電子機器用筐体およびその製造方法
【構成】素子から発生する熱は、筐体に形成されたヒートパイプ流路3を通って筐体表面に伝え、筐体の広い面から放熱する。同時に、ヒートパイプ流路3の凹凸構造は板の剛性を向上させる。
【効果】小型電子機器の狭小空間に高い発熱量のCPUやメモリを搭載しても冷却可能であり、ノート型のパソコンに関しても十分な強度を維持しながらさらに薄型化を達成できる。
【効果】小型電子機器の狭小空間に高い発熱量のCPUやメモリを搭載しても冷却可能であり、ノート型のパソコンに関しても十分な強度を維持しながらさらに薄型化を達成できる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電子機器の筐体構造とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ワークステーションやパソコンなどの電子機器に搭載されているCPU等の素子の発熱量が膨大になってくると、熱を放散するためにファンを用いた強制空冷(特開平2−83958号公報)によったり、筐体に既存のヒートパイプを張り巡らせて固定し、広い筐体全体から放熱を行うやり方が提案されている。また、金属筐体の内部にヒートパイプを一体化した構造は提案されているが軽量でかつ高い剛性を維持し、製作可能な筐体構造の提案はなされていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】高発熱素子が発生する熱を取るためのヒートパイプの流路を筐体内部に形成することによって、筐体の全面に熱を伝えて放熱し、同時に形成した流路によって薄肉・高剛性化を図る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を達成するために、プレート同士の張り合わせ構造とする。流路は二枚のプレートの未接合部を高圧ガスまたは液圧によって張り出し成形する。
【0005】
【作用】上記の構造により、CPU等の素子から出る熱はヒートパイプによって筐体まで運ばれ、さらに筐体に形成された一体化したヒートパイプによって筐体の全面に輸送され、温度分布が均一化される。また、筐体に形成された流路はヒートパイプの冷媒に流路のほかに、筐体の強度を維持するリブ構造として作用する。
【0006】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0007】図1はヒートパイプの一体構造となっている本発明における電子機器筐体を示す。すなわち、筐体は二枚のプレートを張り合わせ接合して構成され、二枚のプレートの間に冷媒の流路となる空間を形成するため筐体の内プレート1を局部的に変形させてヒートパイプ3を形成する。この場合、凸状に形成されたヒートパイプの部分は筐体の強度を高めるリブの役割も果たしており、伝熱促進と剛性の両方の特長を兼ね備えている。このためプレート1,プレート2の厚さをそれぞれ1mm以下にすることが可能である。さらに、筐体の内側には回路基板や液晶ディスプレー等の表示装置を懸架するためのビス孔を有する構造で、従来プラスチックモールド品やダイカストによる金属筐体と同程度の複雑な筐体形状を実現可能である。
【0008】図2は図1で示した筐体の中央近傍の長手方向における断面図を示す。内プレート1と外プレート2がろう材や接着剤等によって接合された構造となっている。ヒートパイプ3の流路内部には水等の冷媒を封入して使用する。
【0009】次に、ヒートパイプ一体構造の筐体を用いて電子機器に利用する場合の冷却系の配置例を図3を用いて説明する。すなわち、図3に示す冷却系は受熱板6と受熱板から伸びるヒートパイプ7,10,ディスプレー8側の筐体に一体で形成したヒートパイプ3およびフレキシブルコネクタ9,11によって構成されている。図3はヒートパイプ一体構造の筐体をディスプレー側の筐体部品として用いている。キーボード側に取り付けられた回路基板上の素子4が発生する熱を柔軟接触子を介して受熱板6から吸収する。吸収した熱によって、キーボード側にあるヒートパイプ7に封入されている冷媒は気化され、ヒートパイプ7とフレキシブルコネクタ9を通って筐体に形成されたヒートパイプ3に到達する。