説明

電子機器の冷却構造・画像形成装置

【課題】ファンモータの個数や風量を増やすことなく、全体的な冷却効率の向上を図ることができる電子機器の冷却構造を提供する。
【解決手段】筐体51内に設けられた電子機器としてのハードディスク装置52は、ハードディスク装置側固定部材57と筐体側固定部材58とにより筐体51に固定されている。ハードディスク装置側固定部材57と筐体側固定部材58にはそれぞれ上下方向に位置がずれた通風孔が形成されており、吸気口54から入ってハードディスク装置52に当たった空気は熱を吸収し、通風孔によりハードディスク装置52から離れるように偏向され、排気口55から排気ファンモータ56により排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内に収容された制御基板やハーネス、ハードディスク装置、磁気ディスク等の電子機器(電子部品の概念を含む)を冷却する電子機器の冷却構造及びこれを有する複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、データの記録再生に用いられるハードディスク装置と、システムの制御を行う制御基板と、外部へのアクセスを行うインターフェイス等からなる電子機器を筐体内に収容した記憶装置(ディスク装置)では、ドライブモータや基板を熱源として熱が発生し、内部に熱がこもって電子機器の動作に悪影響を与える。
この熱影響を抑制するために、筐体内に外気を取り込んで電子機器に接触させて冷却することが行われている。例えば、筐体に複数の吸気口を形成して筐体内に気流がまばらに入る構成とし、発熱した空気を排気用ファンモータにより排出するようになっている。
冷却効率を高めるために、ファンモータの個数を増やして風量を大きくするといった対策も採られている。
特許文献1には、ハードディスク装置のドライブ部とこれを制御するパッケージ部との間、該パッケージ部と筐体の側板との間にそれぞれ隙間を設け、これらの隙間に吸気口から流入した外気を通して冷却する構成が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−285667号公報
【特許文献2】特開平6−139767号公報
【特許文献3】特開平7−320477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ファンモータの個数を増やして風量を大きくすることは、冷却効率を高める対策としては容易な手法であるが、騒音が大きくなるとともに消費電力の増加を来たす。
特許文献1に開示された構成では、気流との接触面積を増大させることができるので、冷却効率を高めることができる。
しかしながら、熱を奪って暖められた空気をそのまま隙間に沿って下流側(排気口)へ直線的に流す構成であるので、下流側では昇温した空気が流れ、上流側でしか冷却効率の向上が望めないという懸念があった。
【0005】
本発明は、ファンモータの個数や風量を増やすことなく、全体的な冷却効率の向上を図ることができる電子機器の冷却構造及びこれを有する画像形成装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、筐体内を流れる気流により該筐体内に設けられた電子機器を冷却する電子機器の冷却構造において、上記電子機器に当たった気流を該電子機器から離れる方向へ導く気流偏向部材を設け、気流を偏向して排気することを特徴とする。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の電子機器の冷却構造において、上記気流偏向部材が、上記電子機器を上記筐体に固定するための電子機器側固定部材と、これに対応する筐体側固定部材とを有し、上記電子機器側固定部材と上記筐体側固定部材のそれぞれに通風孔が形成され、これらの通風孔は偏芯していることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の電子機器の冷却構造において、上記筐体が吸気口と排気口とを有し、上記電子機器は上記吸気口から流入した気流が直接当たるように配置され、上記排気口には強制排気するための排気手段が設けられていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明では、画像形成装置において、請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の電子機器の冷却構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハードディスク装置等の電子機器で発生した熱を吸収した空気を電子機器から離れる方向に導いて排気するようにしたので、熱を吸収して暖められた気流の滞留を抑制でき、排気ファンモータの個数や風量を増やすことなく冷却効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の第1の実施形態を図1乃至図4に基づいて説明する。
まず、図1に基づいて本実施形態における画像形成装置(カラー複写機)の構成の概要を説明する。中間転写ユニット10の未定着像担持体としての中間転写ベルト8の下面に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部6Y、6M、6C、6Bkが並設されている。画像形成装置本体100に設置される4つの作像部6Y、6M、6C、6Bkは、作像プロセスに用いられるトナーの色が異なる以外はほぼ同一構造である。
作像部6は、像担持体としての感光体ドラム1と、感光体ドラム1の周囲に配設された帯電手段(不図示)、現像装置5、クリーニング手段(不図示)等で構成されている。感光体ドラム1上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程)が行われ、感光体ドラム1上に所望のトナー像が形成される。
