説明

電子機器

【課題】電子機器の筐体から外部に導出される接続ケーブルとして通常の線状部材が使用でき、また、筐体の組立時にパッキン材の配置を容易に行うことができる電子機器を得ること。
【解決手段】周囲にパッキン材14が配置された接続ケーブル13と、外部に前記接続ケーブル13を導出する開口部15と、前記開口部15の内側に前記接続ケーブル13の導出方向と交わる方向に配置され前記接続ケーブル13を収容する切り欠き21が形成された複数のリブ16とを有する筐体1とを備え、前記パッキン材14は、帯状部材が前記接続ケーブル13に巻き付けられて形成され、前記リブ16と当接する部分に前記接続ケーブル13まで貫通しない深さのスリット22が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の外部に導出される接続ケーブルを備えた電子機器に関し、特に、接続ケーブルの導出部において、簡易に形成できる構成で高い水密性と防塵性とを有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートパソコンやPDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話や携帯ゲーム機など、ポータブル型の電子機器の普及が進んでいる。このような電子機器は、内部に精密な電子回路が収容されているため、外部から侵入する水分に弱く、機器本体に雨粒がかかるなどした場合には内部の回路が破損して機器自体が使用不可能となることが多かった。
【0003】
しかし、近年のアウトドアユースの高まりから、例えば誤って水たまりなどに落としてしまった場合や、機器にコップの水や雨粒がかかった場合でも、動作に異常を来さない程度の防水性を備えた携帯電話などのニーズが高まっている。
【0004】
また、ノートパソコンにおいても、情報の処理や伝達の手段として多用されるに伴ってその使用領域が拡がり、環境温度の変化が大きい条件下や、水しぶきが降りかかる場所での使用を想定するなど、極めて厳しい状態での動作を保証する特殊用途のものに対するニーズがある。
【0005】
このようなニーズに応えた、高い水密性や防塵性を備えたノートパソコンとして、防水性のキーボードを防水性の本体に内蔵し、表示部とパソコン本体部とを防水フレキシブルケーブルで接続したノートパソコンにおいて、機器の内部部品の交換時の分解や機器の組立製造自体を容易化するために、テフロン(登録商標)系樹脂を含む撥水処理がされた層と独立発泡高分子層とを積層した防水パッキンを用いるものが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−003649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の方法では、環状のパッキン材で筐体の開口部を覆い、このパッキン材で挟まれた状態で外部に接続ケーブルを導出するものであるため、接続ケーブルとして特殊な平面状のフレキシブルケーブルを用いなくてはならない。また、パソコン筐体の組立時には、あらかじめパッキン材をフレキシブルケーブルに通しておかなくてはならないなど、接続ケーブルの選択やパソコンの組立製造における制約が十分に解消されたものとは言えなかった。
【0008】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するものであり、電子機器の筐体から外部に導出される接続ケーブルとして通常の線状部材が使用でき、また、筐体の組立時にパッキン材の配置を容易に行うことができる電子機器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明の電子機器は、周囲にパッキン材が配置された接続ケーブルと、外部に前記接続ケーブルを導出する開口部と、前記開口部の内側に前記接続ケーブルの導出方向と交わる方向に配置され前記接続ケーブルを収容する切り欠きが形成された複数のリブとを有する筐体とを備え、前記パッキン材は、帯状部材が前記接続ケーブルに巻き付けられて形成され、前記リブと当接する部分に前記接続ケーブルまで貫通しない深さのスリットが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子機器は、筐体の開口部から外部に導出される接続ケーブルの周囲に配置されたパッキン材が、帯状部材が接続ケーブルに巻き付けられて形成されていて、筐体に形成されたリブに当接する部分に接続ケーブルまで貫通しない深さのスリットが形成されている。