説明

電子機器の樹脂封止成形方法

【課題】樹脂の注入充填時に配線基板に反りが発生することを確実に防止できて、高い信頼性を得ることのできる電子機器の樹脂封止成形方法を提供する。
【解決手段】配線基板3と、ベース1と、コネクタ3とからなるサブモジュール10’を、成形型20内にセットし、この成形型20内に熱硬化性樹脂を注入充填して、前記配線基板3の全面と前記ベース1及びコネクタ2の一部とを熱硬化性樹脂により一体的に封止成形する。この場合、前記熱硬化性樹脂の注入充填時に前記配線基板3に反りが発生するのを防止すべく、前記成形型20の内面に、前記配線基板3に届くようにボス25a、25b、25cを突設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の全面とベース(ケース)及びコネクタの一部とを熱硬化性樹脂により一体的に封止成形するようにされた電子機器の樹脂封止成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板、ベース、及びコネクタを備えた車載用エンジンコントロールユニット等の電子機器において、その高信頼化を図る方策の一つとして、例えば下記特許文献1等にも見られるように、前記配線基板の全面とベース及びコネクタの一部とを熱硬化性樹脂により一体的に封止成形することが提案されている。
【0003】
このような電子機器の樹脂封止成形にあたっては、図4に示される如くに、金属製のベース1、このベース1の台座11に乗せられてネジ類8a、8b、8cで止められた配線基板3、及びコネクタ2からなるサブモジュール10’を、図示しない成形型内にセットし、成形型の一端側から、熱硬化性樹脂を配線基板3の下面側(ベース1の底面との間の隙間Sa)に注入充填するとともに、コネクタ2側に流動させて充填した後、上面側に流動させて、配線基板3の全面とベース1及びコネクタ2の一部(内面側)とを熱硬化性樹脂で覆うようにされる。
【0004】
【特許文献1】特開2006-190725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した如くの従来の電子機器の樹脂封止成形方法では、配線基板3を樹脂で封止することを重視しすぎたため、封止成形時の樹脂流動の影響により、配線基板3の下面とベース1との間に形成される隙間Saから樹脂が流れ始め、コネクタ2部分及び配線基板3の両端のように、大きな容積の部分及び遠い部分が流れの合流点9a、9b、9cとなり、それが応力(基板3を上方に押し上げる力)となって、配線基板3に反りを発生させてしまう。このように配線基板3に反りが発生すると、実装された電子部品や配線パターン等にクラック等の不具合が発生するおそれがあり、信頼性が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、前記した如くの問題を解消すべくなされたもので、その目的とするところは、樹脂の注入充填時に配線基板に反りが発生することを確実に防止できて、高い信頼性を得ることのできる電子機器の樹脂封止成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するべく、本発明に係る電子機器の樹脂封止成形方法は、電子部品が実装された配線基板と、該配線基板が搭載されたベースと、該ベースに取り付けられたコネクタとからなるサブモジュールを、成形型内にセットし、この成形型内に熱硬化性樹脂を注入充填して、前記配線基板の全面と前記ベース及びコネクタの一部とを熱硬化性樹脂により一体的に封止成形するようにされ、前記熱硬化性樹脂の注入充填時に前記配線基板に反りが発生するのを防止すべく、前記成形型の内面に、前記配線基板に届くようにボスを突設したことを特徴としている。
【0008】
前記ボスを、好ましくは、前記成形型の内面の複数箇所に設けるようにされる。
【0009】
他の好ましい態様では、前記ボスを、前記配線基板における前記成形型内に注入された熱硬化性樹脂の合流点となる部位に、それぞれその先端が当接するように配在する。
【0010】
別の好ましい態様では、前記樹脂封止成形後に、硬化したモールド樹脂部に形成されている前記ボスの痕跡穴に接着剤を充填してそこを閉塞するようにされる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電子機器の樹脂封止成形方法では、配線基板に届くように成形型の内面に突設されたボスにより、熱硬化性樹脂の注入充填時の樹脂流動に起因する配線基板の反りを確実に抑えることができ、高い信頼性を得ることができる。
【0012】
また、硬化したモールド樹脂部に形成されている前記ボスの痕跡穴に接着剤を充填してそこを閉塞することにより、ほぼ完璧な防水構造となり、これによっても、信頼性が一層向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の樹脂封止成形方法の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る樹脂封止成形方法の一実施形態により成形された電子機器の一例を示し、(A)は平面図、(B)は背面図、(C)側面図である。また、図2は、図1に示される電子機器10の組立及び樹脂封止成形手順の説明に供される図である。
【0015】
図示の電子機器10は、車載用エンジンコントロールユニット(ECU)として用いられるもので、大別して金属製のベース1、コネクタ2、電子部品(図示せず)が実装された配線基板3、及びモールド樹脂4から構成される。
【0016】
かかる電子機器10の組立及び樹脂封止成形は、次のようにして行われる。
