説明

電子機器およびコネクタ

【課題】外部からプラグが挿入されるプラグ挿入部への異物の侵入をより確実に防ぐ電子機器およびコネクタ、を提供する。
【解決手段】電子機器としての携帯型電話機は、プラグ72が挿入される凹形状のプラグ挿入部21と、プラグ挿入部21が開口する外面13とを有する本体ケース12と、プラグ挿入部21に挿入されたプラグ72と接触するように設けられる電極部42と、プラグ挿入部21に設けられ、プラグ挿入部21の開口を塞ぐ第1位置と、プラグ挿入部21の開口から見て電極部42よりも奥まった第2位置との間で移動可能なパッキン31とを備える。プラグ挿入部21へのプラグ72の挿入時、パッキン31がプラグ72に押されることにより第1位置から第2位置に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、電子機器およびコネクタに関し、より特定的には、プラグが接続されることにより、充電もしくは情報信号の授受を行なう電子機器、およびそのような電子機器において、充電もしくは情報信号の授受を行なう際に用いられるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子機器に関して、たとえば、特開平5−166563号公報には、少ない防水シートで防水することを目的とした防水コネクタが開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示された防水コネクタにおいては、雄コネクタが雌コネクタの嵌合凹部に嵌め込まれる。嵌合凹部の口は、防水シートによって塞がれる。雄コネクタは、防水シートをバックリテーナとともに締め付けるフック片を有する。
【0003】
また、特開平5−6784号公報には、防水シートをケーブルに装着する作業が必要でなく、端子をハウジングの端子収納室に挿入する際にも挿入抵抗を生じさせないことを目的とした防水コネクタが開示されている(特許文献2)。特許文献2に開示された防水コネクタにおいては、端子挿入時には、端子の最大径よりも大きく拡径して、端子の挿入による抵抗をなくし、端子挿入後には、縮径してケーブルと密接する防水シールが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−166563号公報
【特許文献2】特開平5−6784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
携帯型電話機、PDA(Personal Digital Assistants)、タブレット端末、電子辞書もしくは電子ブックリーダなどの電子機器においては、外部からプラグが接続されることによって、バッテリの充電や情報信号の授受が行なわれる。このような外部からプラグが挿入されるプラグ挿入部には、埃や水などの異物が侵入することを防ぐために、取り外しが可能なゴム製のパッキンを設ける構造が一般的である。
【0006】
しかしながら、このような構造では、バッテリの充電ごとに、もしくは情報信号の授受を実施するごとにパッキンをプラグ挿入部から取り外す必要があるため、着脱の回数が増えるに従ってパッキンが破損したり、パッキンとプラグ挿入部との密着度が薄れたりする。この場合、プラグ挿入部への異物の侵入を確実に防ぐことができないという懸念が生じる。
【0007】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、外部からプラグが挿入されるプラグ挿入部への異物の侵入をより確実に防ぐ電子機器およびコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に従った電子機器は、プラグが接続されることにより、充電もしくは情報信号の授受を行なう電子機器である。電子機器は、プラグが挿入される凹形状のプラグ挿入部と、プラグ挿入部が開口する外面とを有する筐体と、プラグ挿入部に挿入されたプラグと接触するように設けられる電極部と、プラグ挿入部に設けられ、プラグ挿入部の開口を塞ぐ第1位置と、プラグ挿入部の開口から見て電極部よりも奥まった第2位置との間で移動可能なパッキンとを備える。プラグ挿入部へのプラグの挿入時、パッキンがプラグに押されることにより第1位置から第2位置に移動する。
【0009】
このように構成された電子機器によれば、プラグ挿入部へのプラグの挿入時に、パッキンがプラグ挿入部の開口を塞ぐ第1位置から電極部よりも奥まった第2位置に移動するため、充電もしくは情報信号の授受を行なうごとにパッキンを取り外す必要がない。このため、パッキンが劣化することを抑制し、プラグ挿入部への異物の侵入をより確実に防ぐことができる。
