んで、ループ変数i=0にする処理が行われる。
【0028】
次に、ステップS43において、アドレスADDR[i]に音色数p[x][i]を転送する処理を行う。
次に、ステップS44においてループ変数iを「i+1」し、音色数の一致を判断する。この判断の結果、一致しなければステップS43に戻って上述した処理を繰り返し行う。また、一致した場合にはこのプリセット選択処理のルーチンを抜ける。
【0029】
次に、図5のフローチャートを参照しながら、イベント処理の概略を説明する。
ステップS51において鍵盤イベントか判断する。この判断の結果、鍵盤イベントであった場合には鍵盤処理を行う(ステップS52)。鍵盤処理の詳細は後述する。
【0030】
また、ステップS51の判断の結果、鍵盤イベントではなかった場合にはステップS53に進み、パネルイベントであるか判断する。この判断の結果、パネルイベントであった場合にはステップS54に進み、パネル処理を行う。パネル処理の詳細は後述する。
【0031】
ステップS53の判断の結果、パネル処理ではなかった場合にはステップS55に進み、外部処理か判断する。この判断の結果、外部処理であった場合にはステップS56に進み、外部処理を行う。また、ステップS55の判断の結果、外部処理ではなかった場合にはステップS57に進み、例えば、タイマー割り込み等のその他の処理を行う。
【0032】
次に、図6を参照しながら鍵盤処理の概略を説明する。
まず、ステップS61において押鍵か否かを判断する。この判断の結果、押鍵であった場合にはステップS62に進み、押された鍵に対応する音を割り当てるキーアサイン処理を行う。
【0033】
次に、ステップS63に進み、発音パラメータをセットする処理を行う。これは、音色系列毎の振幅エンベロープを構成する値をセットする処理である。
次に、ステップS64に進み、操作された鍵に応じて所定の音像が得られるようにするためのパンニング処理を行う。パンニング処理の詳細は後述するが、音色番号分だけ進んだ位置の値をパン値としてトーンジェネレータ105に転送する処理が行われる。
【0034】
一方、ステップS61の判断の結果、イベントが押鍵イベントではなかった場合にはステップS65に進み、トーンジェネレータ105の発音系列から消音するものを検索する系列スキャン処理を行う。次に、ステップS66に進み、消音パラメータをトーンジェネレータ105に転送する消音パラメータセット処理を行う。
【0035】
次に、図7のフローチャートを参照しながらパネル処理の概略を説明する。
処理が開始されると、ステップS71においてグループパン編集か否かを判断する。この判断の結果、グループパン編集であった場合にはステップS72に進み、グループパン編集処理を行う。グループパン編集処理の詳細は後述する。
【0036】
一方、ステップS71の判断の結果、グループパン編集ではなかった場合にはステップS73に進み、グループパンプリセット編集処理か否かを判断する。この判断の結果、グループパンプリセット編集処理であった場合にはステップS74に進み、グループパンプリセット編集処理を行う。グループパンプリセット編集処理の詳細は後述する。
【0037】
一方、ステップS73の判断の結果、グループパンプリセット編集処理ではなかった場合にはステップS75に進み、プリセット選択処理か否かを判断する。この判断の結果、プリセット選択処理であった場合にはステップS76に進み、プリセット選択処理を行う。また、ステップS75の判断の結果、イベントがプリセット選択ではなかった場合にはステップS77に進み、他のパネル処理を行う。
【0038】
次に、図8のフローチャートを参照しながらグループパン編集処理の概略を説明する。
まず、ステップS81において音色グループ番号を取得する(GNo←GrpNo)。次に、ステップS82に進み、ループ変数を初期化する(i←0)。
【0039】
次に、ステップS83において、音色グループ番号iの番号確認を行う。この確認の結果、一致していた場合、すなわち、「i=0」であった場合にはステップS84に進み、「プリセット0」のi番目を入力パン値に書き替える編集処理を行う。その後、ステップS85に進む。また、ステップS83の番号確認の結果、非一致の場合には直接ステップS85に進む。
【0040】
ステップS85においては、iの値を1つインクリメントして音色グループ数との一致確認を行う。この結果、一致しなければステップS83に戻って上述した処理を繰り返し行う。また、ステップS85の確認の結果、一致したらループを抜けてリターンする。
【0041】
次に、図9のフローチャートを参照しながらグループパンプリセット編集の概略を説明する。
まず、ステップS91でプリセット番号を取得する(p←pNo)。次に、ステップS92に進み、音色グループ番号を取得する(GNo←GrpNo)。次に、ステップS93に進み、ループ変数を初期化する(i←0)。
【0042】
次に、ステップS94において、音色グループ番号iの番号確認を行う。この確認の結果、一致していた場合、すなわち、「i=0」であった場合にはステップS95に進み、「プリセットp」のi番目を入力パン値に書き替えるプリセット編集処理を行う。その後、ステップS96に進む。また、ステップS94の番号確認の結果、非一致の場合には直接ステップS96に進む。
【0043】
ステップS96においては、ループ変数iの値を1つインクリメントして音色グループ数との一致確認を行う。この確認の結果、一致しなければステップS94に戻って上述した処理を繰り返し行う。また、ステップS96の確認の結果、一致したらループを抜けてリターンする。
【0044】
