説明

電子機器、および、印刷装置

【課題】ソフトウェアがハングアップした場合に、終了処理のための遅延時間を待たずに電源をオフにする技術を提供する。
【解決手段】印刷装置50は、ユーザーによる操作に基づき、第1の供給ライン10を介して供給される電力を遮断する第1のスイッチ200と、ソフトウェアによる制御に基づき、第2の供給ライン20を介して供給される電力を遮断する第2のスイッチ210と、第1のスイッチ200がオフにされてから、終了処理に要する時間よりも長い第1の遅延時間が経過すると、第2のスイッチをオフにする指示信号を出力するタイマー回路110と、を備え、タイマー回路110は、印刷装置50の起動時に、終了処理に要する時間よりも短い第2の遅延時間を、設定値として記憶し、ソフトウェアがハングアップ状態である場合に、第1のスイッチ200がオフにされると、第2の遅延時間が経過してから、指示信号を第2のスイッチ210に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、および、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置などの電子機器では、電源オフがユーザーにより指示されると、電子機器に組み込まれているソフトウェアなどによって、データ保護等のための処理(以下では「終了処理」とよぶ)が行われる(例えば、特許文献1参照)。この終了処理に要する時間は、システムの状態などに依存するため、短時間で済む場合もあれば、長時間(例えば、30秒以上)かかってしまう場合もある。
【0003】
従来の電子機器には、終了処理に要する時間を確保するため、ハードウェアの遅延回路(例えば、タイマー回路)などを用いて、電源オフの指示から一定時間(以下では、「遅延時間」とよぶ)後に電源をオフにするものがある。この遅延時間は、終了処理に長時間かかる場合でも、処理の途中で電源がオフとならないように予め設定される。
【0004】
ところで、ソフトウェアがハングアップした場合、終了処理を実行できず、システムの電源をオフにすることができない。そのため、ソフトウェアがハングアップした場合には、ハードウェアの上記遅延回路などを用いてシステムの電源をオフする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−262065号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のような遅延回路を用いて電源をオフする場合、ソフトウェアのハングアップにより終了処理を実行できない状態であっても、電源オフを指示してから、終了処理のために確保している長い遅延時間を待たなければ電源はオフされない。また、ソフトウェアがハングアップした状態では、パネルなどにシステムの状況などについて表示することもできない。そのため、ユーザーはシステムの状況もわからないまま、長時間待つことになる。
【0007】
本発明は、ソフトウェアがハングアップした場合に、終了処理のための遅延時間を待たずに電源をオフにする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本願発明は、ソフトウェアにより制御される電子機器であって、ユーザーによる操作に基づき、第1の供給ラインを介して供給される電力を遮断する第1のスイッチと、前記ソフトウェアによる制御に基づき、第2の供給ラインを介して供給される電力を遮断する第2のスイッチと、前記第1のスイッチで前記第1の供給ラインの電力供給が遮断されてから、当該電子機器の終了処理に要する時間よりも長い第1の遅延時間が経過すると、前記第2の供給ラインの電力供給を遮断させる指示信号を前記第2のスイッチに出力する遅延回路と、を備え、前記遅延回路は、当該電子機器の起動時に、当該電子機器の終了処理に要する時間よりも短い第2の遅延時間を、設定値として記憶し、前記ソフトウェアがハングアップ状態である場合に、前記第1のスイッチで前記第1の供給ラインの電力供給が遮断されると、設定値として記憶されている前記第2の遅延時間が経過してから、前記指示信号を前記第2のスイッチに出力する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る印刷装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る印刷装置が行う電源制御処理を説明するための状態遷移図