説明

電子機器

【課題】 携帯電話において、キーボタン押圧時のクリック音を低減する。
【解決手段】 方形状の板金5の外周部には樹脂からなる筐体1がインサート成形により形成されている。板金5の上面には樹脂膜6が上記インサート成形と同時に形成されている。板金5の上面には、上面に一対で1組の固定接点を複数組有するフィルム基板7が設けられている。一対で1組の固定接点上にはドーム状の板バネからなる可動接点8が設けられている。ここで、樹脂膜6は、キーボタン4が押圧されて、可動接点8が下側に向かって弾性変形したとき、可動接点8が板金5に当接する衝撃を緩和するためのものである。これにより、キーボタン押圧時のクリック音を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は携帯電話等の電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話には、一面に表示パネルを備えた表示部筐体と一面に複数のキーボタンを備えた操作部筐体とがヒンジを介して折り畳み可能に連結され、折り畳まれた状態で表示部筐体の表示パネル側の面と操作部筐体のキーボタン側の面とが互いに対向するようにしたものがある。
【0003】
従来のこの種の携帯電話の操作部筐体においては、上面に一対で1組の固定接点が複数組設けられたフィルム基板上に複数のキーボタンが設けられ、1つのキーボタンが押圧されると、当該キーボタン下に設けられたドーム状の板バネからなる可動接点が下側に向かって弾性変形してその下に設けられた一対で1組の固定接点に共に接触し、これにより当該キーボタンに対応するスイッチがオン状態となるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3137870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような携帯電話には、操作部筐体を樹脂によって方形枠状に形成し、且つ、操作部筐体の内側に板金をインサート成形により一体化したものがある。このような携帯電話において、板金上にフィルム基板を介してドーム状の板バネからなる可動接点を配置した場合、キーボタンが押圧されると、可動接点がフィルム基板を介して板金に比較的強く当接して比較的大きな金属音(クリック音)が発生することがあり、人によっては耳障りとなることがあるという問題がある。
【0006】
そこで、この発明は、キーボタン押圧時のクリック音を低減することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る電子機器は、板金の外周部に樹脂からなる筐体がインサート成形により形成され、前記板金上に、上面に一対で1組の固定接点を複数組有するフィルム基板が設けられ、前記一対で1組の固定接点上にドーム状の板バネからなる可動接点が設けられ、前記可動接点上にキーボタンが設けられた電子機器において、前記板金の上面に樹脂膜が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、キーボタンが押圧されて、可動接点が下側に向かって弾性変形したとき、可動接点が板金に当接する衝撃を樹脂膜によって緩和することができ、これによりキーボタン押圧時のクリック音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の一実施形態としての携帯電話の操作部筐体の部分の斜視図。
【図2】図1のII−IIに線に沿う部分の一部の断面図。
【図3】図1に示すものにおいて板金の上面に設けられた樹脂膜を露出させた状態の斜視図。
【図4】図3に示すものにおいて板金の上面に設けられた樹脂膜を省略した状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1はこの発明の一実施形態としての携帯電話の操作部筐体の部分の斜視図を示す。この携帯電話では、操作部筐体1のヒンジ部2に表示部筐体(図示せず)が回動可能に取り付けられるようになっている。表示部筐体についての説明は省略する。操作部筐体1の上面側にはコマンドナビゲーションキーボタン3およびダイヤルキーボタンを含む各種のキーボタン4が設けられている。
【0011】
図2は図1のII−IIに線に沿う部分の一部の断面図を示す。操作部筐体1はABS樹脂等によって方形枠状に形成されている。操作部筐体1の内側にはステンレス等からなる方形状の板金5の外周部がインサート成形により埋め込まれ、且つ、板金5の上面には樹脂膜6が同インサート成形により形成されている。すなわち、ABS樹脂等を用いたインサート成形により、方形状の板金5の外周部に方形枠状の操作部筐体1が形成され、且つ、板金5の上面に樹脂膜6が形成される。この場合、樹脂膜6の外周部は操作部筐体1と連結されている。また、この状態では、板金5の外周部を除く下面は露出されている。ここで、図3に図1にものにおいて板金5の上面に設けられた樹脂膜6を露出させた状態の斜視図を示す。また、図4に図3に示すものにおいて板金5の上面に設けられた樹脂膜6を省略した状態の斜視図を示す。
【0012】
図2に戻って説明を続けると、樹脂膜6の上面にはポリイミド等からなるフィルム基板7が粘着剤(図示せず)を介して貼り付けられている。フィルム基板7の上面においてキーボタン4等に対応する部分には一対で1組の固定接点(図示せず)が複数組設けられている。フィルム基板7の一対で1組の固定接点上にはステンレス等からなるドーム状の板バネからなる可動接点8が設けられている。可動接点8およびフィルム基板7の上面には粘着シート9が貼り付けられている。これにより、可動接点8は固定されている。
【0013】
キーボタン4は、ウレタンゴム等からなる支持シート10の上面に、熱溶着あるいは両面接着テープを用いることにより、固着されている。支持シート10の下面には樹脂シート11が貼り付けられている。樹脂シート11は、その下面において可動接点8に対応する部分に逆ドーム状の突起11aを有する構造となっている。樹脂シート11の外周部下面は操作部筐体1の上面に両面接着テープ12を介して貼り付けられている。この状態では、樹脂シート11の突起11aは可動接点8の上面に設けられた粘着シート9の上面にただ単に当接されている。
