説明

電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造

【課題】キートップとキートップ保持部との間隙から回路基板に向かう静電気の放電を効果的に基板のグランドに導き、かつGND以外の配置スペースを回路基板上に確保できる、電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造を提供する。
【解決手段】本発明の電子機器における押ボタンスイッチ装置20の静電気対策構造は、外部の静電気が押ボタンスイッチ装置20のキートップ22の側面と筐体のキートップ保持部10との隙間から回路基板30まで直接放電してしまう場合に、確実にGND部40へ放電するように回路基板30のGND部40の形状と配置とを、放電が受けやすいようにした。また、GND部40の面積が少なくてすむので、GND以外のパターン、VIAホール、電子部品を設けるスペースをスイッチ21の周辺のキートップ22の裏側にあたる部分に確保でき、外部の静電気が直接放電しないように保護をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造に関し、特に放電を受け易い形状のグランド部が、回路基板のキートップとキートップ保持部との間隙の延長線上に設けられている、電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器の押ボタンスイッチ装置は、スイッチとスイッチを操作するキートップとから構成され、スイッチは電子機器筐体内の回路基板上に配置され、キートップは筐体のキートップ保持部によってスイッチのON−OFF操作が可能な状態に保持される構造となっていることが多い。この場合キートップとキートップ保持部とには非導電性の部材が使用されていることが多かった。
【0003】
一方、操作者の身体は、衣服などとの摩擦によって数千ボルト程度に帯電している場合があり、キー操作をする場合に、最初に指の触れるキートップとキートップ保持部とには非導電性の部材が使用されていることから放電が行なわれず、キートップが押圧されたときに、キートップから回路基板までの空間距離が短い場合には、外部の静電気がキートップとキートップ保持部との間隙を通じて内部に流れ込んで、回路基板まで直接放電してしまう場合がある。このような場合に回路基板上のGND以外のパターン、VIAホール、部品等へ静電気が放電されると回路上の部品破壊を起こしてしまう場合があり、機器が故障してしまう可能性がある。
【0004】
この対策として、放電の対象となる可能性がある回路基板上のパターンや電子部品を放電保護用のシート、テープ等の絶縁物で覆って保護する方法もあるが、回路基板へ放電される場所が数箇所に及ぶ場合には多くの保護部品が必要となるという問題がある。スイッチの周囲にスイッチを取り囲んで金属のシールド板を回路基板に実装することも行なわれているが、回路基板とは別な部品を実装するための手間を必要とし、キートップとキートップ保持部との間隙と金属のシールド板との距離が近くなることから低い電圧の帯電でも放電が行なわれ、放電のノイズによる障害を発生するという問題がある。
【0005】
特許文献1では、キートップ保持部に回路基板の近傍までキートップを囲む側壁を設け、スイッチとキートップ保持部の側壁との間の回路基板の全面にグランドパターンを形成したキースイッチが開示されている。
【特許文献1】特開平6−150777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のキースイッチでは、グランドは回路基板に設けられるので特に設置に手間を必要としないが、回路基板のスイッチ以外の部分は殆どが放電対策用のグランドで覆われるので、他の目的のパターンや、VIAホール、部品を設けるスペースがなくなるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、キートップとキートップ保持部との間隙から回路基板に向かう静電気の放電を効果的に基板のグランドに導き、かつGND以外のパターン、VIAホール、部品等の配置スペースを回路基板上に確保できる、電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造は、
電子機器内部の回路基板に設けられたスイッチおよびそのスイッチのON−OFF操作を行うキートップを備えた押ボタンスイッチ装置と、キートップをその上部にて取り囲みそのキートップをスイッチのON−OFF操作が可能な状態に保持する電子機器の筐体に設けられたキートップ保持部とを有し、キートップとキートップ保持部とはキートップが押下されたときにこれらの間に間隙が生じるように配置される電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造である。
【0009】
第1の態様では、キートップが押圧されたときの、キートップの上部外縁とそのキートップの上部外縁直近のキートップ保持部の下部外縁とを結ぶ直線と回路基板との交点近傍の回路基板上に、スイッチを囲んで連続して設けられた複数のスポット状の放電用GNDランドを具備することを特徴とする。
【0010】
第2の態様では、キートップが押圧されたときの、キートップの上部外縁とそのキートップの上部外縁直近のキートップ保持部の下部外縁とを結ぶ直線と回路基板との交点近傍の回路基板上に、スイッチを囲んで連続して設けられた複数の放電用GNDチップ抵抗を具備することを特徴とする。
【0011】
回路基板のGND以外のパターンとVIAホールとが、キートップの側壁面内側の直下に対応する位置に設けられていてもよい。
【0012】
放電を受け易い形状である複数のスポット状の放電用GNDランドや放電用GNDチップ抵抗が、キートップが押圧されたときの、キートップの上部外縁とそのキートップの上部外縁直近のキートップ保持部の下部外縁とを結ぶ直線と回路基板との交点近傍の回路基板上に連続して設けられているので、キートップの側壁部とキートップ保持部との間隙からの放電は確実にGNDに流れ、他のデバイスや回路に障害を与えることがない。また、回路基板のGND以外のパターンとVIAホールとが、キートップの側壁部内部の直下に対応する位置に設けられているので、放電の被害を受けることがない。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、キートップが押圧されたときの、キートップの上部外縁とそのキートップの上部外縁直近のキートップ保持部の下部外縁とを結ぶ直線と回路基板との交点近傍に、複数のスポット状の放電用GNDランド、あるいは、放電用GNDチップ抵抗が連続して設けられているので、キートップの側壁部とキートップ保持部との間隙から進入する静電気による放電を確実に捉えることができる。従って、静電気放電による部品の故障をなくし、電子機器の信頼性を向上させるという効果がある。