次に、図10を参照しながら本実施形態の電子楽音発生装置における発音データ構造の一例を説明する。
図10(a)は、音色データ構造を示している。図10(a)において、「音色:音色グループ」、「WNo:波形番号」、「FNo:周波数番号」、「ALev:アタックレベル」、「ASpd:アタックスピード」、「DLev:減衰レベル」、「DSpd:減衰スピード」、「RLev:リリースレベル」、「RSpd:リリーススピード」、「Loud:音量」、「GNo:グループ番号(Panのグループ番号)」をそれぞれ示している。
【0045】
また、図10(b)は、Pan Presetデータの構造例を示している。ここでは、「Pre1」、「Pre2」、「Pre3」、「Def」の4つの演奏形態を示している。そして、音色グループ「Pf.1」には、「Pre1:13−L」、「Pre2:25−L」、「Pre3:33―R」、「Def:0」がプリセットされている。また、音色グループ「Pf.2」にも同様に、「Pre1:13−L」、「Pre2:25−L」、「Pre3:33―R」、「Def:0」がプリセットされている。これらのPan Presetデータは第2の記憶媒体に記憶されて保持されていて、発音されるときに第1の記憶媒体に転送(ロード)される。
【0046】
図10(c)は、入力パン値に対応する音色グループのプリセット値が第1の記憶媒体に格納された状態を示している。そして、上述したグループパン編集処理、グループパンプリセット編集処理に応じて、図10(c)に保持される値が書き替えられる。なお、図10(a)〜(c)のパン値データは、プログラムRAM103に格納されているが、これらのデータを保持する記憶媒体を独立に設けてもよい。
【0047】
次に、図11を参照しながら本実施形態において、記憶媒体にプリセットされている空間定位情報の一例を説明する。
図11(a)は、「Big Band Jazz設定」の一例を示している。この例の場合は、中央から左側方向にベースグループがプリセットされている。また、その更に左側方向にピアノグループがプリセットされている。
【0048】
また、中央から右側方向にはリズムグループがプリセットされている。また、その右側にブラスグループがプリセットされている。また、更にその右側にウッドウインドグループがプリセットされている。なお、図11において、MIDIでは、通常は左側L〜右側Rとの間のパンニングを0〜127までの1つの値によってコントロールするようにしている。
【0049】
図11(b)は、「Rock Combo設定」の一例を示している。この例の場合は、中央から左側方向にリズムグループがプリセットされている。また、その更に左側方向にギターグループがプリセットされている。また、中央から右側方向にはベースグループがプリセットされている。また、その右側にオルガングループがプリセットされている。
【0050】
図11(c)は、「クラシック設定(1)」の一例を示している。この例の場合は、中央から左側方向にブラスグループがプリセットされている。また、その更に左側方向にビオラグループがプリセットされている。更に、その左側方向には「バイオリングループ」がプリセットされている。また、中央から右側方向にはウッドウインドグループ、チェログループ、ベースグループが順番にプリセットされている。
【0051】
図11(d)は、「クラシック設定(2)」の一例を示している。この例の場合は、中央から左側方向にチェログループがプリセットされている。また、その更に左側方向にバイオリングループがプリセットされている。また、中央から右側方向にはビオラグループ、ベースグループが順番にプリセットされている。
【0052】
上述した図11(a)〜(d)の空間定位情報のプリセット例は一例であり、種々の状態で空間定位情報をプリセットすることが可能である。また、上述したように、プリセットした位置を自由に編集することができるので、ユーザが好みの演奏状態を自由に設定することができる。
【0053】
また、操作スイッチ類202を操作することにより、自動割り振りをオフにすることもできる。さらに、通常は使用しないと思われる楽器についても定位位置を適当にし、発音量をオフにしてプリセットしておいてもよい。このようにすれば、通常の演奏状態においては使用しない楽器を用いた演奏をシミュレートすることが可能となる。
【0054】
図12は、複数の音色を選択的に発音可能な音色系列を複数備えた電子楽音発生装置において、音色系列毎に発音される楽音の空間定位情報をプリセットする様子を概略的に説明する図である。
【0055】
図12に示したように、本実施形態においては、電子オルガンにおいて楽音を発生する構成を、「第1階層:アッパー(ロー、ペダル)」、「第2階層:スペシャル、オーケストラ」「第3階層:音色系列(音色グループ)」、「第4階層:音色」のように4つの階層に分けて、符号1200を付しているように、「第3階層:音色系列」毎に発音される音色の空間定位情報をプリセットしたものである。
【0056】
(本発明の他の実施形態)
上述した実施形態の機能を実現するべく各種のデバイスを動作させるように、上記各種デバイスと接続された装置あるいはシステム内のコンピュータに対し、上記実施形態の機能を実現するためのソフトウェアのプログラムコードを供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(CPUあるいはMPU)に格納されたプログラムに従って上記各種デバイスを動作させることによって実施したものも、本発明の範疇に含まれる。
【0057】
