説明

電子機器モジュールのケーブル引き出し部防水構造

【課題】ポッティング材に粘性度の低い材料が使用できて作業性が良く、ポッティング材の漏れ出しやポッティング材付着部が引き出されて美観をことがない電子機器モジュールのケーブル引き出し部防水構造を提供する。
【解決手段】外部ケース1の底部にケーブル貫通孔21を設け、この貫通孔を通して外部ケース外にケーブル14が導出され、外部ケース1には、底面に前記ケーブル貫通孔が開口されたポッティング材充填用凹部20を備え、この凹部20内にケーブル14を埋め込んだ状態にポッティング材25が充填された防水構造であって、ケーブル貫通孔21には、ケーブル14が液密状態で挿通されたゴム状弾性材からなる弾性ブッシュ22が嵌合されることによってケーブル貫通孔21が密閉された状態でポッティング材充填用凹部20内にポッティング材25の充填を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車載用のカメラモジュールのような水密性が要求される電子機器モジュールのケーブル引き出し部に使用する防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載用のカメラモジュールのように、水密性が要求される電子機器モジュールは、水密性の外部ケース内に各種の電子回路構成部品や光学部品が組み込まれて構成されており、外部ケースから内部の電子回路に電源を供給し、信号のやり取りを行うためのケーブルが導出されている。
【0003】
この主の電子機器モジュールにおけるケーブル引き出し部の水密性を確保するために、従来は、ポッティング材が使用されている(例えば特許文献1)。これは、外部ケースの内側にポッティング材充填用空間を形成しておき、この空間から外部ケースを貫通させてケーブルを引き出した状態で、ポッティング材充填空間内にポッティング材を充填することによってケーブル引き出し部を封止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−265393公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の如き、従来の電子機器モジュールのケーブル引き出し部防水構造においては、ケーブルがポッティング材充填空間の底面から導出される構造である場合には、該空間の底面に形成したケーブル貫通孔にケーブルを貫通させた状態で、ポッティング材を流し込むものであるため、使用するポッティング材が、ケーブルとケーブル貫通孔との隙間から流れ出ない程度の粘性があるものに限定され、ポッティング材充填作業に時間がかかるとともに、細部までの充分な充填がなされ難いという問題がある。
【0006】
また、ポッティング材充填時には、外部ケースとケーブルとの相互の位置関係を固定する必要があり、ケーブルをケーブル貫通孔に挿入した状態で仮固定し、しかる後ポッティング材充填をなさなければならず作業性が悪いという問題があるとともに、仮固定の解除が早すぎるとポッティング材が付着した部分が引き出されて美観を損なうという問題がある。
【0007】
更に、ケーブルがFPCであるような場合には、導出部分根本の折り曲げ強度が低く、断線の危険性が伴うという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の問題に鑑み、ポッティング材に粘性度の低い材料が使用できて作業性が良く、しかもポッティング材の漏れ出しやポッティング材付着部が引き出されて美観を損うことがなく、かつ引き出されたケーブルの断線の危険性が低い電子機器モジュールのケーブル引き出し部防水構造の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成する請求項1に記載の発明の特徴は、外部ケースの底部にケーブル貫通孔を設け、該ケーブル貫通孔を通して外部ケース外にケーブルが導出され、前記外部ケースには、底面に前記ケーブル貫通孔が開口されたポッティング材充填用凹部を備え、該ポッティング材充填用凹部内に、前記ケーブルを埋め込んだ状態にポッティング材が充填されている電子機器モジュールのケーブル引き出し部防水構造において、前記ケーブル貫通孔には、前記ケーブルが液密状態で挿通されたゴム状弾性材からなる弾性ブッシュが嵌合され、該弾性ブッシュと前記ケーブルによって前記ケーブル貫通孔が密閉された状態で前記ポッティング材充填用凹部内にポッティング材が充填されていることにある。
