説明

電子機器

【課題】操作物体の位置を正確に検出でき良好に操作を行うことができる電子機器を提供する。
【解決手段】可視光を射出する可視光源2と、赤外光を射出する赤外光源10と、前記可視光源から射出された前記可視光の光路と前記赤外光源から射出された前記赤外光の光路とを略同軸に合成する合成部6と、前記合成部により合成された前記可視光及び前記赤外光を偏向させ走査させる走査部8と、前記走査部により走査された前記可視光を操作者の眼に入射させ、前記走査部により走査された前記赤外光を前記操作物体に投射させる光学部材16と、前記操作物体で反射された前記赤外光から光学情報を抽出する検出部26と、前記光学情報に基づいて前記操作物体の3次元の位置を計測する計測部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、操作者の動作を認識するセンサを備えたヘッドマウントディスプレイが存在する(例えば、特許文献1参照)。このヘッドマウントディスプレイによれば、操作者の体の傾きや心拍数等に基づいて操作を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−117542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のヘッドマウントディスプレイにおいては、操作者の動作を正確に検出することが困難なため十分な操作性を確保することができないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、操作物体の位置を正確に検出でき良好に操作を行うことができる電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子機器は、可視光を射出する可視光源と、赤外光を射出する赤外光源と、前記可視光源から射出された前記可視光の光路と前記赤外光源から射出された前記赤外光の光路とを略同軸に合成する合成部と、前記合成部により合成された前記可視光及び前記赤外光を偏向させ走査させる走査部と、前記走査部により走査された前記可視光を操作者の眼に入射させ、前記走査部により走査された前記赤外光を前記操作物体に投射させる光学部材と、前記操作物体で反射された前記赤外光から光学情報を抽出する検出部と、前記光学情報に基づいて前記操作物体の3次元の位置を計測する計測部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電子機器によれば、操作物体の位置を正確に検出でき良好に操作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態に係るHMDの光学系の原理図である。
【図2】第1の実施の形態に係るHMDのシステム構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施の形態に係るHMDにおける赤外レーザ光の像の検出状態を示す図である。
【図4】第1の実施の形態に係るHMDにおける赤外レーザ光の像の検出状態を示す図である。
【図5】第1の実施の形態に係るHMDにおける赤外レーザ光の像の検出状態を示す図である。
【図6】第2の実施の形態に係るHMDにおける赤外レーザ光の像の検出状態を示す図である。
【図7】第2の実施の形態に係るHMDにおける赤外レーザ光の像の検出状態を示す図である。
【図8】第2の実施の形態に係るHMDにおける赤外レーザ光の像の検出状態を示す図である。
【図9】第3の実施の形態に係るHMDの光学系の原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る電子機器についてレーザ走査型シースルー網膜投影式HMD(Head Mounted Display)を例に説明する。図1は、第1の実施の形態に係るHMDの光学系の原理図である。まず、可視レーザ光源2から射出された可視レーザ光は、レンズ4により集光され、可視レーザ光を反射し赤外レーザ光を透過するダイクロイックミラー6で反射されてMEMSミラー8に入射する。
【0010】
一方、赤外レーザ光源10から射出された赤外レーザ光は、レンズ11により集光され、全反射ミラー12で反射されてハーフミラー14を透過し、ダイクロイックミラー6を透過してMEMSミラー8に入射する。なお、ハーフミラー14を透過した赤外レーザ光の光路は、ダイクロイックミラー6において可視レーザ光の光路と略同軸に合成されてMEMSミラー8に入射する。MEMSミラー8は、合成された可視レーザ光及び赤外レーザ光が入射する面を2軸方向に振動させてレーザ光の偏向方向を制御し、合成された可視レーザ光及び赤外レーザ光を2次元的(縦方向及び横方向)に走査する。
