説明

電子機器及び電子機器収容ラック

【課題】電磁波漏れを防止し、エアフローを確保しつつ、容易に軽量化を図ることができる電子機器及び電子機器収容ラックを提供すること。
【解決手段】上面に開口部が形成された筐体と、前記筐体がその高さ方向に積み重ねられたときの前記筐体同士の間のクリアランスを塞ぐスペーサ部材とを備えることを特徴とする。これにより、筐体が複数積み重ねられたときに、クリアランスが塞がれる。そのため、電磁波漏れを防止し、エアフローを確保しつつ、容易に軽量化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及び電子機器収容ラックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばラックマウント型サーバ(以下「ラックサーバ」という。)などの電子機器が普及している(例えば、特許文献1から3参照。)。これらラックサーバは、図9及び図10に示すように、高さ方向Hに所定の間隔をあけて複数積み重ねられた状態で収容ラックLに収容されるようになっている。そして、これらラックサーバSを一カ所に集約させて、お客様に貸し出すようなデータセンタ型ビジネスが展開されてきている。
ここで、これらラックサーバSは、図11に示すように、電磁波漏れを防止し、エアフローを確保するため、矩形板状の金属製の板部S1によって区画された直方体形状に形成されているのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−196277号公報
【特許文献2】特開2006−040918号公報
【特許文献3】特開平11−054965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなラックサーバでは、1個あたりの重量が重いため、フロアの耐荷重制限などにより、例えば19インチラックなどのすべての収容スペースに収容することができず、別の19インチラックなどに収容せざるを得ないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、電磁波漏れを防止し、エアフローを確保しつつ、容易に軽量化を図ることができる電子機器及び電子機器収容ラックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、上面に開口部が形成された筐体と、前記筐体がその高さ方向に積み重ねられたときの前記筐体同士の間のクリアランスを塞ぐスペーサ部材とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の電子機器と、前記電子機器を収容するラック本体部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電磁波漏れを防止し、エアフローを確保しつつ、容易に軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る電子機器の第1の実施形態として、ラックサーバに適用した例を示す斜視図である。
【図2】図1の短辺部を拡大して示す斜視図である。
【図3】図2の正面図である。
【図4】図3の筐体を複数積み重ねた様子を示す正面図である。
【図5】上方突出部2及び下方突出部3を設けない場合に、エア及び電磁波が漏れる様子を示す説明図である。
【図6】本発明に係る電子機器の第2の実施形態として、柱状部を示す斜視図である。
【図7】筐体が積み重ねられて、柱状部が配された様子を示す斜視図である。
【図8】図7の筐体がラック本体部に複数積み重ねられて収容された様子を示す斜視図である。
【図9】従来のラック本体部を示す斜視図である。
【図10】従来のラック本体部に従来のラックサーバが複数積み重ねられて収容される様子を示す斜視図である。
【図11】従来のラックサーバを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
以下、本発明の第1の実施形態における電子機器について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態としての電子機器をラックサーバに適用した例を示すものである。
ラックサーバ1は、直方体形状の筐体10と、この筐体10の中に配された基板(不図示)及び電子部品(不図示)とを備えている。
筐体10は、矩形板状の底面部13と、この底面部13の対向する長辺部(外縁部)12aのそれぞれから立ち上げられた矩形板状の長側面部12と、底面部13の対向する短辺部(外縁部)11aのそれぞれから立ち上げられた矩形板状の短側面部11とを備えている。
この筐体10には、天面部が設けられておらず、上端が開放されている。すなわち、上端の開口部分が、開口部10aとなる。
【0011】
