説明

電子機器用のレール装置、情報端末表示装置

【課題】2つ筐体の平行関係や角度関係を最適に固定しつつ、円滑なスライドを実現する
【解決手段】上側筐体141と下側筐体142を備える電子機器に設けられるレール装置160であって、第1スライダ182、第1案内路172、第2スライダ184、第2案内路174を備えてなり、第1案内路172の第1移動軌跡と、第2案内路174の第2移動軌跡は、軌跡形状は同一で、且つ、相対位置関係がずれている。そして、第1スライダ182と第2スライダ184を一体化して一方移動体とすると共に、第1案内路172と第2案内路174を一体化して他方移動体とするか、又は、第1スライダ182第2案内路174を一体化して一方移動体とすると共に、第2スライダ184と第1案内路172を一体化して他方移動体とすることにより、一方移動体と他方移動体の相対運動を利用して上側筐体141と下側筐体142をスライドさせるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子書籍を閲覧する電子ブックリーダ、ノート型コンピュータ、携帯情報端末(PDA・スマートフォン)、情報端末用ゲーム機等の電子機器で用いられるレール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子ブックリーダ、携帯情報端末(PDA)、ノート型コンピュータ、携帯情報端末(PDA・スマートフォン)、情報端末用ゲーム機等の電子機器は、筐体の小型・薄型化の傾向にあり、携帯性が向上している。その一方で、画面の拡大化や、操作用キーボードの充実が求められており、これらは小型化と相反する要求となっている。これらの相反する要求を同時に実現するために、種々の工夫が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1、2に記載の情報端末用表示装置では、ヒンジを用いて二つの筐体を折畳み自在とし、筐体の小型化が図られている。また、各筐体には、一体となって機能する画面がそれぞれ設けられ、画面の拡大化が図られている。
【0004】
また例えば、特許文献3に記載の携帯情報端末では、スライド機構を利用して二つの筐体を互いに平面方向にスライドさせると共に、更にこのスライド機構を回動させることで、各筐体の上面が同じ高さとなるように変位できるようになっている。
【0005】
特に近年、タッチパネル式の画面を利用して各種操作を行うスマートフォンと呼ばれる携帯端末が普及している。しかし、スマートフォンは画面が比較的小さい為、情報の表示量や操作性に制約がある。そこで、二つの筐体のそれぞれに表示画面を設け、通常は二つの筐体を重ねて携帯して一方の画面のみを利用し、必要に応じて筐体をスライドさせることで二つの画面を一体化して、一つの画面として機能させる技術が提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−113501号公報
【特許文献2】特開平11−167354号公報
【特許文献3】特開2009−60292号公報
【特許文献4】特開2011−102874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3、4に開示されるスライド機構では、一方の筐体に対して他方の筐体が重なっている間は、互いの水平関係を維持できるが、重なり状態が開放された時点でスライド機構を回動させる構造になるため、一方の筐体に対して他方の筐体が傾斜しやすいという問題があった。例えば、双方の筐体に配置される2つの画面を一体化しても、操作中に互いの一方の画面に対して他方の画面が傾斜してしまい、操作性が悪化するという問題があった。
【0008】
また、このような2画面式の携帯端末の場合、2つの画面を一体化する際に、2つの画面の繋ぎ目に隙間が形成されやすいという問題があった。結果、画面を一体化しても、その隙間によって映像が二分される結果となり、視認性が悪いという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、2つの筐体を有する電子機器に対して、新規構造のレール装置を適用することにより、互いの筐体の平行関係や角度関係を最適に固定しつつ、円滑なスライドを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明は、上 上側に位置する上側筐体と、前記上側筐体の下側又は内部に重なった状態で配置される下側筐体を備える電子機器に設けられ、前記上側筐体と前記下側筐体を特定方向に相対的にスライドさせると共に、及び前記特定方向のスライドの一方の端部で、前記上側筐体と前記下側筐体を、前記特定方向に対して垂直となる垂直方向に相対的にスライドさせるレール装置であって、第1スライダと、前記第1スライダを前記特定方向に直線的に案内する第1直線路、及び該第1直線路の一端に連続的に設けられて該第1スライダを前記垂直方向に案内する第1垂直路を有する第1案内路と、第2スライダと、前記第2スライダを前記特定方向に直線的に案内する第2直線路、及び該第2直線路の一端に連続的に設けられて該第2スライダを垂直方向に案内する第2垂直路を有する第2案内路と、を備えてなり、前記第1スライダによる前記第1案内路の第1移動軌跡と、前記第2スライダによる前記第2案内路の第2移動軌跡は、軌跡形状は同一で、且つ、相対位置関係がずれており、前記第1スライダ及び前記第2スライダを一体化して一方移動体とすると共に、前記第1案内路と前記第2案内路を一体化して他方移動体とし、前記一方移動体と前記他方移動体の相対運動を利用して、前記上側筐体と前記下側筐体をスライドさせるか、又は、前記第1スライダ及び前記第2案内路を一体化して一方移動体とすると共に、前記第2スライダと前記第1案内路を一体化して他方移動体とし、前記一方移動体と前記他方移動体の相対運動を利用して、前記上側筐体と前記下側筐体をスライドさせる、ことを特徴とする、電子機器用のレール装置である。
【0011】
上記発明に関連する上記レール装置は、スライド中の前記第1スライダと前記第2スライダを結んだ線を仮想リンクと定義した場合に、記仮想リンクと、前記第1及び第2案内路の案内方向が常に直角とならないように設定されることを特徴とする。
【0012】
上記発明に関連する上記レール装置は、スライド中の前記第1スライダと前記第2スライダを結んだ線を仮想リンクと定義した場合に、前記仮想リンクと、前記第1及び第2案内路の案内方向が直角となる地点において、前記一方移動体と前記他方移動体の回転を規制する規制部材が配置されることを特徴とする。
【0013】
上記発明に関連する上記レール装置は、前記規制部材として、第3スライダと、前記第3スライダを前記特定方向に直線的に案内する第3直線路、及び該第3直線路の一端に連続的に設けられて該第3スライダを前記垂直方向に案内する第3垂直路を有する第3案内路と、を備えてなり、前記第3スライダによる前記第3案内路の第3移動軌跡は、前記第1及び第2移動軌跡と軌跡形状が同一で、且つ、相対位置関係が前記第1及び第2移動軌跡とずれている、ことを特徴とする。
