説明

電子機器及びその製造方法

【課題】温度変化の大きい環境下に置かれる場合でも耐久性を十分に維持できる電子機器及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】第1基材1と、第1基材1に対向配置される第2基材2と、第1基材1及び第2基材2の間に配置される被封止部3と、第1基材1及び第2基材2を連結し、被封止部3の周囲に設けられる封止部4とを備えており、封止部4のうち被封止部3の周囲に沿った少なくとも一部が第1基材1及び第2基材2の各々に固定される外側樹脂封止部4aと、第1基材1及び第2基材2の間で、外側樹脂封止部4aに挟まれるように配置される中間樹脂封止部4bとを有し、外側樹脂封止部4a及び中間樹脂封止部4bが樹脂を含み、中間樹脂封止部4bの融点が外側樹脂封止部4aの融点よりも低いことを特徴とする電子機器100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器として、色素増感太陽電池や有機薄膜太陽電池などの光電変換素子や、液晶表示装置、EL表示装置などの表示素子などが知られている。
【0003】
このような電子機器として、一対の基体の間に絶縁性のスペーサを配置し、絶縁性スペーサを一対の基体に対し封止材で接合することによって、封止性能が良好でショートが生じ難い機能デバイスが提案されている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1では、絶縁性スペーサとしてガラス、アルミナ、石英等の無機材料や、ポリエチレン等の有機材料を用い、封止材としてアクリル樹脂、ガラスフリット等を用いることが開示されている(実施例)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−194075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の機能デバイスは、以下に示す課題を有していた。
【0006】
即ち特許文献1に記載の機能デバイスは、昼と夜とで温度が大きく異なる屋外などの温度変化の大きい環境下に置かれることがある。特に太陽電池のような機能デバイスにあっては、屋外などの温度変化の大きい環境下に置かれる可能性が高い。このとき、一対の基体、封止材及びスペーサは熱膨張や熱収縮を繰り返す。ここで、スペーサがガラスなどの無機材料で構成されると、封止材と基体との線膨張係数は通常異なるため、封止材とスペーサとの界面、あるいは封止材と基体との界面に過大な応力がかかる。またスペーサが樹脂で構成される場合でも、封止材とスペーサとの界面、あるいは封止材と基体との界面に過大な応力がかかる場合がある。このため、封止材とスペーサとの密着性及び接着性が低下する結果、機能デバイスの封止性能が低下し、耐久性を維持することができなくなる。
【0007】
そこで、本発明は、温度変化の大きい環境下に置かれる場合でも耐久性を十分に維持できる電子機器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため温度変化の大きい環境下に置かれる場合でも電子機器の耐久性を十分に維持できない原因について鋭意研究を重ねた結果、一対の基体の間に配置される絶縁性スペーサが封止材よりも硬いことが、温度変化の大きい環境下に置かれる場合でも電子機器の耐久性を十分に維持できない原因ではないかと考えた。即ち、スペーサが封止材よりも硬いことで温度変化に伴って電子機器内に生じる応力が封止材とスペーサとの界面に集中するのではないかと本発明者は考えた。そこで、本発明者はさらに検討を重ね、以下の発明により上記課題を解決しうることを見出した。
【0009】
即ち本発明は、第1基材と、前記第1基材に対向配置される第2基材と、前記第1基材及び前記第2基材の間に配置される被封止部と、前記第1基材及び前記第2基材を連結し、前記被封止部の周囲に設けられる封止部とを備えており、前記封止部のうち前記被封止部の周囲に沿った少なくとも一部が、前記第1基材及び前記第2基材の各々に固定される外側樹脂封止部と、前記第1基材及び前記第2基材の間で、前記外側樹脂封止部に挟まれるように配置される中間樹脂封止部とを有し、前記外側樹脂封止部及び前記中間樹脂封止部が樹脂を含み、前記中間樹脂封止部の融点が前記外側樹脂封止部の融点よりも低いことを特徴とする光電変換装置である。
【0010】
この電子機器によれば、中間樹脂封止部の融点が前記外側樹脂封止部の融点よりも低いため、中間樹脂封止部は外側樹脂封止部よりも軟らかくなる。このため、電子機器が温度変化の大きい環境下に置かれる場合に、封止部にて外側樹脂封止部と中間樹脂封止部との界面に応力がかかっても、その応力が軟らかい中間樹脂封止部で吸収されて十分に緩和される。従って、本発明の電子機器によれば、外側樹脂封止部と中間樹脂封止部との密着性及び接着性が低下することを十分に抑制することができ、被封止部の漏洩又は外部からの被封止部への水分の浸入を十分に抑制することができる。よって、電子機器が温度変化の大きい環境下に置かれる場合でも、耐久性を維持することができる。
【0011】
前記中間樹脂封止部は、酸変性ポリオレフィンを含むことが好ましい。
【0012】
この場合、中間樹脂封止部と外側樹脂封止部との接着が強固になり、外側樹脂封止部と中間樹脂封止部との界面において、被封止部の漏洩又は外部からの被封止部への水分の浸入をより十分に抑制できる。
【0013】
前記中間樹脂封止部は、酸変性ポリエチレンを含むことが好ましい。酸変性ポリエチレンは他の酸変性ポリオレフィンに比べて比較的低融点であるため、他の酸変性ポリオレフィンを用いた場合に比べて、外側樹脂封止部よりも一層軟らかくなる。このため、電子機器が温度変化の大きい環境下に置かれる場合に、封止部にて外側樹脂封止部と中間樹脂封止部との界面に応力がかかっても、その応力がより十分に緩和される。
【0014】
前記中間樹脂封止部は、ポリビニルアルコール及びエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
【0015】
これらの樹脂は気体バリア性が高いために、中間樹脂封止部中において、被封止部の漏洩又は外部からの被封止部への水分の浸入をより十分に抑制できる。
【0016】
前記外側樹脂封止部は、酸変性ポリオレフィン及び紫外線硬化性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0017】
この場合、第1基材および第2基材と、外側樹脂封止部との接着が強固になり、それぞれの界面において、被封止部の漏洩又は外部からの被封止部への水分の浸入をより十分に抑制できる。
【0018】
前記外側樹脂封止部は、酸変性ポリエチレンを含むことが好ましい。酸変性ポリエチレンは、酸変性ポリオレフィンの中でも比較的融点が低い。このため、外側樹脂封止部として、酸変性ポリエチレン以外の酸変性ポリオレフィンを用いる場合に比べて、外側樹脂封止部と第1基材又は第2基材との界面に生じる応力をより一層緩和することができる。
【0019】
前記外側樹脂封止部は、ポリビニルアルコール及びエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含むものであってもよい。
【0020】
これらの樹脂は気体バリア性が高いために、外側樹脂封止部中において、被封止部の漏洩又は外部からの被封止部への水分の浸入をより十分に抑制できる。
【0021】
上記電子機器は、前記封止部に対して前記被封止部と反対側に、前記第1基材および前記封止部の境界、前記第2基材および前記封止部の境界、前記中間樹脂封止部及び前記外側樹脂封止部の境界を少なくとも覆う被覆部をさらに備え、前記被覆部が第2の樹脂を含むことが好ましい。
【0022】
この場合、被封止部の漏洩又は外部からの被封止部への水分の浸入が、封止部のみならず被覆部によっても抑制されることになる。特に、封止部と第1基材との界面、封止部と第2基材との界面、及び中間樹脂封止部と外側樹脂封止部との界面を通る被封止部の界面漏洩又は外部からの被封止部への水分の浸入が被覆部によって効果的に抑制される。
【0023】
上記電子機器においては、前記第1基材が第1電極であり、前記第2基材が第2電極であってもよい。
【0024】
前記第1基材が第1電極で、前記第2基材が第2電極である電子機器においては、前記第1電極は、多孔質酸化物半導体層と、前記多孔質酸化物半導体層が形成される導電膜と、前記導電膜上に突出するように設けられ、前記外側樹脂封止部と前記導電膜との間に挟まれるように配置される突出部とを有し、前記突出部が無機材料からなり、前記被封止部が電解質であることが好ましい。
【0025】
この場合、無機材料からなる突出部が、導電膜上に突出するように設けられているため、突出部が封止部とともに被封止部としての電解質を封止する機能を果たす。しかも、突出部は、無機材料からなるため、樹脂を含む外側樹脂封止部及び中間樹脂封止部よりも高い封止能を有する。このため、第1電極が突出部を有しない場合に比べて、電解質の漏洩又は外部からの被封止部への水分の浸入をより十分に抑制することができる。
【0026】
ここで、前記突出部が、前記導電膜上に固定される配線部で構成され、前記配線部が、無機材料で構成され、前記導電膜上に設けられる集電配線と、前記集電配線を覆う配線保護層とを有することが好ましい。
【0027】
この電子機器においては、突出部が外側樹脂封止部と導電膜との間に挟まれるように配置される。そして、突起部が配線部を有し、配線部が、集電配線と、集電配線を覆う配線保護層とを有する。つまり、集電配線は、配線保護層により電解質から保護された状態で、第1電極と第2電極とを結ぶ方向に沿って封止部と重なるように配置されている。このように、集電配線が封止部の外側に設けられておらず、さらに、集電配線が封止部の内側にも設けられていないので、第1電極の光入射面において集電配線と封止部とが占める面積を最小限にすることができ、集電配線と封止部とにより遮蔽される入射光を最小限に留めることができる。従って、受光面積を拡大することができ、高い光電変換効率を得ることができる。
