説明

電子機器及び充電装置

【課題】 電源用とグランド用の2線に、認証用の信号線を追加することなく、二次電池が装着された電子機器側に認証信号を送信するとともに、認証が成功すれば充電電力を供給する充電アダプタを提供することを目的とする。
【解決手段】 電子機器1と接続されたことを検出する電子機器検出部5と、電源からの交流電圧を直流電圧に変換して充電用信号線3を介して電子機器1に出力するとともに、外部からの制御信号E0に応じて直流電圧の出力と出力停止、または直流電圧の電圧レベルの高低の切り換えを行うAC/DC電源4と、電子機器検出部5が電子機器1の接続を検出すると、IDデータに基づいてAC/DC電源4に対する制御信号E0を生成するとともに、AC/DC電源4に出力するID認証データ送信制御部6とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、携帯電話機のような二次電池により駆動される電子機器と、この電子機器を充電する充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機等の電子機器には、二次電池パックを装着した状態で充電アダプタに接続すると、その電子機器内部の充電回路が、二次電池パックへの充電を自動的に開始させるようになっているものがある。このような電子機器では、アダプタのコネクタの形状を規格化することで、不適切な充電アダプタを用いて充電することを予防している。しかし、この方法では、正規のコネクタの形状を模擬すれば、電子機器に充電可能となるという問題がある。
【0003】
特許文献1には、電子機器に適合しない二次電池パックを検出し、不適切な二次電池パックが装着された場合には、この二次電池パックに対して充電されないように制御する携帯端末装置が開示されている。具体的には、二次電池パックが保持するID(Identity)情報を抽出する手段を備え、装着されている二次電池パックが適切なものかID情報に基づいて認証を行う。
【0004】
【特許文献1】特開2005―341775号公報
【0005】
また、特許文献2には、非正規品の充電器によって充電されることを防止するため、電池パック内のCPUと充電器を信号ラインで接続し、充電器と電池パックが信号ラインを介して認証を行うことにより充電を制御する充電制御方法が開示されている。電池パック内のCPUと充電器が信号ラインを介して認証を行うことにより、非正規品の充電器により充電処理が行われることを防止し、電池の信頼性を確保している。
【0006】
【特許文献2】特開2006―164547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載の携帯端末装置は、非正規の電池パックへの充電を禁止するものであり、非正規の充電アダプタによる充電を防止するものではない。また、特許文献2に記載の充電制御方法は、非正規の充電器による充電を予防するものであるが、充電器にCPUや専用の信号線を設ける必要がある。より具体的には、充電器には、電源用(充電用電源ライン)とグランド用の2線が設けられているが、さらに充電器と電池パック間の認証用の信号線を追加しなければならないので、充電器の構成が複雑になるほか、コストが上昇するという問題がある。本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、電源用とグランド用の2線に、認証用の信号線を追加することなく、二次電池が装着された電子機器側に認証信号を送信するとともに、認証が成功すれば充電電力を供給する充電アダプタを提供することを目的とする。また、本発明は、充電アダプタから送信された認証信号に基づいて認証を行い、認証が成功した場合に充電アダプタから供給された電力を二次電池に供給するよう充電制御を行う電子機器に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電子機器は、充電装置と接続されたことを検出する充電装置検出部と、充電装置から充電用信号線を介して出力された出力電圧に含まれる、充電装置に対応したIDデータに基づいて、充電装置からの充電を許可するか判断するID認証制御部と、充電装置検出部が充電装置の接続を検出すると、充電装置からの出力電圧をID認証制御部に供給し、ID認証制御部が充電装置からの充電を許可すると判断した場合に、出力電圧を二次電池に供給する充電制御部とを設けたものである。
