説明

電子機器取付装置及び電子機器用取付ブラケット

【課題】従来は、電子機器を支持するスタンドを締付ねじでクランプバーにねじ止めする構成となっていたため、取り付け・取り外し時に手間がかかり、着脱操作を簡単且つ迅速に行うことができなかった。
【解決手段】モニタ装置2と、そのモニタ装置2に対称に配置されて取り付けられる一対の取付ブラケット3,4と、を備えて構成される。一対の取付ブラケット3,4には、一対の取付ブラケットを介してモニタ装置2を吊り下げ支持する上側バー5が挿脱可能に係合される係合溝10を設ける。更に、一対の取付ブラケットには、一対の取付ブラケットを介してモニタ装置2を下方から支える下側バー6が当接されるベース部9を設ける。上側バー5は、第1の方向の寸法Yよりも第2の方向Xの寸法を大きくした断面形状を有し、係合溝の底に、上側バー5を90度回転させることができる回転領域10cを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置やスピーカ装置その他の電子機器を所定位置に簡単且つ確実に取り付け・取り外しすることができる電子機器取付装置、及び、そのための取付ブラケットに関する。特に、複数個の同一の電子機器を平面的に並べて設置することができる電子機器取付装置及びそのために用いて好適な電子機器用取付ブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の一具体例を示すディスプレイ装置を所定位置に設置する装置として、例えば、図7や図8に示すようなものが知られている。図7は、球面軸受111を有する球面軸受式スタンド110によってディスプレイ装置100をクランプバー102に支持した例を示すものである(以下「第1の従来例」という。)。球面軸受式スタンド110は、コの字型に形成されたスタンド本体112と、このスタンド本体112の一方の片の外面に固定された球面軸受111と、一方の片と対向する他方の片を貫通するように取り付けられた締付ねじ113を備えている。球面軸受111は、一端に球形部を有し、且つ、他端にフランジ部を有する支持軸114を備えている。この支持軸114が球形部によって姿勢変更可能に支持されており、その反対側のフランジ部にディスプレイ装置100が搭載されてねじ止めされている。
【0003】
図7において、符号105は、作業机や作業テーブル等の卓である。この卓105の後部上方に、クランプバー102が卓上面と所定の隙間をあけて平行に延在されて配置されている。球面軸受式スタンド110は、スタンド本体112の凹部内にクランプバー102を挿入した状態で、締付ねじ113を締め付けることによってクランプバー102に固定されている。そのため、クランプバー102の下面と卓105の上面との間には、締付ねじ113及びこれを回転させるために作業者の指が入る程度の隙間Dが必要とされている。そして、スタンド本体112に設けた球面軸受111上にディスプレイ装置100が搭載されていて、これにより、球面軸受式スタンド110でディスプレイ装置100を下方から支持する構成となっている。
【0004】
図8は、高さ調整機構を有する高さ調整式スタンド120によってディスプレイ装置100をクランプバー102に支持した例を示すものである(以下「第2の従来例」という。)。高さ調整式スタンド120は、コの字型に形成されたスタンド本体122と、このスタンド本体122の一方の片の外面に設けられた高さ調整部121と、一方の片と対向する他方の片を貫通するように取り付けられた締付ねじ123を備えている。高さ調整部121は、スタンド本体112の一片の上面に立設されたベース片124と、このベース片124に位置調整可能に固定された連結部材125と、この連結部材125の先端部に取り付けられたべサマウント126と、ロックねじ127を備えている。
【0005】
連結部材125はコの字型に形成されており、一方の片に長穴128が設けられ、この一方の片と対向する他方の片の先端面にベサマウント126が一体的に固定されている。ロックねじ127は、ベース片124に設けたねじ孔に螺合されており、そのねじ軸部が連結部材125の一片に設けた長穴128を貫通している。長穴128はベース片124が延びる上下方向へ延在されており、この長穴128を貫通するロックねじ127にガイドさせて連結部材125を上下方向へ移動することにより、ディスプレイ装置100の設置高さを調整することができる。