【0014】
上記発明に関連する上記レール装置は、前記第1スライダ及び前記第2スライダを一体化して一方移動体とすると共に、前記第1案内路と前記第2案内路を一体化して他方移動体とする場合において、前記第1案内路は、前記第2案内路に対して、前記第2直線路の一端側にずれると共に前記第2垂直路の突端側にずれていることにより、前記仮想リンクと、前記第1及び第2案内路の案内方向が常に直角とならないように設定されることを特徴とする。
【0015】
上記発明に関連する上記レール装置は、前記第1スライダ及び前記第2案内路を一体化して一方移動体とすると共に、前記第2スライダと前記第1案内路を一体化して他方移動体とする場合において、前記一方移動体では、前記第1スライダが、前記第2案内路における前記第2直線路の一端側を超えた場所、且つ前記第2垂直路の突端を超えた場所に配置され、前記他方移動体では、前記第2スライダが、前記第1案内路における前記第1直線路の一端側を超えた場所、且つ前記第1垂直路の突端を超えた場所に配置されることにより、前記仮想リンクと、前記第1及び第2案内路の案内方向が常に直角とならないように設定されることを特徴とする。
【0016】
上記発明に関連する上記レール装置は、前記第1及び第2案内路は、前記第1及び第2直線路と前記第1及び第2垂直路の連続部分において部分円弧形状の案内軌跡を形成することを特徴とする。
【0017】
上記発明に関連する上記レール装置において、前記第1及び第2案内路における前記第1及び第2垂直路は、前記第1及び第2直線路の一端側で前記垂直方向に案内しながら、前記第1及び第2直線路の他端側に戻る案内軌跡を形成することを特徴とする。
【0018】
上記目的を達成する本発明は、上記発明のレール装置と、前記電子機器を備えて構成され、前記上側筐体の上面に上側画面が配置されると共に、前記下側筐体の上面に下側画面が配置され、前記レール装置によって、前記上側筐体と前記下側筐体を前記特定方向に相対的にスライドさせると共に、前記垂直方向に相対的にスライドさせた際に、前記上側画面と前記下側画面の高さが一致することを特徴とする、情報端末用表示装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、2つ筐体の平行関係や角度関係を最適に固定しつつ、円滑なスライドを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は第1実施形態に係る電子機器及びレール装置を展開した際の外観斜視図であり、(b)は同電子機器及びレール装置を折りたたんだ状態の外観斜視図である。
【図2】電子機器の電気的構成要素を示すブロック図である。
【図3】(a)は同電子機器及びレール装置を展開した際の平面図であり、(b)は同電子機器及びレール装置を折りたたんだ状態の平面図である。
【図4】同電子機器及びレール装置のスライド構造を模式的に示す側面図である。
【図5】(a)及び(b)は同レール装置の一部の要素を欠くことで一対の筐体が相対回転する場合を例示した図であり、(c)は要素が満たされているレール装置によって一対の筐体が相対回転しない場合を例示した図である。
【図6】同第1実施形態のレール装置の変形例を示す側面図である。
【図7】同第1実施形態のレール装置の変形例を示す側面図である。
【図8】同第1実施形態のレール装置の変形例を示す側面図である。
【図9】(a)は第2実施形態に係る電子機器及びレール装置を展開した際の外観斜視図であり、(b)は同電子機器及びレール装置を折りたたんだ状態の外観斜視図である。
【図10】同電子機器及びレール装置のスライド構造を模式的に示す側面図である。
【図11】同第2実施形態のレール装置の変形例を示す側面図である。
【図12】同第2実施形態のレール装置の変形例を示す側面図である。
【図13】同第2実施形態のレール装置の変形例を示す外観斜視図である。
【図14】同第2実施形態のレール装置の変形例を示す側面図である。
【図15】同第2実施形態のレール装置の変形例を示す平面図である。
【図16】同第2実施形態のレール装置の変形例を示す側面図である。
【図17】第3実施形態に係る電子機器及びレール装置を折りたたんだ状態の平面図である。
【図18】第3実施形態に係る電子機器及びレール装置を展開した際の平面図である。
【図19】同電子機器及びレール装置のスライド構造を模式的に示す側面図である。
【図20】本実施形態群のレール装置の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る電子機器用レール装置について詳細に説明する。なお、本実施形態では、電子機器として情報端末用表示装置を例示し、この情報端末装置に対してレール装置を適用する場合を示す。
【0022】
図1〜図3を用いて、第1実施形態に係る情報端末用表示装置110のレール装置160構成について説明する。
【0023】
図1(a)および(b)に示すように、情報端末用表示装置110は、板状の上側筐体141と、上側筐体141の下側に重なった状態で配置される板状の下側筐体142を備える。レール装置160は、上側筐体141と下側筐体142の両側面にそれぞれ配置され、上側筐体141と下側筐体142を面方向に相対的にスライドさせると共に、面方向のスライドの一方の端部で、上側筐体141と下側筐体142を面垂直方向に相対的にスライドさせるようになっている。
【0024】
上側筐体141は、その表面(図面における上面)に設けられた画面143と、自身の一方(図面における右奥側)の側辺に設けられた端子113と、自身の他方(図面における左手前側)において背面に突出するように設けられ、重ね合わされた際に、下側筐体142の画面144の端部および端子114を覆うことになるカバー117を備える。なお、カバー117における下側筐体142と当接する面には、第2端子113Bが設けられている。
【0025】
一方、下側筐体142は、その表面に設けられた画面144と、自身の他方(図面における左手前側)の側面に設けられた端子114と、自身の一方(図面における右奥側)において上面側に突出するように設けられ、重ね合わされた際に上側筐体141の画面141の端部および端子113を覆うことになるカバー115を備える。なお、カバー115における上側筐体141と当接する面には、第2端子114Bが設けられている。
【0026】
上側筐体141の画面143は、筐体の一方(図面における右奥側)の端部のぎりぎりまで広がっている。同様に、下側筐体142の画面144は、筐体の他方(図面における左手前側)の端部のぎりぎりまで広がっている。従って、図1(a)のように、上側筐体141の一方の端部と、下側筐体142の他方の端部を付き合わせた時は、2つの画面143、144が殆どつながった状態となる。結果として、あたかも1つの画面のように取り扱うことを可能にする。