【0009】
本発明に係る充電装置は、電子機器と接続されたことを検出する電子機器検出部と、電源からの交流電圧を直流電圧に変換して充電用信号線を介して電子機器に出力するとともに、外部からの制御信号に応じて直流電圧の出力と出力停止、または直流電圧の電圧レベルの高低の切り換えを行うAC/DC電源と、電子機器検出部が電子機器の接続を検出すると、固有のIDデータに基づいてAC/DC電源に対する制御信号を生成するとともに、AC/DC電源に出力するID認証データ送信制御部とを設けたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電子機器は、充電装置と接続されたことを検出する充電装置検出部と、充電装置から充電用信号線を介して出力された出力電圧に含まれる、充電装置に対応したIDデータに基づいて、充電装置からの充電を許可するか判断するID認証制御部と、充電装置検出部が充電装置の接続を検出すると、充電装置からの出力電圧をID認証制御部に供給し、ID認証制御部が充電装置からの充電を許可すると判断した場合に、出力電圧を二次電池に供給する充電制御部とを設けたので、非正規品の充電装置からの充電を防止することができ、電池の信頼性が高まるという効果を奏する。
【0011】
本発明に係る充電装置は、電子機器と接続されたことを検出する電子機器検出部と、電源からの交流電圧を直流電圧に変換して充電用信号線を介して電子機器に出力するとともに、外部からの制御信号に応じて直流電圧の出力と出力停止、または直流電圧の電圧レベルの高低の切り換えを行うAC/DC電源と、電子機器検出部が電子機器の接続を検出すると、固有のIDデータに基づいてAC/DC電源に対する制御信号を生成するとともに、AC/DC電源に出力するID認証データ送信制御部とを設けたので、充電装置に電源用とグランド用の2線以外に認証用の信号線を追加する必要がなくなり、充電装置の構成の簡略化、低コスト化を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は携帯電話機と充電アダプタとを接続した状態を説明する説明図である。充電アダプタ2は製品固有のIDデータを保有しており、充電開始時に充電アダプタ2よりIDデータを充電用電源ライン3に送信し、携帯電話機1がIDデータを受信する。受信したIDデータと携帯電話機1が記憶するIDデータが一致する場合、二次電池への充電が行われる。図2は、本発明に係る電子機器の一例である携帯電話機と充電アダプタの構成を示すブロック図である。図2において、充電アダプタ2は、コンセント15からの交流電圧を直流定電圧に変換するAC/DC電源4を備えており、充電に必要な電圧を携帯電話機1に出力する。携帯電話機1では充電制御部7が充電アダプタ2の接続を検出するための充電装置検出部として機能する。充電アダプタ2の接続を検出するために、充電アダプタ2からの出力電圧が利用される。充電アダプタ2が接続されたとき、携帯電話機1の充電制御部7が、充電アダプタ2からの出力電圧を検出する。充電制御部7は、充電アダプタ2からの出力電圧を検出すると、制御信号C0をID認証制御SW8に出力してオン状態とする。ID認証制御SW8がオン状態になると、ID認証制御部9が充電用電源ライン3に接続される。
【0013】
充電アダプタ2は、IDデータ送信開始のタイミングを充電用電源ライン3への負荷電流を利用して検出する。具体的には、充電アダプタ2から定電圧が出力されることで、携帯電話機1のプルダウン抵抗10に定電流I0が流れる。これにより充電用電源ライン3に定電流I0とほぼ同程度の電流が流れる。充電アダプタ2の電流検出部5は、充電用電源ライン3を流れる電流を検出すると、電流検出信号I1をID認証データの送信を制御するID認証データ送信制御部であるID認証データ送信用モジュール6に送信する。ID認証データ送信用モジュール6は、電流検出信号I1を受信すると、AC/DC電源4のオン/オフを制御するイネーブル信号E0を出力する。このイネーブル信号E0に従ってAC/DC電源4が出力する電圧波形がIDデータを意味する。なお、携帯電話機1の抵抗10による定電流I0を充電電流とは異なる値に設定することで、ID認証開始時(ID認証制御用SW8がオン状態)のみ、充電アダプタ2のID認証データ送信用モジュール6はIDデータを出力できる。