【0014】
また、回路保護部品、絶縁物等の部品を使用せずに静電気から保護することが可能となるので、部品点数、コストの削減が可能となる。
さらに、静電気放電を受ける複数のスポット状の放電用GNDランド、あるいは、放電用GNDチップ抵抗は占有面積が少ないので、放電用GNDランド、あるいは、放電用GNDチップ抵抗とスイッチの側壁との間の回路基板上に、GND以外のパターンやVIAホールを配置するためのスペースを確保できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造は、外部の静電気が押ボタンスイッチ装置のキートップ部の側面と筐体のキートップ保持部との隙間から回路基板まで直接放電してしまう場合に、確実にGND部へ放電するように回路基板のGND部の形状と配置とを放電が受けやすい形状にしたことに特徴がある。また、GND部の占める面積が少なくてすむので、GND以外のパターン、VIAホール、電子部品を設けるスペースをスイッチの周辺のキートップの裏側にあたる部分に確保でき、外部の静電気が直接放電しないように保護をすることができる。
【0016】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態の電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造を示す模式的側面断面図であり、図2は本発明の第1の実施の形態の電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造を示す模式的上面図である。図1、図2では、説明を容易にするために例として2個の押しボタンスイッチ装置20を例示しているが、実際の電子機器1には通常複数の押しボタンスイッチ装置20が所定の配列で配置されている。また図1では左側のキートップ22が指70で押圧されてスイッチ21がONとなった状態、右側のキートップ22はスイッチ21に押し上げられてスイッチ21がOFFとなった状態を示している。
【0017】
第1の実施の形態の電子機器は、筐体と、筐体の内部に設けられた回路基板30と、スイッチ21とキートップ22とから構成される押しボタンスイッチ装置20とを有し、スイッチ21は回路基板30の所定の位置に固定されている。キートップ22はスイッチ21のON−OFFの操作を行うために指で押圧されるトップ部22aと、側壁部22bと、側壁部22bの凹部の中央にあってスイッチ21をON−OFFのために押圧するスイッチ押圧部22cとを有する。キートップ22のトップ部22aは、この実施の形態では、筐体と連接しているキートップ保持部10の開口部に上下動作可能に保持され、側壁部22bの上面がキートップ保持部10の開口部周辺と係合し、キートップ22をスイッチ21がOFFの状態となるように保持している。
【0018】
トップ部22aを図1の左側に示すように指70で押圧すると、キートップ22はキートップ保持部10にガイドされて下降し、スイッチ押圧部22cがスイッチ21のボタンを押圧してスイッチ21がOFFからONの状態に変化する。このとき指70に帯電していた静電気が、キートップ保持部10とキートップ22のトップ部22aとの間隙を通して、図示の静電気の放電経路60に従って回路基板30に向けて放電される。キートップ保持部10とキートップ22とには通常非導電性の部材が使用されているので、放電は回路基板30の導電部に対して発生する。
【0019】
ここでは、回路基板30上の、キートップ22が押圧されたときの、キートップ22の上部外縁とそのキートップ22の上部外縁直近のキートップ保持部10の下部外縁とを結ぶ直線と回路基板30との交点近傍の回路基板30上に、複数のスポット状の放電用GNDランド40がスイッチ21を囲んで連続して設けられているので、静電気は放電用GNDランド40に向けて放電される。放電用グランドランド40の配置位置はこれに限定されるものではなく、キートップ22の形状に対応して最も放電の起こり易い位置が選択されればよい。
【0020】
次に、本発明の第1の実施の形態の電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造の動作について説明する。キートップ保持部10と回路基板30との空間距離が近い場合に、電子機器の押しボタン操作時に人体等に蓄積した静電気が、キートップ保持部10とキートップのトップ部22aとの隙間から回路基板30まで直接放電してしまう場合がある。
【0021】
本発明では、回路基板30に放電用GNDランド40を設けることにより、静電気をGNDへ放電しやすくし、GND以外のパターン、VIAホール、部品等に放電しないようにして回路上の部品破壊を防止し、電子機器の信頼性向上を図っている。さらにGND以外のパターン51、VIAホール52等を、回路基板30のキートップ22の側壁部22bに囲まれるボタン形状の裏側へ配置することにより、静電気のGND以外の部品への放電を防止することが可能である。これらにより従来必要であった絶縁シート、絶縁テープまたは保護部品を使用しないで放電防止を行うことが可能となる。
【0022】
キートップ保持部10とキートップ22のトップ部22aとの隙間から回路基板30まで放電してしまう場合、回路基板30上の、キートップ22が押圧されたときの、キートップ22の上部外縁とそのキートップ22の上部外縁直近のキートップ保持部10の下部外縁とを結ぶ直線と回路基板30との交点近傍の回路基板30上が、直接放電される場合の外側の点となる。この内側においては、キートップ22の側壁部22bの形状等により直接放電されない場合もあるので、本実施の形態では、キートップ22が押圧されたときの、キートップ22の上部外縁とそのキートップ22の上部外縁直近のキートップ保持部10の下部外縁とを結ぶ直線と回路基板30との交点近傍を放電用GNDランド40の配置位置としているが、側壁部22bが障害にならない場合はもっと内側に配置してもよい。ここに、複数のスポット状の放電用GNDランド40がスイッチ21を囲んで連続して設けられているので、静電気は放電用GNDランド40に向けて放電され、GND以外のパターン、VIAホール、部品等への放電を防止することが可能となる。