【0028】
前記第1基材が第1電極で、前記第2基材が第2電極である電子機器においては、前記第2電極は、対極基板と、前記対極基板上に設けられる触媒膜と、前記触媒膜上に突出するように設けられ、前記外側樹脂封止部と前記触媒膜との間に挟まれるように配置される突出部とを有し、前記突出部が無機材料からなり、前記被封止部が電解質であることが好ましい。
【0029】
この場合、無機材料からなる突出部が、触媒膜上に突出するように設けられているため、突出部が外側樹脂封止部とともに被封止部としての電解質を封止する機能を果たす。しかも、突出部は、無機材料からなるため、樹脂を含む外側樹脂封止部及び中間樹脂封止部よりも高い封止能を有する。このため、第2電極が突出部を有しない場合に比べて、電解質の漏洩又は外部からの被封止部への水分の浸入をより十分に抑制することができる。
【0030】
また本発明は、第1基材及び第2基材を準備する準備工程と、前記第1基材における第1環状部位に、外側樹脂封止部を含む第1封止部を形成する第1封止部形成工程と、前記第2基材における第2環状部位に、外側樹脂封止部を含む第2封止部を形成する第2封止部形成工程と、前記第1基材及び前記第2基材を貼り合せ、前記第1基材及び前記第2基材の間に前記第1封止部と前記第2封止部とを接着させてなる封止部を形成するとともに前記封止部、前記第1基材および前記第2基材によって囲まれるように被封止部を配置する封止部形成工程とを含み、前記第1封止部及び前記第2封止部の少なくとも一方が、前記外側樹脂封止部の上に設けられる中間樹脂封止部を有し、前記中間樹脂封止部および前記外側樹脂封止部が樹脂を含み、前記中間樹脂封止部の融点が前記外側樹脂封止部の融点よりも低いことを特徴とする光電変換装置の製造方法である。
【0031】
この製造方法によれば、中間樹脂封止部の融点が前記外側樹脂封止部の融点よりも低い。このため、中間樹脂封止部は外側樹脂封止部よりも軟らかくなる。このため、得られる電子機器が温度変化の大きい環境下に置かれる場合に、封止部にて外側樹脂封止部と中間樹脂封止部との界面に応力がかかっても、その応力が軟らかい中間樹脂封止部で吸収されて十分に緩和される。従って、本発明の電子機器の製造方法によれば、外側樹脂封止部と中間樹脂封止部との密着性及び接着性の低下が十分に抑制され、被封止部の漏洩又は外部からの被封止部への水分の浸入が十分に抑制され、ひいては温度変化の大きい環境下に置かれる場合でも耐久性を維持できる電子機器を得ることができる。また中間樹脂封止部の融点が外側樹脂封止部の融点よりも低いため、封止部形成工程において、第1封止部及び第2封止部を接着させるに際し、中間樹脂封止部の方が外側樹脂封止部よりも流動性が高くなる。このため、第1封止部及び第2封止部を接着させる際に、第1封止部や第2封止部に夾雑物などの異物が付着していても、第1封止部および第2封止部は、中間樹脂封止部によって夾雑物を含包しながらも容易に接着される。このため、第1封止部と第2封止部との間の接着を強固とすることが可能となる。
【0032】
前記封止部形成工程は減圧空間内で行われることが好ましい。
【0033】
この場合、得られる電子機器を減圧空間から大気中に取り出した際に、被封止部が外気に対して陰圧状態となる。その結果、電子機器は外部から大気圧を受けることになり、封止部に対して第1基材及び第2基材が押圧力を加えた状態が維持され、被封止部中の揮発成分の漏洩がより十分に抑制される。
【0034】
上記電子機器の製造方法においては、前記第1基材が第1電極であり、前記第2基材が第2電極であってもよい。
【0035】
ここで、前記第1電極が多孔質酸化物半導体層を含み、前記被封止部が電解質であり、上記製造方法が、前記準備工程と前記封止部形成工程との間に、前記多孔質酸化物半導体層に光増感色素を担持させる色素担持工程と、前記第1電極上であって前記第1封止部の内側、又は前記第2電極上であって前記第2封止部の内側に前記電解質を配置して電解質層を形成する電解質層形成工程とをさらに含み、前記電解質層形成工程は、前記第1封止部形成工程及び前記第2封止部形成工程の少なくとも一方の後に行われ、前記封止部形成工程において、前記封止部は、前記第1封止部及び前記第2封止部を加圧しながら溶融させることによって形成されることが好ましい。
【0036】
上記製造方法によれば、第1封止部形成工程及び第2封止部形成工程の少なくとも一方は、電解質層形成工程の前に行われる。このため、例えば第1封止部形成工程及び第2封止部形成工程のうち第1封止部形成工程のみが電解質層形成工程の前に行われる場合、第1封止部を第1電極における第1環状部位に形成する際、その第1環状部位に電解質中の揮発成分が付着しておらず、その表面の濡れ性が低下していない。従って、樹脂は第1環状部位に強固に接着し、第1封止部が第1環状部位に強固に固定される。
【0037】
一方、封止部形成工程は電解質層形成工程の後に行われる。このため、通常であれば、第1封止部及び第2封止部を溶融させることに伴い、電解質の一部が蒸発し、第1封止部と第2封止部との間の濡れ性が低下すると考えられる。また、電解質層形成工程中に電解質が第1封止部と第2封止部上に付着し、第1封止部と第2封止部との間の濡れ性が低下することも考えられる。
【0038】
しかし、上述したように、中間樹脂封止部の融点が外側樹脂封止部の融点よりも低いため、封止部形成工程において、第1封止部及び第2封止部を接着させるに際し、中間樹脂封止部の方が外側樹脂封止部よりも流動性が高くなる。このため、第1封止部及び第2封止部を接着させる際に、第1封止部や第2封止部に夾雑物などの異物が付着していても、第1封止部及び第2封止部が中間樹脂封止部にその夾雑物を含包して接着される。このため、第1封止部と第2封止部は、侠雑物を含包した中間樹脂封止部によって、第1封止部と第2封止部との間の接着を強固とすることが可能となる。
【0039】
このように、上記製造方法によれば、第1封止部は、第1電極の第1環状部位に強固に固定され、第2封止部が第2電極の第2環状部位に強固に固定される。また第1封止部及び第2封止部同士も強固に接着される。従って、得られる電子機器においては、電解質中の揮発成分の漏洩がより十分に抑制される。さらに、外部からの電解質への水分の浸入をより十分に抑制できる。よって、本発明に係る電子機器の製造方法によれば、光電変換効率の経時的な低下を十分に抑制できる電子機器を製造することが可能となる。
【0040】
前記電解質層形成工程において、前記電解質層は、前記電解質を、前記第1電極上であって前記第1封止部の内側、又は前記第2電極上であって前記第2封止部の内側に注入し、前記第1封止部又は前記第2封止部を超えて前記第1封止部又は前記第2封止部の外側に溢れさせることにより形成されることが好ましい。
【0041】
この場合、第1封止部又は第2封止部の内側に電解質を十分に注入することが可能となる。また第1封止部と第2封止部とを接着して封止部を形成するに際し、第1電極と第2電極と封止部とによって囲まれる空間から空気を十分に排除することができる。その結果、光電変換効率の経時的な低下を十分に抑制することができる。
【0042】
前記電解質層形成工程においては、前記電解質層が、前記第1電極上であって前記第1封止部の内側に形成されることが好ましい。
【0043】
この場合、多孔質酸化物半導体層の多孔質の細部にまで電解質が十分に行き渡った後に封止工程が行われることとなる。このため、多孔質酸化物半導体層中の空気が気泡となって現れることが十分に抑制され、光電変換効率の経時的な低下を十分に抑制することができる。
【0044】
上記製造方法において、前記第1電極は、多孔質酸化物半導体層と、前記多孔質酸化物半導体層が形成される導電膜と、前記導電膜上に突出するように設けられ、前記第1環状部位をなす突出部とを有し、前記突出部が無機材料からなり、前記被封止部が電解質である、ことが好ましい。
【0045】
この場合、無機材料からなる突出部が、導電膜上に突出するように設けられているため、突出部が封止部とともに被封止部としての電解質層を封止する機能を果たす。しかも、突出部は、無機材料からなるため、樹脂を含む第1封止部及び第2封止部よりも高い封止能を有する。このため、第1電極が突出部を有しない場合に比べて、電解質の漏洩又は外部からの電解質への水分の浸入をより十分に抑制することができる。
【0046】
上記製造方法において、前記第2電極は、対極基板と、前記対極基板上に設けられる触媒膜と、前記触媒膜上に突出するように設けられ、前記第2環状部位をなす突出部とを有し、前記突出部が無機材料からなり、前記被封止部が電解質であることが好ましい。
【0047】
この場合、無機材料からなる突出部が、触媒膜上に突出するように設けられているため、突出部が封止部とともに被封止部としての電解質層を封止する機能を果たす。しかも、突出部は、無機材料からなるため、樹脂を含む第1封止部及び第2封止部よりも高い封止能を有する。このため、第2電極が突出部を有しない場合に比べて、電解質の漏洩をより十分に抑制することができる。
【0048】
上記製造方法においては、前記第1電極及び前記第2電極のうち少なくとも一方が可撓性を有することが好ましい。
【0049】
この場合、第1電極及び第2電極のいずれも可撓性を有しない場合に比べて、減圧空間から取り出されて大気圧下に配置された場合に、第1電極及び第2電極のうち可撓性を有する電極が大気圧によって撓み、第1電極と第2電極との間隔を狭めることが可能となる。その結果、第1電極及び第2電極のいずれも可撓性を有しない場合に比べて、特性がより向上する。
【0050】