ヒートパイプ3を気化された冷媒が通過すると筐体表面からの放熱によって冷却されるため冷媒が気体から液体に変化する。液体と成った冷媒はフレキシブルコネクタ11とヒートパイプ10を通って受熱板に戻り、以下同様のサイクルを繰り返す。ここで、気化された冷媒がヒートパイプ7の方向に流れやすくして、冷媒の循環の方向が一定となるようにするために図6(a)に示すようにヒートパイプ7の断面積をヒートパイプ10の断面積よりも大きくすれば良い。また、図6(b)に示すように流動抵抗ノズル16を用いて常にヒートパイプ7の方向に流れやすくすることで安定した冷媒の循環を得ることができる。
【0010】なお、実施例ではヒートパイプとしての機能を考慮したときの効果について示したが、筐体に一体化されたヒートパイプをポンプ等によって循環するための冷媒の流路に使用することも可能である。
【0011】次に、図4(a)〜(f)を用いて図1で示したヒートパイプを一体化した筐体を加工するためのプロセスの一例を示す。すなわち、図4(a)に示すように二枚のプレート1,2を用いて、プレート1にはプレス加工によってディスプレーを締結するためのビス孔付きロッド13を挿入する突起を形成し、プレート2にはヒートパイプの形状に対応するように選択的にセラミクスの粉末のような離形剤21を塗布又は印刷する(図4R>4(b))。次いで、図4(c)に示すように二枚のプレートの間にろう材等の接着剤を挿入し、重ね合わせた後に熱処理して接着する。このとき、離形剤が塗布された部分は二枚のプレートは接合されていない。なお、回路基板やディスプレーを固定するためのビス孔付きロッド13をバーリング突起孔に同時に挿入して固定することができる。次に、図4(d),(e)に示すように、接合したプレートの外周スカート部をプレス装置に取り付けた金型(上ポンチ30,しわ押さえポンチ31,ダイ32,下ポンチ33で構成される)によって成形する。その後、接合されていない部分に高圧エアを導入して、内プレート2を張り出し成形する。この場合、張り出し量は上ポンチ30の下面に形成された窪み部34の寸法によって規定される。
【0012】なお、プロセスにおいて、二枚のプレートの接合をろう材を用いて行ったが、接着剤による接合も可能である。さらに、実施例ではヒートパイプの冷媒の流路形成を最終段階で高圧ガスを導入して行っているが、ビス孔付きロッド13を形成する段階で流路をプレス加工して、その後ろう付けすることも可能である。
【0013】次に、ディスプレーカバーに形成したヒートパイプと素子からの熱を伝導する各ヒートパイプの接続関係について詳細に説明する。図5(a)は冷却系の側面図であり、図5(b)は上面図を示す。電子機器の薄型化を達成し、しかも冷却性能を下げないように幅広で厚さの薄いヒートパイプ7,10、およびフレキシブルコネクタ9および受熱板6が採用されている。すなわち、各パーツの断面は矩形状となっている。フレキシブルコネクタ9は弾性に富んだべロース構造をしており、ディスプレーの開閉の操作に追従して容易に変形することができる。図5(a)で回路基板に取り付けられた発熱素子4はシリコン樹脂のような良好な熱伝導性を有する柔軟接触子15を介して受熱板6に熱が伝えられる。受熱板6とヒートパイプ7,10の接合は溶接やろう付けで行うことができる。また、ヒートパイプ7とフレキシブルコネクタ9およびヒートパイプ付き筐体の接合も溶接やろう付けで行うことができる。なお、ヒートパイプ7,10およびフレキシブルコネクタ9,受熱板6,ヒートパイプ3の材料はステンレスやアルミニウム系、または銅系の金属を用いることができる。ただし、フレキシブルコネクタとして高分子系のフレキシブルチューブを採用することも可能であり、ヒートパイプとの接続には市販のジョイントを使用することができる。