【0010】
また好ましくは、電子機器は、プラグがプラグ挿入部に挿入されるのに伴って、電極部をプラグ挿入部より退避した位置からプラグ挿入部に向けて移動させる移動機構部をさらに備える。
【0011】
このように構成された電子機器によれば、プラグ挿入部へのプラグの挿入時に、プラグと電極部とが干渉することを防ぐとともに、プラグの挿入後には、電極部とプラグとを接触させることができる。
【0012】
また好ましくは、移動機構部は、パッキンと電極部との間を連結するように設けられる。移動機構部は、プラグ挿入部へのプラグの挿入時、第1位置から第2位置に移動するパッキンの動きを、電極部をプラグ挿入部より退避した位置からプラグ挿入部に向けて移動させる動きに変換する。
【0013】
このように構成された電子機器によれば、プラグ挿入部へのプラグの挿入時、プラグに押されて第1位置から第2位置に移動するパッキンの動きに連動させて、電極部をプラグ挿入部より退避した位置からプラグ挿入部に向けて移動させることができる。
【0014】
また好ましくは、電子機器は、プラグ挿入部へのプラグの挿入時に、パッキンに対して第2位置から第1位置へと押し戻す力を作用させる弾性部材をさらに備える。
【0015】
このように構成された電子機器によれば、充電もしくは情報信号の授受の終了後、プラグ挿入部からプラグを引き抜く際に、弾性部材からパッキンに作用する力によって、パッキンを第2位置から第1位置に戻すことができる。
【0016】
また好ましくは、電子機器は、弾性部材で発生した力に抗して、パッキンを第2位置に保持するロック機構をさらに備える。
【0017】
このように構成された電子機器によれば、充電もしくは情報信号の授受を行なう際に、パッキンを第2位置に保持することができる。
【0018】
また好ましくは、パッキンは、第1位置にある時に、プラグ挿入部の開口の外周で外面と重なり合うように設けられる。
【0019】
このように構成された電子機器によれば、パッキンが第1位置にある時に、パッキンとプラグ挿入部の開口との間に隙間が生じることを抑制できる。これにより、プラグ挿入部への異物の侵入をさらに確実に防ぐことができる。
【0020】
この発明に従ったコネクタは、上述のいずれかに記載の電子機器において、充電もしくは情報信号の授受を行なう際に用いられるコネクタである。コネクタは、プラグ挿入部に挿入されるプラグと、プラグから鍔状に広がって設けられ、プラグがプラグ挿入部に挿入された時に、プラグ挿入部の開口の外周で外面と重なり合うように位置決めされるシール部材とを備える。
【0021】
このように構成されたコネクタによれば、プラグ挿入部へのプラグの挿入時に、プラグ挿入部とプラグとの間に隙間が生じることを抑制できる。これにより、プラグ挿入部への異物の侵入をさらに確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上に説明したように、この発明に従えば、外部からプラグが挿入されるプラグ挿入部への異物の侵入をより確実に防ぐ電子機器およびコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施の形態1における携帯型電話機を示す斜視図である。
【図2】図1中のII−II線上に沿った携帯型電話機を示す断面図である。
【図3】バッテリ充電時、充電用コネクタが接続された携帯型電話機を示す断面図である。
【図4】図2中のIV−IV線上に沿った携帯型電話機を示す断面図である。
【図5】図2中の矢印Vに示す方向から見た携帯型電話機を示す図である。
【図6】携帯型電話機の第1変形例を示す断面図である。
【図7】携帯型電話機の第2変形例を示す断面図である。
【図8】携帯型電話機の第3変形例を示す断面図である。
【図9】図8中の携帯型電話機に用いられる充電用コネクタのプラグを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1における携帯型電話機を示す斜視図である。図1を参照して、携帯型電話機10は、本体ケース12と、表示部として液晶ディスプレイ14と、操作部としての複数の操作ボタン11とを有する。
【0026】
本体ケース12は、携帯型電話機10の外観をなす筐体として設けられている。本体ケース12は、外面13が形成された略直方体形状を有する。
【0027】
携帯型電話機10には、図示しないバッテリが内蔵されており、そのバッテリの充電時、充電用コネクタ70が用いられる。充電用コネクタ70は、プラグ72Aおよびプラグ72B(以下、特に区別しない場合はプラグ72という)と、ACアダプタ76と、コンセントプラグ77とを有する。
【0028】