なお、本発明において、融点とは、示差走査熱量分析(DSC)によって求めた値とした。即ち融点とは、昇温条件及び冷却条件を共に1℃/分とし、昇温した時に得られる値と昇温後冷却し再度昇温したときに得られる値の平均値を言うものとする。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、温度変化の大きい環境下に置かれる場合でも耐久性を十分に維持できる電子機器及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の第1電極を示す断面図である。
【図3】図1の第2電極を示す断面図である。
【図4】図2の第1電極を示す平面図である。
【図5】本発明に係る電子機器の製造方法の一実施形態の一工程を示す断面図である。
【図6】図3の第2電極を示す平面図である。
【図7】本発明に係る電子機器の製造方法の一実施形態の他の工程を示す断面図である。
【図8】本発明に係る電子機器の製造方法の一実施形態のさらに他の工程を示す断面図である。
【図9】本発明に係る電子機器の製造方法の一実施形態のさらにまた他の工程を示す断面図である。
【図10】本発明に係る電子機器の製造方法の他の実施形態の一工程を示す断面図である。
【図11】図1の第1電極の変形例を示す断面図である。
【図12】図1の第2電極の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0054】
<第1実施形態>
まず本発明に係る電子機器の第1実施形態について図1〜図9を用いて説明する。図1は本発明に係る電子機器の一実施形態である色素増感太陽電池を示す断面図である。図2は、図1の第1電極を示す断面図、図3は、図1の第2電極を示す断面図、図4は、図2の第1電極を示す平面図、図5及び図7〜図9はそれぞれ、本実施形態の製造方法の一工程を示す断面図である。図6は、図3の第2電極を示す平面図である。
【0055】
図1に示すように、色素増感太陽電池100は、作用極1と、作用極1に対向配置される対極2とを備えている。作用極1には光増感色素が担持されている。作用極1と対極2とは封止部4によって連結されている。そして、作用極1と対極2と封止部4とによって包囲されるセル空間内には電解質が充填され、この電解質により電解質層3が形成されている。電解質層3は作用極1と対極2との間に配置され、封止部4は電解質層3の周囲に設けられている。なお、本実施形態において、作用極1は、第1基材であり且つ第1電極でもある。また対極2は第2基材であり且つ第2電極でもある。また電解質層3は被封止部に対応するものである。
【0056】
作用極1は、透明基板6と、透明基板6の対極2側に設けられる透明導電膜7と、透明導電膜7の上に設けられる多孔質酸化物半導体層8とを備えている。光増感色素は作用極1のうちの多孔質酸化物半導体層8に担持されている。対極2は、対極基板9と、対極基板9のうち作用極1側に設けられて対極2の表面における還元反応を促進する導電性の触媒膜10とを備えている。
【0057】
封止部4は、作用極1と対極2とを連結しており、作用極1に固定される外側樹脂封止部4aと、対極2に固定される外側樹脂封止部4aと、これら外側樹脂封止部4aの間に挟まれるように配置される中間樹脂封止部4bとで構成されている。作用極1側の外側樹脂封止部4aは作用極1の多孔質酸化物半導体層8A側の表面上、即ち透明導電膜7の表面上に固定されている。対極2側の外側樹脂封止部4aは対極2の触媒膜10の表面上に固定されている。外側樹脂封止部4a及び中間樹脂封止部4bはいずれも樹脂を含んでおり、中間樹脂封止部4bの融点が外側樹脂封止部4aの融点よりも低くなっている。
【0058】
この色素増感太陽電池100によれば、中間樹脂封止部4bの融点が外側樹脂封止部4aの融点よりも低いため、中間樹脂封止部4bは外側樹脂封止部4aよりも軟らかくなる。このため、色素増感太陽電池100が温度変化の大きい環境下に置かれる場合に、封止部4にて外側樹脂封止部4aと中間樹脂封止部4bとの界面に応力がかかっても、その応力が軟らかい中間樹脂封止部4bで吸収されて十分に緩和される。従って、色素増感太陽電池100によれば、外側樹脂封止部4aと中間樹脂封止部4bとの密着性及び接着性が低下することを十分に抑制することができ、電解質の漏洩及び外部からの水分の侵入を十分に抑制することができる。よって、色素増感太陽電池100が温度変化の大きい環境下に置かれる場合でも、耐久性を維持することができる。
【0059】
次に、上述した色素増感太陽電池100の製造方法について説明する。
【0060】
[準備工程]
まず作用極(第1電極)1及び対極(第2電極)2を準備する。
【0061】
(作用極)
作用極1は、以下のようにして得ることができる(図2)。
【0062】
はじめに透明基板6の上に透明導電膜7を形成して積層体を形成する。透明導電膜7の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、スプレー熱分解法(SPD:Spray Pyrolysis Deposition)及びCVD法などが用いられる。これらのうちスプレー熱分解法が装置コストの点から好ましい。
【0063】
透明基板6を構成する材料は、例えば透明な材料であればよく、このような透明な材料としては、例えばホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、白板ガラス、石英ガラスなどのガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルフォン(PES)などが挙げられる。透明基板6の厚さは、色素増感太陽電池100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば50μm〜10000μmの範囲にすればよい。
【0064】
透明導電膜7を構成する材料としては、例えばスズ添加酸化インジウム(Indium−Tin−Oxide:ITO)、酸化スズ(SnO)、フッ素添加酸化スズ(Fluorine−doped−Tin−Oxide:FTO)などの導電性金属酸化物が挙げられる。透明導電膜7は、単層でも、異なる導電性金属酸化物で構成される複数の層の積層体で構成されてもよい。透明導電膜7が単層で構成される場合、透明導電膜7は、高い耐熱性及び耐薬品性を有することから、FTOで構成されることが好ましい。また透明導電膜7として、複数の層で構成される積層体を用いると、各層の特性を反映させることが可能となることから好ましい。中でも、ITOで構成される層と、FTOで構成される層との積層体を用いることが好ましい。この場合、高い導電性、耐熱性及び耐薬品性を持つ透明導電膜7が実現できる。透明導電膜7の厚さは例えば0.01μm〜2μmの範囲にすればよい。
【0065】
次に、上記のようにして得られた透明導電膜7上に、多孔質酸化物半導体層形成用ペーストを印刷する。多孔質酸化物半導体層形成用ペーストは、上述した酸化物半導体粒子のほか、ポリエチレングリコールなどの樹脂及び、テレピネオールなどの溶媒を含む。多孔質酸化物半導体層形成用ペーストの印刷方法としては、例えばスクリーン印刷法、ドクターブレード法、バーコート法などを用いることができる。
【0066】
次に、多孔質酸化物半導体層形成用ペーストを焼成して透明導電膜7上に多孔質酸化物半導体層8を形成する。焼成温度は酸化物半導体粒子により異なるが、通常は350℃〜600℃であり、焼成時間も、酸化物半導体粒子により異なるが、通常は1〜5時間である。
【0067】
上記酸化物半導体粒子としては、例えば酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO3)、酸化ニオブ(Nb25)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化スズ(SnO2)、酸化インジウム(In)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タリウム(Ta)、酸化ランタン(La)、酸化イットリウム(Y)、酸化ホルミウム(Ho)、酸化ビスマス(Bi)、酸化セリウム(CeO)、酸化アルミニウム(Al)又はこれらの2種以上で構成される酸化物半導体粒子が挙げられる。これら酸化物半導体粒子の平均粒径は1〜1000nmであることが、色素で覆われた酸化物半導体の表面積が大きくなり、即ち光電変換を行う場が広くなり、より多くの電子を生成することができることから好ましい。ここで、多孔質酸化物半導体層8が、粒度分布の異なる酸化物半導体粒子を積層させてなる積層体で構成されることが好ましい。この場合、積層体内で繰り返し光の反射を起こさせることが可能となり、入射光を積層体の外部へ逃がすことなく効率よく光を電子に変換することができる。多孔質酸化物半導体層8の厚さは、例えば0.5〜50μmとすればよい。なお、多孔質酸化物半導体層8は、異なる材料からなる複数の半導体層の積層体で構成することもできる。
【0068】
(対極)
一方、対極2は、以下のようにして得ることができる(図3)。
【0069】
即ちまず対極基板9を準備する。そして、対極基板9の上に触媒膜10を形成する。触媒膜10の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法などが用いられる。これらのうちスパッタ法が膜の均一性の点から好ましい。
【0070】
対極基板9は、例えばチタン、ニッケル、白金、モリブデン、タングステン等の耐食性の金属材料や、ITO、FTO等の導電性酸化物や、炭素、導電性高分子で構成される。対極基板9の厚さは、色素増感太陽電池100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば0.005mm〜0.1mmとすればよい。
【0071】
触媒膜10は、白金、炭素系材料又は導電性高分子などから構成される。
【0072】
[第1封止部形成工程]