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る印刷装置の概略構成図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る印刷装置が行う電源制御処理を説明するための状態遷移図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る印刷装置の概略構成図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る印刷装置が行う電源制御処理を説明するための状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施形態>
以下、本発明の電子機器の一実施形態として、本発明を印刷装置50に適用した場合を例に説明する。
【0011】
図1は、第1の実施形態に係る印刷装置50の概略構成図を示す。
【0012】
印刷装置50は、不図示の印刷エンジンなどを備え、一般的な印刷機能を有する。
【0013】
印刷装置50は、図示するように、印刷装置50を制御するコントローラー100と、コントローラー100に電力を供給する電源300と、電源300からコントローラー100への電力供給について「オン」、「オフ」を切り替える手動スイッチ200及び制御スイッチ210と、を備える。
【0014】
電源300は、並列に構成される複数の電力供給ライン(第1の供給ライン10、第2の供給ライン20)を介して、コントローラー100に電力を供給する。なお、電源300は、例えば、変圧器、整流回路、平滑回路などを備えるような一般的なACアダプターで構成され、外部から供給される交流電源を直流電源に変換して、コントローラー100に供給する。
【0015】
手動スイッチ200は、印刷装置50を起動する指示や、停止する指示を、ユーザーから受け付けるための機械的スイッチである。例えば、手動スイッチ200は、ロッカースイッチ、トグルスイッチ、レバースイッチなどで構成される。そして、手動スイッチ200は、第1の供給ライン10の電源300側の端子とコントローラー100側の端子を、機械的な動作により導通「オン」、又は、非導通「オフ」に切り替える。なお、機械的な動作というのは、例えば、所定の「オン」位置、又は、所定の「オフ」位置のいずれかにレバーなどが倒されるような動作のことをいう。
【0016】
そして、手動スイッチ200が「オン」にされると、第1の供給ライン10を介して、電源300からコントローラー100に電力が供給される。一方、手動スイッチ200が「オフ」にされると、電源300からコントローラー100への第1の供給ライン10を介した電力供給は遮断される。
【0017】
また、手動スイッチ200は、スイッチが「オン」の状態であるか「オフ」の状態であるかを示す信号(ON/OFF信号)を、コントローラー100(後述するタイマー回路110及びCPU120)に出力する。
【0018】
制御スイッチ210は、コントローラー100によって制御される電気的スイッチである。すなわち、制御スイッチ210は、手動スイッチ200と異なり、ユーザーが、直接、操作することはできない。そして、制御スイッチ210は、第2の供給ライン20の電源300側の端子とコントローラー100側の端子を、コントローラー100から出力される制御信号に基づき、導通「オン」、又は、非導通「オフ」に切り替える。
【0019】
そして、制御スイッチ210が「オン」にされると、第2の供給ライン20を介して、電源300からコントローラー100に電力が供給される。一方、制御スイッチ210が「オフ」にされると、電源300からコントローラー100への第2の供給ライン20を介した電力供給は遮断される。
【0020】
コントローラー100は、タイマー回路110と、CPU120と、OR回路130と、を備える。そして、コントローラー100は、第1の供給ライン10と第2の供給ライン20のうち、少なくとも1つの電力供給ラインから電力が供給されていれば、印刷装置50の一部のユニット(例えば、印刷エンジン)又は全体を制御することができる。
【0021】
CPU120は、コントローラー100の中心的な電子回路であり、各部(印刷装置50の各構成)をソフトウェアにより制御する。具体的には、CPU120は、ROM等のメモリー(不図示)に格納されているプログラムを読み出し、読み出したプログラムに従って種々の制御を行う。
【0022】
