説明

電子機器及び回路基板並びに検査システム

【課題】検査時等にケーブルの挿抜を不要とし、また、信号波形の劣化を生じさせないで所定の検査等を行い、さらに、検査治具の費用を軽減することができる電子機器及び回路基板並びに検査システムを提供すること。
【解決手段】回路基板70は、所定の規格に準じて外部の装置と非接触により通信を行う通信部23を制御する制御部71と、一方端側に制御部71が接続され、他方端側に通信部23が接続される配線パターン72と、配線パターン72上に所定の規格に準じて通信を行う通信モジュール100を有する検査具101が接続される接続部73と、が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査用治具を接続することにより所定の検査を実行する電子機器及び回路基板並びに検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯端末装置においては、例えば、IrDA(Infrared Data Association)による光無線データ通信の規格に準拠したモジュール(以下、光通信モジュールという。)を搭載したモデルが登場している。このような光通信モジュールを搭載していれば、携帯端末間において、簡易に、画像の転送やアドレス帳の交換等を行うことができる。
【0003】
また、光通信モジュールは、一般的に、携帯端末装置の先端側に配置されており、プロセッサ(CPU)が搭載されている回路基板から離れて配置されている。
【0004】
ここで、携帯端末装置の製造工程において、プロセッサ等が搭載された回路基板について、動作確認等の試験を行ったり、所定のデータ(ソフトウェア)を回路基板上のメモリに書き込む作業を行っている。
【0005】
例えば、回路基板上にテストパターンを形成し、そのテストパターンに検査用治具を直接接触させることによって電気的導通を図り、回路の検査を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0006】
また、例えば、携帯電話機の筐体内に配置される基板上に試験用端子を実装し、回路基板の検査時に試験用端子にケーブルを接続して、データ転送を行う技術が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【特許文献1】特開平09−243708号公報
【特許文献2】特開平08−019033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献2の技術によれば、データの書き込みに際して、携帯電話機と検査装置とをケーブル等による有線接続により行っている。このようにして、有線接続の場合には、ケーブルを携帯電話装置と検査装置に挿抜を行うための工数が必要となり、また、ケーブルの挿抜が繰り返されるため、ケーブルのコネクタが磨耗し、定期的に交換を要してしまう。
【0008】
また、複数の回路基板が1枚の基板に存在するような集合基板において、上述した検査等を行う場合、回路基板のデザインや設計条件の変更等により、検査用のケーブルが接続されるコネクタの位置が変更され、検査工程において、検査治具の位置を変更したり、検査治具そのものを変更する必要が生じ、検査等に多大なコストがかかってしまう。
【0009】
また、有線接続のため、ケーブルの長さによっては、信号波形の劣化が生じる場合があり、データの転送速度の悪化を生じる場合がある。
【0010】
また、光通信モジュールを利用して検査等を行う場合、ケーブルを不要とするため、上述の問題を回避できるが、光通信モジュールが回路基板上に実装されていない場合には、従来のようにケーブルによる接続が必要となる。
【0011】
本発明では、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、光通信モジュール等の非接触型の通信モジュールが実装されていない回路基板において、検査時等にケーブルの挿抜を不要とし、また、信号波形の劣化を生じさせないで所定の検査等を行い、さらに、検査治具の費用を軽減することができる電子機器及び回路基板並びに検査システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る電子機器は、上記課題を解決するために、筐体と、前記筐体に配置され、所定の規格に準じて外部の装置と非接触により通信を行う通信部と、前記筐体内に配置され、前記通信部による通信を制御する制御部と、一方端側に前記制御部が接続され、他方端側に前記通信部が接続される配線パターンが形成されている回路基板と、を有して構成され、前記回路基板は、前記配線パターン上に前記所定の規格に準じて通信を行う通信モジュールを有する検査具が接続される接続部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、上記電子機器では、前記筐体は、前記通信部が配置される第1筐体と、前記回路基板が配置される第2筐体と、により構成されてなることが好ましい。
【0014】