次に、図4及び図5に示すように、作用極1のうち透明導電膜7の表面上の部位であって多孔質酸化物半導体層8を包囲する第1環状部位C1に第1封止部4Aを形成する。第1封止部4Aは、透明導電膜7の第1環状部位C1に固定される外側樹脂封止部4aと、その上に設けられる中間樹脂封止部4bとから構成されている。ここで、外側樹脂封止部4a及び中間樹脂封止部4bはいずれも樹脂を含んでおり、中間樹脂封止部4bとしては、外側樹脂封止部4bの融点よりも低い融点を有するものを用いる。
【0073】
[第2封止部形成工程]
一方、図6及び図7に示すように、対極2のうち触媒膜10の表面上の部位である第2環状部位C2に第2封止部4Bを形成する。第2封止部4Bは、触媒膜10の第2環状部位C2に固定される外側樹脂封止部4aから構成されている。
【0074】
(外側樹脂封止部)
外側樹脂封止部4aに含まれる樹脂は、樹脂であればいかなるものでもよいが、このような樹脂としては、例えば酸変性ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体または紫外線硬化樹脂を用いることができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0075】
外側樹脂封止部4aが酸変性ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの熱可塑性樹脂である場合には、外側樹脂封止部4aは、上記樹脂からなる環状のシートを作用極1の第1環状部位C1又は対極2の第2環状部位C2に配置した後、溶融して接着することで形成することができる。外側樹脂封止部4aが紫外線硬化樹脂である場合には、外側樹脂封止部4aは、紫外線硬化樹脂の前駆体を作用極1の第1環状部位C1又は対極2の第2環状部位C2に塗布した後、紫外線を照射して硬化させることで形成することができる。
【0076】
外側樹脂封止部4aの樹脂としては、上記樹脂のうち酸変性ポリオレフィンまたは紫外線硬化樹脂が好ましい。外側樹脂封止部4aに含まれる樹脂として、酸変性ポリオレフィンまたは紫外線硬化樹脂を用いた場合、作用極1の透明導電膜7又は対極2との接着が強固になり、それぞれの界面において、電解質の漏洩及び外部からの電解質への水分の浸入をより十分に抑制できる。酸変性ポリオレフィンの中でも酸変性ポリエチレンが好ましい。酸変性ポリエチレンは、酸変性ポリオレフィンの中でも比較的融点が低い。このため、外側樹脂封止部4aとして、酸変性ポリエチレン以外の酸変性ポリオレフィンを用いる場合に比べて、外側樹脂封止部4aと作用極1又は対極2との界面に生じる応力をより一層緩和することができる。また酸変性ポリオレフィンの中でも酸変性ポリエチレンは、特に電解質に対する安定性が高い。このため、外側樹脂封止部は、長期間にわたって外側樹脂封止部に含まれる樹脂の柔軟性や接着性などの物性を維持できる。
【0077】
また外側樹脂封止部4aに含まれる樹脂は、ポリビニルアルコールまたはエチレン−ビニルアルコール共重合体であってもよい。これらは気体バリア性が高いために、外側樹脂封止部4a中において、電解質の漏洩及び外部からの電解質への水分の浸入をより十分に抑制できる。上述した樹脂は単独で外側樹脂封止部4aの樹脂として用いてもよいが、2種以上を混合または積層したものであってもよい。
【0078】
(中間樹脂封止部)
中間樹脂封止部4bに含まれる樹脂としては、外側樹脂封止部4aよりも低い融点を有する樹脂であればいかなるものであってもよく、例えば酸変性ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体の中から適宜選択することができる。
【0079】
中間樹脂封止部4bが酸変性ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの熱可塑性樹脂である場合には、中間樹脂封止部4bは、外側樹脂封止部4aの上に上記樹脂からなる環状のシートを配置した後、溶融して接着することで形成することができる。
【0080】
中間樹脂封止部4bに含まれる樹脂としては、酸変性ポリオレフィンが好ましい。この場合、外側樹脂封止部4aとの接着が強固になり、外側樹脂封止部4aと中間樹脂封止部4bとの界面において、電解質の漏洩及び外部からの電解質への水分の浸入をより十分に抑制できる。また、前記した理由に加えて、酸変性ポリオレフィンが、電解質に対して非常に安定であるため、長期間にわたって中間樹脂封止部4bに含まれる樹脂の柔軟性や接着性などの物性を維持できる。さらに酸変性ポリオレフィンはポリビニルアルコールまたはエチレン−ビニルアルコール共重合体に比べて比較的低融点であるため、以下の利点も有する。即ち酸変性ポリオレフィンは他の酸変性ポリオレフィンに比べて比較的低融点であるため、中間樹脂封止部4bはポリビニルアルコールまたはエチレン−ビニルアルコール共重合体に比べて、外側樹脂封止部4aよりもより一層軟らかくなる。このため、色素増感太陽電池100が温度変化の大きい環境下に置かれる場合に、封止部4にて外側樹脂封止部4aと中間樹脂封止部4bとの界面に応力がかかっても、中間樹脂封止部4bとしてポリビニルアルコールまたはエチレン−ビニルアルコール共重合体を用いた場合に比べて、その応力がより十分に緩和される。また酸変性ポリオレフィンがポリビニルアルコールまたはエチレン−ビニルアルコール共重合体に比べて比較的低融点であるため、外側樹脂封止部4aと中間樹脂封止部4bの樹脂とが比較的低温で溶融接着しやすくなる。なお、酸変性ポリオレフィンとは、オレフィンに酸をランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合させたもの、またはこれらを金属イオンで中和したものを意味する。酸変性ポリオレフィンとしては例えばエチレン−メタクリル酸共重合体、アイオノマー、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンを用いることができる。ここで、例えば無水マレイン酸変性ポリプロピレンは、無水マレイン酸をグラフト共重合させた酸変性オレフィンである。
【0081】
中間樹脂封止部4bに含まれる樹脂は酸変性ポリエチレンであることがより好ましい。酸変性ポリエチレンは他の酸変性ポリオレフィンに比べて比較的低融点であるため、中間樹脂封止部4bは他の酸変性ポリオレフィンに比べて、外側樹脂封止部4aよりもより一層軟らかくなる。このため、色素増感太陽電池100が温度変化の大きい環境下に置かれる場合に、封止部4にて外側樹脂封止部4aと中間樹脂封止部4bとの界面に応力がかかっても、中間樹脂封止部4bとして他の酸変性ポリオレフィンを用いた場合に比べて、その応力がより十分に緩和される。
【0082】
また中間樹脂封止部4bに含まれる樹脂は、ポリビニルアルコール又はエチレン−ビニルアルコール共重合体であってもよい。これらの樹脂は気体バリア性が高いために、中間樹脂封止部4b中において、電解質の漏洩及び外部からの電解質への水分の浸入をより十分に抑制できる。
【0083】
外側樹脂封止部4aと中間樹脂封止部4bの樹脂は、異種の酸変性ポリオレフィンであることが好ましい。この場合、外側樹脂封止部4aと中間樹脂封止部4bは、お互いの分子中に同種の不飽和炭素鎖を有するため、相性が良く、後述する封止部形成工程で第1封止部4Aと第2封止部4Bとの間での接着性及び密着性に優れる。
【0084】
外側樹脂封止部4a及び中間樹脂封止部4bの樹脂は上記酸変性ポリオレフィンの群から選ばれる同じ樹脂であることがより望ましい。例えば外側樹脂封止部4aを構成する樹脂と中間樹脂封止部4bを構成する樹脂が同じアイオノマーからなる組み合わせ、又は、外側樹脂封止部4aを構成する樹脂と中間樹脂封止部4bを構成する樹脂が同じ無水マレイン酸変性ポリプロピレンからなる組み合わせなどが望ましい。
【0085】
さらに、中間樹脂封止部4b及び外側樹脂封止部4aに含まれる樹脂は酸変性ポリエチレンであることがより好ましい。この場合、酸変性ポリエチレンは、酸変性ポリオレフィンの中でも特に電解質に対する安定性が高い。このため、中間樹脂封止部4b及び外側樹脂封止部4aは、長期間にわたって中間樹脂封止部4b及び外側樹脂封止部4aに含まれる樹脂の柔軟性や接着性などの物性を維持できる。さらに、酸変性ポリエチレンは他の酸変性ポリオレフィンに比べて比較的低融点であるため、外側樹脂封止部4aと中間樹脂封止部4bの樹脂とが比較的低温で溶融接着しやすい。また、外側樹脂封止部4aと中間樹脂封止部4bの樹脂が異種の酸変性ポリエチレンであると、お互いのモノマーがエチレンであるため相性が良く、後述する封止部形成工程で第1封止部4Aと第2封止部4Bとの間での接着性及び密着性に優れる。
【0086】
ここで、酸変性ポリエチレンとは、ポリエチレンに酸をランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合させたもの、またはこれらを金属イオンで中和したものを意味する。一例としては、エチレンメタクリル酸共重合体は、エチレンとメタクリル酸とを共重合させたもので、酸変性ポリエチレンであり、エチレンメタクリル酸共重合体を金属イオンで中和したアイオノマーも酸変性ポリエチレンとなる。
【0087】
外側樹脂封止部4a及び中間樹脂封止部4bの樹脂は上記酸変性ポリエチレンの群から選ばれる同じ樹脂であることがより望ましい。例えば外側樹脂封止部4aを構成する樹脂と中間樹脂封止部4bを構成する樹脂が同じアイオノマーからなる組み合わせ、又は、外側樹脂封止部4aを構成する樹脂と中間樹脂封止部4bを構成する樹脂が同じ無水マレイン酸変性ポリエチレンからなる組み合わせなどが望ましい。
【0088】
