説明

電子機器冷却装置

【課題】電力供給停止状態において、バックアップ電源から供給される電力を減少した電子機器冷却装置を提供する。
【解決手段】サーバー3を収納したサーバーラック10に蒸発器21を配置し、蒸発器21によりサーバーラック10内のサーバー3を冷却するサーバーラック冷却装置100において、UPS50と、商用電源からの電力供給停止状態の発生を検出する制御ユニット80とを備え、電力供給停止状態時には、UPS50により熱源ユニット30の電動膨張弁36を全開し、圧縮機32を熱搬送ポンプとして駆動することにより、蒸発器21に冷媒熱搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器を冷却する電子機器冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器が収容されるキャビネットの空気出口側に空気−水熱交換器を配置し、キャビネットに収容された電子機器に付設したファンで送風される空気を上記空気−水熱交換器で冷却して室内に戻す電子機器冷却装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0232945号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この種の電子機器冷却装置では、停電等に起因する電力供給停止状態が発生したときは、バックアップ電源から電子機器冷却装置に電力を供給するようにすることが考えられる。この場合、バックアップ電源から電子機器冷却装置に供給される電力をできるだけ減らし、バックアップ電源から電力の供給を受けた状態の電子機器冷却装置によってできるだけ長くサーバーを冷却し、これにより、電力供給停止状態が解消するまでの間サーバーの冷却を継続して行いたい、とするニーズがある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、電力供給停止状態において、バックアップ電源から供給される電力を減少した電子機器冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明は、電子機器を収納したキャビネットに蒸発器を配置し、この蒸発器から延びた冷媒配管に、商用電源を用いた電動機で駆動する圧縮機、凝縮器を有した熱源ユニットを接続し、前記蒸発器により前記キャビネット内の前記電子機器を冷却する電子機器冷却装置において、前記商用電源とは独立して電力を供給可能なバックアップ電源と、前記商用電源から前記熱源ユニットへの電力供給停止状態の発生を検出する検出手段とを備え、電力供給停止状態時には、前記バックアップ電源により前記熱源ユニットの電動膨張弁を全開し、前記圧縮機を熱搬送ポンプとして駆動することにより、前記蒸発器に冷媒熱搬送することを特徴とする。
この構成によれば、電力供給停止状態が発生した場合、圧縮機が熱搬送ポンプとして機能するように、圧縮機の駆動レベルが下げられる。さらに、電動膨張弁が全開されて、圧縮機を熱搬送ポンプとして駆動することにより、蒸発器に冷媒熱搬送がなされ、電子機器の冷却が行われる。これにより、電力供給停止状態が発生した場合であっても、電子機器の冷却を継続したまま、バックアップ電源から圧縮機を含む電子機器冷却装置に供給される電力を減少することができる。
【0005】
ここで、上記発明の電子機器冷却装置において、通常運転時は、前記キャビネット内の温度が第1目標温度となるよう前記圧縮機を制御すると共に、電力供給停止状態時には、前記キャビネット内の温度が前記第1目標温度よりも高い第2目標温度となるよう前記圧縮機を制御するようにしてもよい。
ここで、第2目標温度とは、第1目標温度より高く設定された温度であって、キャビネット内の温度が当該第2目標温度である場合に、電子機器に対し確実に悪影響を及ぼさない温度のことである。
そして、上記構成によれば、電子機器に対して悪影響が及ばないような温度にキャビネット内の温度を維持しつつ、圧縮機の駆動レベルを下げ、バックアップ電源から圧縮機を含む電子機器冷却装置へ供給される電力を減少することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電力供給停止状態において、バックアップ電源から供給される電力を減少することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るサーバーラック冷却装置100(電子機器冷却装置)を示す図である。
図1に示すサーバールーム2は、冷却対象である電子機器としてのサーバー3(図2)が収納されたサーバーラック10(キャビネット)が配置される部屋であり、室内冷却用空気調和機1によって冷却される。