また、この場合、上記ソフトウェアのプログラムコード自体が上述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、およびそのプログラムコードをコンピュータに供給するための手段、例えば、かかるプログラムコードを格納した記録媒体は本発明を構成する。かかるプログラムコードを記録する記録媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0058】
また、コンピュータが供給されたプログラムコードを実行することにより、上述の実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)あるいは他のアプリケーションソフト等と共同して上述の実施形態の機能が実現される場合にもかかるプログラムコードは本発明の実施形態に含まれる。
【0059】
さらに、供給されたプログラムコードがコンピュータの機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに格納された後、そのプログラムコードの指示に基づいてその機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した実施形態の機能が実現される場合にも本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態を示し、電子オルガンの構成例を示すブロック図である。
【図2】操作パネルに設けられている表示装置の一例を示す図である。
【図3】メイン処理の概略を説明するフローチャートである。
【図4】プリセット選択処理の概略を説明するフローチャートである。
【図5】イベント処理の概略を説明するフローチャートである。
【図6】鍵盤処理の概略を説明するフローチャートである。
【図7】パネル処理の概略を説明するフローチャートである。
【図8】グループパン編集処理の概略を説明するフローチャートである。
【図9】グループパンプリセット編集の概略を説明するフローチャートである。
【図10】電子楽音発生装置における発音データ構造の一例を説明する図である。
【図11】記憶媒体にプリセットされている空間定位情報の一例を説明する図である。
【図12】音色系列毎に発音される楽音の空間定位情報をプリセットする様子を概略的に説明する図である。
【符号の説明】
【0061】
100 電子オルガン
101 CPU
102 プログラムROM
103 プログラムRAM
104 インタフェース
105 トーンジェネレータ
106 波形メモリ
107 DSP
108 遅延メモリ
109 D/A変換器(DAC)
110 パワーアンプ
111 スピーカ
112 外部音源
113 キーボード
114 操作パネル
【技術分野】
【0001】
本発明は電子楽音発生装置及びコンピュータプログラムに関し、特に、選択的に発音可能な音色系列を複数備えた電子オルガンに用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子オルガンにおいては、各音色毎に定位情報を備えている。そして、この定位情報と、発音する際に別途定められた音色系列毎の定位情報とを演算して空間定位を決定するようにしている。
【0003】
複数の音色を重ねて発音することができる電子オルガンのパンニング処理に関する技術は、例えば、特許文献1にて提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002―175074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1において提案されているパンニング変更方法の場合には、楽器編成や演奏スタイルが変わるたびに、各音色毎の定位情報をその都度設定しなければならない。定位情報を設定する場合には、音色毎に数値的に設定しなければならないので、定位情報の設定作業が非常に煩雑である不都合が生じていた。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑み、楽器編成や演奏スタイルが変わるたびに定位情報の設定を最初からやり直す手間を不要にして、楽器編成や演奏スタイルに応じて簡単に定位情報を変更できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子楽音発生装置は、複数の音色を選択的に発音可能な音色系列を複数備えた電子楽音発生装置において、上記複数の音色系列毎に複数の楽音の空間定位情報がプリセットされて記憶媒体に保持されていることを特徴とする。
また、本発明の電子楽音発生装置の他の特徴とするところは、複数の音色を選択的に発音可能な音色系列を複数備えた電子楽音発生装置において、上記音色系列毎に発音される楽音の空間定位情報を第1の記憶媒体に記憶する第1の記憶手段と、上記第1の記憶媒体に記憶された楽音の空間定位情報に応じて、上記音色系列で発音される楽音の空間定位を設定する設定手段と、上記音色毎に予め設定された上記楽音の空間定位情報の複数セットを第2の記憶媒体に記憶する第2の記憶手段と、上記楽音の空間定位情報を切り替えるための切替情報を発生する情報発生手段と、上記情報発生手段が発生する切替情報に応じて、上記複数セットの楽音の空間定位情報のうちの一つを選択する選択手段と、上記選択手段により選択された上記楽音の空間定位情報のうち、上記音色系列で発音中の音色に対応する定位情報を上記第1の記憶媒体に転送する転送手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明のコンピュータプログラムは、複数の音色を選