説明

電子機器

【課題】筐体の上面部に放熱用の開口部を有するものにあって、設置作業時における開口部からの異物の侵入を防止する防止構造を備えながらも、その防止構造を何度でも使用可能とし、しかも使用時における筐体内部の過熱を防止する。
【解決手段】I/Oモジュール13は、筐体16内に通信回路や入出力回路を有する。筐体16の前面部の接続部17に制御対象機器の接続用の端子台15が着脱可能に接続される。筐体16の上面部に、放熱用の開口部18を設ける。筐体16内に、開口部18を開閉するためのシャッタ19を前後方向にスライド移動可能に設け、シャッタ19の開閉切替用の操作レバー20を筐体16の前面部に配置する。シャッタ19の閉塞状態では、接続部17に対する端子台15に接続が不能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内に電子回路を備えて構成されると共に、筐体の上面部に放熱用の開口部を設けてなる電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、工場設備等において使用されるプログラマブルコントローラは、図4に示すように、電子機器としての電源モジュールやI/Oモジュール等のモジュール1を必要に応じて組合せて構成される。前記各モジュール1は、矩形状の筐体2内に電子回路(図示せず)を備えて構成され、また、前記筐体2の上面部には、放熱用の複数個のスリット状の開口部2aが設けられるようになっている。そして、各モジュール1は、制御盤3内の背面部(あるいは設備の壁)に設けられたDINレール4にねじ止めなどによって取付けられるようになっている。
【0003】
ところで、上記したようなモジュール1においては、制御盤3や壁などに設置する際の、DINレール4にねじ止め用の穴4aを開ける作業や、ねじの締付けの作業において、メタルチップと称される金属屑Mが生じ、その金属屑Mが放熱用の開口部2aから筐体2の内部に侵入して電子回路部分に悪影響を及ぼすといった課題があることが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、通風孔を筐体の背面部に設けることによって、上記課題を解決するようにしているが、筐体を壁に取付けるような場合、通風孔が塞がれて十分な放熱性能が得られなくなる虞がある。
【0004】
そこで、近年では、図4に示すように、プログラマブルコントローラモジュール1の筐体2の上面部に、開口部2a全体を塞ぐように、金属屑侵入防止用のラベル(シール)5を予め貼付けておいた状態で出荷し、ユーザ側でのモジュール1の設置作業の完了後(使用開始時)に、そのラベル5を剥がすといったことが行われている。
【特許文献1】特開2000−132211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように、筐体2に金属屑侵入防止用のラベル5を貼付けるようにしたものでは、次のような問題点がある。即ち、上記ラベル5は、剥がされた後に保管したり再使用したりすることは考慮されておらず、一旦剥がされたラベル5は廃棄されるようになっていた。
【0006】
そのため、モジュール1の設置後(ラベル5を剥がした後)に、別のモジュール1を追加設置する際に、筐体2に金属屑侵入防止のための別の対策を施すことが必要となり、それを怠ると金属屑Mの侵入を招くことになる。また、ラベル5のごみが出る問題もあった。さらには、ユーザが、モジュール1の設置後にラベル5を剥がすことを忘れた状態で使用を開始してしまう虞もあり、この場合には、使用時に筐体2の内部の過熱を招いてしまうことになる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、筐体の上面部に放熱用の開口部を有するものにあって、設置作業時における開口部からの異物の侵入を防止する防止構造を備えながらも、その防止構造を何度でも使用でき、しかも、使用時における筐体内部の過熱を防止することができる電子機器を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の電子機器は、筐体の上面部に放熱用の開口部を有するものにあって、放熱用の開口部を開閉可能なシャッタと、このシャッタの開放状態と閉塞状態とを切替えるための操作部材と、シャッタが開放状態にあることを条件に使用を可能とする誤使用防止手段とを設けた構成に特徴を有する(請求項1の発明)。
【0009】
これによれば、シャッタを、放熱用の開口部を閉塞する閉塞状態とすることにより、開口部からの異物の侵入を防止することができる。そして、シャッタは、操作部材によって開放状態と閉塞状態とを切替えることができるので、使用時に開放状態に切替えた後に、再度開口部を閉塞する必要が生じた際には、操作部材の操作により閉塞状態に切替えることができる。しかも、誤使用防止手段により、シャッタを開放状態とせずに使用されることが未然に防止され、開口部が閉塞されていることに起因する使用時の筐体内部の過熱を確実に防止することができる。
【0010】
このとき、外部機器が着脱可能に接続される接続部を備えるものにあっては、操作部材を、シャッタを開放させる開放位置と閉塞させる閉塞位置との間で変位可能に構成すると共に、誤使用防止手段を、操作部材が閉塞位置にあるときに、該操作部材が接続部に対する外部機器の接続の邪魔となり、操作部材が開放位置に変位された状態で、接続部に対する外部機器の接続が許容されるように構成することができる(請求項2の発明)。これによれば、誤使用防止手段を、簡単な構成で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をプログラマブルコントローラのモジュールに適用した一実施例について、図1ないし図3を参照しながら説明する。まず、図3は、例えば工場設備等において使用されるプログラマブルコントローラ11の構成を概略的に示している。