このため、筐体のリブとの嵌合度合いが高いパッキン材を接続ケーブルの周囲に容易に巻回配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態にかかるノートパソコンの全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるノートパソコンの筐体を構成する第1の部材における開口部部分の構成を示す要部拡大平面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかるノートパソコンの筐体を構成する第2の部材における開口部部分の構成を示す要部拡大平面図である。
【図4】本発明の実施形態にかかるノートパソコンの筐体を構成する第1の部材に形成されたリブの構造を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態にかかるノートパソコンのパッキン材を接続ケーブルに巻き付ける様子を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態にかかるノートパソコンの接続ケーブルにパッキン材が巻き付けられた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の電子機器は、周囲にパッキン材が配置された接続ケーブルと、外部に前記接続ケーブルを導出する開口部と、前記開口部の内側に前記接続ケーブルの導出方向と交わる方向に配置され前記接続ケーブルを収容する切り欠きが形成された複数のリブとを有する筐体とを備え、前記パッキン材は、帯状部材が前記接続ケーブルに巻き付けられて形成され、前記リブと当接する部分に前記接続ケーブルまで貫通しない深さのスリットが形成されている。
【0013】
このようにすることで、接続ケーブルに帯状部材を巻き付けるという簡易に所定の位置にパッキン材を配置できる構成ながら、開口部近傍の筐体に形成された複数のリブにパッキン材のスリットが強く嵌合するため、リブ同士の間隔部分でパッキン材がふくらんで高い水密性と防塵性とを発揮する。このため、通常の線状の接続ケーブルを用いて、容易に製造でき、かつ、高い水密性と防塵性とを備えた電子機器を得ることができる。
【0014】
上記本発明にかかる電子機器では、前記パッキン材が、前記接続ケーブルに前記帯状部材が複数回巻き付けられて形成されたものであることが好ましい。このようにすることで、パッキン材の厚さを所望のものとすることができ、さらに、巻き付けられたときに表面側に位置することになる帯状部材の部分にのみスリットを設けることで、パッキン材に接続ケーブルまで貫通しない深さのスリットを容易に形成することができる。
【0015】
また、前記帯状部材の巻き終わり側の端部が、前記スリットが形成されない終端部となっていることが好ましい。このようにすることで、帯状部材の巻き終わり側の端部を一体となったまま接続ケーブルに容易に巻き付けることができ、また、パッキン材のスリットが筐体のリブに嵌合した際に、パッキン材のスリットが形成されていない部分がリブ同士の間隔部分でふくらみやすくなり、高い水密性と防塵性とを得ることができる。
【0016】
さらに、前記リブに形成された前記切り欠きが略円弧状であり、前記スリットの長さが前記切り欠きの弧の長さと等しいことが好ましい。このようにすることで、パッキン材のスリット部分がリブに形成された切り欠きと強く嵌合し、切り欠き部分に填り込んだ接続ケーブルの周囲に配置されたパッキン材により、高い水密性と防塵性とが実現できる。
【0017】
以下、本発明にかかる電子機器の実施形態として、ノートパソコンを例示して説明する。本実施形態のノートパソコンは、表示パネルとして透過型の液晶パネルを備えた表示部と、パソコン本体部とがヒンジ機構により回動可能に構成されたものであり、周囲温度の変化が大きい環境下や、ノートパソコンに水滴がかかるような過酷な条件での使用を想定した水密性、防塵性の高いものである。
【0018】
図1は、本実施形態のノートパソコンの全体構成を示す斜視図である。