【0017】
まず、図2(A)に示される如くに、ベース1に、コネクタ2を接着剤で取り付ける。ベース1には、配線基板3を受けるためのボス及び台座11が設けられており(図2(E)及び図3参照)、配線基板3の放熱用として、シート7a、7bが貼り付けられている(図2(B)参照)。
【0018】
次に、図2(B)〜(E)に示される如くに、コネクタ2のリード端子を挿入しながら、配線基板3をベース1のボス及び台座11の上に載せ、配線基板3をネジ類8a、8b、8cにより3点で締付固定する。
【0019】
このようにして組み立てられたベース1、配線基板3、及びコネクタ2からなるサブモジュール10’を、図3に示される如くに、成形型20内にセットし、成形型20の一端側から、熱硬化性樹脂を配線基板3の下面側(ベース1の底面との間の隙間Sa)に注入充填するとともに、コネクタ2側に流動させて充填した後、上面側に流動させて、配線基板3の全面とベース1及びコネクタ2の一部(内面側)とを熱硬化性樹脂で覆って封止し、内部(配線基板3等)への水の侵入を阻止する構造とする。
【0020】
この場合、図3、図4に示される如くに、熱硬化性樹脂の注入充填時に、その流動力により、配線基板3におけるネジ類8a、8b、8cで固定されていない部分(9a,9b,9c)に反りを生じるおそれがある。より詳細には、コネクタ2部分及び配線基板3の両端のように、大きな容積の部分及び遠い部分は流れの合流点となるため、その部分に応力(基板3を上方に押し上げる力)が生じて、配線基板3に反りを発生させてしまう。
【0021】
その対応として、本実施形態では、図3に示される如くに、成形型20の内面の3箇所に、配線基板3に届くようにボス25a、25b、25cが突設されている。ここでは、前記ボス25a、25b、25cは、前記配線基板3における前記成形型20内に注入された熱硬化性樹脂の合流点となる部位、つまり、配線基板3における反りが発生しやすい部分9a、9b、9cに、それぞれその先端が当接するように配在されている。
【0022】
また、上記樹脂封止成形後に、硬化したモールド樹脂部4に形成されている前記ボス25a、25b、25cの痕跡穴5a、5b、5cに接着剤6を充填硬化させてそこを閉塞する。なお、接着剤6は、モールド樹脂4に合せて選択することが望ましく、種類も高温硬化用でも常温硬化用でもどちらでもよい。
【0023】
このように本実施形態の樹脂封止成形方法では、配線基板3に届くように成形型20の内面に突設されたボス25a、25b、25cにより、熱硬化性樹脂の注入充填時の樹脂流動に起因する配線基板3の反りを確実に抑えることができ、高い信頼性を得ることができる。
【0024】
また、硬化したモールド樹脂部4に形成されている前記ボス25a、25b、25cの痕跡穴5a、5b、5cに接着剤6を充填してそこを閉塞することにより、ほぼ完璧な防水構造となり、これによっても、信頼性が一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る樹脂封止成形方法の一実施形態により成形された電子機器の一例を示し、(A)は平面図、(B)は背面図、(C)側面図。
【図2】図1に示される電子機器10の組立及び樹脂封止成形手順の説明に供される図。
【図3】本発明に係る樹脂封止成形方法の一実施形態における樹脂封止成形時の様子を示す断面図。
【図4】配線基板に反りが発生する原因の説明に供される図。
【符号の説明】
【0026】
1:ベース、2:コネクタ、3:配線基板、4:モールド樹脂、5a,5b,5c:痕跡穴、6:接着剤、7a,7b:放熱用シート、8a,8b,8c:ネジ類、9a,9b,9c:配線基板における反りが発生しやすい部分、10:電子機器、10’:サブモジュール、20:成形型、25a、25b、25c:ボス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装された配線基板と、該配線基板が搭載されたベースと該ベースに取り付けられたコネクタとからなるサブモジュールを成形型内にセットし、この成形型内に熱硬化性樹脂を注入充填して、前記配線基板の全面と前記ベース及びコネクタの一部とを熱硬化性樹脂により一体的に封止成形するようにされた電子機器の樹脂封止成形方法であって、
前記熱硬化性樹脂の注入充填時に前記配線基板に反りが発生するのを防止すべく、前記成形型の内面に、前記配線基板に届くようにボスを突設したことを特徴とする電子機器の樹脂封止成形方法。
【請求項2】
前記ボスを、前記成形型の内面の複数箇所に設けることを特徴とする請求項1に記載の電子機器の樹脂封止成形方法。
【請求項3】
前記ボスを、前記配線基板における前記成形型内に注入された熱硬化性樹脂の合流点となる部位に、それぞれその先端が当接するように配在したことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器の樹脂封止成形方法。
【請求項4】
前記樹脂封止成形後に、硬化したモールド樹脂部に形成されている前記ボスの痕跡穴に接着剤を充填してそこを閉塞することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電子機器の樹脂封止成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−158793(P2009−158793A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336958(P2007−336958)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】