例えば、CPU120は、手動スイッチ200を介してシステム停止(印刷装置50のシャットダウン)の指示をユーザーから受け付けると、上述した終了処理を行う。そして、終了処理を完了すると、制御スイッチ210を「オフ」にするための制御信号を出力する。
【0023】
また、CPU120は、タイマー回路110のタイマー時間(カウントを開始してから終了するまでの時間)を設定する。例えば、CPU120は、タイマー回路110のタイマー時間を、十分に短い時間(印刷装置50の終了処理に要するとされる標準時間よりも短い時間:例えば、1秒)TCに設定することができる。また、CPU120は、タイマー回路110のタイマー時間を、設定可能な上限値といった長い時間(印刷装置50の終了処理に要するとされる標準時間よりも長い時間:例えば、30秒)TMAXに設定することもできる。
【0024】
なお、CPU120は、ソフトウェア制御であるため、ハングアップした状態においては、制御スイッチ210を「オフ」にするための制御信号を出力することも、タイマー回路110のタイマー時間を設定することもできない。
【0025】
タイマー回路110は、ハードウェア制御によって、制御スイッチ210を「オフ」にするための制御信号を出力する。これにより、タイマー回路110は、ソフトウェアがハングアップした状態であっても、CPU120に代わって、制御スイッチ210を「オフ」にするための制御信号(終了信号)を出力することができる。
【0026】
例えば、タイマー回路110は、手動スイッチ200が「オフ」にされたタイミング(手動スイッチ200からOFF信号が入力されたタイミング)でカウントをスタートし、設定されているタイマー時間が経過した後に、制御スイッチ210を「オフ」にするための制御信号(終了信号)を出力する。そのため、タイマー回路110に設定されるタイマー時間は、ユーザーが電源オフ(手動スイッチ200が「オフ」)を指示してから、実際にシステムの電源をオフ(手動スイッチ200、制御スイッチ210がともに「オフ」)にするまでの遅延時間となる。従って、タイマー時間として上述した短い時間TCが設定されている場合には、システムの電源をオフにするまでの遅延時間はTCとなり、タイマー時間として上述した長い時間TMAXが設定されている場合には、システムの電源をオフにするまでの遅延時間はTMAXとなる。
【0027】
OR回路130は、タイマー回路110とCPU120の少なくとも一方から、制御スイッチ210を「オフ」にするための制御信号(終了信号)が入力されると、入力された制御信号を制御スイッチ210に出力する。これにより、制御スイッチ210は、「オフ」の状態に切り替えられる。なお、OR回路130は、タイマー回路110とCPU120のいずれからも、制御スイッチ210を「オフ」にするための制御信号が入力されていない場合に限って、制御スイッチ210を「オン」にするための制御信号を出力する。
【0028】
第1の実施形態が適用された印刷装置50は、以上のような構成からなる。ただし、印刷装置50の構成はこれに限定されない。例えば、印刷装置50は、プリンター、複合機、FAX装置、コピー機、として機能するための他の構成を有していてもよい。
【0029】
そして、コントローラー100の主な構成要素は、上述したCPU120やROM(メモリー)の他に、メインメモリーとしてデータ等を一時的に格納するRAM、ホスト等との入出力を制御するインターフェイス、各構成要素間の通信経路となるシステムバス、などを備えていてもよい。また、CPU120は、各処理を専用に行うように設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)で構成されていてもよい。
【0030】
また、上記した各構成要素は、印刷装置50の構成を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分類したものである。構成要素の分類の仕方や名称によって、本願発明が制限されることはない。印刷装置50の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。また、各構成要素の処理は、1つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアで実行されてもよい。
【0031】
次に、上記構成からなる印刷装置50の特徴的な動作について説明する。図2は、印刷装置50が行う電源制御処理を説明するための状態遷移図である。
【0032】