【0019】
本実施形態のノートパソコン100は、筐体である表示部1と、もう一つの筐体であるパソコン本体部2とが、ヒンジ部カバー3内に収容された図示しないヒンジ機構によって回動可能な状態で取り付けられている。
【0020】
本実施形態のノートパソコン100においてヒンジ機構は、その回動軸がパソコン本体部2上面の少し上方側に位置するように、パソコン本体部2の内部から上方に突出して設けられている。また、本実施形態のノートパソコン100では、パソコン本体部2の左右両側に2つのヒンジ機構が配置されている。なお、本実施形態のノートパソコンにおいて、ヒンジ機構の配置位置やヒンジ機構の数に制約はなく、ヒンジ機構は1つでも3つ以上設けられていてもよい。また、ヒンジ機構の回動軸の位置にも制限はなく、回動軸がパソコン本体部2の内部に埋め込まれた状態や、パソコン本体部2の上方側ではなく後方側に突出した状態など、さまざまな形態のヒンジ機構を採用することができる。
【0021】
表示部1は、表示パネルとしての液晶パネル4を収納していて、ノートパソコン100の不使用時にはヒンジ機構で折りたたまれてパソコン本体部2の蓋部となる。表示部1に収納された液晶パネル4としては、一例として通常のアクティブマトリクスタイプの液晶パネルを用いることができ、液晶パネル4は、液晶パネル4で画像表示を行うためのバックライトや駆動回路とともに一体化されて液晶モジュールを構成している。このように表示パネルとしては、現在周知の液晶パネルの構成をそのまま使用することができるため、液晶パネル4を含めた表示部1の構成についての詳細な説明は省略する。
【0022】
パソコン本体部2の表面には、ノートパソコンとしての通常の構成として、キーボードやタッチパッド、ディスクドライブ装置の蓋部などが設けられている。また、パソコン本体部2の内部には、CPUやメモリなどの回路構成や、充電式電池、各種ドライブ装置などが収納されている。これら、パソコン本体部2の構成も、従来周知のノートパソコンの構成をそのまま適用できるものであることから、その詳細の説明は省略する。
【0023】
本実施形態のノートパソコン100は、高い水密性、防塵性を保つために、表示部1内部の液晶パネル4を駆動する図示しない駆動回路と、パソコン本体部2内部の図示しない回路基板とを接続するために、表示部1から導出される接続ケーブルの周囲にパッキン材が配置されている。
【0024】
図2および図3は、本実施形態のノートパソコン100における表示部1の、接続ケーブル13が導出される部分の構成を示す部分拡大図である。
【0025】
本実施形態のノートパソコン100の表示部1は、図2にその内部構造を示す第1の部材11と、図3にその内部構造を示す第2の部材12とが接合されて形成されている。双方がその内部構成を示す図であるため、図2に示される第1の部材11と図3に示される第2の部材12とは、お互いに線対称の関係となっている。
【0026】
図2に示す第1の部材11には、図中左側に位置することとなる図示しないヒンジ部へと接続ケーブル13を導出させるための開口部15が形成されている。また、第1の部材11の開口部15の内側には、2つのリブ16が図2における上下方向に形成されている。
【0027】
図2において2つのリブ16の配置方向は、接続ケーブル13の導出方向、すなわち、図中の左右方向と直交した図中上下方向であるが、本実施形態のノートパソコン100においてリブ16の形成方向は、このように接続ケーブル13の導出方向と直交した方向に限られるものではない。後述するように、接続ケーブル13の周囲に配置されたパッキン材14のスリット22がリブ16と嵌合して、水密性と防塵性とを確保できればよく、接続ケーブル13の導出方向と、リブ16の形成方向とのなす角度は、最も好ましい直交状態である90度に対して、最大でプラスマイナス45度程度の範囲まで許容することができる。
【0028】
第1の部材11に形成された2つのリブ16には、図4に示す斜視図より明らかなように、その中央部分に略円弧状の切り欠き21(21a、21b)が形成されている。このため、接続ケーブル13は、この切り欠き21に填り込んだ状態となっている。なお、図2では、リブ16を2つ設けたものとして示しているが、本実施形態のノートパソコン100においてリブ16は複数個形成されていればよく、リブ16を3つ以上設けることもできる。