ここで、同じ樹脂とは、ポリエチレンを変性する酸モノマーのエチレン繰返し単位に対するモル比が同一である樹脂はもちろん、このモル比が異なる樹脂をも含む。例えば酸モノマーのエチレン繰返し単位に対するモル比率が5%のエチレンメタクリル酸共重合体と、酸モノマーのエチレン繰返し単位に対するモル比率が10%のエチレンメタクリル酸共重合体とは同じ樹脂となる。この場合、使用する樹脂の融点、メルトフローレート、その他の様々な熱的性質が近いため、同じタイミングでお互いが溶融接着しやすい。そのため、融点やメルトフローレートが大きく異なる樹脂を用いる場合と比較して、溶融加熱時間をコントロールしやすく、後述する封止部形成工程を容易に行うことができる。
【0089】
具体的に、外側樹脂封止部4a及び中間樹脂封止部4bの組合せとしては、以下のものが挙げられる。例えば外側樹脂封止部4aに含まれる樹脂が無水マレイン酸変性ポリエチレンであるバイネルからなり、中間樹脂封止部4bに含まれる樹脂がエチレン−メタクリル酸共重合体であるニュクレルからなる組み合わせ、又は、外側樹脂封止部4aに含まれる樹脂がアイオノマーであるハイミランからなり、中間樹脂封止部4bに含まれる樹脂がエチレン−メタクリル酸共重合体であるニュクレルからなる組み合わせなどが挙げられる。
【0090】
なお、外側樹脂封止部4aに含まれる樹脂が、ポリビニルアルコールまたはエチレン−ビニルアルコール共重合体の少なくとも1種を含有し、中間樹脂封止部4bに含まれる樹脂がポリビニルアルコール、またはエチレン−ビニルアルコール共重合体の少なくとも1種を含有する場合には、外側樹脂封止部4aと中間樹脂封止部4bとの界面に微量の水を存在させることで、両者が界面付近で溶解接着するために、より一層、電解質の漏洩及び外部からの電解質への水分の浸入を抑制できる。
【0091】
中間樹脂封止部4bと外側樹脂封止部4aは、両者の融点の差が、好ましくは0.1℃以上である。両者の融点の差が0.1℃以上であると、0.1℃未満である場合に比べて、熱サイクル時における中間樹脂封止部4bと外側樹脂封止部4aの間での応力緩和がより効果的に起こる。また、両者の融点の差が2℃以上あることで、上記範囲を外れた場合に比べて、上記応力緩和効果がより顕著になる。
【0092】
なお、外側樹脂封止部4a及び中間樹脂封止部4bに含まれる樹脂は樹脂のみで構成されてもよいし、樹脂と無機フィラーとで構成されていてもよい。
【0093】
[色素担持工程]
次に、作用極1の多孔質酸化物半導体層8に光増感色素を担持させる。このためには、作用極1を、光増感色素を含有する溶液の中に浸漬させ、その色素を多孔質酸化物半導体層8に吸着させた後に上記溶液の溶媒成分で余分な色素を洗い流し、乾燥させることで、光増感色素を多孔質酸化物半導体層8に吸着させればよい。但し、光増感色素を含有する溶液を多孔質酸化物半導体層8に塗布した後、乾燥させることによって光増感色素を酸化物半導体多孔膜に吸着させても、光増感色素を多孔質酸化物半導体層8に担持させることが可能である。
【0094】
光増感色素としては、例えばビピリジン構造、ターピリジン構造などを含む配位子を有するルテニウム錯体や、ポルフィリン、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの有機色素が挙げられる。
【0095】
[電解質層形成工程]
次に、図8に示すように、作用極1上であって第1封止部4Aの内側に電解質を配置し、電解質層3を形成する。電解質層3は、電解質を、作用極1上であって第1封止部4Aの内側に注入したり、印刷したりすることによって得ることができる。
【0096】
ここで、電解質が液状である場合は、電解質を、第1封止部4Aを超えて第1封止部4Aの外側に溢れるまで注入することが好ましい。この場合、第1封止部4Aの内側に電解質を十分に注入することが可能となる。また第1封止部4Aと第2封止部4Bとを接着して封止部4を形成するに際し、作用極1と対極2と封止部4とによって囲まれるセル空間から空気を十分に排除することができ、光電変換効率を十分に向上させることができる。なお、電解質が第1封止部4Aを超えて第1封止部4Aの外側に溢れるまで注入されることにより第1封止部4Aの接着部位が電解質で濡れても、第1封止部4Aの中間樹脂封止部4bの融点が外側樹脂封止部4aの融点よりも低くなっており、より高い流動性を有するため、第1封止部4Aと第2封止部4Bとを溶融接着する際に、中間樹脂封止部4bが、電解質や夾雑物を含包しやすい。このため、第1封止部4A及び第2封止部4Bの接着に際し、第1封止部4Aと第2封止部4Bとの界面に電解質が存在しにくくなり、第1封止部4A及び第2封止部4Bは強固に接着する。
【0097】
電解質は通常、電解液で構成され、この電解液は例えばI/Iなどの酸化還元対と有機溶媒とを含んでいる。有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、プロピオニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンなどを用いることができる。酸化還元対としては、例えばI/Iのほか、臭素/臭化物イオンなどの対が挙げられる。色素増感太陽電池100は、酸化還元対としてI/Iのような揮発性溶質及び、高温下で揮発しやすいアセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリルのような有機溶媒を含む電解液を電解質として用いた場合に特に有効である。この場合、色素増感太陽電池100の周囲の環境温度の変化によりセル空間の内圧の変化が特に大きくなり、封止部4と対極2との界面、および封止部4と作用極1との界面から電解質が漏洩しやすくなるからである。なお、上記揮発性溶媒にはゲル化剤を加えてもよい。また電解質は、イオン液体と揮発性成分との混合物からなるイオン液体電解質で構成されてもよい。この場合も、色素増感太陽電池100の周囲の環境温度の変化によりセル空間の内圧の変化が大きくなるためである。イオン液体としては、例えばピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の既知のヨウ素塩であって、室温付近で溶融状態にある常温溶融塩が用いられる。このような常温溶融塩としては、例えば1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが好適に用いられる。また揮発性成分としては、上記の有機溶媒や、1−メチル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイド、LiI、I、4−t−ブチルピリジンなどが挙げられる。さらに電解質3としては、上記イオン液体電解質にSiO、TiO、カーボンナノチューブなどのナノ粒子を混練してゲル様となった擬固体電解質であるナノコンポジットイオンゲル電解質を用いてもよく、また、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などの有機系ゲル化剤を用いてゲル化したイオン液体電解質を用いてもよい。
【0098】
[封止部形成工程]
次に、図9に示すように、作用極1と対極2とを対向させて、第1封止部4Aと第2封止部4Bとを重ね合わせる。そして、第1封止部4A及び第2封止部4Bを加圧しながら溶融させることによって第1封止部4Aと第2封止部4Bとを接着させる。このとき、中間樹脂封止部4bが作用極1側の外側樹脂封止部4aおよび対極2側の外側樹脂封止部4aに接着される。こうして、作用極1と対極2とを貼り合せ、作用極1と対極2との間に封止部4を形成するとともに、作用極1と対極2と封止部4とによって囲まれるように電解質層3を形成する(図1参照)。本実施形態では、第1封止部4Aと第2封止部4Bとを大気圧下で貼り合せる。
【0099】
このとき、第1封止部4A及び第2封止部4Bの加圧は通常、1〜50MPaで行い、好ましくは2〜30MPa、より好ましくは3〜20MPaで行う。
【0100】
また第1封止部4A及び第2封止部4Bを溶融させるときの温度は、第1封止部4A及び第2封止部4Bを形成する外側樹脂封止部4a及び中間樹脂封止部4bの融点以上とする。上記温度が外側樹脂封止部4a及び中間樹脂封止部4bの融点未満では、外側樹脂封止部4a及び中間樹脂封止部4bが溶融しないため、外側樹脂封止部4a及び中間樹脂封止部4b同士を接着させて封止部4を形成させることができなくなる。
【0101】
但し、外側樹脂封止部4a及び中間樹脂封止部4bを溶融させるときの温度は、(外側樹脂封止部4aに含まれる樹脂の融点+200℃)以下であることが好ましい。上記温度が(外側樹脂封止部4aに含まれる樹脂の融点+200℃)を超えると、外側樹脂封止部4a及び中間樹脂封止部4bに含まれる樹脂が熱によって分解するおそれがある。
【0102】
こうして色素増感太陽電池100が得られ、色素増感太陽電池100の製造が完了する。
【0103】
上述した色素増感太陽電池100の製造方法によれば、中間樹脂封止部4bの融点が外側樹脂封止部4aの融点よりも低い。このため、中間樹脂封止部4bは外側樹脂封止部4aよりも軟らかくなる。このため、得られる色素増感太陽電池100が温度変化の大きい環境下に置かれる場合に、封止部4にて外側樹脂封止部4aと中間樹脂封止部4bとの界面に応力がかかっても、その応力が軟らかい中間樹脂封止部4bで吸収されて十分に緩和される。従って、色素増感太陽電池100の製造方法によれば、外側樹脂封止部4aと中間樹脂封止部4bとの密着性及び接着性の低下が十分に抑制され、電解質の漏洩及び外部からの電解質への水分の浸入が十分に抑制され、ひいては温度変化の大きい環境下に置かれる場合でも耐久性を維持することができる色素増感太陽電池100を得ることができる。
【0104】
また本実施形態では、第1封止部4A及び第2封止部4Bが、電解質層3を形成する前に形成される。このため、第1封止部4Aを作用極1の第1環状部位C1に形成する際、その第1環状部位C1に電解質中の揮発成分が付着しておらず、その表面の濡れ性が低下していない。従って、熱可塑性樹脂は第1環状部位C1に強固に接着され、第1封止部4Aが第1環状部位C1に強固に固定される。また第2封止部4Bを触媒膜10の第2環状部位C2に形成する際にも、触媒膜10の表面上に電解質中の揮発成分が付着しておらず、その表面の濡れ性が低下していない。従って、熱可塑性樹脂は触媒膜10の第2環状部位C2に強固に接着され、第2封止部4Bが触媒膜10の第2環状部位C2に強固に固定される。