【0014】
充電アダプタ2がIDデータを携帯電話機1へ送信する方法について説明する。まず、ID認証データ送信用モジュール6は認証用のIDデータに応じたイネーブル信号E0を生成し、AC/DC電源4に出力する。このIDデータ(High/Lowによるシリアルデータ)に応じたイネーブル信号E0に基づいて、AC/DC電源4はオン/オフを切り換えながら電圧を充電用電源ライン3に出力する。このように受信アダプタ2から出力された電圧波形は、ハイ/ローあるいはオン/オフの配列で表されるIDデータに応じた固有の波形を有しているので、受信側でもとのIDデータとの比較を容易に実現できる。携帯電話機1は、充電用電源ライン3を介して伝達された電圧波形を受信すると、ID認証制御部9は、この電圧波形から再現されたIDデータと予め携帯電話機1が保持するIDデータ(受信側保持データと称する)とを用いて認証を行う。認証の結果、受信した電圧波形から再現されたIDデータと受信側保持データが一致した場合、ID認証制御部9は、認証成功とみなして、充電制御部7に充電開始信号C1を出力する。充電制御部7は充電開始信号C1を受け取ると、充電制御信号C2を充電制御SW11に出力し、充電制御SW11をオン状態とする。充電制御SW11がオン状態になると、二次電池12に対して充電が開始される。
【0015】
図3は、本発明に係る充電アダプタが認証用に電源ラインに送出する出力電圧の波形を示す説明図である。ID認証時には充電アダプタ2よりIDデータに応じた波形を持つ出力電圧を出力し、充電時には充電電圧を出力する。この充電アダプタ2と携帯電話機1間の通信は非同期式シリアル通信で行われる。なお、ID認証制御部9の電源は二次電池12であり、ID認証時に充電アダプタ2からの送信データがロー(Low 出力電圧=0V)時でも動作可能であり、IDデータの受信動作に支障をきたさない。
【0016】
図4は、本発明に係る電子機器と充電アダプタにより実行される認証方法を示すフローチャートである。図4のフローチャートに示される処理は、携帯電話機1に充電アダプタ2が接続されたときに実行される。図4のステップS1において、携帯電話機1の充電制御部7が充電アダプタ2からの出力電圧を検出すると(S1でYes)、ステップS2でID認証用SW8をオン状態にし、ステップ3にて充電アダプタ2からのIDデータに応じた出力電圧の送信を待つ。一方、充電アダプタ2は、ステップS4において、電流検出部5がID認証開始用の電流I0を検出すると(S4でYes)、ステップS5で充電アダプタ2から携帯電話機1へIDデータに応じた波形の電圧を充電用電源ライン3に出力する。この充電アダプタ2からの出力電圧から再現されたもとのIDデータは、携帯電話機1のID認証制御部9において携帯電話機1が保持しているIDと照合され、正規の充電アダプタ2であるかが判定される。この判定結果が否の場合(ステップS6でNo)、つまり、非正規の充電アダプタが携帯電話機1に接続されていると判断した場合、ステップS7にてID認証制御SW8をオフ状態にした後、充電を行わず処理を終了する。一方、判定結果が肯定の場合(ステップS6でYes)、ステップS8にてID認証制御用SW8をOFF状態にした後、ステップS9で充電制御SW11をオン状態とし、ステップS10で二次電池12に充電を開始する。この二次電池12への充電を完了するとき、ステップS11で充電制御用SW11をオフ状態にして一連の処理を終了させる。
【0017】
上記説明のように、本発明に係る電子機器は、IDデータに応じた波形の電圧を充電用電源ラインを介して出力する充電アダプタからの出力電圧に基づいて認証を行い、認証が成功した場合に充電アダプタから供給された電力を二次電池に供給するよう充電制御を行う。また、本発明に係る充電アダプタは電源用とグランド用の2線を備え、二次電池が装着された電子機器側に認証信号である出力電圧を充電用電源ラインを介して送信するとともに、認証が成功すれば充電電力を供給する。したがって、非正規品の充電器による充電を防止することができるので、携帯電話機に装着される電池の信頼性を確保できる。また、充電アダプタに電源用(充電用電源ライン)とグランド用の2線以外に認証用の信号線を追加する必要がないので、充電アダプタの構成の複雑化、コスト上昇を防止することができるという効果がある。
【0018】
実施の形態2.