択的に発音可能な音色系列を複数備えた電子楽音発生装置を制御するコンピュータプログラムにおいて、上記音色系列毎に発音される楽音の空間定位情報を第1の記憶媒体に記憶する第1の記憶工程と、上記第1の記憶媒体に記憶された楽音の空間定位情報に応じて、上記音色系列で発音される楽音の空間定位を設定する設定工程と、上記音色毎に予め設定された上記楽音の空間定位情報の複数セットを第2の記憶媒体に記憶する第2の記憶工程と、上記楽音の空間定位情報を切り替えるための切替情報を発生する情報発生工程と、上記情報発生工程において発生される切替情報に応じて、上記複数セットの楽音の空間定位情報のうちの一つを選択する選択工程と、上記選択工程において選択された上記楽音の空間定位情報のうち、上記音色系列で発音中の音色に対応する定位情報を上記第1の記憶媒体に転送する転送工程とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、楽器編成や演奏スタイルが変わるたびに定位情報の設定を最初からやり直す手間を不要にすることができ、楽器編成や演奏スタイルに応じた定位情報の変更を簡単にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の電子オルガンの実施形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明を適用した電子オルガンの実施形態の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の電子オルガン100は、CPU101、プログラムROM102、プログラムRAM103より構成されるコンピュータシステムを備えている。
また、インタフェース(I/F)104を介して外部音源112と各種の情報を授受することが可能に構成されている。
【0012】
また、トーンジェネレータ(T.G:音源回路)105、波形メモリ106、DSP107、遅延メモリ108を有している。トーンジェネレータ105は、CPU101からの制御信号に従って、音源波形データ及びエンベロープデータを波形メモリ106から読み出し、この読み出した音源波形データにエンベロープデータを付加することによって、原音となる楽音信号を生成する。また、DSP107は、トーンジェネレータ105によって生成された楽音信号に所定の音響効果を付加する。
【0013】
DSP107によって所定の音響効果を付加された楽音信号は、D/A変換器(DAC)109によってデジタル信号からアナログ信号に変換される。パワーアンプ(Amp)110は、D/A変換器109によって変換されたアナログ信号を所定の利得で増幅する。スピーカ111は、パワーアンプ110によって増幅されたアナログ信号を再生し、楽音として放音する。
【0014】
また、各鍵スイッチを有するキーボード113、及び操作パネル114を備えている。操作パネル114は、本実施形態の電子オルガンでは、表示装置として、例えばLCD(Liquid Crystal Display;液晶ディスプレイ)が操作パネル114に設けられている。
【0015】
図2に、操作パネル114に設けられている表示装置200の一例を示す。この表示装置200は、ほぼ中央に表示部201が設けられており、この表示部201の周囲に操作スイッチ類202が配置されている。
【0016】
前記操作スイッチ類202としては、例えば、電子オルガンに電源を供給するための電源スイッチや、電子オルガンの設定状態を初期値にリセットするためのリセットスイッチや、テンポや音量を設定するためのダイアルや、音色を選択するための音色選択スイッチが設けられている。
【0017】
また、前記操作スイッチ類202として、レジストレーションの記憶を行うためのRegist設定スイッチや、設定したレジストレーションを呼び出すためのRegistボタンが設けられている。なお、レジストレーションとは、ユーザが鍵盤(図示せず)を押鍵及び離鍵して行う演奏時の設定を言う。ここで、演奏時の設定は、操作パネル114や鍵盤の操作内容に基づいて行われるものであり、例えば、音色、伴奏、テンポ、及び演奏効果(音色に変化を与えること)等が設定項目となる。
【0018】
特に、本実施形態においては、複数の音色毎に複数の空間定位(パンニング)の情報をプリセットしたり、プリセットした複数の空間定位の情報を記憶媒体に保持したりするための操作スイッチ類202が備えられている。
【0019】
パンニングの情報は、ステレオのL側出力とR側出力の配分を指定するためのパラメータである。このパンニング情報にはラウドネスに関するパラメータも含まれる。このラウドネスに関するパラメータは、通常音高範囲に対しては少なくとも2つのチャンネルのパラメータが設定され、特定音高範囲に対しては1つのチャンネルのパラメータが設定される。
【0020】
パンニングによるローカライゼイション(位置の認識)とラウドネス(音量)は、音源がどのくらい遠くに位置するかを認識するための手がかりの一つとなる。各々の耳におけるサウンドの相対的なラウドネスは、サウンドがどの方向に位置するかを認識する手がかりになる。
【0021】
MIDIでは、パンニングは通常0から127までの1つの値によってコントロールされる。どちらの場合も、各々のチャンネルの様々な中間位置での明確な振幅は多くの異なった方法で計算できるにも関わらず、1つの連続した値が2つのステレオチャンネルの間のバランスを記述するために使用される。
【0022】