プラグ72は、携帯型電話機10に接続可能な端子として設けられている。プラグ72Aは、プラス端子に対応し、プラグ72Bは、マイナス端子に対応する。コンセントプラグ77は、たとえば、各家庭に設けられたコンセントに接続可能な端子として設けられている。ACアダプタ76は、プラグ72とコンセントプラグ77とを繋ぐケーブルの経路上に設けられている。ACアダプタ76は、家庭用の電源から供給される交流電力を、バッテリを充電するための直流電力に変換する。
【0029】
本実施の形態では、プラグ72が円柱形状の外形を有する。なお、携帯型電話機10に接続可能な端子として、プラグ72に替えてUSB端子が利用されてもよい。
【0030】
本体ケース12には、プラグ挿入部21Aおよびプラグ挿入部21Bが設けられている(以下、特に区別しない場合はプラグ挿入部21という)。充電用コネクタ70を用いた携帯型電話機10のバッテリ充電時、プラグ挿入部21Aにプラグ72Aが接続され、プラグ挿入部21Bにプラグ72Bが接続される。プラグ挿入部21は、本体ケース12に設けられている。プラグ挿入部21Aとプラグ挿入部21Bとは、互いに間隔を隔てて設けられている。
【0031】
図2は、図1中のII−II線上に沿った携帯型電話機を示す断面図である。図3は、バッテリ充電時、充電用コネクタが接続された携帯型電話機を示す断面図である。図3中は、図2に対応する断面位置が示されている。
【0032】
図1から図3を参照して、プラグ挿入部21は、本体ケース12の外面13から凹む凹形状を有する。プラグ挿入部21Aとプラグ挿入部21Bとは、互いに同一構造を有する。
【0033】
プラグ挿入部21の構造についてより具体的に説明すると、本体ケース12は、第1側壁部22および第1底壁部23を有する。第1側壁部22は、外面13から本体ケース12の内側に折れ曲がり、筒状に延在して設けられている。第1底壁部23は、外面13から本体ケース12の内側に折れ曲がった先端で、第1側壁部22の開口端を塞ぐように設けられている。プラグ挿入部21は、外面13に開口するとともに、第1側壁部22および第1底壁部23により囲まれた位置に設けられている。
【0034】
本体ケース12には、プラグ挿入部21から退避させた電極部42(電極部42については後述する)を収容するための電極部収容部18が設けられている。電極部収容部18は、本体ケース12の内側からプラグ挿入部21を取り囲む位置に設けられている。
【0035】
より具体的には、本体ケース12は、第2側壁部16および第2底壁部17を有する。第2側壁部16は、外面13から本体ケース12の内側に連なり、第1側壁部22の外周上で筒状に延在して設けられている。第2底壁部17は、外面13から本体ケース12の内側に連なる先端で、第2側壁部16の開口端を塞ぐように設けられている。第1底壁部23と第2底壁部17とは、互いに距離を隔てて対向配置されている。電極部収容部18は、第1側壁部22、第1底壁部23、第2側壁部16および第2底壁部17により囲まれた位置に設けられている。
【0036】
本実施の形態では、円柱形状の外形を有するプラグ72に合わせて、プラグ挿入部21も円柱形状の空間として設けられている。プラグ挿入部21の形状は、挿入されるプラグ72の形状に合わせて適宜変更される。
【0037】
携帯型電話機10は、電極部42およびパッキン31をさらに有する。電極部42は、プラグ挿入部21に挿入されたプラグ72と接触するように設けられ、充電用コネクタ70を通じて供給される電力の入力部となる。
【0038】
プラグ72がプラグ挿入部21に挿入されていない通常時(図2中に示す状態)、電極部42は、プラグ挿入部21より退避した電極部収容部18に収容されている。プラグ72がプラグ挿入部21に挿入されたバッテリ充電時(図3中に示す状態)、電極部42は、電極部収容部18からプラグ挿入部21に進入し、プラグ72と接触する。
【0039】
パッキン31は、プラグ挿入部21に設けられている。パッキン31は、シリコンゴムなどの柔軟性を有する材料により形成されている。パッキン31は、プラグ挿入部21の開口を塞ぐことによって、プラグ挿入部21に水分や埃などの異物が侵入することを防ぐシール部材として設けられている。
【0040】
プラグ72がプラグ挿入部21に挿入されていない通常時(図2中に示す状態)、パッキン31は、プラグ挿入部21の開口を塞ぐ第1位置に配置されている。プラグ72がプラグ挿入部21に挿入されたバッテリ充電時(図3中に示す状態)、パッキン31は、プラグ挿入部21の開口から見て、電極部42よりも奥まった第2位置に配置されている。パッキン31は、第1位置と第2位置との間で移動可能に設けられている。パッキン31は、プラグ挿入部21に対するプラグ72の挿入方向(図3中の矢印101に示す方向)に沿ってスライド移動可能なように設けられている。