【0105】
一方、封止部4は電解質層3を形成する前に形成される。このため、通常であれば、第1封止部4A及び第2封止部4Bを溶融させることに伴い、電解質の一部が蒸発し、第1封止部4Aと第2封止部4Bとの間の濡れ性が低下すると考えられる。また、電解質層形成工程中に電解質が第1封止部4Aと第2封止部4B上に付着し、第1封止部4Aと第2封止部4Bとの間の濡れ性が低下することも考えられる。
【0106】
しかし、上述したように、中間樹脂封止部4bの融点が外側樹脂封止部4aの融点よりも高いため、封止部形成工程において、第1封止部4A及び第2封止部4Bを接着させるに際し、中間樹脂封止部4bの方が外側樹脂封止部4aよりも流動性が高くなる。このため、第1封止部4A及び第2封止部4Bを接着させる際に、第1封止部4Aや第2封止部4Bに夾雑物などの異物(例えば電解質)が付着していても、中間樹脂封止部4bがその夾雑物を含包しながら容易に第2封止部4Aの外側樹脂封止部4aと接着される。このため、第1封止部4Aと第2封止部4Bとの接着を強固とすることが可能となる
【0107】
このように、色素増感太陽電池100の製造方法によれば、第1封止部4Aは、作用極1の第1環状部位C1に強固に固定され、第2封止部4Bが対極2の第2環状部位C2に強固に固定される。また第1封止部4A及び第2封止部4B同士も強固に接着される。従って、得られる色素増感太陽電池100においては、電解質中の揮発成分の漏洩が十分に抑制される。さらに、外部からの電解質への水分の浸入を十分に抑制できる。よって、色素増感太陽電池100の製造方法によれば、光電変換効率の経時的な低下を十分に抑制できる色素増感太陽電池を製造することが可能となる。
【0108】
また本実施形態では、電解質層形成工程において、電解質層3が、作用極1上であって第1封止部4Aの内側に形成されている。このため、多孔質酸化物半導体層8の多孔質の細部にまで電解質が十分に行き渡った後に封止部4が形成されることとなる。このため、多孔質酸化物半導体層8中の空気が気泡となって現れることが十分に抑制され、光電変換効率をより十分に向上させることができる。
【0109】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る色素増感太陽電池の製造方法の第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0110】
本実施形態の製造方法は、上記の第1封止部4Aおよび第2封止部4Bの接着が減圧空間内で行われる点で、第1封止部4Aおよび第2封止部4Bの接着が大気圧下で行われる第1実施形態の製造方法とは異なる。
【0111】
この場合、得られる色素増感太陽電池100を大気中に取り出した際に、電解質層3を外気に対して陰圧状態とすることができる。このため、色素増感太陽電池100は外部から大気圧を受けることになり、封止部4に対して作用極1及び対極2が押圧力を加えた状態が維持される。その結果、電解質層3中の揮発成分の漏洩をより十分に抑制することができる。
【0112】
上記の減圧空間は例えば以下のようにして形成することができる。
【0113】
即ちまず開口を有する減圧用容器内に、その開口から、第1封止部4Aを設けた作用極1を収容する。続いて、第1封止部4Aの内側に電解質を注入して電解質層3を形成する。その後、減圧用容器内に、第2封止部4Bを設けた対極2をさらに収容し、減圧用容器内で作用極1と対極2とを対向させて、第1封止部4Aと第2封止部4Bとを重ね合わせる。次に、減圧用容器の開口を例えばPETなどの樹脂からなる可撓性シートで塞ぎ、減圧用容器内に密閉空間を形成する。そして、密閉空間を、減圧用容器に形成された排気孔(図示せず)を通して、例えば真空ポンプにより減圧する。こうして減圧空間が形成される。
【0114】
このようにして減圧空間を形成すると、上記可撓性シートによって対極2が押圧される。これに伴って、作用極1と対極2とによって第1封止部4A及び第2封止部4Bが挟まれて加圧される。このとき、減圧用容器を加熱し、第1封止部4A及び第2封止部4Bを加圧しながら溶融させると、第1封止部4Aと第2封止部4Bとが接着され、封止部4が形成される。
【0115】
その際、減圧空間の圧力は通常、50Pa以上1013hPa未満の範囲であり、50800Paとすることが好ましく、300〜800Paとすることがより好ましい。
【0116】
特に、電解質に含まれる有機溶媒が揮発性溶媒である場合には、減圧空間内の圧力は700〜1000Paであることが好ましく、700〜800Paであることがより好ましい。圧力が上記範囲内にあると、圧力が上記範囲を外れる場合と比較して、電解質層3を第1封止部4Aの内側に形成する際、有機溶媒の揮発がより抑制されるとともに、得られる色素増感太陽電池100において作用極1、対極2及び封止部4が互いにより強固に固定され、電解質層3の漏洩が起こりにくくなる。
【0117】
また電解質がイオン液体を含む場合には、イオン液体は揮発しないため、電解質が揮発性溶媒を含む場合のように電解質の揮発を考慮して減圧空間の圧力を高くする必要がない。このため、減圧空間内の圧力は50〜700Paであればよい。
【0118】
さらに電解質がゲル電解質を含む場合には、ゲル化させる前駆体の主成分が揮発系である場合とイオン液体系である場合とで異なり、前駆体の主成分が揮発系である場合には600〜800Pa,イオン液体系である場合には50〜700Paであることが好ましい。従って電解質層3がゲル電解質を含む場合には、減圧空間内の圧力は50〜800Paとすることが好ましい。
【0119】
また上記のように封止部4の形成を減圧空間内で行う場合は、作用極1及び対極2のうち少なくとも一方が可撓性を有することが好ましい。
【0120】
この場合、作用極1及び対極2のいずれも可撓性を有しない場合に比べて、減圧空間から取り出されて大気圧下に配置された場合に、作用極1及び対極2のうち可撓性を有する電極が大気圧によって撓み、作用極1と対極2との間隔を狭めることが可能となる。その結果、作用極1及び対極2のいずれも可撓性を有しない場合に比べて、光電変換効率がより効率よく行われ、光電変換効率がより向上する。
【0121】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態においては、電解質層3が、作用極1に設けた第1封止部4Aの内側に形成されているが、電解質層3は、図10に示すように、対極2上であって、対極2に設けた第2封止部4Bの内側に形成されてもよい。
【0122】
さらに上記実施形態では、電解質層3を形成する前に、第1封止部4A及び第2封止部4Bが形成されているが、第2封止部4Bは、電解質層3を形成するのと同時に行われてもよく、電解質層3を形成した後に行われてもよい。但し、対極2に設けた第2封止部4Bの内側に電解質層3が形成される場合には、第2封止部4Bの形成は、電解質層3を形成する前に行う必要がある。この場合、第1封止部4Aは、電解質層3を形成する前に形成される必要はなく、電解質層3と同時に形成されてもよいし、電解質層3を形成した後であって封止部4を形成する前に形成されてもよい。このとき、色素担持工程も封止部4を形成する前に行われる。
【0123】
また上記実施形態では、作用極1に代えて、図11に示すように、透明導電膜7上に突出するように無機材料からなる突出部13Aをさらに有する作用極101を用いてもよい。この突出部13Aは第1封止部4Aが形成される部位であり、第1環状部位C1をなすことになる。
【0124】
この場合、無機材料からなる突出部13Aが、透明導電膜7上に突出するように設けられているため、封止部4とともに電解質層3を封止する機能を果たす。しかも、突出部13Aは無機材料からなるため、熱可塑性樹脂からなる第1封止部4A及び第2封止部4Bよりも高い封止能を有する。このため、作用極1が突出部13Aを有しない場合に比べて、電解質の漏洩をより十分に抑制することができる。
【0125】
また上記実施形態では、図12に示すように、触媒膜10上に突出するように、無機材料からなる突出部13Bをさらに有する対極102を用いることもできる。この突出部13Bは第2封止部4Bが形成される部位であり、第2環状部位C2をなすことになる。
【0126】
この場合、無機材料からなる突出部13Bが、触媒膜10上に突出するように設けられているため、封止部4とともに電解質層3を封止する機能を果たす。しかも、突出部13Bは、無機材料からなるため、熱可塑性樹脂からなる第1封止部4A及び第2封止部4Bよりも高い封止能を有する。このため、対極2が突出部13Bを有しない場合に比べて、電解質の漏洩をより十分に抑制することができる。
【0127】
突出部13A,13Bを構成する無機材料としては、例えば非鉛系の透明な低融点ガラスフリットなどの無機絶縁材料や、銀などの金属材料を用いることができる。特に、作用極1上に一般に形成される配線部が突出部13Aを兼ねることが好ましい。この場合、電解質が作用極1と対極2との間に配置される。そして、突出部13Aが配線部を有し、配線部が、集電配線と、集電配線を覆う配線保護層とを有する。つまり、集電配線は、配線保護層により電解質から保護された状態で、作用極1と対極2とを結ぶ方向に沿って封止部4と重なるように配置されている。このように、集電配線が封止部4の外側に設けられておらず、さらに、集電配線が封止部4の内側にも設けられていないので、作用極の光入射面において集電配線と封止部4とが占める面積を最小限にすることができ、集電配線と封止部4とにより遮蔽される入射光を最小限に留めることができる。従って、受光面積を拡大することができ、高い光電変換効率を得ることができる。ここで、集電配線は、銀などの金属材料で形成され、配線保護層は、低融点ガラスフリットなどの無機絶縁材料で構成されるものである。
