説明

電子機器、雑音処理方法、及びプログラム

【課題】特別に部品を追加することなく、風によるノイズをキャンセリングし、高音質録音を実現する。
【解決手段】制御部(CPU)12は、動画撮影中、スピーカ(圧電)11で音孔から圧力変化(風圧変化)を検出し、マイク(通話用)9、及びマイク(録画用)10からの音声とスピーカ(圧電)11からの圧力変化(風圧変化)とに基づいて、雑音に対して逆相のノイズキャンセラ信号を生成し、音声処理部8を介して、該逆相のノイズキャンセラ信号に相当する音をスピーカ(圧電)11から放射する。スピーカ(圧電)11からは、マイク(通話用)9、及びマイク(録画用)10で取り込まれる雑音を打ち消す音が出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等の電子機器に用いられ、屋外環境においも、良好な通話音質の再生が可能な電子機器、雑音処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話の需要拡大に伴い、装置メーカ各社においては、TV電話や動画再生、ハンズフリー電話機能を搭載した薄型スタイリッシュ携帯の開発に取り組んでいる。この中、音響機能への要望は大きく、特に、高音質通話への要求は高い。
【0003】
従来、携帯電話では、ハンドセットを利用した通常通話と、電話機を手で保持することなく通話するハンズフリー通話がある。いつでも何処でも利用できる携帯電話の利便性を考えた場合、室内だけでなく、屋外などでの使用も求められる。屋外での使用においては、風によるノイズ、周囲からの雑音などにより、通話に係る音声が聞き取りにくくなるという問題がある。そこで、外部の風圧を検出し、該風圧を打ち消すようなノイズキャンセラを組み込むことが考えられる。
【0004】
例えば、特許文献1、2には、微弱な風圧を測定する風圧センサに関する技術が開示されている。また、特許文献3には、外部からの音圧に応じた電圧を発生させる圧電素子からなる受音板を設け、該受音板で発生した電圧に応じた電流を抵抗器に通電させてジュール熱として消費するとともに、受音板を通過した音を検出し、該通過した音と逆位相で振幅が等しい音波を出力することで通過した音を減衰させるスピーカや、音波出力回路などを設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−148273号公報
【特許文献2】特開昭59−218961号公報
【特許文献3】特開平6−308969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、風によるノイズをキャンセリングするためには、特別に部品を追加する必要があり、小型化を図らなくてはならない携帯電話での実現は難しいという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、特別に部品を追加することなく、風によるノイズをキャンセリングし、高音質録音を実現させることができる電子機器、雑音処理方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子機器は、マイクロフォンにより音声を集音しつつ、撮影部により撮影した映像を音声付映像として記録するとともに、再生中の音声付映像の映像を表示部により表示し、再生中の音声付映像の音声をスピーカにより出力する電子機器であって、音声付映像記録時に、前記スピーカにより風圧変化を検出する風圧変化検出手段と、前記マイクロフォンにより集音した音声と、前記風圧変化検出手段により検出した風圧変化とに基づいて、前記マイクロフォンにより集音した音声に含まれる雑音を除去するためのノイズキャンセラ信号を生成するノイズキャンセラ信号生成手段と、前記ノイズキャンセラ信号生成手段により生成されたノイズキャンセラ信号に相当する音を前記スピーカから放射させる制御手段とを備えることを特徴とする電子機器である。
【0009】
本発明の雑音処理方法は、音声を集音するマイクロフォンと、撮影部により映像を撮影する撮影部と、再生中の音声付映像の映像を表示する表示部と、再生中の音声付映像の音声を出力するスピーカとを備える電子機器における雑音処理方法であって、音声付映像記録時に、前記スピーカにより風圧変化を検出する風圧変化検出ステップと、前記マイクロフォンにより集音した音声と、前記風圧変化検出ステップで検出した風圧変化とに基づいて、前記マイクロフォンにより集音した音声に含まれる雑音を除去するためのノイズキャンセラ信号を生成するノイズキャンセラ信号生成ステップと、前記ノイズキャンセラ信号生成ステップで生成されたノイズキャンセラ信号に相当する音を前記スピーカから放射させる制御ステップとを含むことを特徴とする雑音処理方法である。
【0010】