【0029】
図2に示すように、接続ケーブル13の周囲にはパッキン材14が配置されていて、このパッキン材14がリブ16の周辺部分、特に、リブ16同士の間隔部分でふくらむ様に変形することによって、開口部15から導出される接続ケーブル13における水密性と防塵性とを確保できるようになっている。なお、接続ケーブル13の周囲にパッキン材14を配置する方法やパッキン材14の詳細については、図5および図6を用いて後述する。
【0030】
図3に示す第2の部材12にも、図2に示した第1の部材11に形成されたものと同様に開口部17が形成されていて、第1の部材11と第2の部材12とが、互いにその端部をつきあわせるように接合されることで、全体として略円形の開口部が形成されるようになる。
【0031】
図3に示す第2の部材12の開口部17の内側にも、第1の部材11の2つのリブ16に対応する位置に、同じ間隔で同じ大きさのリブ18が形成されている。ただし、第2の部材12に形成された2つのリブ18には、図4に示したような第1の部材11のリブ16に形成された切り欠き21は存在していない。このため、第1の部材11と第2の部材12とがその端部がつきあわされて接合された場合には、接続ケーブル13は第1の部材11側に押し込まれて第2の部材12側には位置しない状態となる。
【0032】
なお、第1の部材11のリブ16が3つ以上形成されている場合には、第2の部材12にも同じ個数のリブ18を形成することが好ましい。
【0033】
次に、図4を用いて、リブ16に形成された切り欠き21の詳細について説明する。
【0034】
本実施形態のノートパソコン100において、表示部1を形成する第1の部材11に形成されたリブ16(16a、16b)には、略円弧状の切り欠き21(21a、21b)が形成されている。ここで、略円弧状の切り欠きとは、切り欠き21の外周がほぼ円弧状であることを示し、円弧の見込み角の大小には左右されない概念である。このため、図4に示した左側のリブ16aに形成された切り欠き21aのように、見込み角がほぼ180度の場合の、半円形を切り取ったような切り欠きのみならず、見込み角が180度未満の浅い切り欠きや、見込み角が180度以上の、リブの上端部が回り込んで狭くなるような切り欠きを形成することも可能である。また、図4に示す右側のリブ16bに形成した切り欠き21bのように、切り欠き21bの外周部分が円弧のみで形成されているのではなく、リブ16bの高さに合わせて、切り欠き21bの上端部分に円弧に繋がる短い直線部分dを含むようなものも含まれる。さらに、円弧部分としても真円の一部のみに限定されるのではなく、略円弧状の切り欠きとは、楕円や長円の一部を切り取って形成された外形を有する切り欠きをも含む概念である。
【0035】
図5は、接続ケーブル13の周囲にパッキン材14を配置するために、接続ケーブル13に帯状部材であるパッキン材14を巻きつけている状態を示している。また、図6は、接続ケーブル13の周囲にパッキン材14が巻き付けられた状態を示している。
【0036】
図5に示すように、本実施形態のノートパソコン100の接続ケーブル13の周囲に配置されたパッキン材14は、帯状部材の一端を接続ケーブル13に固定して接続ケーブル13の周囲に巻き付けることによって配置されたものである。
【0037】
このようにすることで、接続ケーブル13の両端を所定の固定部材などで固定した後であっても、任意の場所に容易にパッキン材を配置することができる。このため、従来の樹脂製や硬質ゴム製の成型済みのパッキン材のように、あらかじめ接続ケーブルをパッキン材に通しておく必要が無くなる。また、従来の成型済みのパッキン材を、両端が固定された接続ケーブルの所望の位置に配置するためには、パッキン材を分割して接続ケーブルの周囲に配置した後、再び一体化する必要があったが、本実施形態のパッキン材14では、このような手間が無くなる。さらに、このように一旦パッキン材を分割して後に一体化する方法で生じやすい、パッキン材同士の接合部分やパッキン材と接続ケーブルとの間に隙間が生じて、十分な水密性と防塵性とを確保できなくなるという問題を解消することができる。このため、ノートパソコン100の製造時のみならず、ノートパソコン100の補修時に、接続ケーブル13を取り外すことなく新たなパッキン材14を配置することができ、取り扱いが極めて容易となる。