【0006】
この高さ調整式スタンド120は、球面軸受式スタンド110と同様に、スタンド本体122の凹部内にクランプバー102を挿入した状態で、締付ねじ123を締め付けることによってクランプバー102に固定される。そのため、卓105の上面とクランプバー102の下面との間に隙間Dができる。その一方、高さ調整式スタンド120では、ベサマウント126でディスプレイ装置100の背面を支持するために、ディスプレイ装置100の表示面が距離Fだけ前方に大きく突出されることになる。
【0007】
また、従来の電子機器取付装置の第3の例として、例えば、特許文献1に記載されているようなものもある。特許文献1には、コンクリート造りの壁面に埋め込んで取り付けられ、各種機器を収納するキャビネットの取り付け構造に関するものが記載されている(以下「第3の従来例」という。)。この特許文献1に記載されたキャビネットの取り付け構造は、コンクリート打設前に露出している配筋に引っ掛け可能である取り付け金具をキャビネット背面に固定している。取り付け金具は、配筋にキャビネットを支持させる支持片と、配筋にキャビネットを固定させる固定部とを形成する、ことを特徴としている。このキャビネットの取り付け構造によれば、簡単な構造で取付作業が容易であるキャビネットの取り付け構造を提供できる。
【0008】
更に、従来の電子機器取付装置の第4の例として、例えば、特許文献2に記載されているようなものもある。特許文献2には、電子機器等のシャーシに電子部品やケーブル等を実装するために用いる固定具に関し、特に、シャーシの表面側からの取り外しを容易に行うことが可能な固定具が記載されている(以下「第4の従来例」という。)。この特許文献2に記載された固定具は、保持部と嵌合部とを備え、嵌合部は、シャーシの表面に当接可能な平坦な底面を有するベースと、挟持片と、係止体とを備えている。挟持片は、ベースの底面に突出されてシャーシに設けられた穴の内縁部に一方向から嵌合してその内縁部を挟持する。係止体は、ベースの底面に突出されてシャーシに設けられた穴の内縁部に係合し、ベースの反対方向への移動を係止する、ことを特徴としている。この固定具によれば、シャーシに装着した固定具をシャーシの表面側から取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−171765号公報
【特許文献2】特開2004−239325号公報
【0010】
しかしながら、第1の従来例の場合には、スタンド本体に設けた球面軸受上にディスプレイ装置を搭載して下方から支持する構成となっているため、クランプバーの上面からディスプレイ装置の下面までが高くなる。その結果、ディスプレイ装置の設置高さを低くするのに限界があり、表示面が目線から上方にズレてしまう。また、第2の従来例の場合には、高さ調整部でディスプレイ装置の背面を支持する構成となっているため、ディスプレイ装置の表示面が前方に大きく突出されることになる。その結果、卓の上面である作業面上にディスプレイ装置が配置されることから、卓上の作業面がディスプレイ装置によって低減され、作業スペースが減少してしまうという問題があった。
【0011】
また、第3の従来例の場合、取付対象物が各種機器を収納するキャビネットである点で共通する部分も存在する。しかしながら、第3の従来例がコンクリート造りの壁面に埋め込んで使用されるのに対し、本願発明は所定位置に簡単、確実に取り付け・取り外しできる電子機器取付装置等に関する点で両者は大きく異なるものである。また、第4の従来例の場合には、シャーシに装着して使用される固定具である点で共通する部分も存在する。しかしながら、第4の従来例がシャーシに対してフラットケーブルを保持させる保持具であるのに対し、本願発明は所定位置に簡単、確実に取り付け・取り外しできる電子機器取付装置等に関するものである点で両者は異なるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
