説明

電子機器を納めた建造物

【課題】電子機器を収容する建造物において、密閉性を高めて電子機器を保護しながら室内の熱を効率的に外部に放出し、さらに、電子機器への配線を容易とする。
【解決手段】建造物の床面に、T形断面形状の突起が並列して形成されたT形板材2を敷設し、T形断面形状の突起のうえに、電子機器を収納するラック1を載置して固定する。建造物の室内には、電子機器から発生する熱を外部に放熱するため、室内の熱を吸収して冷却する熱交換器3と冷却空気を循環するファン32とが設置してある。ラック1の載置されたT形断面形状の突起の間には空間が形成され、この空間を経由して冷却空気がラック1の下方に導入され、電子機器を効率的に冷却する。また、この空間内に電子機器に必要なケーブルを配線することが可能である。ラック1は、T形断面形状の突起の間に置かれた固着具により固定され、その位置が調整できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ラックに収納した多数のサーバを集中して設置するデータセンターなど、コンピュータ等の電子機器を室内に集中管理する建造物、特にその床構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インターネットの普及に代表されるコンピュータネットワークの発展に伴い、サーバと呼ばれる業務用の比較的大型で信頼性を重視したコンピュータ、あるいは主に記憶装置を収めたストレージなどのコンピュータの需要が、ネットワークのサービス提供業者を中心に近年急速に拡大している。サーバ等のコンピュータは、収納用の筐体であるラックに多数のものを収め、一個所で集中管理されることが多く、サーバ等を内部に集中して管理する建造物は、データセンターと呼ばれている。
【0003】
データセンターには、通常の建築物として構築されるもの以外に、輸送用の大型容器であるコンテナを改造して構築するコンテナ型データセンターが存在する。輸送用のコンテナは、周囲を強度の大きい壁面で取り囲まれた堅牢な構造であって、データセンターのセキュリティを確保するのが容易であるとともに、気密性が高く、塵埃の侵入や塩害(海岸付近に設置される場合)を防止してコンピュータを保護するのも容易である。また、コンテナ型データセンターは、輸送用のコンテナを基礎とする、通常の建築物と比較すると小型の建造物であるので、その増設や移設が簡単であり、無人運転に適しているという利点もある。
【0004】
ところで、多数のコンピュータを備えたデータセンターでは、電源との間の接続やコンピュータ相互の接続のため、多くのケーブルを配線する必要がある。そのため、データセンターにおいては、2重構造とした床を設け、中間部の空間にケーブルを配線する床下配線式構造が一般的に採用される。この場合には、コンピュータの発熱に起因する熱障害を防止し、併せて室内の空調を行うよう、中間部の空間を冷却空気のダクトに兼用して、空調機からの冷却空気を床面から室内に吹き出して供給するものが多く、こうした2重構造の床については、一例として特開2010−133637号公報に開示されている。
【0005】
上記公報に記載された2重構造の床を図6(a)に示す。データセンターの建物は、床構造体(躯体スラブ)101の上方に穴明きの床パネル102が設置されて、中間部分に空間103の形成された2重構造の床となっており、コンピュータ等の情報通信機器104は、床パネル102の上に載置されている。空間103は、数多くのケーブル105が配設される配線スペースを構成する。また、情報通信機器104と離れた位置に空調機106が設置してあり、空調機106からの冷却空気は、空間103を経由して情報通信機器104の下部に導かれる。この冷却空気は、床パネル102から上方に吹き出され、情報通信機器104を冷却すると同時に室内の空調にも使用される。2重構造の床は、穴明き板と脚とを備えた図6(b)に示すようなブロック体を、床構造体101の上方に敷き詰めることにより形成される。
【0006】
上記公報に記載された空調機は、冷凍サイクルを実行して情報通信機器をいわば強制的に冷却するものであるが、データセンター等のコンピュータからの発熱を、冷媒の相変化を利用するヒートパイプと同様な熱伝達促進装置を用いて、外部の大気に積極的に排熱することによりコンピュータの熱障害を防止する冷却装置も知られている。例えば、特開2011−38734号公報には、携帯電話等の電話基地局に収容された情報通信機器を冷却(温度上昇を抑制)するため、電話基地局の屋根の上方に室外熱交換器を設置するとともに電話基地局の室内上方に室内熱交換器を設置する冷却装置が開示されている。両方の熱交換器は連通されて内部に冷媒が封入されており、情報通信機器から発生した熱によって室内熱交換器の冷媒が沸騰して室外熱交換器に移送され、ここで、大気に熱を放出することによって冷媒が凝縮し、重力で室内熱交換器に還流する。