【0010】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、弾性ブッシュは、外周面が先細りテーパ状の円筒形に形成され、その基端部外周にケーブル貫通孔の内周縁が密に嵌り合った環状凹溝が形成され、先細り先端側が前記外部ケースの底面外に突出されていることにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、ケーブル貫通孔には、前記ケーブルが液密状態で挿通されたゴム状弾性材からなる弾性ブッシュが嵌合され、該弾性ブッシュと前記ケーブルによって前記ケーブル貫通孔が密閉された状態でその上側のポッティング材充填用凹部内にポッティング材が充填されていることにより、ホッティング材のポッティング材充填用凹部内への注入時には、該凹部の底にあるケーブル貫通孔が略完全な液密上に閉鎖された状態とすることができ、粘性度が低い、高流動性のポッティング材を使用しても、これがケーブル貫通孔部分から外部に漏れ出すことがなく、外観を損なわず、しかも高流動性のポッティング材が使用できるため細部への充填性が良くなり、高い水密性が維持できる構造となる。
【0012】
また、ポッティング材充填の際に、ケーブルは弾性ブッシュによって仮止めされた状態となり、ポッティング材充填後、完全な固化前においても多少の外力ではケーブルとブッシュとが相対移動しない構造とすることができるため、ポッティング材完全固化前に、次工程に進むことができ、作業性が良いものとなる。
【0013】
また、本発明では、弾性ブッシュを、外周面が先細りテーパ状の円筒形に形成し、その基端部外周にケーブル貫通孔の内周縁が密に嵌り合った環状凹溝を形成し、先細り先端側を前記外部ケースの底面外に突出させるようにすることにより、ケーブルの引き出し根元部がブッシュによって保護され、曲げによって根元部に局部荷重が掛からない構造となり、断線の危険性が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を車載用カメラモジュールに実施した例を示す斜視図である。
【図2】同、縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明を車載用のカメラモジュールに実施した例を図1、図2について説明する。
【0016】
図において符号1aは外部ケース本体であり、1bは外部ケース本体1aの底部開口を閉鎖する外部ケース底蓋である。この外部ケース本体1aと外部ケース底蓋1bとは何れも合成樹脂によりモールド成型されており、これらをもって外部ケース1を構成している。
【0017】
外部ケース1内には、モールド成形された光学系部ホルダ2と基板ホルダ5とが互いに組み合わされて収容されている。
【0018】
光学系部ホルダ2は、下向き開口の方形箱状をした基板支持部2aと、その頂部中央に一体に備えた円筒状のレンズユニット固定部2bとから構成されており、レンズ筒固定部2b内にレンズユニット3の一端が螺合されている。レンズユニット3は、図には詳示してないが、レンズ保持筒の内部にレンズ郡が組み込まれた構造となっており、レンズ保持筒の端部がレンズユニット固定部2b内に螺合されている。
【0019】
基板支持部2aは、内周面に基板固定用段部4が形成され、これに撮像素子保持基板6が当接され、接着剤によって脱落不能に固定されている。この撮像素子保持基板6のレンズユニット3側の面に撮像素子7が実装されている。
【0020】
基板ホルダ5は、その外周面が、前記光学系部ホルダの基板支持部の外周面と同じ形状の筒状をなしており、基板ホルダ5を光学系部ホルダ2に連結することによって、光学系部ホルダ2の基板支持部2aが延長される形状となっている。
【0021】
基板ホルダ5の内周面には、軸方向の中間位置に基板固定用段部8が形成され、これに回路構成部品保持基板9を当接させ接着剤によって固定している。
【0022】
上記両基板6,9には、前述した基板6表面の撮像素子7の他に、所望の機能を持たせるために必要な、DSPや、メモリー、プリセット回路等の回路構成部品が実装されているとともに、両基板6,9の回路間を接続するコネクタ部材及びケーブルコネクタ13が実装され、外部に導出するケーブル14が接続されている。
【0023】
この車載用カメラモジュールは、図2に示すように、光学系部ホルダ2にレンズユニット3を保持させ、内部に撮像素子保持基板6を保持させるとともに回路構成部品保持基板9を保持させた基板ホルダ5を連結した状態で、外部ケース本体1内に挿入し、ケーブルコネクタ13に電気接続させたケーブル14を底面に貫通させた状態で外部ケース底蓋1bを嵌合することによって水密性が保たれた状態に組み立てられるようになっている。
【0024】