本発明のプログラムは、音声を集音するマイクロフォンと、撮影部により映像を撮影する撮影部と、再生中の音声付映像の映像を表示する表示部と、再生中の音声付映像の音声を出力するスピーカとを備える電子機器のコンピュータに、音声付映像記録時に、前記スピーカにより風圧変化を検出する風圧変化検出機能、前記マイクロフォンにより集音した音声と、前記風圧変化検出ステップで検出した風圧変化とに基づいて、前記マイクロフォンにより集音した音声に含まれる雑音を除去するためのノイズキャンセラ信号を生成するノイズキャンセラ信号生成機能、前記ノイズキャンセラ信号生成機能で生成されたノイズキャンセラ信号に相当する音を前記スピーカから放射させる制御機能を実行させることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、特別に部品を追加することなく、風によるノイズをキャンセリングし、高音質録音を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態による携帯電話1の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態による携帯電話の外観構成を示す模試図である。
【図3】本実施形態による携帯電話1の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】付記1の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、動画録音用のマイクと同一面(近傍)に配置された、圧電素子からなるスピーカを用いて、音孔からの圧力変化を検出することで、リアルタイムで風量を検知し、マイクロフォンから入力される録音時のノイズをキャンセリングするように、ノイズとは逆相の音をスピーカから出力することで、高音質録音を実現することを特徴としている。
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態による携帯電話1の構成を示すブロック図である。図において、携帯電話1は、通信部2、撮影部3、ROM4、RAM5、タッチパネル6、表示部7、音声処理部8、マイク(通話用)9、マイク(録音用)10、及びスピーカ(圧電素子)11を備えている。
【0016】
通信部2は、電話回線網を介して、音声通信や、データ通信を行う。撮影部3は、フォーカスレンズ、ズームレンズなどのレンズ群、撮像素子(CCDなど)を含み、撮像制御部3からの制御信号に従って、オートフォーカシング、絞り、ズーミングなどを調整し、撮像素子によりレンズ群を介して投影された被写体の光を電気信号に変換し、撮像信号として出力する。撮影部3は、静止画に加えて動画も撮影可能となっている。なお、本実施形態では、動画撮影時おいて、風などによる雑音を抑制する技術を提供するものである。
【0017】
ROM4は、制御部(CPU)12による携帯電話1の各部の制御に必要なプログラム、及び各部の制御に必要なデータを記憶している。RAM5は、撮影部3によって撮像された画像データや、動画データを一時記憶するバッファメモリとして使用されるとともに、制御部(CPU)12のワーキングメモリとして使用される。
【0018】
タッチパネル6は、表示部7上に設けられており、表示部7に表示される表示に従って、動作指示、データ入力等をタッチ操作するためのものである。表示部7は、カラーLCDとその駆動回路を含み、撮影部3による撮像画像や、動画、通信/通話に係る各種情報を表示する。
【0019】
音声処理部8は、通話時には、マイク(通話用)9からの音声を制御部(CPU)12に供給するとともに、音声信号を処理してスピーカ(圧電)11から出力する。また、音声処理部8は、動画撮影時には、マイク(通話用)9及びマイク(録画用)10を用いて、音声のステレオ録音(該音声にはノイズが含まれる)を行うとともに、スピーカ(圧電)11により音孔からの圧力(風圧)変化を取り込み、制御部(CPU)12に供給する。
【0020】
制御部(CPU)12は、携帯電話1の各部を制御するワンチップマイコンである。特に、本実施形態では、制御部(CPU)12は、動画撮影時、スピーカ(圧電)11からの圧力(風圧)変化と、マイク(通話用)9及びマイク(録画用)10から入力される音声信号とに基づいて、風圧(または風量)を正相の雑音とし、該雑音に対して、逆相の音をスピーカ(圧電)11から放射することで、マイク(通話用)9及びマイク(録画用)10からのステレオ音に含まれる雑音を低減する。
【0021】
図2は、本実施形態による携帯電話の外観構成を示す模試図である。なお、図1に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。表示部7(タッチパネル6を含む)は、筺体の一方の面の略中央に配置されている。その上面裏面には、撮影部3が配置されており、該撮影部3により撮影された映像が表示部7に表示されるようになっている。また、マイク(通話用)9及びマイク(録画用)10は、表示部7を挟んで両端(図示では上下端)に設けられている。また、スピーカ(圧電)11もマイク(通話用)9及びマイク(録画用)10と同一面に設けられている。