【0128】
さらに、上記実施形態では、第2封止部4Bが、外側樹脂封止部4aのみから構成され、中間樹脂封止部4bを含んでいないが、第2封止部4Bは中間樹脂封止部4bを含んでいてもよい。
【0129】
さらにまた、上記実施形態では、中間樹脂封止部4bが1層のみとなっているが、中間樹脂封止部4bは、融点の異なる複数の中間樹脂封止部の積層体であってもよい。この場合、中間樹脂封止部は作用極1と対極2とを結ぶ方向に沿って積層される。ここで、中間樹脂封止部の積層体における各層の融点は、例えば対極2側から順次低くなるように配置することが、中間樹脂封止部間の各界面での応力を効果的に低減できるため好ましい。
【0130】
また上記実施形態では、封止部4と対極2との境界、および、封止部4と作用極1との境界を覆う被覆部が電解質層3と反対側に設けられていてもよい。この場合、被覆部は第2の樹脂を含む。第2の樹脂としては、酸変性ポリオレフィン、紫外線硬化樹脂、ポリビニルアルコールまたはエチレン−ビニルアルコール共重合体を用いることができる。第2の樹脂として、酸変性ポリオレフィンまたは紫外線硬化樹脂を用いた場合、作用極1、対極2、封止部4との接着が強固になり、それぞれの界面において、電解質の漏洩及び外部からの電解質への水分の浸入をより十分に抑制できる。
【0131】
また上記実施形態では、色素への熱的ダメージを低減する観点から色素担持工程が第1封止部形成工程の後に行われているが、色素担持工程は、第1封止部形成工程の前に行われてもよい。
【0132】
さらに上記実施形態では、本発明の電子機器の例として色素増感太陽電池が挙げられているが、本発明の電子機器は、色素増感太陽電池に限らず、EL表示装置、液晶表示装置、有機薄膜太陽電池、2次電池やシンチレータパネルにも適用することが可能である。なお、例えばEL表示装置では、電極とEL層とを含む積層体が被封止部であり、液晶表示装置では、液晶が被封止部である。
【実施例】
【0133】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、表1〜表6において、ハイミラン、ニュクレル、バイネル、05L04、05L05、ソアノール、エクセバール及び31x−101と表記したものはそれぞれ以下の通りである。
(1)ハイミラン
三井・デユポンポリケミカル(株)製アイオノマー
(2)ニュクレル
三井・デユポンポリケミカル(株)製エチレン−メタクリル酸共重合体
(3)バイネル
無水マレイン酸変性オレフィンで、無水マレイン酸変性ポリエチレンと無水マレイン酸変性ポリプロピレン
(4)05L04
東ソー(株)製酸変性ポリエチレン(分子構造が05L05に比べ分岐状である)
(5)05L05
東ソー(株)製酸変性ポリエチレン(分子構造が05L04に比べ直鎖状である)
(6)ソアノール
日本合成化学工業(株)製エチレン−ビニルアルコール共重合体
(7)エクセバール
(株)クラレ製ポリビニルアルコール
(8)31x−101
(株)スリーボンド製紫外線硬化性樹脂
【0134】
(実施例1)
はじめに、10cm×10cm×4mmのFTO基板を準備した。続いて、FTO基板の上に、ドクターブレード法によって酸化チタンペースト(Solaronix社製、Ti nanoixide T/sp)を、その厚さが10μmとなるように塗布した後、熱風循環タイプのオーブンに入れて150℃で3時間焼成し、FTO基板上に多孔質酸化物半導体層を形成し、5cm×5cmの作用極を得た。
【0135】
一方、作用極と同様のFTO基板を対極基板として準備した。そして、対極基板上に、スパッタリング法により、厚さ10nmの白金触媒膜を形成し、対極を得た。
【0136】
こうして作用極及び対極を準備した。
【0137】
次に、アイオノマーであるハイミラン(融点:98℃)からなる6cm×6cm×100μmのシートの中央に、5cm×5cm×100μmの開口を形成した四角環状の樹脂シートを準備した。そして、この樹脂シートを、作用極の多孔質酸化物半導体層を包囲する環状の部位に配置した。この樹脂シートを120℃の溶融温度(以下、「溶融温度1」と呼ぶ)で5分間加熱し溶融させることによって環状部位に接着し、環状部位に外側樹脂封止部を固定した。
【0138】
続いて、エチレン−メタクリル酸共重合体であるニュクレル(融点:97℃)からなる6cm×6cm×100μmのシートの中央に、5cm×5cm×100μmの開口を形成した四角環状の樹脂シートを準備した。
【0139】
そして、このニュクレルからなる四角環状の樹脂シートを、ハイミランからなる四角環状の樹脂シートの直上に、110℃の溶融温度(以下、「溶融温度2」と呼ぶ)で貼り付けた。こうして外側樹脂封止部の上に中間樹脂封止部を形成し、第1封止部を形成した。
【0140】
次に、この作用極を、光増感色素であるN719色素を0.2mM溶かした脱水エタノール液中に一昼夜浸漬して作用極に光増感色素を担持させた。
【0141】
一方、対極の白金触媒膜上に、アイオノマーであるハイミランからなる6cm×6cm×100μmのシートの中央に、5cm×5cm×100μmの開口を形成した四角環状の樹脂シートを準備した。そして、この樹脂シートを対極の白金触媒膜上における環状の部位に配置した。そして、この樹脂シートを110℃の溶融温度(以下、「溶融温度3」と呼ぶ)で5分間加熱し溶融させることによって環状部位に接着し、外側樹脂封止部を固定した。
【0142】
続いて、エチレン−メタクリル酸共重合体であるニュクレルからなる6cm×6cm×100μmのシートの中央に、5cm×5cm×100μmの開口を形成した四角環状の樹脂シートを準備した。
【0143】
そして、このニュクレルからなる四角環状の樹脂シートを、ハイミランからなる四角環状の樹脂シートの直上に、110℃の溶融温度(以下、「溶融温度4」と呼ぶ)で貼り付けた。こうして外側樹脂封止部の上に中間樹脂封止部を形成し、第2封止部を形成した。
【0144】
次いで、第1封止部を設けた作用極を、FTO基板の多孔質酸化物半導体層側の表面が水平になるように配置し、第1封止部の内側に、アセトニトリルからなる揮発性溶媒を主溶媒とし、ヨウ化リチウムを0.05M、ヨウ化リチウムを0.1M、1,2−ジメチルー3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド(DMPII)を0.6M、4−tert−ブチルピリジンを0.5M含む電解質(表1及び表2において「A」と称する)を注入し、電解質層を形成した。
【0145】
次に、第2封止部を設けた対極を、作用極に対向させ、500hPa程度の減圧環境下に置き、第1封止部と第2封止部とを重ね合わせた。そして、減圧環境下で、封止部と同じ大きさの真鍮製の枠を加熱し、前記真鍮製の枠を対極の第2封止部とは反対側に配置し、プレス機を用いて、5MPaで第1封止部及び第2封止部を加圧しながら160℃の温度(以下、「封止温度」と呼ぶ)で局所加熱して溶融させて封止部を形成し、積層体を得た。その後、この積層体を大気圧下に取り出した。こうして色素増感太陽電池を得た。
【0146】
(実施例2〜14)
第1封止部の外側樹脂封止部および中間樹脂封止部を構成する樹脂およびその融点、第2封止部の外側樹脂封止部および中間樹脂封止部を構成する樹脂およびその融点、並びに、溶融温度1〜4及び封止温度を表1に示す通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0147】
(実施例15〜20)
第1封止部の外側樹脂封止部および中間樹脂封止部を構成する樹脂およびその融点、第2封止部の外側樹脂封止部および中間樹脂封止部を構成する樹脂およびその融点、並びに、溶融温度1〜4及び封止温度を表1及び表2に示す通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0148】
なお、第1封止部及び第2封止部の外側樹脂封止部として使用した31x−101は、紫外線硬化性樹脂であり、この紫外線硬化性樹脂を、作用極及び対極の環状部位に接着するに際しては、環状部位に塗布した後、紫外線硬化性樹脂を低酸素環境下で紫外線(UV)照射して硬化させることにより環状部位に接着させた。このため、表1及び表2において、溶融温度1及び3については「−」と示してある。
【0149】
(実施例21〜25)
第1封止部の外側樹脂封止部および中間樹脂封止部を構成する樹脂およびその融点、第2封止部の外側樹脂封止部および中間樹脂封止部を構成する樹脂およびその融点、並びに、溶融温度1〜4及び封止温度を表2に示す通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0150】
(比較例1〜5)
第1封止部の外側樹脂封止部および中間樹脂封止部を構成する樹脂およびその融点、第2封止部の外側樹脂封止部および中間樹脂封止部を構成する樹脂およびその融点、並びに、溶融温度1〜4及び封止温度を表1に示す通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0151】
(比較例6)
まず実施例1と同様にして作用極を準備し、色素を担持させた。一方、実施例1と同様にして対極を準備した。そして、作用極の環状部位に紫外線硬化樹脂の前駆体である31x−101を塗布し、紫外線を照射して硬化させ、環状の第1封止部(外側樹脂封止部)を得た。続いて、第1封止部の内側に実施例1と同様にして電解質を配置した。一方、対極の環状部位に31x−101を塗布し、これを第1封止部と重ね合わるように作用極と対極とを対峙させた後、31x−101に紫外線を照射して第2封止部(外側樹脂封止部)を形成した。こうして色素増感太陽電池を作製した。