底面部13のそれぞれの短辺部11aには、図2及び図3に示すように、ラックサーバ1の高さ方向Hの上方に突出する上方突出部(スぺーサ部材、突出部、一の突出本体部)2と、下方に突出する下方突出部(スぺーサ部材、突出部、他の突出本体部)3とが設けられている。
上方突出部2及び下方突出部3の突出寸法は、1cmに設定されている。
上方突出部2及び下方突出部3は、筐体10の奥行方向Dの全長にわたって設けられており、横断面形状が矩形状に形成されている。また、上方突出部2及び下方突出部3は、樹脂からできたラバー部材からなっている。
上方突出部2は、それぞれの短辺部11aに一つずつ設けられている。また、上方突出部2は、筐体10の短辺部11aのうち、外縁よりも所定の距離dをあけて内方側に設けられている。
【0012】
下方突出部3は、それぞれの短辺部11aの外方から内方に向かって2列ずつ設けられている。すなわち、2つの下方突出部3のうち、短辺部11aの外方側に設けられたのが外方突出部3bであり、この外方突出部3bに対して所定の間隔2dをあけて内方側に対向して設けられたのが内方突出部3aである。
外方突出部3bは、短辺部11aの外縁に設けられており、内方突出部3aは、短辺部11aの外縁に対して、所定の間隔2dをあけて内方側に設けられている。すなわち、上方突出部2が、筐体10の幅方向Wにおける外方突出部3bと内方突出部3aと間の中心に設けられている。
【0013】
次に、このように構成された本実施形態におけるラックサーバ1の作用について説明する。
ラックサーバ1は、図4に示すように、その高さ方向Hに所定の間隔をあけて複数積み重ねられてラック本体部100に収容される。
このとき、上方突出部2及び下方突出部3が、筐体10同士の高さ方向Hの間のクリアランスCを塞ぐ。すなわち、下方側の筐体10の上方突出部2が、上方側の筐体10の下方突出部3の間に嵌め込まれる。換言すれば、下方側の筐体10の上方突出部2は、上方側の筐体10の外方突出部3bと内方突出部3aとの間に配される。これにより、下方側の筐体10の上方突出部2と上方側の筐体10の下方突出部3とが、幅方向Wにおいて交互に配される。そのため、クリアランスCが、幅方向Wにおいて、より高密度に塞がれる。
なお、ラックサーバ1の最上部には、天板部を設けた筐体を設けることが好ましい。ただし、最上部の筐体10の上方突出部2と、ラック本体部100に設けられる板状部(天板又は仕切板)によって、クリアランスCを塞ぐことができる。
【0014】
以上より、本実施形態におけるラックサーバ1によれば、天板部を設けなくすることにより、筐体10を全体的に軽くすることができる。さらに、上方突出部2及び下方突出部3がクリアランスCを塞ぐことにより、エアや電磁波がクリアランスCから漏れ出てしまうことを防止することができる。
なお、筐体の天板部を取り外すことにより、全体を軽くすることはできるものの、図5に示すように、上方突出部2及び下方突出部3が設けられていないと、エアや電磁波がクリアランスCから漏れてしまう。
本実施形態におけるラックサーバ1によれば、電磁波漏れを防止し、エアフローを確保しつつ、容易に軽量化を図ることができる。
【0015】
一般的に、ラックサーバを設置する場合は設置場所の耐荷重を考慮する必要があるため、19インチラックに全てのラックサーバを搭載できない場合が多い。多台数の導入が前提となるデータセンタ向けラックサーバは、通常約15kgの質量がある。本実施形態におけるラックサーバ1によれば、1台あたり2〜3kgの軽量化を図ることができる。そのため、高さ44U(約2m)の19インチラックで、従来よりも8〜9台程度搭載数を増やすことが可能となる。
なお、ラックサーバの軽量化手法としては、材質の変更(例:アルムニウム化)を行うことが考えられるが、従来よりも2倍以上のコストアップとなる他、材質変更により熱伝導率の変更などが生じ、冷却手法を大幅に見直す必要があるため、現実的ではない。
また、上方突出部2及び下方突出部3により、クリアランスCを迅速かつ容易に塞ぐことができる。
また、筐体10が積み重ねられたときに、下方側の筐体10の上方突出部2と上方側の筐体10の下方突出部3とが、幅方向Wにおいて交互に配されることから、クリアランスCを、より高密度に塞ぐことができる。
また、下方側の筐体10の上方突出部2が、上方側の筐体10の外方突出部3bと内方突出部3aとの間に配されることから、クリアランスCを、より高密度に確実に塞ぐことができる。
【0016】
(実施形態2)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図6から図8は、本発明の第2の実施形態を示したものである。
図6から図8において、図1から図5に記載の構成要素と同一部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
この実施形態と上記第1の実施形態とは基本的構成は同一であり、ここでは主として異なる点について説明する。
【0017】
本実施形態におけるラックサーバ1は、角柱形状の柱状部4を備えている。
