説明

電子機器の構造

【課題】カバーに取り付けられたヒンジの穴(図示せず)に、BOXシャーシに取り付けられたヒンジのピンが挿入されることにより、BOXシャーシにカバーが取り付けられ、カバーを開閉する際、ピンが穴の中で回転する電子機器の構造において、カバーの開閉を繰り返しても、BOXシャーシに対するカバーの位置ずれを防止できるようにするために、ヒンジが電子機器長手方向に摺動するのを抑えることができるようにする。
【解決手段】BOXシャーシのヒンジの近傍にストッパ14を取り付けることにより、カバーを開閉する際、ヒンジが摺動しようとしたとき、ヒンジがストッパ14に当たるようにすることで、ヒンジの摺動を抑えることで、BOXシャーシに対するカバーの位置ずれを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースに取り付けられたヒンジのピンが、カバーに取り付けられたヒンジの穴に挿入されることにより、ケースにカバーが取り付けられる電子機器の構造に係り、更に詳しくは、取り付けられたカバーを開閉する際の前記カバーに取り付けられたヒンジの摺動によって発生するカバーのずれ防止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一例である電子機器の構造について、図6を参照して説明する。図6は、従来の一例である電子機器の外観及びこの電子機器の構成要素であるBOXシャーシ、カバーの外観を示す図である。この電子機器は、BOXシャーシ1とカバー2により構成される。BOXシャーシ1には、ピン10を有するヒンジ3が取り付けられており、一方、カバー2には、ヒンジ4が取り付けられている。なお、BOXシャーシ1へのカバー2の取り付けは、ヒンジ4に設けられた穴(図示せず)にピン10を挿入することにより行う。ピン10を挿入後、操作者がカバー2を動かしたとき、ヒンジ4に設けられた穴の中をピン10が回転することにより、キャリングケースの様に、カバー2が開閉する構造となっている。カバー2を閉めた後、固定ネジ11にてカバー2がBOXシャーシ1に取り付けられる。なお、カバー2の開閉が自在に行えるようにするためには、カバー2が閉じた状態のときのヒンジ3とヒンジ4の面(つら)位置を合わせなければならないため、調整用のスペーサ6を介在してヒンジ3をBOXシャーシ1に取り付けることがある。
【0003】
BOXシャーシ1の内部には、電源装置(図示せず)や回路基板(図示せず)などが取り付けられ、回路基板に実装された発熱部品(図示せず)を冷却するために必要に応じてヒートシンク5が取り付けられる。一方、カバー2の内部には、主に無線や制御関係の回路基板(図示せず)が実装され、回路基板をシールドのためにシールドカバー9が取り付けられる。更に、カバー2には、ヒートシンク8のフィンの破損防止や、組立及び設置作業者の怪我防止のために、ヒートシンクカバー7が取り付けられる。
【特許文献1】発見されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の従来の電子機器の構造では、組立作業や設置作業時に地面に対して水平に置かれた状態でカバー2の開閉を行うと、ヒンジ4は電子機器長手方向に摺動することによって、序々にBOXシャーシ1に対するカバー2の位置がずれていくことがある。そのため、BOXシャーシ1に対するカバー2の位置ずれに気づかずに開閉を操作者が繰り返すと、BOXシャーシ1の端面12にカバー2が当たり、その結果、BOXシャーシ1、カバー2に傷がつくか、もしくは、塗装剥がれを引き起こすという不具合を発生することがあった。そして、カバー2がBOXシャーシ1に当たったときの衝撃が大きかったとき、傷や塗装剥がれだけでなく、BOXシャーシ1、カバー2が変形、もしくは破損するという不具合も発生することがあった。
【0005】
また、従来の電子機器を屋外で使用する場合、端面12の反対面に日よけカバー(図示せず)が取り付けられるが、同様にして、ヒンジ4が電子機器長手方向に摺動することによるカバー2の位置ずれに気づかずに開閉を操作者が繰り返すと、日よけカバーにカバー2が当たることによって、傷、塗装剥がれを引き起こすという不具合が発生するが、日よけカバーにカバー2が当たったときの衝撃が大きかったとき、傷、塗装剥がれを引き起こすだけでなく、変形、もしくは破損するという不具合も発生することがあった。
【0006】