他のすべての要素が同じであるとき、小さなサウンドはより大きなサウンドより遠くにあるように感じられるため、(複数の)チャンネルの関連づけによって作り出される全体的な音の大きさの効果は、距離に関しての重要な要素となる。本実施形態においては、このような重要な演奏要素であるパンニングを、複数の音色毎にプリセットされて記憶媒体に保持している。
【0023】
図2に示した表示装置200の右側には、「上部スペシャル(減衰音系)(Upper Spec」、「上部オーケストラ(持続音系)(Upper Orch)」、「ペダルスペシャル(Pedal Spec)」を選択可能となっている。また、表示装置200の左側には、「下部スペシャル(Lower Spec)」、「下部オーケストラ(Lower Orch)、「ペダルオーケストラ(Pedal Orch)」を選択可能となっている。また、上部及び下部スペシャルの選択項目には、「ピアノグループ」、「オルガングループ」、「ギターグループ」の音色系列を選択可能となっており、上部及び下部オーケストラの選択項目には、「ブラスグループ」、「ストリングスグループ」、「ウッドウイング」の音色系列を選択可能となっている。
【0024】
本実施形態の電子オルガンでは、これらの音色系列毎に複数の空間定位の情報をプリセットして記憶媒体に保持できるようにしている。表示部201には、グループのパン編集を行っている様子を表示しており、「ピアノグループは(L37)」、「オルガングループは(R44)」、「ギターグループは(L03)」、「ブラスグループは(L37)」に編集されている。
【0025】
次に、図3〜図9のフローチャートを参照しながら本実施形態の電子オルガンで行う処理内容の一例を説明する。
図3は、メイン処理の概略を説明するフローチャートである。
処理が開始されると、ステップS301で初期化が行われる。次に、ステップS302においてイベントの発生有無が判断される。この判断の結果、イベント発生が有った場合にはステップS303に進んでイベント処理が行われる。また、ステップS302の判断の結果、イベント発生でなかった場合にはステップS304に進んで非イベント処理が行われる。
【0026】
ステップS303またはステップS304の処理が終了するとステップS305において終了の判断が行われる。この判断の結果、処理を終了しない場合にはステップS302に戻って上述した処理を繰り返し行う。また、ステップS305の判断の結果、終了の場合には処理を終了する。
【0027】
次に、図4のフローチャートを参照しながらプリセット選択処理の概略を説明する。
処理が開始されると、ステップS41においてプリセット番号を取得する。次に、ステップS42に進んで、ループ変数i=0にする処理が行われる。
【0028】
次に、ステップS43において、アドレスADDR[i]に音色数p[x][i]を転送する処理を行う。
次に、ステップS44においてループ変数iを「i+1」し、音色数の一致を判断する。この判断の結果、一致しなければステップS43に戻って上述した処理を繰り返し行う。また、一致した場合にはこのプリセット選択処理のルーチンを抜ける。
【0029】
次に、図5のフローチャートを参照しながら、イベント処理の概略を説明する。
ステップS51において鍵盤イベントか判断する。この判断の結果、鍵盤イベントであった場合には鍵盤処理を行う(ステップS52)。鍵盤処理の詳細は後述する。
【0030】
また、ステップS51の判断の結果、鍵盤イベントではなかった場合にはステップS53に進み、パネルイベントであるか判断する。この判断の結果、パネルイベントであった場合にはステップS54に進み、パネル処理を行う。パネル処理の詳細は後述する。
【0031】
ステップS53の判断の結果、パネル処理ではなかった場合にはステップS55に進み、外部処理か判断する。この判断の結果、外部処理であった場合にはステップS56に進み、外部処理を行う。また、ステップS55の判断の結果、外部処理ではなかった場合にはステップS57に進み、例えば、タイマー割り込み等のその他の処理を行う。
【0032】
次に、図6を参照しながら鍵盤処理の概略を説明する。
まず、ステップS61において押鍵か否かを判断する。この判断の結果、押鍵であった場合にはステップS62に進み、押された鍵に対応する音を割り当てるキーアサイン処理を行う。
【0033】
次に、ステップS63に進み、発音パラメータをセットする処理を行う。これは、音色系列毎の振幅エンベロープを構成する値をセットする処理である。
次に、ステップS64に進み、操作された鍵に応じて所定の音像が得られるようにするためのパンニング処理を行う。パンニング処理の詳細は後述するが、音色番号分だけ進んだ位置の値をパン値としてトーンジェネレータ105に転送する処理が行われる。
【0034】
一方、ステップS61の判断の結果、イベントが押鍵イベントではなかった場合にはステップS65に進み、トーンジェネレータ105の発音系列から消音するものを検索する系列スキャン処理を行う。次に、ステップS66に進み、消音パラメータをトーンジェネレータ105に転送する消音パラメータセット処理を行う。
【0035】
次に、図7のフローチャートを参照しながらパネル処理の概略を説明する。
処理が開始されると、ステップS71においてグループパン編集か否かを判断する。この判断の結果、グループパン編集であった場合にはステップS72に進み、グループパン編集処理を行う。グループパン編集処理の詳細は後述する。
【0036】
一方、ステップS71の判断の結果、グループパン編集ではなかった場合にはステップS73に進み、グループパンプリセット編集処理か否かを判断する。この判断の結果、グループパンプリセット編集処理であった場合にはステップS74に進み、グループパンプリセット編集処理を行う。グループパンプリセット編集処理の詳細は後述する。