【0038】
接続ケーブル13に巻き付ける前の帯状部材の状態であるパッキン材14には、あらかじめスリット22を形成しておくことが好ましい。図5に示すように、帯状部材の長さ方向において巻き終わり側の位置に、あらかじめスリット22が形成されたパッキン材14を接続ケーブル13に巻き付けることで、図6に示すように、接続ケーブル13の周囲に配置されたパッキン材14の表面に、スリット22を形成することができる。
【0039】
パッキン材14に形成されたスリット22の幅Xと長さYとは、図4に示す、嵌合されるリブ16の幅tおよび切り欠き21の円弧部分の周長Lと、それぞれほぼ等しく形成されていることがより好ましい。。このようにすることで、接続ケーブル13に巻き付けられたパッキン材14のスリット22とリブ16の切り欠き21部分とが確実に嵌合する。
【0040】
図6に示すように本実施形態の接続ケーブル13の周囲に配置されるパッキン材14は、接続ケーブル13の周囲を約2回半巻回されている。このように、接続ケーブル13に複数回巻回されることで、帯状部材が重なり合って必要な厚さを備えたパッキン材14とすることかできる。また、図5に示すように、帯状部材14の巻き終わり側に切り欠き21の周長Lに相当する長さYのスリット22を設けているため、スリット22が帯状部材の状態での厚さを貫通するものであっても、接続ケーブル13に巻かれた状態のパッキン材14においては表面から2番目の層に相当する部分にスリット22が形成されていないため、スリット22はパッキン材14の表面にのみ形成され、スリット22が接続ケーブル13にまで貫通する深さを有していないことになる。このため、パッキン材14は、表面ではスリット22の形成部分でリブ16の切り欠き21と嵌合すると共に、接続ケーブル13に近い内周部分では連続して形成されているため、表示部1に設けられた開口部15において高い水密性と防塵性を得ることができる。
【0041】
パッキン材14を配置するために、帯状部材を接続ケーブルの周囲に巻回する回数は、上記実施形態として示した2回半に限られるものではなく、帯状部材であるパッキン材14の厚さや、材料、求められる水密・防塵特性に応じて適宜定められるべきものである。ただし、パッキン材14が、接続ケーブル13の周囲に巻回される回数が2回以下の場合で、スリット22の形成部分において接続ケーブル13を1重で取り囲む場合には、帯状部材であるパッキン材14に形成されるスリット22の深さは、帯状部材の厚さ未満として、接続ケーブル13に巻回されたときに、スリット22の深さが接続ケーブル13にまで貫通するものとならないようにすることが必要である。
【0042】
パッキン材14に形成されるスリット22の本数とその形成間隔は、嵌合される第1の部材11に形成したリブ16の配置本数と配置間隔と等しくされている。このため、パッキン材14に形成された2つのスリット22それぞれを、第1の部材11に形成された2つのリブ16に正確に嵌合させることができ、図2に示したように2つのリブ16の間隔部分でパッキン材14がふくらんで高い機密性と防塵性を発揮することができる。
【0043】
図5に示すように、パッキン材14の巻き終わり側の端部には、スリット22が形成されていない幅Zの終端部14aが形成されていることが好ましい。このようにすることで、あらかじめスリットが形成された帯状部材であるパッキン材14を接続ケーブル13に巻回する際に、パッキン材14の端部がバラバラになってしまって、パッキン材14を巻き付ける作業の作業性が低下することを回避することができる。また、パッキン材14の巻き終わり側に終端部14aが形成されていることで、スリット22の長さ方向の両端部外側にスリット22が形成されていない部分を確保することかできる。このため、スリット22がリブ16の切り欠き部21に嵌合したときに、パッキン材14に隙間が形成されることを効果的に防止して、高い水密性と防塵性とを確保することができる。
【0044】
このような事情から、パッキン材14の終端部14aの幅Zは、パッキン材14の材料や厚さなどを考慮して適宜調整すべきものである。もちろん、パッキン材14を接続ケーブル13に巻き付ける上で支障が無く、パッキン材14の巻き終わり部分が確実に固着されて所望の水密性と防塵性を得られるのであれば、パッキン材14に終端部14aを設けることは必須ではなく、パッキン材14の巻き終わり側の端部までスリット22が形成されていてもかまわない。