【0041】
携帯型電話機10は、板ばね41Aおよび板ばね41B(以下、特に区別しない場合は板ばね41という)と、ステム33と、プレート35と、弾性部材としてのコイルばね37と、基板電極39と、支持台46とをさらに有する。
【0042】
第1底壁部23には、貫通孔25が形成されている。貫通孔25は、プラグ挿入部21と電極部収容部18との間を連通させるように形成されている。貫通孔25には、ステム33が挿通されている。ステム33は、プラグ挿入部21に対するプラグ72の挿入方向(図3中の矢印101に示す方向)に沿って直線状に延伸している。プラグ挿入部21に配置されるステム33の一方端は、パッキン31に接続され、電極部収容部18に配置されるステム33の他方端は、プレート35に接続されている。
【0043】
プレート35は、導電性の材料により形成されている。プレート35は、電極部収容部18に収容されている。プレート35は、第1底壁部23と第2底壁部17との間に配置されている。基板電極39は、第2底壁部17に取り付けられている。基板電極39は、プレート35と向かい合わせとなる位置に配置されている。
【0044】
コイルばね37は、導電性の材料により形成されている。コイルばね37は、プレート35と基板電極39との間で両端支持されている。コイルばね37は、プラグ挿入部21に対するプラグ72の挿入方向(図3中の矢印101に示す方向)に伸縮可能なように設けられている。
【0045】
図4は、図2中のIV−IV線上に沿った携帯型電話機を示す断面図である。図2から図4を参照して、板ばね41は、導電性の材料から形成されている。前述した電極部42は、板ばね41の一部分として設けられている。
【0046】
板ばね41は、その構成部位として、第1辺部45、第2辺部44および第3辺部45を有する。板ばね41は、第1辺部45と第2辺部44との間および第2辺部44と第3辺部43との間で折れ曲がった、全体として略U字の形状を有する。
【0047】
第1辺部45の端部は、プレート35に接続されている。第1辺部45は、そのプレート35に接続された位置から第2底壁部17に向けて延伸している。第1側壁部22には、電極部挿入孔24が形成されている。電極部挿入孔24は、プラグ挿入部21と電極部収容部18との間を連通させるように形成されている。第3辺部43の端部は、電極部挿入孔24に挿入されており、その第3辺部43の端部によって電極部42が構成されている。第3辺部43は、電極部挿入孔24に挿入された位置から第2底壁部17に向けて延伸している。
【0048】
支持台46は、第2底壁部17に取り付けられている。支持台46は、三角柱の形状を有し、三角形の一辺をなす側面47と、別の一辺をなす側面48と、側面47と側面48とが交わる位置に配置される頂辺46pとを有する。支持台46は、側面47が第3辺部43と対向配置され、側面48が第1辺部45と対向配置されるように、第2底壁部17に固定されている。第2辺部44は、支持台46に載置されている。
【0049】
本実施の形態では、板ばね41として、板ばね41Aおよび板ばね41Bが設けられている。板ばね41Aと板ばね41Bとは、コイルばね37を中心に対称な位置に設けられている。板ばね41Aおよび板ばね41Bのそれぞれに対応して、第1側壁部22に電極部挿入孔24が形成され、第2底壁部17上に支持台46が設けられている。
【0050】
なお、板ばね41は複数設けられることが好ましい。複数の板ばね41は、コイルばね37を中心に等間隔に配置されることが好ましい。
【0051】
図5は、図2中の矢印Vに示す方向から見た携帯型電話機を示す図である。図2および図5を参照して、パッキン31は、プラグ挿入部21の開口形状に対応した形状、本実施の形態では、円形の平面視を有する。パッキン31は、プラグ挿入部21の開口を塞ぐ第1位置にある時に、プラグ挿入部21の開口の外周で外面13と重なり合うように設けられている。パッキン31は、プラグ挿入部21の開口よりも大径を有して形成されている。
【0052】
このような構成によれば、パッキン31とプラグ挿入部21の開口との間に隙間が生じることを抑制し、パッキン31による異物の侵入を防ぐ効果を高めることができる。
【0053】
プラグ72がプラグ挿入部21に挿入されていない通常時、電極部42は、プラグ挿入部21より退避した電極部収容部18に収容されている。このとき、板ばね41の第2辺部44は、側面47に面接触した状態で、第3辺部43から第1辺部45に近づくほど第2底壁部17からの距離が大きくなるように傾斜している。