解決しようとする問題点は、従来の電子機器取付装置では、電子機器を支持するスタンドを締付ねじでクランプバーにねじ止めする構成となっていたため、取り付け・取り外し時に手間がかかり、着脱操作を簡単且つ迅速に行うことができないという問題があった。即ち、第1の従来例の場合には、電子機器を球面軸受式スタンドによってクランプバーに取り付けると、電子機器がクランプバーから上方に大きく突出してしまい、目線が上方に外れて画像表示面が見難くなるという問題があった。また、第2の従来例の場合には、電子機器を高さ調整式スタンドによってクランプバーに取り付けると、卓上の作業面上に電子機器が配置されることから、卓上の作業面が狭くなり、作業スペースが減少してしまうという問題があった。
【0013】
第3の従来例の場合は、キャビネットをコンクリート造りの壁面に埋め込んで取り付けるものであるため、本願発明とは、その目的のみならず、構成・効果の点からも異なるものであって、別発明ということができる。更に、第4の従来例の場合は、電子機器における組立構造に関するものとして共通するが、電子機器のシャーシに電子部品やケーブル等を実装するために用いるもので、本願発明とは目的を異にしており、その構成も異なるもので、別発明ということができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の電子機器取付装置は、電子機器本体と、その電子機器本体に対称に配置されて取り付けられる一対の取付ブラケットと、を備えて構成される。一対の取付ブラケットには、一対の取付ブラケットを介して電子機器本体を吊り下げ支持する第1の支持部が挿脱可能に係合されるクランク状に延在された係合溝を設ける。更に、一対の取付ブラケットには、一対の取付ブラケットを介して電子機器本体を下方から支える第2の支持部が当接されるベース部を設ける。第1の支持部は、第1の方向の寸法よりもこれに直交する第2の方向の寸法を大きくした断面形状を有し、係合溝の底に、第1の支持部を90度回転させることができる回転領域を設ける。
【0015】
また、本発明の電子機器用取付ブラケットは、電子機器本体に対称に配置されて取り付けられる構造が同一であって、形状が対称をなす一対の取付ブラケットからなる。一対の取付ブラケットには、一対の取付ブラケットを介して電子機器本体を吊り下げ支持する第1の支持部が挿脱可能に係合されるクランク状に延在された係合溝を設ける。更に、一対の取付ブラケットには、一対の取付ブラケットを介して電子機器本体を下方から支える第2の支持部が当接されるベース部を設ける。第1の支持部は、第1の方向の寸法よりもこれに直交する第2の方向の寸法を大きくした断面形状を有し、係合溝の底に、第1の支持部を90度回転させることができる回転領域を設ける。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電子機器取付装置によれば、ねじを用いることなく、取付ブラケットの係合溝とベース部により、第1の支持部及び第2の支持部を用いて、所定位置に対する電子機器の取り付け・取り外しをワンタッチ操作で簡単に行うことができる。更に、ベース部にズレ防止凹部を設けることにより、電子機器取付装置の揺れを防止し、所定位置に簡単且つ確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の電子機器取付装置の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の電子機器取付装置に係る取付ブラケットの実施の形態の一例を示す正面図である。
【図3】本発明の電子機器取付装置が着脱可能に取り付けられる第1の支持部と第2の支持部を備えた卓の一例を示す斜視図である。
【図4】本発明の電子機器取付装置に係る第1の支持部の断面形状の例を示すもので、図4Aは楕円形とした実施の例、図4Bは円形の一部を切り欠いた実施の例、をそれぞれ示す説明図である。
【図5】本発明の電子機器取付装置の取り付け作業を説明する説明図である。
【図6】本発明の第1の支持部と第2の支持部を備えた卓に4個の電子機器取付装置を取り付けた状態を示す正面図である。
【図7】従来の電子機器取付装置の第1の例を示す説明図である。
【図8】従来の電子機器取付装置の第2の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
電子機器本体に一対の取付ブラケットを対称に配置して取り付け、一対の取付ブラケットに設けた係合溝に第1の支持部を差し込み、その底に設けた回転領域で90度回転させる。これにより、電子機器取付装置が第1の支持部に吊り下げられて取り付けられ、電子機器取付装置をねじ止めすることなく、所定位置に対する電子機器取付装置の取り付け・取り外し作業を、ワンタッチ操作によって簡単且つ確実に行うことができる。