【0014】図7はヒートパイプを一体化した筐体構造のもう一つの例である。図1で示した筐体には循環型のヒートパイプ流路が形成されているが、図7では受熱板に接続するためにフレキシブルコネクタが取り付けられる場所は一箇所である。すなわち、図7に示す筐体を用いたときの冷却系の配置状態を図8に示される。この場合、ヒートパイプ7には素子の熱によって気化された冷媒がヒートパイプ3に移動し、また筐体で冷却されて液化した冷媒が共存している。この場合の受熱板におけるヒートパイプの接続状況を図9に示す。受熱板6で気化した冷媒はヒートパイプ7の上部に沿って筐体側に移動するが、筐体で冷却されて液化した冷媒はヒートパイプ7の下部に沿って受熱板に戻り、同様のサイクルを繰り返す。
【0015】実施例ではディスプレー側の筐体についてのみヒートパイプを形成しているが、高発熱素子が搭載されている側の筐体にヒートパイプを形成することも可能である。キーボード側の筐体にヒートパイプを形成した場合の冷却系の構成について説明する。すなわち、図1010において高発熱素子4が発生する熱はヒートパイプ7からフレキシブルコネクタ9を介してキーボード側筐体に形成されているヒートパイプに伝熱される。図3や図8における冷却系を採用した場合、ディスプレーを開閉する度にフレキシブルコネクタは曲げ変形を受けるために、フレキシブルコネクタには高い強度信頼性が要求される。図10に示すように発熱素子が存在する側にヒートパイプ付きの筐体を採用すればこの問題は解消される。図11は図10に示したキーボード側の筐体構造を示しており、ディスプレー筐体と同様に図4で示したプロセスを用いて、回路基板やハードディスク等を固定するためのビス孔付きロッド13を形成できる。また、図1111において、ICカードやフロッピーディスク装置を挿入するための、筐体側壁の窓60,61,62はプレス打ち抜き等で成形が可能となる。
【0016】図12はヒートパイプを形成したディスプレー側の筐体に発熱素子を挿入・固定する場合の概略の実装構造を示す。すなわち、筐体にはディスプレー8の他に高発熱素子4が組み込まれる回路基板40等が筐体に固定され、次いでディスプレー側の筐体カバー17でカバーされる。なお、回路基板をキーボード側の回路基板と電気的に接続するためのコネクタ18が形成されている。また、冷媒の挿入は冷媒をヒートパイプの内部空間に満たした後、口金部19を圧着封止した後、溶接等の手段で完全に密閉することができる。なお、図では口金部を一個だけ示しているが二個設けることにより、冷媒の封入操作は容易になる。
【0017】次に、発熱素子から出る熱をヒートパイプに伝える手段を図13の断面図によって説明する。すなわち、素子4からの熱は柔軟接触子15を介してヒートパイプに伝えられる。柔軟接触子15を採用することによって、素子が外部からの衝撃を受けにくい構造にするとともに、素子との密着性を高めることによって熱伝達特性を向上させることができる。
【0018】なお、実施例では説明を省略したが、ヒートパイプの内面に毛細管現象を利用して冷媒が受熱部に帰還しやすくなる微細な溝(ウイック)を形成することは可能である。また、実施例では素子からの熱を本発明のヒートパイプ付き筐体のみに伝える冷却系となっているが、高発熱素子が搭載されている側の従来の筐体に発熱量の一部を伝熱して分散すれば、さらに高い発熱量の素子の冷却も可能となる。
【0019】以上の実施例から明らかなように、本発明によって筐体の剛性を維持しながら薄型化でき、しかも一体化されたヒートパイプによって高発熱素子の冷却が可能となる。
【0020】
【発明の効果】本発明によってノートタイプのワークステーションやパソコンの狭小な空間にCPU等の高発熱素子からの熱を効率良く伝達するための安価な構造のヒートパイプを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ヒートパイプを一体化した筐体の斜視図。
【図2】図1の筐体の断面図。
【図3】本発明の筐体を用いて冷却系を組み込んだ電子機器の斜視図。
【図4】ヒートパイプの加工プロセスの説明図。
【図5】冷却系の説明図。
【図6】素子受熱部の説明図。
【図7】本発明の第二実施例の筐体の斜視図。
【図8】ヒートパイプ筐体を搭載して冷却系を組み込んだ電子機器の斜視図。
【図9】受熱部におけるヒートパイプの接続の説明図。
【図10】キーボード側だけで冷却系を構成した場合のパソコン。
【図11】ヒートパイプが一体化されたキーボード側筐体の斜視図。