【0011】
MEMSミラー8で反射された可視レーザ光及び赤外レーザ光は、可視レーザ光の一部を透過し、赤外レーザ光を反射するダイクロイックミラー16に入射する。可視レーザ光及び赤外レーザ光のうちダイクロイックミラー16を透過した可視レーザ光は、凹面鏡20で反射されて平行光となり、再びダイクロイックミラー16で反射されて操作者の眼22に入射する。一方、可視レーザ光及び赤外レーザ光のうち赤外レーザ光は、ダイクロイックミラー16で反射されて前方に投射される。
【0012】
ここで、ダイクロイックミラー16で反射され操作者の眼22に入射する可視レーザ光及びダイクロイックミラー16で反射され操作者の手18に投射される赤外レーザ光の光軸は同一である。このため、MEMSミラー8により走査が行われた場合において、操作者が視認する可視レーザ光による映像の位置は、赤外レーザ光の集光される位置と常に一致する。
【0013】
前方に操作者の手18が存在する場合、投射された赤外レーザ光は、手18で反射されてダイクロイックミラー16、MEMSミラー8及びダイクロイックミラー6を経由して元の光路を戻り、ハーフミラー14で反射されてレンズ24で集光され検出部26に入射する。そして検出部26において赤外レーザ光が検出される。
【0014】
図2は、実施の形態に係るHMD28のシステム構成を示すブロック図である。図2に示すように、HMD28は装置全体を統括的に制御するCPU30を備え、CPU30には、操作者の眼に映像を入射することによって映像を操作者に提供する表示部32、HMD28を操作する操作者の手18を認識する操作検出部34、表示部32により操作者に提供する映像情報を一時的に記憶するメモリ36及びプログラムや映像情報等を記憶するFlashメモリ38が接続されている。
【0015】
ここで、表示部32は、可視レーザ光源2の制御を行う可視レーザ光制御部40を備えている。また、操作検出部34は、赤外レーザ光源10の制御を行う赤外レーザ光制御部42、操作者の手18で反射された赤外レーザ光を検出する検出部26、MEMSミラー8の偏向方向を制御するMEMS制御部44を備えている。
【0016】
次に、図面を参照して、第1の実施の形態に係るHMDによる操作者の手の位置の計測について説明する。図3は、第1の実施の形態に係るHMD28における赤外レーザ光の像の検出状態を示す図である。まず、操作者の手18が所定の位置に置かれた状態において、赤外レーザ光源10から射出された赤外レーザ光が最小錯乱円を形成するようにレンズ11で集光状態を調整する。また、検出部26と赤外レーザ光源10が光学的に共役の位置になるようにレンズ24を配置する。
【0017】
ここで、操作者の手18の位置を前後方向に移動させると、赤外レーザ光の非点収差により操作者の手18に集光される赤外レーザ光の像にはボケが生じ、検出部26の結像面46における赤外レーザ光の結像状態はデフォーカス状態となる。
【0018】
例えば、図4に示すように、手18の位置を操作者の位置する方向に近づけた場合、検出部26の結像面46には、垂直方向を長軸とする楕円形状の像が形成される。また、図5に示すように、手18の位置を操作者の位置する方向と反対側に遠ざけた場合、検出部26の結像面46には、水平方向を長軸とする楕円形状の像が形成される。
【0019】
次に、CPU30は、検出部26により検出した赤外レーザ光の結像状態に基づいて手18の奥行方向の位置を計測する。即ち、楕円の長軸の方向と楕円形状の大きさに基づいて手18の位置までの距離を計測する。
【0020】
なお、検出部26による赤外レーザ光の検出タイミングは、MEMSミラー8の動きと同期しているため、各々の走査タイミングにおけるMEMSミラー8の偏向方向に基づいて赤外レーザ光が反射された操作者の手18の2次元の方向を特定することができる。このため、CPU30は、手18の奥行方向と2次元の方向に基づいて操作者の手18の3次元の方向を計測することができる。これにより、操作者は、HMD28を3次元的にジェスチャーコントロールすることができる。
【0021】
第1の実施の形態に係るHMDによれば、赤外レーザ光の結像状態に基づいて操作物体の3次元の位置が計測でき、かつ、操作者が視認する可視レーザ光による映像の位置と赤外レーザ光の結像位置とが常に一致するため、操作物体の位置を正確に検出し良好に操作を行うことができる。
【0022】
次に、第2の実施の形態に係るHMDについて説明する。なお、第2の実施の形態に係るHMDは、図1に示す光学系において回折格子を付加したものである。従って、第1の実施の形態と同様の構成についての詳細な説明は省略し、異なる部分のみについて説明する。また、第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付して説明する。