従って、組立作業時、設置作業時において、カバー2の位置ずれにより、BOXシャーシ1、カバー2等(屋外で使用する場合、日よけカバーを含む)に傷がつくか、もしくは、塗装剥がれを引き起こすことにより、製品として使用不可能となるという問題を引き起こす。最悪の場合、BOXシャーシ1、カバー2等が変形、もしくは破損することにより、電子機器装置としての使用が不可能となる場合がある。
【0007】
そこで、本発明では、前述の不具合を除去することにより、カバー2の開閉を繰り返しても、ヒンジ4が電子機器長手方向に摺動するのを抑えることによって、BOXシャーシ1に対するカバー2の位置ずれを防止できるようにすることで、組立作業時、設置作業時において、BOXシャーシ1、カバー2等に傷や塗装剥がれが発生するのを防ぐと共に、BOXシャーシ1、カバー2等が変形、破損するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明では、前述の目的を達成するために、カバーに取り付けられた第1のヒンジ(実施例では、ヒンジ4)の穴に、ケース(実施例では、BOXシャーシ1)に取り付けられた第2のヒンジ(実施例では、ヒンジ3)のピン(実施例では、ピン10)が挿入されることにより、前記ケースに前記カバーが取り付けられ、前記カバーを開閉する際、前記ピンが前記穴の中で回転する電子機器の構造において、前記ケースの第2のヒンジの近傍に取り付けられるストッパ(実施例では、ストッパ14)を備え、前記カバーを開閉する際、前記第1のヒンジが摺動することによる前記ケースに対する前記カバーのずれを前記ストッパが抑えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第2のヒンジの近傍に取り付けられたストッパが、カバーを開閉したときに第1のヒンジが摺動するのを抑えることにより、ケースに対するカバーの位置ずれを防止することができるため、組立作業時、設置作業時において、ケース、カバーに傷、塗装剥がれが発生するのを防ぐことができると共に、ケース、カバーの変形、破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施例である電子機器の構造について、図1〜図5を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例である電子機器の外観を示す図(正面図、平面図、右側面図)である。図2は、本発明の一実施例である電子機器のBOXシャーシの外観を示す右側面図である。図3は、本発明の一実施例である電子機器のカバーの外観を示す右側面図である。図4は、本発明の一実施例である電子機器の電子機器のストッパの取り付け構造を示す図(正面図、底面図、右側面図)である。図5は、本発明の一実施例である電子機器のストッパの外観を示す図(正面図、平面図、右側面図)である。
【0011】
図1〜図3の通り、本実施例の電子機器は、ヒンジ4に設けられた穴にピン10を挿入することでカバー2をBOXシャーシ1に取り付けた後、カバー2を回転させたとき、ヒンジ4の穴の中でピン10が回転する構造となっている点で、図6に示す従来の電子機器の構造とは共通である。本実施例の電子機器は、図6に示す従来の電子機器に比べて、更に、ストッパ14がBOXシャーシ1のヒンジ3の近傍に取り付けられていることにより、ストッパ14でヒンジ4が摺動しようとするのを抑える構造となっている。この構造により、カバー2がBOXシャーシ1に対してずれるのを防止することができるため、組立作業時、設置作業時において、ケース、カバーに傷、塗装剥がれが発生するのを防ぐことができると共に、ケース、カバーの変形、破損を防止することができる。
【0012】
なお、本実施例の電子装置では、ストッパ14は、図4の通り、BOXシャーシ1にネジ1個にて取り付けることにより、BOXシャーシ1にネジ穴13を設けるか、ネジ穴13付きの板金6をBOXシャーシ1に溶接するか、もしくは、ネジ穴13付きの板金6をBOXシャーシ1にリベットで固定するようにしている。そして、ストッパ14には、図5の通り、丸穴17を設けるようにしている。ネジ1個にて取り付けられたストッパ14の端面16がヒンジ4の押さえの役割を果たすが、一般的にカバー2の質量が重いため、ストッパ14にはステンレス等の強度的に強い材料を選定する。
【0013】
そして、ストッパ14に設けられた丸穴17の直径と、ネジ穴13の呼び径との差は、極力、小さくなるように設定する。具体的な例として、ネジ穴13がM5(JIS B 0205参照)である場合、丸穴17の直径を、5.2〜5.3mmとなるようにすることで、ヒンジ3とストッパ14との間の隙間18のバラツキを、0.2〜0.3mmとなるようにする。丸穴17の直径とネジ穴13の呼び径との差を、極力、小さくすることにより、ヒンジ3とストッパ14との間の隙間18のバラツキを、極力、小さくすることができる。