この室内冷却用空気調和機1は、室外ユニット(不図示)と、天井空間内に設置された室内ユニット130とを備え、この室内ユニット130は、室内熱交換機131と、室内ファン132とを備えている。サーバールーム2を冷却する際、室内冷却用空気調和機1は、室内熱交換機131を蒸発器として機能させると共に、室内ファン132が発生する負圧により、ダクト144を介して天井に設けられた複数(本実施形態では3つ)の吸込口142から室内の空気を吸い込み、室内熱交換機131を通過させて冷却した後、ダクト145を介して床下空間146に導く。床下空間146に導かれた空気は、床に設けられた吹出口147から室内に吹き出し、サーバールーム2を冷却した後、再び、吸込口142から吸い込まれる。このようにして、サーバールーム2と室内ユニット130間を空気が循環し、サーバールーム2内が冷却される。
【0008】
図2はサーバーラック10を示す図である。
サーバーラック10は、前面及び後面が開口したキャビネット本体11を備え、このキャビネット本体11の底には、キャスタ13が設けられ、サーバーラック10が容易に移動可能となっている。
【0009】
キャビネット本体11内には、複数のサーバー3がその背面をキャビネット本体11後面に向けて上下に段積み配置される。このサーバー3は、例えば、ブレードサーバー等によって構成され、冷却用のファン4を備えており、サーバー3内の温度が所定温度を超えるとファン4を駆動し、サーバー3内に外気を導入して機器背面から排出する強制空冷機能を備えている。このため、サーバー3の背面をキャビネット本体11背面に向けて配置することで、ファン4の駆動時には、図2の破線矢印で示すように、ファン4により室内空気がキャビネット前面開口64から吸い込まれ、サーバー3を冷却した後、リアドア12を通過して室内に排出される。なお、サーバー3には、UPS50(Uninterruptible Power supply:無停電電源装置)(バックアップ電源)から電源電力が供給されており、商用電源300(図3)からの電力供給停止状態が発生した場合であっても、サーバー3及びファン4は動作を継続する。UPS50は、バッテリー(図示略)を内蔵し、通常時は商用電源からの電力をサーバー3等の各部に供給し、商用電源の停止時にはバッテリーからの電源を供給する。
【0010】
キャビネット本体11後面には、後面開口65を閉塞自在に片開きで開閉するリアドア12が設けられている。このリアドア12を開けることによって、キャビネット本体11内のサーバー3にアクセス可能となる。このリアドア12は、通気自在に構成されるとともに、その内部に蒸発器21が配設される。
この蒸発器21は、図2に示すように、サーバーラック10のリアドア12に一体的に構成されており、リアドア12の略上下に渡って延在し、上下略中間部を境に上側蒸発部22と下側蒸発部23とに分割され、キャビネット本体11上半分のサーバー3の冷却を上側蒸発部22が受け持ち、下半分のサーバー3の冷却を下側蒸発部23が受け持つように構成される。本構成のサーバーラック10は送風ファンを具備しない構成とされ、サーバー3に内蔵されたファン4によってサーバー3の排熱で暖められた空気が蒸発器21を流通する。このため、例えばリアドア12内に送風ファンを内蔵した構成に比して、リアドア12の奥行き寸法が短くなり、サーバーラック10自体の奥行き寸法を短くすることができる。なお、リアドア12内に送風ファンを配置し、この送風ファンによって室内空気をキャビネット本体11内に導入し、サーバー3を通った空気を蒸発器21に流通させるようにしてもよい。
【0011】
蒸発器21は、銅管とアルミニウム製板フィンとを備えるプレートフィンチューブ式熱交換器によって構成されている。蒸発器21の銅管には、図1に示すように、熱源ユニット30から延びるメイン冷媒配管31(液管31A及びガス管31B)がフレキシブル配管(フレキシブル液管25及びフレキシブルガス管26)を介して接続されており、これにより冷媒回路18が形成されている。
【0012】
メイン冷媒配管31は、サーバールーム2の上床2Aと下床2Bとの間の床下空間内を引き回されており、メイン冷媒配管31につながるフレキシブル液管25及びフレキシブルガス管26は、上床2Aの開口穴2C(図2)を通ってリアドア12内の蒸発器21につながる。このため、図2に示すように、フレキシブル液管25及びフレキシブルガス管26が蒸発器21から下方に延びた後に床下空間内で緩やかに曲がるように引き回され、これらフレキシブル液管25及びフレキシブルガス管26の長さに余裕を持たせておくことによってリアドア12開閉時にフレキシブル液管25及びフレキシブルガス管26だけがリアドア12の動きに合わせて移動する。従って、リアドア12開閉時に他の配管に力が作用することがなく、他の配管、例えば、液管31A及びガス管31Bに鋼管を適用することが可能である。
【0013】