図5は、本発明の実施の形態2に係る充電アダプタが認証用に電源ラインに送出する出力電圧の波形を示す説明図である。以下、この発明の実施の形態2について説明する。携帯電話機1の二次電池12の電圧が最低駆動電圧を下回っている場合、実施形態1ではID認証制御部9が動作しないため充電を開始できないという問題があった。そこで、実施の形態2に係る充電アダプタは、ID認証制御部9の電源を充電アダプタ2からの充電電圧として、ID認証制御部9を動作させるために、通信用の電圧は、携帯電話機1の最低駆動電圧以上でハイとロー(High/Low)を切り換えることにより、ID認証制御部9を動作させることとした。
【0019】
実施の形態3.
図6は、本発明の実施の形態3に係る電子機器の構成を示すブロック図である。以下、この発明の実施の形態3を図6に基づいて説明する。図6に示す携帯電話機1は、通信手段14を備え、例えば、基地局経由で充電を許可する充電アダプタのIDデータの新規登録や修正などの更新を行うものである。この通信手段14を備えることにより、携帯電話機1は、ID認証時のIDデータに関して、携帯電話機1が保有している照合用のIDをメモリ13に保管しておき、通信手段14を通して基地局と通信し、メモリ13のデータを受信したデータで更新することによって新規に発売される充電アダプタへの対応や、不具合が生じた充電アダプタを非対応に変更させて充電異常や端末の故障を防ぐことができる。なお図6において図1と同一の符号は同一又は相当部分を示すので説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】携帯電話機と充電アダプタとを接続した状態を説明する説明図である。
【図2】本発明に係る電子機器の一例である携帯電話機と充電アダプタの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る充電アダプタが認証用に電源ラインに送出する出力電圧の波形を示す説明図である。
【図4】本発明に係る電子機器と充電アダプタにより実行される認証方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態2に係る充電アダプタが認証用に電源ラインに送出する出力電圧の波形を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係る電子機器の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0021】
1 携帯電話機、2 アダプタ、3 充電用電源ライン、4 AC/DC電源、
5 電流検出部、6 ID認証データ送信用モジュール、7 充電制御部、
8 ID認証制御用SW、9 ID認証制御部、10 プルダウン抵抗、
11 充電制御用SW、12 二次電池、13 メモリ、14 通信手段、
15 コンセント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電装置と接続されたことを検出する充電装置検出部と、
前記充電装置から充電用信号線を介して出力された出力電圧に含まれる、前記充電装置に対応したIDデータに基づいて、前記充電装置からの充電を許可するか判断するID認証制御部と、
前記充電装置検出部が前記充電装置の接続を検出すると、前記充電装置からの前記出力電圧を前記ID認証制御部に供給し、前記ID認証制御部が前記充電装置からの充電を許可すると判断した場合に、前記出力電圧を二次電池に供給する充電制御部とを設けたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
充電装置に対応したIDデータを記憶する記憶部と、この記憶部に記憶される前記IDデータを外部から受信する通信部とを設けたことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
電子機器と接続されたことを検出する電子機器検出部と、
電源からの交流電圧を直流電圧に変換して充電用信号線を介して前記電子機器に出力するとともに、外部からの制御信号に応じて前記直流電圧の出力と出力停止、または前記直流電圧の電圧レベルの高低の切り換えを行うAC/DC電源と、
前記電子機器検出部が前記電子機器の接続を検出すると、固有のIDデータに基づいて前記AC/DC電源に対する前記制御信号を生成するとともに、前記AC/DC電源に出力するID認証データ送信制御部とを設けたことを特徴とする充電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−220050(P2008−220050A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54200(P2007−54200)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】