【図12】ディスプレー側筐体にヒートパイプを一体化したときの部品組込の説明図。
【図13】ヒートパイプを一体化したディスプレー側筐体に素子からの熱を伝える手段の断面図。
【符号の説明】
1…内プレート、2…外プレート、3…ヒートパイプ流路、13…ビス孔付きロッド。
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電子機器の筐体構造とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ワークステーションやパソコンなどの電子機器に搭載されているCPU等の素子の発熱量が膨大になってくると、熱を放散するためにファンを用いた強制空冷(特開平2−83958号公報)によったり、筐体に既存のヒートパイプを張り巡らせて固定し、広い筐体全体から放熱を行うやり方が提案されている。また、金属筐体の内部にヒートパイプを一体化した構造は提案されているが軽量でかつ高い剛性を維持し、製作可能な筐体構造の提案はなされていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】高発熱素子が発生する熱を取るためのヒートパイプの流路を筐体内部に形成することによって、筐体の全面に熱を伝えて放熱し、同時に形成した流路によって薄肉・高剛性化を図る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を達成するために、プレート同士の張り合わせ構造とする。流路は二枚のプレートの未接合部を高圧ガスまたは液圧によって張り出し成形する。
【0005】
【作用】上記の構造により、CPU等の素子から出る熱はヒートパイプによって筐体まで運ばれ、さらに筐体に形成された一体化したヒートパイプによって筐体の全面に輸送され、温度分布が均一化される。また、筐体に形成された流路はヒートパイプの冷媒に流路のほかに、筐体の強度を維持するリブ構造として作用する。
【0006】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0007】図1はヒートパイプの一体構造となっている本発明における電子機器筐体を示す。すなわち、筐体は二枚のプレートを張り合わせ接合して構成され、二枚のプレートの間に冷媒の流路となる空間を形成するため筐体の内プレート1を局部的に変形させてヒートパイプ3を形成する。この場合、凸状に形成されたヒートパイプの部分は筐体の強度を高めるリブの役割も果たしており、伝熱促進と剛性の両方の特長を兼ね備えている。このためプレート1,プレート2の厚さをそれぞれ1mm以下にすることが可能である。さらに、筐体の内側には回路基板や液晶ディスプレー等の表示装置を懸架するためのビス孔を有する構造で、従来プラスチックモールド品やダイカストによる金属筐体と同程度の複雑な筐体形状を実現可能である。
【0008】図2は図1で示した筐体の中央近傍の長手方向における断面図を示す。内プレート1と外プレート2がろう材や接着剤等によって接合された構造となっている。ヒートパイプ3の流路内部には水等の冷媒を封入して使用する。
【0009】次に、ヒートパイプ一体構造の筐体を用いて電子機器に利用する場合の冷却系の配置例を図3を用いて説明する。すなわち、図3に示す冷却系は受熱板6と受熱板から伸びるヒートパイプ7,10,ディスプレー8側の筐体に一体で形成したヒートパイプ3およびフレキシブルコネクタ9,11によって構成されている。図3はヒートパイプ一体構造の筐体をディスプレー側の筐体部品として用いている。キーボード側に取り付けられた回路基板上の素子4が発生する熱を柔軟接触子を介して受熱板6から吸収する。吸収した熱によって、キーボード側にあるヒートパイプ7に封入されている冷媒は気化され、ヒートパイプ7とフレキシブルコネクタ9を通って筐体に形成されたヒートパイプ3に到達する。ヒートパイプ3を気化された冷媒が通過すると筐体表面からの放熱によって冷却されるため冷媒が気体から液体に変化する。液体と成った冷媒はフレキシブルコネクタ11とヒートパイプ10を通って受熱板に戻り、以下同様のサイクルを繰り返す。ここで、気化された冷媒がヒートパイプ7の方向に流れやすくして、冷媒の循環の方向が一定となるようにするために図6(a)に示すようにヒートパイプ7の断面積をヒートパイプ10の断面積よりも大きくすれば良い。また、図6(b)に示すように流動抵抗ノズル16を用いて常にヒートパイプ7の方向に流れやすくすることで安定した冷媒の循環を得ることができる。