【0054】
図3を参照して、携帯型電話機10のバッテリ充電時、充電用コネクタ70のプラグ72がプラグ挿入部21に挿入される。
【0055】
パッキン31は、プラグ72に押されることによって、プラグ挿入部21の開口を塞ぐ第1位置から、プラグ挿入部21の開口から見て電極部42よりも奥まった第2位置に向けて移動する。パッキン31は、柔軟性を有するため、プラグ挿入部21の開口よりも大径を有するにもかかわらず、変形しながらプラグ挿入部21内に進入する。第2位置において、パッキン31は、プラグ挿入部21に対するプラグ72の挿入方向において、電極部挿入孔24と第1底壁部23との間に位置決めされる。
【0056】
本実施の形態では、ステム33、プレート35および板ばね41が、パッキン31と電極部42との間を連結し、プラグ挿入部21へのプラグ72の挿入時、第1位置から第2位置に移動するパッキン31の動きを、電極部42を電極部収容部18からプラグ挿入部21に向けて移動させる動きに変換する移動機構部として設けられている。
【0057】
すなわち、パッキン31が第1位置から第2位置に移動すると、その動きがステム33を介してプレート35に伝わる。プレート35は、コイルばね37を押し縮めながら基板電極39に近接していく。このプレート35の動きに伴って、プレート35に接続された第1辺部45が支持台46の側面48に近接していくことにより、第2辺部44が頂辺46pを支点に倒れ、側面48に載置された状態となる。このとき、第3辺部43が支持台46の側面47から離れる方向に移動することにより、電極部42が電極部挿入孔24を通じてプラグ挿入部21に進入する。
【0058】
電極部42は、電極部収容部18からプラグ挿入部21に進入することにより、プラグ72と接触する。プラグ72から供給される電力は、電極部42、板ばね41、プレート35およびコイルばね37を順に伝わって、基板電極39に送られる。
【0059】
コイルばね37が押し縮められることにより、コイルばね37からパッキン31に対して、第2位置から第1位置に押し戻す力が作用される。バッテリ充電の終了後、プラグ挿入部21からプラグ72を引き抜く際に、コイルばね37からパッキン31に作用する力によって、パッキン31を第2位置からプラグ挿入部21の開口を塞ぐ元の第1位置に戻す。
【0060】
本実施の形態における携帯型電話機10では、バッテリ充電時にコイルばね37の弾性力に抗して、パッキン31を第2位置に保持するためのロック機構が設けられている。
【0061】
より具体的には、本体ケース12は、プラグ挿入部21に挿入されたプラグ72が嵌め合わされる嵌合部15を有する。嵌合部15は、外面13と第1側壁部22との角部に設けられている。一方、図3中に示すように、プラグ72は、小径部73と、小径部73よりも大きい直径を有する大径部74とを有する。プラグ挿入部21へのプラグ72の挿入時、小径部73がパッキン31と当接し、大径部74が嵌合部15に嵌め合わされる。
【0062】
このような構成により、大径部74と嵌合部15との間に、コイルばね37からパッキン31に作用する力よりも大きい摩擦力を生じさせ、バッテリ充電時にパッキン31を第2位置に保持する。
【0063】
本実施の形態における携帯型電話機10においては、プラグ挿入部21へのプラグ72の挿入に伴って、パッキン31がプラグ挿入部21の開口を塞ぐ第1位置から電極部42よりも奥まった第2位置に押し込まれるため、バッテリを充電するごとにパッキン31を取り外す必要がない。このため、パッキン31の劣化の進行を抑え、パッキン31のシール部材としての機能を長期に渡って維持することができる。
【0064】
また、本実施の形態では、プラグ72をプラグ挿入部21に挿入する動作に連動して、電極部42を電極部収容部18からプラグ挿入部21に進入させる。これにより、プラグ挿入部21へのプラグ72の挿入時に、プラグ72と電極部42とが干渉することを防ぐとともに、プラグ72の挿入後には、電極部42とプラグ72とを接触させることができる。
【0065】
また、本実施の形態では、本体ケース12に、プラス端子に対応するプラグ72Aが挿入されるプラグ挿入部21Aと、マイナス端子に対応するプラグ72Bが挿入されるプラグ挿入部21Bとが別々に設けられている。このような構成によれば、万が一プラグ挿入部21Aおよびプラグ挿入部21Bのいずれか一方に水が侵入することがあっても短絡が生じるということがない。
【0066】
