説明

電子機器の支持構造体

【課題】電子機器の大型化や電子機器への改良を伴うことなく電子機器の放熱性を向上させることができる電子機器の支持構造体を提供する。
【解決手段】発熱デバイスを内蔵する電子機器3を支持する電子機器の支持構造体1であって、設置面に対して立設されるとともに基端部P1と先端部P2との間に電子機器3を支持する支柱5を備え、支柱5に内部に軸方向に延びる空洞部hを形成し、かつ、支柱5の基端部P1に、空洞部hを構成する側壁9を貫通する下側貫通孔11を設けるとともに下側貫通孔11よりも先端部P2側でかつ電子機器3の配設箇所に対応する位置に、側壁9を貫通する上側貫通孔13を設けてなる電子機器の支持構造体1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線基地局装置等の電子機器を支持する支持構造体に関し、電子機器の大型化や電子機器への改良を伴うことなく電子機器の放熱性を向上させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線式の基地局装置のような電子機器はその多くが屋外に設けられているが、内部に実装された半導体素子等の発熱デバイスによる発熱や日射による昇温で内部機器が損傷するのを防ぐために優れた放熱性が要求される。
【0003】
電子機器の放熱性を高めるための手段としては、一般的に、図2に示すように電子機器の筐体の外壁面に多数の放熱フィンを立設することにより放熱面積を増大させる自然空冷式の方法が普及している。
【0004】
ところで、近年では半導体素子の高集積化や高速化に伴って発熱量が著しく増大しているところ、理論的に放熱量に対する必要な放熱面積は決まっているので電子機器内部での発熱を放熱フィンだけで賄おうとすると多数の放熱フィンを配設しなければならず、電子機器の外部寸法が大きくなり街の景観にも影響を与えるものとなる。
【0005】
一方、特許文献1には、屋外用基地局装置の筐体に渦巻状突起部を設けて放熱面積を増大させるとともに、渦巻状突起部の中心にモーターにより回転するファンを設けて積極的に放熱を行うようにした屋外用基地局装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−121956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、放熱フィンのみによる放熱に比べると放熱効果は高いが、基地局装置の筐体自体にファンを取り付ける分、基地局装置の外部寸法の大型化は避けられず、また、基地局装置は屋外に設置されることから、ファンのモーターが湿気や埃の影響を受けて故障して所期する放熱効果が得られなくなるおそれがある。
【0008】
それゆえ、この発明は、電子機器の大型化や電子機器への改良を伴うことなく電子機器の放熱性を向上させることができる電子機器の支持構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、この発明の電子機器の支持構造体は、発熱デバイスを内蔵する電子機器を支持する電子機器の支持構造体であって、設置面に対して立設されるとともに基端部と先端部との間に前記電子機器を支持する支柱を備え、前記支柱に内部に軸方向に延びる空洞部を形成し、かつ、前記支柱の基端部に、前記空洞部を構成する側壁を貫通する下側貫通孔を設けるとともに、前記下側貫通孔よりも先端部側でかつ前記電子機器の配設箇所に対応する位置に、前記側壁を貫通する上側貫通孔を設けてなることを特徴とするものである。
【0010】
なお、この発明の電子機器の支持構造体にあっては、前記支柱に太陽光を電力に変換する太陽光発電パネルを設けるとともに、前記空洞部内に、前記太陽光発電パネルからの電力により駆動して前記下側貫通孔から前記上側貫通孔に向かう方向で空気を流動させる送風機を設けることが好ましい。
【0011】
また、この発明の電子機器の支持構造体にあっては、前記電子機器は前記発熱デバイスを収納する筐体の少なくとも一面に放熱フィンを有し、前記上側貫通孔を前記筐体の、前記放熱フィンを有する面に指向させてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
この発明の電子機器の支持構造体にあっては、支柱内の空洞部に存在する空気が外部からの熱により温められて上昇すると、いわゆる煙突効果により支柱の基端部の内部は負圧となり下側貫通孔から空気が支柱内に流入するとともに上昇した空気が上側貫通孔より流出し、流出した空気が上側貫通孔の近傍に配置された電子機器の放熱フィンに吹き付けられ、電子機器を冷却する。
【0013】
したがって、この発明の電子機器の支持構造体によれば、電子機器に対して放熱フィンの増設等を含む改良を一切行うことなく、放熱フィンに対して空気を吹き付けることができるので、電子機器の大型化を伴うことなく放熱性(冷却性)を向上させることができ、しかも、空気の密度差を利用した煙突効果により空気を加速させて電子機器に空気を吹き付ける構成であるので、従来技術のように基地局装置の筐体に直に取り付けられたファンが故障して所期する放熱効果が得られなくなるということもない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明にしたがう一実施形態の電子機器の支持構造体の概略斜視図である。