【0045】
パッキン材14としては、一例として厚さが2〜4mmの発泡性シリコンやウレタンなどの樹脂、低硬度のゴムシートを用いることができる。また、本実施形態のノートパソコン100に用いられたパッキン材14は、接続ケーブル13への巻き付けと固着を容易にし、かつ、パッキン材14同士が重なる部分で高い水密性と防塵性とを得るために、パッキン材14の裏面全体に図示しない層状の接着剤が塗布されている。なお、シート状のパッキン材14の裏面全てに接着剤層が必要とされるのではなく、接続ケーブル13との固着や、少なくとも接続ケーブル13に巻き付けられた最終端の部分でパッキン材14が固着されるように、帯状部材であるパッキン材14の裏面の長さ方向両端部のみに接着剤層を用いるなど、パッキン材14を接続ケーブル13に確実に固着でき、かつ、巻き付けられたパッキン材14の各層間で水密性や防塵性が低下しない範囲で適宜必要な部分にのみ接着剤層があればよい。また、パッキン材14に接着剤層を設けずに、パッキン材14を接続ケーブルに巻き付けた後、パッキン材14の外側から固定するようにしてもよい。
【0046】
図5では、帯状部材であるパッキン材14を接続ケーブル13に巻回するに当たって、パッキン材14の長さ方向と接続ケーブル13とをほぼ垂直に配置する状態を例示したが、本実施形態のノートパソコン100においては、帯状部材のパッキン材14を接続ケーブル13に対して少し斜めに配置して、螺旋状に巻回することも可能である。このように、パッキン材14の長さ方向を接続ケーブル13に対して斜めに巻き付けると、帯状部材の状態でその長さ方向形成されたスリット22が、巻き付けによって複数の層が重なり合った際には互いにその配置位置がずれることになる。このため、パッキン材14の表面からのスリット22の深さを、帯状部材であるパッキン材14の厚さ分だけとし、接続ケーブル13まで貫通しないスリット22を容易に形成することができる。
【0047】
なお、パッキン材14表面に、リブ16の切り欠き部21と嵌合する所定の長さYにわたって所望の深さのスリット22を形成することができるのであれば、接続ケーブル13に巻き付ける前の帯状部材であるパッキン材14にあらかじめスリット22を形成しておくことは、本実施形態のノートパソコン100において必須の要件ではなく、接続ケーブル13にパッキン材14を巻き付けた後にスリット22を形成するようにしてもかまわない。特に、パッキン材14に形成されるべきスリット22の深さが、パッキン材14の帯状部材での厚さよりも大きい場合、すなわち、巻き付けられたパッキン材14の複数の層に渡ってスリット22を形成しなくてはならない場合には、パッキン材14を接続ケーブル13に巻き付ける前の段階で、巻き付けられたときに重なるパッキン材14の所定の位置に正確にスリット22を形成することは困難な場合がある。このような場合には、パッキン材14を接続ケーブル13に巻き付けた後、所望の深さのスリット22を形成することがむしろ好ましい。
【0048】
以上のように、本実施形態のノートパソコン100では、接続ケーブル13が導出される開口部15の内側に複数のリブ16を形成し、このリブ16に形成された切り欠き21に、接続ケーブル13に巻き付けられたパッキン材14に形成されたスリット22が嵌合することで、製造が容易な構成でありながら、通常の線状の接続ケーブル13の導出部を高い水密性と防塵性とを確保して実現することができる。
【0049】
なお、上記実施形態では、表示部1を構成する第1の部材11と第2の部材12にそれぞれ形成されたリブ16,18の内、第1の部材11に形成されたリブ16にのみ略円弧状の切り欠き21を設けたものを例示して説明した。しかし、本実施形態のノートパソコン100はこれに限られるものではなく、第1の部材11のリブ16と、第2の部材12のリブ18との双方に切り欠き21を形成することもできる。
【0050】