【0010】なお、実施例ではヒートパイプとしての機能を考慮したときの効果について示したが、筐体に一体化されたヒートパイプをポンプ等によって循環するための冷媒の流路に使用することも可能である。
【0011】次に、図4(a)〜(f)を用いて図1で示したヒートパイプを一体化した筐体を加工するためのプロセスの一例を示す。すなわち、図4(a)に示すように二枚のプレート1,2を用いて、プレート1にはプレス加工によってディスプレーを締結するためのビス孔付きロッド13を挿入する突起を形成し、プレート2にはヒートパイプの形状に対応するように選択的にセラミクスの粉末のような離形剤21を塗布又は印刷する(図4R>4(b))。次いで、図4(c)に示すように二枚のプレートの間にろう材等の接着剤を挿入し、重ね合わせた後に熱処理して接着する。このとき、離形剤が塗布された部分は二枚のプレートは接合されていない。なお、回路基板やディスプレーを固定するためのビス孔付きロッド13をバーリング突起孔に同時に挿入して固定することができる。次に、図4(d),(e)に示すように、接合したプレートの外周スカート部をプレス装置に取り付けた金型(上ポンチ30,しわ押さえポンチ31,ダイ32,下ポンチ33で構成される)によって成形する。その後、接合されていない部分に高圧エアを導入して、内プレート2を張り出し成形する。この場合、張り出し量は上ポンチ30の下面に形成された窪み部34の寸法によって規定される。
【0012】なお、プロセスにおいて、二枚のプレートの接合をろう材を用いて行ったが、接着剤による接合も可能である。さらに、実施例ではヒートパイプの冷媒の流路形成を最終段階で高圧ガスを導入して行っているが、ビス孔付きロッド13を形成する段階で流路をプレス加工して、その後ろう付けすることも可能である。
【0013】次に、ディスプレーカバーに形成したヒートパイプと素子からの熱を伝導する各ヒートパイプの接続関係について詳細に説明する。図5(a)は冷却系の側面図であり、図5(b)は上面図を示す。電子機器の薄型化を達成し、しかも冷却性能を下げないように幅広で厚さの薄いヒートパイプ7,10、およびフレキシブルコネクタ9および受熱板6が採用されている。すなわち、各パーツの断面は矩形状となっている。フレキシブルコネクタ9は弾性に富んだべロース構造をしており、ディスプレーの開閉の操作に追従して容易に変形することができる。図5(a)で回路基板に取り付けられた発熱素子4はシリコン樹脂のような良好な熱伝導性を有する柔軟接触子15を介して受熱板6に熱が伝えられる。受熱板6とヒートパイプ7,10の接合は溶接やろう付けで行うことができる。また、ヒートパイプ7とフレキシブルコネクタ9およびヒートパイプ付き筐体の接合も溶接やろう付けで行うことができる。なお、ヒートパイプ7,10およびフレキシブルコネクタ9,受熱板6,ヒートパイプ3の材料はステンレスやアルミニウム系、または銅系の金属を用いることができる。ただし、フレキシブルコネクタとして高分子系のフレキシブルチューブを採用することも可能であり、ヒートパイプとの接続には市販のジョイントを使用することができる。
【0014】図7はヒートパイプを一体化した筐体構造のもう一つの例である。図1で示した筐体には循環型のヒートパイプ流路が形成されているが、図7では受熱板に接続するためにフレキシブルコネクタが取り付けられる場所は一箇所である。すなわち、図7に示す筐体を用いたときの冷却系の配置状態を図8に示される。この場合、ヒートパイプ7には素子の熱によって気化された冷媒がヒートパイプ3に移動し、また筐体で冷却されて液化した冷媒が共存している。この場合の受熱板におけるヒートパイプの接続状況を図9に示す。受熱板6で気化した冷媒はヒートパイプ7の上部に沿って筐体側に移動するが、筐体で冷却されて液化した冷媒はヒートパイプ7の下部に沿って受熱板に戻り、同様のサイクルを繰り返す。