【0012】
このプログラマブルコントローラ11は、例えば、制御盤12(或いはラック)内に、複数個の電子機器たるモジュール(ユニット)を備えて構成される。この場合、前記モジュールとしては、全体を制御するCPUモジュール(図示せず)、電源供給用の電源モジュール(図示せず)、外部の機器に対する入出力制御を行う複数個のI/Oモジュール13(1個のみ図示)等があり、それらが必要に応じて組合せられる。
【0013】
前記制御盤12内の壁面には、横方向に延びる取付用のDINレール14が、上下複数段に設けられている。前記I/Oモジュール13を含む各モジュールは、そのDINレール14に、例えばねじ止めにより横方向に並んで取付けられるようになっている。このとき、DINレール14には、ねじ止め用の穴14aが適宜形成されるようになっている。また、前記I/Oモジュール13の前面部には、端子台15(図1(c)参照)が着脱可能に装着され、図示はしないが、その端子台15に、各種スイッチ等や制御対象となる機器(モータ、ベルトコンベア、電磁弁、表示装置、ランプ等の負荷)のケーブル(配線)が接続されるようになっている。
【0014】
次に、本実施例に係る電子機器たるI/Oモジュール13について、図1及び図2も参照して述べる。このI/Oモジュール13は、例えば左右方向に薄型とされた矩形箱状の筐体16内に、図示しない通信回路や入出力回路等を配設して構成されている。図1及び図2に示すように、筐体16の前面部には、前記端子台15が電気的及び機械的に接続される接続部17が設けられている。また、前記接続部17の近傍(右側)には、縦長のスリット状をなす操作レバー用穴16aが形成されている。
【0015】
尚、図示はしないが、筐体16の背面部には、前記DINレール14に係合される係合部や、DINレール14(ねじ止め用の穴14a)に対するねじ止め用の取付用穴が設けられている。さらに、前記CPUモジュール及び電源モジュールとの電気的接続用のコネクタ等が設けられている。
【0016】
さて、前記筐体16の上面部(上壁部)には、放熱用の開口部18が設けられている。本実施例では、この放熱用の開口部18は、例えば横長なスリット状をなし、前後に複数本が筐体16の上面のほぼ全域にわたって等間隔に形成されている。そして、筐体16内(上壁部の下面側)には、前記放熱用の開口部18を開閉するためのシャッタ19が設けられる。
【0017】
このシャッタ19は、図2に示すように、前記開口部18の形成領域に対応した前後方向に長い矩形状の枠内に、開口部18の各スリットに対応する太さ(幅寸法)及び間隔で、複数本の横木(桟)を渡した如き形状に構成されている。このシャッタ19は、筐体16の上壁部の下面側に、前後方向に若干量だけスライド移動可能に設けられている。このシャッタ19が前側に位置した状態では、図1(a)に示すように、シャッタ19の各横木部分が開口部18の各スリットにラップして開口部18を閉塞状態とするようになっている。一方、シャッタ19が後側にスライド移動した状態では、図1(b),(c)に示すように、シャッタ19の各横木部分が開口部18の各スリットからずれて、開口部18を開放状態とするようになっている。尚、図では、開口部18が開放している状態を、便宜上、ハッチングを付して示している。
【0018】
そして、前記シャッタ19には、操作部材としての操作レバー20が、この場合一体的に設けられている。即ち、図1に示すように、前記シャッタ19の枠部のうち右辺部から下方に立下がるようにして、連結板部19aが一体に設けられており、その連結板部19aの前端下部から前方に延びる(突出する)ようにして、操作レバー20が一体に設けられている。前記連結板部19aは、筐体16の右壁面の内側に配置され、この状態で、操作レバー20の先端が操作レバー用穴16aを貫通して、筐体16の前面から突出位置されるようになっている。
【0019】
これにて、筐体16の前面側から、ユーザ(作業者)が操作レバー20の先端をつまんで前後方向に変位操作することが可能とされている。操作レバー20を前方に引出した状態(閉塞位置)では、図1(a)に示すように、シャッタ19が開口部18を閉塞する閉塞状態となり、操作レバー20を後方に押込んだ状態(開放位置)では、図1(b)に示すように、シャッタ19が退避して開口部18を開放させる開放状態とされる。このように、操作レバー20の操作によって、シャッタ19の開放状態と閉塞状態とを切替えることができるようになっている。
【0020】
このとき、図1(a)に示す操作レバー20を前方に引出した閉塞位置では、操作レバー20が邪魔になって接続部17に端子台15を接続することが不可能となる。これに対し、図1(b)に示す操作レバー20を後方に押込んだ開放位置では、操作レバー20の前方への突出量が小さく、図1(c)に示すように、接続部17に端子台15を接続することが許容されるようになっている。これにより、シャッタ19が開放状態にあることを条件に、I/Oモジュール13の使用を可能とする誤使用防止手段が構成されるようになっているのである。
【0021】