また、上記電子機器では、前記制御部は、前記接続部に前記検査具が接続されたことを検知したときに、所定の検査を実行する検査装置との間で前記所定の規格に準じて通信を行うように前記通信モジュールを制御することが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る回路基板は、上記課題を解決するために、所定の規格に準じて外部の装置と非接触により通信を行う通信部を制御する制御部と、一方端側に前記制御部が接続され、他方端側に前記通信部が接続される配線パターンと、前記配線パターン上に前記所定の規格に準じて通信を行う通信モジュールを有する検査具が接続される接続部と、が形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る検査システムは、上記課題を解決するために、電子機器と検査装置との間で、所定の検査を実行する検査システムにおいて、前記電子機器は、筐体と、前記筐体に配置され、所定の規格に準じて外部の装置と非接触により通信を行う通信部と、前記筐体内に配置され、前記通信部による通信を制御する制御部と、一方端側に前記制御部が接続され、他方端側に前記通信部が接続される配線パターンが形成されている回路基板と、を有して構成され、前記回路基板は、前記配線パターン上に前記所定の規格に準じて通信を行う通信モジュールを有する検査具が接続される接続部が形成され、前記検査装置は、前記通信モジュールと非接触により前記所定の規格に準じて通信を行う検査通信モジュールを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コストの増加を伴うことなく簡易に検査等を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る電子機器の一例である携帯電話装置1の外観斜視図である。
【0020】
図1に示すように、携帯電話装置1は、フロントケース2aとリアケース2bとにより外面が形成される操作部側筐体部2と、フロントケース3aとリアケース3bとにより外面が形成される表示部側筐体部3と、操作部側筐体部2と表示部側筐体部3とを連結するヒンジ機構4と、を備えて構成される。
【0021】
操作部側筐体部2は、フロントケース2aの表面側に露出するように配設される操作ボタン群11と音声入力部12とを有して構成される。操作ボタン群11は、各種設定や電話帳機能やメール機能等の各種機能を作動させるための機能設定操作ボタン13と、数字や文字が割り当てられ、電話番号入力時やメール作成時等における文字入力時に用いられる入力操作ボタン14と、各種操作における決定やスクロール等を行う決定操作ボタン15と、から構成されている。また、操作部側筐体部2の側面には、イヤホンコネクタキャップ16と、外部機器(基地局)と通信を行うためのインターフェース(図示せず)を覆うキャップ17とが設けられている。さらに、操作部側筐体部2の下端部には、一対の充電用接点部18bが設けられている。なお、音声入力部12は、携帯電話装置1の使用者が通話時に発した音声を入力するために用いられる。
【0022】
表示部側筐体部3は、各種情報を表示するためのディスプレイ21と、通話の相手側の音声を出力する音声出力部22とを有して構成される。また、表示部側筐体部3の上端部には、他の携帯電話装置等との間で所定の規格に準じて非接触により通信を行うための通信部23が設けられている。
【0023】
通信部23は、例えば、IrDA(Infrared Data Association)による光無線データ通信の規格に準拠したモジュールにより構成されており、同じ規格に準拠した外部機器と通信を行う。なお、通信部23は、外部機器と非接触により通信を行うものであれば他の構成でも良く、他の規格に準拠した通信を行うモジュールにより構成されていても良い。
【0024】
ヒンジ機構4は、操作部側筐体部2と表示部側筐体部3とが相対的に動くようにこれらを連結しており、操作部側筐体部2と表示部側筐体部3とが互いに開いた使用状態(開放状態)と、操作部側筐体部2の表面と表示部側筐体部3の表面とが互いに向き合った格納状態(折畳み状態)とに切り換えることができるように構成されている。なお、本実施形態においては、通信機器の一例としてヒンジ機構4を介して操作部側筐体部2と表示部側筐体部3とが相対的に動く、いわゆる折り畳み式の携帯電話装置1を挙げているが、本発明は、折り畳み式ではなく、操作部側筐体部2と表示部側筐体部3とを重ね合わせた状態から一方の筐体を一方向にスライドさせるようにしたスライド式や、重ね合せ方向に沿う軸線を中心に一方の筐体を回転させるようにした回転式や、操作部側筐体部2と表示部側筐体部3とを2軸ヒンジを介して連結したもの、さらには、操作部側筐体部2と表示部側筐体部3とが一つの筐体に配置されたもの(いわゆる、ストレートタイプ)あっても適用可能である。
【0025】
また、図2は、操作部側筐体部2に内蔵される部材の分解斜視図である。
【0026】
図2に示すように、操作部側筐体部2は、フロントケース2aと、上述した操作ボタン群11を備えるキーシート40と、フレキシブルプリント基板50と、基準電位(GND)に接続された導電性のシールドケース60と、基準電位が形成されている層及び携帯電話装置1用のRF(Radio Frequency)モジュール等の各種電子部品が実装された回路基板70と、リアケース2bと、バッテリ80と、バッテリリッド90とが、積層的に配置されて構成される。なお、バッテリ80は、リアケース2bに形成された開口2cの外側から着脱可能に操作部側筐体部2の内部に収納される。また、開口2cは、バッテリリッド90により開閉可能に構成される。