作像部6を構成する、感光体ドラム1、帯電手段、現像装置5、クリーニング手段は、それぞれ、画像形成装置本体100に対して着脱自在に設置できるように構成されている。これらを一体化して、画像形成装置本体100に着脱自在に設置されるプロセスカートリッジとすることもできる。
【0010】
感光体ドラム1は、図示しない駆動源によって時計回り方向に回転駆動され、帯電手段の位置で、不図示の帯電ローラにより感光体ドラム1の表面が一様に帯電される(帯電工程)。
その後、感光体ドラム1の表面は、不図示の露光手段から発せられたレーザ光の照射位置に達して、この位置での露光走査によって静電潜像が形成される。
その後、感光体ドラム1の表面は、現像装置5との対向位置に達し、この位置で静電潜像が現像されて、所望のトナー像が形成される(現像工程)。
その後、感光体ドラム1の表面は、中間転写ベルト8及び1次転写バイアスローラ9との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム1上のトナー像が中間転写ベルト8上に転写される(1次転写工程)。このとき、感光体ドラム1上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
【0011】
その後、感光体1の表面は、クリーニング手段との対向位置に達し、この位置で感光体ドラム1上に残存した未転写トナーが不図示のクリーニングブレードによって回収される(クリーニング工程)。クリーニング後感光体ドラム1の表面は不図示の除電ローラにより電位を初期化される。
こうして、感光体ドラム1上で行われる一連の作像プロセスが終了する。
【0012】
上述した作像プロセスは、4つの作像部6Y、6M、6C、6Bkでそれぞれ行われる。すなわち、作像部の下方に配設された不図示の露光手段(光書き込み装置)から、画像情報に基づいたレーザ光が、各作像部6Y、6M、6C、6Bkの感光体ドラム上に向けて照射される。その後、現像工程を経て各感光体ドラム上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト8上に重ねて転写する。こうして、中間転写ベルト8上にカラー画像が形成される。
【0013】
4つの1次転写バイアスローラ9Y、9M、9C、9Bkはそれぞれ、中間転写ベルト8を感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkとの間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。1次転写バイアスローラ9Y、9M、9C、9Bkにはトナーの極性とは逆極性の転写バイアスが印加される。
中間転写ベルト8は、反時計回り方向に走行して、各1次転写バイアスローラ9Y、9M、9C、9Bkの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bk上の各色のトナー像が、中間転写ベルト8上に重ねて1次転写される。
【0014】
その後、各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト8は、2次転写手段としての2次転写ローラ19との対向位置に達する。中間転写ベルト8上に形成されたカラートナー像は、2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体としての転写紙P上に転写される。
こうして、中間転写ベルト8上で行われる、一連の転写プロセスが終了する。
画像形成装置本体100の下部に配設された給紙部26には転写紙Pが複数枚重ねて収納されており、給紙コロ27により1枚ずつ分離されて給紙される。給紙された転写紙Pはレジストローラ対28で一旦停止され、斜めずれを修正された後レジストローラ対28により所定のタイミングで2次転写ニップに向けて搬送される。そして、2次転写ニップにおいて転写紙P上に、所望のカラー画像が転写される。
【0015】
2次転写ニップの位置でカラー画像を転写された転写紙Pは、定着装置20へ搬送され、ここで、定着ローラ及び圧力ローラによる熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像を定着される。
定着を終えた転写紙Pは、排紙ローラ対29により、装置本体上面に形成された排紙部30へ出力画像として排出され、スタックされる。
【0016】
画像形成装置本体100の内部には、複写機を制御する電子機器の冷却構造としてのコントローラユニット50が設けられている。画像形成装置本体100の内部におけるコントローラユニット50の設置位置は図示した位置に限定される趣旨ではなく、内部のスペースを効率的に使用して適宜配置される。また、画像形成装置本体100の外面に設置してもよい。
【0017】
図2に示すように、コントローラユニット50は、ボックス形状をなす筐体51と、筐体51内に収容された電子機器としての単体のハードディスク装置52、基板類53A、53B、53C等を有している。図2は、筐体51の前面カバーを取り外した状態を示している。
筐体51の上面には外気を取り込むための吸気口54が設けられているとともに、下面には排気口55及び排気手段としての排気ファンモータ56が設けられている。吸気口54にはゴミ等の侵入を防止するフィルタを設けてもよい。
吸気口54から入る外気量を安定させるため、筐体51には吸気口54と排気口55以外にはほとんど通気穴は設けられておらず、これらを除いては気密状態に構成されている。従って、筐体51内に入り込む空気を効率的にハードディスク装置52へ流す構成となっている。
【0018】