【図2】この発明にしたがう電子機器の支持構造体に取り付け可能な電子機器(基地局装置)の一例を示す概略斜視図である。
【図3】この発明にしたがう他の実施形態の電子機器の支持構造体の概略斜視図である。
【図4】この発明にしたがうさらに他の実施形態の電子機器の支持構造体の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1中符号1は、この発明にしたがう第1の実施形態の支持構造体1を示し、ここにおける支持構造体1は、地面等の設置面に対して立設、固定されるとともに基端部P1と先端部P2との間に電子機器3を支持する支柱5を備えている。電子機器3は、ここでは、携帯電話やPHS等用の基地局装置であり、この電子機器3は、その詳細を図2に示すように、アンテナ、送受信部及び制御部等からなる各種デバイス(図示省略)を箱形の筐体3aに収容してなるものであり、取り付け金具7により支柱5の周りに固定されている。また、電子機器3の筐体3aの前面および背面(支柱5と対向する面)には、複数の放熱フィン3bが所定の間隔をおいてそれぞれ配設されている。なお、電子機器3内に収納された各デバイスの配置に関し、発熱が大きいデバイスを、後述する上側貫通孔13から流出する空気により高い冷却効果が期待される背面側(支柱5に近い側)に配置するのが好ましい。
【0017】
支柱5は、円筒鋼管で構成されて内部に軸方向に延びる空洞部hを有するものである。また、支柱5はその基端部P1に空洞部hを構成する側壁9を貫通する下側貫通孔11を有するとともに、下側貫通孔11よりも先端部P2側でかつ電子機器3の取付け箇所に対応する位置に、側壁9を貫通する上側貫通孔13を有している。下側貫通孔11は少なくとも1つ設ければよく、この実施形態では、下側貫通孔11を互いに対向する2箇所に設けている。また、上側貫通孔13も少なくとも1つ設ければよく、この実施形態では、上側貫通孔13を電子機器3と対向する1箇所に設けている。
【0018】
また、この実施形態では、支柱5の内部に上側貫通孔13の上方に近接して配置されるとともに空洞部hの該上側貫通孔13よりも上側部分を閉塞して、下側貫通孔11から流入し上昇した空気の流れを上側貫通孔13に指向させて流出させる偏向板15が設けられている。
【0019】
かかる実施形態の支持構造体1にあっては、支柱5内の空洞部hに存在する空気が外部からの熱により温められて上昇すると、いわゆる煙突効果により支柱5の基端部P1の内部は負圧となり下側貫通孔11から空気が支柱5内に流入するとともに上昇した空気が上側貫通孔13より流出し、流出した空気が上側貫通孔13の近傍に配置された電子機器3の放熱フィン3bに吹き付けられ、電子機器3を冷却する。
【0020】
したがって、この実施形態の支持構造体1によれば、電子機器3に対して放熱フィン3bの増設等を含む改良を一切行うことなく、放熱フィン3bに対して空気を吹き付けることができるので、電子機器3の大型化を伴うことなく放熱性(冷却性)を向上させることができ、しかも、空気の密度差を利用した煙突効果により空気を加速させて電子機器3に空気を吹き付ける構成であるので、従来技術のように基地局装置の筐体3aに直に取り付けられたファンが故障して所期する放熱効果が得られなくなるということもない。
【0021】
また、この実施形態の支持構造体1によれば、上側貫通孔13を電子機器3の筐体3aの、放熱フィン3bを有する面に指向させる構成としたことから、上側貫通孔13から流出した空気を電子機器3の放熱フィン3bに確実に吹き付けることができて、電子機器3の放熱性をさらに向上させることができる。
【0022】
次いで、この発明にしたがう他の実施形態の電子機器の支持構造体1について図3を参照して説明する。
【0023】
図3に示すように、この実施形態の電子機器の支持構造体1は、支柱5の先端部P2近傍に、支柱5に保持された電子機器3の上面を覆うように固定された、太陽光を電力に変換する太陽光発電パネル17と、支柱5の空洞部hを構成する側壁9の内面にその回転軸を上下方向(支柱5の軸方向)として固定され、上方に向けて空気を送風する送風機19とを具えている。太陽光発電パネル17と送風機19の直流モーター21とは配線23によって電気的に接続されていて、太陽光発電パネル17が光を受けて発生させた電力は直接、直流モーター21に供給されるようになっている。その他の構成は、前述の実施形態と同じである。
【0024】