尚、図において符号15は、外部ケース本体1aとレンズユニット3との間の水密性を維持させるためのOリングであり、16は、外部ケース本体1aと外部ケース底蓋1bとの間の水密性を維持させるガスケットである。
【0025】
外部ケース底蓋1bの底面上には、ポッティング材充填用凹部20が形成されており、該ポッティング材充填用凹部20の底面にケーブル貫通孔21が開口されている。
【0026】
ケーブル貫通孔21内には弾性ブッシュ22が圧縮状態で嵌合されており、その中心にケーブル14が挿通されている。ケーブル14は、弾性ブッシュ22によって弾性的に締め付けられた状態でその中心に挿通されており、これによって両者間の液密性が保たれるようになっている。
【0027】
弾性ブッシュ22は、外周面が先細りテーパ状の円筒形に形成され、その中心の貫通孔内にケーブル14が液密状態に挿通されているとともに、その基端部外周にケーブル貫通孔21の内周縁が液密状態を維持するように弾性的に嵌り合った環状凹溝23が形成され、先細り先端側22aが外部ケース底蓋1bの底面外に突出されている。
【0028】
ケーブル14のケース内側の端部からは、ケーブル14を構成しているリード線24が、該凹部20内に導出されている。このリード線24を埋め込むように、ポッティング材25がポッティング材充填用凹部20内に充填されている。このポッティング材25の充填によって、外部ケース底蓋1bのケーブル引き出し部を完全に封止させている。
【0029】
リード線14の先端は外部ケース底蓋1b内に引き出され、その先端に前述したケーブルコネクタ13に接続されている。
【0030】
このように構成されるケーブル引き出し部防水構造におけるポッティング材24の注入は、中心部の貫通孔内にケーブル14を挿通させたブッシュ22をケーブル貫通孔21内に嵌合させ、これによってケーブル貫通孔21を仮閉鎖するとともに、ケーブル14を外部ケース底蓋1bに仮固定する。この状態でポッティング材24をポッティング材充填用凹部20内に注入する。
【0031】
この時ケーブル貫通孔21は、弾性ブッシュ22とケーブル14によって仮密閉されているため、注入されたポッティング材24は低粘性のものを使用して場合であっても下側へ漏れ出ることがなく、また、ケーブル14弾性ブッシュ22を介して外部ケース底蓋1aに仮固定されているため、ポッティング材24の固化前であっても、容易に引き出されないものとすることができ、充填されたポッティング材24が充分に固化する前に次工程作業を進めることが出来る。
【符号の説明】
【0032】
1 外部ケース
1a 外部ケース本体
1b 外部ケース底蓋
2 光学系部ホルダ
2a 基板支持部
2b レンズユニット固定部
3 レンズユニット
4 基板固定用段部
5 基板ホルダ
6 撮像素子保持基板
7 撮像素子
8 基板固定用段部
9 回路構成部品保持基板
13 ケーブルコネクタ
14 ケーブル
15 Oリング
16 ガスケット
20 ポッティング材充填用凹部
21 ケーブル貫通孔
22 弾性ブッシュ
22a 先細り先端側
23 環状凹溝
24 リード線
25 ポッティング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部ケースの底部にケーブル貫通孔を設け、該ケーブル貫通孔を通して外部ケース外にケーブルが導出され、前記外部ケースには、底面に前記ケーブル貫通孔が開口されたポッティング材充填用凹部を備え、該ポッティング材充填用凹部内に、前記ケーブルを埋め込んだ状態にポッティング材が充填されている電子機器モジュールのケーブル引き出し部防水構造において、
前記ケーブル貫通孔には、前記ケーブルが液密状態で挿通されたゴム状弾性材からなる弾性ブッシュが嵌合され、該弾性ブッシュと前記ケーブルによって前記ケーブル貫通孔が密閉された状態で前記ポッティング材充填用凹部内にポッティング材が充填されていることを特徴としてなる電子機器モジュールのケーブル引き出し部防水構造。
【請求項2】
弾性ブッシュは、外周面が先細りテーパ状の円筒形に形成され、その基端部外周にケーブル貫通孔の内周縁が密に嵌り合った環状凹溝が形成され、先細り先端側が前記外部ケースの底面外に突出されている請求項1に記載の電子機器モジュールのケーブル引き出し部防水構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−186360(P2011−186360A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54081(P2010−54081)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】