【0014】
この携帯電話では、例えば1つのキーボタン4が押圧されると、その下の支持シート10およびその下の突起11aを含む樹脂シート11の部分のみが弾性変形して下降し、この下降する突起11aによってその下の可動接点8がその上面に設けられた粘着シート9と共に押し下げられて弾性変形し、この押し下げられて弾性変形した可動接点8がその下の一対で1組の固定接点に共に接触し、当該キーボタン4に対応するスイッチがオン状態となる。当該キーボタン4に対する押圧が解除されると、可動接点8が自己復帰して初期位置に戻り、これに伴い突起11aを含む樹脂シート11、支持シート10および当該キーボタン4が初期位置に戻り、当該キーボタン4に対応するスイッチがオフ状態となる。
【0015】
ところで、板金5の上面に樹脂膜6が形成されていない場合、フィルム基板7が板金5の上面に配置されることになる。この場合、フィルム基板7の厚さが極めて薄い(例えば、0.1mm程度)ので、可動接点8の下降時の衝撃をフィルム基板7で十分に吸収することができず、その結果可動接点8がフィルム基板7を介して板金5に比較的強く当接して、周波数の比較的高い金属音が発生することがある。特に、メール作成時等のようにキーボタン操作の頻度が多い場合には、キーボタンを比較的強く押圧しやすく、キーボタン操作時に発生する周波数の比較的高い金属音が耳触りとなってしまうことがある。
【0016】
これに対し、上記構成の携帯電話では、板金5の上面にフィルム基板7よりも厚め(例えば、0.3〜0.5mm)の樹脂膜6を設けているので、可動接点8が下側に向かって弾性変形したとき、可動接点8の板金5に当接する衝撃が樹脂膜6によって緩和され、周波数の比較的低い音が発生し、人の耳には聞こえにくくなり、したがってクリック音を低減することができる。また、板金5の外周部を樹脂からなる操作部筐体1で覆うためのインサート成形時に、同時に、板金5の上面に樹脂膜6を形成することができるので、工程数および部品点数が増加しないようにすることができる。
【0017】
なお、可動接点8は、バネ性を有する金属板の複数個所にドーム状に形成されたものであってもよい。この場合、粘着シート9を省略し、バネ性を有する金属板をフィルム基板7の上面に貼り付けるようにしてもよい。また、この発明は、携帯電話に限らず、PHS(Personal Handyphone System)、PDA(Personal Data
Assistance, Personal Digital Assistance:個人向け携帯型情報通信機器)等の携帯端末機器等の電子機器にも適用することができる。
【0018】
以下、この発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0019】
(付記1)
付記1の発明は、板金の外周部に樹脂からなる筐体がインサート成形により形成され、前記板金上に、上面に一対で1組の固定接点を複数組有するフィルム基板が設けられ、前記一対で1組の固定接点上にドーム状の板バネからなる可動接点が設けられ、前記可動接点上にキーボタンが設けられた電子機器において、前記板金の上面に樹脂膜が設けられていることを特徴とする電子機器である。
【0020】
(付記2)
付記2の発明は、前記樹脂膜は、前記板金の外周部に前記筐体をインサート成形により形成するとき、前記板金の上面に同時に形成されたものからなることを特徴とする付記1に記載の電子機器である。
【0021】
(付記3)
付記3の発明は、前記樹脂膜の厚さは前記フィルム基板の厚さよりも厚くなっていることを特徴とする付記1または2に記載の電子機器である。
【0022】
(付記4)
付記4の発明は、前記可動接点と前記キーボタンとの間に、下面において前記可動接点に対応する部分に突起を有する樹脂シートが設けられていることを特徴とする付記1〜3のいずれかに記載の電子機器である。
【符号の説明】
【0023】
1 操作部筐体
2 ヒンジ部
3 コマンドナビゲーションキーボタン
4 キーボタン
5 板金
6 樹脂膜
7 フィルム基板
8 可動接点
9 粘着シート
10 樹脂シート
10a 突起
11 支持シート
12 両面接着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金の外周部に樹脂からなる筐体がインサート成形により形成され、前記板金上に、上面に一対で1組の固定接点を複数組有するフィルム基板が設けられ、前記一対で1組の固定接点上にドーム状の板バネからなる可動接点が設けられ、前記可動接点上にキーボタンが設けられた電子機器において、前記板金の上面に樹脂膜が設けられていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記樹脂膜は、前記板金の外周部に前記筐体をインサート成形により形成するとき、前記板金の上面に同時に形成されたものからなることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記樹脂膜の厚さは前記フィルム基板の厚さよりも厚くなっていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記可動接点と前記キーボタンとの間に、下面において前記可動接点に対応する部分に突起を有する樹脂シートが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−129142(P2012−129142A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281468(P2010−281468)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】