熱源ユニット30は、図1に示すように、能力可変型の圧縮機32、圧縮機モータ33(電動機)、室外ファン37を駆動する室外ファンモータ34、凝縮器35、電動膨張弁36及び制御ユニット80を備えている。そして、圧縮機モータ33によって駆動される圧縮機32が冷媒回路18に充填された冷媒を圧縮して吐出することにより、冷媒回路18内を冷媒が循環し、冷凍サイクル運転を行う。この冷凍サイクル運転中、蒸発器21によってサーバー3から排出された空気が冷却されて室内に排出される。
【0014】
ここで、従来のサーバー冷却装置は空気−水熱交換器を備えるため、この空気−水熱交換器にチラー水を循環する経路の一部からでも水漏れが生じると、この水によってサーバーが損傷するおそれがある。本構成では、上述したように、蒸発器21には、冷凍サイクルを循環する冷媒が供給されるため、万一冷媒が循環する経路から冷媒の漏れが生じたとしても、この冷媒は即座に蒸発し、サーバー3のショートもしくは漏電が生じることはない。
【0015】
図3は、サーバーラック冷却装置100の制御系の構成例を示すブロック図である。なお、この図において、破線は電力供給線を示す。
制御ユニット80は、サーバーラック冷却装置100の各部を中枢的に制御するものであり、CPUや、ROM、RAM等を備えている。
この制御ユニット80には、サーバーラック10内に設けられ、サーバーラック10内の温度を検出するサーバー温度センサ29E、29F(図2)が接続されており、これらサーバー温度センサ29E、29Fからサーバーラック10内の温度を示す信号が入力される。サーバー温度センサ29Eは、上側蒸発部22に対応する位置に設けられており、サーバー温度センサ29Fは、下側蒸発部23に対応する位置に設けられている。制御ユニット80は、サーバー温度センサ29E、29Fから入力された温度信号に基づいて、例えば統計学的手法により、サーバーラック10内の温度を検出する。
制御ユニット80は、検出した温度に基づいて、圧縮機モータ33、電動膨張弁36及び室外ファンモータ34を制御する。圧縮機モータ33、電動膨張弁36、室外ファンモータ34及び制御ユニット80には、商用電源300から電力が供給される。
【0016】
また、図3に示すように、本実施形態に係るサーバーラック冷却装置100は、UPS50を備えている。このUPS50は、落雷等に起因して商用電源300に停電が発生したり、商用電源300から熱源ユニット30までの間に配設されている安全装置(遮断装置)が動作したりして、商用電源300から熱源ユニット30への電力の供給が停止した場合に、熱源ユニット30の各部へ電力を供給する電源装置である。
制御ユニット80は、商用電源300からの電力供給が正常である場合には、図示せぬスイッチ回路などにより、熱源ユニット30への電力の供給元として商用電源300を選択する。一方、商用電源300から熱源ユニット30への電力の供給が停止した場合には、熱源ユニット30への電力の供給元としてUPS50を選択し、UPS50から圧縮機モータ33、電動膨張弁36、室外ファンモータ34及び制御ユニット80に電力が供給される。なお、制御ユニット80に対しては、UPS50から常時電力が供給されており、商用電源300から熱源ユニット30への電力の供給が停止した場合においても、作動が継続する。
【0017】
ところで、UPS50から熱源ユニット30への電力の供給は、商用電源300から正常に電力が供給されるようになるまでの、あくまでも一時的な措置である。従って、UPS50から熱源ユニット30を含むサーバーラック冷却装置100に供給される電力をできるだけ減らし、UPS50から電力の供給を受けた状態のサーバーラック冷却装置100によってできるだけ長くサーバー3を冷却し、これにより、商用電源300の電力供給停止状態が解消するまでの間、サーバー3の冷却を継続して行いたい、とするニーズがある。
以上を踏まえ、本実施形態では、以下説明する動作を実行することにより、UPS50から熱源ユニット30を含むサーバーラック冷却装置100に供給される電力を減少している。
【0018】
図4は、サーバーラック冷却装置100の動作を示すフローチャートである。
なお、フローチャートが示す動作の開始時点では、サーバーラック冷却装置100に商用電源300から正常に電力の供給がされているものとする。
また、フローチャートが示す動作中、制御ユニット80は、商用電源300から熱源ユニット30への電力供給停止状態の発生を検出する検出手段として機能する。
【0019】
まず、制御ユニット80は、サーバー3の冷却に係る通常運転を実行しつつ、商用電源300から熱源ユニット30への電力供給停止状態が発生したか否かを監視する(ステップSA1、ステップSA2)。