【0037】
一方、ステップS73の判断の結果、グループパンプリセット編集処理ではなかった場合にはステップS75に進み、プリセット選択処理か否かを判断する。この判断の結果、プリセット選択処理であった場合にはステップS76に進み、プリセット選択処理を行う。また、ステップS75の判断の結果、イベントがプリセット選択ではなかった場合にはステップS77に進み、他のパネル処理を行う。
【0038】
次に、図8のフローチャートを参照しながらグループパン編集処理の概略を説明する。
まず、ステップS81において音色グループ番号を取得する(GNo←GrpNo)。次に、ステップS82に進み、ループ変数を初期化する(i←0)。
【0039】
次に、ステップS83において、音色グループ番号iの番号確認を行う。この確認の結果、一致していた場合、すなわち、「i=0」であった場合にはステップS84に進み、「プリセット0」のi番目を入力パン値に書き替える編集処理を行う。その後、ステップS85に進む。また、ステップS83の番号確認の結果、非一致の場合には直接ステップS85に進む。
【0040】
ステップS85においては、iの値を1つインクリメントして音色グループ数との一致確認を行う。この結果、一致しなければステップS83に戻って上述した処理を繰り返し行う。また、ステップS85の確認の結果、一致したらループを抜けてリターンする。
【0041】
次に、図9のフローチャートを参照しながらグループパンプリセット編集の概略を説明する。
まず、ステップS91でプリセット番号を取得する(p←pNo)。次に、ステップS92に進み、音色グループ番号を取得する(GNo←GrpNo)。次に、ステップS93に進み、ループ変数を初期化する(i←0)。
【0042】
次に、ステップS94において、音色グループ番号iの番号確認を行う。この確認の結果、一致していた場合、すなわち、「i=0」であった場合にはステップS95に進み、「プリセットp」のi番目を入力パン値に書き替えるプリセット編集処理を行う。その後、ステップS96に進む。また、ステップS94の番号確認の結果、非一致の場合には直接ステップS96に進む。
【0043】
ステップS96においては、ループ変数iの値を1つインクリメントして音色グループ数との一致確認を行う。この確認の結果、一致しなければステップS94に戻って上述した処理を繰り返し行う。また、ステップS96の確認の結果、一致したらループを抜けてリターンする。
【0044】
次に、図10を参照しながら本実施形態の電子楽音発生装置における発音データ構造の一例を説明する。
図10(a)は、音色データ構造を示している。図10(a)において、「音色:音色グループ」、「WNo:波形番号」、「FNo:周波数番号」、「ALev:アタックレベル」、「ASpd:アタックスピード」、「DLev:減衰レベル」、「DSpd:減衰スピード」、「RLev:リリースレベル」、「RSpd:リリーススピード」、「Loud:音量」、「GNo:グループ番号(Panのグループ番号)」をそれぞれ示している。
【0045】
また、図10(b)は、Pan Presetデータの構造例を示している。ここでは、「Pre1」、「Pre2」、「Pre3」、「Def」の4つの演奏形態を示している。そして、音色グループ「Pf.1」には、「Pre1:13−L」、「Pre2:25−L」、「Pre3:33―R」、「Def:0」がプリセットされている。また、音色グループ「Pf.2」にも同様に、「Pre1:13−L」、「Pre2:25−L」、「Pre3:33―R」、「Def:0」がプリセットされている。これらのPan Presetデータは第2の記憶媒体に記憶されて保持されていて、発音されるときに第1の記憶媒体に転送(ロード)される。
【0046】
図10(c)は、入力パン値に対応する音色グループのプリセット値が第1の記憶媒体に格納された状態を示している。そして、上述したグループパン編集処理、グループパンプリセット編集処理に応じて、図10(c)に保持される値が書き替えられる。なお、図10(a)〜(c)のパン値データは、プログラムRAM103に格納されているが、これらのデータを保持する記憶媒体を独立に設けてもよい。
【0047】
次に、図11を参照しながら本実施形態において、記憶媒体にプリセットされている空間定位情報の一例を説明する。
図11(a)は、「Big Band Jazz設定」の一例を示している。この例の場合は、中央から左側方向にベースグループがプリセットされている。また、その更に左側方向にピアノグループがプリセットされている。
【0048】
また、中央から右側方向にはリズムグループがプリセットされている。また、その右側にブラスグループがプリセットされている。また、更にその右側にウッドウインドグループがプリセットされている。なお、図11において、MIDIでは、通常は左側L〜右側Rとの間のパンニングを0〜127までの1つの値によってコントロールするようにしている。
【0049】
図11(b)は、「Rock Combo設定」の一例を示している。この例の場合は、中央から左側方向にリズムグループがプリセットされている。また、その更に左側方向にギターグループがプリセットされている。また、中央から右側方向にはベースグループがプリセットされている。また、その右側にオルガングループがプリセットされている。
【0050】