また、図4において右側に示したリブ16bに形成された切り欠き21bのように、切り欠き21の深さが深い場合には、接続ケーブル13の周囲に配置されるパッキン材14の厚みを厚くすることや、本実施形態における第2の部材12に形成されたリブ18の近傍にシールド部材を貼着するなど、リブ16に形成された切り欠き21の部分から水密性や防塵性が低下しないような処置を施すことができる。
【0051】
また、本実施形態のノートパソコン100では、リブ16に形成された切り欠き21の形状として略円弧状のものを例示したが、切り欠きの形状に制約はなく、嵌合するパッキン材の素材や厚さなどを調整することで必要とされる水密性と防塵性とが得られるのであれば、例えば全体として多角形状の切り欠きや、極端な場合には略V字状の切り欠きを用いることもできる。
【0052】
また、上記実施形態では、ノートパソコン100の表示部1からヒンジ部に導出される接続ケーブル13の周囲に配置されたパッキン材14について説明したが、ノートパソコン100の筐体の他の部分から導出される、他の接続ケーブルの周囲に配置されたパッキン材に上記構成を適用できることは言うまでもない。
【0053】
また上記本実施形態では、本発明の電子機器として、表示パネルとして透過型の液晶パネルを備えた特殊な環境下で使用されるノートパソコンについて説明したが、これはあくまで例示に過ぎず、本発明の適用対象を限定するものではない。
【0054】
本発明の電子機器がノートパソコンである場合でも、特別に厳しい使用条件を想定したものに限らず、通常用途のノートパソコンに本発明を適用できることは言うまでもない。また、ノートパソコンの表示パネルとしても、例示した透過型の液晶パネルに限られず、半透過型や反射型の液晶パネル、PDPパネル、ELパネル、FEDパネルなどの各種の表示パネルを用いることができる。
【0055】
また、本発明の適用対象の電子機器はノートパソコンに限られず、PDAや携帯用DVDプレーヤー、電子辞書、ゲーム機、携帯電話などのポータブル機器をはじめとして据え置き型のものを含め、水密性と防塵性とが要求される各種の電子機器に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、筐体から導出される接続ケーブルの導出部分に高い水密性と防塵性とが求められる、各種の電子機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 表示部(筐体)
2 パソコン本体
3 ヒンジ部カバー
4 液晶パネル(表示素子)
11 第1の部材
12 第2の部材
13 接続ケーブル
14 パッキン材
15、17 開口部
16、18 リブ
21 切り欠き部
22 スリット
100 ノートパソコン(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲にパッキン材が配置された接続ケーブルと、
外部に前記接続ケーブルを導出する開口部と、前記開口部の内側に前記接続ケーブルの導出方向と交わる方向に配置され前記接続ケーブルを収容する切り欠きが形成された複数のリブとを有する筐体とを備え、
前記パッキン材は、帯状部材が前記接続ケーブルに巻き付けられて形成され、前記リブと当接する部分に前記接続ケーブルまで貫通しない深さのスリットが形成されていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記パッキン材が、前記接続ケーブルに前記帯状部材が複数回巻き付けられて形成されたものである請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記帯状部材の巻き終わり側の端部が、前記スリットが形成されない終端部となっている請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記リブに形成された前記切り欠きが略円弧状であり、前記スリットの長さが前記切り欠きの弧の長さと等しい請求項1から3のいずれか1項に記載の電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−199032(P2011−199032A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64664(P2010−64664)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】