印刷装置50が停止している状態においては、手動スイッチ200と制御スイッチ210は、ともに「オフ」の状態となっている(S101)。そのため、電源300からコントローラー100への電力供給は遮断されている。
【0033】
印刷装置50が停止している状態で、ユーザーから印刷装置50を起動する指示がされると、コントローラー100は、起動処理を行う(S102)。具体的には、手動スイッチ200は、ユーザーによる操作によってレバーが「オン」位置に倒されると、第1の供給ライン10を導通「オン」させる。これにより、電源300からコントローラー100への電力供給が行われる。これとともに、手動スイッチ200は、スイッチが「オン」の状態であることを示す信号(ON信号)を、タイマー回路110とCPU120のそれぞれに供給する。ここで、CPU120は、手動スイッチ200からON信号が供給されると、起動処理のためのプログラムをメモリーから読み出して、起動処理を実行する。この起動処理において、CPU120は、上述した短い時間TCを、タイマー回路110におけるタイマー時間(遅延時間)の設定値として登録する(タイマー回路110は、CPU120からの要求を受け付けて、当該設定値を記憶する)。
【0034】
そして、CPU120は、制御スイッチ210を「オン」にする(S103)。具体的には、CPU120は、制御スイッチ210を「オン」にするための制御信号を出力する。ここで、制御スイッチ210は、CPU120から出力された制御信号が供給されると、第2の供給ライン20を導通「オン」させる。
【0035】
それから、CPU120は、印刷装置50を通常動作の状態にする(S104)。ここで、通常動作の状態とは、ソフトウェアがハングアップしていない状態であり、例えば、CPU120は、印刷を実行するための制御などを行う。
【0036】
通常動作の状態で、ユーザーからシステムを停止する指示がされると、コントローラー100は、タイマー回路110のタイマー時間を、TMAXに変更する(S105)。具体的には、手動スイッチ200は、ユーザーによる操作によってレバーが「オフ」位置に倒されると、第1の供給ライン10を非導通「オフ」にする。これにより、第1の供給ライン10を介した電力供給は遮断される。これとともに、手動スイッチ200は、スイッチが「オフ」の状態であることを示す信号(OFF信号)を、タイマー回路110とCPU120のそれぞれに供給する。ここで、CPU120は、手動スイッチ200からOFF信号が供給されると、タイマー回路110におけるタイマー時間(遅延時間)の設定値としてTMAXを登録する(タイマー回路110は、CPU120からの要求を受け付けて、当該設定値をTMAXに変更して記憶する)。また、タイマー回路110は、手動スイッチ200からOFF信号が供給されると、カウントをスタートする。
【0037】
続いて、CPU120は、終了処理を行う(S106)。具体的には、CPU120は、終了処理のためのプログラムをメモリーから読み出して、終了処理を実行する。
【0038】
終了処理が完了すると、CPU120は、制御スイッチ210を「オフ」にする(S107)。具体的には、CPU120は、制御スイッチ210を「オフ」にするための制御信号を出力する。ここで、制御スイッチ210は、CPU120から出力された制御信号が供給されると、第2の供給ライン20を非導通「オフ」にする。これにより、第2の供給ライン20を介した電力供給は遮断され、印刷装置50は停止した状態となる(S101)。
【0039】
ところで、S104の通常動作中に、CPU(ソフトウェア)120の誤動作などによりソフトウェアがハングアップしてしまうことがある(S110:ハングアップ1)。ソフトウェアがハングアップした状態で、ユーザーから印刷装置50を停止する指示がされると、コントローラー100は、タイマー回路110によるカウントをスタートさせる。具体的には、タイマー回路110は、手動スイッチ200からOFF信号が供給されて、カウントをスタートする。
【0040】
このとき、タイマー回路110のタイマー時間(遅延時間)は、短い時間TCに設定されている。そして、タイマー回路110は、短い時間TCが経過すると、制御スイッチ210を「オフ」にするための制御信号(終了信号)を出力する。ここで、制御スイッチ210は、スイッチを「オフ」にし、第2の供給ラインを介した電力供給を遮断する(S120)。従って、タイマー回路110は、ユーザーから印刷装置50を停止する指示がされて、すぐに(短い時間TCの遅延時間で)、システムを停止させることができる。