【0027】
一方、図1(b)に示されるように、上側及び下側筐体141、142を面垂直方向に重なり合わせた状態では、上側筐体141の一方(図面における右奥側)の端部が、下側筐体142から上方に突出するカバー115の側面に結合する。同時に、下側状態142の他方(図面における左手前側)の端部が、上側筐体141から下方に突出するカバー117の側面に結合する。これによって、各筐体141、142の端縁のぎりぎりに配置される2つの画面143、144を、これらのカバー115、117で保護するようになっている。
【0028】
画面143、144は、液晶組成物を利用した液晶ディスプレイであり、上側及び下側筐体141、142の一方の側辺から他方の側辺にわたり配置されている。なお、ここでは液晶ディスプレイを例示しているが、有機EL組成物を採用した有機ELディスプレイや、プラズマディスプレイなど、各種構成を適用できる。
【0029】
端子113、113A、114、114Aは、通信インターフェースや電源供給用の接点として用いられる。即ち、上側及び下側筐体141、142を電気的に互いに接合して、情報や電源の授受を行う。なお、ここでは端子で電気的に接合する場合を例示しているが、無線通信によって情報伝達できるようにしても良い。
【0030】
図2に示すように、筐体141,142内には、CPU30と、ハードディスクドライブ31と、RAM32と、検出回路33と、表示制御回路34と、データバス35と、を内蔵している。
【0031】
CPU30は、画面143、144のタッチ操作によって入力される信号等に従って、情報端末用表示装置10の全体を統括的に制御する。
【0032】
ハードディスクドライブ31には、情報端末用表示装置110を動作させる各種プログラムやデータが記憶されている。
【0033】
RAM32は、CPU30が処理を実行する作業用メモリである。RAM32において、ハードディスクドライブ31から読みだされたプログラムが逐次処理される。
【0034】
検出回路33は、端子113、113A、114、114Aが接合されているときに信号を遣り取りすることで、上側及び下側筐体の状態を検出する。なお、無線通信の場合は、互いの通信が確立されたか否かを検出すればよい。
【0035】
表示制御回路34は、画面143、144の表示状態を制御する。表示制御回路34は、検出回路33で上下の筐体141、142が連結されていることが検出されているときに、2つの画面143、144が一体となって機能するように制御する。すなわち、この場合、表示制御回路34は、2つの画面143、144の全体を一つの画面とする。
【0036】
データバス35は、CPU30等の各構成要素を電気的に接続する。
【0037】
次に、レール装置160の詳細構造について説明する。
【0038】
レール装置160は、図3に示されるように、一対のレールブロック160A、160Bを備えている。レールブロック160A、160Bは、それぞれ、内側移動体162と外側移動体164を備えており、互いに対称構造となる。
【0039】
図4(a)〜(c)には、レール装置160の一方のレールブロック160Aのみが模式的に示されている。ここでは相対移動関係を説明するための便宜上、内側移動体162は点線で図示し、外側移動体164は実線で図示する。
【0040】
外側移動体164には第1案内路172及び第2案内路174が形成されており、内側移動体162には第3案内路176が形成される。また、内側移動体162には、外側移動体164の第1及び第2案内路172、174に案内される第1及び第2スライダ182、184が配置される。また外側移動体164には、内側移動体162の第3案内路176に案内される第3スライダ186が配置される。
【0041】
第1案内路172は、第1直線路172Aと第1垂直路172Bを有して構成される。第1直線路172Aは、第1スライダ182を、各筐体141、142の面方向に沿って直線的に案内する溝である。第1垂直路172Bは、第1直線路172Aの一端に連続的に設けられており、第1スライダ182を各筐体141、142の面垂直方向に案内する溝である。本実施形態では、第1直線路172Aに対して第1垂直路172Bが下側に屈曲しており、第1案内路172の全体ではL字形状の移動軌跡となる。
【0042】
第2案内路174は、第2直線路174Aと第2垂直路174Bを有して構成される。第2直線路174Aは、第2スライダ184を、各筐体141、142の面方向に沿って直線的に案内する溝である。第2垂直路174Bは、第2直線路174Aの一端に連続的に設けられており、第2スライダ184を各筐体141、142の面垂直方向に案内する溝である。本実施形態では、第2直線路173Aに対して第2垂直路174Bが下側に屈曲しており、第1案内路174の全体ではL字形状の移動軌跡となる。
【0043】
第3案内路176は、第3直線路176Aと第3垂直路176Bを有して構成される。第3直線路176Aは、第3スライダ186を、各筐体141、142の面方向に沿って直線的に案内する溝である。第3垂直路176Bは、第3直線路176Aの一端に連続的に設けられており、第3スライダ186を各筐体141、142の面垂直方向に案内する溝である。本実施形態では、第3直線路176Aに対して第3垂直路176Bが上側に屈曲しており、第3案内路176の全体ではL字形状の移動軌跡となる。
【0044】
外側移動体164に形成される第1及び第2案内路172、174は、第1スライダ182を案内する第1移動軌跡と、第2スライダ184を案内する第2移動軌跡が同じであって、かつ、相対位置関係がずれるように配置される。この相対位置関係のずれの種類として、「180度の点対称」又は「平行移動」のいずれか又はその組合せが望ましいが、ここでは平行移動(スライド)関係となっている。具体的に第1案内路172は、第2案内路174の第2直線路174Aに沿って第2垂直路174B側に進んだ位置(図4における左側)、かつ、第2垂直路174Bの基端側(突端側に対して反対側、即ち図4における上方側)に進んだ位置に平行移動している。
【0045】
更に内側移動体162に形成される第3案内路176による第3スライダ186の移動軌跡は、第1及び第2案内路172、174による第1及び第2移動軌跡と同じであって、かつ、相対位置関係が第1及び第2移動軌跡からずれている。この相対位置関係のずれには、第1及び第2移動軌跡に対して180度の点対称であって、かつ平行移動(スライドした)関係となっている。特に、第3スライダ186と、第1及び第2スライダ182、184が、移動中において同時に同じ場所に存在することが無いように設定することが好ましい。
【0046】