【0015】実施例ではディスプレー側の筐体についてのみヒートパイプを形成しているが、高発熱素子が搭載されている側の筐体にヒートパイプを形成することも可能である。キーボード側の筐体にヒートパイプを形成した場合の冷却系の構成について説明する。すなわち、図1010において高発熱素子4が発生する熱はヒートパイプ7からフレキシブルコネクタ9を介してキーボード側筐体に形成されているヒートパイプに伝熱される。図3や図8における冷却系を採用した場合、ディスプレーを開閉する度にフレキシブルコネクタは曲げ変形を受けるために、フレキシブルコネクタには高い強度信頼性が要求される。図10に示すように発熱素子が存在する側にヒートパイプ付きの筐体を採用すればこの問題は解消される。図11は図10に示したキーボード側の筐体構造を示しており、ディスプレー筐体と同様に図4で示したプロセスを用いて、回路基板やハードディスク等を固定するためのビス孔付きロッド13を形成できる。また、図1111において、ICカードやフロッピーディスク装置を挿入するための、筐体側壁の窓60,61,62はプレス打ち抜き等で成形が可能となる。
【0016】図12はヒートパイプを形成したディスプレー側の筐体に発熱素子を挿入・固定する場合の概略の実装構造を示す。すなわち、筐体にはディスプレー8の他に高発熱素子4が組み込まれる回路基板40等が筐体に固定され、次いでディスプレー側の筐体カバー17でカバーされる。なお、回路基板をキーボード側の回路基板と電気的に接続するためのコネクタ18が形成されている。また、冷媒の挿入は冷媒をヒートパイプの内部空間に満たした後、口金部19を圧着封止した後、溶接等の手段で完全に密閉することができる。なお、図では口金部を一個だけ示しているが二個設けることにより、冷媒の封入操作は容易になる。
【0017】次に、発熱素子から出る熱をヒートパイプに伝える手段を図13の断面図によって説明する。すなわち、素子4からの熱は柔軟接触子15を介してヒートパイプに伝えられる。柔軟接触子15を採用することによって、素子が外部からの衝撃を受けにくい構造にするとともに、素子との密着性を高めることによって熱伝達特性を向上させることができる。
【0018】なお、実施例では説明を省略したが、ヒートパイプの内面に毛細管現象を利用して冷媒が受熱部に帰還しやすくなる微細な溝(ウイック)を形成することは可能である。また、実施例では素子からの熱を本発明のヒートパイプ付き筐体のみに伝える冷却系となっているが、高発熱素子が搭載されている側の従来の筐体に発熱量の一部を伝熱して分散すれば、さらに高い発熱量の素子の冷却も可能となる。
【0019】以上の実施例から明らかなように、本発明によって筐体の剛性を維持しながら薄型化でき、しかも一体化されたヒートパイプによって高発熱素子の冷却が可能となる。
【0020】
【発明の効果】本発明によってノートタイプのワークステーションやパソコンの狭小な空間にCPU等の高発熱素子からの熱を効率良く伝達するための安価な構造のヒートパイプを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ヒートパイプを一体化した筐体の斜視図。
【図2】図1の筐体の断面図。
【図3】本発明の筐体を用いて冷却系を組み込んだ電子機器の斜視図。
【図4】ヒートパイプの加工プロセスの説明図。
【図5】冷却系の説明図。
【図6】素子受熱部の説明図。
【図7】本発明の第二実施例の筐体の斜視図。
【図8】ヒートパイプ筐体を搭載して冷却系を組み込んだ電子機器の斜視図。
【図9】受熱部におけるヒートパイプの接続の説明図。
【図10】キーボード側だけで冷却系を構成した場合のパソコン。
【図11】ヒートパイプが一体化されたキーボード側筐体の斜視図。
【図12】ディスプレー側筐体にヒートパイプを一体化したときの部品組込の説明図。
【図13】ヒートパイプを一体化したディスプレー側筐体に素子からの熱を伝える手段の断面図。
【符号の説明】