この冷却装置は、温度差に基づく対流を利用する自然循環式の冷却装置であって、冷凍サイクルを行うものではないから、基本的に外部電力等が不要である。したがって、この冷却装置をデータセンターに採用したときは、サーバ等のコンピュータで使用する電力以外のものは殆ど必要なく、消費電力の大幅な削減が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−133637号公報
【特許文献2】特開2011−38734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
データセンターあるいは電話基地局など、コンピュータ等の電子機器を多数収容する建造物においては、コンピュータの十分なセキュリティの確保が要請されるとともに、塵埃や塩害等からのコンピュータの保護が要請される。こうした要請に応じるには、建造物の密閉性を高めて室内を外部から遮断することが望ましいが、一方では、コンピュータの発熱に起因する熱障害を防ぐため、室内の熱を外部に放出しながらコンピュータを確実に冷却する必要がある。また、多数のコンピュータと電源との間の配線あるいはコンピュータ同士の配線を、保守点検のために整然とした形で配置する必要があると同時に、特にコンテナ型データセンターのような小型の設備では、保守点検時以外には作業員等の常駐しない、無人運転が可能であることが望ましく、これは、作業員用の空調の必要性を省いて消費電力の削減にも繋がることとなる。
【0009】
そして、データセンター等に収容されるコンピュータ等の電子機器には多種多様なものがあって大きさも様々であり、それに応じて、コンピュータ等を収納するラックの寸法も多様である。多様なラックをデータセンターに設置したり、コンピュータ等の入れ換えのため別のラックに交換するには、床面に据え付けるための固定具の位置が容易に調整できる必要がある。
本発明の課題は、データセンター等の建造物において、収容された多数のコンピュータ等を効率的に冷却し、かつ、それらを収納するラックを調節可能に固定する床構造を提供して、このような問題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題に鑑み、本発明は、T形断面形状の突起が並列して形成されたT形板材を建造物の床面に敷設し、このT形板材に、電子機器を収納するラックを載置して固定するものである。すなわち、本発明は、
「電子機器を室内に収めた建造物であって、
前記電子機器は、複数のものがラックに収納されて前記建造物に収められ、
前記建造物には、室内の空気を冷却する熱交換器と冷却された空気を循環するファンとが設けられており、さらに、
前記建造物の床面には、連続して延びるT形断面形状の突起を、複数並列して形成したT形板材が敷設され、電子機器を収納する前記ラックが、前記T形板材におけるT形断面形状の突起の上に載置されて固定される」
ことを特徴とする建造物となっている。
【0011】
請求項2に記載のように、電子機器を収納する前記ラックは、前記T形板材における隣接するT形断面形状の突起の間に設けられた固着具により固定されることが好ましい。
【0012】
請求項3に記載のように、前記T形板材を、前記建造物の床面の、電子機器を収納する前記ラックを固定する部分に敷設し、その他の部分には、ハット形断面形状のハット形板材を敷設することができる。また、請求項4に記載のように、前記建造物の床面には、電子機器を収納する前記ラックが載置される個所以外の部分に、薄板のカバーを設けることができる。
【0013】
請求項5に記載のように、前記T形板材には、T形断面形状の突起を切除した切除部を設けることができる。
【0014】
請求項6に記載のように、室内の空気を冷却する前記熱交換器の上方に、前記熱交換器と連通し室外に置かれた室外熱交換器を設け、前記熱交換器と前記室外熱交換器との内部に対流により循環する冷媒を封入して、室内の熱が前記室外熱交換器から排熱されるようにすることが好ましい。
【0015】
請求項7に記載のように、電子機器を収納する前記ラックを、複数、前記建造物の室内に並列して設置し、各々の前記ラックの上方には、室内の空気を冷却する前記熱交換器と冷却された空気を循環する前記ファンとを設け、かつ、各々の前記ラックの両側には、循環する空気を案内する案内板が設けることが好ましい。
【0016】