このように、第1及び第2スライダ182、184を内側移動体162に固定して一体化すると共に、第1及び第2案内路172、174を外側移動体164に一体化することで、内側移動体162と外側移動体164を相対的にスライドさせることができる。また、少なくとも2つの第1及び第2案内路172、174と、少なくとも2つの第1及び第2スライダ182、184によって、外側移動体164と内側移動体162が案内されるので、互いの相対回転が抑制された状態でスライドできるようになっている。
【0047】
ここで第3案内路176と第3スライダ186の役割について説明する。図5(a)に拡大して示されるように、仮に第3案内路176と第3スライダ186が存在しない場合、第1スライダ182と第2スライダ184の結んだ線分L1(この線分を「第1仮想リンクL1」と定義する)と、第1及び第2案内路172、176の案内方向(案内軌跡)が直角となるタイミングが存在する。このタイミングでは、第1仮想リンクL1の回転又は揺動が許容されてしまう。結果、この回転又は揺動動作をきっかけにして、一方のスライダが逆走する場合がある。例えば図5(b)には、第1スライダ182が第1案内路172を逆走することによって、内側移動体162と外側移動体164が相対回転した状態を示す。
【0048】
そこで、図5(c)に示されるように、位置関係がずれている第3案内路176が存在すると、上記(a)で説明したタイミングにおいて、第1スライダ182と第3スライダ186を結んだ第2仮想リンクL2と、第2スライダ184と第3スライダ186を結んだ第3仮想リンクL3を同時に定義できる。更に、これらの第1〜第3仮想リンクL1〜L3が、互いに重なり合わないようになっている。結果、第1仮想リンクL1が回転しようとしても、第1仮想リンクL1の回転半径や回転中心が、第2及び第3仮想リンクL2のそれと異なるので、第1仮想リンクL1が単独で回転することができない。同様に、第2仮想リンクL2が回転しようとしても、第1及び第3仮想リンクL1、L3によってその回転が規制される。第3リンクについても同様である。即ち、本実施形態では、第3案内路176と第3スライダ186が、第1仮想リンクL1と第1及び第2案内路172、174の案内方向が直角となる地点において、相対回転を規制する規制部材として機能する。
【0049】
次に、図4(d)〜(f)に戻って、レールブロック160Aによって、上側筐体141と下側筐体142がスライドする動作を説明する。ここでは便宜上、上側筐体141と下側筐体142にハッチングを挿入して、相対位置関係を図示する。
【0050】
上側筐体141は、内側移動体162と一体化されている。また、下側筐体142は、連結部材164Aを介して外側移動体164と一体化されている。従って、レール装置160における内側移動体162と外側移動体164の相対運動は、そのまま上側筐体141と下側筐体142の相対運動となる。例えば図4(d)に示されるように、各スライダ182、184、186が、各直線路172A、174A、176Aの突端(垂直路と連続する側に対して反対側の端部)に位置する場合は、上側筐体141と下側筐体142が重なり合った状態となる。図4(e)に示されるように、各スライダ182、184、186を、各直線路172A、174A、176Aの屈曲部分(垂直路と連続する部分)まで移動させると、上側筐体141と下側筐体142が面方向に相対スライドし、下側筐体142の上面に形成される画面144が露出する。更に、図4(f)に示されるように、各スライダ182、184、186を、各垂直路172B、174B、176Bの突端(直線路と連続する側に対して反対側の端部)まで移動させると、上側筐体141と下側筐体142が面垂直方向に相対スライドして互いに近づき合い、上側筐体141の画面143と下側筐体142の画面144が同じ高さとなる。このように、本レール装置160を用いることで、情報端末用表示装置110の2つの筐体141、142が、互いの平行の状態を維持し、なおかつ相対回転することなく、L字形状の移動軌跡となるスライド運動を実現できる。
【0051】
次に、第1実施形態のレール装置160の変形例について紹介する。なお、重複説明を避ける為に、ここではL字形状の移動軌跡を実現するレール装置のみを例示し、情報端末用表示装置110等の電子機器については図示及び説明を省略する。またここでは、一対のレールブロックの一方のレールブロック160Aを模式的に示する。説明の便宜上、内側移動体162は点線で図示し、外側移動体164は実線で図示する。
【0052】
図6に示される変形例では、外側移動体164に、第1案内路172、第2案内路174及び第3案内路176が形成される。また、内側移動体162には、外側移動体164の第1〜第3案内路172、174、176に案内される第1〜第3スライダ182、184、186が配置される。
【0053】
第1案内路172は、第1直線路172Aと第1垂直路172Bを有して構成される。第2案内路174は、第2直線路174Aと第2垂直路174Bを有して構成される。第3案内路176は、第3直線路176Aと第3垂直路176Bを有して構成される。この構成例では、第1〜第3直線路172A、174A、176Aが、1つの溝171を共有しており、省スペース化が達成されている。従って、第1〜第3垂直路172B、174B、176Bは、溝171から分岐するように配置されることで、結果として、第1〜第3直線路172A、174A、176Aから屈曲する移動軌跡となる。
【0054】
更に、第1〜第3案内路172、174、176による第1〜第3移動軌跡は、相対位置が互いにずれており、ここでは平行移動(スライド)関係となっている。既に述べたように、第1〜第3直線路172A、174A、176Aは1つの溝171を共有しているので、この溝171から第1〜第3垂直路172B、174B、176Bの分岐位置をずらすことで、互いの移動軌跡がずれている。
【0055】
このようにすると、図6(b)に示される状態において、第1仮想リンクL1が回転しようとしても、第2及び第3仮想リンクL2、L3の回転半径や回転中心が異なるので、第1仮想リンクL1の回転が規制される。同様に、第2仮想リンクL2が回転しようとしても、第1及び第3仮想リンクL1、L3によってその回転が規制される。第3リンクについても同様である。即ち、本実施形態においても、第3案内路176と第3スライダ186が、第1仮想リンクL1と第1及び第2案内路172、174の案内方向が直角となる地点において、相対回転を規制する規制部材として機能する。特に望ましくは、第1仮想リンクL1と第2仮想リンクL2の長さが等しくならないように、第1〜第3垂直路172B、174B、176Bの分岐位置をずらすことが好ましい。これにより相対回転を一層確実に抑制できる。
【0056】
結果、図6(c)に示されるように、内側移動体162と外側移動体164が、相対回転をすることなく、第1〜第3移動軌跡に沿ってスライドすることが可能となる。
【0057】