【0041】
また、S106の終了処理中に、CPU(ソフトウェア)120の誤動作などによりソフトウェアがハングアップしてしまうこともある(S111:ハングアップ2)。この場合、S104において、既に手動スイッチ200は「オフ」にされているため、タイマー回路110は、手動スイッチ200が「オフ」にされた時からTMAX(S105において設定済み)が経過するまで待機し、それから、制御スイッチ210を「オフ」にするための制御信号(終了信号)を出力する。ここで、制御スイッチ210は、スイッチを「オフ」にし、第2の供給ラインを介した電力供給を遮断する(S120)。これにより、印刷装置50は停止する。
【0042】
以上の電源制御処理を、印刷装置50で行うことにより、ソフトウェアが通常動作中にハングアップした場合に、長い時間TMAX待機することなく、印刷装置50をすばやく停止できる。また、通常動作中に印刷装置50の停止が指示されると、タイマー回路110におけるタイマー時間の設定値をTMAXに変更する(S105)ため、終了処理(S106)の途中で印刷装置50を停止してしまうことはない。
【0043】
<第2の実施形態>
図3は、第2の実施形態に係る印刷装置50の概略構成図を示す。
【0044】
本実施形態と上記第1の実施形態との違いは、タイマー回路110のカウントをリセット可能にしている点である(点線矢印)。上記第1の実施形態と同じ構成については、詳細な説明を省略する。
【0045】
CPU120は、上記第1の実施形態で説明した機能に加え、タイマー回路110のカウントをリセットする機能を有する。例えば、CPU120は、カウントがタイマー時間に到達する前に、そのカウントをリセットすることにより、制御スイッチ210を「オフ」にするための制御信号(終了信号)を出力しないようにすることができる。CPU120は、このようなリセットを、上記の「終了処理(S106)」中に繰り返し行い、終了処理の途中で印刷装置50が停止してしまうことを回避できる。
【0046】
タイマー回路110は、上記第1の実施形態で説明した構成に加え、CPU120からの指示に基づいて、カウントをリセットする構成を備える。例えば、タイマー回路110は、CPU120からカウントをリセットする指示信号が供給されると、カウントを「0」に戻し、カウントをリスタートする。
【0047】
図4は、第2の実施形態に係る印刷装置50が行う電源制御処理を説明するための状態遷移図である。
【0048】
コントローラー100は、S101からS104までは、上記第1の実施形態と同様の制御を行う。また、ソフトウェアが通常動作中にハングアップした場合における制御についても(S110、S120)、上記第1の実施形態と同様の制御を行う。
【0049】
本実施形態では、通常動作中の状態(S104)で、ユーザーから印刷装置50を停止する指示がされてからの制御が、上記第1の実施形態と異なる。具体的には、コントローラー100は、ソフトウェアが通常動作中の状態で、ユーザーから印刷装置50を停止する指示がされると、タイマー回路110のタイマー時間を変更せず(TCのまま)、終了処理を開始する(S201)。
【0050】
ここで、ユーザーからの印刷装置50を停止する指示にともない、手動スイッチ200は、スイッチが「オフ」の状態であることを示す信号(OFF信号)を、タイマー回路110に供給している。そのため、タイマー回路110は、カウントをスタートしている。
【0051】
CPU120は、S201の終了処理中においては、タイマー回路110のカウントがTCに到達する前(TC未満)に、カウントをリセットする(S202)。そして、CPU120は、タイマー回路110のカウントがTCに到達しそうになる毎に、繰り返しカウントをリセットする。そのため、タイマー回路110は、CPU120で終了処理を実行している間、制御スイッチ210を「オフ」するための制御信号(終了信号)を出力することはない。
【0052】
そして、CPU120は、終了処理が完了すると、上記第1の実施形態と同様に、制御スイッチ210を「オフ」にする(S107)。
【0053】
一方、S201の終了処理途中に、ソフトウェアがハングアップしてしまった場合(S203:ハングアップ2)、CPU(ソフトウェア)120は、S202のリセットを行うことができなくなる。そのため、タイマー回路110は、前回にカウントをリセットした時から短い時間TCだけ経過を待ち、制御スイッチ210を「オフ」にするための制御信号(終了信号)を出力する。そして、制御スイッチ210は、スイッチを「オフ」にし、第2の供給ラインを介した電力供給を遮断する(S120)。