図11(c)は、「クラシック設定(1)」の一例を示している。この例の場合は、中央から左側方向にブラスグループがプリセットされている。また、その更に左側方向にビオラグループがプリセットされている。更に、その左側方向には「バイオリングループ」がプリセットされている。また、中央から右側方向にはウッドウインドグループ、チェログループ、ベースグループが順番にプリセットされている。
【0051】
図11(d)は、「クラシック設定(2)」の一例を示している。この例の場合は、中央から左側方向にチェログループがプリセットされている。また、その更に左側方向にバイオリングループがプリセットされている。また、中央から右側方向にはビオラグループ、ベースグループが順番にプリセットされている。
【0052】
上述した図11(a)〜(d)の空間定位情報のプリセット例は一例であり、種々の状態で空間定位情報をプリセットすることが可能である。また、上述したように、プリセットした位置を自由に編集することができるので、ユーザが好みの演奏状態を自由に設定することができる。
【0053】
また、操作スイッチ類202を操作することにより、自動割り振りをオフにすることもできる。さらに、通常は使用しないと思われる楽器についても定位位置を適当にし、発音量をオフにしてプリセットしておいてもよい。このようにすれば、通常の演奏状態においては使用しない楽器を用いた演奏をシミュレートすることが可能となる。
【0054】
図12は、複数の音色を選択的に発音可能な音色系列を複数備えた電子楽音発生装置において、音色系列毎に発音される楽音の空間定位情報をプリセットする様子を概略的に説明する図である。
【0055】
図12に示したように、本実施形態においては、電子オルガンにおいて楽音を発生する構成を、「第1階層:アッパー(ロー、ペダル)」、「第2階層:スペシャル、オーケストラ」「第3階層:音色系列(音色グループ)」、「第4階層:音色」のように4つの階層に分けて、符号1200を付しているように、「第3階層:音色系列」毎に発音される音色の空間定位情報をプリセットしたものである。
【0056】
(本発明の他の実施形態)
上述した実施形態の機能を実現するべく各種のデバイスを動作させるように、上記各種デバイスと接続された装置あるいはシステム内のコンピュータに対し、上記実施形態の機能を実現するためのソフトウェアのプログラムコードを供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(CPUあるいはMPU)に格納されたプログラムに従って上記各種デバイスを動作させることによって実施したものも、本発明の範疇に含まれる。
【0057】
また、この場合、上記ソフトウェアのプログラムコード自体が上述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、およびそのプログラムコードをコンピュータに供給するための手段、例えば、かかるプログラムコードを格納した記録媒体は本発明を構成する。かかるプログラムコードを記録する記録媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0058】
また、コンピュータが供給されたプログラムコードを実行することにより、上述の実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)あるいは他のアプリケーションソフト等と共同して上述の実施形態の機能が実現される場合にもかかるプログラムコードは本発明の実施形態に含まれる。
【0059】
さらに、供給されたプログラムコードがコンピュータの機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに格納された後、そのプログラムコードの指示に基づいてその機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した実施形態の機能が実現される場合にも本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態を示し、電子オルガンの構成例を示すブロック図である。
【図2】操作パネルに設けられている表示装置の一例を示す図である。
【図3】メイン処理の概略を説明するフローチャートである。
【図4】プリセット選択処理の概略を説明するフローチャートである。
【図5】イベント処理の概略を説明するフローチャートである。
【図6】鍵盤処理の概略を説明するフローチャートである。
【図7】パネル処理の概略を説明するフローチャートである。
【図8】グループパン編集処理の概略を説明するフローチャートである。
【図9】グループパンプリセット編集の概略を説明するフローチャートである。
【図10】電子楽音発生装置における発音データ構造の一例を説明する図である。
【図11】記憶媒体にプリセットされている空間定位情報の一例を説明する図である。
【図12】音色系列毎に発音される楽音の空間定位情報をプリセットする様子を概略的に説明する図である。
【符号の説明】
【0061】
100 電子オルガン
101 CPU
102 プログラムROM
103 プログラムRAM
104 インタフェース
105 トーンジェネレータ
106 波形メモリ
107 DSP
108 遅延メモリ
109 D/A変換器(DAC)
110 パワーアンプ
111 スピーカ
112 外部音源
113 キーボード
114 操作パネル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の音色を選択的に発音可能な音色系列を複数備えた電子楽音発生装置において、
上記複数の音色系列毎に複数の楽音の空間定位情報がプリセットされて記憶媒体に保持されていることを特徴とする電子楽音発生装置。