【0022】
次に、上述した実施形態の動作について説明する。
図3は、本実施形態による携帯電話1の動作を説明するためのフローチャートである。まず、制御部(CPU)12は、動画撮影が開始されたか否か判定し(ステップS10)、動画撮影が開始されるまで待機する(ステップS10のNO)。そして、動画撮影が開始されると(ステップS10のYES)、制御部(CPU)12は、マイク(通話用)9及びマイク(録画用)10から音声(ステレオ音声)を入力しつつ、撮影部3で動画を撮影する(ステップS12)。
【0023】
動画撮影中は、スピーカ(圧電)11で音孔から圧力変化(風圧変化)を検出し(ステップS14)、マイク(通話用)9及びマイク(録画用)10からの音声とスピーカ(圧電)11からの圧力変化(風圧変化)とに基づいて、雑音に対して逆相のノイズキャンセラ信号を生成する(ステップS16)。そして、制御部(CPU)12は、音声処理部8を介して、該逆相のノイズキャンセラ信号に相当する音をスピーカ(圧電)11から放射する(ステップS18)。
【0024】
これにより、スピーカ(圧電)11からは、マイク(通話用)9及びマイク(録画用)10で取り込まれる雑音を打ち消す音が出力されるので、実質的に、マイク(通話用)9及びマイク(録画用)10で取り込まれる雑音が低減される。
【0025】
最終的に、撮影した動画はファイルとして保存される(ステップS20)。次に、動画撮影が終了したか(ユーザ操作による終了など)否かを判定し(ステップS22)、撮影終了されていなければ(ステップS22のNO)、ステップS12に戻り、動画撮影を継続する。一方、撮影が終了されれば(ステップS22のYES)、当該処理を終了する。
【0026】
なお、本実施形態は、端末装置として携帯電話に適用した例であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、通信機能を持つデジタルカメラ、携帯情報端末、ノートパッド、パーソナルコンピュータ、通信機、その他の電子機器等にも幅広く適用できる。
【0027】
上述した実施形態によれば、スピーカとして用いている既存の圧電スピーカを利用して風量を検知し、風ノイズキャンセングにフィードバックを行うようにしたので、特別に部品を追加することなく、風によるノイズをキャンセリングし、高音質録音を実現することができる。
【0028】
以下、本発明の特徴を付記する。
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
図4は、付記1の構成図である。この図に示すように、付記1記載の発明は、
マイクロフォン21により音声を集音しつつ、撮影部22により撮影した映像を音声付映像として記録するとともに、再生中の音声付映像の映像を表示部23により表示し、再生中の音声付映像の音声をスピーカ24により出力する電子機器20であって、
音声付映像記録時に、前記スピーカにより風圧変化を検出する風圧変化検出手段25と、
前記マイクロフォン21により集音した音声と、前記風圧変化検出手段25により検出した風圧変化とに基づいて、前記マイクロフォン21により集音した音声に含まれる雑音を除去するためのノイズキャンセラ信号を生成するノイズキャンセラ信号生成手段26と、
前記ノイズキャンセラ信号生成手段26により生成されたノイズキャンセラ信号に相当する音を前記スピーカ24から放射させる制御手段27と
を備えることを特徴とする電子機器である。
【0029】
(付記2)
前記スピーカは、圧電素子からなることを特徴とする付記1に記載の電子機器である。
【0030】
(付記3)
前記スピーカと前記マイクロフォンとは、当該電子機器の筺体の同一面上に配置されていることを特徴とする付記1または2に記載の電子機器である。
【0031】
(付記4)
音声を集音するマイクロフォンと、撮影部により映像を撮影する撮影部と、再生中の音声付映像の映像を表示する表示部と、再生中の音声付映像の音声を出力するスピーカとを備える電子機器における雑音処理方法であって、
音声付映像記録時に、前記スピーカにより風圧変化を検出する風圧変化検出ステップと、
前記マイクロフォンにより集音した音声と、前記風圧変化検出ステップで検出した風圧変化とに基づいて、前記マイクロフォンにより集音した音声に含まれる雑音を除去するためのノイズキャンセラ信号を生成するノイズキャンセラ信号生成ステップと、
前記ノイズキャンセラ信号生成ステップで生成されたノイズキャンセラ信号に相当する音を前記スピーカから放射させる制御ステップと
を含むことを特徴とする雑音処理方法である。
【0032】