【0054】
従って、第2の実施形態の印刷装置50は、ソフトウェアが終了処理中にハングアップした場合でも、長い時間TMAX待機することなく、停止できる。
【0055】
<第3の実施形態>
図5は、第3の実施形態に係る印刷装置50の概略構成図を示す。
【0056】
本実施形態と上記第2の実施形態との違いは、ソフトウェアがハングアップするなどして、終了処理を完了せずに印刷装置50を停止(以下では、「異常終了」とよぶ)した履歴を記録可能にしている点である。上記第2の実施形態と同じ構成については、詳細な説明を省略する。
【0057】
コントローラー100は、上記第2の実施形態で説明した構成に加え、印刷装置50が異常終了したことを記録するためのレジスター140を備える。なお、レジスター140は、電源300からコントローラー100に電力が供給されていない状態であっても、記録内容を保持する。
【0058】
レジスター140は、印刷装置50が異常終了したことを示す異常終了発生情報141と、印刷装置50の状態を示すステータス情報142を記憶するための記憶領域を有する。例えば、異常終了発生情報141は、異常終了したか否かを示すフラグとする。また、ステータス情報142は、例えば、印刷装置50の状態に応じて予め定められている値とする。
【0059】
また、タイマー回路110は、制御スイッチ210を「オフ」にするための制御信号(終了信号)を、レジスター140に出力する。
【0060】
レジスター140は、タイマー回路110から出力された制御信号が供給されると、当該制御信号に基づいて、異常終了発生情報141、ステータス情報142を変更(記憶)する。そして、レジスター140は、異常終了発生情報141、ステータス情報142の変更(記憶)を完了後、制御スイッチ210を「オフ」にするための制御信号(終了信号)をOR回路130に出力する。
【0061】
図6は、第3の実施形態に係る印刷装置50が行う電源制御処理を説明するための状態遷移図である。
【0062】
コントローラー100は、図示するS301の制御以外は、上記第2の実施形態と同様の制御を行う。
【0063】
本実施形態では、タイマー回路110が、制御スイッチ210を「オフ」にするための制御信号(終了信号)を出力すると(S110、S203)、当該制御信号は、レジスター140に供給される。
【0064】
ここで、レジスター140は、異常終了発生情報141を記憶する(S301)。具体的には、レジスター140は、異常終了したか否かを示すフラグを「オン」にする。
【0065】
また、レジスター140は、印刷装置50の状態を検知して、検知した状態(ステータス情報142)を記憶する(S301)。具体的には、レジスター140は、通常動作中にソフトウェアがハングアップ(ハングアップ1)して異常終了するのか、終了処理中にソフトウェアがハングアップ(ハングアップ2)して異常終了するのか、などといった情報を記憶する。
【0066】
そして、レジスター140は、異常終了発生情報141とステータス情報142を記憶完了後、制御スイッチ210を「オフ」にするための制御信号(終了信号)をOR回路130(OR回路130を介して制御スイッチ210)に出力する。ここで、制御スイッチ210は、タイマー回路110から出力された制御信号(終了信号)に基づいて、スイッチを「オフ」にし、第2の供給ライン20を介したコントローラー100への電力供給を遮断する(S120)。
【0067】
従って、第3の実施形態の印刷装置50は、異常終了したことや、異常終了したときの印刷装置50の状態を記憶しているため、その後印刷装置50を起動した場合などにおいて当該各情報(141、142)を読み出し、印刷装置50の状態に応じた起動処理を行うことができる。
【0068】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されず、種々の変形、応用が可能である。
【0069】
例えば、上記各実施形態では、電源オフの指示から一定時間(遅延時間)後に電源をオフにするために、タイマー回路110を用いている。しかし、本発明は、タイマー回路110の代わりに、タイマー回路110と同様の機能を有する他のハードウェアを用いてもよい。また、CPU120と独立して動作可能であれば、タイマー回路110と同様の機能を有するソフトウェア(CPU120とは別のCPUなど)を用いてもよい。