ここで、サーバー3の冷却に係る通常運転について説明する。通常運転時、制御ユニット80は、サーバー温度センサ29E、29Fから入力された信号に基づいて、サーバーラック10内の温度を検出すると共に、当該サーバーラック10内の温度と第1目標温度との差分に基づいて、圧縮機モータ33を制御し、サーバールーム2内が第1目標温度になるように制御する。この第1目標温度とは、サーバー3を冷却するためのサーバーラック10内の最適な温度である。なお、サーバー3の周囲温度の適温範囲は、一般的には17〜26℃とされている。これ以上温度が上昇すると、サーバー3を構成する半導体や電子部品の寿命が短縮するとともに、故障率が増加する。例えば、半導体の場合、40℃における故障率を1とすると、60℃で10倍、80℃で100倍となる。また、電解コンデンサの場合には、温度が10℃上昇すると寿命が半分になってしまう。そこで、通常時には、空調の目標温度として前述した17〜26℃の範囲に属する、例えば、20℃が設定される。これにより、温度上昇によるサーバー3の熱暴走を防ぐだけでなく、サーバー3を構成する電子部品の故障率を下げるとともに、寿命を延ばすことができる。
【0020】
ステップSA2において、商用電源300から熱源ユニット30への電力供給停止状態が発生した場合(ステップSA2:YES)、制御ユニット80は、熱源ユニット30への電力の供給元をUPS50に切替える(ステップSA3)。これにより、商用電源300から熱源ユニット30への電力供給停止状態が発生した状態であっても、熱源ユニット30にUPS50から電力が供給された状態となる。
【0021】
次いで、制御ユニット80は、電動膨張弁36を全開の状態とすると共に(ステップSA4)、圧縮機の駆動レベルを下げる(ステップSA5)。
このように、本実施形態では、UPS50から熱源ユニット30へ電力を供給している状態の場合は、強制的に電動膨張弁36を全開とし、かつ、圧縮機32の駆動レベルを下げるが、これにより以下の効果を奏することができる。
すなわち、電動膨張弁36を全開とした場合、電動膨張弁36が全開ではない場合と比較して、電動膨張弁36が冷媒回路18における冷媒の循環の抵抗とならず、電動膨張弁36によって冷媒回路18における冷媒の循環が妨げられない。
【0022】
そして、本実施形態では、UPS50から熱源ユニット30へ電力を供給している状態の場合は、圧縮機32の駆動レベルを下げることにより、UPS50から圧縮機32へ供給される電力を減少させた上で、電動膨張弁36を全開とすることにより、冷媒回路18における冷媒の循環を維持する。
このような動作を実行した場合であっても、サーバー3の冷却は継続して実行される。具体的には、上述した動作中、圧縮機32は、冷媒回路18において冷媒を循環させて、蒸発器21に冷媒熱搬送する熱搬送ポンプとして機能する。そして、圧縮機32の駆動によって、圧縮機32がポンプとして機能し、冷媒回路18内を冷媒が循環する。この冷媒回路18における冷媒の循環に伴って、蒸発器21においてサーバー3から排出される空気と冷媒との間で熱交換が行われ、冷媒が当該空気の熱を吸収することにより当該空気を冷却した後、凝縮器35において冷媒と外気との間で熱交換が行われ、冷媒が冷却される。
【0023】
なお、ステップSA5の圧縮機32の駆動レベルを下げる場合、制御ユニット80は、サーバーラック10内の温度が、第2目標温度に至るように、圧縮機32の駆動レベルを下げるようにしてもよい。ここで、第2目標温度とは、通常運転時における目標温度より高く設定された温度であって、サーバーラック10内の温度が当該第2目標温度である場合に、サーバー3に対し確実に悪影響を及ぼさない温度のことである。これにより、サーバー3に対して悪影響が及ばないような温度にサーバーラック10内の温度を維持しつつ、圧縮機32の駆動レベルを下げ、UPS50から圧縮機32へ供給される電力を減少することができる。
【0024】
ステップSA6において、制御ユニット80は、電力供給停止状態が解消したか否かを判別する。電力供給停止状態が解消している場合(ステップSA6:YES)、制御ユニット80は、熱源ユニット30への電力の供給元をUPS50から商用電源300に切替える(ステップSA7)。次いで、制御ユニット80は、処理手順をステップSA1へ戻し、再び通常運転を実行する。
【0025】
以上説明したように、本実施形態に係るサーバーラック冷却装置100は、サーバー3を収納したサーバーラック10に蒸発器21を配置し、この蒸発器21から延びた冷媒配管に、商用電源300を用いた電動機で駆動する圧縮機モータ33、凝縮器35を有した熱源ユニット30を接続し、蒸発器21によりサーバーラック10内のサーバー3を冷却する。そして、サーバーラック冷却装置100は、UPS50と、商用電源300から熱源ユニット30への電力供給停止状態の発生を検出する制御ユニット80とを備え、電力供給停止状態時には、UPS50により熱源ユニット30の電動膨張弁36を全開し、圧縮機32を熱搬送ポンプとして駆動することにより、蒸発器21に冷媒熱搬送する。