【実施例】
【0019】
図1のように、本発明の電子機器取付装置1は、電子機器本体2と、その電子機器本体2に対称に配置されて取り付けられる一対の取付ブラケット(電子機器用取付ブラケット)3,4とを備えて構成されている。この電子機器取付装置1は、第1の支持部の一具体例を示す上側バー5に係合溝を嵌め込むように取り付けることにより、ワンタッチ操作で簡単且つ確実に取り付け・取り外しすることができる。更に、電子機器取付装置1によれば、第2の支持部の一具体例を示す下側バー6によってズレを防止し、安定的に確実に支持することができる。
【0020】
電子機器本体2としては、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイその他のモニタ装置を挙げることができる。しかしながら、本願発明の電子機器本体2は、モニタ装置に限定されるものではなく、例えば、テレビジョン装置、スピーカ装置、アンプ、チューナ、その他各種の電子機器を適用することができる。この電子機器本体2の外形は、厚み(奥行き)方向の比較的薄い偏平な立方体であることが好ましいが、これに限定されるものではない。例えば、円形、楕円形その他の偏平な立体形状であってもよく、また、偏平でない、立方体、球形、その他各種形状のものを用いることができることは勿論である。
【0021】
一対の取付ブラケット3,4は、大きさが同一であって、左右対称の形状をなしている。図1及び図2に示すように、取付ブラケット3,4は、電子機器本体2の側面よりも十分に大きな平面形状を有する板材によって長方形に形成されている。取付ブラケット3,4の長手方向の中途部には、板厚方向に折り曲げられた段部7が設けられている。段部7は、隣接した2箇所を、互いに逆方向へ90度折り曲げることによってクランク状に形成されている。段部7の段差は、取付ブラケット3,4の板厚よりも少し大きく形成し、その段差内に、他の取付ブラケット3,4が入り込むことができるようにする。
【0022】
取付ブラケット3,4には、固定部8と、ベース部9と、係合溝10と、が設けられている。固定部8は、取付ブラケット3,4の幅方向の一側において、長手方向の中途部に設定されており、取付ブラケット3,4をねじ止めするための挿通孔12が2箇所に設けられている。ベース部9は、取付ブラケット3,4の長手方向の一側であって、段部7に近い側に設定されている。このベース部9の外縁には、下側バー6の上面が当接される。ベース部9の外縁には、その縁の中途部に設定された角溝状の切欠きからなるズレ防止凹部13が設けられている。ズレ防止凹部13は、下側バー6と対応する位置に配置されており、取付ブラケット3,4の装着完了時、下側バー6が嵌合されて位置決めされるようになっている。
【0023】
係合溝10は、上側バー5が挿脱可能に嵌め込まれ、その上側バー5によって吊り下げられるように取付ブラケット3,4に設けたものである。この係合溝10は、取付ブラケット3,4の長手方向に沿ってクランク状に延在された長溝からなっている。即ち、係合溝10は、固定部8と反対側の辺に開口された出入口10aと、この出入口10aの奥に連続された幅狭部10bと、この幅狭部10bの奥に設けた回転領域10cとからなっている。係合溝10の出入口10aは、取付ブラケット3,4の幅方向に延在されていて、開口部の広さQは、上側バー5の、寸法の大きい長手方向の長さXよりも少し大きく設定されている。出入口10aの深さRは、上側バー5の寸法の小さい幅方向の長さの2倍程度に設定されている。
【0024】
係合溝10の幅狭部10bは、出入口10aの奥に連続されていて、その奥から長手方向の一側に延在されている。そして、幅狭部10bの奥に回転領域10cが連続されている。幅狭部10bの幅Sは、上側バー5の寸法の小さい幅方向の長さYより少し大きいが、長手方向の長さXよりは小さく設定されている。従って、幅狭部10bに対して上側バー5は、幅方向の長さY側から通すことはできるが、これと直交する長手方向の長さX側からは通すことができないようになっている。幅狭部10bの長さTは、出入口10aから回転領域10cまでの間の領域である。
【0025】