【0027】
シールドケース60は、薄型の直方体における一の広い面が開口した形状を有する金属製の部材である。なお、シールドケース60は、金属により形成する以外に、骨格を樹脂により形成し、その表面に導体膜を形成したものでも良い。
【0028】
フレキシブルプリント基板50は、フロントケース2a側の面に複数のキースイッチ51、52、53を有し、シールドケース60に載置される。フレキシブルプリント基板50のキースイッチ51、52、53は、椀状に湾曲して立体的に形成された金属板のメタルドームを有する構造になっている。メタルドームは、その椀状形状の頂点が押圧されると、フレキシブルプリント基板50の表面に印刷された不図示の電気回路に形成されるスイッチ端子に接触して電気的に導通する。なお、フレキシブルプリント基板50は、複数の絶縁フィルムの間に配線を挟み込んだものである。
【0029】
キーシート40は、シリコンゴム製等のシート(図示せず)の表面に操作ボタン群11が接着剤により貼り付けられて構成される。キーシート40における操作ボタン群11を構成する機能設定操作ボタン13、入力操作ボタン14及び決定操作ボタン15は、フレキシブルプリント基板50におけるキースイッチ51、52、53と対向する位置に配置されるとともに、フロントケース2aに形成されるキー孔から表面側に露出するように配置される。
【0030】
フロントケース2aには、携帯電話装置1を折り畳んだ状態で表示部側筐体部3のディスプレイ21と対向する内側面に、キー孔が複数形成される。複数のキー孔それぞれからは、キーシート40上に形成される機能設定操作ボタン13、入力操作ボタン14及び決定操作ボタン15の押圧面が露出する。この露出した操作ボタン群11を構成する機能設定操作ボタン13、入力操作ボタン14及び決定操作ボタン15の押圧面を押し下げるように押圧することで、対応するキースイッチ51、52、53それぞれにおけるメタルドーム(椀状形状)の頂点が押圧され、スイッチ端子に接触して電気的に導通する。
【0031】
また、フロントケース2aとリアケース2b及びフロントケース3aとリアケース3bとは、操作部側筐体部2としての外周面が略一面となるように、開口周縁部同士が互いに重なり合うようにして結合される。なお、フロントケース2a及びリアケース2bには、フロントケース2aとリアケース2bとが互いに結合し合ったときに開口部を形成する凹部2d、2eがそれぞれ形成されている。また、この凹部2d、2eで形成される開口部は、イヤホンコネクタキャップ16によって開口状態と閉塞状態との間を切り換え可能に構成される。
【0032】
ここで、回路基板70を検査する検査システム1000の構成について説明する。検査システム1000は、図3に示すように、検査具101を介して、検査装置200と携帯電話装置1の回路基板70との間において、所定の検査を実行する。
【0033】
また、回路基板70は、図3に示すように、所定の規格(例えば、IrDA)に準じて外部の装置と非接触により通信を行う通信部23を制御する制御部71(CPU)と、一方端側に制御部71が接続され、他方端側に通信部23が接続される配線パターン72と、配線パターン72上に所定の規格(例えば、IrDA)に準じて通信を行う通信モジュール100を有する検査具101が接続される接続部73と、が形成されている。また、電源V1は、通信部23のLEDに供給され、データ通信を行う際にLEDの点灯に利用される電源である。また、電源V2は、通信部23内部のインターフェース用に利用される電源である。
【0034】
接続部73は、回路基板70の製造工程における、動作確認等の試験や、所定のデータ(ソフトウェア)を回路基板上のメモリ74に書き込む作業等を行う際に利用するテストポイントであって、ランド構造により回路基板70上の所定の位置に形成されている。
【0035】
また、制御部71は、接続部73に検査具101が接続されたことを検知したときに、所定の検査を実行する検査装置200との間で所定の規格に準じて通信を行うように通信モジュール100を制御する。
【0036】
つぎに、検査システム1000により行われる検査方法の具体例について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。なお、以下では、回路基板70が携帯電話装置1に組み込まれた後に行われる所定の検査を想定して説明するが、これに限られず、回路基板70単体に対して行われる所定の検査であっても良いし、また、複数の回路基板70が連結されている基板(集合基板)に対して行われる検査であっても良い。
【0037】
また、予め、主電源が投入された場合に、所定の検査モードが起動されるように、メモリ74に対して有効ビットの書き込みが行われているものとする。また、接続部73に検査具101が接続されているものとする。
【0038】