次に、上記構成の作用について述べる。上記したI/Oモジュール13を制御盤12(DINレール14)に設置する(取付ける)にあたっては、図3に示すように、ユーザ(作業者)による、DINレール14に対するねじ止め用の穴14aを開ける作業や、ねじの締付けの作業が行われる。この作業中には、メタルチップと称される金属屑Mが生ずることがあり、もし、その金属屑Mが放熱用の開口部18から筐体16の内部に侵入するようなことがあると、電子回路部分に悪影響を及ぼす虞がある。そこで、このような設置作業時においては、図1(a)にも示すように、シャッタ19を、開口部18を閉塞する閉塞状態としておくことにより、開口部18からの異物の侵入を防止することができる。
【0022】
そして、I/Oモジュール13(プログラマブルコントローラ11)の使用時には、図1(b)(c)に示すように、ユーザが操作レバー20を操作してシャッタ18を開放状態としておくことにより、筐体16内部からの放熱が図られ、筐体16内部が過熱状態となることを確実に防止することができる。このとき、操作レバー20を開放位置に変位させていない状態では、接続部17に対する端子台15の接続ができなくなるので、使用時においては、確実にシャッタ18を開放状態とすることができる。
【0023】
また、I/Oモジュール13を使用していた後に、制御盤12内に別のモジュールを追加設置することが考えられ、この場合も、穴開け作業やねじ止め作業が行われ、金属屑Mの発生の虞がある。このような場合には、ユーザは、接続部17から端子台15を取外した状態で、操作レバー20を引出し操作して閉塞位置に変位させれば、シャッタ19を閉塞状態とすることができる。従って、この別のモジュールを追加設置時においても、開口部18からの異物の侵入を防止することができるのである。
【0024】
このような本実施例によれば、次のような効果を得ることができる。即ち、筐体16の上面部に放熱用の開口部18を有するI/Oモジュール13にあって、シャッタ19を閉塞状態とすることによって、設置作業時における開口部18からの異物の侵入を防止することができる。このとき、操作レバー20の操作によってシャッタ19の開閉状態を自在に切替える、言い換えると異物侵入防止構造を何度も使用することができる。従って、従来の金属屑侵入防止用のラベル5を設けたものと異なり、別のモジュールを追加設置する際においても、シャッタ19を閉塞状態とすることによって、開口部18からの異物の侵入を防止することができる。ラベル5のごみが出ることもない。
【0025】
しかも、I/Oモジュール13の使用時においては、シャッタ19を開放状態とせずに使用されることが未然に防止されるので、ラベル5を剥がすことを忘れる虞のある従来のものと異なり、開口部18が閉塞されていることに起因する使用時の筐体16内部の過熱を確実に防止することができる。特に本実施例では、操作レバー20によって誤使用防止手段を構成したことにより、誤使用防止手段を、簡単な構成で実現することができるといった利点も得ることができる。
【0026】
尚、上記実施例では、シャッタに操作部材(操作レバー)を一体に設けるようにしたが、例えば、操作部材(レバー)とシャッタとを別体に設け、伝達機構を介して連動させるように構成しても良い。また、誤使用防止手段の構成としても、種々の変更が可能であり、例えば、シャッタの状態を検出するためのセンサやスイッチ等の電気的構成を含むように構成することもできる。その他、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、例えばプログラマブルコントローラのモジュールに限らず、筐体内に電子回路を備えると共に、筐体の上面部に放熱用の開口部を設けてなる電子機器全般に適用することができる等、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、シャッタの閉塞状態(a)、シャッタの開放状態(b)、端子台の接続状態(c)におけるI/Oモジュールの概略的な斜視図
【図2】I/Oモジュールの筐体部分とシャッタとを分解状態で示す斜視図
【図3】プログラマブルコントローラの概略的な構成を透視状態で示す斜視図
【図4】従来例を示す図3相当図
【符号の説明】
【0028】
図面中、11はプログラマブルコントローラ、13はI/Oモジュール(電子機器)、15は端子台(外部機器)、16は筐体、17は接続部、18は開口部、19はシャッタ、20は操作レバー(操作部材)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に電子回路を備えて構成されると共に、前記筐体の上面部に放熱用の開口部を設けてなる電子機器において、
前記放熱用の開口部を開閉可能なシャッタと、
このシャッタの開放状態と閉塞状態とを切替えるための操作部材と、
前記シャッタが開放状態にあることを条件に、使用を可能とする誤使用防止手段とを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
外部機器が着脱可能に接続される接続部を備えるものであって、
前記操作部材は、前記シャッタを開放させる開放位置と閉塞させる閉塞位置との間で変位可能に構成されていると共に、
前記誤使用防止手段は、前記操作部材が閉塞位置にあるときに、該操作部材が前記接続部に対する外部機器の接続の邪魔となり、前記操作部材が開放位置に変位された状態で、前記接続部に対する外部機器の接続が許容されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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