係合溝10の回転領域10cは、上側バー5を90度回転させることができる大きさを有する。この実施例の回転領域10cは、幅方向の寸法を幅Uとし且つ長手方向の寸法を深さVとして正方形に形成されており、幅U及び深さVは共に上側バー5の長手方向の長さXよりも少し大きく設定されている。このような形状を有する係合溝10とズレ防止凹部13等を設けた取付ブラケット3,4を、固定ねじ15で電子機器本体2にねじ止めして取り付けることにより、電子機器取付装置1が構成される。
【0026】
この電子機器取付装置1が着脱自在に装着される上側バー5及び下側バー6は、例えば、図3に示すような構造として実現することができる。
【0027】
図3は、3本のバー21,22,23を有する門形フレーム20を机25の背面に取り付けた状態を示すものである。机25は、適当な広さの作業面を有する作業面部26と、この作業面部26を支える脚部27を有しており、作業面部26の背面に門形フレーム20が取り付けられている。即ち、作業面部26の背面に、門形フレーム20を支持するための4個の支持ピン28が所定位置に配置されて設けられている。支持ピン28の先端には、抜け出しを防止するためのフランジ状の頭部が設けられている。
【0028】
門形フレーム20は、水平方向に所定間隔離して対向された2本の支持柱30,30を有している。この2本の支持柱30,30の間に、3本のバー21,22,23が上下方向に所定の間隔をあけて配置されている。2本の支持柱30、30の下端部には、4個の支持ピン28に係合させて門形フレーム20を机25の背面に取り付けるための櫛歯状に形成された櫛状取付部31がそれぞれ一体に設けられている。櫛状取付部31には、上下方向に所定間隔あけて複数の歯形溝32が設けられている。
【0029】
この実施例では、櫛状取付部31には5つの歯形溝32が設けられており、これにより、門形フレーム20の取付位置が3段階に高さ調整可能に構成されている。更に、櫛状取付部31の5つの歯形溝32は、それぞれ斜め下向きに開口するように形成されており、これにより、門形フレーム20の自重によって歯形溝32が自動的に支持ピン28に係合されるように構成している。
【0030】
門形フレーム20の3本のバー21,22,23は、互いに平行をなして水平方向に延在されている。3本のバー21,22,23は、上方に位置するものが上側バー5であって、その上側バー5の下方に位置するものが下側バー6である。従って、最上段に位置するバー21は常に上側バー5であり、最下段の3段目に位置するバー23は常に下側バー6である。これに対して、2段目に位置するバー22は、その上方に位置するバー21に対しては下側バー6となるが、その下方に位置するバー23に対しては上側バー5となる。
【0031】
3本のバー21,22,23の断面形状は、この実施例では、第1の方向とした上下方向の長さYよりも第2の方向とした左右方向の長さXを長くした長方形に設定している。しかしながら、3本のバー21,22,23の断面形状は、これに限定されるものではなく、例えば、図4Aに示す楕円形としてもよく、また、図4Bに示すように、直径Dの円形の一部を切除した円弧形としてもよい。更に、バーの断面形状は、これら図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、第1の方向の寸法よりもこれに直交する第2の方向の寸法が大となる形状であれば適用可能である。なお、上記バーの断面形状は、少なくとも上側バーが備えていればよいもので、下側バーは、取付ブラケット3,4を下方から支えることができる形状であれば、その断面形状に制約は無い。
【0032】
なお、門形フレーム20の取付位置を変えて3本のバー21,22,23の高さを調整することにより、これに取り付けられる電子機器本体2の高さを変えて目線の位置を変えることができる。この場合、門形フレーム20は、櫛状取付部31の歯形溝32を机25に設けた支持ピン28に係合することによって支持固定され、固定ねじを用いていないため、高さ調整作業を簡単且つ迅速に行うことができる。
【0033】
取付ブラケット3,4の材質としては、例えば、ステンレス鋼板やスチール鋼板その他の金属材料が好適である。しかしながら、これら金属材料に限定されるものではなく、例えば、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)やPOM(ポリアセタール)等のエンジニアリングプラスチックを用いることもできる。