【0070】
また、上記各実施形態では、本発明を印刷装置50に適用した場合を例に説明している。しかし、本発明は、これに限定されない。例えば、本発明を、テレビ、デジタルカメラ、携帯電話、携帯ゲーム機など、電源とソフトウェアとハードウェアから構成される電子機器に適用してもよい。
【符号の説明】
【0071】
10・・・第1の供給ライン、20・・・第2の供給ライン、50・・・印刷装置、100・・・コントローラー、110・・・タイマー回路、120・・・CPU、130・・・OR回路、140・・・レジスター、141・・・異常終了発生情報、142・・・ステータス情報、200・・・手動スイッチ、210・・・制御スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソフトウェアにより制御される電子機器であって、
ユーザーによる操作に基づき、第1の供給ラインを介して供給される電力を遮断する第1のスイッチと、
前記ソフトウェアによる制御に基づき、第2の供給ラインを介して供給される電力を遮断する第2のスイッチと、
前記第1のスイッチで前記第1の供給ラインの電力供給が遮断されてから、当該電子機器の終了処理に要する時間よりも長い第1の遅延時間が経過すると、前記第2の供給ラインの電力供給を遮断させる指示信号を前記第2のスイッチに出力する遅延回路と、
を備え、
前記遅延回路は、
当該電子機器の起動時に、当該電子機器の終了処理に要する時間よりも短い第2の遅延時間を、設定値として記憶し、
前記ソフトウェアがハングアップ状態である場合に、前記第1のスイッチで前記第1の供給ラインの電力供給が遮断されると、設定値として記憶されている前記第2の遅延時間が経過してから、前記指示信号を前記第2のスイッチに出力する、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
ソフトウェアにより制御される電子機器であって、
ユーザーによる操作に基づき、第1の供給ラインを介して供給される電力を遮断する第1のスイッチと、
前記ソフトウェアによる制御に基づき、第2の供給ラインを介して供給される電力を遮断する第2のスイッチと、
前記第1のスイッチで前記第1の供給ラインの電力供給が遮断されてから、当該電子機器の終了処理に要する時間よりも長い第1の遅延時間が経過すると、前記第2の供給ラインの電力供給を遮断させる指示信号を前記第2のスイッチに出力する遅延回路と、
を備え、
前記遅延回路は、
当該電子機器の起動時に、当該電子機器の終了処理に要する時間よりも短い第2の遅延時間を、設定値として記憶し、
前記ソフトウェアがハングアップ状態ではない場合に、前記第1のスイッチで前記第1の供給ラインの電力供給が遮断されると、前記設定値を前記第1の遅延時間に変更し、当該第1の遅延時間が経過してから、前記指示信号を前記第2のスイッチに出力し、
前記ソフトウェアがハングアップ状態である場合に、前記第1のスイッチで前記第1の供給ラインの電力供給が遮断されると、設定値として記憶されている前記第2の遅延時間が経過してから、前記指示信号を前記第2のスイッチに出力する、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
ソフトウェアにより制御される電子機器であって、
ユーザーによる操作に基づき、第1の供給ラインを介して供給される電力を遮断する第1のスイッチと、
前記ソフトウェアによる制御に基づき、第2の供給ラインを介して供給される電力を遮断する第2のスイッチと、
前記第1のスイッチで前記第1の供給ラインの電力供給が遮断されてから、当該電子機器の終了処理に要する時間よりも長い第1の遅延時間が経過すると、前記第2の供給ラインの電力供給を遮断させる指示信号を前記第2のスイッチに出力する遅延回路と、
を備え、
前記遅延回路は、
当該電子機器の起動時に、当該電子機器の終了処理に要する時間よりも短い第2の遅延時間を、設定値として記憶し、
前記ソフトウェアがハングアップ状態ではない場合に、前記第1のスイッチで前記第1の供給ラインの電力供給が遮断されても、前記指示信号を出力せず、
前記ソフトウェアがハングアップ状態である場合に、前記第1のスイッチで前記第1の供給ラインの電力供給が遮断されると、設定値として記憶されている前記第2の遅延時間が経過してから、前記指示信号を前記第2のスイッチに出力する、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器であって、