【請求項2】
上記複数の楽音の空間定位情報は、演奏形態に応じて複数プリセットされて記憶媒体に保持されていることを特徴とする請求項1に記載の電子楽音発生装置。
【請求項3】
上記記憶媒体に保持されている楽音の空間定位情報を入力された値に応じて選択する選択手段を有することを特徴とする請求項1に記載の電子楽音発生装置。
【請求項4】
上記記憶媒体に保持されている楽音の空間定位情報を入力された値に応じて編集する編集手段を有することを特徴とする請求項1に記載の電子楽音発生装置。
【請求項5】
複数の音色を選択的に発音可能な音色系列を複数備えた電子楽音発生装置において、
上記音色系列毎に発音される楽音の空間定位情報を第1の記憶媒体に記憶する第1の記憶手段と、
上記第1の記憶媒体に記憶された楽音の空間定位情報に応じて、上記音色系列で発音される楽音の空間定位を設定する設定手段と、
上記音色毎に予め設定された上記楽音の空間定位情報の複数セットを第2の記憶媒体に記憶する第2の記憶手段と、
上記楽音の空間定位情報を切り替えるための切替情報を発生する情報発生手段と、
上記情報発生手段が発生する切替情報に応じて、上記複数セットの楽音の空間定位情報のうちの一つを選択する選択手段と、
上記選択手段により選択された上記楽音の空間定位情報のうち、上記音色系列で発音中の音色に対応する定位情報を上記第1の記憶媒体に転送する転送手段とを備えたことを特徴とする電子楽音発生装置。
【請求項6】
複数の音色を選択的に発音可能な音色系列を複数備えた電子楽音発生装置を制御するコンピュータプログラムにおいて、
上記音色系列毎に発音される楽音の空間定位情報を第1の記憶媒体に記憶する第1の記憶工程と、
上記第1の記憶媒体に記憶された楽音の空間定位情報に応じて、上記音色系列で発音される楽音の空間定位を設定する設定工程と、
上記音色毎に予め設定された上記楽音の空間定位情報の複数セットを第2の記憶媒体に記憶する第2の記憶工程と、
上記楽音の空間定位情報を切り替えるための切替情報を発生する情報発生工程と、
上記情報発生工程において発生される切替情報に応じて、上記複数セットの楽音の空間定位情報のうちの一つを選択する選択工程と、
上記選択工程において選択された上記楽音の空間定位情報のうち、上記音色系列で発音中の音色に対応する定位情報を上記第1の記憶媒体に転送する転送工程とをコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項1】
複数の音色を選択的に発音可能な音色系列を複数備えた電子楽音発生装置において、
上記複数の音色系列毎に複数の楽音の空間定位情報がプリセットされて記憶媒体に保持されていることを特徴とする電子楽音発生装置。
【請求項2】
上記複数の楽音の空間定位情報は、演奏形態に応じて複数プリセットされて記憶媒体に保持されていることを特徴とする請求項1に記載の電子楽音発生装置。
【請求項3】
上記記憶媒体に保持されている楽音の空間定位情報を入力された値に応じて選択する選択手段を有することを特徴とする請求項1に記載の電子楽音発生装置。
【請求項4】
上記記憶媒体に保持されている楽音の空間定位情報を入力された値に応じて編集する編集手段を有することを特徴とする請求項1に記載の電子楽音発生装置。
【請求項5】
複数の音色を選択的に発音可能な音色系列を複数備えた電子楽音発生装置において、
上記音色系列毎に発音される楽音の空間定位情報を第1の記憶媒体に記憶する第1の記憶手段と、
上記第1の記憶媒体に記憶された楽音の空間定位情報に応じて、上記音色系列で発音される楽音の空間定位を設定する設定手段と、
上記音色毎に予め設定された上記楽音の空間定位情報の複数セットを第2の記憶媒体に記憶する第2の記憶手段と、
上記楽音の空間定位情報を切り替えるための切替情報を発生する情報発生手段と、
上記情報発生手段が発生する切替情報に応じて、上記複数セットの楽音の空間定位情報のうちの一つを選択する選択手段と、
上記選択手段により選択された上記楽音の空間定位情報のうち、上記音色系列で発音中の音色に対応する定位情報を上記第1の記憶媒体に転送する転送手段とを備えたことを特徴とする電子楽音発生装置。
【請求項6】
複数の音色を選択的に発音可能な音色系列を複数備えた電子楽音発生装置を制御するコンピュータプログラムにおいて、
上記音色系列毎に発音される楽音の空間定位情報を第1の記憶媒体に記憶する第1の記憶工程と、
上記第1の記憶媒体に記憶された楽音の空間定位情報に応じて、上記音色系列で発音される楽音の空間定位を設定する設定工程と、
上記音色毎に予め設定された上記楽音の空間定位情報の複数セットを第2の記憶媒体に記憶する第2の記憶工程と、
上記楽音の空間定位情報を切り替えるための切替情報を発生する情報発生工程と、
上記情報発生工程において発生される切替情報に応じて、上記複数セットの楽音の空間定位情報のうちの一つを選択する選択工程と、
上記選択工程において選択された上記楽音の空間定位情報のうち、上記音色系列で発音中の音色に対応する定位情報を上記第1の記憶媒体に転送する転送工程とをコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−244339(P2009−244339A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87893(P2008−87893)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】
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