ハードディスク装置52は、吸気口54から流入した外気が直接効果的に当たるように、吸気口54の近傍のほぼ真下に配置されており、気流偏向部材としてのハードディスク装置側固定部材(電子機器側固定部材)57と、同じく気流偏向部材としての筐体側固定部材58とにより筐体51に固定されている。
ハードディスク装置52とハードディスク装置側固定部材57との間、ハードディスク装置側固定部材57と筐体側固定部材58との間、筐体側固定部材58と基板類53Bとの間はそれぞれ間隔を有しており、気流通過可能となっている。
【0019】
ハードディスク装置側固定部材57と筐体側固定部材58にはそれぞれ通風孔57a、58aが複数形成されている。これらの通風孔57a、58aは、ハードディスク装置側固定部材57と筐体側固定部材58の固定機能を損なわない範囲で形成されている。
筐体側固定部材58は、上下に略水平に延びる折り曲げ片59、60を有しており、これらの折り曲げ片59、60には外気の気流通過の抵抗を低減するために通気孔59a、60aが形成されている。
通風孔57a、58aは、図4に示すように、孔中心が互いに上下方向にずれた偏芯態様で配置されている。
【0020】
排気ファンモータ56が動作すると、吸気口54より外気が流入し、最も温度が低い空気がハードディスク装置52に当たってハードディスク装置52を冷却する。
ハードディスク装置52に当たった空気はハードディスク装置52からの熱を吸収し、図4に矢印で示すように、通風孔57aと通風孔58aを、ハードディスク装置52から離れるように斜めに偏向されて流れ、図1に矢印で示すように、排気口55へ向かって流れて排出される。
通風孔57aと通風孔58aが偏芯しているので、空気は下流側の筐体側固定部材58の通風孔58a周囲面の熱を高効率で吸収し、排気口55へ向かう。
上記構成により、ハードディスク装置側固定部材57及び筐体側固定部材58に対する外気との接触面積が大きくなり、冷却効率が高められるとともに、熱を吸収した空気、すなわち冷却能力が低下した空気はハードディスク装置52から離れるように効率的に排出されるので、冷却通路における暖められた空気の留まりが少なく、筐体51の内部における電子機器の冷却効率を高めることができる。
【0021】
本実施形態ではハードディスク装置側固定部材57と筐体側固定部材58の通風孔57a、58aを部材面に対して略直角に形成したが、図5に示すように、斜めに形成してもよい(第2の実施形態)。このようにした場合、空気の流れがスムーズになるとともに、通風孔を流れる空気流の音を低減できる。
上記実施形態では気流偏向部材を2つの部材(ハードディスク装置側固定部材57、筐体側固定部材58)で構成したが、図6に示すように、1つの板状の気流偏向部材61を設け、斜めに空気流を偏向する通風孔61aを形成してもよい(第3の実施形態)。この場合にも気流偏向部材61はハードディスク装置52の固定部材を兼ねる構成としてもよい。
図7に示すように、厚みの大きい気流偏向部材62を設け、その厚みを利用して斜めに空気流を偏向する通風孔62aを形成してもよい(第4の実施形態)。この場合にも気流偏向部材62はハードディスク装置52の固定部材を兼ねる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態における画像形成装置の概要構成図である。
【図2】電子機器の冷却構造としてのコントローラユニットの斜視図である。
【図3】空気の流れを示す斜視図である。
【図4】通風孔での空気の偏向流れを示す断面図である。
【図5】第2の実施形態における通風孔での空気の偏向流れを示す断面図である。
【図6】第3の実施形態における通風孔での空気の偏向流れを示す断面図である。
【図7】第4の実施形態における通風孔での空気の偏向流れを示す断面図である。
【符号の説明】
【0023】
51 筐体
52 電子機器としてのハードディスク装置
54 吸気口
55 排気口
56 排気手段としての排気ファンモータ
57 気流偏向部材としてのハードディスク装置側固定部材
58 気流偏向部材としての筐体側固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内を流れる気流により該筐体内に設けられた電子機器を冷却する電子機器の冷却構造において、
上記電子機器に当たった気流を該電子機器から離れる方向へ導く気流偏向部材を設け、気流を偏向して排気することを特徴とする電子機器の冷却構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器の冷却構造において、
上記気流偏向部材が、上記電子機器を上記筐体に固定するための電子機器側固定部材と、これに対応する筐体側固定部材とを有し、上記電子機器側固定部材と上記筐体側固定部材のそれぞれに通風孔が形成され、これらの通風孔は偏芯していることを特徴とする電子機器の冷却構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器の冷却構造において、
上記筐体が吸気口と排気口とを有し、上記電子機器は上記吸気口から流入した気流が直接当たるように配置され、上記排気口には強制排気するための排気手段が設けられていることを特徴とする電子機器の冷却構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の電子機器の冷却構造を有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−156098(P2007−156098A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351107(P2005−351107)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】