そして、請求項8に記載のように、前記建造物を平面視で長方形の形状を有するものとし、その底部には、長方形の長手方向と直角に延びる複数のクロスメンバを設けるとともに、前記クロスメンバの上方に、断熱材の両面に金属板を積層したサンドイッチパネルを設置し、このサンドイッチパネルの上方に、前記T形板材を、T形断面形状の突起が前記建造物の長方形の長手方向に連続して延びるように敷設することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
データセンターのように、コンピュータ等の多数の電子機器を内部に収容する建造物では、電子機器の配線を行うための配線スペースを確保しなければならない。本発明の建造物の床面には、連続して延びるT形断面形状の突起を、複数並列して形成したT形板材が敷設されており、電子機器を収納するラックが、T形板材におけるT形断面形状の突起の上に載置されて固定される。T形断面形状の突起の間には空間が存在して、2重構造の床と同様な構成となっているので、この空間を利用して電子機器のケーブルの配線を行うことができる。
【0018】
そして、本発明の建造物には、密閉された室内でも冷却が可能なように、室内の空気を冷却する熱交換器と冷却された空気を循環するファンとが設けられていて、コンピュータ等から発生する熱が循環する空気に伝達され、次いで、熱交換器から建造物の外部へと放熱される。このとき、循環する空気の一部は、T形断面形状の突起の間の空間を介してラックの下部へと流入し、下方から電子機器を冷却する。そのため、電子機器の効率的な冷却が可能であって、温度上昇による熱障害が防止される。
本発明で用いられる、T形断面形状の突起を複数並列して形成したT形板材としては、冷凍車の床材等に用いる、アルミニウム押出し形材であるいわゆるT形ボードを利用することができる。T形ボードは、タッピングねじ、ブラインドリベットあるいは接着等により床面に簡単に固定することが可能であって、例えば、図6(b)のブロック体を、隙間や凹凸が生じることなく並べて2重構造の床を構築する施工法と比べると、敷設が非常に容易なものとなる。
【0019】
請求項2の発明は、T形板材の隣接するT形断面形状の突起の間に設けた固着具によって、電子機器を収納するラックを固定するものである。T形断面形状の突起は、複数並列して連続的に延びるよう形成されるので、固着具の置かれる位置を、隣りの突起の間の空間に移したり、突起の延びる方向にずらしたりして調整が可能であり、ラックの寸法や固定部の位置の異なる場合であっても、それに対応することができる。
【0020】
請求項3の発明は、T形板材を床面におけるラックを固定する部分に敷設し、その他の部分には、ハット形断面形状のハット形板材を敷設するものである。こうすると、ハット形板材の広い空間に集中して配線のケーブルを収容することが可能であるとともに、ハット形板材の配線とT形板材の配線とを、例えば、コンピュータ用配線と照明等の設備用配線とに分けるなど、別々の種類に設定することができる。
請求項4の発明のように、薄板のカバーを、ラックが載置される個所以外の部分に設けると、ケーブル等の保護を行い、また、循環する空気の流路を確保することになる。
【0021】
請求項5の発明は、T形板材に、T形断面形状の突起を切除した切除部を設けたものであり、これにより、隣接する突起の間の空間を連通する通路が形成され、ケーブルの設置スペースあるいは循環する空気の流路として利用できる。切除部は、1つのT形断面形状の突起に設けることもできるし、並列する複数の突起に対し同一位置に整列するように設けることも可能である。
【0022】
本発明においては、室内の空気を冷却するため、圧縮機等を装備して冷凍サイクルを実行させ、冷凍サイクルのエバポレータ(蒸発器)を、熱交換器として室内に設置してもよいが、請求項6の発明は、室内の空気を冷却する熱交換器の上方に、その熱交換器と連通し室外に置かれた室外熱交換器を設け、両方の熱交換器の内部に対流により循環する冷媒を封入して、室内の熱を室外熱交換器から排熱するものである。これによれば、基本的に電力を使用することなく、自然対流を利用してコンピュータ等電子機器の冷却を行うことができる。
【0023】
請求項7の発明は、電子機器を収納する複数のラックを、並列して建造物の室内に設置し、各々のラックの上方に、室内の空気を冷却する熱交換器と冷却された空気を循環するファンとを設け、かつ、各々のラックの両側には、循環する空気を案内する案内板を設けるものである。この構成によれば、複数のラックの各々が、いわば独立した冷却装置を備え、循環する冷却空気の流路も案内板により独立化することになる。したがって、一部のラックに収納されたサーバのみが稼動している状態では、稼動中のラックの冷却装置だけを作動すればよく、空気循環用ファン等に要する電力は、その分軽減される。
【0024】