1…内プレート、2…外プレート、3…ヒートパイプ流路、13…ビス孔付きロッド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】電子機器の筐体において、二枚のプレートの表面が選択的に張り合わせ接合された構造であることを特徴とする電子機器用筐体。
【請求項2】請求項1において、前記二枚のプレートのうち少なくとも一枚は金属製である電子機器用筐体。
【請求項3】請求項2において、前記二枚のプレートの合わせ面の未接合部に空間が形成されて、ヒートパイプの冷媒の流路が構成されている電子機器用筐体。
【請求項4】請求項2において、前記二枚のプレートの合わせ面の未接合部に筐体の補強用リブが形成されている電子機器用筐体。
【請求項5】請求項1,2,3または4に記載した前記筐体を搭載した携帯型パソコンまたはワークステーション。
【請求項6】二枚のプレートがろう材,接着剤,溶接または拡散接合等の手段によって選択的に接合され、接合板がプレス成形によって加工された後、前記二枚のプレートの未接合部を液圧または空気圧の手段によって塑性変形させ、ヒートパイプの流路を形成する電子機器用筐体の製造方法。
【請求項7】請求項6において、前記二枚のプレートがプレス成形によって加工される手段と、前記二枚のプレートの未接合部が液圧または空気圧の手段によって加工される手段によって形成される電子機器用筐体の製造方法。
【請求項8】プレス装置によって突起予備成形されたプレートを別のプレートと接合する工程と、接合板をプレス加工によって外周にスカート部を形成することを特徴とする電子機器用筐体の製造方法。
【請求項1】電子機器の筐体において、二枚のプレートの表面が選択的に張り合わせ接合された構造であることを特徴とする電子機器用筐体。
【請求項2】請求項1において、前記二枚のプレートのうち少なくとも一枚は金属製である電子機器用筐体。
【請求項3】請求項2において、前記二枚のプレートの合わせ面の未接合部に空間が形成されて、ヒートパイプの冷媒の流路が構成されている電子機器用筐体。
【請求項4】請求項2において、前記二枚のプレートの合わせ面の未接合部に筐体の補強用リブが形成されている電子機器用筐体。
【請求項5】請求項1,2,3または4に記載した前記筐体を搭載した携帯型パソコンまたはワークステーション。
【請求項6】二枚のプレートがろう材,接着剤,溶接または拡散接合等の手段によって選択的に接合され、接合板がプレス成形によって加工された後、前記二枚のプレートの未接合部を液圧または空気圧の手段によって塑性変形させ、ヒートパイプの流路を形成する電子機器用筐体の製造方法。
【請求項7】請求項6において、前記二枚のプレートがプレス成形によって加工される手段と、前記二枚のプレートの未接合部が液圧または空気圧の手段によって加工される手段によって形成される電子機器用筐体の製造方法。
【請求項8】プレス装置によって突起予備成形されたプレートを別のプレートと接合する工程と、接合板をプレス加工によって外周にスカート部を形成することを特徴とする電子機器用筐体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図9】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図13】
【図12】
【図2】
【図9】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図13】
【図12】
【公開番号】特開平8−288681
【公開日】平成8年(1996)11月1日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−86671
【出願日】平成7年(1995)4月12日
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【公開日】平成8年(1996)11月1日
【国際特許分類】
【出願日】平成7年(1995)4月12日
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
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