これによれば、電力供給停止状態が発生した場合、圧縮機32が熱搬送ポンプとして機能するように、圧縮機32の駆動レベルが下げられる。さらに、電動膨張弁36が全開されて、圧縮機32を熱搬送ポンプとして駆動することにより、蒸発器21に冷媒熱搬送がなされ、サーバー3の冷却が行われる。これにより、電力供給停止状態が発生した場合であっても、サーバー3の冷却を継続したまま、UPS50から圧縮機32を含むサーバーラック冷却装置100に供給される電力を減少することができる。
【0026】
なお、電力供給停止状態は、そのインフラ整備の状況にもよるが、日本においては一般的に数分から多くても20〜30分程度と比較的短時間であると考えられる。このように短時間の場合、もしくは、寒冷地や冬期(外気が低温)の場合であれば、上述したように、圧縮機32を熱搬送ポンプとした冷媒運転でも十分にサーバー3の冷却は可能と考える。万一電力供給停止時間が長くなると考えられるような場合は、事前に、冷媒回路18中に冷媒を蓄える蓄熱槽(図示しないが、例えば通常運転時の低圧側配管に設置)を設けておいて、電力供給停止時には、この蓄熱槽にも冷媒を流すようにすれば良い。
【0027】
また、本実施形態では、サーバーラック冷却装置100において、通常運転時は、サーバーラック10内の温度が第1目標温度となるよう圧縮機32を制御すると共に、電力供給停止状態時には、サーバーラック10内の温度が第1目標温度よりも高い第2目標温度となるよう圧縮機32を制御する。
ここで、第2目標温度とは、第1目標温度より高く設定された温度であって、サーバーラック10内の温度が当該第2目標温度である場合に、サーバー3に対し確実に悪影響を及ぼさない温度のことである。
そして、これによれば、サーバー3に対して悪影響が及ばないような温度にサーバーラック10内の温度を維持しつつ、圧縮機32の駆動レベルを下げ、UPS50から圧縮機32を含むサーバーラック冷却装置100へ供給される電力を減少することができる。
【0028】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、本実施形態では、バックアップ電源としてUPS50を用いていたが、バックアップ電源は、UPS50に限らず、商用電源とは独立して電力を供給可能なものであればよく、非常用発電機と組み合わせたUPS等、各種電源を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態に係るサーバーラック冷却装置を示す図である。
【図2】サーバーラックを示す図である。
【図3】サーバーラック冷却装置の制御系を示すブロック図である。
【図4】サーバーラック冷却装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0030】
3 サーバー(電子機器)
10 サーバーラック(キャビネット)
21 蒸発器
30 熱源ユニット
32 圧縮機
33 圧縮機モータ(電動機)
35 凝縮器
36 電動膨張弁
50 UPS(バックアップ電源)
80 制御ユニット(検出手段)
100 サーバーラック冷却装置(電子機器冷却装置)
300 商用電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を収納したキャビネットに蒸発器を配置し、この蒸発器から延びた冷媒配管に、商用電源を用いた電動機で駆動する圧縮機、凝縮器を有した熱源ユニットを接続し、前記蒸発器により前記キャビネット内の前記電子機器を冷却する電子機器冷却装置において、
前記商用電源とは独立して電力を供給可能なバックアップ電源と、前記商用電源から前記熱源ユニットへの電力供給停止状態の発生を検出する検出手段とを備え、
電力供給停止状態時には、前記バックアップ電源により前記熱源ユニットの電動膨張弁を全開し、前記圧縮機を熱搬送ポンプとして駆動することにより、前記蒸発器に冷媒熱搬送することを特徴とする電子機器冷却装置。
【請求項2】
通常運転時は、前記キャビネット内の温度が第1目標温度となるよう前記圧縮機を制御すると共に、
電力供給停止状態時には、前記キャビネット内の温度が前記第1目標温度よりも高い第2目標温度となるよう前記圧縮機を制御することを特徴とする電子機器冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−231481(P2010−231481A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78116(P2009−78116)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】