【0034】
次に、上述した構成を有する電子機器取付装置1のバー5,6に対する取り付け・取り外し作業について説明する。
2枚の取付ブラケット3,4は、予め電子機器本体2に固定ねじ15によってねじ止めし、電子機器取付装置1を構成しておくようにする。電子機器本体2に対する2枚の取付ブラケット3,4の取付手段は、固定ねじ15による場合に限定されるものではなく、接着剤によって接合してもよく、また、電子機器本体2のケーシングと一体に成形する構成としてもよい。
【0035】
まず、図5Aに示すように、係合溝10の出入口10aを下にして、上側バー5の上方に電子機器取付装置1を臨ませ、この電子機器取付装置1を下げて出入口10aに、上側バー5を寸法の長い長さX側から挿入する。このとき、下側バー6は、上側バー5から離れた下方にあって、何らの影響も与えられていない。次に、図5Bに示すように、電子機器取付装置1を手前に移動し、上側バー5を、係合溝10の幅狭部10bに通過させて回転領域10cまで移動させる。このとき、幅狭部10bの幅Sは、上側バー5の寸法の短い長さY側よりも大きいため、上側バー5の移動が可能である。
【0036】
次に、図5C及び図5Dに示すように、電子機器取付装置1を前側に90度回転し、回転領域10c内において上側バー5を、相対的に90度回転変位させる。このとき、回転領域10cの幅U及び深さVは、上側バー5の寸法の長い長さXよりも共に少し大きく設定されているため、上側バー5の相対的な回転動作を許容することができる。その後、図5Eに示すように、電子機器取付装置1を上側バー5に吊り下げる。このとき、電子機器取付装置1の自重により、係合溝10の回転領域10cの底辺が上側バー5の上面に当接されると共に、取付ブラケット3,4の下端に設けたズレ防止凹部13が下側バー6に係合される。
【0037】
これにより、電子機器取付装置1が、その正面を水平方向前方へ向けた状態で、机25の上の所定の高さ位置に取り付けられる。下側バー6は、電子機器取付装置1を下方から支えるだけでもよい。しかしながら、この実施例のように、ベース部9にズレ防止凹部13を設けて下側バー6に係合させることにより、電子機器取付装置1の前後方向へのズレを防止して、所定位置に確実に固定することができる。
【0038】
このようにして取り付けられた電子機器取付装置1の取り外し作業は、前述した取り付け作業とは逆の動作を行うことによって実行される。即ち、図5Eに示す状態から、電子機器取付装置1を上方に持ち上げて図5Dに示す状態にする。このとき、係合溝10の幅狭部10bの幅Sは、上側バー5の寸法の長い長さXよりも小さいため、回転領域10cの入口側で上側バー5の移動が停止され、電子機器取付装置1が必要以上に持ち上げられることがない。
【0039】
次に、電子機器取付装置1の手前側を持ち上げて、電子機器取付装置1を、図5において反時計方向に90度回転させる。これにより、電子機器取付装置1の姿勢が、図5Dに示す状態から図5Cに示す状態を経て図5Bに示す状態に変化する。そこで、電子機器取付装置1を背面側に水平に移動し、上側バー5を係合溝10の幅狭部10bに通過させる。その結果、図5Bに示す状態から図5Aに示す状態に変化し、その後、上側バー5を係合溝10の出入口10aから引き抜くように電子機器取付装置1を上方へ移動させる。これにより、電子機器取付装置1を、所定の取付位置から簡単且つ迅速に取り外すことができる。
【0040】
図6は、3本のバー21〜23を有する門形フレーム20に対して、4個のモニタ装置(電子機器本体)2を上下2段で2列に配置して取り付けた状態を示すものである。この状態において、2枚の取付ブラケット3,4に設けた段部7が、その機能を有効に果たしている。即ち、上下に取り付けた2台の電子機器取付装置1,1のうち、下側に取り付けた電子機器取付装置1の2枚の取付ブラケット3,4は、そのまま上方へ真直ぐに延在される。そのため、取付ブラケット3,4に段部7がないと、下側の取付ブラケット3,4が上側に取付ブラケット3,4に干渉してしまい、2台の電子機器取付装置1,1の間隔を狭めて取り付けることができなくなる。
【0041】