なお、以上の図6の例では、内側移動体162に案内路を形成しない場合を例示したが、図7に示される変形例のように、内側移動体162側にも、第1〜第3案内路172、174、176と点対称で且つ平行移動させた位置関係となる第4〜第6案内路P1、P2、P3を配置し、外側移動体164側に、これらの第4〜第6案内路P1、P2、P3に案内される第4〜第6スライダQ1、Q2、Q3を配置することも好ましい。このようにすると、より一層の安定化を図ることができる。
【0058】
次に図8に示される変形例を説明する。ここでは、外側移動体164に、第1案内路172が形成される。また、内側移動体162には、第2案内路174が形成される。また、外側移動体164には、内側移動体162の第2案内路174によって案内される第2スライダ184が配置される。内側移動体162には、外側移動体164の第1案内路172によって案内される第1スライダ182が配置される。
【0059】
第1案内路172は、第1直線路172Aと第1垂直路172Bを有して構成され、L字形状の第1移動軌跡となる。第2案内路174は、第2直線路174Aと第2垂直路174Bを有して構成され、L字形状の第2移動軌跡となる。
【0060】
内側移動体162に形成される第2案内路174による第2スライダ184の第2移動軌跡は、第1案内路172による第1スライダ182の第1移動軌跡と形状が同じとなる。更に、第1移動軌跡と第2移動軌跡の相対位置は、点対称、かつ、平行移動(スライドした)関係となっている。
【0061】
特に本変形例では、内側移動体162の第1スライダ182の位置が、平面方向(図の左右方向)に関して、第2直線路174Aにおける第2垂直路174Bとの連続部分Xを超えた場所、且つ、面垂直方向(図の上下方向)に関して、第2垂直路174Bの突端Yを超えた場所に設定される。また、外側移動体164の第2スライダ184の位置が、平面方向に関して、第1直線路172Aにおける第1垂直路172Bとの連続部分Xを超えた場所、且つ、面垂直方向に関して、第1垂直路172Bの突端Yを超えた場所に設定される。このようにすると、図8(b)〜図8(d)の移動軌跡のように、仮想リンクL1と、第1及び第2案内路172、174の案内方向が常に直角とならない状態を維持できる。結果、仮想リンクL1が回転しようとしても、第1及び第2案内路172、174の案内方向と干渉するので、内側移動体164と外側移動体164が相対回転することを抑制できる。
【0062】
次に、図9を参照して、第2実施形態に係る情報端末用表示装置210のレール装置260構成について説明する。なおここでは、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0063】
図9(a)および図9(b)に示すように、情報端末用表示装置210は、上側筐体241と下側筐体242を備える。レール装置260は、上側筐体241と下側筐体242の両側面にそれぞれ配置される。上側筐体241の画面243は、筐体の外周縁ぎりぎりまで広がっている。同様に、下側筐体242の画面244は、筐体の外周縁ぎりぎりまで広がっている。近年、筐体の剛性が高まってきているので、このように画面243、244を周縁ぎりぎりに配置しても、画面243、244が損傷することは殆ど無くなってきている。従って、上側筐体241と下側筐体242には、第1実施形態で示したように、上面又は裏面側に突出形成されるカバーを備えていない。
【0064】
図9(a)のように、上側筐体241の一方の端部と、下側筐体242の他方の端部を付き合わせた時は、2つの画面243、24が殆どつながった状態となる。結果として、あたかも1つの画面のように取り扱うことが可能になる。一方、図9(b)に示されるように、上側及び下側筐体241、242を面垂直方向に重なり合わせることもできる。なお、上側及び下側筐体241、242の間の電源の供給や信号通信は、無線で行っても良く、又は、別途フィルム状のケーブルを配置しても良い。特に、後述するスライダに導電性を持たせることで、スライダを介して電源の供給や通信を行うことも好ましい。
【0065】
レール装置260は、一対のレールブロック260A、260Bを備えている。レールブロック260A、260Bは、それぞれ、中央移動体263を備えている。
【0066】
次に、レール装置260の詳細構造について説明する。
【0067】
図10(a)〜(c)には、レールブロック260Aのみが模式的に示されている。ここでは相対移動関係を説明するための便宜上、中央移動体263は実線で図示し、上側筐体241及び下側筐体242を点線で図示する。
【0068】
中央移動体263には、第1案内路272、第2案内路274及び第3案内路276が形成される。また、上側筐体241には、これらの第1〜第3案内路272、274、276に案内される第1〜第3スライダ282、284、286が直接的に配置される。従って、本実施形態では、上側筐体241が、一方の中央移動体263と相対移動する他方の移動体の役目を兼ねている。
【0069】
第1案内路272は、第1直線路272Aと第1垂直路272Bを有して構成される。第2案内路274は、第2直線路274Aと第2垂直路274Bを有して構成される。第3案内路276は、第3直線路276Aと第3垂直路276Bを有して構成される。この構成例では、第1〜第3直線路272A、274A、276Aが、1つの溝271を共有しており、省スペース化が達成される。従って、第1〜第3垂直路272B、274B、276Bは、溝271から分岐するように配置される。結果、第1〜第3直線路272A、274A、276Aから屈曲する移動軌跡となる。特にここでは、第1〜第3垂直路272B、274B、276Bは、第1〜第3直線路272A、274A、276Aの連続部分で面垂直方向に案内しながら、この第1〜第3直線路272A、274A、276A側に戻るような部分円弧形状の案内軌跡を描く。
【0070】
更に中央移動体263には、直線状の拡張案内路279が形成される。この拡張案内路279は、第1〜第3案内路272、274、276と長手方向に重複する位置に配置される。一方、下側筐体242には、この拡張案内路279に案内される2個の拡張スライダ289が配置される。2個の拡張スライダ289が、拡張案内路279に沿って案内されることで、下側筐体242と中央移動体263が相対回転することなく平行移動する。この拡張スライダ289と拡張案内路279は、第1〜第3直線路272A、274A、276Aの直線方向の移動ストロークを延長する役割となる。
【0071】
この情報端末用表示装置210のレール装置260によれば、まず図10(a)に示されるように、移動体を兼ねる上側筐体241の第1〜第3スライダ282、284、286が、第1〜第3直線路272A、274A、276Aの端部(第1〜第3垂直路272B、274B、276Bと連続する部分と反対側の端部)まで移動する。また、下側筐体242の拡張スライダ289が、拡張案内路279における第1〜第3垂直路272B、274B、276B側の端部まで移動する。結果、上側筐体241と下側筐体242が重なり合ってコンパクトに折りたたまれる。