【0014】
更に、隙間18のバラツキを極力小さくすると共に、ストッパ14をBOXシャーシ1に取り付ける際、ストッパ14の端面16をヒンジ3に当てて取り付けることで、隙間18が0になるようにして、カバー2開閉時にヒンジ4が全く摺動しないようにすることができる。仮に、ストッパ14の端面16をヒンジ3に当てないで取り付けるようにしても、隙間18は、丸穴17とネジ穴13の呼び径との差以内に抑えることができるため、丸穴17とネジ穴13の呼び径との差以内でしかヒンジ4は動かないため、BOXシャーシ1に対するカバー2のずれを最小限に抑えることができる。例えば、前述の通り、ネジ穴13がM5(JIS B 0205参照)で、丸穴17の直径が5.2〜5.3mmである場合、隙間18は0.2〜0.3mm以内となるため、BOXシャーシ1に対するカバー2のずれを0.2〜0.3mm以内に抑えることができる。
【0015】
また、前述の様に、BOXシャーシ1に対するカバー2のずれを最小限に抑えるようにしなくても、カバー2を閉めたときにBOXシャーシ1の端面12に当たらないようにすれば良いため、即ち、カバー2を開閉したときにヒンジ4が摺動したとしても、カバー2がBOXシャーシ1の端面12に当たる前にヒンジ4がストッパ14の端面16に当たるようにすれば良いため、隙間18が、カバー2がBOXシャーシ1の端面12に当たるまでのヒンジ4の摺動距離よりも小さくなるように、丸穴17、ネジ穴13の寸法、位置を設定するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例である電子機器の外観を示す図(正面図、平面図、右側面図)。
【図2】本発明の一実施例である電子機器のBOXシャーシの外観を示す正面図。
【図3】本発明の一実施例である電子機器のカバーの外観を示す正面図。
【図4】本発明の一実施例である電子機器のストッパの取り付け構造を示す図(正面図、平面図、右側面図)。
【図5】本発明の一実施例である電子機器のストッパの外観を示す図(正面図、平面図、右側面図)。
【図6】従来の一例である電子機器の外観及びこの電子機器を構成するBOXシャーシ、カバーの外観を示す図。
【符号の説明】
【0017】
1:BOXシャーシ 2:カバー
3:ヒンジ(BOXシャーシ側) 4:ヒンジ(カバー側)
5:ヒートシンク(BOXシャーシ側) 6:板金
7:ヒートシンクカバー 8:ヒートシンク(カバー側)
9:シールドカバー 10:ピン
11:固定ネジ 12:BOXシャーシの端面
13:ネジ穴 14:ストッパ
15:ネジ 16:ストッパの端面
17:ストッパの丸穴 18:隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーに取り付けられた第1のヒンジの穴に、ケースに取り付けられた第2のヒンジのピンが挿入されることにより、前記ケースに前記カバーが取り付けられ、前記カバーを開閉する際、前記ピンが前記穴の中で回転する電子機器の構造において、
前記ケースの第2のヒンジの近傍に取り付けられるストッパを備え、前記カバーを開閉する際、前記第1のヒンジが摺動することによる前記ケースに対する前記カバーのずれを前記ストッパが抑えるようにしたことを特徴とする電子機器の構造。
【請求項2】
請求項1記載の電子機器の構造において、
前記ストッパを前記ケースにネジ止めする際、前記第2のヒンジと前記ストッパとの隙間を所定値以下とするように、前記ストッパに設けた丸穴と前記ケースに設けたネジ穴の寸法、位置が設定されたことを特徴とする電子機器の構造。
【請求項3】
請求項1乃至2記載の電子機器の構造において、
前記ストッパを前記ケースにネジ止めする際、前記第2のヒンジと前記ストッパとの隙間が、最大で前記ストッパに設けた丸穴の直径と前記ケースに設けたネジ穴の谷径との差となるように、前記丸穴と前記ネジ穴の寸法、位置が設定されたことを特徴とする電子機器の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−28060(P2008−28060A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197694(P2006−197694)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】