【0023】
次に、図面を参照して、第2の実施の形態に係るHMDによる操作者の手の位置の計測について説明する。図6は、第2の実施の形態に係るHMDにおける赤外レーザ光の像の検出状態を示す図である。赤外レーザ光源10とレンズ11との間には回折格子48が配置され、回折格子48により赤外レーザ光の発光点が3点となるように分光される。
【0024】
まず、操作者の手18が所定の位置に置かれた状態において、光赤外レーザ光が最小錯乱円を形成するようにレンズ11で集光状態を調整する。ここで、赤外レーザ光は回折格子48によって回折され、0次、1次、2次・・・の回折光が形成される。図6では、0次光と±1次光の、3つの最小錯乱円を示している。また、検出部26の結像面46に赤外レーザ光源10が結像するようにレンズ24の集光状態を調整する。
【0025】
ここで、操作者の手18の位置を前後方向に移動させると、赤外レーザ光の非点収差により操作者の手18に集光される赤外レーザ光の像にはボケが生じ、検出部26の結像面46における赤外レーザ光の結像状態はデフォーカス状態となる。
【0026】
例えば、図7に示すように、手18の位置を操作者の位置する方向に近づけた場合、検出部26の結像面46には、垂直方向を長軸とする3つの楕円形状の像が形成される。また、図8に示すように、手18の位置を操作者の位置する方向と反対側に遠ざけた場合、楕円形状の長軸が水平方向に変わるため、検出部26の結像面46には、隣接する3つの楕円形状が重なり合った状態の1つの大きな楕円形状の像が形成される。
【0027】
このように、検出部26の結像面46における赤外レーザ光の結像状態は、回折格子48を用いない場合の結像状態よりも強調される。従って、CPU30は、検出部26により検出した赤外レーザ光の結像状態に基づいて容易に手18の奥行方向の位置を計測することができる。
【0028】
第2の実施の形態に係るHMDによれば、赤外レーザ光の結像状態に基づいて操作物体の3次元の位置が容易に計測でき、かつ、操作者が視認する可視レーザ光による映像の位置と赤外レーザ光の結像位置とが常に一致するため、操作物体の位置を正確に検出し良好に操作を行うことができる。
【0029】
なお、第2の実施の形態では、回折格子48により複数の次数の回折光を形成したが、赤外レーザ光源10を並列配置し、複数の点光源をレンズ11に入射させるようにしても同様の効果が得られる。
【0030】
次に、第3の実施の形態に係るHMDについて説明する。なお、第3の実施の形態に係るHMDは、図1に示す光学系においてダイクロイックミラー6を全反射ミラー50に替え、全反射ミラー12を削除してMEMSミラー8に入射するまでの可視レーザ光の光路と赤外レーザ光の光路とを分離し、MEMSミラー8で反射された赤外レーザ光を集光する凹面鏡52及び可視レーザ光の光路と赤外レーザ光の光路とを略同軸に合成するダイクロイックミラー51を付加したものである。従って、第1の実施の形態と同様の構成についての詳細な説明は省略し、異なる部分のみについて説明する。また、第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付して説明する。
【0031】
まず、可視レーザ光源2から射出されレンズ4により集光された可視レーザ光は、全反射ミラー50及びMEMSミラー8で反射されて可視レーザ光の一部を透過し、赤外レーザ光を反射するダイクロイックミラー51に入射する。
【0032】
一方、赤外レーザ光源10から射出された赤外レーザ光は、レンズ11により集光され、ハーフミラー14を透過してMEMSミラー8で一旦結像する。そして、MEMSミラー8で反射され凹面鏡52に入射する。ここで、MEMSミラー8で反射される際に赤外レーザ光の広がり角が大きくなる。次に、凹面鏡52で反射されダイクロイックミラー51に入射する。ここで、可視レーザ光の光路と赤外レーザ光の光路とは、ダイクロイックミラー51において略同軸に合成される。次に、合成された可視レーザ光及び赤外レーザ光は、ダイクロイックミラー16に入射する。
【0033】
可視レーザ光及び赤外レーザ光のうち可視レーザ光は、ダイクロイックミラー16及び凹面鏡を経由して操作者の眼22に入射する。一方、可視レーザ光及び赤外レーザ光のうち赤外レーザ光は、ダイクロイックミラー16で反射されて前方に投射され、操作者の手18に最小錯乱円を形成する。そして、操作者の手18で反射された赤外レーザ光は、元の光路を戻り検出部26で検出される。
【0034】