【0072】
次に、図10(b)に示されるように、上側筐体241の第1〜第3スライダ282、284、286が、第1〜第3直線路272A、274A、276Aと第1〜第3垂直路272B、274B、276Bと連続点まで移動する。また、下側筐体242の拡張スライダ289が、拡張案内路279における第1〜第3直線路272A、274A、276Aの端部まで移動する。結果、上側筐体241と下側筐体242が面方向にスライドするので、下側筐体242の上面が露出される。この際、上側筐体241の内側端縁と、下側筐体242の内側端縁の間には、隙間Sが確保される。最後に、図10(c)に示されるように、上側筐体241の第1〜第3スライダ282、284、286が、第1〜第3垂直路272B、274B、276Bに沿って移動する。この移動軌跡は、面垂直方向に移動しつつ、第1〜第3直線路272A、274A、276A側に戻るような案内軌跡を形成する。即ち、上側筐体241の上面と下側筐体242の上面の高さが一致すると同時に、上側筐体241の内側端縁と下側筐体242の内側端縁の隙間Sがゼロになって当接する。従って、スライド動作中に、上側筐体241と下側筐体242の干渉を確実に回避することが可能となる。
【0073】
なお、この第2実施形態では、第1〜第3垂直路272B、274B、276Bは、第1〜第3直線路272A、274A、276Aの一端側で面垂直方向に折れ曲がり、更に、この第1〜第3直線路272A、274A、276A側に戻るような部分円弧形状の案内軌跡を描く場合を例示したが、これに限定されない。
【0074】
例えば図11に示される第2実施形態の変形例のように、第1〜第3垂直路272B、274B、276Bと第1〜第3直線路272A、274A、276Aの連続部分が90度以上で折れ曲がるのではなく、この連続部分が90度未満の部分円弧形状の案内軌跡を描くことが好ましい。このようにすると、スライド操作が滑らかになり、操作性が向上する。しかし、このように滑らかに曲げる場合は、上側筐体241と下側筐体242が干渉するので、上側筐体241の端部に、縁側が薄肉で内側が次第に肉厚となるような傾斜面241Aを形成することが好ましい。この結果、図11(b)〜(c)で示すように、第1〜第3スライダ282、284、286が、第1〜第3直線路272A、274A、276Aと第1〜第3垂直路272B、274B、276Bの連続部分を移動する際に、上側筐体241と下側筐体242の干渉を避けつつも、最終的には上側筐体241と下側筐体242の端縁を当接させることができる。結果、互いの画面を接近させることが可能となる。
【0075】
なお、この図11に示される変形例では、上側筐体241に傾斜面241Aを形成することで剛性が低下する可能性がある。
【0076】
これをを補うため、図12に示される変形例のように、下側筐体242の上面にカバー215が突設しておき。上側筐体241と下側筐体242が重なり合った状態で、上側筐体241に傾斜面241Aをカバー215が覆うような構造を採用することもできる。また、上側筐体241の下面にカバー217を下方に突設しておき、上側筐体241と下側筐体242が重なり合った状態で、下側筐体242に端面をカバー217が覆うような構造を採用することもできる。
【0077】
また、図13及び図14に示される変形例のように、中央移動体263には、第1〜第3案内路272、274、276に加えて、この第1〜第3案内路272、274、276と点対称で且つ平行移動させた位置関係となる第4〜第6案内路P1、P2、P3を形成することも好ましい。この場合、下側筐体242には、第4〜第6案内路P1、P2、P3に案内される第4〜第6スライダQ1、Q2、Q3を配置する。
【0078】
このようにすると、下側筐体242も移動体を兼ねることができ、下側筐体242も中央移動体263に対して面垂直方向に移動することができる。結果、上側筐体241及び下側筐体242の面垂直方向の綜合ストロークを増大させることができるので、その分だけ、中央移動体263をコンパクトに構成することが可能となる。従って、スマートフォン等の小さい情報表示端末に好適である。
【0079】
更に、図15及び図16に示される変形例のように、上側筐体241と下側筐体242のそれぞれに対して、格納式保護カバー241A、242Aを備えるようにすることが好ましい。この格納式保護カバー241A、242Aは、上側筐体241と下側筐体242の収容空間241C、242Cに対して、重なった状態で収容される。この格納式保護カバー241A、242Aは、上側筐体241と下側筐体242の各画面243、244の端縁を保護するために用いられる。格納式保護カバー241A、242Aと、上側筐体241と下側筐体242の間にはレール装置860が設置される。
【0080】
レール装置860は、収容空間241C、242C側に形成される第1案内路872、第2案内路874と、格納式保護カバー241A、242A側に形成されて第1、第2案内路872、874に案内される第1、第2スライダ882、884を備える。従って、本実施形態では、格納式保護カバー241Aが上側筐体241に対して相対移動し、格納式保護カバー242Aが下側筐体242に対して相対移動する。なお、格納式保護カバー241A、242Aには、指先を引っかけて格納式保護カバー241A、242Aを引き出すための段部241B、242Bを有している。また、格納式保護カバー241A、242Aと収容空間241C、242Cの間には、弾性部材の一種である引っ張りバネ290が設置され、格納式保護カバー241A、242Aを、収容空間241C、242C内に引き込む。
【0081】
第1案内路872及び第2案内路874は、水平方向に延びる直線路の端部において、コ字状に反転する反転路を有して構成される。特に本実施形態では、第1案内路872は、第2案内路874と比較して、水平方向では反転路側にずれると共に、垂直方向では、反転方向側にずれている。この状態を別の方法で表現すると、格納式保護カバー241A、242Aを収容空間241C、242Cから引き出す方向に関して、第1スライダ882は、第2スライダ884に対して常に進んだ位置を維持する。また、格納式保護カバー241A、242Aを収容空間241C、242Cに収容する方向に関して、第1スライダ882は、第2スライダ884に対して常に遅れた位置を維持する。このようにすると、格納式保護カバー241A、242Aと収容空間241C、242Cの相対回転が抑制される。
【0082】
この変形例では、図15(a)及び図16(a)に示されるように、上側筐体241と下側筐体242がレール装置260によって重ねられた状態では、レール装置860によって格納式保護カバー241A、242Aを引き出すことによって、上側筐体241と下側筐体242の端縁を保護する。また、図15(b)(c)及び図16(b)(c)に示されるように、上側筐体241と下側筐体242をレール装置260によってスライドさせて、両者を広げる場合には、レール装置860によって格納式保護カバー241A、242Aを上側筐体241と下側筐体242内に収容して、両者の画面243、244を接近させることができる。このように、本発明に係るレール装置は、電子機器の様々な部位・用途で用いることが出来る。