そして、請求項8の発明は、電子機器を収めた建造物を平面視で長方形の形状を有するように構成し、その底部に、長方形の長手方向と直角に延びる複数のクロスメンバを設けるとともに、クロスメンバの上方に、断熱材の両面に金属板を積層したサンドイッチパネルを設置し、このサンドイッチパネルの上方にT形板材を敷設するものである。こうした構成は、基本的に輸送用のコンテナと同様であって、コンテナに用いられる部品と共通のものを使用して、製造コスト等を削減できる。また、サンドイッチパネルにより底部からの熱を遮断し、室内の温度上昇が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の建造物の一実施例を示す全体図である。
【図2】本発明の建造物の横断面図である。
【図3】本発明の建造物における冷却空気の流れ等を示す図である。
【図4】本発明の建造物の床構造を示す図である。
【図5】本発明の建造物にラック等を固定する場合の説明図である。
【図6】電子機器を設置する従来の床構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて、データセンター等として用いられる本発明の建造物について説明する。
図1の全体図から分かるように、本発明の建造物は、輸送用のコンテナを基本とするコンテナ型データセンターとして構築されたものであって、全体としては6面体の箱型構造をなし、平面視では長方形の形状となっている。建造物の内部は、サーバ等のコンピュータを収納する複数(この例では8個)のラック1を据え付けたコンピュータ室CRと、コンピュータ等に電力を供給する電源ユニットEUや予備空調用室外機CDなどを据え付けた機械室MRとに分割され、その間には仕切り壁が設置される。コンピュータ室CRは、断熱材を用いて周囲が密閉された空間となっており(図1の左図では、箱型構造の側壁を除いて示す)、入口側の外壁には、輸送用コンテナと同様に、ロックロッドLRにより閉鎖される観音開き式ドアが設けられる。
【0027】
コンピュータ室CRに据え付けられたラック1の構成及びコンピュータを冷却する冷却空気の循環法等について、図2、図3により説明する。図2に示されるように、ラック1は、床面に敷設されたT形板材2上に固定されて(詳細な構造については後述)、コンピュータ室CRの横断面においてほぼ中央部に設置される。各々のラック1の上方には、コンピュータ室CRの室内の空気を冷却する熱交換器3を収めた熱交換器外箱31が取り付けられており、ラック1と熱交換器3とは、ユニット化されたラック−熱交換器組立体を構成している(図3(b)も参照)。換言すると、ラックの上方の熱交換器は、主に、組み合わされた下方のラックを独立して冷却するための熱交換器となっている。
【0028】
ラック−熱交換器組立体の上方と建造物の天井壁との間には、断熱材を積層した中間天井板4が設けてあり、この部分では、建造物は2重天井を形成している。中間天井板4の端部は、建造物の長手方向の全長に亘って延びるセンタービーム5に結合され、これによって、建造物の上部の強度並びに剛性を高めている。また、ラック1の耐震性を増大させるため、ラック−熱交換器組立体の上部は中間天井板4に固定される。
【0029】
コンピュータ室CRの空気を冷却するための、ラック1と組み合わされた熱交換器3の上方には、室外熱交換器6が置かれ、これは、コンピュータ室CRの室外となる中間天井板4の上部に載置される。両方の熱交換器は、特許文献2に記載の熱交換装置のように、互いに連通され、内部には気体−液体の相変化を行う冷媒が封入されている。室内側の熱交換器3の端部には、コンピュータ室CR内の空気を循環するファン32が装着されるとともに、室外熱交換器6の端部には、外気を導入するファン61が装着され、ファン61により導入された外気は、室外熱交換器6を冷却した後、建造物の長手方向に延びる共通排気ダクト62に排出される。
【0030】
図3(a)に示されるとおり、ラック1に収納されたコンピュータの発熱に伴い、温度の上昇した室内の空気は、図の左側矢印のように、コンピュータ室CR内を上昇して熱交換器3に導入され、内部に封入された液体の冷媒を沸騰させる。気体となった冷媒は、対流によって室外熱交換器6に入り、ここで熱を外気に放熱して凝縮し、室内の熱交換器3に還流する。一方、熱交換器3で冷却された室内の空気は、冷却空気を循環するファン32によって図の右側矢印のように送り出され、ラック1に収納されたコンピュータを冷却することとなる。
この実施例のラック1には、図3(b)に示すように、その両側に案内板11が設けられており、各々のラックのコンピュータを冷却した後の空気が、そのラックの上方に設置された熱交換器に導入されるよう案内される。そのため、一部のラックのコンピュータのみが稼動しているときは、稼動中のラックのファン及び冷却装置だけを作動すればよく、ファン等に要する電力は、その分軽減される。