(付記5)
前記スピーカは、圧電素子からなることを特徴とする付記4に記載の雑音処理方法である。
【0033】
(付記6)
前記スピーカと前記マイクロフォンとは、当該電子機器の筺体の同一面上に配置されていることを特徴とする付記4または5に記載の雑音処理方法である。
【0034】
(付記7)
音声を集音するマイクロフォンと、撮影部により映像を撮影する撮影部と、再生中の音声付映像の映像を表示する表示部と、再生中の音声付映像の音声を出力するスピーカとを備える電子機器のコンピュータに、
音声付映像記録時に、前記スピーカにより風圧変化を検出する風圧変化検出機能、
前記マイクロフォンにより集音した音声と、前記風圧変化検出ステップで検出した風圧変化とに基づいて、前記マイクロフォンにより集音した音声に含まれる雑音を除去するためのノイズキャンセラ信号を生成するノイズキャンセラ信号生成機能、
前記ノイズキャンセラ信号生成機能で生成されたノイズキャンセラ信号に相当する音を前記スピーカから放射させる制御機能
を実行させることを特徴とするプログラムである。
【符号の説明】
【0035】
1 携帯電話
2 通信部
3 撮影部
4 ROM
5 RAM
6 タッチパネル
7 表示部
8 音声処理部
9 マイク(通話用)
10 マイク(録音用)
11 スピーカ(圧電)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロフォンにより音声を集音しつつ、撮影部により撮影した映像を音声付映像として記録するとともに、再生中の音声付映像の映像を表示部により表示し、再生中の音声付映像の音声をスピーカにより出力する電子機器であって、
音声付映像記録時に、前記スピーカにより風圧変化を検出する風圧変化検出手段と、
前記マイクロフォンにより集音した音声と、前記風圧変化検出手段により検出した風圧変化とに基づいて、前記マイクロフォンにより集音した音声に含まれる雑音を除去するためのノイズキャンセラ信号を生成するノイズキャンセラ信号生成手段と、
前記ノイズキャンセラ信号生成手段により生成されたノイズキャンセラ信号に相当する音を前記スピーカから放射させる制御手段と
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記スピーカは、圧電素子からなることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記スピーカと前記マイクロフォンとは、当該電子機器の筺体の同一面上に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
音声を集音するマイクロフォンと、撮影部により映像を撮影する撮影部と、再生中の音声付映像の映像を表示する表示部と、再生中の音声付映像の音声を出力するスピーカとを備える電子機器における雑音処理方法であって、
音声付映像記録時に、前記スピーカにより風圧変化を検出する風圧変化検出ステップと、
前記マイクロフォンにより集音した音声と、前記風圧変化検出ステップで検出した風圧変化とに基づいて、前記マイクロフォンにより集音した音声に含まれる雑音を除去するためのノイズキャンセラ信号を生成するノイズキャンセラ信号生成ステップと、
前記ノイズキャンセラ信号生成ステップで生成されたノイズキャンセラ信号に相当する音を前記スピーカから放射させる制御ステップと
を含むことを特徴とする雑音処理方法。
【請求項5】
前記スピーカは、圧電素子からなることを特徴とする請求項4に記載の雑音処理方法。
【請求項6】
前記スピーカと前記マイクロフォンとは、当該電子機器の筺体の同一面上に配置されていることを特徴とする請求項4または5に記載の雑音処理方法。
【請求項7】
音声を集音するマイクロフォンと、撮影部により映像を撮影する撮影部と、再生中の音声付映像の映像を表示する表示部と、再生中の音声付映像の音声を出力するスピーカとを備える電子機器のコンピュータに、
音声付映像記録時に、前記スピーカにより風圧変化を検出する風圧変化検出機能、
前記マイクロフォンにより集音した音声と、前記風圧変化検出ステップで検出した風圧変化とに基づいて、前記マイクロフォンにより集音した音声に含まれる雑音を除去するためのノイズキャンセラ信号を生成するノイズキャンセラ信号生成機能、
前記ノイズキャンセラ信号生成機能で生成されたノイズキャンセラ信号に相当する音を前記スピーカから放射させる制御機能
を実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−25281(P2013−25281A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162884(P2011−162884)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】