【0152】
(実施例26〜50及び比較例7〜12)
表3及び表4に示すように、電解質を、メトキシプロピオニトリルからなる揮発性溶媒を主溶媒とし、ヨウ化リチウムを0.1M、ヨウ素を0.05M、4−tert−ブチルピリジンを0.5M含む揮発系電解質(表3及び表4において「B」と称する)に変更したこと以外は実施例1〜25、比較例1〜6のそれぞれと同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0153】
(実施例51〜75及び比較例13〜18)
表5及び表6に示すように、電解質を、メトキシプロピオニトリルからなる揮発性溶媒に、ヨウ化リチウムを0.1M、ヨウ素を0.05M、4−tert−ブチルピリジンを0.5M加えたものの総重量に対して、5%の平均粒径15nmのシリカ微粒子を加え、ゲル化させたゲル状電解質(表5及び表6において「C」と称する)に変更したこと以外は実施例1〜25、比較例1〜6のそれぞれと同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0154】
[特性評価]
実施例1〜75及び比較例1〜18の色素増感太陽電池について、以下のようにして耐久性試験を行うことにより特性評価を行った。即ち耐久試験は、実施例1〜75及び比較例1〜18の色素増感太陽電池に対し、JIS C8917に従って、周囲の温度を−40℃まで低下させた後90℃まで上昇させる熱サイクルを1サイクルとして200サイクル行った。そして、光電変換効率の維持率を、下記式:
【数1】

に従って算出した。なお、光電変換効率の維持率が100%を超えるものは、耐久試験後の変換効率が初期の変換効率よりも高いことを意味する。結果を表1〜6に示す。

【表1】


【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【0155】
表1〜6に示す結果より、実施例1〜75の色素増感太陽電池は、電解質の種類にかかわらず、比較例1〜18の色素増感太陽電池に比べて、耐久性の点で優れていることが分かった。
【0156】
よって、本発明の電子機器によれば、温度変化の大きい環境下に置かれる場合でも耐久性を十分に維持できることが確認された。
【符号の説明】
【0157】
1,101…作用極(第1電極、第1基材)
2…対極(第2電極、第2基材)
3…電解質層(被封止部)
4A…第1封止部
4B…第2封止部
4…封止部
7…透明導電膜(導電膜)
8…多孔質酸化物半導体層
9…対極基板
10…触媒膜
13A,13B…突出部
100…色素増感太陽電池
C1…第1環状部位
C2…第2環状部位。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基材と、
前記第1基材に対向配置される第2基材と、
前記第1基材及び前記第2基材の間に配置される被封止部と、
前記第1基材及び前記第2基材を連結し、前記被封止部の周囲に設けられる封止部とを備えており、
前記封止部のうち前記被封止部の周囲に沿った少なくとも一部が、
前記第1基材及び前記第2基材の各々に固定される外側樹脂封止部と、
前記第1基材及び前記第2基材の間で、前記外側樹脂封止部に挟まれるように配置される中間樹脂封止部とを有し、
前記外側樹脂封止部及び前記中間樹脂封止部が樹脂を含み、
前記中間樹脂封止部の融点が前記外側樹脂封止部の融点よりも低いことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記中間樹脂封止部は、酸変性ポリオレフィンを含む請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記中間樹脂封止部は、酸変性ポリエチレンを含む請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記中間樹脂封止部は、ポリビニルアルコール及びエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記外側樹脂封止部が酸変性ポリオレフィン及び紫外線硬化性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記外側樹脂封止部が酸変性ポリエチレンを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項7】
前記外側樹脂封止部がポリビニルアルコール及びエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項8】
前記封止部に対して前記被封止部と反対側に、前記第1基材および前記封止部の境界、前記第2基材および前記封止部の境界、前記中間樹脂封止部及び前記外側樹脂封止部の境界を少なくとも覆う被覆部をさらに備え、前記被覆部が第2の樹脂を含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項9】
前記第1基材が第1電極であり、前記第2基材が第2電極である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項10】
前記第1電極は、多孔質酸化物半導体層と、前記多孔質酸化物半導体層が形成される導電膜と、前記導電膜上に突出するように設けられ、前記外側樹脂封止部と前記導電膜との間に配置される突出部とを有し、前記突出部が無機材料からなり、前記被封止部が電解質である請求項9に記載の電子機器。
【請求項11】
前記突出部が、前記導電膜上に固定される配線部で構成され、前記配線部が、無機材料で構成され、前記導電膜上に設けられる集電配線と、前記集電配線を覆う配線保護層とを有する請求項10に記載の電子機器。
【請求項12】
前記第2電極は、対極基板と、前記対極基板上に設けられる触媒膜と、前記触媒膜上に突出するように設けられ、前記外側樹脂封止部と前記触媒膜との間に挟まれるように配置される突出部とを有し、前記突出部が無機材料からなり、前記被封止部が電解質である請求項9〜11のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項13】
第1基材及び第2基材を準備する準備工程と、
前記第1基材における第1環状部位に、外側樹脂封止部を含む第1封止部を形成する第1封止部形成工程と、
前記第2基材における第2環状部位に、外側樹脂封止部を含む第2封止部を形成する第2封止部形成工程と、
前記第1基材及び前記第2基材を貼り合せ、前記第1基材及び前記第2基材の間に前記第1封止部と前記第2封止部とを接着させてなる封止部を形成するとともに前記封止部、前記第1基材および前記第2基材によって囲まれるように被封止部を配置する封止部形成工程とを含み、
前記第1封止部及び前記第2封止部の少なくとも一方が、前記外側樹脂封止部の上に設けられる中間樹脂封止部を有し、
前記中間樹脂封止部および前記外側樹脂封止部が樹脂を含み、
前記中間樹脂封止部の融点が前記外側樹脂封止部の融点よりも低いことを特徴とする電子機器の製造方法。
【請求項14】
前記第1基材が第1電極であり、前記第2基材が第2電極である、請求項13に記載の電子機器の製造方法。
【請求項15】
前記第1電極が多孔質酸化物半導体層を含み、
前記被封止部が電解質であり、
前記準備工程と前記封止部形成工程との間に、
前記多孔質酸化物半導体層に光増感色素を担持させる色素担持工程と、
前記第1電極上であって前記第1封止部の内側、又は前記第2電極上であって前記第2封止部の内側に前記電解質を配置して電解質層を形成する電解質層形成工程とをさらに含み、
前記電解質層形成工程は、前記第1封止部形成工程及び前記第2封止部形成工程の少なくとも一方の後に行われ、
前記封止部形成工程において、前記封止部は、前記第1封止部及び前記第2封止部を加圧しながら溶融させることによって形成される請求項14に記載の電子機器の製造方法。
【請求項16】
前記電解質層形成工程において、前記電解質層は、前記電解質を、前記第1電極上であって前記第1封止部の内側、又は前記第2電極上であって前記第2封止部の内側に注入し、前記第1封止部又は前記第2封止部を超えて前記第1封止部又は前記第2封止部の外側に溢れさせることにより形成される請求項15に記載の電子機器の製造方法。
【請求項17】
前記電解質層形成工程においては、前記電解質層が、前記第1電極上であって前記第1封止部の内側に形成される請求項15又は16に記載の電子機器の製造方法。
【請求項18】
前記第1電極は、
前記多孔質酸化物半導体層と、
前記多孔質酸化物半導体層が形成される導電膜と、
前記導電膜上に突出するように設けられ、前記第1環状部位をなす突出部とを有し、前記突出部が無機材料からなり、前記被封止部が電解質である請求項14〜17のいずれか一項に記載の電子機器の製造方法。
【請求項19】
前記第2電極は、
対極基板と、
前記対極基板上に設けられる触媒膜と、
前記触媒膜上に突出するように設けられ、前記第2環状部位をなす突出部とを有し、前記突出部が無機材料からなり、前記被封止部が電解質である請求項14〜17のいずれか一項に記載の電子機器の製造方法。
【請求項20】
前記第1電極及び前記第2電極のうち少なくとも一方が可撓性を有する請求項14〜19のいずれか一項に記載の電子機器の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−222139(P2011−222139A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86593(P2010−86593)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【特許番号】特許第4759646号(P4759646)
【特許公報発行日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】