【0031】
上述のとおり、この実施例における室内空気の冷却装置は、対流により循環する冷媒を封入した2個の熱交換器を設け、密閉した室内の熱を排熱する自然冷却式のものであり、基本的に電力を使用することなく冷却を行うことができる。ただし、室内の空気を冷却するため、圧縮機等を装備して冷凍サイクルを実行させ、冷凍サイクルのエバポレータ(蒸発器)を、熱交換器として室内に設置してもよい。この実施例においても、外気温が上昇して自然冷却式の冷却装置の冷却能力が不足するなどの事態に備えて、冷凍サイクルを実行する予備の空調機が設置されており、そのエバポレータEV(図2)が天井面に装着されるとともに、圧縮機やコンデンサを収めた室外機CD(図1)が機械室の上部に据え付けられている。
【0032】
ここで、本発明の建造物における、ラック1を設置する床構造について、図4、図5に基づき説明を加える。
本発明の建造物の底部は、輸送用のコンテナと同様に、長方形をなす枠体に、長手方向と直角(横方向)に延びる複数のクロスメンバ7を適宜の間隔で掛け渡したフレーム構造を備えており、そのクロスメンバ7が、床構造の横方向断面図である図4(b)、図5(a)に表されている。クロスメンバ7の上方には、発泡合成樹脂等の断熱材の両面にアルミニウム等の金属板を積層したサンドイッチパネル8が、建造物の床のほぼ全面に設置され、さらにその上方に、連続して延びるT形断面形状の突起21を、底板上に複数並列して形成したT形板材2が敷設される。
【0033】
T形板材2は、いわゆるT形ボードと呼ばれる長尺のアルミニウム押出し形材が使用され、図4(a)に示されるように、機械室の床面まで建造物のほぼ全長に亘って敷設されている。床面の横断面の中央寄りに設けられた2列のT形板材2は、3個の突起21を有するT形ボードと4個の突起21を有するT形ボードとを溶接で結合したものであって、図5(a)から分かるように、2列のT形板材2は、ラック1の固定個所の下部位置に対応して夫々敷設される。また、床面の横断面の両端部にも、3個の突起21を有するT形板材2が備えられており、これは、機械室の電源ユニットの基礎やコンピュータ等の保守部品収納設備の基礎などに適宜用いられる。
【0034】
中央寄りに設けられた2列のT形板材2の一方には、図4(a)、(c)に示されるように、隣り合うラックの間に、T形断面形状の突起21を切除した切除部22が設けられている(底板部分は切除しない)。この実施例では、切除部22は、並列する全ての突起21に対し同一位置に整列するように設けてあり、この切除部22により、ラックの前面側の床部とラックの中央の床部とが連結されている。切除部22には、図4(c)に示す断面浅皿状の板材を適宜嵌め込むことができる。
【0035】
建造物の床面の、T形板材2を敷設しない部分には、図4(b)、図5(a)に示されるとおり、ハット形断面形状のハット形板材9が敷設されており、ここに浅皿形の空間が形成される。そして、ハット形板材9の上部を含め、ラック1が載置される個所以外の部分は、薄板のカバー10(図5(a))によって覆われる。ハット形板材9とカバー10とは、床面の長手方向の全長に亘り同一断面形状で延長されており、カバー10は、下部に収容される配線ケーブルを保護するとともに、保守点検等の際において作業員の通路を形成する。
【0036】
この実施例では、ラック1は、T形板材2の隣接するT形断面形状の突起21の間に設けた固着具23によって固定される。図5(b)に示すように、隣接する突起21の間の空間には、中央にねじ孔を形成した固着具23が置かれており、ラック1の下部に設けられた取り付け孔にボルト24を挿通し、これを固着具23のねじ孔にねじ止めして、ラック1はT形断面形状の突起21の上に載置されて固定される。固着具23は平面視で長方形をなし、その辺が突起21の側面に当接して、ねじ止めの際の回転を阻止する。
固着具23は、並列して連続的に延びる突起21の間に置かれるので、固着具23を突起の間の隣りの空間に移したり、突起の延長方向にずらしたりして、位置の調整が可能であり、種々の寸法のラックに容易に対応することができる。
【0037】
図5(c)は、ケーブルCBの配線が行われた床部分を斜視図で示すものである。この例では、ケーブルCBは、ハット形板材9の広い空間に集中して配線され、一部のケーブルは、T形板材2の突起21を切除した切除部22を通過して、T形断面形状の突起21の間の空間に配線される。このように、本発明の床構造においては、T形板材2の突起21の間の空間、ハット形板材9の空間あるいは切除部22を利用して、自由なケーブルの配線が可能である。