【0023】
次に、本発明の第2の実施の形態の電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造について説明する。図3は本発明の第2の実施の形態の電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造を示す模式的側面断面図である。図3では、説明を容易にするために例として2個の押しボタンスイッチ装置20を例示しているが、実際の電子機器1には通常複数の押しボタンスイッチ装置20が所定の配列で配置されている。また図3では左側のキートップ22が指70で押圧されてスイッチ21がONとなった状態、右側のキートップ22はスイッチ21に押し上げられてスイッチ21がOFFとなった状態を示している。
【0024】
本発明の第2の実施の形態の電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造では、第1の実施の形態の電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造において、放電用GNDランド40が放電対象として設けられていたのに対し、放電用GNDチップ抵抗45が用いられている以外は同じ構成なので、同じ構成については同じ符号を用い、詳細な説明を省略する。放電用GNDランド40の代わりに放電用にGND接続されたチップ抵抗45を使用することにより、チップ抵抗45はGNDランド40よりも大きいので放電源と放電先との空間距離も近くなり、チップ端が尖っているのでその部分への放電が起こり易くなるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態の電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造を示す模式的側面断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造を示す模式的上面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態の電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造を示す模式的側面断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 キートップ保持部
20 押しボタンスイッチ装置
21 スイッチ
22 キートップ
22a トップ部
22b 側壁部
22c スイッチ押圧部
30 回路基板
40 放電用GNDランド
45 放電用GNDチップ抵抗
51 パターン
52 VIAホール
60 静電気の放電経路
70 指

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器内部の回路基板に設けられたスイッチおよび該スイッチのON−OFF操作を行うキートップを備えた押ボタンスイッチ装置と、前記キートップをその上部にて取り囲み該キートップを前記スイッチのON−OFF操作が可能な状態に保持する前記電子機器の筐体に設けられたキートップ保持部とを有し、前記キートップと前記キートップ保持部とは前記キートップが押下されたときにこれらの間に間隙が生じるように配置される電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造において、
前記キートップが押圧されたときの、前記キートップの上部外縁と該キートップの上部外縁直近の前記キートップ保持部の下部外縁とを結ぶ直線と前記回路基板との交点近傍の前記回路基板上に、前記スイッチを囲んで連続して設けられた複数のスポット状の放電用GNDランドを具備することを特徴とする電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造。
【請求項2】
電子機器内部の回路基板に設けられたスイッチおよび該スイッチのON−OFF操作を行うキートップを備えた押ボタンスイッチ装置と、前記キートップをその上部にて取り囲み該キートップを前記スイッチのON−OFF操作が可能な状態に保持する前記電子機器の筐体に設けられたキートップ保持部とを有し、前記キートップと前記キートップ保持部とは前記キートップが押下されたときにこれらの間に間隙が生じるように配置される電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造において、
前記キートップが押圧されたときの、前記キートップの上部外縁と該キートップの上部外縁直近の前記キートップ保持部の下部外縁とを結ぶ直線と前記回路基板との交点近傍の前記回路基板上に、前記スイッチを囲んで連続して設けられた複数の放電用GNDチップ抵抗を具備することを特徴とする電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造。
【請求項3】
前記回路基板のGND以外のパターンとVIAホールとが、前記キートップの側壁面内側の直下に対応する位置に設けられている、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の電子機器における押ボタンスイッチ装置の静電気対策構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−207497(P2007−207497A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22858(P2006−22858)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(300016765)NECディスプレイソリューションズ株式会社 (289)
【Fターム(参考)】