【0083】
次に、図17以降を参照して、第3実施形態に係る情報端末用表示装置310のレール装置360構成について説明する。なおここでは、第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0084】
図17に示すように、情報端末用表示装置310は、上側筐体341と下側筐体342を備える。レール装置360は、上側筐体341と下側筐体342の両側面にそれぞれ配置される。上側筐体341の画面343は、筐体の外周縁ぎりぎりまで広がっている。同様に、下側筐体342の画面344は、筐体の外周縁ぎりぎりまで広がっている。
【0085】
図18に示されるように、上側筐体341の一方の端部と、下側筐体342の他方の端部を付き合わせた時は、2つの画面343、34が殆どつながった状態となる。結果として、あたかも1つの画面のように取り扱うことが可能になる。一方、図17に示されるように、上側及び下側筐体341、342を面垂直方向に重なり合わせることもできる。このレール装置360は、一対のレールブロック360A、360Bを備えている。レールブロック360A、360Bは、それぞれ、中央移動体363を備えている。
【0086】
次に、レール装置360の詳細構造について説明する。
【0087】
図19(a)〜(c)には、図17の矢視W−Wに沿った断面図として、レールブロック360Aのみが模式的に示されている。ここでは相対移動関係を説明するための便宜上、中央移動体363及び上側移動体362は実線で図示し、上側筐体341及び下側筐体342は点線で図示する。
【0088】
中央移動体363には、第1案内路372、第2案内路374が形成される。また、上側筐体341には上側移動体362が設けられている。この上側移動体362には、第1、第2案内路372、374に案内される第1、第2スライダ382、384が配置される。従って、本実施形態では、上側筐体341が、上側移動体362を介して中央移動体363と相対移動する。
【0089】
第1案内路372は、第1直線路372Aと第1垂直路372Bを有して構成される。第2案内路374は、第2直線路374Aと第2垂直路374Bを有して構成される。
【0090】
特に本実施形態では、第1案内路372は、第2案内路374と比較して、平面方向では第2垂直路374B側にずれると共に、面垂直方向では第2垂直路374Bの突端側にずれている。この状態を別の方法で表現すると、第1スライダ382は、第2スライダ384に対して、移動軌跡の正案内方向V1(ベクトルV1)に対して常に進んだ位置を維持するか、又は、逆案内方向V2(ベクトルV2)に対して常に遅れた位置を維持する。このようにすると、第1スライダ382と第2スライダ384を結んだ仮想リンクL1と、第1及び第2案内路372、374の案内軌跡が常に直角とならない関係を維持できるので、中間移動体363と上側移動体362の相対回転が抑制される。なお、参考だが、既に図5(a)(b)で示した第1、第2スライダ182、184の場合は、移動軌跡の正案内方向V1(ベクトルV1)に対して、屈曲軌跡を描いた瞬間に第1スライダ182と第2スライダ184の前後関係が逆転する。
【0091】
ところで、中央移動体363をコンパクトにするために、第1案内路372と第2案内路374と接近させようとすると、この図19に示されるように、第1垂直路372Bと第2垂直路374Bの案内軌跡が交差することから、同一面内に第1及び第2案内路372、374を形成することが困難となる。そこで本実施形態では、図17及び図18に示されるように、中間移動体363を2列構造とし、一方の列に第1案内路372を形成し、他方の列に第2案内路374を形成する。なお、これらの2列は、底面側の連結プレート366によって一体化されている。そして、第1及び第2スライダ382、384を有する上側移動体362は、中間移動体363の上記2列の中間に挿入される。
【0092】
図19に戻って、中央移動体363には、直線状の拡張案内路379が形成される。一方、下側筐体342には、この拡張案内路379に案内される2個の拡張スライダ389が配置される。この拡張スライダ389と拡張案内路379は、第1、第2直線路372A、374Aの直線方向の移動ストロークを延長させる。
【0093】
以上、第1〜第3実施形態のレール装置によれば、第1スライダによる第1案内路の第1移動軌跡と、第2スライダによる第2案内路の第2移動軌跡は、軌跡形状は同一で、且つ、相対位置関係がずれているので、第1スライダ及び第2スライダをそれぞれスライドさせることで、上側筐体と下側筐体の平行を維持したまま、スライドさせることが可能となっている。
【0094】
特に図8で示したレール装置や、第3実施形態のレール装置は、スライド中の第1スライダと第2スライダを結んだ仮想リンク仮想リンクと、第1及び第2案内路の案内方向が常に直角とならないように設定されるので、一方の移動体と他方の移動体の相対回転を抑制し、安定したスライドを実現することができる。また、他のレール装置においても、この仮想リンクと第1及び第2案内路の案内方向が直角となる地点において、一方移動体と他方移動体の回転を規制する規制部材が配置されるので、同様に相対回転を抑制することができる。なお、上記実施形態では、第1、第2案内路と移動軌跡が異なる第3案内路を設け、この第3案内路と第3スライダとの係合によって相対回転を規制する場合を例示した。このようにすると、円滑なスライドを維持したまま、相対回転を防止することができる。一方、本発明の規制部材はこれに限定されず、回転を規制するように部分的に突起を設けたり、第1、第2スライダや第1、第2案内路の形状を、回転が規制される形状に変更しても良い。例えば、図20(a)(b)に示されるように、第1、第2スライダ182、184を方形にし、第1、第2案内路172、174の屈曲部分の案内壁を直角にすれば、これら自身が規制部材となって、相対回転を抑制することができる。また例えば図20(c)(d)に示されるように、第1、第2スライダ182、184を平行四辺形し、第1、第2案内路172、174の屈曲部分も、この平行四辺形に合った案内壁にすれば、垂直路側を傾斜させることができ、円滑なスライドを実現することができる。
【0095】
なお、本実施形態では、レール装置が一対のレールブロックを備える場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、一方のレールブロックのみでも良い。また、本実施形態では、一方のレールブロックに、第1〜第3案内路、第1〜第3スライダ等をまとめて配置する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、一方のレールブロックに第1案内路を配置し、他方のレールブロックに第2案内路を配置することで、レール装置全体で、本実施形態と同様な機能を発揮するようにしても良い。