ステップS1において、制御部71は、電源が投入されて起動したときに、メモリ74を参照し、有効ビットの有無を判断する。制御部71は、有効ビットが書き込まれていると判断した場合(Yes)、ステップS2に進み、有効ビットが書き込まれていないと判断した場合(No)、通常モードによる起動が行われる(ステップS3)。
【0039】
ステップS2において、制御部71は、検査モードによる起動を行い、接続部73に接続されている検査具101の通信モジュール100を通信可能な状態に制御する。検査装置200は、赤外線通信を利用して、検査具101の通信モジュール100を介して制御部71との間で所定のネゴシエーションを確立し、ネゴシエーションの確立が完了した後に、メモリ74に対して所定のデータの書き込み又は読み出しを行う。例えば、IrDAによる規格の場合には、双方向通信が可能なため、携帯電話装置1に対して、データの書き込みと読み出しを行うことができる。
【0040】
ステップS4において、制御部71は、検査装置200による所定の検査が終了したことを確認した場合、検査モードを終了する。制御部71は、検査モードを終了する際に、メモリ74に設定されている有効ビットを無効ビットに変更する。
【0041】
このようにして、本発明では、通信部23が形成されていない回路基板70の製造工程における、動作確認等の試験や、所定のデータ(ソフトウェア)を回路基板70上のメモリ74に書き込む作業等を行う際に、検査装置200との間を接続するケーブルが不要とするので、検査時等にケーブルの挿抜を不要とし、また、データの送受信距離を規定の範囲内にすることにより、信号波形の劣化を生じさせないで所定の検査等を行うことができ、さらに、ケーブルの挿抜による検査具の消耗を軽減することができる。
【0042】
また、本発明によれば、接続部73は、ランド構造により形成されており、部品自体を実装する必要がないため、回路基板70上のどこの位置に形成されても良く、例えば、バッテリ80が配置される位置に形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る携帯電話装置の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る通信装置としての操作部側筐体部に内蔵される構成部材の分解斜視図である。
【図3】本発明に係る携帯電話装置の回路基板の構成を示す図である。
【図4】回路基板に対する検査方法の説明に供するフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
1 携帯電話装置
23 通信部
70 回路基板
71 制御部
72 配線パターン
73 接続部
74 メモリ
100 通信モジュール
101 検査具
200 検査装置
1000 検査システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に配置され、所定の規格に準じて外部の装置と非接触により通信を行う通信部と、
前記筐体内に配置され、前記通信部による通信を制御する制御部と、
一方端側に前記制御部が接続され、他方端側に前記通信部が接続される配線パターンが形成されている回路基板と、を有して構成され、
前記回路基板は、前記配線パターン上に前記所定の規格に準じて通信を行う通信モジュールを有する検査具が接続される接続部が形成されていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記筐体は、前記通信部が配置される第1筐体と、前記回路基板が配置される第2筐体と、により構成されてなることを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記制御部は、前記接続部に前記検査具が接続されたことを検知したときに、所定の検査を実行する検査装置との間で前記所定の規格に準じて通信を行うように前記通信モジュールを制御することを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項4】
所定の規格に準じて外部の装置と非接触により通信を行う通信部を制御する制御部と、
一方端側に前記制御部が接続され、他方端側に前記通信部が接続される配線パターンと、
前記配線パターン上に前記所定の規格に準じて通信を行う通信モジュールを有する検査具が接続される接続部と、が形成されていることを特徴とする回路基板。
【請求項5】
電子機器と検査装置との間で、所定の検査を実行する検査システムにおいて、
前記電子機器は、
筐体と、
前記筐体に配置され、所定の規格に準じて外部の装置と非接触により通信を行う通信部と、
前記筐体内に配置され、前記通信部による通信を制御する制御部と、
一方端側に前記制御部が接続され、他方端側に前記通信部が接続される配線パターンが形成されている回路基板と、を有して構成され、
前記回路基板は、前記配線パターン上に前記所定の規格に準じて通信を行う通信モジュールを有する検査具が接続される接続部が形成され、
前記検査装置は、前記通信モジュールと非接触により前記所定の規格に準じて通信を行う検査通信モジュールを有することを特徴とする検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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