柱状部4は、樹脂製のラバーからなるものであり、その長さ寸法が、筐体10の幅方向Wの長さ寸法と同一に設定されている。
【0018】
このような構成のもと、上記と同様にして筐体10が複数積み重ねられ、柱状部4は、筐体10のそれぞれの長辺部12aに配される。すなわち、柱状部4が筐体10の幅方向Wの全長にわたって設けられる。
これにより、筐体10同士の高さ方向Hの間のクリアランスCを、確実に塞ぐことができる。
【0019】
なお、上記実施形態において、上方突出部2及び下方突出部3の設置数は適宜変更可能である。例えば、上方突出部2を複数設けてもよいし、下方突出部3を一つ又は3つ以上設けてもよい。
また、上方突出部2及び下方突出部3の形状は、適宜変更可能である。例えば、上方突出部2をT字状にして、T字状のスペースを有する一対の下方突出部3の間に、前方から上方突出部2をスライドさせるようにしてもよい。
また、上方突出部2及び下方突出部3を短辺部11aに設けるとしたが、これに限ることはなく、長辺部12aのみに設けてもよいし、短辺部11a及び長辺部12aに設けてもよい。なお、上方突出部2及び下方突出部3を短辺部11a及び長辺部12aに設ける場合には、柱状部4を設けなくてもよい。
【0020】
また、長辺部12aに柱状部4を設けるとしたが、これに限ることはなく、短辺部11aのみに設けてもよいし、短辺部11a及び長辺部12aに設けてもよい。なお、柱状部4を短辺部11a及び長辺部12aに設ける場合には、上方突出部2及び下方突出部3を設けなくてもよい。
また、柱状部4、上方突出部2及び下方突出部3の設置位置は、短辺部11a及び長辺部12aにおいて自由に組み合わせることができることはいうまでもない。
また、上方突出部2及び下方突出部3は、両方設ける必要はなく、いずれか一方があればよい。
【0021】
また、天板部が設けられていない例を示したが、これに限ることはなく、開口部が設けられた天板部を設けてもよい。
また、本発明における電子機器として、ラックサーバ1に適用した例を示したが、他の電子機器であってもよい。
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 ラックサーバ(電子機器)
2 上方突出部(スぺーサ部材、突出部、一の突出本体部)
3 下方突出部(スぺーサ部材、突出部、他の突出本体部)
4 柱状部
10 筐体
10a 開口部
11a 短辺部(外縁部)
12a 長辺部(外縁部)
C クリアランス
H 高さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口部が形成された筐体と、
前記筐体がその高さ方向に積み重ねられたときの前記筐体同士の間のクリアランスを塞ぐスペーサ部材とを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記スペーサ部材は、前記筐体に設けられ前記筐体の高さ方向に突出する突出部であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記突出部は、
前記筐体の高さ方向の一方に突出する一の突出本体部と、
他方に突出する他の突出本体部とを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記他の突出本体部は、前記筐体の外方から内方に向かって複数配列されており、
他の筐体が積み重ねられたとき、前記一の突出本体部と前記他の筐体の他の突出本体部とが、前記外方から内方に向かって交互に配されることを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記一の突出本体部が、1つ設けられ、
前記他の突出本体部が、前記筐体の外方から内方に向かって2つ配列されており、
他の筐体が積み重ねられたとき、前記一の突出本体部が前記他の筐体の他の突出本体部同士の間に配されることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記スペーサ部材は、前記クリアランスを塞ぐ柱状部材であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項7】
前記スペーサ部材は、前記筐体の外縁部に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の電子機器と、
前記電子機器を収容するラック本体部とを備えることを特徴とする電子機器収容ラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−161282(P2010−161282A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3557(P2009−3557)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】