前記遅延回路は、タイマー回路を備え、
前記ソフトウェアがハングアップ状態ではない場合に、前記第1のスイッチで前記第1の供給ラインの電力供給が遮断されても、当該タイマー回路におけるカウントのリセットにより前記指示信号を出力しない、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の電子機器であって、
前記遅延回路は、
前記ソフトウェアが終了処理途中にハングアップ状態となった場合に、前記第1のスイッチで前記第1の供給ラインの電力供給が遮断されると、設定値として記憶されている前記第2の遅延時間が経過してから、前記指示信号を前記第2のスイッチに出力する、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
ソフトウェアにより制御される電子機器であって、
ユーザーによる操作に基づき、第1の供給ラインを介して供給される電力を遮断する第1のスイッチと、
前記ソフトウェアによる制御に基づき、第2の供給ラインを介して供給される電力を遮断する第2のスイッチと、
前記第1のスイッチで前記第1の供給ラインの電力供給が遮断されてから、当該電子機器の終了処理に要する時間よりも長い第1の遅延時間が経過すると、前記第2の供給ラインの電力供給を遮断させる指示信号を前記第2のスイッチに出力する遅延回路と、
前記遅延回路による前記指示信号の出力に基づいて、当該電子機器が異常終了することを示す情報を記憶する記憶手段と、
を備え、
前記遅延回路には、
当該電子機器の起動時に、当該電子機器の終了処理に要する時間よりも短い第2の遅延時間を、設定値として記憶し、
前記ソフトウェアがハングアップ状態ではない場合に、前記第1のスイッチで前記第1の供給ラインの電力供給が遮断されても、前記指示信号を出力せず、
前記ソフトウェアがハングアップ状態である場合に、前記第1のスイッチで前記第1の供給ラインの電力供給が遮断されると、設定値として記憶されている前記第2の遅延時間が経過してから、前記指示信号を前記第2のスイッチに出力する、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項6に記載の電子機器であって、
前記遅延回路は、
前記ソフトウェアが終了処理途中にハングアップ状態となった場合に、前記第1のスイッチで前記第1の供給ラインの電力供給が遮断されると、設定値として記憶されている前記第2の遅延時間が経過してから、前記指示信号を前記第2のスイッチに出力する、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
印刷装置であって、
当該印刷装置をソフトウェアにより制御するコントローラーと、
ユーザーによる操作に基づき、第1の供給ラインを介して前記コントローラーに供給される電力を遮断する第1のスイッチと、
前記ソフトウェアによる制御に基づき、第2の供給ラインを介して当該コントローラーに供給される電力を遮断する第2のスイッチと、
を備え、
前記コントローラーは、
前記第1のスイッチで前記第1の供給ラインの電力供給が遮断されてから、前記印刷装置の終了処理に要する時間よりも長い第1の遅延時間が経過すると、前記第2の供給ラインの電力供給を遮断させる指示信号を前記第2のスイッチに出力する遅延回路を有し、
前記遅延回路は、
前記印刷装置の起動時に、前記印刷装置の終了処理に要する時間よりも短い第2の遅延時間を、設定値として記憶し、
前記ソフトウェアがハングアップ状態ではない場合に、前記第1のスイッチで前記第1の供給ラインの電力供給が遮断されると、前記設定値を前記第1の遅延時間に変更し、当該第1の遅延時間が経過してから、前記指示信号を前記第2のスイッチに出力し、
前記ソフトウェアがハングアップ状態である場合に、前記第1のスイッチで前記第1の供給ラインの電力供給が遮断されると、設定値として記憶されている前記第2の遅延時間が経過してから、前記指示信号を前記第2のスイッチに出力する、
ことを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−194729(P2010−194729A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38958(P2009−38958)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】