説明

電子機器の防水構造

【課題】電子機器において、透明板に対する印刷層の付着強度に依存することなく高い防水効果が得られる防水構造を提供する。
【解決手段】本発明に係る電子機器の防水構造は、筐体1に設けられ且つ開口12を有する枠部と、光透過部32を有し開口12を覆って接着剤4により枠部に固定された透明板3と、透明板3の光透過部32を包囲して該透明板の背面に形成された印刷層31とを有している。印刷層31は、透明板3の背面領域の内、光透過部32と透明板の外周環状領域33とを除く領域に形成され、透明板の外周環状領域33と枠部の開口12の内周面とに跨って接着剤4が塗布されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ等の電子機器の防水構造に関し、特に、筐体に開設された窓に対して防水を施す防水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラや腕時計等の電子機器においては、採光若しくは透視のために開設された窓に対して種々の防水構造が採用されている(特許文献1参照)。
【0003】
例えば図5に示すカメラにおいては、筐体(5)に、筐体(5)の前方から入射する光を筐体(5)内に採り入れるための開口(51)が開設されており、該開口(51)を覆ってガラス製の透明板(6)が取り付けられている。
【0004】
透明板(6)の背面には、その外周領域を覆って遮光性を有する印刷層(61)が形成されており、該印刷層(61)によって包囲された中央領域が光透過部(62)となっている。
そして、筐体(5)の開口(51)の内周領域と印刷層(61)の背面領域に跨って接着剤(7)が塗布されており、これによって筐体(5)に透明板(6)が固定されると共に、外部から筐体(5)内に水が浸入することを防止している。
【0005】
該カメラにおいては、透明板(6)の背面領域の内、光透過部(62)を包囲する環状領域に、遮光性を有する印刷層(61)が形成されているので、ユーザ側からは、筐体(5)内の余計な機構部分が隠されて見えることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−105654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図5に示すカメラにおいては、経年劣化等により透明板(6)に対する印刷層(61)の付着強度が低下した場合、透明板(6)の背面から印刷層(61)が剥離する虞がある。これによって、透明板(6)の背面と印刷層(61)との間に僅かな隙間が形成されて、この隙間から筐体(5)内に水が浸入する問題があった。
【0008】
そこで本発明の目的は、電子機器において、透明板に対する印刷層の付着強度に依存することなく高い防水効果が得られる防水構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電子機器の防水構造は、筐体に設けられ且つ開口を有する枠部と、光透過部を有し前記開口を覆って接着剤により前記枠部に固定された透明板と、該透明板の光透過部を包囲して該透明板の背面に形成された印刷層とを有している。
【0010】
ここで、前記印刷層は、前記透明板の背面領域の内、前記光透過部と透明板の外周環状領域とを除く領域に形成され、該透明板の外周環状領域と前記枠部の開口の内周面とに跨って前記接着剤が塗布されている。
【0011】
前記接着剤は、その一部が前記印刷層の外周部を覆って形成されていてもよい。又、前記印刷層は遮光性を有していることが好ましい。
【0012】
上記本発明の防水構造によれば、枠部に透明板を固定するための接着剤が、透明板の背面に直接塗布されているので、透明板に対する印刷層の付着強度が低下したとしても、接着剤と透明板の背面との間に隙間は生じないので、外部から筐体内へ水が浸入することはない。
【0013】
具体的態様において、前記筐体の枠部と透明板の前面には、前記透明板の光透過部を包囲するリング状を呈して、前記接着剤が塗布されている領域と前記印刷層の外周部とを覆うリング部材が設置されている。
【0014】
該具体的態様によれば、透明板の外周環状領域には印刷層が形成されておらず、この領域には接着剤が直接塗布されているが、この領域は、リング部材によって覆われているので、ユーザ側から透明板を通して接着剤が見えることはない。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る電子機器の防水構造によれば、透明板に対する印刷層の付着強度に依存することなく高い防水効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施形態であるカメラの正面図である。
【図2】図2は、該カメラからリング部材と取り外した状態を示す正面図である。
【図3】図3は、該カメラの防水構造を示す、図1のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図4は、他の実施形態であるカメラの防水構造を示す断面図である。