これにより、赤外レーザ光源10から射出された赤外レーザ光を集光するレンズ11の焦点距離を短くすることができ、かつ、MEMSミラー8で反射される赤外レーザ光の広がり角を大きくすることができる。従って、前方に投射される赤外レーザ光の被写界深度を浅くすることができる。また、赤外レーザ光の被写界深度を浅くすることにより、非点収差によるボケが生じ易くなり、赤外レーザ光により最小錯乱円が形成される範囲が狭い範囲に限定される。このため、操作者の手18の位置の計測精度を向上させることができる。
【0035】
第3の実施の形態に係るHMDによれば、赤外レーザ光の結像状態に基づいて操作物体の3次元の位置が計測でき、かつ、操作者が視認する可視レーザ光による映像の位置と赤外レーザ光の結像位置とが常に一致するため、操作物体の位置を正確に検出し良好に操作を行うことができる。
【0036】
なお、上述の実施の形態においては、赤外レーザ光、可視レーザ光を用いる場合を例に説明しているが、光源の種類はこれに限らず、発光ダイオード等であってもよい。レーザ光源以外の光源を用いる場合には、検出器の結像面46に結像する像に非点収差を持たせるために、検出器の手前に配置されたレンズに非点収差を有するレンズを使用する。
【0037】
また、上述の実施の形態においては、赤外レーザ光の結像状態に基づいて手18の奥行き方向の位置を計測する場合を例に説明しているが、赤外レーザ光の到達時間に基づいて手18の奥行き方向の位置を計測するようにしてもよい。例えば、赤外レーザ光源10を点滅させ、赤外レーザ光が赤外レーザ光源10から射出されて操作者の手18で反射し、検出部26に入射するまでの時間に基づいて手18の奥行き方向の位置を計測するようにしてもよい。
【0038】
また、上述の実施の形態においては、操作者の手18の位置を計測する場合を例に説明しているが、位置を計測する対象は、前方(図1参照)で移動させることによりHMDの操作を行うことができれば、例えばペン等のような物体でもよい。
【0039】
また、上述の実施の形態においては、赤外レーザ光の非点収差により形成される赤外レーザ光の像として、手18を操作者の位置する方向に近づけると垂直方向を長軸とする楕円形状の像が形成され、遠ざけると水平方向を長軸とする楕円形状の像が形成される場合を例に説明しているが、手18を近づけた場合と遠ざけた場合の楕円形状の長軸の方向は逆であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
2…可視レーザ光源、4…レンズ、6…ダイクロイックミラー、8…MEMSミラー、10…赤外レーザ光源、11…レンズ、12…全反射ミラー、14…ハーフミラー、16…ダイクロイックミラー、18…手、20…凹面鏡、22…眼、24…レンズ、26…検出部、28…HMD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を射出する可視光源と、
赤外光を射出する赤外光源と、
前記可視光源から射出された前記可視光の光路と前記赤外光源から射出された前記赤外光の光路とを略同軸に合成する合成部と、
前記合成部により合成された前記可視光及び前記赤外光を偏向させ走査させる走査部と、
前記走査部により走査された前記可視光を操作者の眼に入射させ、前記走査部により走査された前記赤外光を前記操作物体に投射させる光学部材と、
前記操作物体で反射された前記赤外光から光学情報を抽出する検出部と、
前記光学情報に基づいて前記操作物体の3次元の位置を計測する計測部と
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記光学情報は、前記赤外光の結像状態に関する情報であり、
前記計測部は、前記結像状態における像の大きさに基づいて前記操作物体の位置を計測することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記光学情報は、前記赤外光の結像状態に関する情報であり、
前記計測部は、前記結像状態における像の形状に基づいて前記操作物体の位置を計測することを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記赤外光は複数の赤外光束からなり、
前記光学情報は、前記複数の赤外光束の結像状態に関する情報であることを特徴とする請求項2または3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記光学情報は、前記赤外光が前記赤外光源から射出されて前記操作物体で反射し、前記検出部に入射するまでの時間に関する情報であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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