以上に説明した、この発明の実施の形態1における携帯型電話機10の構造にまとめて説明すると、本実施の形態における電子機器としての携帯型電話機10は、プラグ72が挿入される凹形状のプラグ挿入部21と、プラグ挿入部21が開口する外面13とを有する筐体としての本体ケース12と、プラグ挿入部21に挿入されたプラグ72と接触するように設けられる電極部42と、プラグ挿入部21に設けられ、プラグ挿入部21の開口を塞ぐ第1位置と、プラグ挿入部21の開口から見て電極部42よりも奥まった第2位置との間で移動可能なパッキン31とを備える。プラグ挿入部21へのプラグ72の挿入時、パッキン31がプラグ72に押されることにより第1位置から第2位置に移動する。
【0067】
このように構成された、この発明の実施の形態1における携帯型電話機10によれば、パッキン31のシール部材としての機能を長期に渡って維持することにより、プラグ挿入部21に埃や水などの異物が侵入することを防ぐことができる。
【0068】
なお、本実施の形態では、電子機器の一例として携帯型電話機を挙げたが、本発明はこれに限られず、プラグが接続されることにより、充電もしくは情報信号の授受を行なう電子機器に適用される。このような電子機器の他の例としては、PDA、タブレット端末、電子辞書もしくは電子ブックリーダなどが挙げられる。
【0069】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で説明した携帯型電話機10の各種の変形例について説明する。
【0070】
図6は、携帯型電話機の第1変形例を示す断面図である。図中には、図3中の2点鎖線VIに囲まれた範囲に対応する携帯型電話機の断面形状が示されている。図6を参照して、本変形例では、バッテリ充電時にパッキン31を第2位置に保持するためのロック機構として、ばね84およびボール85が用いられている。
【0071】
本体ケース12には、ばね/ボール収容凹部83が形成されている。ばね/ボール収容凹部83は、プラグ72が挿入されるプラグ挿入部21の内壁に開口するように形成されている。ばね/ボール収容凹部83には、ばね84およびボール85が順に収容されている。プラグ72には、ばね/ボール収容凹部83に向かい合って凹部81が形成されている。プラグ72がプラグ挿入部21に挿入されると、ボール85が凹部81に嵌まり込むとともに、ばね84の弾性力によってプラグ72に対して押し付けられる。このような構成により、バッテリ充電時にコイルばね37の弾性力に抗して、パッキン31を第2位置に保持することができる。
【0072】
なお、パッキン31を第2位置に保持するためのロック機構は、以上に説明した嵌合やばね/ボールを利用した構造に限られない。たとえば、図3中に示す支持台46に電磁石構造を付加することにより、バッテリ充電時に、板ばね41の第2辺部44を側面48に吸引する磁力を生じさせてもよい。
【0073】
図7は、携帯型電話機の第2変形例を示す断面図である。図中には、実施の形態1における図4に対応する携帯型電話機の断面形状が示されている。
【0074】
図7を参照して、本変形例では、本体ケース12に、1つのプラグ挿入部21が設けられている。そのプラグ挿入部21に対して、バッテリ充電(プラス、マイナス)に用いられる板ばね41Aおよび板ばね41Bと、携帯型電話機から他機器に向けた情報信号(データ)の送信に用いられる板ばね41Cと、他機器から携帯型電話機に向けた情報信号の受信に用いられる板ばね41Dとが集約して設けられている。板ばね41A、板ばね41B、板ばね41Cおよび板ばね41Dは、コイルばね37を中心に等間隔に配置されている。
【0075】
板ばね41A〜41Dの各板ばねに設けられた電極部42と、基板電極39との間で互いに独立した電流経路を形成するため、図2中のプレート35が絶縁部材を介在させた4つの分割体として形成され、さらに、そのプレート35の4つの分割体にそれぞれ接触するように4つのコイルばね37が設けられている。
【0076】
図8は、携帯型電話機の第3変形例を示す断面図である。図8は、実施の形態1における図3に対応する図である。図9は、図8中の携帯型電話機に用いられる充電用コネクタのプラグを示す斜視図である。
【0077】
図8および図9を参照して、本変形例では、充電用コネクタ70のプラグ72に、シール部材として鍔状パッキン91が設けられる。鍔状パッキン91は、シリコンゴムなどの柔軟性を有する材料により形成されている。鍔状パッキン91は、プラグ72の外周面から鍔状に広がって設けられている。鍔状パッキン91は、プラグ挿入部21の開口形状に対応した形状、すなわち円形の平面視を有する。
【0078】
プラグ72がプラグ挿入部21に挿入された状態で、鍔状パッキン91は、プラグ挿入部21の開口の外周で外面13と重なり合うように位置決めされる。鍔状パッキン91は、プラグ挿入部21の開口よりも大径を有して形成されている。