かかる実施形態の電子機器の支持構造体1は、自然対流により下側貫通孔11より流入した空気が上昇するのに加えて、太陽光発電パネル17が給電して送風機19を作動させ、空洞部h内に積極的に上昇流を発生させるので、上側貫通孔13より流出する空気をより高速で電子機器3の放熱フィン3bに吹き付けることができ、電子機器3の放熱効果を一層高めることができ、しかも日差しが強くなると電子機器3に対するより一層の冷却が必要となるところ、日差しが強くなればなるほど太陽光発電パネル17から送風機19に給電される電力が増大し電子機器3に吹き付けられる空気の流速が増すので、周囲の熱環境に応じた冷却を容易に実現することができる。また送風機19は、前述の従来技術とは異なり、雨や埃の影響を受け難い支柱5内に配置されていることから容易に故障することもない。
【0025】
また、この実施形態の電子機器の支持構造体1によれば、太陽光発電パネル17を電子機器3の上面を覆うように配置したことから、太陽光発電パネル17が日除けとしても機能し、日射による電子機器3の温度上昇をも抑制することができる。
【0026】
なお、この実施形態の電子機器の支持構造体1にあっては、太陽光発電パネル17から得られる電力を蓄積し、蓄積した電力を送風機19に供給する蓄電池(図示省略)を設けてもよく、これによれば、天候が悪く太陽光発電パネル17から十分な電力が得られない場合であっても、安定して送風機19に電力を送ることができる。この場合、電子機器3の筐体3aに温度センサを設けるとともに、温度センサからの温度情報に基づいて蓄電池から送風機19に供給する電力を調整する電力制御手段(図示省略)を設けてもよく、これによれば、天候が悪く太陽光発電パネル17から十分な電力が得られない場合であってかつ電子機器3の温度がそれ程高くない場合には、送風機19の稼動を停止または低下させ、反対に天候が悪く太陽光発電パネル17から十分な電力が得られない場合であってかつ電子機器3の温度が高い場合には送風機19の稼動を増大させることができ、電子機器3の温度状況に応じた送風機19の運転が可能となるので、天候が悪い場合に常時送風機19を稼動させる場合に比べて蓄電池に蓄積された電力をセーブすることができ、すなわち、天候が悪い期間が長期にわたっても安定した電子機器3の冷却を実現することができる。
【0027】
以上、図示例に基づきこの発明を説明したが、この発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜に変更することができる。例えば、前述の実施形態では、支柱5は地面に直接立設すると説明したが、図4に示すように、支柱5は建物構造物Bの壁面B1や屋上に取り付けてもよい。また、一つの支柱5に取り付ける電子機器3の数は一つに限らず二以上とすることができ、その場合、各電子機器3に対応して上側貫通孔13を配設することが好ましい。さらに、支柱5の形状は円筒形に限らず、断面形状が正方形または長方形の角形鋼管で構成してもよい。加えて、空気の密度差を利用する観点から支柱5は重力方向に沿って配置することが好ましいが、上記煙突効果が発揮される範囲内で重力方向に対して傾斜して配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
かくしてこの発明により、電子機器の大型化や電子機器への改良を伴うことなく電子機器の放熱性を向上させることができる電子機器の支持構造体を提供することが可能となった。
【符号の説明】
【0029】
1 電子機器の支持構造体
3 電子機器
3a 筐体
3b 放熱フィン
5 支柱
7 取り付け金具
9 側壁
11 下側貫通孔
13 上側貫通孔
15 偏向板
17 太陽光発電パネル
19 送風機
h 空洞部
P1 基端部
P2 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱デバイスを内蔵する電子機器を支持する電子機器の支持構造体であって、
設置面に対して立設されるとともに基端部と先端部との間に前記電子機器を支持する支柱を備え、
前記支柱に内部に軸方向に延びる空洞部を形成し、かつ、
前記支柱の基端部に、前記空洞部を構成する側壁を貫通する下側貫通孔を設けるとともに、前記下側貫通孔よりも先端部側でかつ前記電子機器の配設箇所に対応する位置に、前記側壁を貫通する上側貫通孔を設けてなることを特徴とする電子機器の支持構造体。
【請求項2】
前記支柱に太陽光を電力に変換する太陽光発電パネルを設けるとともに、
前記空洞部内に、前記太陽光発電パネルからの電力により駆動して前記下側貫通孔から前記上側貫通孔に向かう方向で空気を流動させる送風機を設けることを特徴とする請求項1に記載の電子機器の支持構造体。
【請求項3】
前記電子機器は前記発熱デバイスを収納する筐体の少なくとも一面に放熱フィンを有し、
前記上側貫通孔を前記筐体の、前記放熱フィンを有する面に指向させてなることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器の支持構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−98495(P2013−98495A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242652(P2011−242652)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】