【図5】図5は、従来のカメラの防水構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をカメラに実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明の一実施形態であるカメラは、図1に示す如く、シャッター釦(11)を具えた筐体(1)の前面に、外部から光を導入するためのガラス製の円形の透明板(3)が設置されており、該透明板(3)の奥部にレンズ等の光学系(図示省略)が配備されている。
又、透明板(3)の前面側には、非透明の合成樹脂からなるリング部材(2)が取り付けられている。
【0018】
図2に示す如く、筐体(1)には円形の開口(12)が形成されており、該開口(12)を包囲する筐体(1)の環状領域が前記透明板(3)を固定するための枠部を形成している。
【0019】
図3に示す如く、透明板(3)の背面には、透明板(3)の中央部に設けられた略四角形の光透過部(32)を包囲して、印刷層(31)が形成されている。該印刷層(31)には、必要に応じて文字などが表示される。
印刷層(31)は、透明板(3)の背面領域の内、光透過部(32)と透明板(3)の外周環状領域(33)とを除く領域に形成されており、図2の如く筐体(1)からリング部材(2)を取り外した状態では、透明板(3)を通して、筐体(1)の開口(12)から印刷層(31)の全領域が露出することになる。
【0020】
そして、図3に示す様に、筐体(1)の開口(12)の内周面と透明板(3)の外周環状領域(33)とに跨って、開口(12)の全周に、接着剤(4)が塗布されている。これによって筐体(1)に透明板(3)が強固に固定されることになる。
【0021】
リング部材(2)は、筐体(1)と透明板(3)の前面に、接着剤(4)が塗布されている領域と印刷層(31)の外周部とを覆って設置されている。
図1の如く筐体(1)にリング部材(2)が設置された状態では、透明板(3)の光透過部(32)と印刷層(31)とが露出し、図3に示す透明板(3)の外周環状領域(33)は、リング部材(2)によって覆い隠されることになる。
従って、ユーザ側からは、透明板(3)を通して接着剤(4)が見えることはない。
【0022】
上記カメラの防水構造によれば、筐体(1)に透明板(3)を固定するための接着剤(4)が、透明板(3)の背面(外周環状領域(33))に直接塗布されているので、透明板(3)に対する印刷層(31)の付着強度が低下したとしても、接着剤(4)と透明板(3)の背面との間に隙間は生じないので、外部から筐体(1)内へ水が浸入することはない。
【0023】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、図4に示す様に、接着剤(4)は、その一部が印刷層(31)の外周部を覆って形成されていても、同様の効果が得られる。
又、本発明における筐体の開口や透明板の形状は円形に限らず、楕円形や、三角形、四角形等の多角形であってもよい。又、透明板の材質は、ガラスに限らず、透明な合成樹脂であってもよい。
【0024】
又、印刷層は、透明板の光透過部の全周を包囲するリング形状に限らず、光透過部を包囲するC字状若しくはU字状に形成することも可能である。
更に又、本発明は、カメラに限らず、採光若しくは透視のために開設された窓を有する種々の電子機器の防水構造に実施することが出来る。
【符号の説明】
【0025】
(1) 筐体
(12) 開口
(2) リング部材
(3) 透明板
(31) 印刷層
(32) 光透過部
(33) 外周環状領域
(4) 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に設けられ且つ開口を有する枠部と、光透過部を有し前記開口を覆って接着剤により前記枠部に固定され透明板と、該透明板の光透過部を包囲して該透明板の背面に形成された印刷層とを有する電子機器の防水構造において、
前記印刷層は、前記透明板の背面領域の内、前記光透過部と透明板の外周環状領域とを除く領域に形成され、該透明板の外周環状領域と前記枠部の開口の内周面とに跨って前記接着剤が塗布されていることを特徴とする電子機器の防水構造。
【請求項2】
前記接着剤は、その一部が前記印刷層の外周部を覆って形成されている請求項1に記載の防水構造。
【請求項3】
前記印刷層は遮光性を有している請求項1又は請求項2に記載の防水構造。
【請求項4】
前記筐体の枠部と透明板の前面には、前記透明板の光透過部を包囲するリング状を呈して、前記接着剤が塗布されている領域と前記印刷層の外周部とを覆うリング部材が設置されている請求項1乃至請求項3の何れかに記載の防水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−175143(P2011−175143A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39828(P2010−39828)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】