【0079】
このような構成によれば、プラグ挿入部21へのプラグ72の挿入時に、プラグ挿入部21とプラグ72との間に隙間が生じることを抑制できる。これにより、プラグ挿入部21への異物の侵入を確実に防ぐことができる。
【0080】
このように構成された、この発明の実施の形態2における携帯型電話機によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に得ることができる。
【0081】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0082】
この発明は、たとえば、携帯型電話機、PDA、タブレット端末、電子辞書もしくは電子ブックリーダなどに利用される。
【符号の説明】
【0083】
10 携帯型電話機、11 操作ボタン、12 本体ケース、13 外面、14 液晶ディスプレイ、15 嵌合部、16 第2側壁部、17 第2底壁部、18 電極部収容部、21,21A,21B プラグ挿入部、22 第1側壁部、23 第1底壁部、24 電極部挿入孔、25 貫通孔、31 パッキン、33 ステム、35 プレート、39 基板電極、41,41A〜41D 板ばね、42 電極部、43 第3辺部、44 第2辺部、45 第1辺部、46 支持台、46p 頂辺、47,48 側面、70 充電用コネクタ、72,72A,72B プラグ、73 小径部、74 大径部、76 ACアダプタ、77 コンセントプラグ、81 凹部、83 ばね/ボール収容凹部、85 ボール、91 鍔状パッキン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラグが接続されることにより、充電もしくは情報信号の授受を行なう電子機器であって、
プラグが挿入される凹形状のプラグ挿入部と、前記プラグ挿入部が開口する外面とを有する筐体と、
前記プラグ挿入部に挿入されたプラグと接触するように設けられる電極部と、
前記プラグ挿入部に設けられ、前記プラグ挿入部の開口を塞ぐ第1位置と、前記プラグ挿入部の開口から見て前記電極部よりも奥まった第2位置との間で移動可能なパッキンとを備え、
前記プラグ挿入部へのプラグの挿入時、前記パッキンがプラグに押されることにより前記第1位置から前記第2位置に移動する、電子機器。
【請求項2】
プラグが前記プラグ挿入部に挿入されるのに伴って、前記電極部を前記プラグ挿入部より退避した位置から前記プラグ挿入部に向けて移動させる移動機構部をさらに備える、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記移動機構部は、前記パッキンと前記電極部との間を連結するように設けられ、前記プラグ挿入部へのプラグの挿入時、前記第1位置から前記第2位置に移動する前記パッキンの動きを、前記電極部を前記プラグ挿入部より退避した位置から前記プラグ挿入部に向けて移動させる動きに変換する、請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記プラグ挿入部へのプラグの挿入時に、前記パッキンに対して前記第2位置から前記第1位置へと押し戻す力を作用させる弾性部材をさらに備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記弾性部材で発生した力に抗して、前記パッキンを前記第2位置に保持するロック機構をさらに備える、請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記パッキンは、前記第1位置にある時に、前記プラグ挿入部の開口の外周で前記外面と重なり合うように設けられる、請求項1から5のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の電子機器において、充電もしくは情報信号の授受を行なう際に用いられるコネクタであって、
前記プラグ挿入部に挿入されるプラグと、
前記プラグから鍔状に広がって設けられ、前記プラグが前記プラグ挿入部に挿入された時に、前記プラグ挿入部の開口の外周で前記外面と重なり合うように位置決めされるシール部材とを備える、コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−62130(P2013−62130A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199602(P2011−199602)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】