【符号の説明】
【0096】
110,210,310 情報端末用表示装置
141,241,341 上側筐体
142,242,342 下側筐体
143,144,243,244,343,344 画面
160,260,360,860 レール装置
162 内側移動体
164 外側移動体
263,363 中央移動体
362 上側移動体
172,272,372 第1案内路
174,274,374 第2案内路
176,276,376 第3案内路
182,282,382 第1スライダ
184,284,384 第2スライダ
186,286,386 第3スライダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側に位置する上側筐体と、前記上側筐体の下側又は内部に重なった状態で配置される下側筐体を備える電子機器に設けられ、前記上側筐体と前記下側筐体を特定方向に相対的にスライドさせると共に、及び前記特定方向のスライドの一方の端部で、前記上側筐体と前記下側筐体を、前記特定方向に対して垂直となる垂直方向に相対的にスライドさせるレール装置であって、
第1スライダと、
前記第1スライダを前記特定方向に直線的に案内する第1直線路、及び該第1直線路の一端に連続的に設けられて該第1スライダを前記垂直方向に案内する第1垂直路を有する第1案内路と、
第2スライダと、
前記第2スライダを前記特定方向に直線的に案内する第2直線路、及び該第2直線路の一端に連続的に設けられて該第2スライダを垂直方向に案内する第2垂直路を有する第2案内路と、を備えてなり、
前記第1スライダによる前記第1案内路の第1移動軌跡と、前記第2スライダによる前記第2案内路の第2移動軌跡は、軌跡形状は同一で、且つ、相対位置関係がずれており、
前記第1スライダ及び前記第2スライダを一体化して一方移動体とすると共に、前記第1案内路と前記第2案内路を一体化して他方移動体とし、前記一方移動体と前記他方移動体の相対運動を利用して、前記上側筐体と前記下側筐体をスライドさせるか、又は、
前記第1スライダ及び前記第2案内路を一体化して一方移動体とすると共に、前記第2スライダと前記第1案内路を一体化して他方移動体とし、前記一方移動体と前記他方移動体の相対運動を利用して、前記上側筐体と前記下側筐体をスライドさせる、
ことを特徴とする、電子機器用のレール装置。
【請求項2】
スライド中の前記第1スライダと前記第2スライダを結んだ線を仮想リンクと定義した場合に、
前記仮想リンクと、前記第1及び第2案内路の案内方向が常に直角とならないように設定される
ことを特徴とする、請求項1に記載の電子機器用のレール装置。
【請求項3】
スライド中の前記第1スライダと前記第2スライダを結んだ線を仮想リンクと定義した場合に、
前記仮想リンクと、前記第1及び第2案内路の案内方向が直角となる地点において、前記一方移動体と前記他方移動体の回転を規制する規制部材が配置される
ことを特徴とする、請求項1に記載の電子機器用のレール装置。
【請求項4】
前記規制部材として、
第3スライダと、
前記第3スライダを前記特定方向に直線的に案内する第3直線路、及び該第3直線路の一端に連続的に設けられて該第3スライダを前記垂直方向に案内する第3垂直路を有する第3案内路と、を備えてなり、
前記第3スライダによる前記第3案内路の第3移動軌跡は、前記第1及び第2移動軌跡と軌跡形状が同一で、且つ、相対位置関係が前記第1及び第2移動軌跡とずれている、
ことを特徴とする、請求項3に記載の電子機器用のレール装置。
【請求項5】
前記第1スライダ及び前記第2スライダを一体化して一方移動体とすると共に、前記第1案内路と前記第2案内路を一体化して他方移動体とする場合において、
前記第1案内路は、前記第2案内路に対して、前記第2直線路の一端側にずれると共に前記第2垂直路の突端側にずれていることにより、
前記仮想リンクと、前記第1及び第2案内路の案内方向が常に直角とならないように設定される
ことを特徴とする、請求項2に記載の電子機器用のレール装置。
【請求項6】
前記第1スライダ及び前記第2案内路を一体化して一方移動体とすると共に、前記第2スライダと前記第1案内路を一体化して他方移動体とする場合において、
前記一方移動体では、前記第1スライダが、前記第2案内路における前記第2直線路の一端側を超えた場所、且つ前記第2垂直路の突端を超えた場所に配置され、
前記他方移動体では、前記第2スライダが、前記第1案内路における前記第1直線路の一端側を超えた場所、且つ前記第1垂直路の突端を超えた場所に配置されることにより、
前記仮想リンクと、前記第1及び第2案内路の案内方向が常に直角とならないように設定される
ことを特徴とする、請求項2に記載の電子機器用のレール装置。
【請求項7】
前記第1及び第2案内路は、前記第1及び第2直線路と前記第1及び第2垂直路の連続部分において部分円弧形状の案内軌跡を形成する
ことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の電子機器用のレール装置。
【請求項8】
前記第1及び第2案内路における前記第1及び第2垂直路は、前記第1及び第2直線路の一端側で前記垂直方向に案内しながら、前記第1及び第2直線路の他端側に戻る案内軌跡を形成する
ことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の電子機器用のレール装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のレール装置と、
前記電子機器を備えて構成され、
前記上側筐体の上面に上側画面が配置されると共に、前記下側筐体の上面に下側画面が配置され、
前記レール装置によって、前記上側筐体と前記下側筐体を前記特定方向に相対的にスライドさせると共に、前記垂直方向に相対的にスライドさせた際に、前記上側画面と前記下側画面の高さが一致することを特徴とする、
情報端末用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−73430(P2013−73430A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212073(P2011−212073)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【特許番号】特許第4960525号(P4960525)
【特許公報発行日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【出願人】(505156891)ナガシマ工芸株式会社 (9)
【Fターム(参考)】