これに対して、本実施例においては、取付ブラケット3,4の下部に段部7を設け、この段部7の空間内に他の取付ブラケット3,4の上部を収容するようにした。そのため、上下の電子機器取付装置1,1を、上下方向に揃えて配置することができると共に、隣り合う電子機器取付装置1,1の間隔を可及的に狭めて配置することが可能となった。その結果、電子機器取付装置1を複数段で複数列に配置する場合において、多数の電子機器取付装置1を縦横いずれの方向にも揃えて配置できると共に、隣り合う電子機器取付装置1,1間の隙間を可及的に狭くし、画面全体の見栄えを良くすることができる。
【0042】
以上説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種の変形実施が可能である。例えば、前記実施例では、第1の支持部及び第2の支持部の実施例としてバー21〜23を用いた例について説明したが、これらの支持部は、取手或いはハンドルのような構造のものであってもよい。更に、バーの数は3本に限られるものではなく、2本であってもよく、また、4本以上であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…電子機器取付装置、 2…電子機器本体(モニタ装置)、 3,4…取付ブラケット(電子機器用取付ブラケット)、 5…上側バー(第1の支持部)、 6…下側バー(第2の支持部)、 7…段部、 8…固定部、 9…ベース部、 10…係合溝、 10a…出入口、 10b…幅狭部、 10c…回転領域、 13…ズレ防止凹部、 20…門形フレーム、 21,22,23…バー、 25…机、 29…支持柱、 31…櫛状取付部、 32…歯形溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器本体と、
前記電子機器本体に対称に配置されて取り付けられる一対の取付ブラケットと、を備え、
前記一対の取付ブラケットには、当該一対の取付ブラケットを介して前記電子機器本体を吊り下げ支持する第1の支持部が挿脱可能に係合されるクランク状に延在された係合溝と、当該一対の取付ブラケットを介して前記電子機器本体を下方から支える第2の支持部が当接されるベース部と、を設け、
前記第1の支持部は、第1の方向の寸法よりもこれに直交する第2の方向の寸法を大きくした断面形状を有し、
前記係合溝の底に、前記第1の支持部を90度回転させることができる回転領域を設けた
電子機器取付装置。
【請求項2】
前記係合溝は、前記電子機器本体が固定される側と反対側に開口する出入口と、前記出入口の奥に連続されると共に当該出入口と前記電子機器本体が固定される側とを結ぶ出入口方向と交差する交差方向に延在され且つ前記第1の支持部の前記第2の方向への移動は許容するが前記第1の方向への移動を阻止する幅狭部と、前記幅狭部の先端に連続される前記回転領域と、を有する
請求項1記載の電子機器取付装置。
【請求項3】
前記一対の取付ブラケットの前記ベース部に、前記第2の支持部に係合されるズレ防止凹部を設けた
請求項1記載の電子機器取付装置。
【請求項4】
前記一対の取付ブラケットの前記ベース部側に、他の電子機器取付装置の取付ブラケットとの干渉を避けるための段部を設けた
請求項1記載の電子機器取付装置。
【請求項5】
電子機器本体に対称に配置されて取り付けられる構造が同一であって、形状が対称をなす一対の取付ブラケットからなり、
前記一対の取付ブラケットには、当該一対の取付ブラケットを介して前記電子機器本体を吊り下げ支持する第1の支持部が挿脱可能に係合されるクランク状に延在された係合溝と、当該一対の取付ブラケットを介して前記電子機器本体を下方から支える第2の支持部が当接されるベース部と、を設け、
前記第1の支持部は、第1の方向の寸法よりもこれに直交する第2の方向の寸法を大きくした断面形状を有し、
前記係合溝の底に、前記第1の支持部を90度回転させることができる回転領域を設けた
電子機器用取付ブラケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−149453(P2011−149453A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9304(P2010−9304)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】