また、ファン32により室内を循環する冷却空気は、これらの空間を通過してラックの周囲や下部へ流れ込む。そのため、ラックに収納されたコンピュータ等の発生する熱が効率的に除去され、温度上昇による熱障害が防止される。
【0038】
以上詳述したように、本発明は、電子機器を室内に収めた建造物の床面に、T形断面形状の突起が並列して形成されたT形板材を敷設し、このT形板材に、電子機器を収納するラックを載置して固定するものである。上記の実施例では、コンテナ型データセンターに適用した例について説明したが、本発明は、いわゆる建物形のデータセンターあるいは携帯電話の基地局用の建造物に適用できるのは言うまでもない。また、実施例では、夫々のラックの上方に独立した冷却装置を設置しているが、室内を集中して冷却する1個の冷却装置を設けるなど、実施例に対し種々の変形が可能であるのは明らかである。
【符号の説明】
【0039】
1 ラック
11 案内板
2 T形板材
21 突起(T形断面形状)
22 切除部
23 固着具
3 熱交換器(室内空気冷却用)
32 ファン(室内空気循環用)
6 室外熱交換器
9 ハット形板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を室内に収めた建造物であって、
前記電子機器は、複数のものがラックに収納されて前記建造物に収められ、
前記建造物には、室内の空気を冷却する熱交換器と冷却された空気を循環するファンとが設けられており、さらに、
前記建造物の床面には、連続して延びるT形断面形状の突起を、複数並列して形成したT形板材が敷設され、電子機器を収納する前記ラックが、前記T形板材におけるT形断面形状の突起の上に載置されて固定されることを特徴とする建造物。
【請求項2】
電子機器を収納する前記ラックが、前記T形板材における隣接するT形断面形状の突起の間に設けられた固着具により固定される請求項1に記載の建造物。
【請求項3】
前記T形板材が、前記建造物の床面の、電子機器を収納する前記ラックを固定する部分に敷設され、その他の部分には、ハット形断面形状のハット形板材が敷設される請求項1又は請求項2に記載の建造物。
【請求項4】
前記建造物の床面には、電子機器を収納する前記ラックが載置される個所以外の部分に、薄板のカバーが設けられる請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の建造物。
【請求項5】
前記T形板材には、T形断面形状の突起を切除した切除部が設けられる請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の建造物。
【請求項6】
室内の空気を冷却する前記熱交換器の上方には、前記熱交換器と連通し室外に置かれた室外熱交換器が設けられ、前記熱交換器と前記室外熱交換器との内部には対流により循環する冷媒が封入されて、室内の熱が前記室外熱交換器から排熱される請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の建造物。
【請求項7】
電子機器を収納する前記ラックは、複数のものが前記建造物の室内に並列して設置され、各々の前記ラックの上方には、室内の空気を冷却する前記熱交換器と冷却された空気を循環する前記ファンとが設けられており、
各々の前記ラックの両側には、循環する空気を案内する案内板が設けられる請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の建造物。
【請求項8】
前記建造物は、平面視で長方形の形状を有し、前記建造物の底部には、長方形の長手方向と直角に延びる複数のクロスメンバが設けられるとともに、前記クロスメンバの上方に、断熱材の両面に金属板を積層したサンドイッチパネルが設置されており、
前記T形板材は、T形断面形状の突起が前記建造物の長方形の長手方向に連続して延びるよう、前記サンドイッチパネルの上方に敷設されている請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の建造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−246736(P2012−246736A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122009(P2011−122009)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000229900)日本フルハーフ株式会社 (93)
【Fターム(参考)】